ところが、特許文献1の車両用ドアを組み立てる際には、車両の組み立てラインで、ドア本体にモジュールプレートを組み付ける工程を経た後、ウインドガラスを組み付ける工程を経る必要がある。さらに、上記ウインドガラスを組み付ける工程においては、該ウインドガラスをドア本体の上部スリットからドア袋部内に挿入した上で、該ドア袋部内で昇降装置に連結しなければならず、作業が煩雑である。このように、車両の組み立てラインでドアの製造工程が多く、しかも、作業が煩雑であると、昇降装置をモジュール化したことによる効果、すなわち車両の組み立てラインにおいてドアの製造工数を削減できるという効果が十分に得られない。
また、特許文献1の車両用ドアでは、ドア本体の上部スリットを形成するためにアウタ部材の上部がインナ部材と車室内外方向に離れているので、該アウタ部材の剛性が低くなってしまう。このアウタ部材の剛性が低くなると、該アウタ部材で構成されている車両の意匠面に張り感が無くなってドアの商品性が低下してしまう。
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウインドガラスをモジュール化した状態のモジュールプレートをドア本体に組み付けることができるようにして、車両の組み立てラインにおけるドアの製造工数を削減する場合に、簡単な構造でアウタ部材の剛性を確保できるようにして意匠面に張り感を得てドアの商品性を向上させることにある。
上記目的を達成するために、本発明では、インナ部材の両側壁部の間を、ウインドガラスのアウタ部材側へ廻り込むように成形し、アウタ部材に接合するようにした。
具体的には、請求項1の発明では、車室内側及び外側にそれぞれ位置するパネル状のインナ部材及びアウタ部材で構成されたドア本体と、上記ドア本体のインナ部材側に組み付けられるモジュールプレートとを備え、上記モジュールプレートには、ウインドガラス及び該ウインドガラスを昇降させる昇降装置が組み付けられ、上記インナ部材の両側部には、上記アウタ部材に接合される側壁部がそれぞれ設けられ、上記インナ部材の両側壁部の間には、上記ウインドガラスのアウタ部材側へ廻り込むように成形されて該アウタ部材に接合される接合部が設けられている構成とする。
この構成によれば、モジュールプレートに少なくともウインドガラス及び昇降装置が組み付けられてモジュール化され、このモジュールプレートをドア本体に組み付けることが可能になる。モジュールプレートをドア本体に組み付ける際には、インナ部材の両側壁部の間の接合部が、ウインドガラスのアウタ部材側へ廻り込むように成形されて該ウインドガラスを回避する形状をなしているので、インナ部材が邪魔になることない。このため、ウインドガラスをモジュール化した状態のモジュールプレートをドア本体のインナ部材側から容易に組み付けることが可能になる。また、ウインドガラスをモジュール化しているので、車両の組み立てラインにおいてウインドガラスをドア本体に組み付ける工程が不要になる。
また、インナ部材の両側壁部間の接合部がアウタ部材に接合されているので、アウタ部材がインナ部材により補強される。これにより、インナ部材をウインドガラスのアウタ部材側へ廻り込むように成形するという簡単な構造でアウタ部材の剛性を確保することが可能になる。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、接合部の上部には、ウインドガラスの車室外面に摺接する摺接部材が取り付けられる取付孔が設けられている構成とする。
この構成によれば、アウタ部材に摺接部材の取付孔を設けなくてもよくなる。すなわち、アウタ部材は意匠面を構成する部材であるため、このアウタ部材に摺接部材の取付孔を設ける場合には、意匠面を構成する部分からドア本体の内側へ折り返したフランジに設ける必要がある。インナ部材に取付孔を設けることで、上記したアウタ部材のフランジが不要になり、その結果、アウタ部材の材料を削減することが可能になるとともに、フランジの成形による意匠面への影響がなくなる分、アウタ部材を成形する成形型の設計工数を削減することが可能になる。
請求項3の発明では、請求項1または2の発明において、接合部がアウタ部材の上部に接合されている構成とする。
この構成によれば、アウタ部材の上部の剛性が十分に得られる。
請求項4の発明では、請求項1から3のいずれか1つの発明において、接合部とアウタ部材との間に充填材が設けられている構成とする。
この構成によれば、接合部とアウタ部材とが充填材を介して接合される。
請求項5の発明では、請求項1から4のいずれか1つの発明において、モジュールプレートは、インナ部材の両側壁部に亘るように形成され、該両側壁部に固定されている構成とする。
この構成によれば、モジュールプレートによりインナ部材の両側壁部が連結された状態となる。
請求項6の発明では、請求項1から5のいずれか1つの発明において、モジュールプレートの上部には、上昇位置にあるウインドガラスの周縁部を保持するサッシュを構成するサッシュ構成部が一体成形されている構成とする。
この構成によれば、サッシュ構成部がモジュールプレートと一体になるので、サッシュ構成部をウインドガラス及び昇降装置と同時にドア本体に組み付けることが可能になる。
請求項7の発明では、請求項1から6のいずれか1つの発明において、モジュールプレートには、ラッチ装置を車室内側から操作するインナハンドルと、該インナハンドル及び上記ラッチ装置を連結して該インナハンドルの操作力をラッチ装置に伝達する連結部材とが組み付けられている構成とする。
この構成によれば、インナハンドル及び連結部材をモジュールプレートに組み付けてモジュール化することが可能になる。これにより、車両の組み立てラインにおいてインナハンドル及び連結部材をドア本体に組み付ける工程が不要になる。
請求項1の発明によれば、ドア本体を構成するインナ部材の両側壁部の間をウインドガラスのアウタ部材側へ廻り込むように成形したので、ウインドガラス及び昇降装置が組み付けられた状態のモジュールプレートをドア本体にインナ部材側から容易に組み付けることができる。これにより、車両の組み立てラインにおいてウインドガラスを組み付ける工程を不要にすることができて、車両の組み立てラインにおけるドアの製造工数を削減することができる。そして、上記のように成形されたインナ部材の接合部をアウタ部材に接合して該アウタ部材の剛性を確保するようにしたので、簡単な構造でアウタ部材の意匠面に張り感を得ることができて、ドアの商品性を向上させることができる。
請求項2の発明によれば、ウインドガラスの車室外面に摺接する摺接部材の取付孔をインナ部材に設けたので、取付孔をアウタ部材に設ける場合に比べて、ドアの製造コストを低減することができる。
請求項3の発明によれば、インナ部材の接合部をアウタ部材の上部に接合したので、アウタ部材の上部の剛性を十分に得ることができる。
請求項4の発明によれば、インナ部材の接合部とアウタ部材とを充填材を介して接合することができる。
請求項5の発明によれば、モジュールプレートをインナ部材の両側壁部に固定するようにしたので、インナ部材の剛性が向上し、ひいてはドア本体を高剛性にすることができる。
請求項6の発明によれば、モジュールプレートにサッシュ構成部を一体成形したので、サッシュ構成部をウインドガラス及び昇降装置と同時にドア本体に組み付けることができる。
請求項7の発明によれば、モジュールプレートにインナハンドル及び連結部材を組み付けるようにしたので、車両の組み立てラインにおいてインナハンドル及び連結部材をドア本体に組み付ける工程が不要になり、これにより、車両の組み立てラインにおけるドアの製造工数をより一層削減することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。また、この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、「前」とは車両の前側を、「後」とは車両の後側をそれぞれ表すこととしている。
図2は、本発明の実施形態1に係る車両用ドアとしてのスライドドア1を備えるワンボックスタイプの自動車2を示す。この自動車2の側部の前側には、前端部がヒンジにより支持されて後側が車室内外方向へ回動するように構成された前部ドア3が配設され、この前部ドア3の後方に隣接して上記スライドドア1が配設されている。
上記スライドドア1は、該スライドドア1の下半部を構成するドア本体4と該スライドドア1の上半部を構成するサッシュ5とを備えている。該サッシュ5には、前側ウインドガラスG1と後側ウインドガラスG2とが保持されるようになっている。ドア本体4の車室内側には、図3に示すように、該ドア本体4よりも上方へ突出するモジュールプレート6が設けられている。このモジュールプレート6の上半部の車室外側には、図1にも示すように、サッシュアウタ部材7が取り付けられている。モジュールプレート6の上半部とサッシュアウタ部材7とで上記サッシュ5が構成されている。これらモジュールプレート6及びサッシュアウタ部材7もスライドドア1を構成する部材である。
上記ドア本体4は、側面視で略矩形状をなしており、車室内側に位置するインナ部材としてのインナパネル10と、車室外側に位置するアウタ部材としてのアウタパネル11とを接合して構成されている。これらインナパネル10及びアウタパネル11は、共に例えば鋼板等の金属製の板材をプレス成形法を用いて成形したものである。
上記アウタパネル11は、図4に示すように主に車両の意匠面を構成するものであり、図5に示すように車室外側へ向けて緩く湾曲形成されている。アウタパネル11の上部は車室内側へ延びており、その上端部は上方に延びている。このアウタパネル11には、図2に示すように、後述するラッチ装置63を車室外側から操作するためのアウタハンドル12が設けられている。このアウタハンドル12とラッチ装置63とは、図示しないが、アウタハンドル12の操作力をラッチ装置63に伝達する連結ロッドにより連結されている。
図6に示すように、上記インナパネル10の略中央部には開口部13が形成されている。インナパネル10の前側部及び後側部には、図1に示すように、アウタパネル11側へ延びる前側壁部14及び後側壁部15がそれぞれ設けられ、これら前側壁部14の先端部及び後側壁部15の先端部は、上下方向に延びるように形成されている。インナパネル10の下部には、アウタパネル11側へ延びる下側壁部16が設けられ、この下側壁部16の先端部は前後方向に延びるように形成されている。
インナパネル10の開口部13よりも上側には、図6にも示すように、アウタパネル11に接合される接合部20が設けられている。接合部20は、図1に示すように、前側ウインドガラスG1のアウタパネル11側へ廻り込むように成形されており、前側壁部14よりも後側の部位からアウタパネル11側へ延びる前側構成部22と、後側壁部15よりも前側の部位からアウタパネル11側へ延びる後側構成部23と、上記前側構成部22の先端部から後側構成部23の先端部まで延びる中間構成部24とを備えている。これら前側構成部22、後側構成部23及び中間構成部24は一体成形されている。また、インナパネル10の前側壁部14と前側構成部22との間及び後側壁部15と後側構成部23との間は、それぞれ上下方向に延びている。
上記前側構成部22は、アウタパネル11側へ行くほど後側に位置するように傾斜して延びており、また、後側構成部23は、アウタパネル11側へ行くほど前側に位置するように傾斜して延びている。図5に示すように、中間構成部24の上端部は、上記アウタパネル11の上端部に沿うように上下方向に延びている。中間構成部24の上下方向中間部には、アウタパネル11側へ膨出する膨出部25が形成されている。中間構成部24の膨出部25よりも上側には、図7(b)に示すように、前側ウインドガラスG1の車室外面に摺接する摺接部材としての外側モール26が取り付けられる矩形の取付孔27が前後方向に間隔をあけて複数設けられている。取付孔27の形成箇所は、中間構成部24の上縁部よりも車室内側に位置している。上記取付孔27に上記外側モール26の突起部26aが嵌入するようになっている。
上記取付孔27は、インナパネル10の形状を成形した後に形成されるようになっている。従って、取付孔27を形成した後にインナパネル10の形状を成形する場合に比べて、取付孔27の位置精度を向上させることが可能になる。
中間構成部24の膨出部25よりも下側は、図5に示すように、アウタパネル11側へ延びた後、該アウタパネル11の車室内側面から僅かに離れた状態で該車室内側面と略平行に延びるように形成されている。中間構成部24の下端部には、アウタパネル11の車室内側面から離れるように湾曲した湾曲部28が形成されている。
図6に示すように、インナパネル10の下部及び上下方向中間部には、前後方向に延びる下部補強部材30及び中間補強部材31が設けられている。該下部補強部材30の前端部は、補強板32を介してインナパネル10の前側壁部14近傍に固定され、後端部は、補強板32を介してインナパネル10の後側壁部15近傍に固定されている。中間補強部材31の前端部及び後端部も、インナパネル10の前側壁部14近傍及び後側壁部15近傍にそれぞれ固定されている。また、インナパネル10の前側壁部14の上部には、車室外側面に上部補強部材33が固定されている。
上記インナパネル10の前側壁部14、後側壁部15及び下側壁部16の先端部は、アウタパネル11の対応する縁部にヘミング加工により接合されるようになっている。また、インナパネル10の接合部20の上部における前側ウインドガラスG1に対応する部分は、上記アウタパネル11の上端部にスポット溶接により接合されるようになっている。さらに、図1及び図5に示すように、インナパネル10の接合部20の下部とアウタパネル11の車室内側面との間には、前後方向に離れた複数箇所に充填材35が設けられている。この充填材35は、従来より車両用ドア等の製造現場で用いられているものであり、この充填材35により接合部20とアウタパネル11とが接合されるようになっている。つまり、上記インナパネル10の接合部20の上部及び下部がアウタパネル11の車室内側面に接合されることにより、図5に示すように、該接合部20とアウタパネル11との間には閉断面が形成される。また、インナパネル10の接合部20がアウタパネル11に接合されることにより、図1に示すように、インナパネル10の前側壁部14、前部構成部22及びアウタパネル11により閉断面が形成され、さらに、インナパネル10の後側壁部15、後側構成部23及びアウタパネル11により閉断面が形成される。
図3及び図8に示すように、上記モジュールプレート6の下半部は、インナパネル10の開口部13よりも大きく形成されて該開口部13を覆うように延びており、上半部は、サッシュ5の車室内側を構成するように形成されている。モジュールプレート6は、例えばポリプロピレンにグラスファイバーを混合した樹脂材を射出成形して得られたものである。モジュールプレート6の上下方向略中央部には、図1にも示すように、インナパネル10の前側壁部14及び後側壁部15に沿って延びるように形成された前側固定部36及び後側固定部37が設けられている。後側固定部37には、上下方向に延びる補強板39がインサート成形されている。上記前側固定部36及び後側固定部37は、例えばボルト等の締結具38を用いて前側壁部14及び後側壁部15にそれぞれ固定されるようになっている。また、図示しないが、モジュールプレート6の下端部近傍もインナパネル10に固定されるようになっている。
図10に示すように、上記後側固定部37の下半部は、インナパネル10の後側壁部15から後側へ離れるように形成されており、これら後側固定部37の下半部とインナパネル10の後側壁部15との間には、ラッチ装置63を配設するためのスペースが確保されるようになっている。そして、この後側固定部37の下半部には、ラッチ装置63が取り付けられるラッチ装置取付部34が設けられている。ラッチ装置63は、例えば締結具等(図示せず)により、ラッチ装置取付部34に取り付けられている。
また、図3に示すように、モジュールプレート6の車室内側面には、上記ラッチ装置63を車室内側から操作するためのインナハンドル17が組み付けられている。このインナハンドル17とラッチ装置63とは、インナハンドル17の操作力をラッチ装置63に伝達する連結部材としての連結ワイヤ18により連結されている。この連結ワイヤ18はモジュールプレート6に組み付けられている。
モジュールプレート6の車室外側面には、前側ウインドガラスG1の前後両縁部を支持するレール40が設けられている。このレール40はモジュールプレート6の上端部近傍まで延びており、該モジュールプレート6と一体成形されている。また、モジュールプレート6には、前側ウインドガラスG1を昇降させる昇降装置41が設けられている。この昇降装置41は、上下方向に延びるガイド部材41aや電動モータ41b等を備えており、ガイド部材41aがモジュールプレート6の車室外側面に締結具等(図示せず)により固定され、電動モータ41bがモジュールプレート6の車室内側面に同様に固定されている。上記前側ウインドガラスG1の下端部は上記昇降装置41に連結されている。つまり、モジュールプレート6には、ラッチ装置63、インナハンドル17及び連結ワイヤ18からなるラッチ系モジュールと、前側ウインドガラスG1及び昇降装置41からなる昇降系モジュールとが組み付けられるようになっている。
そして、上記昇降装置41の作動により、前側ウインドガラスG1が上昇端まで上昇すると該ウインドガラスG1の周縁部がサッシュ5に保持された状態となり、一方、前側ウインドガラスG1が下降端まで下降すると該ウインドガラスG1の大部分がインナパネル10の開口部13の内方に位置する状態となる。
モジュールプレート6の上半部には、図8に示すように、該モジュールプレート6の前部で上下方向に延びる前辺部43と、前後方向中間部で上下方向に延びる中間辺部44と、後部で上下方向に延びる後辺部45と、これら3つの辺部43、44、45の上端部を連結するように前後方向に延びる上辺部46とが形成されている。これら前辺部43、中間辺部44、後辺部45及び上辺部46がサッシュ構成部5aである。
一方、サッシュアウタ部材7は、図11に示すように、例えばポリカーボネート等の樹脂材を射出成形して得られたものであり、上記モジュールプレート6の前辺部43、中間辺部44、後辺部45及び上辺部46にそれぞれ接合される前辺部50、中間辺部51、後辺部52及び上辺部53を備えている。中間辺部51の下端部と後辺部52の下端部とは連結されている。図12に一部を示すように、上記モジュールプレート6の前辺部43、中間辺部44、後辺部45及び上辺部46と、サッシュアウタ部材7の前辺部50、中間辺部51、後辺部52及び上辺部53とは、接着剤55によりそれぞれ接着されている。この接着剤55としては例えばウレタン系のものを用いることができる。上記中間辺部44、51と後辺部45、52との間には、上記後側ウインドガラスG2が設けられている。この後側ウインドガラスG2は、図13にも示すように、固定式のものである。図13における符号58は、後側ウインドガラスG2の車室外面に接触する外側モールである。また、図12における符号59は前側ウインドガラスG1の後縁部に摺接するシール部材である。尚、インナパネル10の接合部20の上部における後側ウインドガラスG2に対応する部分は、図13に示すように、アウタパネル11にヘミング加工により接合されるようになっている。
上記ドア本体4の車室内側には、図5及び図13に示すように、インナパネル10及びモジュールプレート6の下半部を覆うドアトリム56が設けられている。このドアトリム56の上端部には、前側ウインドガラスG1の車室内面に摺接する内側モール57が設けられている。
また、図3に示すように、スライドドア1には、該スライドドア1の開閉時に車両側に配設されたガイドレール(図示せず)を転動するローラを備えるアッパローラ装置60、ロアローラ装置61及びセンタローラ装置62が設けられている。アッパローラ装置60は、サッシュ5の前部上端近傍に固定され、また、ロアローラ装置61は、インナパネル10の前部下端近傍に固定されている。センタローラ装置62は、モジュールプレート6の後部の上下方向略中央部に固定されている。
また、上記ラッチ装置63は、車体側のストライカ(図示せず)に係合してスライドドア1が閉状態で保持されるようになっている。このラッチ装置63とストライカとが係合した状態では、これらラッチ装置63及びストライカと、上記アッパローラ装置60、ロアローラ装置61及びセンタローラ装置62とによりスライドドア1の各部が車室内外方向にずれないようになっている。
次に、上記のように構成されたスライドドア1の製造要領について説明する。まず、インナパネル10とアウタパネル11とを接合してドア本体4を構成する。このとき、図5及び図13に示すように、インナパネル10の接合部20がアウタパネル11に接合されて、アウタパネル11がインナパネル10により補強される。これにより、インナパネル10を前側ウインドガラスG1のアウタパネル11側へ廻り込むように成形するという簡単な構造でアウタパネル11の剛性を確保することが可能になる。
さらに、インナパネル10の接合部20とアウタパネル11とを接合することで、インナパネル10の取付孔27周りが補強されることになる。これにより、外側モール26の取付時に該外側モール26の突起部26aを取付孔27に押し付けて嵌入させる際、取付孔27の変位が抑制されて、外側モール26の取付作業が容易になるとともに、外側モール26を所期の位置に確実に取り付けることが可能になる。このようにして構成されたドア本体4は、車両の組み立てラインにおいて車両に取り付ける。
一方、サブ組み立てラインや別の工場において、モジュールプレート6にサッシュアウタ部材7を接着して後側ウインドガラスG2を組み付けるとともに、図9に示すように、昇降装置41を組み付けてモジュール化しておく。このモジュールプレート6には、前側ウインドガラスG1も組み付けておく。該前側ウインドガラスG1を組み付ける際には、該ウインドガラスG1の前後両縁部をモジュールプレート6のレール40内に配置した後、下端部を昇降装置41に連結する。さらに、このモジュールプレート6には、インナハンドル17、連結ワイヤ18及びラッチ装置63を組み付けておく。
このようにドア本体4に組み付ける前のモジュールプレート6に、前側ウインドガラスG1、昇降装置41、インナハンドル17、連結ワイヤ18及びラッチ装置63を組み付けることが可能になるので、これらの組み付け作業を広い空間で行うことが可能になり、組み付け作業性が向上する。このモジュールプレート6に上記インナハンドル17、連結ワイヤ18及びラッチ装置63を組み付けておくことで、後述する車両の組み立てラインでドア本体4に組み付ける部品点数をより一層削減することができる。
その後、モジュールプレート6を車両の組み立てラインに搬送して、図3に示すように、ドア本体4にインナパネル10側から組み付ける。このとき、インナパネル10の接合部20がアウタパネル11側へ廻り込むように成形されて前側ウインドガラスG1や昇降装置41を回避する形状をなしているので、インナパネル10が邪魔になることはない。このため、モジュールプレート6をドア本体4のインナパネル10側から容易に組み付けることが可能になる。また、前側ウインドガラスG1をモジュールプレート6に予め組み付けているので、車両の組み立てラインにおいて前側ウインドガラスG1をドア本体4に組み付ける工程が不要になる。
そして、モジュールプレート6の前側固定部36及び後側固定部37をインナパネル10に固定した後、ドアトリム56をインナパネル10側から組み付けることで、スライドドア1が完成する。
以上説明したように、ドア本体4のインナパネル10の接合部20を前側ウインドガラスG1のアウタパネル11側へ廻り込むように成形したので、前側ウインドガラスG1や昇降装置41等が組み付けられたモジュールプレート6をインナパネル10側からドア本体4に容易に組み付けることができる。これにより、車両の組み立てラインにおいて前側ウインドガラスG1を組み付ける工程を不要にすることができて、車両の組み立てラインにおけるスライドドア1の製造工数を削減することができる。そして、上記のように成形したインナパネル10の接合部20をアウタパネル11に接合して該アウタパネル11の剛性を確保するようにしたので、簡単な構造で、かつベルトラインレインフォースメント等の補強部材を配設することなく、アウタパネル11の意匠面に張り感を得ることができて、スライドドア1の商品性を向上させることができる。
また、そのようにインナパネル10の接合部20でアウタパネル11を補強するようにしたので、インナパネル20を有効に活用することができて、スライドドア1を軽量にすることができる。
また、この実施形態では、インナパネル10に外側モール26の取付孔27を設けたので、アウタパネル11には取付孔を設けなくてもよくなる。すなわち、アウタパネル11は自動車2の意匠面を構成する部材であるため、このアウタパネル11に外側モール26の取付孔27を設ける場合には、意匠面を構成する部分からドア本体4の内側へ折り返したフランジに設ける必要がある。上記のようにインナパネル10に取付孔27を設けることで、アウタパネル11のフランジが不要になり、その結果、アウタパネル11の材料を削減することが可能になるとともに、フランジの成形による意匠面への影響がなくなる分、アウタパネル11を成形する成形型の設計工数を削減することが可能になる。これにより、外側モール26の取付孔をアウタパネル11に設ける場合に比べて、スライドドア1の製造コストを低減することができる。
また、インナパネル10の接合部20の上部をアウタパネル11の上部にスポット溶接するとともに、インナパネル10の接合部20の下部を充填材5によりアウタパネル11に接合したので、アウタパネル11の上部の剛性を十分に得ることができる。
また、モジュールプレート6をインナパネル10の前側壁部14及び後側壁部15に固定するようにしたので、インナパネル10の両側壁部14、15がモジュールプレート6で連結された状態となる。これにより、インナパネル10の剛性が向上するので、ドア本体4を高剛性にすることができる。
また、モジュールプレート6にサッシュ構成部5aを一体成形したので、サッシュ構成部5aをウインドガラスG1、G2及び昇降装置41等と同時にドア本体4に組み付けることができる。
また、インナハンドル17、連結ワイヤ18及びラッチ装置63をモジュールプレート6に組み付けることができるようにしたので、車両の組み立てラインにおけるスライドドア1の製造工数をより一層削減することができる。
尚、上記実施形態では、本発明をスライドドア1に適用した場合について説明したが、本発明は、スライドドア1以外にも、例えばヒンジを介して車両に取り付けられた前部ドア3等にも適用することができる。
また、上記実施形態では、モジュールプレート6の上部にサッシュ構成部5aを設けているが、モジュールプレート6の形状はこれに限られるものではなく、サッシュ構成部を省略した形状としてもよい。
また、上記実施形態では、インナパネル10の接合部20の上部をアウタパネル11の上端部にスポット溶接により接合するようにしているが、これに限らず、インナパネル10の接合部20の上部とアウタパネル11の上端部とは、例えば、レーザ溶接や、カシメ等の接合方法により接合するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、サブ組み立てラインや別の工場において、インナハンドル17、連結ワイヤ18及びラッチ装置63をモジュールプレート6に組み付けるようにしているが、これらインナハンドル17、連結ワイヤ18及びラッチ装置63は、車両の組み立てラインにおいてドア本体4に組み付けるようにしてもよい。