JP2006288207A - アマモ移植用基盤シート及びアマモ場の造成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 移植用マット20と、移植用マット20の表面を覆って凹凸を付与する生分解性補強ネット30と、生分解性補強ネット30に付設した錘体40とによりアマモ移植用基盤シート10を形成し、このアマモ移植用基盤シート10を天然のアマモ場に設置し、天然のアマモ場においてアマモを定着したアマモ移植用基盤シート10を海底に移設することでアマモ場を造成する。
【選択図】図1
Description
(1)早期腐食性の繊維と難腐食性繊維で交織した材料で形成した袋体内にアマモの種子と共に生育基盤材を充填して形成した播種基体(特許文献1)。
(2)生分解性シートにアマモの種子を接着させて製造した播種シート(特許文献2)。
(3)生分解性樹脂よりなるネット状物やシート状物に種子を接着させた種シート(特許文献3)。
(1)基盤シートを用いてアマモを移植する際のアマモの定着率を向上させること。
(2)波や流れがあっても基盤シートの移動や破損を防止して移植すること。
(1)アマモ移植用基盤シートの表面を生分解性補強ネットで覆って、その表面に凹凸を付けたことで、アマモの種子が根づくまでの間における種子や砂泥の保持性能がよくなった。そのため、基盤シートによるアマモ移植法におけるアマモの定着率を格段に向上させることができる。
(2)アマモ移植用基盤シートに錘体を付設して波や流れに対向できるだけの重量を付与したので、アマモの種子が根づく間は波や流れがあってもアマモ移植用基盤シートの移動や破損を防止してアマモを移植することができる。
(3)移植用マットを内部空隙の多い植物性繊維で形成すると、アマモの根との親和性がよく、アマモを確実に移植用マットに固定できる。特に、アマモ苗の根が植物性繊維製のマットを突抜けて海底に埋入しやすいので、アマモの地下茎の形成にも有効である。
(4)予め天然のアマモ場において、定着率の高い状態でアマモを定着したアマモ移植用基盤シートを使用することで、移設先の海底における増殖の核となる単位面積当たりのアマモ数が多いため、アマモ場の造成の成功率が従来と比べて向上する。
図1にアマモ移植用基盤シート10の一例を示す。
アマモ移植用基盤シート10は、移植用マット20と、移植用マット20の片側又は両側を覆うメッシュ状の生分解性補強ネット30と、生分解性補強ネット30の表面に付設した錘体40とにより構成する。
アマモ移植用基盤シート10の寸法や平面形状は、特に制限が無く、使用場所等に応じて適宜選定するものとする。
移植用マット20は内部に多数の空隙を有し、アマモの移植完了後に腐食して還元される生分解材料からなり、例えばヤシ繊維、ジュート等の植物性繊維を使用できる。
移植用マット20の厚さはアマモの根がマットを突抜けて海底の砂泥に活着するのを阻害しない程度の厚さとし、2mm〜20mmの範囲が望ましい。
移植用マット20の厚さが薄くなるほど根の貫通性はよくなるが、極度に薄いものはマットを長期間海底に設置すると腐食が急速に進むため、一年程度の腐食に耐え得る厚さは必要である。
移植用マット20の内部に多数の空隙を有することで、アマモの種子や生育基盤層となる砂泥を保持し易く、また保持したこれらの種子や砂泥の流出抑制効果もある。
生分解性補強ネット30は生分解性の材料からなるメッシュ体で、移植用マット20と比べて耐久性に優れていると共に、分解を終えるまでの期間が長い。
生分解性補強ネット30の材料としては、例えばセルロースアセテート、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルアミド、脂肪族/芳香族ポリエステル、ポリビニルアルコール、脂肪族ポリアミド、ポリオキシアルキレン等の公知の化合物を用いることができる。また生分解性補強ネット30には各種天然繊維(動物性繊維等)、人造繊維(合成繊維、半合成繊維、再生繊維、無機繊維等)を用いることもできる。
海中では波や流れを受けるため、基盤シート全体の安定性が得難い。
そこで、基盤シート全体に水中での安定性確保に十分な重量を持った錘体40を生分解性補強ネット30の表面に付設する。
本例では錘体40がチェーンである場合について示すが、その他にワイヤロープ等を採用できる。要は安定に必要な重量を有し、かつ海底面の起伏に追随し得るように基盤シートの柔軟性を阻害しない変形自由度(可撓性)のあるものがよい。
この可撓性は錘体40の連結構造に基づくものと、材料自体の有する物性に基づいた両方の要素を含む。
錘体40を線条の形態で付設した場合、生分解性補強ネット30の表面と錘体40の間に凹溝すなわち谷の部分を形成でき、アマモの茎を錘体40の裏に隠れて凹溝を這うようにして成長させることができる。また錘体40が山の部分となって、アマモの茎に直接作用する波や流れの力を低減し、これによって、アマモ種子が根づくまでの間さらに効果的にアマモの流出を防止することができることになる。
次に図2,3に基づいて上記したアマモ移植用基盤シート10を用いたアマモ場の造成方法について説明する。
図2に示すように、まず天然のアマモ場50の近傍海底にアマモ移植用基盤シート10を設置する。設置に当たっては隅部をコ字形の固定ピン11を打ち込む等して、アマモ移植用基盤シート10が容易に剥がれないように設置する。
天然のアマモ場50のアマモは春先に草体の一部が花枝に変化し種子を放出するが、アマモ移植用基盤シート10の上面にも周辺海底と同様にアマモ種子51が撒かれる。種子の放出期間中を含めてアマモ移植用基盤シート10が設置されているので、比較的高密度に自然落下することに伴い、アマモ種子51の単位面積当たりの種子数が多くなる。
アマモ移植用基盤シート10の表面に落下したアマモ種子51は、表面を覆う分解性補強ネット30や錘体40の凹凸面によって波の流れによる自由な移動を拘束してアマモ種子51の流出が抑制される。
この定着過程を詳細に説明すると、アマモ種子51から生えた根毛が、生分解性補強ネット30を構成する編成糸や移植用マット20の内部空隙に進入して絡み付きながら成長することで定着される。
アマモを発芽育苗させて定着したアマモ移植用基盤シート10を取り外し、これを移設先の海底まで運び、海底に密着させて敷設することで移植を完了する。
アマモ移植用基盤シート10の固定方法は、前記した固定ピン11やアンカーで固定する等の公知の方法を適用できる。
アマモ移植用基盤シート10自体の柔軟性はアマモの定着後も特段に変化しないので、アマモ移植用基盤シート10の柔軟性を利用して基盤シート10の移設作業を円滑に行えるうえに、アマモの根がアマモ移植用基盤シート10の内部にしっかりと絡み付いて一体化しているため、移設作業中においてアマモがアマモ移植用基盤シート10から流出し難い。
時間の経過に伴いアマモ52は成長を続け、その根53がアマモ移植用基盤シート10の移植用マット20や裏面の生分解性補強ネット30を突き抜いて海底地盤にしっかりと根を張る。
移植したアマモ52群が核となり、地下茎が増殖して新しい株(栄養株)を形成する。以降は周辺海底への種子の放出、発芽を順次繰り返すことで、自然のアマモ場が造成される。
このアマモ群の成長過程において、アマモ移植用基盤シート10の移植用マット20が先行して分解し、その後に生分解性補強ネット30が分解し、最後に錘体40が腐食により分解して消失する。
11・・・・・固定ピン
20・・・・・移植用マット
30・・・・・生分解性補強ネット
40・・・・・錘体
50・・・・・天然のアマモ場
51・・・・・アマモ種子
52・・・・・アマモ
53・・・・・アマモの根
54・・・・・砂泥
Claims (5)
- アマモを発芽させて定着させるアマモ移植用基盤シートであって、
移植用マットと、
前記移植用マットの表面を覆って凹凸を付与する生分解性補強ネットと、
前記生分解性補強ネットに付設した錘体とにより構成する、
アマモ移植用基盤シート。 - アマモを発芽させて定着させるアマモ移植用基盤シートであって、
移植用マットと、
前記移植用マットの表面を覆って凹凸を付与する生分解性補強ネットと、
前記生分解性補強ネットに付設した錘体と、
前記生分解性補強ネット及び移植用マットに根を絡ませて定着したアマモとにより構成する、
アマモ移植用基盤シート。 - 移植用マットが生分解性で内部に空隙を有する植物性繊維からなる、請求項1又は請求項2に記載のアマモ移植用基盤シート。
- 錘体が可撓性を有する部材である、請求項1乃至請求項3の何れかに記載のアマモ移植用基盤シート。
- 請求項1,3又は4に記載のアマモ移植用基盤シートを使用したアマモ場の造成方法であって、
前記アマモ移植用基盤シートを天然のアマモ場に設置し、
天然のアマモ場においてアマモ種子が落下して自然に発芽することによりアマモの根を生分解性補強ネット及び移植用マットに絡ませて定着し、
次にアマモを定着したアマモ移植用基盤シートを海底に移設する、
アマモ場の造成方法。
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