JP4182865B2 - 耐焼戻し軟化性に優れるディスクブレーキ用ステンレス鋼板 - Google Patents

耐焼戻し軟化性に優れるディスクブレーキ用ステンレス鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、オートバイ、自動車、自転車等のディスクブレーキのディスク(回転体)用として好適なステンレス鋼板に係り、とくに適正な焼入れ硬さが得られ、かつ制動時の摩擦熱により高温で焼戻された後でも軟化せず適正な硬さを維持できる耐焼戻し軟化性に優れたディスクブレーキ用ステンレス鋼板に関する。なお、本発明でいう鋼板には鋼帯をも含むものとする。
オートバイ、自動車、自転車等のディスクブレーキの機能は、ブレーキディスクとブレーキパッドとの摩擦により車輪の回転を抑え、車両を制動することにある。このため、ブレーキディスクには、適正硬さを有することが望まれている。硬さが軟らかいとブレーキの利きが弱くなると共にブレーキパッドとの摩擦により速く摩耗し、一方、硬すぎるとブレーキ鳴きが発生するという問題がある。ブレーキディスクの適正硬さとしては、HRC32〜38の硬さ範囲が推奨されている。ここで、HRCは、JIS Z 2245に規定されるロックウェル硬さ(Cスケール)である。
ブレーキディスク用材料としては、従来から、硬さと耐食性の観点から、マルテンサイト系ステンレス鋼板が使用されてきた。一時、SUS 420J2などの、炭素量が高いマルテンサイト系ステンレス鋼板に、焼入れ焼戻し処理を施して使用されることもあったが、製造上の負荷が大きく、近年では、特許文献1や、特許文献2に示されるような、焼入れままで使用できる、低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板がブレーキディスク用材料として多く使用されるようになっている。
近年、地球環境保全の観点からオートバイや自動車等の燃費向上が要望されている。燃費向上には車体重量の軽量化が有効であり、車両の軽量化が指向されている。制動装置であるディスクブレーキも例外ではなく車両の更なる軽量化のために、ブレーキディスクの小型化、厚みの低減(薄肉化)等が図られている。
しかし、このブレーキディスクの小型化、薄肉化は、熱容量の低下を招き、制動時の摩擦熱によるブレーキディスクの温度上昇がより大きくなる。このため、このような小型化、薄肉化傾向に伴い、制動時のブレーキディスク温度が600℃以上となることが考えられ、従来の材料では、ブレーキディスクが焼戻されて軟化し耐久性が低下することが懸念され、耐焼戻し軟化性に優れたブレーキディスク用材料が要望されている。
このような要望に対し、例えば、特許文献3には、Ti、Nb、V、Zrのうちの1種または2種以上を適正量含有し、ディスクブレーキ使用中の昇温に伴う軟化を効果的に抑制し硬度低下を抑制できる、低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板が提案されている。
また、特許文献4にはNb、あるいはNbに加えてさらにTi、V、Bを複合して適正量添加することにより、焼戻し軟化を効果的に抑制できるとするディスクブレーキ用ステンレス鋼が提案されている。
また、特許文献5には、鋼中のC、N、Ni、Cu、Mn、Cr、Si、Mo、V、TiおよびAlの含有量の関係式であるGP値を50(%)以上に調整するとともに、Nb、Vを適正量とすることにより、使用時の昇温による材質劣化をほとんど生じない、安価なディスクブレーキロータ用鋼が提案されている。
特開昭57-198249号公報 特開昭60-106951号公報 特開2002-146489号公報 特許第3315974号公報 特開2002−121656号公報
しかしながら、特許文献3、特許文献4、特許文献5に記載された技術では、650℃で長時間(1h程度)保持されると、硬さが急激に低下するという問題があった。
本発明は、こうした従来技術の問題を有利に解決し、適正焼入れ硬さを確保できるとともに、650℃で1h保持したのちの硬さが、JIS Z 2245で規定されるHRC(ロックウェル硬さCスケール)で32以上を確保できる、耐焼戻し軟化性に優れたディスクブレーキ用ステンレス鋼板を提案することを目的とする。
本発明者らは、上記した課題を達成するために、マルテンサイト系ステンレス鋼板の耐焼戻し軟化性におよぼす各種要因の影響について鋭意検討した。その結果、NbおよびCuを適正量含有し、さらにNおよびC含有量を適正量に調整することにより、650℃以上の高温に焼戻されたのちでも、HRCで32以上の高い硬さを維持することができることを知見した。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)mass%で、C:0.05%未満、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、Cr:11.5超〜15.0%、 Ni:0.5%未満、Cu:0.5超〜4.0%、Nb:0.08超〜0.6%、N:0.03超〜0.09%未満を、次(1)式および(2)式
5Cr+10Si+15Mo+30Nb−9Ni−5Mn−3Cu−225N−270C<42 ………(1)0.03≦{C+N−(13/92)Nb}≦0.09 ………(2)
(ここに、Cr、Si、Mo、Nb、Ni、Mn、Cu、N、C:各元素の含有量(mass%))
を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする耐焼戻し軟化性に優れたディスクブレーキ用ステンレス鋼板。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、V:0.02〜0.3%を含有する組成とすることを特徴とするディスクブレーキ用ステンレス鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、Mo:0.01〜2.0%、Co:0.01〜2.0%のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とするディスクブレーキ用ステンレス鋼板。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.02〜0.3%、Zr:0.02〜0.3%、Ta:0.02〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とするディスクブレーキ用ステンレス鋼板。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、mass%で、B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とするディスクブレーキ用ステンレス鋼板。
本発明によれば、耐食性および靭性に優れると共に、HRC32〜38という適正焼入れ硬さを確保でき、かつ、650℃で1h保持の焼戻し後にもなお、HRC32以上の高硬度を維持できる、耐焼戻し軟化性に優れたブレーキディスク用ステンレス鋼板を容易にしかも安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。本発明によれば、耐久性に優れた、オートバイ、自動車、自転車、スノーモービル等のディスクブレーキ用ディスク(回転体)を安価に製造できるという効果もある。
まず、本発明のブレーキディスク用ステンレス鋼板の組成限定理由について説明する。なお、以下、組成におけるmass%は、単に%と記す。
C:0.05%未満、
Cは、焼入れ後の硬さを決定する元素であり、HRC32〜38の範囲の適正焼入れ硬さを確保するために、本発明では、0.03%以上含有することが望ましい。一方、0.05%以上含有すると、高温に焼戻された際に、粗大なCr炭化物を形成するため、発錆の起点となり、耐食性を低下させるとともに、靭性を低下させる。このため、Cは0.05%未満に限定した。
N:0.03%超0.09%未満
Nは、Cと同様に、焼入れ後の硬さを決定する元素である。また、Nは500〜700℃の温度範囲で微細なCr窒化物を形成し、析出硬化作用により、鋼板(ディスク)の耐焼戻し軟化性を向上させる。このような効果を得るために、Nは0.03%を超えて含有する必要がある。一方、0.09%以上の含有は、靭性の低下を招くため、本発明ではNは0.09%未満に限定した。なお、耐焼戻し軟化性の観点から好ましくは0.04%超である。
Si:1.0%以下、
Siは、脱酸剤として作用する元素であり、本発明では0.05%以上含有することが望ましいが、Siはフェライト相を安定化する元素であり、1.0%を超える過剰な含有は焼入れ硬さを低下させ、さらには靭性を低下させる。このため、Siは1.0%以下に限定した。なお、靭性の観点から好ましくは0.3%以下である。
Mn:2.0%以下、
Mnは、高温でのフェライト相の生成を抑制し、焼入れ性を向上させ、安定した焼入れ硬さを得るために有用な元素であり、0.5%以上含有することが望ましい。一方、2.0%を超える過剰な含有は、耐食性を低下させる。このため、Mnは2.0%以下に限定する。なお、焼入れ性の観点から好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは1.5%以上である。
Cr:11.5超〜15.0%
Crは、ステンレス鋼の特徴である耐食性を向上させる有用な元素であり十分な耐食性を確保するためには、11.5%を超える含有を必要とする。一方、15.0%を超える含有は、加工性、靭性を低下させる。このため、Crは11.5超〜15.0%に限定した。なお、靭性の観点から好ましくは13.5%以下である。
Ni:0.5%未満
Niは、耐食性を向上させる元素であり、0.1%以上含有することが望ましいが、0.5%以上の含有は、Cの拡散速度を低下させ、熱延板の軟化焼鈍に長時間を必要とするようになり、生産性が低下する。このため、本発明ではNiは0.5%未満に限定した。
Cu:0.5超〜4.0%
Cuは、焼入れ後600℃付近の温度に保持された際に、析出物を形成しその析出硬化作用により、耐焼戻し軟化性を向上させる。このような効果を得るためには、Cuは0.5%を超える含有を必要とするが、Cuを4.0%超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、Cuは0.5超〜4.0%の範囲に限定した。なお、耐焼戻し軟化性の観点からは、1.0%を超えて含有することが好ましく、より好ましくは、2.0%超である。
Nb:0.08超〜0.6%
Nbは、C、Nと強い結合力を有し、Nb炭化物、Nb窒化物を形成して、焼入れ後600℃付近の温度に保持された際に生じる、焼入れ時にマルテンサイト中に導入された歪の回復を抑制し、耐焼戻し軟化性を改善する。このような効果を得るためには0.08%を超えて含有する必要があるが、0.6%を超えて含有すると、靭性が低下する。このため、Nbは0.08超〜0.6%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.12%以上0.3%未満である。
本発明では、上記した基本成分を上記した範囲の内で、かつ次(1)および(2)式
5Cr+10Si+15Mo+30Nb−9Ni−5Mn−3Cu−225N−270C<42 ………(1)
0.03≦{C+N−(13/92)Nb}≦0.09 ………(2)
(ここに、Cr、Si、Mo、Nb、Ni、Mn、Cu、N、C:各合金元素の含有量(mass%)
を満足するように、含有する。なお、(1)式の左辺値の計算においては、Mo含有量が0.01%未満の場合には、零として計算するものとする。
(1)式は、優れた焼入れ安定性を確保するための条件である。ここでいう「焼入れ安定性に優れた」とは、焼入れ加熱時にオーステナイト相が80体積%以上生成し、空冷以上の冷却による焼入れに際し、マルテンサイト相に変態し安定して所定の焼入れ硬さが確保できることを意味する。(1)式の左辺が42以上では、焼入れ加熱時にオーステナイト相が80体積%以上生成する温度範囲が狭くなり、安定した焼入れ硬さを確保できなくなる。このため、(1)式の右辺値を42未満に限定した。
(2)式は、焼入れ硬さを所定の適正範囲内の硬さとするための条件である。焼入れ硬さはC、N量と強い相関がある。一方、C、NがNbと結合しNb炭化物、Nb窒化物を形成すると、硬さには寄与しなくなる。そのため、焼入れ後の硬さは、鋼中のC、N量から析出物となり消費されたC、N量を差し引いた値で考える必要がある。(2)式の中間項が0.03未満では、焼入れ硬さが所定の適正範囲の下限値(HRC32)未満となり、一方、0.09を超えて大きくなると、上限値(HRC38)を超えて高くなる。このため、(2)式の中間項の値を0.03〜0.09の範囲に限定した。
本発明で使用する素材材料では、上記した基本成分範囲としたうえで、さらに、不可避的不純物である、P、S、AlをP:0.04%以下、S:0.010%以下、Al:0.10%以下に調整することが好ましい。
P:0.04%以下
Pは、熱間加工性を低下させる元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、過剰な低減は製造コストの高騰を招くため、0.04%を上限とすることが好ましい。なお、製造性の観点からは0.02%以下とすることがより好ましい。
S:0.010%以下
Sは、Pと同様に、熱間加工性を低下させる元素であり、できるだけ低減することが望ましいが、過剰な低減は製造コストの高騰を招くため0.010%を上限とすることが好ましい。なお、より好ましくは、製造性の観点からは0.005%以下である。
Al:0.10%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、製鋼上脱酸剤として添加する場合があるが、不可避的不純物として鋼中に過剰に残留させると、加工性、靭性を低下させる。このため、Alは0.10%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01%未満である。
本発明では、上記した基本成分範囲としたうえで、選択成分として、さらにV:0.02〜0.3%を含有できる。
V:0.02〜0.3%
Vは、600〜700℃で微細な炭窒化物を形成し、析出硬化により耐焼戻し軟化性を向上させる。このような効果を得るためには0.02%以上含有することが好ましい。より好ましくは0.05%以上である。一方、0.3%を超える含有は、靭性を低下させるため、0.3%を上限とすることが好ましい。
また、本発明では、選択成分としてさらに必要に応じ、Mo:0.01〜2.0%、Co:0.01〜2.0%のうちの1種または2種を、前記(1)および(2)式を満足するように含有できる。
Mo:0.01〜2.0%、Co:0.01〜2.0%のうちの1種または2種
Mo、Coは、いずれも耐食性を向上させる元素であり、必要に応じ選択して0.01%以上含有できる。また、MoはNiと同様に、炭窒化物の析出を抑制し、耐焼戻し軟化性を向上させる効果も有する。一方、Moが2.0%、Coが2.0%を超えて含有しても、耐食性向上効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となる。このため、Moは0.01〜2.0%、Coは0.01〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、耐食性の観点からはMo、Coとも0.5〜1.5%とすることがより好ましい。
本発明では、上記した基本成分、あるいはさらに選択成分に加えてさらに、Ti、Zr、Taのうちから選ばれた1種または2種以上、および/または、B、Caのうちから選ばれた1種または2種を、必要に応じ含有できる。
Ti:0.02〜0.3%、Zr:0.02〜0.3%、Ta:0.02〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上
Ti、Zr、Taはいずれも、炭窒化物を形成し析出硬化により耐焼戻し軟化性を向上させる作用を有する元素であり、必要に応じ選択して1種または2種以上含有できる。このような効果は、Ti:0.02%以上、Zr:0.02%以上、Ta:0.02%以上のそれぞれの含有で顕著となる。一方、Ti:0.3%、Zr:0.3%、Ta:0.3%をそれぞれ超える含有は、靭性の低下が著しくなる。このため、Ti:0.02〜0.3%、Zr:0.02〜0.3%、Ta:0.02〜0.3%の範囲に限定することが好ましい。
B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種
B、Caは、微量の含有で鋼の靭性を向上させる作用を有する元素であり、必要に応じ選択して含有できる。このような効果を得るためには、それぞれB:0.0005%以上、Ca:0.0005%以上の含有で認められるが、B:0.0050%、Ca:0.0050%を超える含有は耐食性を低下させる。このため、B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%の範囲に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、Na等のアルカリ金属、Mg、Ba等のアルカリ土類金属、Y、La等の希土類元素、Hf等の遷移元素が、0.05%以下程度含有されていても、本発明の効果を何ら妨げるものではない。
なお、本発明のステンレス鋼板は、熱延鋼板あるいは冷延鋼板のいずれでもよい。
本発明のステンレス鋼板の製造方法は、とくに限定されず、一般に採用されているステンレス鋼板の製造方法がいずれも適用できるが、例えば、つぎのような製造方法とすることが好ましい。
上記した組成の溶鋼を、転炉、電気炉等で溶製し、さらに溶鋼にVOD(Vacuum Oxygen Decarburization)、AOD(Argon Oxygen Decarburization)等の二次精錬を施したのち、公知の鋳造方法でスラブ等の鋼素材とされる。鋳造方法としては連続鋳造法とすることが、生産性および品質の観点から好ましい。
ついで、鋼素材は、好ましくは1100〜1200℃に加熱され、熱間圧延により所定板厚の熱延鋼板とされる。ブレーキディスク用としては板厚3〜8mm程度とすることが好ましい。熱延鋼板は、さらに熱延板焼鈍を施され、さらに必要に応じショットブラスト、酸洗等により脱スケールされ、ブレーキディスク用素材材料とすることが好ましい。なお、熱延板焼鈍は650〜800℃程度とすることが好ましい。
なお、ブレーキディスクとして、厚さの薄いものが所望される場合には、上記した熱延鋼板にさらに冷間圧延を施し、焼鈍と、さらに必要に応じ酸洗を行いブレーキディスク用素材材料とすることができる。
なお、ブレーキディスクの製造手順は通常、つぎのとおりである。
上記したステンレス鋼板を素材材料として、該ステンレス鋼板から所定寸法の円盤を打抜き加工し、ブレーキディスク用素材とする。ついで、このブレーキディスク用素材に、制動時に発生する摩擦熱を逃がす穴をあける、などの加工を施したのち、ブレーキディスク用素材の所定領域、すなわちブレーキパッドが当たる部分である摩擦部に、高周波誘導加熱等により所定の焼入れ加熱温度に加熱したのち冷却する、焼入れ処理を施し、所定領域(摩擦部)を所望の硬さに調整する。なお、本発明のステンレス鋼板であれば、焼入れ加熱温度を通常の焼入れ加熱温度である900〜1000℃の範囲の温度で、十分適正焼入れ硬さを確保でき、優れた耐焼戻し軟化性を維持できる。
ついで、必要に応じ、焼入れ処理で形成された酸化スケール等を研削等により除去し、あるいはさらに必要に応じ摩擦部以外の領域に塗装を施したのち、摩擦面等を研磨して製品(ブレーキディスク)とする。
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
表1に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、二次精錬を行ったのち、連続鋳造法で鋼素材(スラブ)とした。ついで、これら鋼素材を通常の熱間圧延により、熱延鋼板(板厚:5mm)とした。さらにこれら熱延鋼板に700℃×8hの熱延板焼鈍(還元性ガス雰囲気、加熱後徐冷)を施した。ついでこれら熱延鋼板に酸洗処理を施し、表面のスケールを除去して、ブレーキディスク用素材材料とした。
これら素材材料から、試験材(大きさ:t×30×30mm)を採取し、表2に示す焼入れ加熱温度に加熱(保持:10min)したのち、空冷する焼入れ処理を施した。焼入れ処理後、焼入れ安定性試験、耐焼戻し軟化性試験を実施した。試験方法はつぎのとおりとした。
(1)焼入れ安定性試験
焼入れ後の試験片(大きさ:t×30×30mm)に、酸洗処理して表面のスケールを除去したのち、JIS Z 2245の規定に準拠してロックウェル硬度計で表面硬さHRCを5点測定し、その平均値をその鋼板の焼入れ硬さとした。
(2)耐焼戻し軟化性試験
焼入れ後の試験片(大きさ:t×30×30mm)に、さらに650℃×1hの焼戻し処理(処理後空冷)を実施した。焼戻し処理を行った試験片に、酸洗処理して表面のスケールを除去したのち、JIS Z 2245の規定に準拠してロックウェル硬度計で表面硬さHRCを5点測定し、その平均値を求め、耐焼戻し軟化性を評価した。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0004182865
Figure 0004182865
Figure 0004182865
本発明例はいずれも、焼入れ硬さがHRC32〜38の範囲内にあり、焼入れ安定性に優れ、さらに650℃×1hの焼戻し処理後でHRC32以上の優れた耐焼戻し軟化性を有している。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、焼入れ硬さがHRC32〜38の範囲を外れるか、あるいは耐焼戻し軟化性が低下している。

Claims (5)

  1. mass%で、
    C:0.05%未満、 Si:1.0%以下、
    Mn:2.0%以下、 Cr:11.5超〜15.0%、
    Ni:0.5%未満、 Cu:0.5超〜4.0%、
    Nb:0.08超〜0.6%、 N:0.03超〜0.09%未満
    を、下記(1)式および(2)式を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする耐焼戻し軟化性に優れたディスクブレーキ用ステンレス鋼板。

    5Cr+10Si+15Mo+30Nb−9Ni−5Mn−3Cu−225N−270C<42 ………(1)0.03≦{C+N−(13/92)Nb}≦0.09 ………(2)
    ここに、Cr、Si、Mo、Nb、Ni、Mn、Cu、N、C:各元素の含有量(mass%)
  2. 前記組成に加えてさらに、mass%で、V:0.02〜0.3%を含有する組成とすることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ用ステンレス鋼板。
  3. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Mo:0.01〜2.0%、Co:0.01〜2.0%のうちから選ばれた1種または2種を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載のディスクブレーキ用ステンレス鋼板。
  4. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.02〜0.3%、Zr:0.02〜0.3%、Ta:0.02〜0.3%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のディスクブレーキ用ステンレス鋼板。
  5. 前記組成に加えてさらに、mass%で、B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0005〜0.0050%のうちから選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のディスクブレーキ用ステンレス鋼板。
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