JP2006296358A - セルラーゼの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 天然セルロース系物質からセロオリゴ糖を短時間、かつ選択的に、高収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】 β−グルコシダーゼ活性と結晶セルロース分解活性の活性比(β−グルコシダーゼ活性/結晶セルロース分解活性)が0.35以下であるセルラーゼの製造方法、及び該セルラーゼの存在下で酵素分解することを特徴とするセロオリゴ糖の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、β−グルコシダーゼ活性の混入が低いセルラーゼを特別な精製工程を経ずに簡便に得るセルラーゼの製造方法に関する。さらに、β−グルコシダーゼ活性の混入が低いセルラーゼを使用し、セロオリゴ糖を選択的に高収率で生産するセロオリゴ糖の製造方法に関する。
セロオリゴ糖は、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、セロヘキサオースの総称であり、グルコピラノース単位の1〜6個がβ−1,4結合した諸糖類である。
近年、セロオリゴ糖は、他のオリゴ糖と同様に、その生理機能が明らかになりつつあり、機能性食品の新素材として期待されている(非特許文献1参照)。
セロオリゴ糖を生産するに当たりセルロースの酵素分解反応系では、分解生成物として得られたセロオリゴ糖が、セルラーゼ中の酵素成分であるβ−グルコシダーゼにより、さらにグルコース単位へ分解されることで、セロオリゴ糖の収率が低下することが課題であった(非特許文献2参照)。
上記課題に絡み、従来、セルロース酵素分解時のセロオリゴ糖の収率向上を目的として多くの試みがなされてきた。
セルラーゼを使用し、セルロースを酵素分解することによりセロオリゴ糖を選択的に得る方法としては以下のものが挙げられる。
特許文献1には、非結晶性セルロースを多く含むセルロース原料を用い、セルラーゼによる加水分解反応をリグニンの存在下で行わせるとともに、加水分解反応により生成されるセロオリゴ糖のうち少なくともセロビオースを随時反応液から採取するセロオリゴ糖の製造方法が開示され、特許文献2には、天然リグノセルロースを含む原料を蒸解して蒸解後に乾燥を経ずに得られるウェットパルプを、セルラーゼにより部分加水分解してセロオリゴ糖のうち少なくともセロビオースを採取するセロオリゴ糖の製造方法が開示されている。
これらの製造方法は、セルラーゼに含まれるセロオリゴ糖分解酵素であるβ−グルコシダーゼをリグニンに吸着させ、β−グルコシダーゼの作用を抑止させることで、セロオリゴ糖のグルコースへの分解を抑制し、セロオリゴ糖の反応選択率を高められるものである。しかしながら、これらの製造方法では、得られる糖化液に多量のリグニンが含まれるため、結果としてセロオリゴ糖の収量が低くなる。また、高純度のセロオリゴ糖を得るには、糖化液からの脱リグニン処理が必要となるため精製工程が複雑となる問題があった。
特許文献3には、1〜20質量%のリグニンを含有するリグノセルロースをセルラーゼ及び白色腐朽菌等のリグニン分解菌とともに反応することで、セロオリゴ糖の1種であるセロビオースの製造方法が開示されている。この製造方法では、セルロースの脱リグニン処理を経ずに、セルラーゼの基質に対する作用を高めることができるが、その分解生成物にはセロビオース以外にリグニン分解物が混入するため、上記と同様にセロオリゴ糖の収量が低くなる。また、高純度のセロビオースを得るには、リグニン分解物の除去工程が必要となり、精製工程が複雑となるという問題があった。
また、特定のセルラーゼを使用し、セルロースを酵素分解することで、セロオリゴ糖の収率を向上させる方法としては、以下のものが挙げられる。
特許文献4には、セロビブリオ属に属する微生物が生産するセルラーゼの作用により、水性反応液中にてセルロース系物質からセロオリゴ糖を製造する方法において、限外ろ過反応器を組み合わせることにより生成物阻害を解除して、セロオリゴ糖を生成蓄積せしめるセロオリゴ糖の製造方法が開示されている。この方法によると、セルロース系物質の酵素分解による分解生成物として、セロビオース、セロトリオースのみからなるセロオリゴ糖が得られる。しかしながら、セロビブリオ属に属する微生物が生産する酵素は結晶性のセルロースには作用しにくく、反応時間を短縮し、収率を向上するためには基質として非晶質セルロースが必要であり、工程が複雑になるという問題があった。
特許文献5には、セルロースをセルラーゼで分解し、セロオリゴ糖を生成させる方法において、予めセルラーゼをpH3.5〜5.0に平衡化した弱酸性陽イオン交換樹脂に接触させることにより、セルラーゼ中のβ−グルコシダーゼを選択的に除去し、かかるβ−グルコシダーゼを除去したセルラーゼをセルロースに接触させるセロオリゴ糖の製造方法が開示されている。係る製造方法によると、セルロースの酵素分解により、グルコースを低減し、セロオリゴ糖が60%以上の分解生成物を得ることができる。しかしながら、該製造方法では、セルロース中のβ−グルコシダーゼを除去する工程が必要となり、セロオリゴ糖製造工程が複雑になるという問題があった。また、このセルラーゼ精製工程では、未処理セルラーゼに対し、75〜1000倍の陽イオン交換樹脂が必要となるため、セルラーゼ処理量が制限され、セロオリゴ糖の生産性が充分ではなく、セルラーゼ精製コスト、陽イオン交換樹脂の分離精製剤コストが高くなるという問題があった。
特許文献6には、セルロースエステルあるいは、セルロースエーテルエステルのいずれかまたは両方とセルラーゼを溶解し、一定時間保温した後、pHを変化させ、不溶化した固形画分と溶液とを分離することによりセルラーゼ中に含有されるβ−グルコシダーゼを選択的に除去するセルラーゼ精製方法、また、このβ−グルコシダーゼが除去されたセルラーゼとセルロースとを水性媒体中に添加して懸濁液とし、該懸濁液を一定時間保温して、該懸濁液中にセロビオースを生成せしめ、該セロビオースを採取するセロビオースの製造方法が開示されている。
特許文献7には、キトサンが可溶となるようにpHを調整してなる水性媒体中に、上記キトサンとセルラーゼを溶解し、一定時間保温した後、pHを変化させ、不溶化した固形画分と溶液とを分離することによりセルラーゼ中に含有されるβ−グルコシダーゼを選択的に除去するセルラーゼの精製方法、また、このβ−グルコシダーゼが除去されたセルラーゼとセルロースとを水性媒体中に添加して懸濁液とし、該懸濁液を一定時間保温して、該懸濁液中にセロビオースを生成せしめ、該セロビオースを採取するセロビオースの製造方法が開示されている。
これらの製造方法によると、セルラーゼをセルロース誘導体またはキトサンで吸着分離処理し、セルロース誘導体またはキトサンに吸着させた状態でセルロースと接触させることで、セロビオースの収率が向上する。しかしながら、この製造方法ではセルラーゼの精製処理が必要となるため、製造工程が複雑になり、セルラーゼ精製に使用するセルロース誘導体、キトサンが高価なためコスト高になる課題があった。また、セルラーゼをセルロース誘導体またはキトサンとともにセルロース酵素分解に用いるため、分解反応液から、それらを取り除く工程が必要になるという問題があった。
CelluloseCommunications,5,No2,91−97(1998) 「セルラーゼ」講談社サイエンティフィック発行、97−104(1987) 特開平05−317073号公報 特開平07−184678号公報 特開平08−089274号公報 特開平01−256394号公報 特開平05−115293号公報 特開平05−227957号公報 特開平05−227958号公報
本発明は、セルロース系物質を原料とし、セルラーゼ存在下で酵素分解することで、セロオリゴ糖を選択的に、高収率で生産する際に有用なセルラーゼを酵素の精製工程を経ることなしに簡便に得ることを目的とするセルラーゼの製造方法を提供する。
本発明者等は、セルラーゼ生産菌をpH制御下で培養することによりグルコシダーゼの副生を削減したセルラーゼの製造方法を見出した。さらに、セルラーゼ生産菌からβ−グルコシダーゼ活性の低い菌株を選択する方法を見出し、例えば、突然変異を誘発させ、変異体からβ−グルコシダーゼの副生が削減された株を取得することに成功した。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)セルラーゼ生産菌を培養して得られる培養液中の、β−グルコシダーゼ活性と結晶性セルロース分解活性の活性比(β−グルコシダーゼ活性/結晶性セルロース分解活性)が0.35以下であることを特徴するセルラーゼの製造方法。
(2)セルラーゼ生産菌が、β−グルコシダーゼの生産が抑制された株を選択することにより得られる菌株であることを特徴とする上記(1)のセルラーゼの製造方法。
(3)るセルラーゼ生産菌の培養が、培養液中のpHをpH3.5未満に制御することを特徴とする上記(1)のセルラーゼの製造方法。
(4)セルラーゼ生産菌がトリコデルマ(Trichoderma )属に属する菌株であることを特徴とする上記(1)〜(3)のセルラーゼの製造方法。
(5)上記(1)〜(4)に記載したセルラーゼ溶液を使用し、セルロースを酵素分解することを特徴とするセロオリゴ糖の製造方法。
本発明により、セルロース系物質の酵素分解によりセロオリゴ糖を製造する方法において、セロオリゴ糖を選択的に、高収率で製造することができる。
本発明のセルラーゼとは、セルロースを分解する酵素の総称であり、セルロースの分解活性を有していれば、本発明でいうセルラーゼに含まれる。セルラーゼ生産菌としては、例えば、公知のセルラーゼを生産する微生物である、トリコデルマ(Tricoderma)属、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、バチルス(Bacillus)属等に属する微生物を挙げることができる。
本発明で得られるセルラーゼは、β−グルコシダーゼ活性とセルロース分解活性の活性比(β−グルコシダーゼ活性/結晶性セルロース分解活性)が0.35以下であり、より好ましくは0.30以下であり、さらに好ましくは0.25以下である。ここでいう活性比は、セルラーゼの結晶性セルロース分解能と、セロビオースの分解能(β−グルコシダーゼ)の比で表される。該活性比が小さければ小さいほど、オリゴ糖分解能が低く、オリゴ糖の生産性、選択性が向上するため好ましく、その下限は特に制限されないが、容易に達成させる活性比の範囲としては0.01以上である。
該酵素の活性測定法は次に示す方法で測定することができる。
(1)結晶セルロース分解活性
50mM酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH5)に懸濁した5質量%の結晶性セルロース(旭化成ケミカルズ製、商品名:セオラスPH−101を水分60%として、三英製作所製、商品名:万能攪拌混合機でフック羽根により、90分間、126rpmで混練攪拌したもの)の基質液0.4mlに適当に希釈した酵素液を0.1ml添加し、40℃水浴中で4時間反応後、95℃で10分間加熱して反応を停止させ、反応液中のグルコース濃度をHPLC法で定量する。1分間に遊離するグルコース及びセロオリゴ糖の総量が1μmoleである酵素量を1酵素単位(1U)と定義する。
(2)β−グルコシダーゼ活性
50mM酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH5)に溶解した2.5質量%のセロビオース(Aldrich製:特級グレード)の基質液0.4mlに酵素液を0.1ml添加し、40℃水浴中で4時間反応後、100℃で10分間加熱し反応を停止し、反応液中のグルコース濃度をHPLC法で定量する。1分間に1μmoleのグルコースを遊離する酵素量を1酵素単位(1U)と定義する。
上述の各種活性測定法において、反応液中のセロオリゴ糖、グルコースの定量は、高速液体クロマトグラフィー(カラム:島津製作所製、商品名:Asahipak NH2 P−50、高速液体クロマトグラフィー:島津製作所製、商品名SCL−10A型、移動層:アセトニトリル/水=75/25(容積比)循環量:1ml/min.試料液:10μl)でできる。
(β−グルコシダーゼ活性/結晶性セルロース分解活性)比が低い菌株は、例えば、次の方法で得られる。
セルラーゼ生産能を有する微生物を、必要であれば紫外線照射やニトロソグアニジンのような変異誘発剤の使用など、公知の変異誘導処理し、それらの菌株から(β−グルコシダーゼ活性/結晶性セルロース分解活性)比が低い菌株を選ぶ。変異誘導処理に用いる微生物としては、例えば、親株としてTrichoderma reesei NBRC31329を用い、ポテトデキストロース寒天斜面培地上で28℃、3〜10日間培養する。生成した胞子を生理的食塩水に105 〜108 個/mlになるよう懸濁し、EMS(ethyl methane slfonate)で変異処理を施す(100〜500μg/ml、pH7.0、28℃、5〜24時間)。
(β−グルコシダーゼ活性/結晶性セルロース分解活性)比が低い菌株の選択は、この変異誘発処理胞子の懸濁液から遠心分離により胞子を集め、よく洗浄し、グルコースを炭素源として培養し、培養物の酵素活性を公知の方法で測定することで達成される。
例えば、各変異処理菌株の培養物を用いて、セロビオースまたは結晶セルロースを基質として酵素分解し、生成した還元糖を定量してもよく、公知の発色基質を使用し培養物と酵素反応させることで定性的に目的の菌株を選択してもよい。
セルラーゼ生産菌よりセルラーゼを得る方法は、その菌株を培養し、培養上清液を取得することによって得られる。培地に使用される炭素源としては、セルロースパウダー、セロビオース、濾紙、一般紙類、オガクズ、ふすま、もみがら、バガス、大豆粕、コーヒー粕、澱粉、ラクトース等が使用される。窒素源としては、硫安、硝安などの無機アンモニウム塩、尿素、アミノ酸、肉エキス、酵母エキス、ポリペプトン、蛋白分解物等の有機窒素含有物が使用される。無機塩類としては、KH2PO4、 MgSO4・7H2O、 CaCl2・2H2O、FeCI3 ・6H2O、 MnCl3・4H2O、 ZnSO4・7H2O等が使用される。必要ならば有機微量栄養物を含有する培地が使用される。培養には通常の通気撹拌培養装置が用いられ、前記培地を使用して、生産菌株の生育可能な温度、生育可能なpH付近で制御する。ついで、培養液から遠心分離、濾過などの公知の方法によって菌体を除去し上清液を得る。この上清液は、このまま粗酵素液として使用することができる。
また、さらに(β−グルコシダーゼ活性/結晶セルロース分解活性)比を低く抑える培養方法として、例えば、培養中、培養液のpHをpH3.5未満、かつセルラーゼ生産菌の生育可能なpH以上に制御する方法が挙げられる。具体的には、上記Tricoderma reesei NBRC31329株もしくはその変異株をポテトデキストロース寒天斜面で25〜35℃、3〜10日間培養し、培養懸濁および溶解させ、セルロースを炭素源とする培地を500ml容量の三角フラスコに100ml分注し、オートクレーブで滅菌した培地に植菌し、28℃で2〜4日間前培養を行う。さらに同じ組成の培地3lを5lのジャーファーメンターに仕込みオートクレーブで殺菌した培地に、前培養液を移植し、28℃で攪拌200〜400rpm、通気0.3〜1vvmで培養を行い、培養中NaOHもしくはアンモニア水でpH2〜3.5、好ましくは2.5〜3.0に制御する。4〜7日間培養を行った後、培養液を遠心分離、濾過などの公知の方法によって菌体を除去し上清液を得る。この上清液は、このまま粗酵素液として使用することができる。
以下にセロオリゴ糖の製造方法を説明する。
酵素分解方法は、公知の方法を使用すればよく、特に制限されるものではないが、一例としては、基質としてセルロース系物質を水性媒体中に懸濁させ、本発明のセルラーゼを添加し、攪拌または振とうしながら、加温して糖化反応を行う方法が挙げられる。
上記方法において、懸濁方法、攪拌方法、セルラーゼ・基質の添加方法・添加順序、それらの濃度等の反応条件は、セロオリゴ糖がより高収率で得られるよう適宜調整されるものである。その際の、反応液のpH及び温度は、酵素が失活しない範囲内であればよく、一般的には、常圧で反応を行う場合、温度は5〜95℃、pHは1〜11の範囲でよい。また、この圧力、温度、pHについても、上記同様、セロオリゴ糖がより高収率で得られるよう適宜調整されるものであるが、上述のTricoderma reeesei NBRC31329株またはその変異株をセルラーゼ生産菌とし、得られたセルラーゼを用いる場合には、セルロースの酵素分解は、常圧で、酢酸またはリン酸緩衝液中で、温度50〜60℃、pH3.0〜5.5の範囲で行うことが好ましい。
この酵素反応は、バッチ式で行っても、連続式で行ってもよい。酵素分解反応において、セロビオースによる生成物阻害を回避するためには、反応系内のセロビオース濃度を特定範囲に保つことが、セロオリゴ糖の生産性を向上する上で重要である。反応系内のセロビオース濃度を特定範囲に保つ方法としては、限外ろ過、逆浸透ろ過等の膜ろ過により、反応系から生成したセロビオースを抜き出す方法でもよく、活性炭、竹、木材等の乾燥植物粉等の有機多孔質基材、二酸化珪素等の無機多孔質基材等を反応系に導入し、それらにセロビオースを吸着させる方法でもよく、セルロース基質をカラム等に固定化し、セルラーゼを含む反応液を流通させる方法でもよく、セルラーゼを高分子等に固定化し、セルロースを含む反応液を流通させる方法でもよい。
上述の酵素分解により得られたセロオリゴ糖を主成分とする水溶液は、必要に応じて、脱色、脱塩、酵素除去等の精製処理を施すことができる。精製方法は、公知の方法であれば特に制限されないが、例えば、活性炭処理、イオン交換樹脂処理、クロマトグラフィー処理、精密ろ過、限外ろ過、逆浸透ろ過等の濾過処理、晶析処理等を使用してもよく、これらを単独で使用しても、2種以上を組み合わせてもよい。
上記の方法で精製されたセロオリゴ糖を主成分とする水溶液は、そのまま使用することができるが、必要に応じて、乾燥により固化させてもよい。乾燥方法は、公知の方法であれば特に制限されないが、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、ドラム乾燥、薄膜乾燥、棚段乾燥、気流乾燥、真空乾燥等を使用してもよく、これらを単独で使用しても、2種以上を組み合わせてもよい。
上記の精製、乾燥処理時のセロオリゴ糖の媒体としては、水以外に、必要に応じて、有機溶剤等を使用してもよい。ここで使用される有機溶剤にも、特に制限されないが、例えば、医薬品、食品およびそれらの添加剤を製造する工程で使用されるものが好ましく、「医薬品添加物事典」(薬事日報社(株)発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(いずれも廣川書店発行)に溶剤として分類されるものが挙げられる。水、有機溶剤は、それらを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由であり、1種の媒体で一旦分散させた後、その媒体を除去し、異なる媒体に分散させてもよい。
上記の工程を経たセロオリゴ糖の形態には、特に制限はないが、例えば、常温で固体、懸濁液、エマルジョン、シロップ、溶液状で使用できる。固体状セロオリゴ糖の一例としては、粉末、顆粒、ペレット、成形体、積層体、固体分散体等が挙げられる。
本発明により得られるセロオリゴ糖の用途は、特に制限されないが、例えば、食品、化粧品、医薬品、一般工業製品等の分野で、食品成分、化粧品成分、色素成分、香料成分、医薬品薬効成分、農薬成分、飼料成分、肥料成分、培地成分、分析用試薬成分、および添加剤、中間原料、発酵原料等として使用してもよい。
本発明により得られるセロオリゴ糖は、食品では、例えば、ゼリー、プリン、ヨーグルト等のゲル、マヨネーズ、ドレッシング、ソース類、たれ類、スープ、野菜加工品等の調味料、カレー、ハヤシ、ミートソース、シチュー、スープ等のレトルト食品、チルド食品、ハンバーグ、ベーコン、ソーセージ、サラミソーセージ、ハム類等の畜産加工品、蒲鉾、ちくわ、魚肉ハム・ソーセージ、揚げ蒲鉾等の水練製品、パン、生麺、乾麺、マカロニ、スパゲッティ、中華饅頭の皮、ケーキミックス、プレミックス、ホワイトソース、餃子・春巻等の皮類などの小麦加工食品、カレー、ソース、スープ、佃煮、ジャムなどの缶詰、瓶詰類、キャンデー、トローチ、錠菓、チョコレート、ビスケット、クッキー、米菓、和洋菓子、洋生菓子、スナック菓子、砂糖菓子、プリンなどの菓子類、フライ類、コロッケ、餃子、中華饅頭等の調理加工品、野菜ペースト、肉のミンチ、果実ペースト、魚介類のペースト等のペースト類などに使用される。また、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ホイップクリーム、練乳、バター、ヨーグルト、チーズ、ホワイトソース等の乳製品、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング等の油脂加工品等に使用される。さらに、コーラ等の炭酸飲料、炭酸入り、アルコール入り、乳製品と混合した果実飲料、果汁又は、果実入り飲料、乳性飲料等の飲料、コーヒー、牛乳、豆乳、ココア牛乳、フルーツ牛乳、ヨーグルト等の乳酸/乳性飲料等、煎茶、ウーロン茶、抹茶、紅茶等の茶飲料等に使用してもよい。
本発明で得られるセロオリゴ糖は、乳酸菌、乳酸かん菌等の活性化等の腸内有用細菌叢賦活、血中糖濃度、血中インシュリン濃度の低減、血中コレステロールの低減、体脂肪率の低減、脂質・糖質代謝促進機能、便通・便臭改善、抗う触性等の各種生理活性が期待できるため、上記の通常食品用途に加え、生理活性物質として、機能性食品、健康食品、ダイエット食品等の用途で使用してもよい。
また、本発明により得られるセロオリゴ糖は、高純度であるため、各種セロオリゴ糖誘導体への化学変換原料として使用してもよい。
本発明を実施例などに基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
[実施例1]
Tricoderma reesei NBRC31329を、ポテトデキストロース寒天斜面培地上で28℃、7日間培養する。生成した胞子を100mMリン酸カルシウム緩衝液(pH7)2mlに106 個/mlになるよう懸濁し、EMS(ethyl methane slfonate)を24ul添加し、28℃で16時間振とうし、変異処理を施す。この胞子懸濁液から遠心分離により胞子を集め、100mMリン酸カルシウム緩衝液(pH7)でよく洗浄し、平板あたり100〜300胞子になるように希釈し、グルコース1g、酵母エキス1g、(NH4 2SO4 2g、KH2PO4 4g、Na2HPO4 2g、 MgSO4・7H2O 200mg、 CaCl2・2H2O 1mg、トリトンX−100 、トレースエレメント1ml(硼酸6mg、モリブデン酸アンモニウム4水和物26mg、塩化鉄(3)6水和物100mg、硫酸銅5水和物40mg、硫酸マンガン4水和物8mg、硫酸亜鉛7水和物200mgを全量100mlの精製水に溶解させたもの)、寒天20gを1lの水に溶解または懸濁させた後、オートクレーブで滅菌し、さらにメンブレンフィルターでろ過滅菌し、28℃で5日間培養した培養液の、β−グルコシダーゼ活性および結晶セルロース分解活性を測定し、変異株GL−1(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領番号FERM ABP−10323)を選択した。
[実施例2]
Tricoderma reesei NBRC31329および実施例1で取得した変異株GL−1株の各菌株をポテトデキストロース寒天斜面培地上で、25℃で7日間培養して胞子を十分形成させる。その1白金耳をポリペプトン1.0g、酵母エキス0.5g、KH2PO4 2.0g 、(NH4 2SO4 1.5g 、MgSO4 ・7H2O 0.3g 、CaCl2 ・2H2O 0.3g 、ツイーン80[半井化学薬品(株)製] 1.0ml、微量元素液(H3BO4 6mg 、(NH4 6Mo7O24 ・4H2O 26mg 、 FeCl3・6H2O 100mg、 CuSO4・5H2O 40mg 、 MnSO4・4H2O 8mg、 ZnSO4・7H2O 200mgを水 100mlに溶解並びに懸濁した液)1.0ml 、酒石酸 7.5g を水1lに溶解および懸濁させ、pH4.0に調整し、500ml容量の三角フラスコに100ml分注し、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ製、商品名PH−101)1gを添加後、オートクレーブで滅菌した培地に接種して、28℃で5日間振盪培養した。5日目に培養液を遠心分離し、その上清のセルラーゼ活性およびβ−グルコシダーゼ活性を測定した。その結果を表1に示す。
[実施例3]
ポテトデキストロース培地(Difco 社製)にTricoderma reesei NBRC31329を接種し、37℃で7日間培養を行う。その培地表面から胞子を1白金耳取り、ポリペプトン1g、酵母エキス0.5g、リン酸1カリウム2g、硫酸アンモニウム1.5g、硫酸マグネシウム0.3g、塩化カルシウム0.3g、トレースエレメント1ml(硼酸6mg、モリブデン酸アンモニウム4水和物26mg、塩化鉄(3)6水和物100mg、硫酸銅5水和物40mg、硫酸マンガン4水和物8mg、硫酸亜鉛7水和物200mgを全量100mlの精製水に溶解させたもの)、アデカノールLG−109 1mlを全量1lの精製水に懸濁および溶解させ500ml容量の三角フラスコに100ml分注し、各フラスコに結晶セルロース(旭化成ケミカルズ製、商品名:PH−101)1g添加後、オートクレーブで滅菌した培地に植菌し、28℃で3日間前培養を行う。さらに同じ培地3lを仕込んだ5lジャーファーメンターに前培養液を30ml移植し、28℃、攪拌400rpm、通気0.5vvmで培養を行い、培養中NaOH水溶液でpHの下限をpH3.0に制御した。5日間培養を行った培養後の液を遠心分離し、上清を粗酵素として得た。得られた酵素液の結晶性セルラーゼ分解活性およびβ−グルコシダーゼ活性を前述の方法で測定した。培養中のpH経時変化を図1に、活性測定結果を表2に示す。
[実施例4]
実施例3と同様の方法でTricoderma reesei NBRC31329を培養する際、培養中NaOHでpHの下限をpH2.5に制御し、粗酵素液を得た。得られた酵素液の結晶性セルラーゼ分解活性およびβ−グルコシダーゼ活性を前述の方法で測定した。培養中のpH経時変化を図1に、活性測定結果を表2に示す。
[比較例1]
実施例3と同様の方法でTricoderma reesei NBRC31329を培養する際、培養中NaOHでpHの下限をpH3.5、もしくはpH4、もしくはpH5に制御し、粗酵素液を得た。得られた酵素液の結晶性セルラーゼ分解活性およびβ−グルコシダーゼ活性を前述の方法で測定した。培養中のpH経時変化を図1に、活性測定結果を表2に示す。
[実施例5]
実施例3と同様の方法で実施例1で得たGL−1株を培養した。培養を行う際、培養中NaOHでpHの下限をpH3もしくはpH4に制御し粗酵素液を得た。培養中のpH経時変化を図2に示す。
[実施例6]
結晶セルロース5質量%(旭化成ケミカルズ製、商品名:セオラスPH−101を水分60%として、三英製作所製、商品名:万能攪拌混合機でフック羽根により、90分間、126rpmで混練攪拌したもの)8mlに実施例3および実施例5で得たセルラーゼ粗酵素液を2ml添加し、55℃攪拌条件下で加水分解を行った。2時間、4時間、6時間、8時間反応後、95℃で15分間加熱し、酵素反応を停止し、遠心分離により上清液を得、前述のHPLC法によりセロオリゴ糖およびグルコースの濃度を測定した。結果を図3に示す。
[比較例2]
実施例6と同様の方法で結晶性セルロースを酵素分解する際、比較例1で得たセルラーゼを粗酵素液として使用した。結果を図3に示す。
Figure 2006296358
Figure 2006296358
本発明の製造方法により得られるセロオリゴ糖は、通常の食品素材に加え、機能性食品素材、医薬品およびその他化学品の中間体合成材料等の化学変換原料、発酵原料として食品、医薬品、一般工業製品分野で好適に利用できる。
実施例3、4、比較例1の培養におけるpHの経時変化を示す。 実施例5の培養におけるpHの経時変化を示す。 実施例6、比較例2の酵素分解反応により得られる反応液中のセルロース分解量とセロオリゴ糖の純度の関係を示す。

Claims (5)

  1. セルラーゼ生産菌を培養して得られる培養液中の、β−グルコシダーゼ活性と結晶性セルロース分解活性の活性比(β−グルコシダーゼ活性/結晶性セルロース分解活性)が0.35以下であることを特徴するセルラーゼの製造方法。
  2. セルラーゼ生産菌が、β−グルコシダーゼの生産が抑制された株として選択することにより得られる菌株であることを特徴とする請求項1に記載のセルラーゼの製造方法。
  3. セルラーゼ生産菌の培養が、培養液中のpHをpH3.5未満に制御することを特徴とする請求項1に記載のセルラーゼの製造方法。
  4. セルラーゼ生産菌がトリコデルマ(Trichoderma )属に属する菌株であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセルラーゼの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載したセルラーゼ溶液を使用し、セルロースを酵素分解することを特徴とするセロオリゴ糖の製造方法。
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