JP2006291240A - 焼戻し軟化抵抗と靭性に優れるブレーキディスク - Google Patents

焼戻し軟化抵抗と靭性に優れるブレーキディスク Download PDF

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Abstract

【課題】 適正焼入れ硬さを有し、かつ焼戻し軟化抵抗性に優れかつ靭性にも優れたブレーキディスクを提案する。
【解決手段】 mass%で、C:0.1%以下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:10.5〜15.0%、N:0.1%以下を含み、かつ5Cr+10Si+15Mo+30Nb−9Ni−5Mn−3Cu−225N−270C<45 および0.03≦{(C+N)−(13/92)Nb}≦0.09 を満足する組成のステンレス鋼板から円盤形状のブレーキディスク用素材を加工し、焼入れ処理により、旧γ粒径が8μm以上15μm未満のマルテンサイト組織とする。これにより、適正焼入れ硬さを有するとともに、焼入れ軟化抵抗が高く、靭性に優れたブレーキディスクが得られる。なお、上記した組成に加えてさらに、焼戻し軟化抵抗性を向上させるために、Nbおよび/またはCuを含有してもよい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、オートバイ、自動車、自転車等のディスクブレーキに用いられるディスク(円盤)に係り、とくにブレーキパッドとの摩擦部が適正焼入れ硬さを有し、かつ焼戻し軟化抵抗が高く、焼戻し軟化抵抗に優れるとともに、靭性にも優れるブレーキディスクに関する。本発明でいう、「焼戻し軟化抵抗に優れる」とは、焼戻し軟化抵抗が高いことを意味し、制動時の摩擦熱により高温に保持されたのちの軟化が少なく、初期の適正硬さに近い硬さを維持できる特性を有することをいうものとする。
オートバイ、自動車、自転車等のディスクブレーキの機能は、ブレーキディスクとブレーキパッドとの摩擦により車輪の回転を抑え、車両を制動することにある。このため、ブレーキディスクには、適正硬さを有することが望まれている。硬さが軟らかいとブレーキの利きが弱くなると共にブレーキパッドとの摩擦により速く摩耗し、一方、硬すぎるとブレーキ鳴きが発生するという問題がある。ブレーキディスクの適正硬さとしては、HRC32〜38の硬さ範囲が推奨されている。ここで、HRCはJIS Z 2245に規定されるロックウェル硬さCスケールである。
ブレーキディスク用材料としては、従来から、硬さと耐食性の観点から、マルテンサイト系ステンレス鋼が使用されてきた。一時、SUS 420J2などの、炭素量が高いマルテンサイト系ステンレス鋼に、焼入れ焼戻し処理を施して使用されることもあったが、焼戻し処理の負荷が大きく、近年では、特許文献1や、特許文献2に示されるような、焼入れままで使用できる、低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼がブレーキディスク用材料として多く使用されるようになっている。
近年、地球環境保全の観点からオートバイや自動車等の燃費向上が要望されている。燃費向上には車体重量の軽量化が有効であり、車両の軽量化が指向されている。制動装置であるディスクブレーキも例外ではなく車両の更なる軽量化のために、ブレーキディスクの小型化、厚みの低減(薄肉化)などが図られている。
しかし、このブレーキディスクの小型化、薄肉化は、熱容量の低下を招き、制動時の摩擦熱によるブレーキディスクの温度上昇がより大きくなる。このため、このような小型化、薄肉化傾向に伴い、制動時のブレーキディスク温度が600℃以上になることが考えられ、従来の材料では、ブレーキディスクが焼戻されて軟化し耐久性が低下することが懸念され、焼戻し軟化抵抗が高い、焼戻し軟化抵抗に優れたブレーキディスクが要望されている。
このような要望に対し、例えば、特許文献3には、Ti、Nb、V、Zrのうちの1種または2種以上を適正量含有し、ディスクブレーキ使用中の昇温に伴う軟化を効果的に抑制し硬度低下を抑制できる、低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板が提案されている。
また、特許文献4には、NbあるいはNbに加えてさらにTi、V、Bを複合して適正量添加することにより焼戻し軟化を効果的に抑制できるとするディスクブレーキ用ステンレス鋼が提案されている。
また、特許文献5には、鋼中のC、N、Ni、Cu、Mn、Cr、Si、Mo、V、Ti及びAlの含有量の関係式であるGP値を50(%)以上に調整するとともに、Nb、Vを適正量含有することにより、使用時の昇温による材質劣化がほとんど生じない安価なディスクブレーキロータ用鋼が提案されている。
特開昭57-198249号公報 特開昭60-106951号公報 特開2002-146489号公報 特許第3315974号公報 特開2002−121656号公報
しかしながら、特許文献3、4,5に記載された技術では、コストの高い合金元素を比較的多量に添加する必要があり、ディスクブレーキの製造コストが高騰するうえ、600℃で長時間(1h程度)保持されると、硬さが急激に低下するという問題があった。また、ブレーキディスクは、安全に走行するうえで重要な部品であり、脆化割れを起こさない高い靭性を有することが必要である。
本発明は、こうした従来技術の問題を有利に解決し、適正焼入れ硬さを有し、かつ焼戻し軟化抵抗が高く、焼戻し軟化抵抗に優れ、かつ靭性にも優れたブレーキディスクを提案することを目的とする。
本発明者らは、上記した課題を達成するために、マルテンサイト系ステンレス鋼板製ブレーキディスクの焼戻し軟化抵抗に及ぼす各種要因について鋭意検討した。その結果、ブレーキディスク用材料を特定組成の低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼とし、ブレーキディスクの旧オーステナイト粒径を8μm以上とすることにより、適正焼入れ硬さを有し、かつ焼戻し軟化抵抗が顕著に向上することを新たに見出した。図1に、mass%で、0.055%C−0.1%Si−12%Cr−1.5%Mn−0.01%N−残部Feからなる組成の低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼について、焼戻し軟化抵抗におよぼす旧オーステナイト粒の平均粒径の影響を示す。焼入れは、焼入れ加熱温度で1min間保持したのち空冷(200℃までの平均で10℃/s)した。焼入れ後の金属組織を観察し、旧オーステナイト(以下、γともいう)粒の平均粒径を測定すると、焼入れ温度が1000℃の場合が6μm、1050℃の場合が8μm、1100℃の場合が12μmであった。1000℃〜1100℃の3水準の焼戻し軟化抵抗は、焼入れした試片を、600℃の温度で1h保持したのち空冷し、表面の酸化層を除去したのち、表面でHRC硬さを測定して評価した。図1から、旧オーステナイト粒の平均粒径を8μm以上とすることにより、とくに多量の合金元素を含有することなく、600℃で1h保持後で、HRC27以上という高硬度を維持できることがわかる。
この現象の機構については、現在までには明確となってはいないが、本発明者らは、つぎのように考えている。
焼戻し過程では、Cr等の合金元素が拡散し粒界に達したものは析出しやすく、粒界に粗大な析出物を形成する。微細な旧γ粒を有する金属組織では、粒内のCr等の合金元素から旧γ粒界までの距離が短く、焼戻しされると合金元素が容易に旧γ粒界に達し粗大な析出物(Cr炭化物)を形成する。そのため、粒内には微細な析出物の形成は少なくなる。しかも粗大な析出物は、析出強化への寄与が小さいため焼戻し軟化抵抗の増加には寄与しない。
一方、粗大な旧γ粒を有する金属組織では、粒内のCr、Nb等合金元素から旧γ粒界までの距離が長いため、焼戻されるとCr、Nb等合金元素が旧γ粒界まで達しにくく、微細な析出物(Cr炭窒化物、Nb炭窒化物等)が旧γ粒内にも析出する。この粒内の微細な析出物は転位運動の抵抗となり、焼戻し時硬さ低下を抑制するため、粗大な旧γ粒を有する金属組織では、焼戻し軟化抵抗が大きくなるものと推察される。
なお、過度に旧γ粒径が大きくなると、脆化しやすくなるため、旧γ粒の平均粒径は15μm未満とする必要があることを知見した。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)mass%で、C:0.1%以下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:10.5〜15.0%、N:0.1%以下を、次(1)式および(2)式
5Cr+10Si+15Mo+30Nb−9Ni−5Mn−3Cu−225N−270C<45 ………(1)
0.03≦{C+N−(13/92)Nb}≦0.09 ………(2)
(ここに、Cr、Si、Mo、Nb、Ni、Mn、Cu、N、C:各元素の含有量(mass%))
を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、旧オーステナイト粒の平均粒径が8μm以上15μm未満であるマルテンサイト組織を有し、焼戻し軟化抵抗と靭性に優れることを特徴とするブレーキディスク。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、mass%でCu:0.01%以上1.0%未満を含有する組成とすることを特徴とするブレーキディスク。
(3)(1)又は(2)において、600℃で1h保持する焼戻し処理後の硬さがHRCで27以上であることを特徴とするブレーキディスク。
(4)(1)において、前記組成に加えてさらに、mass%でCu:1.0〜3.0%を含有する組成とすることを特徴とするブレーキディスク。
(5)(1)において、前記組成に加えてさらに、mass%でNb:0.02〜0.6%を含有する組成とすることを特徴とするブレーキディスク。
(6)mass%で、C:0.1%以下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:10.5〜15.0%、N:0.1%以下、Nb:0.02〜0.6%を、次(1)式および(2)式
5Cr+10Si+15Mo+30Nb−9Ni−5Mn−3Cu−225N−270C<45 ………(1)
0.03≦{C+N−(13/92)Nb}≦0.09 ………(2)
(ここに、Cr、Si、Mo、Nb、Ni、Mn、Cu、N、C:各元素の含有量(mass%))
を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、かつ析出物として析出したNb量である析出Nbと、含有するNbの全量である全Nbとの比、(析出Nb/全Nb)が次(3)式
0.5<(析出Nb/全Nb)≦0.7 ………(3)
(ここに、析出Nb、全Nb:mass%)
を満足し、焼戻し軟化抵抗と靭性に優れることを特徴とするブレーキディスク。
(7)(6)において、前記組成に加えてさらに、旧オーステナイト粒の平均粒径が8μm以上15μm未満であるマルテンサイト組織を有することを特徴とするブレーキディスク。
(8)(5)ないし(7)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、mass%でCu:0.01~0.5%を含有する組成とすることを特徴とするブレーキディスク。
(9)(4)ないし(8)のいずれかにおいて、600℃で1h保持する焼戻し処理後の硬さがHRCで30以上であることを特徴とするブレーキディスク。
(10)(1)ないし(9)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、Mo:0.01〜2.0%、Ni:0.10〜2.0%のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とするブレーキディスク。
(11)(1)ないし(10)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、Co:0.01〜1.0%を含有する組成とすることを特徴とするブレーキディスク。
(12)(1)ないし(11)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.02〜0.3%、V:0.02〜0.3%、Zr:0.02〜0.3%、Ta:0.02〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とするブレーキディスク。
(13)(1)ないし(12)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、mass%で、B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とするブレーキディスク。
本発明によれば、旧オーステナイト粒径を適正範囲にすることだけで、HRC32〜38という適正焼入れ硬さを有しかつ、焼戻し軟化抵抗が高く、焼戻し軟化抵抗に優れ、かつ靭性にも優れたブレーキディスクを容易にしかも安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。
ブレーキディスクの製造手順は通常、つぎのとおりである。
まず、素材材料であるマルテンサイト系ステンレス鋼板から所定寸法の円盤を打抜き加工し、ブレーキディスク用素材とする。ついで、このブレーキディスク用素材に、制動時に発生する摩擦熱を逃がす穴をあける、などの加工を施したのち、ブレーキディスク用素材の所定領域、すなわちブレーキパッドが当たる部分である摩擦部に、高周波誘導加熱等により所定の焼入れ温度に加熱したのち冷却する、焼入れ処理を施し、所定領域(摩擦部)をマルテンサイト組織として所望の硬さに調整する。ついで、必要に応じ、円盤表面や打抜き剪断面に塗装を施したのち、焼入れ処理で形成された摩擦部の酸化層を研削等により除去し、製品(ブレーキディスク)とする。
本発明では、素材材料として、特定条件を満足する組成の低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板を使用する。使用する低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板としては、mass%で、C:0.1%以下、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:10.5〜15.0%、N:0.1%以下を含み、かつ次(1)式および(2)式
5Cr+10Si+15Mo+30Nb−9Ni−5Mn−3Cu−225N−270C<45 ………(1)
0.03≦{C+N−(13/92)Nb}≦0.09 ………(2)
(ここに、Cr、Si、Mo、Nb、Ni、Mn、Cu、N、C:各合金元素の含有量(mass%))
を満足するように各合金元素を含有する組成を有する鋼板とすることが好ましい。なお、本発明でいう「鋼板」は鋼帯をも含むものとする。また、鋼板は熱延鋼板、冷延鋼板のいずれでもよい。
まず、本発明で使用する素材材料の組成限定理由について、説明する。なお、以下、組成におけるmass%は、単に%と記す。
C:0.1%以下
Cは、Nとともに焼入れ後のブレーキディスクの硬さを決める元素であり、本発明では、0.01%以上、好ましくは0.03%以上含有することが望ましいが、0.1%を超えて含有すると、粗大なCr炭化物を形成し、発錆の起点となり、耐食性を低下させるとともに、靭性を低下させる。靭性、耐食性の観点から、Cは0.1%以下に限定した。なお、耐食性の観点から好ましくは0.05%未満である。
N:0.1%以下
Nは、Cと同様に、焼入れ後のブレーキディスクの硬さを決める元素である。また、Nは500〜700℃の温度範囲で微細なCr窒化物(CrN)を形成し、その析出硬化作用により焼戻し軟化抵抗を向上させる。このような効果を得るためには、Nは0.03%を超えて含有することが望ましい。一方、0.1%を超える含有は、靭性の低下を招くため、本発明ではNは0.1%以下に限定した。
Cr:10.5〜15.0%
Crは、ステンレス鋼の特徴である耐食性を向上させる有用な元素であり十分な耐食性を確保するためには、10.5%以上の含有を必要とする。一方、15.0%を超える含有は、加工性、靭性を低下させる。このため、Crは10.5〜15.0%に限定した。なお、耐食性の観点からは11.5%超、また靭性の観点からは13.5%以下とすることが好ましい。
Si:1.0%以下
Siは、脱酸剤として有力な元素であり、0.05%以上含有することが望ましい。また、Siはフェライト相を安定化する元素であり、1.0%を超える過剰な含有は焼入れ性を低下させて焼入れ硬さを低下させ、さらに靭性を低下させる。このため、Siは1.0%以下に限定した。なお、靭性の観点から、好ましくは0.5%以下である。
Mn:2.0%以下
Mnは、高温でのδ−フェライト相の生成を抑制し、焼入れ性を向上させ、安定した焼入れ硬さを得るために有用な元素であり、0.3%以上含有することが望ましい。一方、2.0%を超える過剰な含有は、耐食性を低下させる。このため、Mnは2.0%以下に限定する。なお、焼入れ性向上の観点からは好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは1.5%以上である。
本発明では、上記した基本成分を上記した範囲の内で、かつ次(1)および(2)式
5Cr+10Si+15Mo+30Nb−9Ni−5Mn−3Cu−225N−270C<45 ………(1)
0.03≦{C+N−(13/92)Nb}≦0.09 ………(2)
(ここに、Cr、Si、Mo、Nb、Ni、Mn、Cu、N、C:各合金元素の含有量(mass%)
を満足するように、含有する。なお、(1)式の左辺、(2)式の中間項の値の計算においては、0.01%未満のCu、0.02%未満のNb、0.01%未満のMo、0.10%未満のNiは含有しないものとして零として計算するものとする。
(1)式は、優れた焼入れ安定性を確保するための条件である。ここでいう「焼入れ安定性に優れた」とは、焼入れ加熱時にオーステナイト(γ)相が75体積%以上生成し、空冷以上の速い冷却による焼入れに際し、オーステナイト相がマルテンサイト相に変態し安定して所定の焼入れ硬さが確保でき、オーステナイト領域が広く、焼入れ加熱度範囲が広くとれることを意味する。(1)式の左辺が45以上では、焼入れ加熱時にオーステナイト相が75体積%以上生成しないか、あるいは生成する温度範囲が極端に狭くなり、安定した焼入れ硬さを確保できなくなる。このため、(1)式の右辺値を45未満に限定した。
(2)式は、焼入れ硬さを所定の適正範囲内の硬さとするための条件である。焼入れ硬さはC、N量と強い相関がある。一方、C、NがNbと結合しNb炭化物、Nb窒化物を形成すると、硬さには寄与しなくなる。そのため、焼入れ後の硬さは、鋼中のC、N量から析出物となり消費されたC、N量を差し引いた値で考える必要がある。(2)式の中間項が0.03未満では、ブレーキディスクの硬さが所定の適正範囲の下限値(HRC32)未満となり、一方、0.09を超えて大きくなると、上限値(HRC38)を超えて高くなる。このため、(2)式の中間項の値を0.03〜0.09の範囲に限定した。
本発明で使用する素材材料では、上記した基本成分範囲としたうえで、さらに、P:0.04%以下、S:0.010%以下、Al:0.2%以下に調整することが好ましい。
P:0.04%以下
Pは、熱間加工性を低下させる元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、過剰な低減は製造コストの高騰を招くため、0.04%を上限とすることが好ましい。なお、製造性の観点からはPは0.03 %以下とすることがより好ましい。
S:0.010%以下
Sは、Pと同様に、熱間加工性を低下させる元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、過剰な低減は製造コストの高騰を招くため0.010%を上限とすることが好ましい。なお、より好ましくは、製造性の観点からは0.005%以下である。
Al:0.2%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、製鋼上脱酸剤として添加するが、不可避的不純物として鋼中に過剰に残留させると、耐食性、靭性を低下させる。このため、Alは0.2%以下に限定することが好ましい。なお、耐食性の観点からより好ましくは0.05%以下である。
上記した基本成分に加えてさらに、耐食性の観点等からCu:0.01〜1.0%未満を前記(1)および(2)式を満足するように含有することができる。
Cu:0.01〜1.0%未満
Cuは、耐食性改善効果を有する元素であり、必要に応じその効果が得られる0.01%以上1.0%未満含有することが好ましい。なお、靭性の観点からは0.5%未満とすることがより好ましい。また、CuをNbと複合含有する場合には、0.5%超えて含有すると靭性が劣化するため、Cuは0.01〜0.5%の範囲に限定することが好ましい。
素材材料を上記した基本成分、あるいはさらに後述する選択成分を加えた範囲内の組成とし、ブレーキパッドとの摩擦部に後述する焼入れ処理を施し、旧γ粒の平均粒径が8μm以上15μm未満であるマルテンサイト組織とすることにより、600℃で1h保持する焼戻し処理後の硬さがHRC27以上となる焼戻し軟化抵抗を有するブレーキディスクとなる。
旧γ粒の平均粒径:8μm以上15μm未満
本発明のブレーキディスクでは、600℃以上で1h保持する焼戻し処理後の硬さをHRC27以上に維持するためには旧γ粒の平均粒径を8μm以上とする必要がある。旧γ粒の平均粒径が8μm未満では、上記したように、旧γ粒内に微細な析出物の析出が少なく、焼戻し軟化抵抗の増加が少ない。また、旧γ粒径が15μm以上になると、脆性破壊の破面単位が大きくなり靭性が低下する。
また、上記した基本成分に加えてさらに、Cu:1.0〜3.0%、またはNb:0.02〜0.6%を前記(1)および(2)式を満足するように含有することにより、焼戻し処理後の硬さがHRC30以上となるブレーキディスクとすることができる。
Cu:1.0〜3.0%
Cuは、1.0%以上含有すると、焼戻し処理でε−Cuとして微細に析出し、焼戻し軟化抵抗を向上させる元素であり、必要に応じ含有できる。しかし、3.0%を超えて含有すると、靭性が劣化する。このため、焼戻し軟化抵抗向上の目的で含有する場合には、Cuは1.0〜3.0%の範囲に限定することが好ましい。
Nb:0.02〜0.6%
Nbは、焼入れ後600℃程度の温度に保持された際に、炭窒化物を形成し析出硬化により、高温保持による硬さ低下を抑制する作用、すなわち焼戻し軟化抵抗を向上させる元素であり、必要に応じ含有できる。このような効果を得るためには、Nbを0.02%以上含有することが望ましいが、Nbを0.6%超えて含有すると、靭性が低下する。このため、Nb:0.02〜0.6%の範囲に限定することが好ましい。なお、焼戻し軟化抵抗の観点からは0.08%超、靭性の観点からは0.3%未満とすることが好ましい。
なお、本発明では、析出物として析出したNb量である析出Nbと、含有する全Nb量である全Nbとの比が、次(3)式
0.5<(析出Nb/全Nb)≦0.7 ………(3)
(ここで、析出Nb、全Nb:mass%)
を満足するように調整することが望ましい。焼入れ前(焼鈍時)の鋼板では、(析出Nb/全Nb)が0.9以上であり、焼入れ処理により、析出Nbの一部が固溶する。固溶したNbは、焼戻時に微細に析出し、析出強化をもたらす。(3)式が満足されない場合、すなわち、(析出Nb/全Nb)が0.7超では、固溶Nb量が少なくなり、焼戻し時に微細に析出するNb量が少なく、焼戻し軟化抵抗が低下する。(析出Nb/全Nb)を0.7以下にするためには、1000℃超え、好ましくは1050℃超、より好ましくは1100℃超の高温焼入れ処理を行うことが望ましい。
一方、(析出Nb/全Nb)が0.5未満では、固溶Nb量が多くなり、焼戻し時に微細に析出するNb量が多くなりすぎて、焼戻し軟化抵抗は高くなるが、破壊の起点となる析出物が過度に増加するため、靭性が著しく劣化する。なお、析出Nb量は、ブレーキディスクから採取した試料について、後述する電解処理により抽出された電解抽出残渣の化学分析により測定するものとする。なお、全Nb量は通常の化学分析により求めるものとする。
また、本発明では、上記した基本成分、あるいはさらに上記した選択成分の範囲内で、さらに必要に応じ、Mo:0.01〜2.0%、Ni:0.10〜2.0%のうちの1種または2種を前記(1)および(2)式を満足するように含有できる。
Mo:0.01〜2.0%、Ni:0.10〜2.0%のうちから選ばれた1種または2種
Mo、Niは、いずれも耐食性を向上させる元素であり、必要に応じ選択して含有できる。また、Niは、600℃以上の高温でのCr炭化物の析出を遅らせて、マルテンサイト組織の硬さ低下を抑制し、焼戻し軟化抵抗の向上にも寄与する。MoもNiと同様に、炭窒化物の析出を抑制し、焼戻し軟化抵抗を向上させる効果を有する。このような効果は、Moが0.01%以上、Niが0.10%以上の含有で認められる。なお、焼戻し軟化抵抗の観点からはMo:0.02%以上含有することが好ましい。一方、Moが2.0%、Niが2.0%を超えて含有しても、焼戻し軟化抵抗向上効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、Moは0.01〜2.0%、Niは0.10〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、Moの焼戻し軟化抵抗向上効果は0.05%未満の含有でも十分にあらわれる。またNiを0.5%以上含有すると、焼戻し軟化抵抗がさらに向上する。
本発明では、上記した基本成分、選択成分に加えてさらに、Co 、あるいはTi、V、Zr、Taのうちから選ばれた1種または2種以上、B、Caのうちから選ばれた1種または2種を、必要に応じ含有できる。
Co:0.01〜1.0%
Coは、耐食性向上に有効な元素であり、必要に応じて0.01%以上含有することが望ましい。一方、1.0%を超える含有は、靭性を低下させる。このため、Coは0.01〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、靭性の観点からより好ましくは0.3%以下である。
Ti:0.02〜0.3%、V:0.02〜0.3%、Zr:0.02〜0.3%、Ta:0.02〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上
Ti、V、Zr、Taはいずれも、炭窒化物を形成し析出硬化により焼戻し軟化抵抗を向上させる作用を有する元素であり、必要に応じ選択して1種または2種以上含有できる。このような効果は、Ti:0.02%以上、V:0.02%以上、Zr:0.02%以上、Ta:0.02%以上のそれぞれの含有で顕著となる。とくに、Vの焼戻し軟化抵抗向上効果は大きく、Vは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上含有することが好ましい。一方、Ti:0.3%、V:0.3%、Zr:0.3%、Ta:0.3%をそれぞれ超える含有は、靭性の低下が著しくなる。このため、Ti:0.02〜0.3%、V:0.02〜0.3%、Zr:0.02〜0.3%、Ta:0.02〜0.3%の範囲に限定することが好ましい。
B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種
B、Caは、微量の含有で鋼の焼入れ性を向上させる作用を有する元素であり、必要に応じ選択して含有できる。このような効果を得るためには、それぞれB:0.0005%以上、Ca:0.0005%以上の含有で認められるが、B:0.0050%、Ca:0.0050%をそれぞれ超える含有は耐食性を低下させる。このため、B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%の範囲に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、Na等のアルカリ金属、Mg、Ba等のアルカリ土類金属、Y、La等の希土類元素、Hf等の遷移元素が、それぞれ0.05%以下程度含有されていても、本発明の効果を何ら妨げるものではない。
上記した組成を有する素材材料の製造方法は、とくに限定されるものではなく、公知の製造方法がいずれも適用できる。たとえば、上記した組成の溶鋼を、転炉、電気炉等で溶製し、さらに溶鋼にVOD(Vacuum Oxygen Decarburization)、AOD(Argon Oxygen Decarburization)等の二次精錬を施したのち、公知の鋳造方法で鋼素材とされる。鋳造方法としては連続鋳造法とすることが、生産性および品質の観点から好ましい。
鋼素材はついで、好ましくは1100〜1250℃に加熱され、熱間圧延により所定板厚の熱延鋼板とされることが好ましい。ブレーキディスク用の素材材料としては板厚3〜8mm程度とすることが好ましい。熱延鋼板は、さらに熱延板焼鈍を施され、さらに必要に応じショットブラスト、酸洗等により脱スケールされて、ブレーキディスク用の素材材料とされる。なお、熱延板焼鈍はバッチ式箱型炉で、750超〜900℃の温度で、10h程度保持することが好ましい。この熱延板焼鈍により、鋼板の硬さはブレーキディスク用の素材材料として好適なHRB(ロックウェル硬さBスケール)75〜88となり、このままの硬さでブレーキディスク用素材材料として用いることができる。
素材材料から、打抜き等の加工により円盤状のブレーキディスク用素材を得る。得られたブレーキディスク用素材の所定の領域(ブレーキパッドとの摩擦部)に焼入れ処理を施し、ブレーキディスクとする。本発明における焼入れ処理は、γ領域内の1000℃超えの焼入れ加熱温度に加熱したのち、冷却速度:1℃/s以上の冷却速度で冷却する処理とする。
焼入れ加熱温度は、γ領域内の温度でとくに1000℃を超える温度とする。ここで、γ領域とはオーステナイト(γ)相が75体積%以上生成する領域をいうのが好ましい。焼入れ加熱温度が1000℃を超える温度とすることにより、適正な焼入れ硬さを確保できるとともに、平均粒径:8μm以上の旧γ粒を有するマルテンサイト組織とすることができ、前記したような高温保持後の硬さ低下が抑制され、焼戻し軟化抵抗が顕著に向上する。焼入れ加熱温度が1000℃以下では、高温保持後の硬さ低下が顕著となる。なお、焼戻し軟化抵抗の観点から、焼入れ加熱温度は好ましくは1050℃超、より好ましくは1100℃超である。
また、焼入れ加熱温度が1200℃を超えると、δ−フェライトの生成量が多くなり、75体積%以上のオーステナイト(γ)相を得ることができなくなる場合が多くなり、高温になるほど粒成長が速くなり、旧γ粒の平均粒径が15μm以上になる場合があるため、1200℃以下とすることが好ましい。焼入れ安定性の観点からは焼入れ加熱温度は1150℃以下とすることが好ましい。
なお、焼入れ加熱の保持時間は、フェライトからオーステナイトへの変態を十分に進行させるという観点から30s以上とすることが望ましい。
加熱後、1℃/s以上の冷却速度でMs点以下、望ましくは200℃以下まで冷却する。冷却速度が1℃/s未満では、焼入れ加熱温度で生成したオーステナイト相の一部が、フェライト相に変態し、マルテンサイト相の生成量が低下し焼入れ硬さを適正範囲内の硬さとすることができなくなる。なお、好ましくは5〜500℃/sである。安定した焼入れ硬さを確保するためには、100℃/s以上の冷却速度で冷却することが好ましい。
このようにして得られたブレーキディスクは、上記した低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼組成を有し、ブレーキパッドとの摩擦部を、焼入れにより旧γ粒の平均粒径が8μm以上15μm未満のマルテンサイト組織としたブレーキディスクであり、焼戻し軟化抵抗に優れるとともに、靭性に優れることを特徴とする。なお、焼入れ加熱方法は、とくに限定されないが、生産性の観点から高周波誘導加熱とすることが好ましい。
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
表1に示す組成の溶鋼を高周波溶解炉で溶製し、鋳造して鋼素材とした。ついで、これら鋼素材を通常の熱間圧延により、熱延鋼板(板厚:5mm)とした。さらにこれら熱延鋼板に800℃×8hの熱延板焼鈍(還元性ガス雰囲気、加熱後徐冷)を施した。ついでこれら熱延鋼板に酸洗処理を施し、表面のスケールを除去して、ブレーキディスク用素材材料とした。
これら素材材料から、試験材(大きさ:t×30×30mm)を採取し、表2に示す焼入れ加熱温度に加熱(保持:1min)したのち、表2に示す冷却速度で焼入れした。焼入れ後、試験片を採取して、金属組織観察、析出Nb量の測定、焼入れ安定性試験、焼戻し軟化抵抗試験、焼戻し処理後の靭性試験を実施した。試験方法はつぎのとおりとした。
(1)金属組織観察
焼入れ処理後、金属組織観察用試験片を採取し、該試験片の圧延方向と平行な板厚方向断面を研磨し、村上試液(赤血塩のアルカリ溶液(赤血塩:10g、カセイカリ:10g、水:100cc))で腐食し、旧γ粒界を現出させ、光学顕微鏡(400倍)で5視野以上(1視野:0.2×0.2mm)観察し、画像解析装置を用いて視野内に含まれる各粒の面積を測定し円相当直径を算出し、該各粒の円相当直径の平均値を各試験片の旧γ粒の平均粒径とした。
(2)析出Nb量の測定
焼入れ処理後、電解抽出用試験片を採取し、該試験片について電解液:10v/v%アセチルアセトン−1w/v%塩化テトラメチルアンモニウム−メタノール(AA系)を用いた電解処理を実施し、ろ過により残渣を抽出した。抽出された残渣について、高周波誘導結合プラズマ(Inductively Couped Plasma)発光分光方法によりNb量を測定し、析出物となっている析出Nb量とした。
(3)焼入れ安定性試験
焼入れ後の試験片に、酸洗処理を施して表面のスケールを除去したのち、JIS Z 2245の規定に準拠してロックウェル硬度計で表面硬さHRCを5点測定し、その平均値を焼入れ硬さとした。
(4)焼戻し軟化抵抗試験
焼入れ後の試験片に、さらに表2に示す条件の焼戻し処理(加熱保持後空冷)を実施した。焼戻し処理を施された試験片に、酸洗処理を施して表面のスケールを除去したのち、JIS Z 2245の規定に準拠してロックウェル硬度計で表面硬さHRCを5点測定し、その平均値を求め、焼戻し軟化抵抗を評価した。
(5)焼戻し処理後の靭性試験
表2に示す、焼入れ処理および焼戻し処理を施した試験片に、酸洗処理を施して表面のスケールを除去したのち、JIS Z 2202の規定に準拠したVノッチ試験片(幅:5mmのサブサイズ)を5個づつ採取した。これらの試験片を用いて、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度:25℃におけるシャルピー衝撃値を測定した。5個の試験片の平均値をもとめ、その値が、50J/cm以上であれば、靭性は実用上問題ないとして評価した。
得られた結果を表2に示す。
なお、表2に中に示すγ領域の最高温度とは、オーステナイト(γ)相が75体積%以上生成する温度の最高温度をいう。それ以上の温度では、δ相(フェライト相)が増加しγ相を75体積%以上確保できなくなる。
Figure 2006291240
Figure 2006291240
Figure 2006291240
Figure 2006291240
本発明例はいずれも、焼入れ硬さがHRC32〜38の範囲内にあり、焼入れ安定性に優れ、さらに高い焼戻し軟化抵抗と優れた靭性を有している。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、焼入れ硬さがHRC32〜38の範囲を外れるか、あるいは焼戻し軟化抵抗、靭性が低下している。旧γ粒の平均粒径が本発明の範囲を外れる比較例では、焼戻し後の硬さが低く所望の硬さを満足できない。
焼戻し軟化抵抗におよぼす旧オーステナイト粒の平均粒径の影響を示すグラフである。

Claims (13)

  1. mass%で、
    C:0.1%以下、 Si:1.0%以下、
    Mn:2.0%以下、 Cr:10.5〜15.0%、
    N:0.1%以下
    を、下記(1)式および(2)式を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、旧オーステナイト粒の平均粒径が8μm以上15μm未満であるマルテンサイト組織を有し、焼戻し軟化抵抗と靭性に優れることを特徴とするブレーキディスク。

    5Cr+10Si+15Mo+30Nb−9Ni−5Mn−3Cu−225N−270C<45 ………(1)
    0.03≦{C+N−(13/92)Nb}≦0.09 ………(2)
    ここに、Cr、Si、Mo、Nb、Ni、Mn、Cu、N、C:各元素の含有量(mass%)
  2. 前記組成に加えてさらに、mass%でCu:0.01%以上1.0%未満を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載のブレーキディスク。
  3. 600℃で1h保持する焼戻し処理後の硬さがHRCで27以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレーキディスク。
  4. 前記組成に加えてさらに、mass%でCu:1.0〜3.0%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載のブレーキディスク。
  5. 前記組成に加えてさらに、mass%でNb:0.02〜0.6%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載のブレーキディスク。
  6. mass%で、
    C:0.1%以下、 Si:1.0%以下、
    Mn:2.0%以下、 Cr:10.5〜15.0%、
    N:0.1%以下、 Nb:0.02〜0.6%
    を、下記(1)式および(2)式を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、かつ析出物として析出したNb量である析出Nbと、含有するNbの全量である全Nbとの比、(析出Nb/全Nb)が下記(3)式を満足し、焼戻し軟化抵抗と靭性に優れることを特徴とするブレーキディスク。

    5Cr+10Si+15Mo+30Nb−9Ni−5Mn−3Cu−225N−270C<45 ………(1)
    0.03≦{C+N−(13/92)Nb}≦0.09 ………(2)
    0.5<(析出Nb/全Nb)≦0.7 ………(3)
    ここに、Cr、Si、Mo、Nb、Ni、Mn、Cu、N、C:各元素の含有量(mass%)
    析出Nb、全Nb:mass%
  7. 前記組成に加えてさらに、旧オーステナイト粒の平均粒径が8μm以上15μm未満であるマルテンサイト組織を有することを特徴とする請求項6に記載のブレーキディスク。
  8. 前記組成に加えてさらに、mass%でCu:0.01~0.5%を含有する組成とすることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のブレーキディスク。
  9. 600℃で1h保持する焼戻し処理後の硬さがHRCで30以上であることを特徴とする請求項5ないし8のいずれかに記載のブレーキディスク。
  10. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Mo:0.01〜2.0%、Ni:0.10〜2.0%のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のブレーキディスク。
  11. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Co:0.01〜1.0%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のブレーキディスク。
  12. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.02〜0.3%、V:0.02〜0.3%、Zr:0.02〜0.3%、Ta:0.02〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のブレーキディスク。
  13. 前記組成に加えてさらに、mass%で、B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載のブレーキディスク。
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