JP2006289683A - 複合構造物及び複合構造物の製造方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】 各種用途に適用できる複合構造物を提供する。
【解決手段】 樹脂マトリックス111中に金属、セラミックス、半導体のうちの1種類以上の無機材料112が分散した複合材料11と、この複合材料11の表面に形成された脆性材料構造物12とから複合構造物1が構成され、前記脆性材料構造物12は多結晶からなり、その結晶同士の界面にはガラス層からなる粒界層が実質的に存在していない。
【選択図】 図1

Description

本発明は、樹脂等の有機物と金属やセラミックス等の無機物とのコンポジット材料のセラミックス等の脆性材料からなる構造物を形成した複合構造物とその製造方法に関する。
基材表面に脆性材料の構造物を形成させる方法として、エアロゾルデポジション法と呼ばれる手法が認知されている。
このエアロゾルデポジション法は、脆性材料などの微粒子をガス中に分散させたエアロゾルをノズルから基材に向けて噴射し、金属やガラス、セラミックスやプラスチックなどの基材に微粒子を衝突させ、この衝突の衝撃により脆性材料微粒子を変形や破砕を起さしめてこれらを接合させ、基材上に微粒子の構成材料からなる構造物をダイレクトで形成させることを特徴としており、特に加熱手段を必要としない常温で構造物が形成可能であり、焼成体同等の機械的強度を保有する構造物を得ることができる。
この方法に用いられる装置は、基本的にエアロゾルを発生させるエアロゾル発生器と、エアロゾルを基材に向けて噴射するノズルとからなり、ノズルの開口よりも大きな面積で構造物を作製する場合には、基材とノズルを相対的に移動・揺動させる位置制御手段を有し、減圧下で作製を行う場合には構造物を形成させるチャンバーと真空ポンプを有し、またエアロゾルを発生させるためのガス発生源を有することが一般的である。
エアロゾルデポジション法のプロセス温度は常温であり、微粒子材料の融点より十分に低い温度、すなわち数百℃以下で構造物形成が行われるところにひとつの特徴がある。
また使用される微粒子はセラミックスや半導体などの脆性材料を主体とし、同一材質の微粒子を単独であるいは混合させて用いることができるほか、異種の脆性材料微粒子を混合させたり、複合させて用いることが可能である。また一部金属材料や有機物材料などを脆性材料微粒子に混合させたり、脆性材料微粒子表面にコーティングさせて用いることも可能である。これらの場合でも構造物形成の主となるものは脆性材料である。
この手法によって形成される構造物において、結晶性の脆性材料微粒子を原料として用いる場合、構造物の脆性材料部分は、その結晶子サイズが原料微粒子のそれに比べて小さい多結晶体であり、その結晶は実質的に結晶配向性がない場合が多く、脆性材料結晶同士の界面にはガラス層からなる粒界層が実質的に存在しないと言え、さらに構造物の一部は基材表面に食い込むアンカー層を形成することが多いという特徴がある。
この方法により形成される構造物は、微粒子同士が圧力によりパッキングされ、物理的な付着で形態を保っている状態のいわゆる圧粉体とは明らかに異なり、十分な強度を保有している。
この構造物形成において、脆性材料微粒子が破砕・変形を起していることは、原料として用いる脆性材料微粒子および形成された脆性材料構造物の結晶子サイズをX線回折法で測定することにより判断できる。すなわちエアロゾルデポジション法で形成される構造物の結晶子サイズは、原料微粒子の結晶子サイズよりも小さい値を示す。微粒子が破砕や変形をすることで形成されるずれ面や破面には、もともと内部に存在し別の原子と結合していた原子が剥き出しの状態となった新生面が形成される。この表面エネルギーが高い活性な新生面が、隣接した脆性材料表面や同じく隣接した脆性材料の新生面あるいは基板表面と接合することにより構造物が形成されるものと考えられる。また微粒子の表面に水酸基が程よく存在する場合では、微粒子の衝突時に微粒子同士や微粒子と構造物との間に生じる局部のずれ応力により、メカノケミカルな酸塩基脱水反応が起き、これら同士が接合するということも考えられる。外部からの連続した機械的衝撃力の付加は、これらの現象を継続的に発生させ、微粒子の変形、破砕などの繰り返しにより接合の進展、緻密化が行われ、脆性材料構造物が成長するものと考えられる。
上記のエアロゾルデポジション法の全般的な説明は特許文献1に開示されている。また作製される構造物の強化に関しては特許文献2に、また脆性材料構造物を表面に形成する基板に関しては、特許文献3〜5に開示されている。特許文献2〜5に開示される内容を以下に簡単に説明する。
特許文献2には、ゾル粒子や基板に、イオン、原子、分子ビームや低温プラズマなどの高エネルギー原子などを照射して、作製される構造物を強固なものとすることが開示されている。
特許文献3には、エアロゾルを搬送管を通じて構造物形成室へ搬送し、高速に加速しつつノズルから酸化アルミニウム基材に向けて噴射して脆性材料構造物を形成することが開示されている。
特許文献4には、樹脂基材表面にその一部が食い込む硬質材料からなる下地層が形成され、この下地層の上にエアロゾルデポジション法によって脆性材料構造物が形成されることが開示され、更に基材としてABS、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド、エポキシ樹脂について記載されている。
特許文献5には、樹脂基材にも条件によってはエアロゾルデポジション法によって脆性材料構造物を形成することが可能であることが開示され、その条件として樹脂の硬さを挙げ、更に硬さを示す指標として、DHv1(材料の塑性変形分を考慮しないダイナミック硬さ)と、DHv2(材料の塑性変形分を考慮したダイナミック硬さ)があるが、前者の指標では脆性材料構造物を形成できるか否かの判断はできず、後者の指標が脆性材料構造物を形成できるか否かの指標になることを検証している。
特に、特許文献5では、有機・無機コンポジット材料としてガラス−エポキシ樹脂を基板として用いたことが開示されているが、このガラス−エポキシ樹脂のDHv2は47.71となっており、この値では脆性材料構造物を形成できなかったことが記載されている。
特許第3348154号公報 特開2000−212766号公報 特開2002−309383号公報 特開2003−034003号公報 特開2004−091614号公報
特許文献1及び特許文献2に開示されるように、エアロゾルデポジション法にて形成したこれら複合構造物は、脆性材料構造物と基材との密着性が高く、脆性材料構造物の形成厚みが1〜数百μmと大きい。加熱手段を必要としないプロセスが適用できるため、低融点の基材に脆性材料構造物が簡単に形成できることで特徴的な複合構造物が得られている。一方これらの複合構造物において、金属基材を使用する場合は、基材の質量が大きくなる点、基材が導電性である点、熱伝導性が高い点などが特徴でありかつ制限事項となる。
また特許文献3に開示されるように、セラミック基材を使用する場合は、基材の質量が大きくなる点、基材の硬度が高い場合にはエアロゾルデポジション法にて形成される構造物厚みが数十μmまでであったり、構造物形成が困難であったりなどの点が制限となる。
また特許文献4に開示されるように、樹脂基材の場合は、軽量であるものの基材を数mm程度以下の比較的薄いものを採用すると、エアロゾルデポジション法で形成された構造物特有の応力によって基材にそりが発生する点、また樹脂材料種によっては構造物形成が困難である点などが課題となる。
そこで、基材を有機・無機コンポジット材料とすることが考えられるが、このような有機・無機コンポジット材料に関する試みは、特許文献5において失敗例として開示されているのみである。
本発明では比較的軽量で、剛性が高く、導電性や熱伝導性、熱膨張率などを制御しやすい樹脂と無機のコンポジット材料表面に脆性材料構造物を形成させた複合構造物を提案する。
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、樹脂マトリックス中に金属、セラミックス、半導体のうちの1種類以上の無機材料が分散した複合材料と、この複合材料の表面に形成された脆性材料構造物とからなる複合構造物であって、前記脆性材料構造物は多結晶からなり、その結晶同士の界面にはガラス層からなる粒界層が実質的に存在しない構成とした。
樹脂と無機材料との複合材料は、無機材料の微粒子を練り状の樹脂材料中に混練して適当量を含有させて、熱や光や硬化剤などを使用して樹脂部分を硬化させて所望の形に形成するため、形状設定の自由度が高く、比較的定温のプロセスで形成でき、材料自体は軽くて比較的強靭であり、混ぜる無機材料によっては良好な熱伝導性や誘電特性、導電性を発現し、また材料の色調の自由度も高い。このような材料上に脆性材料の構造物を例えば1〜数百μmで形成させることで、材料のバルクとしての特徴を活かしつつ、表面のみを脆性材料の特徴、例えば耐磨耗性の向上、絶縁性や誘電特性の向上、表面粗さの制御、耐食性の向上、光学特性の向上など機能性のアップに利用することができる。
またこの脆性材料の構造物の表面に、任意に金属層を形成させることが可能である。これらは例えば電気回路の形成であったり、異種材料の半田やロウ付けのための接着中間層であったりなどが考えられる。
樹脂中に混在させる無機材料の量は、数〜90数体積パーセントの間で任意の値をとることができる。
また請求項2に係る発明は、金属、セラミックス、半導体または樹脂からなる基材と、この基材表面に被覆された樹脂マトリックス中に金属、セラミックス、半導体のうちの1種類以上の無機材料が分散した複合材料と、この複合材料の表面に形成された脆性材料構造物とからなる複合構造物であって、前記脆性材料構造物は多結晶からなり、その結晶同士の界面にはガラス層からなる粒界層が実質的に存在しない構成とした。
また請求項3に係る発明は、前記複合材料のDHv2(塑性変形分を考慮したダイナミック硬さ)を420以上であるようにした。このように複合材料の硬さを選定することで、複合材料の表面に確実に脆性材料構造物を形成することができる。
樹脂をベースとして無機材料を分散させ、比較的形状自由度高く形成される複合材料において、無機材料の硬度や大きさや形、分散量を制御して材料そのものの特性値を用途に応じて適化し、この上に硬度、耐磨耗性、絶縁性、熱伝導性、誘電特性などの必要な表面特性を有する脆性材料構造物を形成させることが考えられる。
また請求項4に係る発明は、前記脆性材料構造物との界面となる前記複合材料の表面の算術平均粗さRaが0.15μm以下となるようにした。更に請求項5に係る発明は、前記脆性材料構造物との界面となる前記複合材料の表面の十点平均粗さRzが1.3μm以下となるようにした。
複合材料は、樹脂と無機材料のコンポジットであるため、例えば無機材料の粒子が表面に噴き出すなど、往々にしてその表面が粗い。このような表面にエアロゾルデポジション法で構造物を形成しようとする場合、表面粗度が高すぎると構造物形成が全く起こらなかったり、まだらに構造物が形成されたり、あるいは構造物が形成できても、ポーラスで脆弱なものとなるなどのことが起こる。そのため、複合材料の表面粗さを制御することは緻密で良質の脆性材料からなる構造物を形成させるために重要となる。例えば、複合構造物の表面を予め研磨したり、あるいは鏡面のベース材上に複合材料の前駆物をかたどりして硬化させて、その表面の粗さを低くするなどの処理を施して後、エアロゾルデポジション法にて構造物を形成させることで、良好な状態の構造物を得ることができる。
また請求項6に係る発明は、前記脆性材料構造物と前記複合材料との界面においては、前記脆性材料構造物は前記樹脂マトリックスおよび前記無機材料のいずれとも接合部を有する構成とした。
これらの複合構造物における脆性材料からなる構造物と複合材料の界面においては、構造物と樹脂のマトリックスとの接合部、および構造物と無機材料との接合部のいずれも有することがある。すなわち、脆性材料の構造物を形成する複合材料の表面部分には樹脂の部分と無機材料の部分の両方が存在している状態である。脆性材料の構造物形成に際して、一部の樹脂上には構造物が形成しづらかったり、一部の無機材料上には構造物が形成しづらかったりなどのことがありうるが、複合材料中これらのどちらかの材料が形成しやすいものであった場合、表面上のこれらの存在割合にもよるが、脆性材料の構造物形成が良好に行われることがある。従って、構造物の形成の行われやすさや得られる構造物の特性を考えて、複合材料の表面の材料の分布や無機材料の粒子の大きさなどを制御することが好適である。
また前記脆性材料構造物はエアロゾルデポジション法によって形成されるため、請求項7に記載するように結晶は実質的に結晶配向性が無く、また請求項8に記載するように結晶子径が50nm以下となる傾向があり、請求項9に記載したように透明の脆性材料構造物を得ることができる。
複合材料の樹脂の色調を制御して所望の外観を得たい場合などは、脆性材料が透明体であることが望ましく、外観を損ねることがない。この場合における透明とは、可視光において透明であり、具体的には薄い石英ガラスなどに構造物を形成させて、分光硬度計で光透過率を測定し、波長600nmを代表させて、このとき50%以上の光透過率を有していれば外観を損ねる程度が低いと考えられる。
これらの脆性材料からなる構造物は基材上の一部分にのみ選択的に形成させることができる。また基材の上に複合材料を形成させる場合も、その形成部位は任意であり、その上の脆性材料からなる構造物の形成部位も任意である。
エアロゾルデポジション法は、請求項10及び請求項11に記載するように、脆性材料の微粒子をガスに分散させたエアロゾルを前記複合材料の表面に向けて例えば室温で吹き付けることで、脆性材料構造物形成される。このとき、請求項12および15に記載するように、前記複合材料の表面のDHv2(塑性変形分を考慮したダイナミック硬さ)を420以上とし、更に請求項13および16に記載するように、複合材料の表面の算術平均粗さRaを0.15μm以下または請求項14および17に記載するように、十点平均粗さRzを1.3μm以下とすることが好ましい。
従来、樹脂のマトリックス中に無機材料を分散させた場合でも、その表面硬度が低い場合は、エアロゾルデポジション法にて構造物を形成させることが困難であった。分散させる無機材料の硬度、量、大きさなどを制御して、複合材料そのものの硬度を適当に調整することで構造物の形成がとなり、また構造物の緻密度などを向上させることが可能となる。
ここで、本件明細書で使用する語句の説明を以下に行う。
(微粒子)
一次粒子が緻密質粒子である場合は、粒度分布測定や走査型電子顕微鏡で同定される平均粒径が10μm以下であるものを言う。また一次粒子が衝撃によって破砕しやすい多孔質粒子である場合は、平均粒径が50μm以下であるものを言う。
(エアロゾル)
ヘリウム、窒素、アルゴン、酸素、乾燥空気、これらの混合ガスなどのガス中に前述の微粒子を分散させたものであり、一次粒子が分散している状態が望ましいが、通常はこの一次粒子が凝集した凝集粒を含む。エアロゾルのガス圧力と温度は任意であるが、ガス中の微粒子の濃度は、ガス圧を1気圧、温度を20℃と換算した場合に、ノズルから噴射される時点において0.0003mL/L〜0.06mL/Lの範囲内であることが構造物の形成にとって望ましい。
(多結晶)
本件では結晶子が接合・集積してなる構造体を指す。結晶子は実質的にそれひとつで結晶を構成しその径は通常5nm以上である。ただし、微粒子が破砕されずに構造物中に取り込まれるなどの場合がまれに生じるが、実質的には多結晶である。
(結晶配向性)
本件では多結晶である構造物中での結晶軸の配向具合を指し、配向性があるかないかは、一般には実質的に配向性のないと考えられる粉末X線回折などによって標準データとされたJCPDS(ASTM)データを指標として判断する。原料粉体がある場合はこの回折パターンを指標にすると良い。
構造物中の脆性材料結晶を構成する物質を挙げたこの指標における主要な回折3ピークのピーク強度を100%として、構造物の同物質測定データ中、最も主要なピークのピーク強度をこれに揃えた場合に、他の2ピークのピーク強度が指標の値と比較して30%以内にそのずれが収まっている状体を、本件では実質的に配向性がないと称する。
(界面)
本件では結晶子同士の境界を構成する領域を指す。
(粒界層)
界面あるいは焼結体でいう粒界に位置するある厚み(通常数nm〜数μm)を持つ層で、通常結晶粒内の結晶構造とは異なるアモルファス構造をとり、また場合によっては不純物の偏析を伴う。
(複層体)
金属、セラミックス、半導体または樹脂からなる立体構造体である基材の表面の一部あるいは全部に、樹脂マトリックス中に金属、セラミックス、半導体のうちの1種類以上の無機材料が分散した複合材料が被覆された構造体を言う。
本発明によれば、表面に脆性材料構造物を形成する部材として有機・無機コンポジット材料(複合材料)を用いることで、今までにない特性の回路素子などを得ることができる。
例えば基材の特性として、強度、高い熱伝導性、高い導電性が必要とされ、表面付近においては脆性材料構造物のみの形成では困難な、高い絶縁性、適当な誘電特性、色調などの外観が必要な場合は、この基材の上に複合材料の層を形成させ、最表面の耐磨耗性やさらにこのうえに形成する金属層の密着性などの要求を応えるために脆性材料の構造物を形成させた複合構造物の採用が有効である。
図1は、本発明に係る複合構造物の構造を示す断面図であり、複合構造物1は、マトリックスである樹脂111中に金属やセラミックスなどの無機材料の粒子や繊維112が分散した複合材料11上に脆性材料からなる構造物12が形成されている。脆性材料の構造物はエアロゾルデポジション法により形成され、その構造物厚みは1〜数百μmである。
図2は、本発明に係る複合構造物の別の例の構造を示す断面図であり、複合構造物2は、金属やセラミックスなどの基材21上にマトリックスである樹脂221中に金属やセラミックスなどの無機材料の粒子や繊維222が分散した複合材料22上に脆性材料からなる構造物23が形成されている。
これらの複合構造物のうち、脆性材料からなる構造物を形成させる手法であるエアロゾルデポジション法について、以下に説明する。
エアロゾルデポジション法は脆性材料などの微粒子をガス中に分散させたエアロゾルをノズルから基材に向けて噴射し、金属やガラス、セラミックスやプラスチックなどの基材に微粒子を衝突させ、この衝突の衝撃により脆性材料微粒子を変形や破砕を起させしめてこれらを接合させ、基材上に微粒子の構成材料からなる構造物をダイレクトで形成させることを特徴としており、特に加熱手段を必要としない常温で構造物が形成可能であり、焼成体同等の機械的強度を保有する構造物を得ることができる。
この方法に用いられる装置は、基本的にエアロゾルを発生させるエアロゾル発生器と、エアロゾルを基材に向けて噴射するノズルとからなり、ノズルの開口よりも大きな面積で構造物を作製する場合には、基材とノズルを相対的に移動・揺動させる位置制御手段を有し、減圧下で作製を行う場合には構造物を形成させるチャンバーと真空ポンプを有し、またエアロゾルを発生させるためのガス発生源を有することが一般的である。
エアロゾルデポジション法のプロセス温度は常温であり、微粒子材料の融点より十分に低い温度、すなわち数百℃以下で構造物形成が行われるところにひとつの特徴がある。従って選択できる基材は多種に亘り、低融点金属や樹脂材料であっても適用に問題がない。
また使用される微粒子はセラミックスや半導体などの脆性材料を主体とし、同一材質の微粒子を単独であるいは混合させて用いることができるほか、異種の脆性材料微粒子を混合させたり、複合させて用いることが可能である。また一部金属材料や有機物材料などを脆性材料微粒子に混合させたり、脆性材料微粒子表面にコーティングさせて用いることも可能である。これらの場合でも構造物形成の主となるものは脆性材料である。
この手法によって形成される構造物において、結晶性の脆性材料微粒子を原料として用いる場合、構造物の脆性材料部分は、その結晶子サイズが原料微粒子のそれに比べて小さい多結晶体であり、その結晶は実質的に結晶配向性がない場合が多く、脆性材料結晶同士の界面にはガラス層からなる粒界層が実質的に存在しないと言える。
この方法により形成される構造物は、微粒子同士が圧力によりパッキングされ、物理的な付着で形態を保っている状態のいわゆる圧粉体とは明らかに異なり、十分な強度を保有している。
この構造物形成において、脆性材料微粒子が破砕・変形を起していることは、原料として用いる脆性材料微粒子および形成された脆性材料構造物の結晶子サイズをX線回折法で測定することにより判断できる。すなわちエアロゾルデポジション法で形成される構造物の結晶子サイズは、原料微粒子の結晶子サイズよりも小さい値を示す。
微粒子が破砕や変形をすることで形成されるずれ面や破面には、もともと内部に存在し別の原子と結合していた原子が剥き出しの状態となった新生面が形成される。この表面エネルギーが高い活性な新生面が、隣接した脆性材料表面や同じく隣接した脆性材料の新生面あるいは基板表面と接合することにより構造物が形成されるものと考えられる。また微粒子の表面に水酸基が程よく存在する場合では、微粒子の衝突時に微粒子同士や微粒子と構造物との間に生じる局部のずり応力により、メカノケミカルな酸塩基脱水反応が起き、これら同士が接合するということも考えられる。
外部からの連続した機械的衝撃力の付加は、これらの現象を継続的に発生させ、微粒子の変形、破砕などの繰り返しにより接合の進展、緻密化が行われ、脆性材料構造物が成長するものと考えられる。
図3は従来のエアロゾルデポジション装置30を示したものであり、窒素ガスボンベ301の先にガス搬送管302を介してエアロゾル発生器303が設置され、その下流側に例えば直径2mmのエアロゾル搬送管304を介して構造物形成室305内に配置された例えば直径2mmの導入開口と18mm×0.4mmの導出開口をもつノズル306に接続されている。エアロゾル発生器303内には脆性材料微粒子例えば酸化アルミニウム微粒子粉体が充填されている。ノズル306の開口の先には、XYステージ307に保持された基材308が配置されている。構造物形成室305は真空ポンプ309と接続されている。基材308には上述したような複合材料などが採用される。
以下に従来のエアロゾルデポジション装置30の作用を述べる。窒素ガスボンベ301を開栓し、ガス搬送管302を通じてガスをエアロゾル発生器303内に送り込み、同時にエアロゾル発生器303を運転させて脆性材料微粒子と窒素ガスが適当比で混合されたエアロゾルを発生させる。また真空ポンプ309を稼動させ、エアロゾル発生器303と構造物形成室305の間に差圧を生じさせる。エアロゾルはこの差圧に乗って下流側のエアロゾル搬送管304に導入されて加速し、ノズル306より基材308に向けて噴射する。基材308はXYステージ307により2軸に揺動され、エアロゾル衝突位置を変化させつつ、微粒子の衝突により基材308上に膜状の脆性材料構造物が形成されていく。
(実施例)
アクリル系樹脂材料中に無機材料のフィラーを含有させた複合材料の表面を研磨し、算術平均粗さRaで0.120〜0.145μm、十点平均粗さRzで0.955〜1.273(評価長さ1.250mm、カットオフ値0.25mm、東京精密社製サーフコム130Aにて基材の任意の点5点を測定)とした。この複合材料の硬度を表面の任意の点5点で測定したところ、DHv2で428〜703であった(島津製作所製ダイナミック超微小硬度計にて荷重10gfで測定)。
これに図3で示した装置にて、平均粒径0.6μmのアルミナ微粒子を用いて、窒素ガス7L/minの流量でエアロゾルを発生させ、ノズルより複合材料表面に噴射させて、アルミナ構造物を形成させ、構造物形成高さ12μmを得た。このアルミナ構造物の表面を研磨し、硬度を複合材料と同様にして測定したところ、DHv2で2229の値を示した。
本発明に係る複合構造物の断面図 別実施例に係る複合構造物 エアロゾルデポジション装置30の概略を説明した図

Claims (17)

  1. 樹脂マトリックス中に金属、セラミックス、半導体のうちの1種類以上の無機材料が分散した複合材料と、この複合材料の表面に形成された脆性材料構造物とからなる複合構造物であって、前記脆性材料構造物は多結晶からなり、その結晶同士の界面にはガラス層からなる粒界層が実質的に存在しないことを特徴とする複合構造物。
  2. 金属、セラミックス、半導体または樹脂からなる基材と、この基材表面に被覆された樹脂マトリックス中に金属、セラミックス、半導体のうちの1種類以上の無機材料が分散した複合材料と、この複合材料の表面に形成された脆性材料構造物とからなる複合構造物であって、前記脆性材料構造物は多結晶からなり、その結晶同士の界面にはガラス層からなる粒界層が実質的に存在しないことを特徴とする複合構造物。
  3. 前記複合材料のDHv2(塑性変形分を考慮したダイナミック硬さ)が420以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合構造物。
  4. 前記脆性材料構造物との界面となる前記複合材料の表面の算術平均粗さRaが0.15μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合構造物。
  5. 前記脆性材料構造物との界面となる前記複合材料の表面の十点平均粗さRzが1.3μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合構造物。
  6. 前記脆性材料構造物と前記複合材料との界面においては、前記脆性材料構造物は前記樹脂マトリックスおよび前記無機材料のいずれとも接合部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の複合構造物。
  7. 前記脆性材料構造物を形成する結晶は実質的に結晶配向性が無いことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の複合構造物。
  8. 前記脆性材料構造物の結晶子径が50nm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載の複合構造物。
  9. 前記脆性材料構造物が透明であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載の複合構造物。
  10. 前記脆性材料構造物が、脆性材料の微粒子をガスに分散させたエアロゾルを前記複合材料の表面に向けて吹き付けて形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項9の何れかに記載の複合構造物。
  11. 前記脆性材料構造物が、室温で形成されたことを特徴とする請求項10に記載の複合構造物。
  12. 請求項1に記載の複合構造物の製造方法であって、樹脂マトリックス中に金属、セラミックス、半導体のうちの1種類以上の無機材料が分散したDHv2(塑性変形分を考慮したダイナミック硬さ)が420以上の複合材料を準備し、この複合材料の表面に脆性材料微粒子のエアロゾルを衝突させ、微粒子同士を再結合せしめて、前記複合材料表面に脆性材料の構造物を形成させることを特徴とする前記複合材料と前記脆性材料の構造物とからなる複合構造物の製造方法。
  13. 請求項1に記載の複合構造物の製造方法であって、樹脂マトリックス中に金属、セラミックス、半導体のうちの1種類以上の無機材料が分散され、かつ、その表面の算術平均粗さRaを0.15μm以下とした複合材料を準備し、この複合材料の表面に脆性材料微粒子のエアロゾルを衝突させ、微粒子同士を再結合せしめて、前記複合材料表面に脆性材料の構造物を形成させることを特徴とする前記複合材料と前記脆性材料の構造物とからなる複合構造物の製造方法。
  14. 請求項1に記載の複合構造物の製造方法であって、樹脂マトリックス中に金属、セラミックス、半導体のうちの1種類以上の無機材料が分散され、かつ、その表面の十点平均粗さRzを1.3μm以下とした複合材料を準備し、この複合材料の表面に脆性材料微粒子のエアロゾルを衝突させ、微粒子同士を再結合せしめて、前記複合材料表面に脆性材料の構造物を形成させることを特徴とする前記複合材料と前記脆性材料の構造物とからなる複合構造物の製造方法。
  15. 請求項2に記載の複合構造物の製造方法であって、前記基材の表面に、樹脂マトリックス中に金属、セラミックス、半導体のうちの1種類以上の無機材料が分散したDHv2(塑性変形分を考慮したダイナミック硬さ)420以上の複合材料が形成された複層体を準備し、該複層体の表面に脆性材料微粒子のエアロゾルを衝突させ、微粒子同士を再結合せしめて、前記複層体表面に脆性材料の構造物を形成させることを特徴とする前記複層体と前記脆性材料の構造物とからなる複合構造物の製造方法。
  16. 請求項2に記載の複合構造物の製造方法であって、前記基材の表面に、樹脂マトリックス中に金属、セラミックス、半導体のうちの1種類以上の無機材料が分散した複合材料が形成され、かつ、その表面の算術平均粗さRaを0.15μm以下とした複層体を準備し、この複層体の表面に脆性材料微粒子のエアロゾルを衝突させ、微粒子同士を再結合せしめて、前記複層体表面に脆性材料の構造物を形成させることを特徴とする前記複層体と前記脆性材料の構造物とからなる複合構造物の製造方法。
  17. 請求項2に記載の複合構造物の製造方法であって、前記基材の表面に、樹脂マトリックス中に金属、セラミックス、半導体のうちの1種類以上の無機材料が分散した複合材料が形成され、かつ、その表面の十点平均粗さRzを1.3μm以下とした複層体を準備し、この複層体の表面に脆性材料微粒子のエアロゾルを衝突させ、微粒子同士を再結合せしめて、前記複層体表面に脆性材料の構造物を形成させることを特徴とする前記複層体と前記脆性材料の構造物とからなる複合構造物の製造方法。
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