JP2006297391A - スライム防除方法及びスライム防除剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】冷却水系に次亜塩素酸ナトリウムからなる酸化性抗菌剤を添加して冷却水系を運転して、スライム付着が発生したときに、イソチアゾロン化合物を添加することを特徴とする冷却水系のスライム防除方法。
【選択図】なし
Description
そこで、このようなスライムによる障害を防止するために、種々の抗菌剤、例えば、次亜塩素酸などの酸化性抗菌剤などが用いられている。しかし、冷却水の高度利用がさらに進んだ場合には、スライムによる障害が激しくなり、抗菌剤の必要添加濃度が上昇する。しかし、酸化性抗菌剤の場合は、金属腐食を生ずる危険性が増すので、添加濃度を増加する余地はほとんどない。さらに、酸化性抗菌剤は、酸化力が強くスライムに対する浸透力に乏しいために、いったんスライム障害が発生すると、その進行を阻止することは極めて困難である。一方、有機系抗菌剤の場合は、酸化力がないか又は極めて低く、スライムに対する浸透力が強いために、いったんスライム障害が発生した場合でもその進行を阻止することは比較的容易である。しかし、選定する薬剤によって、細菌、黴、藻類などのスライムの構成要素に対して有効なスペクトルが異なる。また、素材コストが酸化性抗菌剤と比較して遥かに高価なために、処理コストの大幅な増加を伴う。
このために、スライム障害の激しい条件においても、細菌、黴、藻類などのあらゆるスライムの構成要素に対して有効であり、低コストでスライムを防除することができるスライム防除方法及び防除剤が求められている。
すなわち、本発明は、
(1)冷却水系に次亜塩素酸ナトリウムからなる酸化性抗菌剤を添加して冷却水系を運転して、スライム付着が発生したときに、イソチアゾロン化合物を添加することを特徴とする冷却水系のスライム防除方法、
(2)第(1)項記載の冷却水系のスライム防除方法に用いる冷却水系用スライム防除剤であって、次亜塩素酸ナトリウムからなる酸化性抗菌剤と、イソチアゾロン化合物が分離された2剤型であることを特徴とする冷却水系用スライム防除剤、及び、
(3)次亜塩素酸ナトリウムからなる酸化性抗菌剤と、イソチアゾロン化合物を、イソチアゾロン化合物の添加濃度10μg/L〜1000mg/Lとして、次亜塩素酸ナトリウムからなる酸化性抗菌剤の残留濃度が1μg/L〜10mg/Lとなるように添加することを特徴とする第(1)項記載の冷却水系のスライム防除方法、
を提供するものである。
さらに、本発明の好ましい態様として、
(4)イソチアゾロン化合物とともに、ブロモニトロ化合物を添加する第(1)項記載の
冷却水系のスライム防除方法、
(5)イソチアゾロン化合物とブロモニトロ化合物の合計濃度が10μg/L〜1000mg/Lである第(4)項記載の冷却水系のスライム防除方法、及び、
(6)イソチアゾロン化合物とブロモニトロ化合物の比率が、1:20〜20:1(重量比)である第(4)項記載の冷却水系のスライム防除方法、
を挙げることができる。
本発明に用いる酸化性抗菌剤に特に制限はなく、例えば、塩素ガス、次亜塩素酸ナトリウム、塩素化イソシアヌル酸などの塩素剤、ジブロモヒダントイン、ブロモクロロヒダントインなどの臭素剤、過ヨウ素酸カリウム、メタ過ヨウ素酸ナトリウム、パラ過ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素、ヨウ素酸カリウムなどのヨウ素剤、過酸化水素、オゾンなどを挙げることができる。これらの酸化性抗菌剤は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。酸化性抗菌剤の添加方法に特に制限はなく、例えば、冷却水系に連続的に注入することができ、間欠的に注入することもできる。酸化性抗菌剤の添加量に特に制限はなく、冷却水系の水質、用途などに応じて適宜選択することができるが、通常は残留濃度として1μg/L〜10mg/Lであることが好ましい。
本発明に用いるイソチアゾロン化合物としては、一般式[1]で表される化合物を挙げることができる。
酸化性抗菌剤のみを用いてスライムを防除しようとすると、酸化性抗菌剤を高濃度に添加する必要が生ずる場合があるが、酸化性抗菌剤を高濃度に添加すると、冷却水系の配管の金属部分に腐食を生ずるおそれがある。酸化性抗菌剤とイソチアゾロン化合物を併用することにより、少ない薬剤の添加量で効果的にスライム付着を防止し、あるいは、いったん発生したスライムの付着量を減少することもできるので、腐食発生のおそれなくスライムを防除することができる。酸化性抗菌剤は、スライムに対する浸透性に乏しいので、いったん発生したスライム付着を減少する効果はほとんどないが、イソチアゾロン化合物はスライムに対する浸透性を有するので、いったん発生したスライム付着をも減少させることができる。
一般式[2]で表されるブロモニトロ化合物としては、例えば、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、3,3−ジブロモ−3−ニトロプロパノール、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2−ブロモ−2−ニトロブタン−1,4−ジオール、2−ブロモ−2−ニトロペンタン−1,5−ジオール、3−ブロモ−3−ニトロペンタン−2,4−ジオール、3−ブロモ−3−ニトロペンタン−1、5−ジオール、2−ブロモ−2−ニトロヘキサン−1,6−ジオール、3−ブロモ−3−ニトロヘキサン−1,6−ジオール、2−ブロモ−2−ニトロヘプタン−1,7−ジオール、3−ブロモ−3−ニトロヘプタン−1,7−ジオール、4−ブロモ−4−ニトロヘプタン−1,7−ジオールなどを挙げることができる。一般式[3]で表されるブロモニトロ化合物としては、例えば、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−アセトキシエタン、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−アセトシキプロパンなどを挙げることができる。これらのブロモニトロ化合物は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明方法において、ブロモニトロ化合物の添加方法に特に制限はなく、例えば、酸化性抗菌剤及びイソチアゾロン化合物とともに連続的又は間欠的に添加することができ、あるいは、常時は酸化性抗菌剤のみを添加してスライム付着を防止している冷却水系に、スライム付着が発生したときにイソチアゾロン化合物とともに添加することもできる。ブロモニトロ化合物の添加量に特に制限はなく、冷却水系の水質、用途などに応じて適宜選択することができるが、通常はイソチアゾロン化合物とブロモニトロ化合物の合計添加濃度が、10μg/L〜1,000mg/Lであることが好ましい。また、イソチアゾロン化合物とブロモニトロ化合物の比率は、1:20〜20:1(重量比)であることが好ましく、1:2〜5:1(重量比)であることがより好ましい。イソチアゾロン化合物とブロモニトロ化合物を併用することにより、有機系抗菌剤としてイソチアゾロン化合物のみを用いた場合に比べて、同一の薬剤添加濃度でより優れたスライム防除効果を発現させることができる。
本発明によれば、酸化性抗菌剤とイソチアゾロン化合物、又は、酸化性抗菌剤とイソチアゾロン化合物とブロモニトロ化合物を用いることによりこれらの薬剤の効果が相乗的に発揮され、その結果、処理コスト対スライム防除効果が著しく向上する。イソチアゾロン化合物又はイソチアゾロン化合物とブロモニトロ化合物のみを用いてスライムを防除するためには、比較的高濃度の添加が必要であり、また、長期間にわたってこのような有機系抗菌剤を使用していると、スライム生成要因となる微生物に耐性がつき、スライム防除効果が低下し、さらに添加量を増やす必要が生ずる。酸化性抗菌剤とイソチアゾロン化合物又は酸化性抗菌剤とイソチアゾロン化合物とブロモニトロ化合物を併用することにより、これらの薬剤の相乗効果によりそれぞれの添加量を低減することができる。しかも、酸化性抗菌剤によっては微生物の耐性がつきにくく、また、いったんスライムが付着してもイソチアゾロン化合物とブロモニトロ化合物はスライムへの浸透性がよいので、それぞれの薬剤の添加量を増大することなくスライム防除効果が持続する。
参考例
図1は、本参考例及び実施例に使用した試験装置の斜視図である。保有水量30Lの循環タンク1の上に、透明アクリル樹脂製のモデル冷却塔2を載置し、冷却塔下部に取り外し可能な寸法300mm×150mm×10mmのラワン材製のテストボード3を取り付けた。
循環タンクに脱塩素した市水を0.5L/時で補給して、オーバーブローにて水を排出した。藻類を含んだスライムを付着させるために、テストボードには常に光があたるようにした。ポンプ4を用いて水を毎分1Lの速度で循環用の配管を通じ、モデル冷却塔の散水板5に導いた。散水板に開けられた孔から水をテストボードに落下させ、テストボードに落下した水は、パイプ6を通じて循環タンクに戻した。循環用の配管の途中には、直径15mm、長さ300mmのSUS306製のスライム評価用のテスト短管7と、内部にSPCC製の腐食測定用のテストピースを設置した腐食測定用カラム8を取り付けた。循環タンクの水温は、30℃に維持した。
スライムの繁殖を促進するために、栄養源として滅菌した液体培地(Glucose 10g:Polypepton 10g/L)を1mL/minで連続供給した。試験開始時に、工場現場冷却塔から採取したズーグレアと珪藻を主成分とするスライム500mL(乾燥重量10g相当)を投入した。
酸化性抗菌剤として、次亜塩素酸ナトリウムを残留塩素濃度が1mg−Cl2/Lとなるように連続的に供給した。また、イソチアゾロン化合物として、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)を、ブロモニトロ化合物として、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(BNP)を、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールの重量比が1:0、20:1、10:1、5:1、2:1、1:1、1:2、1:5、1:10又は1:20で、合計添加濃度がブロー水量あたり2mg/Lになるように連続的に添加した。さらに、すべての試験でホスホン酸系防食剤を、全リン酸濃度が5mg/Lに維持されるように連続的に供給した。
試験期間1カ月で、テスト短管及びテストボードを取り外し、テスト短管の管壁及びテストボードの上面に付着しているスライムを全量採取し、60℃で1日間乾燥したのち重量を測定した。腐食測定用のテストピースは、脱錆したのち重量を測定し、腐食減量より腐食速度(mdd:mg/dm2/day)を求めた。
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンのみを添加し、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールを添加しなかったとき、スライム付着量は、テスト短管が33mg、テストボードが211mgであり、腐食速度は、2.1mddであった。5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールの重量比が、5:1、1:1及び1:5のとき、スライム付着量は、テスト短管が5mg以下、5mg以下及び8mg、テストボードが7mg、8mg及び90mgであり、腐食速度は、2.6mdd、1.7mdd及び1.6mddであった。
次亜塩素酸ナトリウム、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン及び2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールを添加することなく、ホスホン酸系防食剤のみを供給して、参考例と同じ試験を行った。
スライム付着量は、テスト短管が308mg、テストボードが2,166mgであり、腐食速度は、4.5mddであった。また、付着したスライムを検鏡したところ、テスト短管、テストボードともに、緑藻類、珪藻類、藍藻類が認められ、藻類を含むスライムであることが確認された。
比較例2
次亜塩素酸ナトリウムを残留塩素濃度が1mg−Cl2/Lとなるように連続的に供給し、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールは添加することなく、ホスホン酸系防食剤を供給して、参考例と同じ試験を行った。
スライム付着量は、テスト短管が143mg、テストボードが1,655mgであり、腐食速度は、2.3mddであった。
比較例3
次亜塩素酸ナトリウムの供給量を、残留塩素濃度が2mg−Cl2/Lとなるように増量した以外は、比較例1と同様にして試験を行った。
スライム付着量は、テスト短管、テストボードともに5mg以下であったが、腐食速度は、21.1mddであった。
比較例4
次亜塩素酸ナトリウムを供給することなく、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを添加濃度がブロー水量あたり2mg/Lになるように連続的に添加し、ホスホン酸系防食剤を、全リン酸濃度が5mg/Lに維持されるように連続的に供給して、参考例と同じ試験を行った。
スライム付着量は、テスト短管が151mg、テストボードが1,334mgであり、腐食速度は、1.3mddであった。
比較例5
次亜塩素酸ナトリウムを供給することなく、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールを添加濃度がブロー水量あたり2mg/Lになるように連続的に添加し、ホスホン酸系防食剤を、全リン酸濃度が5mg/Lに維持されるように連続的に供給して、参考例と同じ試験を行った。
スライム付着量は、テスト短管が288mg、テストボードが2,012mgであり、腐食速度は、1.7mddであった。
参考例及び比較例1〜5の結果を、第1表に示す。
これに対して、次亜塩素酸ナトリウムのみを残留塩素濃度が1mg−Cl2/Lとなるように供給した比較例2では、スライム付着量は抗菌剤を添加しない比較例1の2/3ないし1/2にしか減少しない。また、残留塩素濃度を2mg−Cl2/Lに高めた比較例3では、スライムの付着は抑制されているが、腐食速度が著しく大きくなり、実用には供しがたい。
一方、次亜塩素酸ナトリウムを供給することなく、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンのみを添加した比較例4では、スライム付着量は抗菌剤を添加しない比較例1の2/3ないし1/2にしか減少せず、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールのみを添加した比較例5では、スライム付着量は抗菌剤を添加しない比較例1とほとんど差がない。
これらの結果から、次亜塩素酸ナトリウムと5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、又は、次亜塩素酸ナトリウムと5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールを添加することにより、次亜塩素酸ナトリウムとこれらの有機系抗菌剤の間に相乗効果が発現して、優れたスライム防除効果が得られることが分かる。
実施例1
参考例と同じ試験装置を用い、比較例2と同様にして、次亜塩素酸ナトリウムを残留塩素濃度が1mg−Cl2/Lとなるように連続的に供給し、ホスホン酸系防食剤を、全リン酸濃度が5mg/Lに維持されるように連続的に供給して、30日間試験を継続した。30日目のテストボードのスライム付着状態を目視により観察したところ、比較例2の30日目のスライム付着状態とほぼ同じであった。
31日目より、残留塩素濃度1mg−Cl2/Lを維持したまま、さらに5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを添加濃度がブロー水量あたり5mg/Lになるように連続的に添加し、60日目まで試験を継続した。この間、テストボードに付着したスライムは次第に減少していった。60日目にテスト短管及びテストボードを取り外し、テスト短管の管壁及びテストボードの上面に付着しているスライムを全量採取し、60℃で1日間乾燥したのち重量を測定した。スライム付着量は、テスト短管が5mg以下、テストボードが188mgであった。
比較例6
31日目より、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを添加する代わりに、次亜塩素酸ナトリウムの供給量を増して残留塩素濃度を2mg/Lとした以外は、実施例1と同じ試験を行った。
60日目のスライム付着量は、テスト短管が365mg、テストボードが2,874mgであった。
比較例7
31日目より、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを添加する代わりに、次亜塩素酸ナトリウムの供給量を増して残留塩素濃度を5mg/Lとした以外は、実施例1と同じ試験を行った。
60日目のスライム付着量は、テスト短管が322mg、テストボードが2,129mgであった。
実施例1及び比較例6〜7の結果を、第2表に示す。
これに対して、スライム付着後に残留塩素濃度を増大した比較例6と比較例7では、スライム付着量の減少は認められない。これは、塩素にはスライムへの浸透性がないためと考えられる。また、比較例3の結果から推察されるように、残留塩素濃度の増大は腐食速度を速めることからも好ましくない。
2 モデル冷却塔
3 テストボード
4 ポンプ
5 散水板
6 パイプ
7 テスト短管
8 腐食測定用カラム
Claims (3)
- 冷却水系に次亜塩素酸ナトリウムからなる酸化性抗菌剤を添加して冷却水系を運転して、スライム付着が発生したときに、イソチアゾロン化合物を添加することを特徴とする冷却水系のスライム防除方法。
- 請求項1記載の冷却水系のスライム防除方法に用いる冷却水系用スライム防除剤であって、次亜塩素酸ナトリウムからなる酸化性抗菌剤と、イソチアゾロン化合物が分離された2剤型であることを特徴とする冷却水系用スライム防除剤。
- 次亜塩素酸ナトリウムからなる酸化性抗菌剤と、イソチアゾロン化合物を、イソチアゾロン化合物の添加濃度10μg/L〜1000mg/Lとして、次亜塩素酸ナトリウムからなる酸化性抗菌剤の残留濃度が1μg/L〜10mg/Lとなるように添加することを特徴とする請求項1記載の冷却水系のスライム防除方法。
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