JP2006275716A - 試験紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】 少ない検体量で、正確かつ迅速に測定を行うことができる試験紙を提供する。
【解決手段】 多孔質基材20、前記多孔質基材20上に形成された多孔質層10、および呈色試薬を含む試験紙であって、前記多孔質層10は屈折率が2以上の物質を含み、前記多孔質基材20は有機高分子からなることを特徴とする試験紙。
【選択図】 図1

Description

本発明は検体中の目的成分の量を測定するための試験紙に関する。
近年、血液中の糖分、コレステロールもしくは中性脂肪、または、尿中の糖分、蛋白もしくは潜血などの液状の検体中の検出物を定量的に測定するための装置の開発が進められている。
これらの装置の一種として、検体中の目的の検出物と反応して呈色する試験紙に光を照射して反射光の強度を測定するものがあり、例えば、血糖値の測定を行う場合には測定に影響を及ぼす血液中の赤血球は試験紙の片面で濾別することで除去し、反対側の面に光を照射して測定を行っている。
このような従来の試験紙として特許文献1に示す多孔質膜が挙げられ、特許文献1の実施例1〜8ではポリエーテルスルホンを多孔質膜の膜材質として用いている。
このように、従来の試験紙は強度、高空孔率、コストなどの点から、有機高分子からなる多孔質膜や不織布が使用されることが多い。一般的に有機高分子材料の屈折率は1.4〜1.7程度であり水の屈折率1.33に近いため、液状の検体で濡れてしまうと光が散乱せず、透過してしまう。このため、試験紙表面で濾別された赤血球の赤い色が透けて測定値に影響してしまう。
このような赤血球色の影響を無くすためのものとして、特許文献2には、第2フィルム層、第1フィルム層、および透明フォイルがこの順番で積層され、前記第2フィルム層は血液中の赤血球を通過させない構造であり、少なくとも2.5の屈折率を有する顔料を含み、前記第1フィルム層は被検体と試薬系との反応により光学的に検出可能な変化が生じる診断試験担体が開示されている。前記第2フィルム層に含まれる前記顔料の屈折率と血液中の水の屈折率とは大きく異なるので、前記顔料と水との界面で光が屈折し、前記第2フィルム層に血液を供給し前記透明フォイルのある面から光を照射しても、前記第2フィルム層で光が散乱し、濾別された赤血球にまで照射した光が到達しない。このため、上述した従来の試験紙のように赤血球の赤い色が透けて測定値に影響してしまうことがない。特許文献2の実施例2では診断試験担体に血液10μLを供給した30秒後に測定を行っている。
また、特許文献3には、水不浸透性透明支持体の上に、少なくとも試薬層、光反射/遮蔽層、展開層がこの順に設けられ、前記光反射/遮蔽層に光反射性粒子を有機液体中に分散させたマイクロカプセルを含む乾式液体分析要素が開示されている。前記光反射/遮蔽層に含まれるマイクロカプセル中の光反射性粒子の屈折率と血液中の水屈折率とは大きく異なるので、前記マイクロカプセルと水との界面で光が屈折する。このため、前記試薬層に血液を供給し、前記水不浸透性透明支持体のある面から光を照射しても、前記光反射/遮蔽層で光が散乱し、濾別された赤血球にまで照射した光が到達せず、上述した従来の試験紙のように赤血球の赤い色が透けて測定値に影響してしまうことがない。特許文献3の測定例3では乾式液体分析要素に人工血10μLを供給した4分後に測定を行っている。
特開2001−164030号公報 特許第3394892号公報(段落番号0068) 特公平7−18864号公報(7ページ)
しかしながら、特許文献2の診断試験担体は第1フィルム層および第2フィルム層だけでは強度が不足するため透明フォイルを必須の要素としている。このため診断試験担体が透明フォイル、第1フィルム層および第2フィルム層の3層構造からなり製造工程が複雑になるだけでなく、サンプルのしみ出す出口側に通気性および透水性のない透明フォイルがあるため、試験紙内の検体液がしみ込む際に空孔に存在している空気の逃げ場が膜面と平行の方向しかなく、サンプルのしみ出しが遅くなり、測定時間が長くなってしまうという問題点がある。
特許文献3の乾式液体分析要素も試薬層、光反射/遮蔽層、および展開層だけでは強度が不足するため水不浸透性透明支持体を必須の要素としている。このため、上記特許文献2と同じように検体液のしみ出しが遅くなり、測定時間が長くなってしまう問題の他に、合計4層もの複雑な構造となるため、特許文献2よりもさらに製造工程が複雑になりコストも高くなる。
また、これらのように層を何層も重ねたものはおのずと厚さが厚くなり、測定に必要な検体量も多くなってしまう。
本発明は上記課題を解決するために、測定精度が高く、少ない検体量で迅速に測定を行うことができ、簡易に作製できる試験紙を提供することを目的とする。
本発明者らは、透水性を有する多孔質基材を支持体として用い、更に支持体が測定に必要な呈色液を測定面にしみ出すことで、少ない検体量で測定を迅速にできる試験紙が得られる上に試験紙の製造工程が簡易となることを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち、下記(1)〜(10)に記載の発明によって上記課題を解決する。
(1)対向する第1の面と第2の面とを有する多孔質基材、前記多孔質基材の第1の面に形成された多孔質層、および呈色試薬を含む試験紙であって、前記多孔質層は屈折率が2以上の物質を含み、前記多孔質基材は有機高分子からなり、前記多孔質層に液状の検体を点着することによって、前記第2の面である測定面に呈色液がしみ出ることを特徴とする試験紙。
(2)前記有機高分子がポリエーテルスルホンであることを特徴とする上記(1)に記載の試験紙である。
(3)前記多孔質基材の厚みが50〜200μmであり、平均孔径が0.1〜10μmであり、空孔率が60〜95%であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の試験紙である。
(4)前記屈折率が2以上の物質が無機物質であることを特徴とする上記(1)〜(3)に記載の試験紙である。
(5)前記無機物質が二酸化チタンであることを特徴とする上記(4)に記載の試験紙である。
(6)前記多孔質層が親水性物質を含むことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の試験紙である。
(7)前記親水性物質が親水性有機高分子であることを特徴とする上記(6)に記載の試験紙である。
(8)前記多孔質層の厚みが1〜50μmであり、平均孔径が0.1〜3μmであり、空孔率が10〜60%であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の試験紙である。
(9)前記呈色試薬が少なくとも前記多孔質基材に配置されていることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の試験紙である。
(10)血液に含まれる成分を測定するための試験紙であって、前記多孔質層によって血球が濾別されることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の試験紙である。
本発明の試験紙は、多孔質基材と多孔質層との2層で形成され、多孔質基材がそれ自体で試験紙の形状を維持できる支持体としての強度を有し、呈色液を測定面にしみ出すため、少ない検体量で迅速に測定可能であり、改めて支持体を設ける必要がなく、検体供給者の負担を軽減すると共に、製造上のメリットが大きい。
また、本発明の試験紙の多孔質層は、測定のための照射光を非検出物に到達させない機能と、検体中の非検出物を濾別する機能を有し、各機能に対応する層を別個に設ける必要がなく、製造上のメリットが大きい。
また、本発明の試験紙は、赤血球の赤い色など検出物の色が透けて測定値に影響しないため、より正確な測定を可能とする。
本発明の第一は、対向する第1の面と第2の面とを有する多孔質基材、前記多孔質基材の第1の面に形成された多孔質層、および呈色試薬を含む試験紙であって、前記多孔質層は屈折率が2以上の物質を含み、前記多孔質基材は有機高分子からなり、前記多孔質層に液状の検体を点着することによって、前記第2の面である測定面に呈色液がしみ出ることを特徴とする試験紙である。
図1を用いて本発明の試験紙について詳細に説明するが、本発明は図1に限定されない。多孔質基材20と多孔質基材20上に形成された多孔質層10とを含む本発明の試験紙において、多孔質層10の供給面100に検体が供給されると、多孔質層10において検体中の非検出物は濾別されて検出物のみが多孔質層10を通過して多孔質基材20に到達する。
試験紙には呈色試薬が含まれており、検出物と呈色試薬とが反応することで呈色した呈色液が生成する。呈色液は毛細管現象により多孔質基材20の測定面200にしみ出されるので、測定面200に照射光を当てて反射光を測定することにより、検出物を定量または定性することができる。
以下、本発明の試験紙の多孔質基材、多孔質層および呈色試薬についてより詳細に述べる。
(多孔質基材)
本発明の多孔質基材は試験紙の形状を維持できる支持体としての強度を有し、呈色液を測定面にしみ出すため、少ない検体量で迅速に測定可能であり、改めて支持体を設ける必要がなく、検体供給者の負担を軽減すると共に、製造上のメリットが大きい。
多孔質基材は有機高分子からなり、有機高分子としては、例えば、ニトロセルロース、ポリビニルジフロライド、セルロースアセテート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが好ましく挙げられ、より好ましくはポリエーテルスルホンである。これらの樹脂を用いると多孔質基材に透水性および支持体としての強度を付与しつつ、多孔質基材を薄膜化でき、少ない検体量で迅速に測定できるため好ましく、ポリエーテルスルホンを用いると呈色試薬の経時的劣化が少なく、特に血糖値を測定するために用いられる呈色試薬に対して効果的である。
多孔質基材の厚みは50〜200μmが好ましく、より好ましくは50〜130である。50μmよりも薄いと支持体としての強度を保つことができないおそれがあり、200μmを超えると必要以上に検体量が多くなってしまうおそれがある。厚みは乾燥状態で測定し、厚みの測定にはマイクロメーターが好ましく用いられる。
多孔質基材の平均孔径は0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.3〜3μmである。0.1μmよりも小さいと検出物の浸透に時間がかかり測定時間が長くなるおそれがあり、10μmよりも大きいと孔の部分で多孔質層を支持し難い場合がある。平均孔径の測定にはパームポロシメーターが好ましく用いられる。
多孔質基材の空孔率は60〜95%が好ましく、より好ましくは70〜85%である。60%よりも小さいと検出物の浸透に時間がかかり測定が長くなるおそれがあり、95%を超えると支持体としての強度を保つことができないおそれがある。空孔率の測定には水銀ポロシメーターが好ましく用いられる。
多孔質基材は、厚みが50〜200μmであり、平均孔径が0.1〜10μmであり、空孔率が60〜95%であることが好ましく、より好ましくは厚みが50〜130μmであり、平均孔径が0.3〜3μmであり、空孔率が70〜85%である。
本発明の多孔質基材には親水性物質が含まれていることが好ましく、親水性物質を含むことにより検体の浸透を容易にすることができ、検出物の測定を迅速にすることができる。親水性物質としては、親水性有機高分子、親水化剤および膨潤剤が好ましく挙げられ、より好ましくは親水性有機高分子である。
親水性有機高分子としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール;ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドンなどのビニル性モノマーの重合体;アクリルアミド重合体;メタクリルアミド重合体;アガロース;ゼラチン;フタル化ゼラチンなどのゼラチン誘導体;ならびに寒天などが好ましく挙げられ、より好ましくはカルボキシメチルセルロースおよびポリエチレングリコールである。
親水化剤としてはトライトンX−100などの界面活性剤、水溶性シリコン、グリシンおよびリジンなどのアミノ酸、ならびにレシチン等が好ましく挙げられる。親水化剤を含むと検体の浸透を容易にすることができ、特に界面活性剤は検出物が疎水性の場合に検出物を包含して呈色試薬と反応させる化合物として使用することもできる。
膨潤剤としてはメチルビニルエーテルマレイン酸無水物共重合体、キサンタンガム、およびメチルビニルエーテルマレイン酸共重合体が好ましく挙げられる。膨潤剤を含むと検体の浸透を容易にすることができ、特に検体として血液を用いた場合に血球の分離能が高くなるため好ましい。
親水性物質が含まれる場合、多孔質基材中の親水性物質の割合は0.05〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1.0質量%である。親水性物質が0.05質量%未満であると検体が多孔質基材を浸透しにくくなるおそれがあり、2.0質量%を超えると添加量に見合った効果が得られないおそれがある。
本発明の多孔質基材には検出物または呈色試薬の劣化を防止する試薬安定剤を含むことが好ましく、試薬安定剤としては特に限定されないが、スクロース、トレハロース、ラクトース、およびグルコース等の糖類、塩化ナトリウム、および塩化カリウム等の塩類、グリシン、レシチン、ならびにリン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、およびグッド緩衝剤などの緩衝剤からなる群より選択される少なくとも一種などが挙げられる。
試薬安定剤が含まれる場合、多孔質基材中の試薬安定剤の割合は0.5〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0〜5.0質量%である。試薬安定剤が0.5質量%未満であると、検出物または呈色試薬の劣化を防止できないおそれがあり、10.0質量%を超えると添加量に見合った効果が得られないおそれがある。
本発明の多孔質基材は呈色試薬を含むことが好ましく、呈色試薬については後述の呈色試薬の項に記載する。
(多孔質層)
本発明の多孔質層は、測定のための照射光を非検出物に到達させない機能と、検体中の非検出物を濾別する機能を有し、各機能に対応する層を別個に設ける必要がなく、製造上のメリットが大きい。また、本発明の試験紙は、多孔質層があることにより赤血球などの非検出物の色が透けず、測定値に影響しないため、より正確な測定を可能とする。
多孔質層は、照射光を非検出物に到達させないために、光散乱性の物質を有する。該物質の屈折率は水の屈折率1.33から離れていることが好ましく、少なくとも屈折率2以上である。多孔質層に含まれる屈折率が2以上の物質としては特に限定されないが無機物質であることが好ましい。屈折率が2以上の無機物質として例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウム、リン三酸ナトリウム、および硫酸バリウムなどが好ましく挙げられ、より好ましくは二酸化チタンである。二酸化チタンの屈折率は2.3〜2.55であり高い光反射効果を得られるため好ましい。なお、本発明でいう屈折率とは20℃で波長589.3nmの光を照射した際の屈折率を指す。
屈折率が2以上の物質の形状は特に限定されないが、粉体状であることが好ましく、平均粒子径は0.05〜10μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5.0μmである。無機物質の平均粒子径が0.05μm未満であると望ましい孔径が得られず、検体がしみ込まないおそれがあり、10μmを超えると遮光効果が得られないおそれがある。
多孔質層にはバインダーが含まれていてもよく、バインダーとしては、アルキルシリケートおよび金属アルコラートなどの無機バインダー、ならびに、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールおよびカルボキシメチルセルロースなどの水溶性有機バインダーなどが好ましく挙げられ、より好ましくはカルボキシメチルセルロースである。カルボキシメチルセルロースは親水性であるため、検出物が浸透し易くなり検出物の測定を迅速にすることができる。
バインダーが含まれる場合、多孔質層中のバインダーは、5〜30質量%が好ましく、より好ましくは10〜22質量%である。5質量%未満であると多孔質層が脆くなるおそれがあり、30質量%を超えると遮光効果が得られないおそれがある。
多孔質層には前記親水性物質が含まれていることが好ましく、親水性物質を含むことにより検体が浸透し易くなり、検出物の測定を迅速にすることができる。親水性物質としては、上述の多孔質基材の項に記載したとおりである。
親水性物質が含まれる場合、多孔質層中の親水性物質の割合は0.5〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜6質量%である。親水性物質が0.5質量%未満であると検体が多孔質層を浸透しにくくなるおそれがあり、10質量%を超えると添加量に見合った効果が得られないおそれがある。
多孔質層には前記試薬安定剤を含むことができ、試薬安定剤としては、上述の多孔質基材の項に記載したとおりである。
試薬安定剤が含まれる場合、多孔質層中の試薬安定剤の割合は0.5〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0〜5.0質量%である。試薬安定剤が0.5質量%未満であると、検出物または呈色試薬の劣化を防止できないおそれがあり、10.0質量%を超えると添加量に見合った効果が得られないおそれがある。
本発明の多孔質層には呈色試薬を含むことができ、呈色試薬については後述の呈色試薬の項に記載する。
多孔質層の厚みは1〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜30μmである。1μmよりも薄いと遮光効果が得られないおそれがあり、50μmを超えると検出物の浸透に時間がかかり測定時間が長くなるおそれがある。厚みは乾燥状態で測定し、厚みの測定にはマイクロメーターが好ましく用いられる。
多孔質層の平均孔径は0.1〜3μmが好ましく、より好ましくは0.2〜1μmである。0.1μmよりも小さいと検出物の浸透に時間がかかり測定時間が長くなるおそれがあり、3μmを超えると非検出物を濾別できないおそれがある。特に検体として血液を用い非検出物を赤血球とした場合、赤血球は大きさ直径7.5μm厚さ2μm程度であるが変形能を有するため、孔径が3μmを超えると通過してしまう可能性がある。本発明において平均孔径はJIS K3832(ASTM F316−86)に準拠し、平均孔径の測定にはパームポロシメーターが好ましく用いられる。
多孔質層の空孔率は10〜60%が好ましく、より好ましくは20〜50%である。10%よりも低いと検出物の浸透に時間がかかり測定時間が長くなるおそれがあり、60%を超えると遮光効果が得られないおそれがある。空孔率の測定には水銀ポロシメーターが好ましく用いられる。
前記多孔質層の厚みが1〜50μmであり、平均孔径が0.1〜3μmであり、空孔率が10〜60%であることが好ましく、より好ましくは厚みが5〜30μmであり、平均孔径が0.2〜1μmであり、空孔率が20〜50%である。
(呈色試薬)
本発明の試験紙に含まれる呈色試薬は多孔質層または多孔質基材に配置することができるが、多孔質基材に配置されていることが好ましい。多孔質基材に配置することにより使用する呈色試薬の量を減らすことができる。
本発明でいう呈色試薬とは呈色液を生成する過程で用いられる全ての試薬を指し、例えば、検出物と直接反応して呈色液を生成するものでもよいし、検出物を特異的に分解するものでもよいし、検出物の分解生成物と反応して呈色液を生成するものでもよいし、検出物の分解生成物と他の呈色試薬との反応を促進するものでもよいし、検出物と化学的または物理的に結合した化合物と反応して呈色液を生成するものでもよい。呈色試薬としては特に限定されず、目的の検出物の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、ブドウ糖を検出するための呈色試薬、コレステロールを検出するための呈色試薬、中性脂肪を検出するための呈色試薬、タンパク質を検出するための呈色試薬などがある。
ブドウ糖を検出するための呈色試薬としては、グルコースオキシダーゼ(GOD)、ペルオキシダーゼ(POD)、アスコルビン酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、およびコレステロールオキシダーゼなどの酵素剤、ならびに、4−アミノアンチピリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン(TOOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3−メトキシアニリン(ADPS)、N−エチル−N−スルホプロピルアニリン(ALPS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3−メチルアニリン(TOPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン(ADOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)3,5−ジメトキシアニリン(DAOS)、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(HADOS)、およびN−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン(MAOS)などの発色剤等からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく挙げられる。
用いる呈色試薬の量は、検体の種類などに応じて適宜決定することができる。
本発明の試験紙は様々な種類の検体に適用することができるが、血液に適用することが好ましく、血球を非検出物とすることが好ましい。血中の特定成分の濃度は健康状態を推測するための指標となることから、血液用の試験紙の需要は高いものの、血液は有色である上に変形能を有し細孔を通過することのできる赤血球を含むため、従来の試験紙を用いた測定方法では測定に時間がかかったり、測定精度が低かったりした。しかし、本発明の試験紙は血液に適用しても、測定時間および測定精度に優れる。更に本発明の試験紙は用いる検体量が少量で済むので、提供に痛みを伴う血液などの検体を測定する際に検体供給者の負担を軽減することができる。
次に、本発明の試験紙の製造方法の一例について説明するが、本発明はこれに限定されない。
屈折率が2以上の物質の粉体、およびバインダーを溶媒に分散させてコート液を調製し、前記コート液を上記した多孔質基材の片面にコートして、溶媒を蒸発させることにより多孔質基材上に多孔質層を積層した積層体を得ることができる。次に上記呈色試薬を溶媒に添加して含呈色試薬溶液を調製し、前記積層体の多孔質基材側から含呈色試薬溶液を染み込ませ、溶媒を蒸発させることによって試験紙を得ることができる。
親水性を付与するために上記多孔質基材に親水化処理を施したものを用いることができ、親水化処理方法としては、親水性物質を含む溶液に試験紙を浸漬・乾燥する方法、親水性物質を含む溶液を塗布・乾燥する方法、プラズマ処理、グロー放電、コロナ放電、および紫外線照射などが挙げられる。
コート液に使用される溶媒は用いられるバインダーなどにより適宜選択することができるが、例えば水が挙げられる。コート液をコートする方法としては、ブレードコート、スプレーコート、グラビアコート、スクリーン印刷、およびインクジェット印刷などが挙げられる。溶媒を蒸発させる方法としては空気中、室温で乾燥する方法などが挙げられる。
上記含呈色試薬溶液に使用される溶媒は用いられる呈色試薬などにより適宜選択することができるが、例えば水が挙げられる。溶媒を蒸発させる方法としては、空気中で遮光しながら乾燥する方法、または真空中で乾燥する方法などが挙げられ、乾燥温度は呈色試薬により適宜決定することができる。
多孔質基材、親水性物質、屈折率が2以上の物質、バインダー、試薬安定剤、および呈色試薬については上記したとおりである。
本発明の試験紙は、乾燥状態の厚みが51〜250μmでも検体を測定するための試験紙として機能することができる。
本発明の試験紙は、検体中の特定成分の測定装置に脱着可能なチップに組み込んだり、あるいは測定装置自体に挿入して使用することが好ましい。測定装置としては、血液中の血糖、コレステロール、および中性脂肪、ならびに尿中の糖分、蛋白および潜血などを、定量的あるいは定性的に測定する装置が挙げられる。
本発明の試験紙は測定を迅速に行えることから、本発明の試験紙を、試験紙への検体の供給、呈色液の展開から測定までの一連の操作を連続的、自動的に行うことができる血液自動分析装置に適用すると、多数のサンプルを検査する際に、装置の作動時間を大幅に短縮できるため非常に有利である。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(実施例)
厚み約130μm、平均孔径0.5μm、空孔率88%のポリエーテルスルホン製多孔質基材の片面に、二酸化チタン(関東化学株式会社、酸化チタン(IV)(ルチル型)特級)3.0質量%、ポリエチレングリコール(アルドリッチ株式会社、Poly(ethylene oxide)Typical Mv 600,000)1.5質量%、カルボキシメチルセルロース(ダイセル社 CMCダイセル1390)0.15質量%、イソプロピルアルコール5.0質量%を水に分散・溶解させた液を、約5μmの厚さにコートし、室温にて乾燥させた。この多孔質層の厚み20μm、平均孔径は0.3μm、空孔率30%であった。なお、平均孔径の測定にはパームポロシメーター(米国PMI株式会社製)、空孔率の測定には水銀ポロシメーター(カルロエルバ社製)、厚みの測定にはマイクロメーター(株式会社ミツトヨ製、型式ID−C112C)を用いた。
さらに、この膜に、水7mLにGOD24kU(0.156g)、POD12kU(0.050g)、4−アミノアンチピリン0.036g、およびTOOS0.054gを混合した水溶液を多孔質基材の多孔質層のある面と反対の面から染み込ませ、37℃で遮光して乾燥し、試験紙を得た。乾燥後は、シリカゲルを入れた密閉容器に入れ、遮光保存した。
(比較例)
平均孔径0.5μm、空孔率88%、厚み約130μmのポリエーテルスルホン製多孔質基材を使用し、この膜に実施例と同様の試薬類を染み込ませ、37℃で遮光して乾燥し、試験紙を得た。乾燥後は、シリカゲルを入れた密閉容器に入れ、遮光保存した。
上記実施例および比較例の試験紙の検体供給面に、血糖値0mg/dLに調製された人工血をマイクロピペットで2μL滴下し、血液滴下10秒後の、測定面の反射光スペクトルを分光光度計(Ocean Optics社 USB2000)で測定した。次に新しい試験紙を用意し、血糖値100mg/dLに調製された人工血を用いて同様に反射光スペクトルを測定した。
図2の(a)に実施例の試験紙を用いた際の血糖値0mg/dLに調製された人工血の反射光スペクトルを示し、図2の(b)に実施例の試験紙を用いた際の血糖値100mg/dLに調製された人工血の反射光スペクトルを示す。
図3の(a)に比較例の試験紙を用いた際の血糖値0mg/dLに調製された人工血の反射光スペクトルを示し、図3の(b)に比較例の試験紙を用いた際の血糖値100mg/dLに調製された人工血の反射光スペクトルを示す。
なお、図中に示す反射率は、人工血の点着後に測定した反射光量を、点着前の反射光量で除したもので、人工血点着前の反射光量を100%として補正したものである。
図3の(a)に示すグラフから、比較例の試験紙は血糖値0でも血液ヘモグロビンの色である540〜580nmの吸収光が存在するのに対し、図2の(a)に示すグラフでは血液ヘモグロビンの色の吸収がなく、比色測定に影響がないことがわかる。
本発明の試験紙の断面概略図である。 実施例の試験紙を用いた場合の、血糖値0mg/dLに調製された人工血の反射光スペクトル(a)および血糖値100mg/dLに調製された人工血の反射光スペクトル(b)である。 比較例の試験紙を用いた場合の、血糖値0mg/dLに調製された人工血の反射光スペクトル(a)および血糖値100mg/dLに調製された人工血の反射光スペクトル(b)である。
符号の説明
10 多孔質層、
20 多孔質基材、
100 供給面、
200 測定面。

Claims (10)

  1. 対向する第1の面と第2の面とを有する多孔質基材、前記多孔質基材の第1の面に形成された多孔質層、および呈色試薬を含む試験紙であって、前記多孔質層は屈折率が2以上の物質を含み、前記多孔質基材は有機高分子からなり、前記多孔質層に液状の検体を点着することによって、前記第2の面である測定面に呈色液がしみ出ることを特徴とする試験紙。
  2. 前記有機高分子がポリエーテルスルホンであることを特徴とする請求項1に記載の試験紙。
  3. 前記多孔質基材の厚みが50〜200μmであり、平均孔径が0.1〜10μmであり、空孔率が60〜95%であることを特徴とする請求項1または2に記載の試験紙。
  4. 前記屈折率が2以上の物質が無機物質であることを特徴とする請求項1〜3に記載の試験紙。
  5. 前記無機物質が二酸化チタンであることを特徴とする請求項4に記載の試験紙。
  6. 前記多孔質層が親水性物質を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の試験紙。
  7. 前記親水性物質が親水性有機高分子であることを特徴とする請求項6に記載の試験紙。
  8. 前記多孔質層の厚みが1〜50μmであり、平均孔径が0.1〜3μmであり、空孔率が10〜60%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の試験紙。
  9. 前記呈色試薬が少なくとも前記多孔質基材に配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の試験紙。
  10. 血液に含まれる成分を測定するための試験紙であって、前記多孔質層によって血球が濾別されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の試験紙。
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