JP2006276628A - プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 形成したハードコート被膜の点状白濁不良の発生率低減が可能となるプラスチックレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 ハードコート層を形成するディッピング工程(S3)の絶対湿度が、ハードコート層を乾燥する仮焼成−2工程(S4)の絶対湿度以上であれば、点状白濁不良の発生を低減することができる。また、ディッピング工程(S3)と仮焼成−2工程(S4)の絶対湿度の差が1.5g/m3以下であれば、さらなる点状白濁不良の発生を低減することができるとともに、良質なプラスチックレンズの提供が可能になる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光学物品の表面にハードコート被膜を形成するディッピング方法に関し、特に、形成したハードコート被膜の点状白濁不良の発生率を低減できるプラスチックレンズの製造方法に関する。
ハードコート被膜の形成方法としては、液状物質を塗布して硬化させるのが一般的であり、スピンコート法とディッピング方法が知られている。
ディッピング方法では、アルカリ処理、酸処理、プラズマ処理等の表面処理、超音波洗浄、超純水洗浄等を施したプラスチックレンズをディッピング槽のハードコート液に浸漬した後、引き上げ、乾燥・焼成工程で液膜の乾燥と硬化を行ってハードコート被膜をプラスチックレンズ表面に形成する(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−199797号公報
ところで、ハードコート被膜を形成する際に発生する不良原因の一つに、点状白濁がある。この点状白濁不良は、プラスチックレンズをディッピング槽のハードコート液に浸漬した後、プラスチックレンズの表面にコートされているハードコート液を乾燥(以降、仮焼成という)する際に、仮焼成されたハードコート層の中に細かい点状の白い斑点が略全面に発生する現象である。
この点状白濁が発生すると、プラスチックレンズとしては不良となり、しかもハードコート層をプラスチックレンズから剥離することができなかったり、剥離後再度表面処理、超音波洗浄、超純水洗浄等の工程から開始することとなり多くのコストが掛かっていた。
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、形成したハードコート被膜の点状白濁不良の発生率低減が可能となるプラスチックレンズの製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明では、プラスチックレンズ基体にプライマ層を形成するプライマ処理工程と、前記プライマ層を乾燥する第1の仮焼成工程と、前記プライマ層の表面にハードコート層を形成するハードコート処理工程と、前記ハードコート層を乾燥する第2の仮焼成工程とを備えたプラスチックレンズの製造方法において、前記ハードコート処理工程の絶対湿度が前記第2の仮焼成工程の絶対湿度以上であることを要旨とする。
これによれば、ハードコート処理工程の絶対湿度が第2の仮焼成工程の絶対湿度以上であることによって、形成したハードコート被膜の点状白濁不良の発生率低減が可能となる。
また、本発明では、前記ハードコート処理工程と前記第2の仮焼成工程の絶対湿度の差が1.5g/m3以下であることを要旨とする。
これによれば、ハードコート処理工程と第2の仮焼成工程の絶対湿度の差が1.5g/m3以下であることによって、形成したハードコート被膜の点状白濁不良の発生率低減が可能となる。加えて、ハードコート処理工程と第2の仮焼成工程の空調機を1台とすることができ、良質なプラスチックレンズの提供が可能となる。
以下、本発明を具体化した実施例について図面に従って説明する。
図1は、プライマ及びハードコート被膜を形成する工程のフローチャートである。
ガラス型等で注入成形されたプラスチックレンズ基体が工程に投入される。表面が清浄にされたプラスチックレンズ基体は、ステップ(以降、Sと表記する)1でプライマ処理される。このプライマ処理は、プラスチックレンズ基体の表面と後述するハードコート膜との密着性を得るため及びプラスチックレンズの耐衝撃性強度を向上させるために、プライマ層を形成するプライマ処理工程である。プライマ処理は、プライマ液にプラスチックレンズ基体を浸漬し、所定の速度で引き上げてプラスチックレンズの表面にプライマ層を形成するディッピング工程である。
S2で仮焼成−1が行われる。この仮焼成−1は、S1で処理されたプラスチックレンズ基体の表面に形成されたプライマ層を乾燥させる第1の仮焼成工程である。
S3は、ハードコート処理が行われる。このハードコート処理は、S2で処理されたプラスチックレンズ基体をディッピング槽のハードコート液に浸漬し、所定の速度で引き上げてS2で生成されたプライマ層の上にハードコート層を形成するディッピング工程である。
S4は、仮焼成−2が行われる。この仮焼成−2は、S3で生成されたハードコート層を乾燥させる第2の仮焼成工程である。
S5は、焼成処理が行われる。この焼成処理は、所定の温度と所定の時間を掛けて、プラスチックレンズ基体の表面にプライマ及びハードコート膜を密着固定する焼成処理工程である。
次に、点状白濁不良について説明する。点状白濁不良が発見される工程は、前述したS4の「仮焼成−2」の工程である。S3でハードコート処理された状態では、この点状白濁不良を視認することができない。
S4の「仮焼成−2」によってハードコート層が乾燥された状態で初めて視認することができるようになる。
また、この点状白濁不良は、毎年、3月から10月に掛けて、特に梅雨の時期など、雨天及び雨天あけに多く発生していた。つまり、湿度が上昇すると点状白濁不良が多く発生するのである。
ここで、S1のプライマ処理工程と、S2の仮焼成−1工程と、S3のハードコート処理工程と、S4の仮焼成−2工程は、それぞれ単独に装置化し並べて配置され壁、シャッター等で各環境は隔離されている。したがって、それぞれの工程間では、各工程で処理されたプラスチックレンズ基体はこの各工程環境の湿度に曝されながら次の工程へと自動的に移動していく。
また、作業環境(室内)の空気の湿度は除湿機によりある程度管理され、作業環境(室内)の空気の温度は温調機によって所定の温度に管理されている。しかし、湿度については外気湿度の影響を受け変動することが多い。また、S1のプライマ処理工程とS3のハードコート処理工程は、形成される膜の外観確保、各処理液の寿命向上等の目的から温度、湿度を作業環境(室内)とは別に個別の空調機を用いて一定状態に管理している場合が多い。湿度は低湿度方が外観、各処理液の寿命向上には効果があるため、相対湿度を約20%に管理している。
然しながら、S2の仮焼成−1工程と、S4の仮焼成−2工程は乾燥温度が70℃〜85℃程度のため、作業環境(室内)の空気を取り入れて乾燥作業をしていた。
そこで、下記の比較実験を行った。
(比較例1)
プライマ処理工程(S1) ;25℃、絶対湿度10g/m3
仮焼成−1工程(S2) ;70℃、絶対湿度10g/m3
ハードコート処理工程(S3) ;25℃、絶対湿度10g/m3
仮焼成−2工程(S4) ;85℃、絶対湿度10g/m3
作業環境(室内) ;25℃、絶対湿度10g/m3
作業環境としての25℃、絶対湿度10g/m3は、相対湿度としては約43%に相当する。この相対湿度は、梅雨の時期を前提に設定した。また、S1〜S4の各工程では、同じ絶対湿度を有する空気を使うことを前提にして設定した。
S1〜S4までの工程を実行した比較例1の結果は、点状白濁不良が発生しなかった。つまり、単純に全ての工程の絶対湿度を高くしても、同じ絶対湿度であれば点状白濁不良は起こらないのである。しかし、同じ絶対湿度を維持・管理するのは非常に困難であり、管理許容範囲を明確にする必要があった。
(比較例2)
点状白濁不良が発見される工程が、前述したS4の「仮焼成−2」の工程であることから、プライマ処理工程(S1)と仮焼成−1工程(S2)及びハードコート処理工程(S3)の湿度を固定して、仮焼成−2工程(S4)の湿度水準を変化させて実験した。
プライマ処理工程(S1) ;25℃、絶対湿度10g/m3
仮焼成−1工程(S2) ;70℃、絶対湿度10g/m3
ハードコート処理工程(S3) ;25℃、絶対湿度10g/m3
<湿度条件を変化>
(条件1a)仮焼成−2工程(S4) ;85℃、絶対湿度10g/m3
(条件2b)仮焼成−2工程(S4) ;85℃、絶対湿度11.5g/m3
(条件2c)仮焼成−2工程(S4) ;85℃、絶対湿度12.5g/m3
S1〜S4までの工程を実行した比較例2の結果は、
(条件1a);点状白濁不良発生率=0%
(条件1b);点状白濁不良発生率=5%
(条件1c);点状白濁不良発生率=40%
であった。
(比較例3)
また、よりよい作業環境を求めるために、プライマ処理工程(S1)とハードコート処理工程(S3)及び仮焼成−2工程(S4)の湿度を固定して、仮焼成−1工程(S2)の湿度水準を変化させて実験した。
<湿度条件を固定>
プライマ処理工程(S1) ;25℃、絶対湿度10g/m3
ハードコート処理工程(S3) ;25℃、絶対湿度10g/m3
仮焼成−2工程(S4) ;85℃、絶対湿度10g/m3
<湿度条件を変化>
(条件2a)仮焼成−1工程(S2) ;70℃、絶対湿度12.0g/m3
(条件2b)仮焼成−1工程(S2) ;70℃、絶対湿度11.0g/m3
(条件2c)仮焼成−1工程(S2) ;70℃、絶対湿度10.0g/m3
S1〜S4までの工程を実行した比較例3の結果は、
(条件2a);点状白濁不良発生率=0%
(条件2b);点状白濁不良発生率=0%
(条件2c);点状白濁不良発生率=0%
であった。
比較例2の結果から考えるに、ハードコート層を乾燥する仮焼成−2工程(S4)プライマの絶対湿度よりハードコート層を形成するディッピング工程(S3)の絶対湿度が低すぎる場合に点状白濁が発生することがわかる。S4の仮焼成−2工程が施されると、ハードコート層が加熱されて、ハードコート層の溶媒の蒸発を早める。ハードコート層の溶媒が蒸発し終わる瞬間に、プライマ周りの水分が溶媒と入れ替わりその水分の影響で点状白濁が発生する。
また、比較例3の結果から考えるに、仮焼成−1工程(S2)の絶対湿度よりハードコート層を形成するディッピング工程(S3)の絶対湿度が高い場合には、特別点状白濁は発生しない。
したがって、ハードコート層を形成するディッピング工程(S3)の絶対湿度が、ハードコート層を乾燥する仮焼成−2工程(S4)の絶対湿度以上であることが、点状白濁不良の対策に有効となる。加えて、ディッピング処理工程(S3)と仮焼成−2工程(S4)の絶対湿度の差が1.5g/m3以下であれば、さらに良好な条件となり、良質なプラスチックレンズの提供が可能になる。
プライマ及びハードコート被膜を形成する工程のフローチャート。
符号の説明
S1〜S5…ステップ。

Claims (2)

  1. プラスチックレンズ基体にプライマ層を形成するプライマ処理工程と、
    前記プライマ層を乾燥する第1の仮焼成工程と、
    前記プライマ層の表面にハードコート層を形成するハードコート処理工程と、
    前記ハードコート層を乾燥する第2の仮焼成工程と、を備えたプラスチックレンズの製造方法において、
    前記ハードコート処理工程の絶対湿度が前記第2の仮焼成工程の絶対湿度以上であることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
  2. 請求項1に記載のプラスチックレンズの製造方法において、
    前記ハードコート処理工程と前記第2の仮焼成工程の絶対湿度の差が1.5g/m3以下であることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
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