JP6391343B2 - 基材上への皮膜形成方法および該方法を適用する皮膜形成装置 - Google Patents
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Description
基材保持部材に保持された前記被塗布基材を前記コーティング液に浸漬した後に露出させて前記被塗布基材の表面に前記コーティング液からなる塗膜を形成するディップコート工程と、
前記被塗布基材の下端領域に対して所定の間隔を空けてコーティング液誘引部材を配置して、前記被塗布基材の下端領域と前記コーティング液誘引部材との間に前記塗膜による橋渡しを構築し、前記被塗布基材の下端領域から余剰コーティング液を誘引する余剰コーティング液誘引工程と、
前記塗膜から前記溶媒を揮発させて前記皮膜を形成する皮膜形成工程と、を含み、
前記所定の間隔は、前記塗膜の厚さ以上で該塗膜の厚さの2倍以下であることを特徴とする基材上への皮膜形成方法を提供するものである。
前記被塗布基材を保持する基材保持機構と、
前記コーティング液を貯留するコーティング液槽と、
前記コーティング液槽に貯留された前記コーティング液中に前記被塗布基材を浸漬し露出させて前記塗膜を形成するディップコート機構と、
前記被塗布基材の下端領域に対して所定の間隔を空けてコーティング液誘引部材を配置して余剰コーティング液を誘引する余剰コーティング液誘引機構と、を有し、
前記所定の間隔は、前記塗膜の厚さ以上で該塗膜の厚さの2倍以下であることを特徴とする基材上への皮膜形成装置を提供するものである。
(i)前記余剰コーティング液誘引工程は、前記溶媒の蒸気圧が該溶媒の飽和蒸気圧の1/10〜1/2の範囲に制御された雰囲気下で行われる。
(ii)前記余剰コーティング液誘引工程と同時に行う工程であり、前記被塗布基材の下端領域と前記コーティング液誘引部材との間を橋渡ししていた前記塗膜が途切れることを確認して、前記余剰コーティング液誘引工程の完了を確認する完了確認工程を更に有する。
(iii)前記コーティング液誘引部材は、その臨界表面張力の値が前記被塗布基材の臨界表面張力の値以上である。
(iv)前記コーティング液誘引部材は、酸化物系ガラス材からなる。
(v)前記コーティング液誘引部材は、多孔質材からなる。
(vi)前記ディップコート工程は、前記コーティング液の注入・排出による該コーティング液の液面の昇降によって、前記被塗布基材の浸漬・露出がなされる。
(vii)前記皮膜を硬化させる皮膜硬化工程を更に有する。
(viii)前記被塗布基材を前記コーティング液中に浸漬し露出させる空間における雰囲気を制御する雰囲気制御機構を更に有し、前記雰囲気は、前記溶媒の蒸気圧が該溶媒の飽和蒸気圧の1/10〜1/2の範囲である。
(ix)光源と受光器とを具備し、前記塗膜が前記被塗布基材の下端領域と前記コーティング液誘引部材との間を橋渡ししているか否かを検知する工程完了検知機構を更に有する。
(x)前記コーティング液誘引部材は、その臨界表面張力の値が、前記被塗布基材の臨界表面張力の値以上である。
(xi)前記ディップコート機構は、前記被塗布基材を前記コーティング液中に浸漬し露出させる際に前記コーティング液槽への/からの前記コーティング液の注入/排出によって該コーティング液の液面を昇降させる機構を含み、前記余剰コーティング液誘引機構は、前記コーティング液槽中に固定設置されており、前記コーティング液誘引部材は、中実材からなる。
(xii)前記ディップコート機構は、前記被塗布基材を前記コーティング液中に浸漬し露出させる際に前記基材保持機構を鉛直方向に上下動させる機構を含み、前記余剰コーティング液誘引機構は、前記被塗布基材を前記コーティング液中に浸漬する前に前記コーティング液誘引部材を配置する機構と、前記ディップコート機構と一緒に鉛直方向に上下動する機構とを含み、前記コーティング液誘引部材は、中実材からなる。
(xiii)前記ディップコート機構は、前記被塗布基材を前記コーティング液中に浸漬し露出させる際に前記基材保持機構を鉛直方向に上下動させる機構を含み、前記余剰コーティング液誘引機構は、前記被塗布基材が前記コーティング液から完全に露出した後に、前記コーティング液誘引部材を配置する機構を含み、前記コーティング液誘引部材は、多孔質材からなる。
図1は、ディップコート法による塗膜・皮膜の形成において一般的に生じる膜厚制御の不具合を示す断面模式図である。図1に示したように、被塗布基材10をコーティング液20に浸漬・露出させると、被塗布基材10の表面に塗膜21が形成されるが、コーティング液20の流動性および/またはコーティング液20から切り離れる時のメニスカスに起因して、被塗布基材10の下端領域には不可避的に液溜まりが生じる。そのため、そのままの状態で塗膜21から溶媒が揮発して皮膜22が形成されると、当該液溜まり部分で皮膜厚さが極端に厚くなるという不具合があった。
[皮膜形成方法]
(基材保持工程)
本工程は、被塗布基材を基材保持部材で保持する工程である。本工程に特別の限定はなく、被塗布基材の皮膜形成が必要とされる領域(例えば、一方の主表面の全面)にコーティング液をまんべんなく塗布できるように、被塗布基材を保持できればよい。例えば、真空チャック方式を好ましく用いることができる。
ディップコート工程は、被塗布基材をコーティング液に浸漬した後に露出させて、被塗布基材の表面にコーティング液からなる塗膜を形成する工程である。余剰コーティング液誘引工程は、塗膜を形成した被塗布基材の下端領域から余剰コーティング液を誘引して液溜まりを除去する工程である。皮膜形成工程は、塗膜から溶媒を揮発させて皮膜を形成する工程である。
余剰コーティング液の流動性や皮膜形成速度は、塗膜21からの溶媒の揮発速度と強い相関関係があると言える。塗膜21からの溶媒の揮発速度が高過ぎると、余剰コーティング液の誘引が不十分のまま皮膜22が形成されてしまう。一方、塗膜21からの溶媒の揮発速度が低過ぎると、塗膜21の流動性が高まり過ぎて所望の塗膜厚さ(すなわち所望の皮膜厚さ)が得られなくなる。
本工程は、少なくとも余剰コーティング液誘引工程(望ましくは、余剰コーティング液誘引工程および皮膜形成工程)と同時に行う工程であり、透明基板11の下端領域とコーティング液誘引部材40との間に構築された塗膜の橋渡し23が途切れることを確認して、余剰コーティング液誘引工程の完了を確認する工程である。
本工程は、皮膜形成した被塗布基材を取り出す工程である。基本的に、被塗布基材を皮膜形成装置にセットしたのと反対の手順で行えばよい。
本工程は、形成した皮膜を硬化させる工程である。本工程は、必須の工程ではなく、形成した皮膜の種類や要求される特性に応じて行われるものである。皮膜硬化の方法としては、例えば、加熱処理、所定波長の光照射などがある。
図6は、本発明に係る皮膜形成装置の一例を示す概略模式図である。皮膜形成装置100は、ディップコート工程としてコーティング液20の注入・排出により該コーティング液20の液面を昇降させる場合の構成を示した。なお、図面の簡単化のため、機械的な駆動機構の図示は省略した。
本発明の第2実施形態に係る皮膜形成方法および皮膜形成装置は、ディップコート工程・機構および余剰コーティング液誘引工程・機構において前述の第1実施形態に係る皮膜形成方法および皮膜形成装置と異なり、他を同じとするものである。以下、異なる部分についてのみ説明する。
図7は、本発明におけるディップコート工程および余剰コーティング液誘引工程の他の一例を示す模式図である。図7では、被塗布基材として透明基板11を用い、ディップコート方法として、基材保持部材30に保持された透明基板11を鉛直方向に上下動させることによって、被塗布基材の浸漬・露出を行う場合を示した。
本発明の第3実施形態に係る皮膜形成方法および皮膜形成装置も、ディップコート工程・機構および余剰コーティング液誘引工程・機構において前述の第1実施形態に係る皮膜形成方法および皮膜形成装置と異なり、他を同じとするものである。以下、異なる部分についてのみ説明する。
図8は、本発明におけるディップコート工程および余剰コーティング液誘引工程の更に他の一例を示す模式図である。図8では、被塗布基材としてレンズ12を用い、ディップコート方法として、基材保持部材30に保持されたレンズ12を鉛直方向に上下動させることによって、被塗布基材の浸漬・露出を行う場合を示した。
まず、オルソテトラエチルシリケート(39 g)、酢酸(1 g)、2-プロパノール(920 g)を混合し50℃で2時間加温して、シリカゾルのコーティング液Sを調合した。次に、被塗布基材として白板ガラス基板を用い、前述した第2実施形態に沿って白板ガラス基板上に上記コーティング液Sを塗布し皮膜を形成した。最後に、皮膜を形成した白板ガラス基板に対して、200℃で20分間保持する加熱処理を行い、実施例1の試料を作製した。
ディップコート法による皮膜形成において、余剰コーティング液誘引工程を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の試料を作製した。
被塗布基材としてガラスレンズを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の試料を作製した。ガラスレンズは、ランタン−ホウ酸塩系ガラス製であり、表面に酸化アルミニウム皮膜(平均膜厚150 nm)があらかじめ形成されているものを用いた。
ディップコート法による皮膜形成において、余剰コーティング液誘引工程を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして、比較例2の試料を作製した。
実施例1のコーティング液S(500 g)に対して、二酸化ケイ素粒子(平均粒径10 nm、15 g)、テトラエチレングリコールの片末端をアセチル化した化合物(1 g)、および2-プロパノール(484 g)を混合して、二酸化珪素粒子とシリカゾルとからなるコーティング液SSを調合した。コーティング液SSを用いたこと以外は実施例2と同様にして、実施例3の試料を作製した。
ディップコート法による皮膜形成において、余剰コーティング液誘引工程を行わなかったこと以外は実施例3と同様にして、比較例3の試料を作製した。
アクリル樹脂(平均分子量が約100万、20 g)を2-ブタノン(980 g)に溶解してアクリル樹脂のコーティング液Aを調合した。コーティング液Aを用いたこと以外は実施例2と同様にして、実施例4の試料を作製した。
ディップコート法による皮膜形成において、余剰コーティング液誘引工程を行わなかったこと以外は実施例4と同様にして、比較例4の試料を作製した。
コーティング液としてコーティング液Sを用い、被塗布基材としてアクリル樹脂レンズを用い、前述した第3実施形態に沿ってアクリル樹脂レンズ上にコーティング液Sを塗布し皮膜を形成した。皮膜を形成したアクリル樹脂レンズに対して、80℃で20分間保持する加熱処理を行い、実施例5の試料を作製した。
ディップコート法による皮膜形成において、余剰コーティング液誘引工程を行わなかったこと以外は実施例5と同様にして、比較例5の試料を作製した。
ディップコート法による皮膜形成において、余剰コーティング液誘引工程を行った空間における溶媒の蒸気圧が飽和蒸気圧の1/20以下になるように制御したこと以外は実施例1と同様にして、比較例6の試料を作製した。
ディップコート法による皮膜形成において、余剰コーティング液誘引工程を行った空間における溶媒の蒸気圧が飽和蒸気圧の4/5程度になるように制御したこと以外は実施例1と同様にして、比較例7の試料を作製した。
20…コーティング液、21…塗膜、22…皮膜、23…橋渡し、24…空間、
30…基材保持部材、31…支持部材、32…真空チャック用パッキン、
40,41,42…コーティング液誘引部材、43…支持部材、
50…光源、51…受光器、
60…コーティング液槽、61…コーティング液注入管、62…コーティング液排出管、
63…溶媒ガスセンサ、64…温度センサ、65…コーティング液槽上蓋、
70…格納容器、71…導気管、72…排気管、100…皮膜形成装置。
Claims (13)
- 固相成分と溶媒とを含むコーティング液を被塗布基材の表面に塗布して前記固相成分を主成分とする皮膜を形成する方法であって、
基材保持部材に保持された前記被塗布基材を前記コーティング液に浸漬した後に露出させて前記被塗布基材の表面に前記コーティング液からなる塗膜を形成するディップコート工程と、
前記被塗布基材の下端領域に対して所定の間隔を空けてコーティング液誘引部材を配置して、前記被塗布基材の下端領域と前記コーティング液誘引部材との間に前記塗膜による橋渡しを構築し、前記被塗布基材の下端領域から余剰コーティング液を誘引する余剰コーティング液誘引工程と、
前記塗膜から前記溶媒を揮発させて前記皮膜を形成する皮膜形成工程と、を含み、
前記所定の間隔は、前記塗膜の厚さ以上で該塗膜の厚さの2倍以下であり、
前記余剰コーティング液誘引工程は、前記溶媒の蒸気圧が該溶媒の飽和蒸気圧の1/10〜1/2の範囲に制御された雰囲気下で行われることを特徴とする基材上への皮膜形成方法。 - 請求項1に記載の基材上への皮膜形成方法において、
前記余剰コーティング液誘引工程と同時に行う工程であり、前記被塗布基材の下端領域と前記コーティング液誘引部材との間を橋渡ししていた前記塗膜が途切れることを確認して、前記余剰コーティング液誘引工程の完了を確認する完了確認工程を更に有することを特徴とする基材上への皮膜形成方法。 - 請求項1又は請求項2に記載の基材上への皮膜形成方法において、
前記コーティング液誘引部材は、その臨界表面張力の値が前記被塗布基材の臨界表面張力の値以上であることを特徴とする基材上への皮膜形成方法。 - 請求項3に記載の基材上への皮膜形成方法において、
前記コーティング液誘引部材は、酸化物系ガラス材からなることを特徴とする基材上への皮膜形成方法。 - 請求項3又は請求項4に記載の基材上への皮膜形成方法において、
前記コーティング液誘引部材は、多孔質材からなることを特徴とする基材上への皮膜形成方法。 - 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の基材上への皮膜形成方法において、
前記ディップコート工程は、前記コーティング液の注入・排出による該コーティング液の液面の昇降によって、前記被塗布基材の浸漬・露出がなされることを特徴とする基材上への皮膜形成方法。 - 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の基材上への皮膜形成方法において、
前記皮膜を硬化させる皮膜硬化工程を更に有することを特徴とする基材上への皮膜形成方法。 - 被塗布基材の表面に、固相成分と溶媒とを含むコーティング液を塗布して塗膜を形成し、前記固相成分を主成分とする皮膜を形成する装置であって、
前記被塗布基材を保持する基材保持機構と、
前記コーティング液を貯留するコーティング液槽と、
前記コーティング液槽に貯留された前記コーティング液中に前記被塗布基材を浸漬し露出させて前記塗膜を形成するディップコート機構と、
前記被塗布基材の下端領域に対して所定の間隔を空けてコーティング液誘引部材を配置して余剰コーティング液を誘引する余剰コーティング液誘引機構と、
前記被塗布基材を前記コーティング液中に浸漬し露出させる空間における雰囲気を制御する雰囲気制御機構と、を有し、
前記所定の間隔は、前記塗膜の厚さ以上で該塗膜の厚さの2倍以下であり、
前記雰囲気は、前記溶媒の蒸気圧が該溶媒の飽和蒸気圧の1/10〜1/2の範囲であることを特徴とする基材上への皮膜形成装置。 - 請求項8に記載の基材上への皮膜形成装置において、
光源と受光器とを具備し、前記塗膜が前記被塗布基材の下端領域と前記コーティング液誘引部材との間を橋渡ししているか否かを検知する工程完了検知機構を更に有することを特徴とする基材上への皮膜形成装置。 - 請求項8又は請求項9に記載の基材上への皮膜形成装置において、
前記コーティング液誘引部材は、その臨界表面張力の値が前記被塗布基材の臨界表面張力の値以上であることを特徴とする基材上への皮膜形成装置。 - 請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の基材上への皮膜形成装置において、
前記ディップコート機構は、前記被塗布基材を前記コーティング液中に浸漬し露出させる際に前記コーティング液槽への/からの前記コーティング液の注入/排出によって該コーティング液の液面を昇降させる機構を含み、
前記余剰コーティング液誘引機構は、前記コーティング液槽中に固定設置されており、
前記コーティング液誘引部材は、中実材からなることを特徴とする基材上への皮膜形成装置。 - 請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の基材上への皮膜形成装置において、
前記ディップコート機構は、前記被塗布基材を前記コーティング液中に浸漬し露出させる際に前記基材保持機構を鉛直方向に上下動させる機構を含み、
前記余剰コーティング液誘引機構は、前記被塗布基材を前記コーティング液中に浸漬する前に前記コーティング液誘引部材を配置する機構と、前記ディップコート機構と一緒に鉛直方向に上下動する機構とを含み、
前記コーティング液誘引部材は、中実材からなることを特徴とする基材上への皮膜形成装置。 - 請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の基材上への皮膜形成装置において、
前記ディップコート機構は、前記被塗布基材を前記コーティング液中に浸漬し露出させる際に前記基材保持機構を鉛直方向に上下動させる機構を含み、
前記余剰コーティング液誘引機構は、前記被塗布基材が前記コーティング液から完全に露出した後に、前記コーティング液誘引部材を配置する機構を含み、
前記コーティング液誘引部材は、多孔質材からなることを特徴とする基材上への皮膜形成装置。
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