JP5310793B2 - 耐熱性と耐食性に優れるディスクブレーキ用ステンレス鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、オートバイ、自動車、自転車等のディスクブレーキのディスク(回転盤)用として好適なステンレス鋼板に係り、とくに適正な焼入れ硬さが得られ、かつ制動時の摩擦熱により高温で焼戻された後でも、軟化が少なく適正な硬さを維持でき、かつ耐食性の低下が小さい、耐熱性と耐食性に優れたディスクブレーキ用ステンレス鋼板に関する。なお、本発明でいう鋼板には鋼帯をも含むものとする。
オートバイ、自動車、自転車等のディスクブレーキの機能は、ブレーキディスクとブレーキパッドとの摩擦により車輪の回転を抑え、車両を制動することにある。このため、ブレーキディスクには、適正硬さを有することが望まれている。硬さが軟らかいとブレーキの利きが弱くなると共にブレーキパッドとの摩擦により速く摩耗し、一方、硬すぎるとブレーキ鳴きが発生しやすくなるという問題が生じる。ブレーキディスクの適正硬さとしては、HRC32〜38の硬さ範囲が推奨されている。ここで、HRCは、JIS Z 2245に規定されるロックウェル硬さ(Cスケール)である。
ブレーキディスク用材料としては、従来から、硬さと耐食性の観点から、マルテンサイト系ステンレス鋼板が使用されてきた。一時、SUS 420J2などの、炭素量が高いマルテンサイト系ステンレス鋼板に、焼入れ焼戻し処理を施して使用されることもあったが、製造上の負荷が大きく、近年では、特許文献1や、特許文献2に示されるような、焼入れままで使用できる、低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板がブレーキディスク用材料として多く使用されるようになっている。
近年、地球環境保全の観点からオートバイや自動車等の燃費向上が要望されている。燃費向上には車体重量の軽量化が有効であり、車両の軽量化が指向されている。制動装置であるディスクブレーキも例外ではなく車両の更なる軽量化のために、ブレーキディスクの小型化、厚みの低減(薄肉化)等が図られている。
しかし、このブレーキディスクの小型化、薄肉化は、熱容量の低下を招き、制動時の摩擦熱によるブレーキディスクの温度上昇がより大きくなる。このため、このような小型化、薄肉化傾向に伴い、制動時のブレーキディスク温度が600℃程度まで上昇することが考えられる。このため、従来の材料では、ブレーキディスクが焼戻されて軟化し耐久性が低下するとともに耐食性も低下することが懸念され、耐熱性および耐食性に優れたブレーキディスク用材料が要望されている。
このような要望に対し、例えば、特許文献3には、Ti、Nb、V、Zrのうちの1種または2種以上を適正量含有し、ディスクブレーキ使用中の昇温に伴う軟化を効果的に抑制し硬度低下を抑制できる、低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板が提案されている。
また、特許文献4にはNb、あるいはNbに加えてさらにTi、V、Bを複合して適正量添加することにより、焼戻し軟化を効果的に抑制できるとするディスクブレーキ用ステンレス鋼が提案されている。
また、特許文献5には、鋼中のC、N、Ni、Cu、Mn、Cr、Si、Mo、V、TiおよびAlの含有量の関係式であるGP値を50(%)以上に調整するとともに、Nb、Vを適正量とすることにより、使用時の昇温による材質劣化をほとんど生じない、安価なディスクブレーキロータ用鋼が提案されている。
また、特許文献6には、C+N量を特定範囲に制限し、オーステナイト形成元素であるMn、Ni、Cuを適量、さらにNbを適量含有し、Zr、Ti、Taのうちの1種又は2種以上を含有して、焼入れのままで所望の硬さを確保でき、焼戻し軟化抵抗を有する、制動発熱軟化抵抗の高いディスクブレーキ用マルテンサイト系ステンレス鋼が提案されている。
特開昭57−198249号公報 特開昭60−106951号公報 特開2002−146489号公報 特許第3315974号公報 特開2002−121656号公報 特開2001−192779号公報
しかしながら、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6に記載された技術では、高価な合金元素を比較的多量に添加する必要があり、ディスクブレーキの製造コストが高騰するうえ、600℃で長時間(2h程度)保持されると、硬さが急激に低下し、同時に耐食性も低下するという問題があった。
本発明は、こうした従来技術の問題を有利に解決し、適正焼入れ硬さを確保できるとともに、600℃で2h保持したのちの硬さが、JIS Z 2245で規定されるHRC(ロックウェル硬さCスケール)で32以上を確保でき、耐食性の低下も少ない耐熱性および耐食性に優れたディスクブレーキ用ステンレス鋼板を提案することを目的とする。
本発明者らは、上記した課題を達成するために、マルテンサイト系ステンレス鋼板の耐熱性の指標となる焼戻し軟化抵抗および耐食性におよぼす合金元素の影響について鋭意検討した。その結果、NbおよびNiを適正量含有し、さらにVを添加し、高N化して相対的に低Cとすることにより、600℃で2h程度焼戻されたのちでも、HRCで32以上の高い硬さを維持することができるとともに、耐食性の低下も少ないことを知見した。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)mass%で、C:0.02%以上0.10%未満、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜2.5%、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Cr:11.5%超15.0%以下、Ni:0.1〜1.0%、Al:0.10%以下、Nb:0.08%超0.3%未満、V:0.02〜0.3%、N:0.03%超0.10%以下に加えて、更に、Cu:0.05〜0.5%、Mo:0.01〜2.0%、Co:0.01〜2.0%のうちから選ばれた1種または2種以上を、次(1)〜(3)式
0.03≦{C+N−(13/93)Nb}≦0.10 ………(1)
(5Cr+10Si+15Mo+30Nb+50V−9Ni−5Mn−3Cu−225N−270C)≦45………(2)
{(14/50)V+(14/90) Nb}<N ………(3)
(ここに、Cr、Si、Mo、Nb、Ni、Mn、Cu、V、N、C:各元素の含有量(mass%)) を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする耐熱性および耐食性に優れたディスクブレーキ用ステンレス鋼板。
(2)(1)に記載のディスクブレーキ用ステンレス鋼板を素材として、1000℃以下に加熱し焼入れしてなるディスクブレーキ用ディスク。
本発明によれば、耐食性に優れ、HRC32〜38という適正焼入れ硬さを確保でき、かつ、600℃で2h保持の焼戻し後にもなお、HRC32以上の高硬度を維持できるとともに、耐食性の低下も少ない、耐熱性および耐食性に優れたブレーキディスク用ステンレス鋼板を容易にしかも安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。本発明によれば、耐久性に優れた、オートバイ、自動車、自転車、スノーモービル等のディスクブレーキ用ディスク(回転盤)を安価に製造できるという効果もある。
まず、本発明のブレーキディスク用ステンレス鋼板の組成限定理由について説明する。なお、以下、組成におけるmass%は、単に%と記す。
C:0.02%以上0.10%未満
Cは、焼入れ後の硬さを決定する元素であり、HRC32〜38の範囲の適正焼入れ硬さを確保するために、本発明では、0.02%以上含有することが望ましい。一方、0.10%以上含有すると、高温で焼戻された際に、粗大なCr炭化物を形成するため、発錆の起点となり、耐食性を低下させるとともに、靭性を低下させる。このため、Cは0.10%未満に限定した。なお、耐食性の観点から、好ましくは0.05%未満である。
Si:1.0%以下
Siは、脱酸剤として作用する元素であり、本発明では0.05%以上含有することが望ましいが、Siはフェライト相を安定化する元素であり、1.0%を超える過剰な含有は焼入れ硬さを低下させ、さらには靭性を低下させる。このため、Siは1.0%以下に限定した。なお、靭性の観点から、好ましくは0.3%以下である。
Mn:1.0〜2.5%
Mnは、高温でのフェライト相の生成を抑制し、焼入れ性を向上させ、安定した焼入れ硬さを得るために有用な元素であり、1.0%以上含有する。一方、2.5%を超える過剰な含有は、耐食性を低下させる。このため、Mnは1.0〜2.5%の範囲に限定した。なお、焼入れ性の観点から、好ましくは1.5%以上である。
P:0.04%以下
Pは、熱間加工性を低下させる元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、過剰な低減は製造コストの高騰を招くため、0.04%を上限とした。なお、製造性の観点からは好ましくは0.02%以下である。
S:0.01%以下
Sは、Pと同様に、熱間加工性を低下させる元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、過剰な低減は製造コストの高騰を招くため0.01%を上限とした。なお、製造性の観点からは好ましくは0.005%以下である。
Cr:11.5%超15.0%以下
Crは、ステンレス鋼の特徴である耐食性を向上させる有用な元素であり十分な耐食性を確保するためには、11.5%を超える含有を必要とする。一方、15.0%を超える含有は、加工性、靭性を低下させる。このため、Crは11.5%超15.0%以下に限定した。なお、耐食性の観点から好ましくは12.0%以上、靭性の観点から13.5%以下である。
Ni:0.1〜1.0%
Niは、耐食性を向上させる元素であり、0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える含有は、Crの拡散速度を低下させ、熱延板の軟化焼鈍に長時間を必要とするようになり、生産性が低下する。このため、本発明ではNiは0.1〜1.0%の範囲に限定した。なお、好ましくは耐食性の観点から0.3%以上、生産性の観点からは0.8%以下である。
Al:0.10%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、製鋼上脱酸剤として添加するが、鋼中に過剰に残留させると、加工性、靭性を低下させる。このため、Alは0.10%以下に限定した。なお、好ましくは0.01%未満である。
Nb:0.08%超0.3%未満
Nbは、C、Nと強い結合力を有し、Nb炭化物、Nb窒化物を形成し、焼入れ後600℃付近の温度に保持された際の歪の回復(焼入れ時に導入された歪の回復)を抑制し、焼戻し軟化抵抗を増加させ耐熱性を改善する。このような効果を得るためには、0.08%を超えて含有する必要があるが、0.6%を超えて含有すると、靭性が低下する。なお、好ましくは、耐熱性の観点から0.11%以上、靭性の観点から0.3%未満である。
V:0.02〜0.3%
Vは、600〜700℃で微細な炭化物(VC)、窒化物(VN)を形成し、析出硬化により焼戻し軟化抵抗を増加させ、耐熱性を改善する元素であり、本発明では0.02%以上含有させる必要がある。特にVNの耐熱性改善効果は顕著であり、Vは高Nと組み合わせると、一層大きな効果を発揮する。一方、0.3%を超える含有は、靭性を低下させる。このため、Vは0.02〜0.3%の範囲に限定した。なお、耐熱性の観点から好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上である。
N:0.03%超0.10%以下
Nは、Cと同様に、焼入れ後の硬さを決定する元素である。また、固溶Nは耐食性を向上させる効果をもつ。さらに、Nは500〜700℃の温度範囲で微細なCr窒化物を形成し、析出硬化作用により焼戻し軟化抵抗を上昇させ、鋼板(ディスク)の耐熱性を向上させる。 また、焼戻し時に析出するCr炭化物は粗大であり、発錆の起点となるが、Cr窒化物は微細であり発錆の起点とならず、焼戻し後の耐食性の低下が少ない。したがって、高N化し、相対的に低C化とした方が同じ焼入れ硬さであっても、耐熱性、耐食性は優れることになる。このような効果を得るためには、Nは0.03%を超えて含有する必要がある。一方、0.10%を超える含有は、靭性の低下を招く。このため、本発明ではNは0.03%超0.10%以下に限定した。なお、耐熱性および耐食性の観点から、好ましくは0.040%以上である。
本発明では、上記した基本成分を上記した範囲内で、かつ次(1)〜(3)式
0.03≦{C+N−(13/93)Nb}≦0.10 ………(1)
(5Cr+10Si+15Mo+30Nb+50V−9Ni−5Mn−3Cu−225N−270C)≦45………(2)
{(14/50)V+(14/90) Nb}<N ………(3)
(ここで、Cr、Si、Mo、Nb、V、Ni、Mn、Cu、N、C:各合金元素の含有量(mass%))
を満足するように含有する。なお、(2)式の左辺値の計算においては、Mo含有量が0.01%未満、Cu含有量が0.05%未満の場合には、それぞれMo、Cuを零として計算するものとする。
(1)式は、焼入れ硬さを所定の適正範囲内の硬さとするための条件である。焼入れ硬さは固溶C、N量と強い相関がある。C、NがNbと結合しNb炭化物、Nb窒化物を形成すると、硬さには寄与しなくなる。そのため、焼入れ後の硬さは、鋼中のC、N量から析出物となり消費されたC、N量を差し引いた値で考える必要がある。なお、Cr炭窒化物およびV炭窒化物は、焼入れ加熱時には分解し、固溶するため、CrおよびVは焼入れ硬さに影響するC、Nを消費することはない。(1)式の中間項が0.03未満では、焼入れ硬さが所定の適正範囲の下限値(HRC32)未満となり、一方、0.10を超えて大きくなると、上限値(HRC38)を超えて高くなる。このため、(1)式の中間項の値を0.03〜0.10の範囲に限定した。
(2)式は、優れた焼入れ安定性を確保するための条件である。ここでいう「焼入れ安定性に優れた」とは、焼入れ加熱時にオーステナイト相が80体積%以上生成し、空冷以上の冷却による焼入れに際し、マルテンサイト相に変態し安定して所定の焼入れ硬さが確保できることを意味する。(2)式の左辺が45超えでは、焼入れ加熱時にオーステナイト相が80体積%以上生成する温度範囲が狭くなり、安定した焼入れ硬さを確保できなくなる。このため、(2)式の左辺値を45以下に限定した。
(3)式は、硬さと耐食性を向上させる固溶Nの安定確保と、窒化物による耐熱性向上のための条件であり、N含有量が(3)式を満足しない場合には、焼戻し時にNbあるいはVの窒化物を生成するためのNが不足し、Nb窒化物、V窒化物およびCr窒化物が十分に析出されず、耐熱性が低くなる。また、析出物を作らずに残る固溶N量が少なくなるため、耐食性も低くなる。
また、本発明では、上記した基本成分範囲としたうえで、更に、Cu:0.05〜0.5%、Mo:0.01〜2.0%、Co:0.01〜2.0%のうちの1種または2種以上を、前記(1)〜(3)式を満足するように含有する。
Cu、Mo、Coはいずれも耐食性を向上させる元素であり、1種又は2種以上を含有できる。
Cuは、耐食性を向上させる元素であり、含有する場合は0.05%以上とすることが好ましい。一方、0.5%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、Cuは0.05〜0.5%の範囲に限定することが好ましい。
Mo、Coも耐食性を向上させる元素であり、含有する場合には、Mo、Coとも0.01%以上含有することが好ましい。一方、Moが2.0%、Coが2.0%を超えて含有しても、耐食性向上効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、Moは0.01〜2.0%、Coは0.01〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、耐食性の観点からはMo、Coとも0.5%以上1.0%未満とすることがより好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、Na等のアルカリ金属、Mg、Ba等のアルカリ土類金属、Y、La等の希土類元素、Hf等の遷移元素が、0.05%以下程度含有されていても、本発明の効果を何ら妨げるものではない。
なお、本発明のステンレス鋼板は、熱延鋼板あるいは冷延鋼板のいずれでもよい。
本発明のステンレス鋼板の製造方法は、とくに限定されず、一般に採用されているステンレス鋼板の製造方法がいずれも適用できるが、例えば、つぎのような製造方法とすることが好ましい。
上記した組成の溶鋼を、転炉、電気炉等で溶製し、さらに溶鋼にVOD(Vacuum Oxygen Decarburization)、AOD(Argon Oxygen Decarburization)等の二次精錬を施したのち、公知の鋳造方法で鋼素材とされる。鋳造方法としては連続鋳造法とすることが、生産性および品質の観点から好ましい。
ついで、鋼素材は、好ましくは1100〜1250℃に加熱され、熱間圧延により所定板厚の熱延鋼板とされる。ブレーキディスク用としては板厚3〜8mm程度とすることが好ましい。熱延鋼板は、さらに熱延板焼鈍を施され、さらに必要に応じショットブラスト、酸洗等により脱スケールされ、ブレーキディスク用素材材料とすることが好ましい。この熱延板焼鈍により、熱延鋼板の硬さは、ブレーキディスク用素材として好適な、JIS Z 2245で規定されるHRB(ロックウェル硬さBスケール)で75〜88となり、このままの硬さでブレーキディスク用素材材料として用いることができる。なお、熱延板焼鈍後に、形状矯正のため、レベラーやスキンパスを施してもよい。また、熱延板焼鈍は750℃超900℃以下とすることが好ましい。
熱延板焼鈍は、焼鈍温度での数時間以上の保持を必要とするため、バッチ式箱型炉を用いることが好ましい。焼鈍温度での保持が終了したのち、箱型炉内で徐冷されるが、生産性の観点から、冷却速度は焼鈍温度から500℃までを20℃/h超えとすることが好ましい。
なお、ブレーキディスクの厚さが薄い(およそ3mm未満)場合には、上記した熱延鋼板にさらに冷間圧延を施し、必要に応じて焼鈍と、さらに必要に応じ酸洗等の脱スケールを行いブレーキディスク用素材材料とすることができる。
なお、ブレーキディスクの製造手順は通常、つぎのとおりである。
上記したステンレス鋼板を素材材料として、該ステンレス鋼板から所定寸法の円盤を打抜き加工し、ブレーキディスク用素材とする。ついで、このブレーキディスク用素材に、制動時に発生する摩擦熱を逃がす穴をあける、などの加工を施したのち、ブレーキディスク用素材の所定領域、すなわちブレーキパッドが当たる部分である摩擦部に、高周波誘導加熱等により所定の焼入れ加熱温度に加熱したのち冷却する、焼入れ処理を施し、所定領域(摩擦部)を所望の硬さに調整する。なお、本発明のステンレス鋼板であれば、焼入れ加熱温度を通常の焼入れ加熱温度である900〜1000℃の範囲の温度としても、十分適正焼入れ硬さを確保でき、優れた耐熱性と耐食性を兼備できる。
ついで、必要に応じ、焼入れ処理で形成された酸化スケール等を研削等により除去し、あるいはさらに必要に応じ摩擦部以外の領域に塗装を施したのち、摩擦面等を研磨して製品(ブレーキディスク)とする。
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
表1に示す組成の溶鋼を高周波炉で溶解し、100kgfの鋼塊(鋼素材)とした。ついで、これら鋼素材を通常の熱間圧延により、熱延板(板厚:5mm)とした。さらにこれら熱延板に800℃×8hの熱延板焼鈍(還元性ガス雰囲気、加熱後徐冷)を施した。ついでこれら熱延板に酸洗処理を施し、表面のスケールを除去して、ブレーキディスク用素材材料とした。
これら素材材料から、試験材(大きさ:t×30×30mm)を採取し、表2に示す焼入れ加熱温度に加熱(保持:10min)したのち、空冷する焼入れ処理を施した。焼入れ処理後、焼入れ安定性試験、耐熱性試験を実施した。試験方法はつぎのとおりとした。
(1)焼入れ安定性試験
焼入れ後の試験片(大きさ:t×30×30mm)に、研削により表面のスケールを除去したのち、JIS Z 2245の規定に準拠してロックウェル硬度計で表面硬さHRCを5点測定し、その平均値をその材料の焼入れ硬さとした。焼入れ硬さが、HRCで32〜38の場合、評価として○、HRCで32〜38以外の場合、評価として×とした。
(2)耐熱性試験
焼入れ後の試験片(大きさ:t×30×30mm)に、さらに600℃×2hの焼戻し処理(処理後空冷)を実施した。焼戻し処理を行った試験片に、研削により表面のスケールを除去したのち、JIS Z 2245の規定に準拠してロックウェル硬度計で表面硬さHRCを5点測定し、その平均値を求め、耐熱性を評価した。
また、これら素材材料から試験材を2枚ずつ採取し、該試験材に、1000℃に加熱(保持:10min)したのち、空冷する焼入れ処理を施した。ついでうち1枚に600℃で2h保持する焼戻し処理(処理後空冷)を施した。
以上の焼入れまま、および焼戻し処理後の試験材に、耐食性試験を実施した。試験方法はつぎのとおりとした。
(3)耐食性試験
試験材から、試験片(大きさ:t×70×150mm)を採取し、表面を#320エメリー研磨紙で湿式研磨したのち、複合サイクル腐食試験(CCT:Cyclic Corrosion Test)を実施した。CCT条件は、0.5質量%NaCl水溶液の噴霧(室温35℃)を2.5h、ついで、乾燥(室温60℃)を1.0h、ついで、湿潤(室温50℃、湿度95%)を1.0hを1サイクルとして、4サイクルの試験とした。試験後、試験片表面を目視で観察し、発錆点の数を測定した。発錆点なしを○、1〜4個を△、5個以上を×として評価した。△、○を耐食性に優れたものとして評価した。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0005310793
Figure 0005310793
Figure 0005310793
Figure 0005310793
本発明例はいずれも、焼入れ硬さがHRC32〜38の範囲内にあり、焼入れ安定性に優れ、さらに600℃×2hの焼戻し処理後でHRC32以上の優れた耐熱性を有し、さらに焼入れままおよび焼戻し処理後の耐食性にも優れている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、焼入れ硬さがHRC32〜38の範囲を外れるか、あるいは耐熱性、または焼入れままあるいは焼戻し処理後の耐食性が低い。

Claims (2)

  1. mass%で、
    C:0.02%以上0.10%未満、 Si:1.0%以下、
    Mn:1.0〜2.5%、 P:0.04%以下、
    S:0.01%以下、 Cr:11.5%超15.0%以下、
    Ni:0.1〜1.0%、 Al:0.10%以下、
    Nb:0.08%超0.3%未満、 V:0.02〜0.3%、
    N:0.03%超0.10%以下
    に加えて、更に、Cu:0.05〜0.5%、Mo:0.01〜2.0%、Co:0.01〜2.0%のうちから選ばれた1種または2種以上を、下記(1)〜(3)式を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする耐熱性および耐食性に優れたディスクブレーキ用ステンレス鋼板。

    0.03≦{C+N−(13/93)Nb}≦0.10 ………(1)
    (5Cr+10Si+15Mo+30Nb+50V−9Ni−5Mn−3Cu−225N−270C)≦45
    ………(2)
    {(14/50)V+(14/90) Nb}<N ………(3)
    ここに、Cr、Si、Mo、Nb、Ni、Mn、Cu、V、N、C:各元素の含有量(mass%)
  2. 請求項1に記載のディスクブレーキ用ステンレス鋼板を素材として、1000℃以下に加熱し焼入れしてなるブレーキ用ディスク。
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