以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は本発明の第1の実施の形態に係る光制御素子の全体構成を表すものであり、図2はその断面構成を表すものである。この光制御素子は、例えば映像表示装置やスキャナなどにおいて光信号を反射し走査するために用いられるものであり、例えば矩形状の平板からなる可動部材10が、対向する2辺(ここでは長辺)においてそれぞれ支持部20を介して外枠部30に連結されている。外枠部30には固定側電極40A,40B,40C,40Dが連結され、これら固定側電極40A〜40Dに対応する位置に回動側電極50A,50B,50C,50Dが可動部材10に連結されて設けられている。
また、この光制御素子は、回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間に静電駆動用の電圧を印加するための駆動用電源60と、この駆動用電源60の駆動制御を行う制御部70と、可動部材10に対して初期駆動力(起動力)を与えるための起動用電極80と、この起動用電極80と可動部材10との間に接続された起動用電源90とを備えている。
可動部材10は、具体的には反射ミラーであり、例えば映像信号に応じて軸(支持部20)を中心に回動変位することにより光の反射方向を変更する。ここで、「回動」とは、中立位置から一方向に回転して所定角度に達したのち逆方向に回転し中立位置に復帰し更に所定角度に達するまで回転する場合をいい、中立位置から一方向に所定角度だけ回転したのち逆方向に回転し中立位置に復帰するに止まる場合も含まれる。回転を開始する位置は必ずしも中立位置には限られない。反射信号の用い方としては、例えば、可動部材10が中立状態から一方の方向に一定角度傾斜したときの反射信号が有効(すなわち、オン状態)、逆方向に一定角度傾斜したときの反射信号が無効(すなわち、オフ状態)とされるようにしてもよいし、反射信号を常に有効としてラスター走査などを行うようにしてもよい。
この可動部材10は、例えばシリコンからなる保持基板の表面に、二酸化シリコン(SiO2 )などからなる酸化層およびシリコンなどよりなる半導体膜を順に積層した所謂SOI(Silicon on Insulator)基板を加工、すなわちSOI基板から保持基板および酸化層を選択的に除去したあとの半導体膜により構成されており、この半導体膜の平坦面が反射ミラーとして利用される。このようにSOI基板を用いると、内部応力が零の半導体膜が得られ、これにより可動部材10に残留応力による歪みなどが生じるようなことがなくなり、反射ミラーの平坦性を高めることができる。
可動部材10はその厚みが例えば0.4μmの板状である。また、可動部材10の長辺の長さD1は1000μm以上(半長が500μm以上)、短辺の長さD2は800μm以上であることが好ましい。例えば、レーザ光の径を発光位置から300mm程度離れたところで300μm程度になるように絞り込みたい場合、回折限界の関係で発光位置では1.22mm以上の大きさが必要であり、可動部材10も同等の大きさが必要になるからである。レーザ光の径を更に絞りたい場合には、可動部材10をより大きくする必要がある。更に、アライメント精度や、可動部材10が回動して傾いた場合に光が入射可能な範囲などを考慮すると、可動部材10には上述したような寸法が必要となる。
図3は、図1に示した可動部材10および支持部20を可動部材10の裏面側から見た構成を表したものである。可動部材10の裏面には桟構造11が設けられている。これにより、この光制御素子では、可動部材10自体を薄くして慣性モーメントを小さくすることにより共振周波数を高めることができると共に、桟構造11により可動部材10を補強し剛性を高めることができるようになっている。
桟構造11は、例えば、可動部材10の長辺に平行な5本の縦桟11Aと、短辺に平行な7本の横桟11Bとを、可動部材10の周囲および内部に格子状に配設したものである。桟構造11は、例えば可動部材10と同一材料すなわちシリコンにより構成されていることが好ましい。桟構造11の内部応力を零とすることができ、可動部材10の平坦性を高めることができるからである。なお、桟構造11は、可動部材10と異なる材料により構成されていてもよい。
桟構造11の幅は、例えば3μm以上であることが好ましい。製造工程で安定して作製することができるからである。また、桟構造11の厚みは、可動部材10よりも大きいことが好ましく、例えば可動部材10の9倍以上であることが好ましい。可動部材10と桟構造11とを同一材料により構成した場合にも、可動部材10の剛性を確実に維持することができるからである。なお、桟構造11を可動部材10よりも強度の大きな材料により構成する場合には、桟構造11を可動部材10と同じ厚みまたは可動部材10よりも薄くすることも可能である。
縦桟11Aおよび横桟11Bの本数および間隔などは特に限定されず、後述する計算結果で説明するように、求められる可動部材10の寸法や共振周波数に応じて設定することができる。
可動部材10の表面の反射面には反射率を高めるために、例えばアルミニウム(Al)や金(Au)などの金属材料によりなる反射膜100が設けられている。この反射膜100の厚みは、例えば可動部材の10分の1以下であることが好ましい。反射膜100の残留応力による可動部材10の反りなどを抑え、可動部材10の平坦性を高めることができるからである。
支持部20は可動部材10の回動中心の軸となる捩り梁であり、可動部材10を左右にそれぞれ一定の角度だけ回動可能に支持するものである。この支持部20は、可動部材10と同様に同一のSOI基板から保持基板および酸化層を選択的に除去した半導体膜により構成されている。このようにSOI基板の半導体膜により支持部20を構成すれば、その半導体膜には分子レベルでの格子欠陥がないので、捩れても亀裂などが成長することはなく、よって支持部20として壊れにくく強度の高いものを得ることができる。
外枠部30も、可動部材10と共に同一のSOI基板から形成されたものであり、SOI基板に必要に応じて他の膜を形成した構造を有している。なお、この外枠部30は、必ずしも可動部材10を取り囲むように設けられている必要はなく、少なくとも支持部20の固定位置に設けられていればよい。
固定側電極40A〜40Dは、外枠部30に連結して形成されると共にそれぞれ複数の櫛歯41A,41B,41C,41Dを有している。これら櫛歯41A〜41Dはそれぞれ支持部20の長手方向に対して垂直になるように配置されている。固定側電極40A〜40Dは、可動部材10と同様に同一のSOI基板から保持基板および酸化層を選択的に除去したのちの半導体膜の平坦面に形成されている。なお、半導体膜の固定側電極40A〜40Dを構成する部分にはp型不純物が添加されている。
これに対して、回動側電極50A〜50Dは、2個の支持部20の各々の両側に、可動部材10側に連結して形成されたものであり、それぞれ複数の櫛歯51A,51B,51C,51Dを有している。これら櫛歯51A〜51Dが固定側電極40A〜40D側の櫛歯41A〜41Dと噛み合っている。櫛歯51A〜51Dもそれぞれ支持部20の長手方向に対して垂直になるように配置されている。回動側電極50A〜50Dも、可動部材10と同様に、同一のSOI基板から保持基板および酸化層を除去したあとの半導体膜の平坦面に形成されている。なお、半導体膜の回動側電極50A〜50Dを構成する部分にはp型不純物が添加されている。
また、これら回動側電極50A〜50Dは、図4に示したように、中立位置において固定側電極40A〜40Dと同じ平面内にあり、両者の間には段差は生じていない。これにより、この光制御素子では、支持部20の両側において同時に、回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間に静電駆動用の電圧を印加できるようになっている。
回動側電極50A〜50D同士は全て互いに電気的に短絡され、同じく固定側電極40A〜40D同士もすべて互いに電気的に短絡されており、駆動用電源60は、回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間の全体にわたって均一な電位差を付与することができるようになっている。なお、回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとを電気的に分離するため、外枠部30には、支持部20が固定された部分を囲むように、SOI基板の酸化層まで達する溝31が設けられている。
駆動用電源60は、可動部材10の高速駆動のために、交流的に電位差を生じさせるものであり、波形としては、矩形でもパルス状のものでもよい。この駆動用電源60の周波数は、可動部材10の共振周波数またはその倍数もしくは分数倍(1/2等)の周波数とすることが好ましい。可動部材10が有する共振特性を効果的に利用して傾斜角度をより大きくすることができるからである。可動部材10の共振周波数(共振点)は、可動部材10および支持部20により機械的に決定されるものである。なお、この駆動用電源60および以下の制御部70を含めて本発明の駆動手段の一具体例が構成されている。
制御部70は駆動用電源60のオン/オフ制御を行うものであり、本実施の形態では、可動部材10が中立状態のときには駆動用電源60をオフの状態とし、後述の起動手段(起動用電源90等)により可動部材10が支持部20を軸として回動し一定角度傾斜することにより回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間に垂直な方向に間隙が生じた時点で駆動用電源60をオンとし、両電極間に交流的な電位差を生じさせるようになっている。これにより、回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとが引き合う方向に回動トルクTを生じさせ、可動部材10を回動駆動させることができる。
制御部70は、また、回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間の静電容量に基づいて可動部材10の回動角度を検知し、これにより可動部材10に投入される光信号とのタイミングをとることができるようになっている。そのため駆動用電源60を含む回路の一部に抵抗Rが介挿されている。この抵抗Rでの電圧降下を観察すると回路を通る電流iが分かる。回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間にかかる電圧Vは、電圧計で測定することができる。すなわち、回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとで可変容量コンデンサを構成しており、その等価回路は図5のように表すことができる。
ここで、回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間の可変容量コンデンサにおけるインピーダンスZは、数1および数2で表される。これより、静電容量Cは数3により与えられる。このようにして、リアルタイムで静電容量Cを検知することができる。この静電容量Cは可動部材10の回動角度に依存して変化するので、静電容量Cに基づいて可動部材10の回動角度を検知することができる。
制御部70は、また、このようにして検知した回動角度の変化状態に基づいて、駆動用電源60をオンするタイミングを調整するものであり、ここでは可動部材10が中立状態から一定角度回動して傾斜したのち、回動角度が小さくなる状態(すなわち、中立状態へ復帰しようとしている段階)で、駆動用電源60をオンとすることが好ましい。駆動用電源60により回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間に発生する静電力は引力のみだからである。よって、最も好ましいタイミングは、可動部材10の回動角度が極大値に達したのち中立状態に復帰し始めるときである。
可動部材10の初期の駆動は、制御部70の制御の下、起動用電源90(直流電源)により行うようになっている。すなわち、起動用電極80は、可動部材10との間に段差(間隙)を有しており、起動用電源90をオンとして起動用電極80と可動部材10との間に電位差を与えると静電力が発生し、中立状態の可動部材10に対して駆動トルクTを与え、強制的に起動させる。この起動用電極80は、外枠部30の上に例えば窒化ケイ素(SiNx 、例えばSi3 N4 )よりなる絶縁膜81を間にして設けられている。この起動用電極80は、可動部材10の支持部20が取り付けられていない側の短辺に沿って設けられ、例えば厚みが10μm程度であり、アルミニウムあるいは金、またはポリシリコンにより構成されている。なお、起動用電極80は可動部材10の両側に配置され、各々に対応して起動用電源90が設けられているが、2つの起動用電極80は電気的には分離されている。起動用電極80および起動用電源90は可動部材10の片側のみに設けられていてもよい。なお、この起動用電源90および制御部70を含めて本発明の起動手段の一具体例が構成されている。
この光制御素子は、例えば、次のようにして製造することができる。
図6はこの光制御素子の製造方法の流れを表すものであり、図7ないし図12はその工程を順に表すものである。なお、図7ないし図12は、図1におけるII−II線に沿った断面を表している。
まず、図7(A)に示したようにSOI基板110を用意する。このSOI基板110は、シリコンよりなる保持基板111の表面に、厚みが例えば1μmの二酸化ケイ素よりなる酸化層112および厚みが例えば20μmのシリコンよりなる半導体膜113が順に積層された構造を有するものである。ここで、半導体膜113の体積抵抗値は、なるべく低いことが好ましく、例えばアンチモン(Sb)が添加されていることが好ましい。
次に、図7(B)に示したように、このSOI基板110の両面に窒化ケイ素よりなる絶縁膜81を形成し、例えばフォトリソグラフィ技術により、半導体膜113側の絶縁膜81を、桟構造11,支持部20,外枠部30,固定側電極40A〜40Dおよび回動側電極50A〜50Dの形成予定領域(以下、「桟構造11等の形成予定領域」という。)を残して選択的に除去する一方、保持基板111側の絶縁膜81のうち少なくとも可動部材形成予定領域10Aを選択的に除去する(ステップS101)。ここでは、例えば、保持基板111側の絶縁膜81を、外枠部30の形成予定領域を残して選択的に除去する。
続いて、図7(C)に示したように、半導体膜113および絶縁膜81の上に、起動用電極80を形成するためのアルミニウム膜120を形成する。そののち、図8(A)に示したように、例えばフォトリソグラフィ技術により、アルミニウム膜120をパターニングして起動用電極80を形成する(ステップS102)。
起動用電極80を形成したのち、図8(B)に示したように、半導体膜113側の絶縁膜81上に、可動部材10,支持部20,外枠部30,固定側電極40A〜40Dおよび回動側電極50A〜50Dの形成予定領域(以下、「可動部材10等の形成予定領域」という。)に、フォトレジスト膜130を形成する。
フォトレジスト膜130を形成したのち、図9(A)に示したように、このフォトレジスト膜130をマスクとして、例えばディープRIE(Reactive Ion Etching) 法により、半導体膜113を、可動部材10等の形成予定領域を残して、厚み方向の途中まで選択的に除去する(ステップS103)。このとき、除去される半導体膜113の厚みは例えば1μm程度とする。
半導体膜113を厚み方向の途中まで除去したのち、図9(B)に示したように、フォトレジスト膜130を除去する。次いで、図10(A)に示したように、半導体膜113側の絶縁膜81をマスクとして、例えばディープRIE法により、半導体膜113のうち厚み方向の途中まで除去した領域を、厚み方向の最後まで除去すると共に、可動部材形成予定領域10Aの一部を厚み方向の途中まで選択的に除去することにより桟構造11を形成する(ステップS104)
ここで、半導体膜113の反射率を測定することにより厚みを検知することが好ましい。シリコンよりなる半導体膜113の分光反射率は、図13に示したように厚みにより異なるので、例えば顕微分光により半導体膜113の分光反射率を調べることによって半導体膜113の厚みを検知し、エッチング停止のタイミングを制御することができる。なお、エッチングは時間制御により行うようにしてもよい。
桟構造11を形成したのち、図10(B)に示したように、SOI基板110の表面をフォトレジストよりなる保護膜140で覆う。続いて、図11(A)に示したように、例えばダイシングによりSOI基板110を切断し、SOI基板110に設けられている複数の可動部材形成予定領域10Aを個々に切り離す(ステップS105)。
複数の可動部材形成予定領域10Aを個々に切り離したのち、図11(B)に示したように、保持基板111側の絶縁膜81をマスクとし、エッチング液としてTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を用いた異方性エッチングにより、保持基板111のうち少なくとも可動部材形成予定領域10Aを選択的に除去する(ステップS106)。ここでは、例えば、保持基板111を、外枠部30の形成予定領域を残して選択的に除去する。
保持基板111を除去したのち、図12(A)に示したように、フォトレジストよりなる保護膜140を除去する。続いて、図12(B)に示したように、エッチング液としてBHF(Buffered Hydrogen Fluoride;緩衝化したフッ化水素)を用いたウェットエッチングにより、酸化層112のうち少なくとも可動部材形成予定領域10Aを選択的に除去し、可動部材10,支持部20,外枠部30,固定側電極40A〜40Dおよび回動側電極50A〜50Dを形成する(ステップS107)。ここでは、例えば、酸化層112を、外枠部30の形成予定領域を残して選択的に除去する。また、その際、絶縁膜81は、起動用電極80と外枠部30との間に挟まれた部分だけを残して除去される。エッチング終了後、洗浄によりフッ酸を除去し、例えば二酸化炭素(CO2 )雰囲気中において加圧することにより臨界乾燥を行う。
酸化層112および絶縁膜81を除去したのち、図12(C)に示したように、可動部材10に反射膜100を形成する(ステップS108)。その際、回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間で電気的な短絡が発生するのを防ぐため、メタルマスクなどを用いて可動部材10のみに反射膜100を形成するようにすることが好ましい。また、反射膜100を形成するのと同時に、電極パッド(図示せず)なども必要に応じて形成するようにしてもよい。以上により、図1ないし図4に示した光制御素子が完成する。
次に、この光制御素子の作用の一例について説明する。
この光制御素子では、可動部材10の回動に伴って光の反射方向が変化し、光が走査される。ここで、可動部材10の裏面に桟構造11が設けられているので、可動部材10を薄くして慣性モーメントを小さくすることができ、共振周波数を高めることができる。また、桟構造11により可動部材10が補強され、回動時の平坦性が高くなる。よって、高速で高精度に光が制御される。
以下、桟構造11による可動部材10の共振周波数の向上について、計算結果を参照して説明する。
表1は、図35に示したような桟構造を有しない従来の可動部材410について、可動部材410および支持部420の寸法を比較例1〜12のように変化させて共振周波数を計算した結果を表したものである。計算には表2に示した数値および計算式を使用した。
表1から分かるように、例えば可動部材410の厚みを20μm、大きさを1mm×1.4mmとし、支持部420の幅を24μm、厚みを20μm、長さを200μmとした比較例12では、共振周波数は7kHz程度にしかならず、高速とはいえない。30kHzの共振周波数とするには、例えば比較例10のように可動部材410の厚みを2μm程度に薄くする必要がある。可動部材410が厚いと慣性モーメントが大きくなり共振点が高くならないからである。しかしながら、全面2μmの厚さとすると可動部材410の剛性が低く、回動駆動時に平坦性を保持することが難しくなってしまうおそれがある。
表3ないし表6は、図3に示した可動部材10について、桟構造11の構成、可動部材10および支持部20の寸法を計算例1〜32のように変化させて共振周波数を計算した結果を表したものである。計算には表7に示した数値および計算式を使用した。なお、表3ないし表6において横桟11Bの間隔c2,d2,c3,d3が空欄になっているのは、該当する横桟11Bを設けていないことを表している。
また、計算例1〜9に対する比較例13として、桟構造を設けないことを除いては計算例1〜9と同様にして共振周波数を計算した。同様にして、計算例10から14に対する比較例14、計算例15〜26に対する比較例15および計算例27〜32に対する比較例16についても共振周波数を計算した。得られた結果をそれぞれ表3ないし表6に合わせて示す。
表3ないし表6から分かるように、計算例1〜32で求められた共振周波数は、対応する比較例13〜16に比べて極めて高くなり、例えば計算例32では約31.4kHzという良好な結果が得られた。これは、慣性モーメントが従来構造の20分の1程度になるので共振周波数が高くなったからである。また、可動部材10が薄くても桟構造11により補強されるので、可動部材10の剛性が著しく落ちるということもない。
すなわち、可動部材10の裏面に桟構造11を設けることにより、慣性モーメントを小さくして共振周波数を高めることができると共に、桟構造11により可動部材10を補強し剛性を維持することができることが分かる。
続いて、可動部材10の駆動制御について説明する。
静止状態では、可動部材10は、図1,図2および図4に示したように水平状態である。よって、回動側電極50A〜50Dは中立位置にあり、固定側電極40A〜40Dとは段差のない同一平面内にある。この状態で、仮に回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間に直流の電位差を与えても、静電力による回動トルクは発生せず、可動部材10は静止したままである。
図14〜図19は、この光制御素子の動作を説明するためのものである。なお、ここでは、制御部70による制御状態をわかりやすくするため、駆動用電源60を、回動側電極50A〜50Dの各々と固定側電極40A〜40Dの各々との間に接続された直流電源および開閉スイッチとして表し、起動用電源90を起動用電極80の各々と可動部材10との間に接続された直流電源および開閉スイッチとして表している。
まず、制御部70は、図14および図15に示したように、一方の起動用電源90をオンすることにより、片側の起動用電極80と可動部材10との間に電位差を与え、生じた静電力により可動部材10をわずかに回動させる。可動部材10に傾きが生ずると、起動用電源90をオフすることにより起動用電極80と可動部材10との間の電位差をなくす。これにより可動部材10は傾斜位置から解放され、その固有の共振周波数で微妙な自励振動を始める。このようにして、可動部材10を強制的に起動させる。
次いで、制御部70は、可動部材10の自励振動に合わせて駆動用電源60をオンとすることにより、可動部材10の共振周波数またはその倍数もしくは分数倍の駆動周波数で、回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間に所定の電位差を与える。この結果、静電力による回動トルクが発生し、可動部材10の自励振動が増長され、回動角度が大きくなっていく。
その際、制御部70は、図1および図5を参照して説明したように、回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間の静電容量に基づいて可動部材10の回動角度を検知する。
そして、このように検知した回動角度の変化状態に基づいて、制御部70は、駆動用電源60のオン/オフの切り換えを選択する。すなわち、図16および図17に示したように、可動部材10が中立状態に復帰しようとして回動角度が小さくなるタイミングで駆動用電源60をオンとし、静電力Sを発生させる。一方、図18および図19に示したように、可動部材10が中立位置を通り越し、回動角度が大きくなる段階では、駆動用電源60はオフとする。これにより可動部材10の回動角度を効果的に大きくすることができる。従って、可動部材10の回動角度が極大値に達したのち中立状態に復帰し始めるタイミングで駆動用電源60をオン状態にすることが最も望ましい。
なお、この可動部材10の検知角度に基づいて、光源(図示せず)から可動部材10に入射させる光信号の投入タイミングを調整することもできる。
このように本実施の形態の光制御素子では、可動部材10の裏面に桟構造11を設けるようにしたので、可動部材10を薄くして慣性モーメントを小さくすることにより共振周波数を高めることができると共に、桟構造11により可動部材10を補強することができる。よって、剛性が高く高速駆動が可能な光制御素子を実現することができる。
また、中立位置の回動側電極50A〜50Dが固定側電極40A〜40Dと段差のない同一平面上にあるようにしたので、可動部材10の回転軸となる支持部20の両側において、同時に、回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間に電圧を印加することができる。よって、回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとが水平方向に引き合う力を相殺して水平方向の無駄な動きを排除し、効率よく均整のとれた動きが可能となる。また、大きな回動トルクを得ることができ、可動部材10の振幅を大きくすることができる。
更に、中立位置では回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間に段差がないので、可動部材10の回動角度が大きくなるほど両者の間の間隙も広くなることになる。よって、従来のような回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの中立位置での段差を考慮する必要がなくなり、両者の間の静電容量を調べることにより可動部材10の回動角度を容易に検知することができる。
加えて、回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとを同一工程で作製することができるようになり、従来構造の垂直櫛歯型のものに比べて製造工程を大幅に簡素化することができる。
本実施の形態の光制御素子の製造方法では、半導体膜113の可動部材10の形成予定領域10Aの一部を厚み方向の途中まで選択的に除去することにより桟構造11を形成するようにしたので、剛性が高く高速駆動が可能な光制御素子を容易に製造することができる。
なお、上記実施の形態では、固定側電極40A〜40Dの櫛歯41A〜41Dおよび回動側電極50A〜50Dの櫛歯51A〜51Dが、支持部20の長手方向に対して垂直に配置されている例について説明したが、図20に示したように、櫛歯41A〜41Dおよび櫛歯51A〜51Dを支持部20の長手方向に平行に配置するようにしてもよい。この構成では、支持部20近傍の櫛歯41A〜41D,51A〜51Dは、可動部材10の回動角度が大きくなってもその間隔があまり離れないので、その部分の静電引力を有効に利用することができる。
〔第2の実施の形態〕
図21は、本発明の第2の実施の形態に係る光制御素子の製造方法の流れを表すものであり、図22ないし図25はその工程を表すものである。この製造方法は、半導体膜113上の可動部材形成予定領域10Aの一部に選択的に半導体成長層を形成することにより桟構造11を形成することが、第1の実施の形態で説明した製造方法とは異なるものである。なお、図22ないし図25は、図21におけるXXVC−XXVC線に沿った断面を表している。
まず、図22(A)に示したようにSOI基板110を用意する。このSOI基板110は、シリコンよりなる保持基板111の表面に、厚みが例えば1μmの二酸化ケイ素よりなる酸化層112および厚みが例えば0.3μmのシリコンよりなる半導体膜113が順に積層された構造を有するものである。ここで、半導体膜113の体積抵抗値は、なるべく低いことが好ましく、例えばアンチモン(Sb)が添加されていることが好ましい。
次に、図22(B)に示したように、例えばディープRIE法により、半導体膜113を、可動部材10等の形成予定領域を残して選択的に除去する(ステップS201)。
続いて、図22(C)に示したように、半導体膜113上に、低応力TEOS(tetraethoxy silane)などを用いて二酸化ケイ素よりなる厚み20μmのマスク層150を形成し、例えばRIE法により、桟構造11等の形成予定領域におけるマスク層150を選択的に除去する。
マスク層150を選択的に除去したのち、図23(A)に示したように、例えばエピタキシャル成長法により、桟構造11等の形成予定領域に選択的に、例えばシリコンよりなる半導体成長層160を形成することにより桟構造11を形成する(ステップS202)。なお、このとき、支持部20,外枠部30,固定側電極40A〜40Dおよび回動側電極50A〜50Dの形成予定領域にも選択的に半導体成長層160が形成されるので、これらの厚さを十分に確保することができる。
桟構造11を形成したのち、図23(B)に示したように、このSOI基板110の両面に窒化ケイ素よりなる絶縁膜81を形成し、例えばフォトリソグラフィ技術により、保持基板111側の絶縁膜81のうち少なくとも可動部材形成予定領域10Aを選択的に除去する(ステップS203)。ここでは、例えば、保持基板111側の絶縁膜81を、外枠部30の形成予定領域を残して選択的に除去する。
続いて、図23(C)に示したように、保持基板111側の絶縁膜81をマスクとし、エッチング液としてTMAHを用いた異方性エッチングにより、保持基板111のうち少なくとも可動部材形成予定領域10Aを、厚み方向の途中まで選択的に除去する(ステップS204)。ここでは、例えば、保持基板111を、外枠部30の形成予定領域を残して、厚み方向の途中まで選択的に除去する。保持基板111の残部の厚みは例えば100μmとする。
保持基板111を厚み方向の途中まで除去したのち、図24(A)に示したように、半導体膜113側の絶縁膜81上に、起動用電極80を形成するための厚み10μmのポリシリコン膜170を形成する。そののち、図24(B)に示したように、例えばディープRIE法により、ポリシリコン膜170をパターニングして起動用電極80を形成する(ステップS205)。
起動用電極80を形成したのち、図24(C)に示したように、例えばダイシングによりSOI基板110を切断し、SOI基板110に設けられている複数の可動部材形成予定領域10Aを個々に切り離す(ステップS206)。このとき、保持基板111の厚み方向の一部が残されているので、強度が確保されており、ダイシングによる破損などのおそれをなくすことができる。
複数の可動部材形成予定領域10Aを個々に切り離したのち、図25(A)に示したように、保持基板111側の絶縁膜81をマスクとし、エッチング液としてTMAHを用いた異方性エッチングにより、保持基板111を厚み方向の最後まで除去する(ステップS207)。
保持基板111を除去したのち、図25(B)に示したように、エッチング液としてBHFを用いたウェットエッチングにより、酸化層112およびマスク層150のうち少なくとも可動部材形成予定領域10Aを選択的に除去し、可動部材10,支持部20,外枠部30,固定側電極40A〜40Dおよび回動側電極50A〜50Dを形成する(ステップS208)。ここでは、例えば、酸化層112およびマスク層150を、外枠部30の形成予定領域を残して選択的に除去する。また、その際、絶縁膜81は、起動用電極80と外枠部30との間に挟まれた部分だけを残して除去される。エッチング終了後、第1の実施の形態と同様にして臨界乾燥を行う。
酸化層112,マスク層150および絶縁膜81を除去したのち、図25(C)に示したように、第1の実施の形態と同様にして、可動部材10に反射膜100を形成する(ステップS209)。以上により、図21に示した光制御素子が完成する。
このように本実施の形態では、半導体膜113上の可動部材形成予定領域10Aの一部に選択的に半導体成長層160を形成することにより桟構造11を形成するようにしたので、剛性が高く高速駆動が可能な光制御素子を容易に形成することができる。
〔第3の実施の形態〕
図26は本発明の第3の実施の形態に係る光制御素子の全体構成を表すものである。この光制御素子は、第1の実施の形態の起動用電極80を設けることなく、その機能を駆動用電源60に持たせたことを除いては、第1の実施の形態と同一の構成を有している。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して、以下説明する。
本実施の形態においては、制御部70は、中立状態にある可動部材10の起動を駆動用電源60による交流的電圧によって行い、可動部材10を自励的に起動させる。これにより、この光制御素子では、起動用電極80が不要となり、より簡単な構成で、容易に製造することができるようになっている。
この光制御素子は、例えば次のようにして製造することができる。
図27はこの光制御素子の製造方法の流れを表すものであり、図28ないし図31はその工程を順に表すものである。なお、第1の実施の形態と製造工程が重複する部分については、図7(A)および図7(B)を参照して説明する。
まず、図7(A)に示した工程により、第1の実施の形態と同様にして、保持基板111の表面に酸化層112および半導体膜113が順に積層されたSOI基板110を用意する。
次いで、図7(B)に示した工程により、第1の実施の形態と同様にして、このSOI基板110の両面に絶縁膜81を形成し、半導体膜113側の絶縁膜81を、桟構造11等の形成予定領域を残して選択的に除去する一方、保持基板111側の絶縁膜81のうち少なくとも可動部材形成予定領域10Aを選択的に除去する(ステップS101)。ここでは、例えば、保持基板111側の絶縁膜81を、外枠部30の形成予定領域を残して選択的に除去する。
続いて、図28(A)に示したように、半導体膜113側の絶縁膜81上に、可動部材10等の形成予定領域に、フォトレジスト膜130を形成する。
フォトレジスト膜130を形成したのち、図28(B)に示したように、このフォトレジスト膜130をマスクとして、例えばディープRIE法により、半導体膜113を、可動部材10等の形成予定領域を残して、厚み方向の途中まで選択的に除去する(ステップS103)。このとき、除去される半導体膜113の厚みは例えば1μm程度とする。
半導体膜113を厚み方向の途中まで除去したのち、図28(C)に示したように、フォトレジスト膜130を除去する。次いで、図29(A)に示したように、半導体膜113側の絶縁膜81をマスクとして、例えばディープRIE法により、半導体膜113のうち厚み方向の途中まで除去した領域を、厚み方向の最後まで除去すると共に、可動部材形成予定領域10Aの一部を厚み方向の途中まで選択的に除去することにより桟構造11を形成する(ステップS104)。このとき、第1の実施の形態と同様に、半導体膜113の反射率を測定することにより厚みを検知することが好ましい。
桟構造11を形成したのち、図29(B)に示したように、SOI基板110の表面をフォトレジストよりなる保護膜140で覆う。続いて、図30(A)に示したように、例えばダイシングによりSOI基板110を切断し、SOI基板110に設けられている複数の可動部材形成予定領域10Aを個々に切り離す(ステップS105)。
複数の可動部材形成予定領域10Aを個々に切り離したのち、図30(B)に示したように、保持基板111側の絶縁膜81をマスクとし、エッチング液としてTMAHを用いた異方性エッチングにより、保持基板111のうち少なくとも可動部材形成予定領域10Aを選択的に除去する(ステップS106)。ここでは、例えば、保持基板111を、外枠部30の形成予定領域を残して選択的に除去する。
保持基板111を除去したのち、図31(A)に示したように、フォトレジストよりなる保護膜140を除去する。続いて、図31(B)に示したように、エッチング液としてBHFを用いたウェットエッチングにより、酸化層112のうち少なくとも可動部材形成予定領域10Aを選択的に除去し、可動部材10,支持部20,外枠部30,固定側電極40A〜40Dおよび回動側電極50A〜50Dを形成する(ステップS107)。ここでは、例えば、酸化層112を、外枠部30の形成予定領域を残して選択的に除去する。また、その際、絶縁膜81は、起動用電極80と外枠部30との間に挟まれた部分だけを残して除去される。エッチング終了後、第1の実施の形態と同様にして臨界乾燥を行う。
酸化層112および絶縁膜81を除去したのち、図31(C)に示したように、第1の実施の形態と同様にして、可動部材10に反射膜100を形成する(ステップS108)。以上により、図27に示した光制御素子が完成する。
この光制御素子では、第1の実施の形態と同様に、可動部材10の裏面に桟構造11が設けられているので、可動部材10を薄くして慣性モーメントを小さくすることができ、共振周波数を高めることができる。また、桟構造11により可動部材10が補強され、回動時の平坦性が高くなる。よって、高速で高精度に光が制御される。
また、この光制御素子では、可動部材10が静止状態の段階において、駆動用電源60がオンする。これにより可動部材10の共振周波数またはその倍数もしくは分数倍の駆動周波数を有する電圧が回動側電極50A〜50Dと固定側電極40A〜40Dとの間に印加され、この高周波電圧によって可動部材10が自励的に振動し始める。
自励振動が開始されると、この可動部材10は、その振動が増長され、回動角度が大きくなっていく。これ以降の制御部70による制御は、第1の実施の形態と同様である。
このように本実施の形態では、駆動用電源60に第1の実施の形態の起動用電源90の機能を持たせるようにしたので、簡素な構成で、可動部材10の自励振動を発生させることができるという効果がある。
なお、本実施の形態では、第1の実施の形態の製造方法により桟構造11を有する光制御素子を製造する場合について説明したが、第2の実施の形態の製造方法により製造するようにしてもよい。
〔第4の実施の形態〕
図32は本発明の第4の実施の形態に係る光制御素子の全体構成を表すものであり、図33はその断面構成を表すものである。この光制御素子は、可動部材10を支持部20により外枠部30に対して連結すると共に、外枠部30を外枠支持部220により固定部230に連結したことを除いては、第1の実施の形態と同一の構成を有している。以下、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
可動部材10、桟構造11、支持部20および反射膜100は、第1の実施の形態と同様の構成を有している。
外枠部30には第1固定側電極40A〜40Dが連結され、各々に対応して第1回動側電極50A〜50Dが設けられている。
外枠部30は、本実施の形態では可動部材10を取り囲むように設けられ、可動部材10と同様に同一のSOI基板から保持基板および酸化層を選択的に除去した半導体膜により構成されている。
また、この光制御素子は、第1の実施の形態と同様に、第1回動側電極50A〜50Dと第1固定側電極40A〜40Dとの間に静電駆動用の電圧を印加する第1駆動用電源60と、この第1駆動用電源60を制御するための制御部70と、可動部材10の起動を開始させるための起動用電極80と、この起動用電極80と可動部材10との間に接続された第1起動用電源90とを有している。なお、図19および図20では、第1駆動用電源60,制御部70,起動用電極80および第1起動用電源90は省略している。
支持部20に直交する方向に配置された外枠支持部220は、支持部20と同様の捩じ梁であり、その一端において外枠部30を可動部材10の駆動方向に対して直交する方向に回動可能に支持する。外枠支持部220も、可動部材10と共に同一のSOI基板から保持基板および酸化層を除去したのちの半導体膜により構成されている。
外枠支持部220の他端側は固定部230に固定されている。この固定部230は、可動部材10と共に同一のSOI基板から形成され、必要に応じて他の膜が形成された構造を有している。なお、固定部230は、必ずしも外枠部30全体を取り囲む必要はなく、少なくとも外枠支持部220の固定位置に設けられていればよい。
更に、この光制御素子は、外枠部30を駆動するための外枠駆動部200を備えている。これにより、この光制御素子では、可動部材10を二次元方向に変位させることができるようになっている。
この外枠駆動部200は、第2固定側電極240A,240B,240C,240Dと、第2回動側電極250A,250B,250C,250Dとを有するものである。なお、外枠駆動部200による外枠部30の駆動速度は、可動部材10の駆動速度よりも低速であってもよい。
第2固定側電極240A〜240Dは、固定部230に連結すると共にそれぞれ複数の櫛歯241A,241B,241C,241Dを有している。これら第2固定側電極240A〜240Dは、可動部材10と共に同一のSOI基板から保持基板および酸化層を除去したのちの半導体膜の平坦面に形成されている。
第2回動側電極250A〜250Dは、2個の外枠支持部220の各々の両側に、第2固定側電極240A〜240Dの各々に対応して配置されている。これら第2回動側電極250A〜250Dはそれぞれ外枠部30に連結すると共に、櫛歯241A〜241Dに対応して複数の櫛歯251A〜251Dを有している。第2回動側電極250A〜250Dも第2固定側電極240A〜240Dと同様の構造を有している。
第2回動側電極250A〜250Dについても、中立位置において第2固定側電極240A〜240Dと同一平面内にあり、両者の間には段差がないことは第1の実施の形態と同様である。これにより、第2固定側電極240A〜240Dおよび第2回動側電極250A〜250Dと、第1固定側電極40A〜40Dおよび第1回動側電極50A〜50Dとを同一工程で作製可能であり、従来の垂直櫛歯型のものに比べて製造工程を大幅に簡素化することができる。
更に、この光制御素子は、図示しないが、第2回動側電極250A〜250Dと第2固定側電極240A〜240Dとの間に高周波電圧を印加する第2駆動用電源と、外枠部30の初期駆動を促すための起動用電極と、この起動用電極と外枠部30との間に起動用の塵電圧を印加するための第2起動用電源とを有している。これら第2駆動用電源および第2起動用電源は、第1駆動用電源および第1起動用電源と同様に、制御部70を通じてオン/オフが制御されるようになっている。その基本的な原理は第1の実施の形態で説明したと同じであるので、説明は省略する。
この光制御素子は、第1固定側電極40A〜40Dおよび第1回動側電極50A〜50Dを作製するのと同一工程で、外枠支持部220、外枠部30、第2固定側電極240A〜240Dおよび第2回動側電極250A〜250Dを形成することを除いては、第1の実施の形態または第2の実施の形態と同様にして製造することができる。
本実施の形態では、第1固定側電極40A〜40Dおよび第1回動側電極50A〜50Dにより可動部材10が一方向に回動変位すると共に、第2固定側電極240A〜240Dおよび第2回動側電極250A〜250Dにより、外枠部30が可動部材10の回動方向とは直交する方向に変位する。これにより、可動部材10が二次元方向に変位する。
このように本実施の形態では、外枠部30に連結した外枠支持部220を捩り梁とし、これを軸として可動部材10と共に外枠部30を回動変位させるようにしたので、可動部材10を二次元方向に変位させることが可能になる。
以下、本発明の光制御素子の具体的な適用例について説明する。
図34は、本発明の光制御素子を用いた表示装置の一例を表すものである。この表示装置は、光源310からの光を光制御素子320により反射しスクリーン330上に映像Pとして投影するものである。光源310と光制御素子320との間には、光変調器340が設けられている。
光源310は、例えばレーザまたは発光ダイオードにより構成されていることが好ましい。レーザまたは発光ダイオードは、点光源に近く光密度が高いので、径の小さいビームにしやすいからである。
光制御素子320は、上記第4の実施の形態で説明した光制御素子により構成されている。これにより、この表示装置では、高速二次元駆動が可能であり、NTSCやハイビジョン対応の映像を1本の光を走査して表示することができるようになっている。
光変調器340は、光源310からの光信号に映像信号を重畳するためのものである。
この表示装置では、光源310からの光は、光変調器330により映像信号が重畳されたのち、光制御素子320に投入され、ここで本発明の可動部材10によりスクリーン340上を走査される。これにより、映像Pが表示される。
このように本実施の形態では、本発明の光制御素子を備えるようにしたので、高速二次元駆動が可能であり、NTSCやハイビジョン対応の映像を1本の光を走査して表示することができる。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、光制御素子および表示装置の構成を具体的に挙げて説明したが、光制御素子および表示装置の構成は上記実施の形態に限られない。例えば、可動部材10の形状は矩形状に限らず、その他任意の形状とすることができる。
また、例えば、第4の実施の形態は、第1の実施の形態の光制御素子だけでなく第3の実施の形態の光制御素子にも適用可能である。
更に、例えば、第4の実施の形態において、第2駆動部200には、電磁力または熱駆動などの静電力以外の駆動方法を用いてもよい。
加えて、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。例えば、上記実施の形態においては、TMAHの代わりに水酸化カリウム(KOH),ヒドラジン,エチレンジアミン−ピロカテコール−水(EPW)などを用いることも可能である。
更にまた、例えば、上記実施の形態では可動部材10として静電気力で駆動されるガルバノミラーを例として説明したが、ポリゴンミラー(回動型多面鏡)などの他のミラーでもよい。更に、本発明は、可動部材10としてミラーに限らずジャイロなど高速変位を要する機器を駆動する場合に広く適用可能である。
加えてまた、例えば、上記実施の形態では、本発明の光制御素子を映像表示やスキャナなどに適用できるとしたが、本発明は、例えば超小型バーコードリーダ,ビームスキャナ,レーザプリンタ,光スイッチ,プロジェクタ,レーザショウ用ビームスキャナ,ディスプレイ,二次元バーコードリーダ,距離センサ,レーザソナー,共焦点顕微鏡,レーザ顕微鏡,光造形プロトタイピング,レーザ加工機,PtoP(ピア・ツー・ピア)光通信,光通信などの他の電子機器にも広く適用可能である。
10…可動部材、11…桟構造、20…支持部、30…外枠部、40A〜40D…固定側電極,第1固定側電極、41A〜41D,51A〜51D,241A〜241D,251A〜251D…櫛歯、50A〜50D…回動側電極,第1回動側電極、60…駆動用電源、70…制御部、80…起動用電極、81…絶縁膜、90…起動用電源、100…反射膜、110…SOI基板、111…保持基板、112…酸化層、113…半導体膜、200…外枠駆動部、220…外枠支持部、230…固定部、240A〜240D…第2固定側電極、250A〜250D…第2回動側電極、310…光源、320…光制御素子、330…スクリーン、340…光変調器