JP2006274300A - 圧粉磁芯用マグネタイト−鉄複合粉末およびこれを用いた圧粉磁芯 - Google Patents

圧粉磁芯用マグネタイト−鉄複合粉末およびこれを用いた圧粉磁芯 Download PDF

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【課題】飽和磁束密度Bsの高い鉄系の金属粉末を用いて渦電流損失の小さい高性能な磁性素子である圧粉磁芯を提供すること、および、これを実現するために好適な金属粉末であるマグネタイト−鉄複合粉末を提供する。
【解決手段】 マグネタイトを含有し、平均一次粒径が0.7〜3.0μm、嵩密度が0.6〜2.1g/cm、クロム含有量が0.01〜0.5mass%であることを特徴とする圧粉磁芯用マグネタイト−鉄複合粉末を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、高周波で用いられるインダクタ素子、トランス等の磁芯材料として用いられる高性能な金属系の複合磁性材料に関し、特に金属磁性粉を成形して得られる圧粉磁芯用の軟磁性材料として用いて好適なマグネタイト−鉄複合粉末、および、これを用いた圧粉磁芯に関するものである。
電子機器の小型化、駆動周波数の高周波化に伴い、これらの機器の回路部品のひとつとして用いられるインダクタンス部品においては、小型化され、かつ、高周波下で使用される場合においても高効率の磁性素子を実現できるような高性能な磁性材料の使用が求められている。
このような状況において、高周波の信号用磁芯には、従来よりNi系フェライトや圧粉磁芯が使用されている。
また、高周波で用いられるDCDCコンバータ用トランスのようなパワー用磁芯には、従来よりMnZn系フェライトやNiZn系フェライトが使用されている。
なお、近年の電子機器における駆動周波数の高周波化に対応するためには、より微細な金属粉末の導入が有利との考えのもとに、本発明者らの一人は、以前に出願した下記特許文献1において、平均一次粒径が0.1〜10μmのマグネタイト−鉄複合粉末を環境浄化用および電波吸収体用として使用する技術について開示を行った。
特開2002−317202号公報
上記高周波の信号用磁芯に使用されているNi系フェライトは100MHz程度までは品質係数Qが高く、良好な磁気特性を示すが、100MHzを超える高周波下では結晶構造に起因する共鳴現象の影響を受けるため、安定な初透磁率μiおよび品質係数Qを得ることが難しい。一方、上記圧粉磁芯は、金属磁性粉が導体であるために高周波下で渦電流の影響を受けやすく、フェライトと比べて品質係数Qが低く、初透磁率μiの周波数特性も劣るという欠点があった。
また、高周波で用いられるDCDCコンバータ用トランスのようなパワー用磁芯に使用されているフェライトは素材の電気抵抗が高いため、高周波域でも渦電流損失が小さく、DCDCコンバータの駆動周波数である100k〜3MHzの領域で低いコアロスを示すが、飽和磁束密度Bsが小さいために大電流励磁下では使用できないという問題があった。このため、最近のCPU駆動電圧低下に伴うCPU駆動用DCDCコンバータの大電流化に対応することが難しく、飽和磁束密度Bsの高い圧粉磁芯に対する要求が高まっている。しかしながら、圧粉磁芯は金属磁性粉が導体であるために渦電流損失が大きく、また、成形時の歪が残留してヒステリシス損失が大きいなどの欠点があり、トランスやチョークコイルとして使用するためにはコアロスを低減する必要があった。
以上のように、圧粉磁芯で高周波信号用および高周波パワー用磁性素子に適した性能を実現するためには、圧粉磁芯の電気抵抗を高めて圧粉磁芯の渦電流損失を低減することが不可欠である。
本発明はこのような事情のもとになされたものであり、本発明は、飽和磁束密度Bsの高い鉄系の金属粉末を用いて渦電流損失の小さい高性能な磁性素子である圧粉磁芯を提供すること、および、これを実現するために好適な金属粉末であるマグネタイト−鉄複合粉末およびこれを用いた圧粉磁芯を提供することを目的とする。
圧粉磁芯の渦電流を低減する手段として、本発明者らは以下の3つの方法に着目した。
(1)粒子径の制御:粒子径を所定の微細な粒度範囲に調整することで、粒子内部の渦電流を低減すると同時に粒子の保磁力を適正な範囲に維持する。
(2)粒子表面の絶縁性改善:粒子表面に絶縁層を形成し、粒子間の渦電流を抑制する。
(3)粒子形状の適正化:粒子の形状に丸みを持たせて粒子の分散性を改善することで、粒子間に絶縁性物質(結合樹脂など)を均一に分布させ、粒子間の渦電流を抑制する。
近年における電子機器の小型、軽量、薄型化のニーズに応えるため、本発明者らはマグネタイト−鉄複合粉末の各種粉体特性と、圧粉磁芯の磁気特性との関係について詳細に検討を行った。
まず、平均一次粒径の異なるマグネタイト−鉄複合粉末と結合樹脂とを混合し、圧縮成形して圧粉磁芯を作製し、初透磁率μiおよび品質係数Qの周波数特性を調べた。その結果、平均粒径が小さい程初透磁率μiの周波数特性が高周波まで伸び、品質係数Q値も増大することが判った。しかしながら、主組成の鉄のみならず、表面層を形成するマグネタイトも導体であるため、圧粉体の電気抵抗は数Ωと低く、高周波で高い磁気特性を得るためにはさらなる高抵抗化が必要であることが判った。さらなる検討の結果、粉体の平均一次粒径および嵩密度が所定の範囲にある時に、圧粉磁芯の磁気特性および電気抵抗が向上することが判った。
さらに、マグネタイト−鉄複合粉末の中に含有する微量成分の影響を詳細に調べた。その結果、微量成分の種類及びその含有量によって粒子の保磁力Hc、粒子径、粒子形状、圧粉体の電磁気特性などが変化することが判った。特に、Crによる特性改善効果が顕著であり、粒子の保磁力低減、粒子形状の球形化、圧粉磁芯の電気抵抗増大、初透磁率μiおよび品質係数Qの周波数特性向上、コアロス低減など、種々の観点で圧粉磁芯の特性を改善できることが判った。
本発明は、上記の知見に基づきなされたもので以下のような特徴を有する。
[1]マグネタイトを含有し、平均一次粒径が0.7〜3.0μm、嵩密度が0.6〜2.1g/cm、クロム含有量が0.01〜0.5mass%であることを特徴とする圧粉磁芯用マグネタイト−鉄複合粉末。
[2]請求項1に記載の圧粉磁芯用マグネタイト−鉄複合粉末の製造方法であって、
マグネタイトを含有し、さらに、製造後のマグネタイト−鉄複合粉末のクロム含有量が0.01〜0.5mass%となる量のクロムを含有する酸化鉄を、還元性雰囲気中で還元した後、さらに、酸化性雰囲気中で徐酸化処理することを特徴とする圧粉磁芯用マグネタイト−鉄複合粉末の製造方法。
[3]上記[1]に記載のマグネタイト−鉄複合粉末と、樹脂および/または無機絶縁材料とを混合し、成形してなることを特徴とする圧粉磁芯。
本発明によれば、飽和磁束密度の高い鉄系の圧粉磁芯で、電気抵抗を高めることができるため、高い周波数で用いても渦電流損失を抑制することができ、高い初透磁率μi及び品質係数Qと、低いコアロスを併せ持つことができる圧粉磁芯用マグネタイト−鉄複合粉末およびこれを用いた圧粉磁芯が提供される。
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例を説明する。
まず、本発明のマグネタイト−鉄複合粉末は、平均一次粒径dが0.7〜3.0μm、より好ましくは0.8〜2.0μmの範囲内で良好な高周波磁気特性を示す。平均一次粒径dが0.7μm未満では単磁区構造をとる粒子の頻度が高くなるため、粒子の保持力が著しく増大して圧粉磁芯の初透磁率μi値が低下する。平均一次粒径dが3.0μmを超える範囲では渦電流や磁壁共鳴などの影響を受けるために高周波域まで良好な磁気特性を維持することができない。なお、前記平均一次粒径は空気透過法を用いて測定した値である。
また、本発明のマグネタイト−鉄複合粉末は、粉体の嵩密度BDが0.6〜2.1g/cmであることが重要である。粉体の嵩密度BDが0.6g/cm未満では、粉体の嵩が大きくなるために運搬や結合樹脂との混合工程で取り扱いが困難であり、実用的でない。粉体の嵩密度BDが2.1g/cmを超えると、マグネタイト−鉄複合粉末を結合樹脂や絶縁材料と混合する際に、金属粉末が重いために先に沈降または落下してしまい、粉体と絶縁物を均一に混合することが難しく、この結果電気抵抗を高めることができないため好ましくない。なお、粉体の嵩密度BDは、0.8〜2.0g/cmであることがより好ましい。
また、本発明のマグネタイト−鉄複合粉末は、クロム含有量が0.01〜0.5mass%であることが重要である。クロム含有量が0.01mass%未満では、電気抵抗が増大せず、初透磁率μi、品質係数Q、コアロスを改善する効果が小さいため好ましくない。また、クロム含有量が0.5mass%を超えると、却って電気抵抗が低下し、品質係数Qとコアロスが低下するため、好ましくない。
ここで、前記本発明のマグネタイト−鉄複合粉末は、製造後のマグネタイト−鉄複合粉末のクロム含有量が0.01〜0.5mass%となる量のクロム(Cr)を含有する酸化鉄を出発原料として用い、これを水素或いは窒素などの還元性雰囲気中で還元し、さらに、酸化性雰囲気中で表面を徐酸化処理して安定化した後に、炉より取り出すことで製造することができる。
前記原料である酸化鉄中にCrを含有することで還元後の鉄粉の磁気特性および圧粉磁芯の磁気特性が改善する機構については明らかではないが、還元処理過程で酸化鉄(ヘマタイト)が鉄(α-Fe)に変態する際にCrが存在すると粒子形状が丸みを帯び、かつ、粒度分布が均一化する傾向があることから、粉体の分散性が改善されること、また、Crが還元処理過程での熱処理中に粒子の表面に濃化し表面絶縁層を形成して粒子の絶縁性を改善することなどによる可能性が考えられる。従って、本発明では、酸化鉄の還元処理過程で原料中にCrが存在することが重要であり、鉄粉に後からCrを添加する方法では本発明で得られるような電気抵抗増大効果を得ることはできない。
以上のような方法で、本発明の圧粉磁芯用マグネタイト−鉄複合粉末を得ることができる。
次に、上述の本発明に係るマグネタイト−鉄複合粉末と、樹脂および/または無機絶縁材料とを混合した後、圧縮成形し、必要に応じて樹脂の熱硬化処理を施すことで、高周波励磁下で優れた電磁気特性を示す圧粉磁芯を得ることができる。
ここで、前記樹脂は、結合用として用いられるが、その種類としては、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。
また、前記無機絶縁材料としては、絶縁性粉末、例えば、SiO、Al等の微粉末を用いることができる。
また、前記圧縮成形は、その方法は特に限定されず、通常用いられる圧縮成形の他、温間圧縮成形、射出成形等の圧縮成形方法を用いることができる。
以下に本発明の具体的実施例を記載する。
[実施例1]
フェライト用酸化鉄(JFEケミカル社製JC−CPW、平均一次粒径0.69μm)に、還元し、さらに、酸化性雰囲気中で表面を徐酸化処理して安定化した後のCr含有量が下表1の含有量(mass%)となるように酸化クロム(Cr)を添加し、純水とスチールボールを用いてボールミルで湿式混合した後、乾燥、整粒してCr含有酸化鉄を作製した。水素雰囲気中600℃の温度で熱処理して、鉄粉を得た。その後、炉を開放する前に5%O−N雰囲気で保持することにより、鉄粉の表層にマグネタイトを生成させてから炉外に取り出し、種々のCr含有量のマグネタイト−鉄複合粉末を得た。
得られた前記粉末の構成相をX線回折で調べた結果、全試料ともα−Fe層が99.7〜100mass%、残部0〜0.3mass%はマグネタイト相であった。平均一次粒径を空気透過法で、粒子の保持力HcをVSM(H=10kOe)で測定した結果を下記表1に示す。
Figure 2006274300
引き続き、マグネタイト−鉄複合粉末に対して5mass%のフェノール樹脂を混合し、成形圧力7t/cm(約700MPa)で圧縮成形して、外径12mmφのリング型試料を作製し、150℃×30分の熱処理を施してフェノール樹脂を硬化させた。得られたリング型試料の両端をワニ口クリップで挟み、印加電圧10Vで電気抵抗を測定した。初透磁率μiと品質係数Qの周波数特性は、LCRメータを用いてN=10巻、印加電流0.2mA、周波数100k〜30MHzの条件下で測定し、コアロスは交流BHアナライザーを用いてN1=85巻、N2=10巻、周波数f=50kHz、磁束密度Bm=100mTの条件下で測定した。
本発明例および比較例の電気抵抗、初透磁率μi、品質係数Qおよびコアロスの評価結果を表1に併せて示す。表1に示すように、本発明に係る範囲のマグネタイト−鉄複合粉末を用いることにより、高抵抗、高初透磁率μi、高品質係数Qおよび低コアロスを同時に満足することができる。
[実施例2]
上記表1のNo.4と同一のCr含有酸化鉄を用いて、還元温度400〜800℃で水素還元し、5%O−N雰囲気で安定化処理することで、下表2に示す種々の嵩密度および平均粒径を持つマグネタイト−鉄複合粉末を作製した。
Figure 2006274300
得られた前記粉末の構成相をX線回折で調べた結果、全試料ともα−Fe層が99.6〜100mass%、残部0〜0.4mass%はマグネタイト相であった。平均一次粒径を空気透過法で、嵩密度を100mLの容器を用いて測定した。平均一次粒径および嵩密度は上記表2に示す通りであった。
引き続き、マグネタイト−鉄複合粉末に対して5mass%のフェノール樹脂を混合し、成形圧力7t/cm(約700MPa)で圧縮成形して、外径12mmφのリング型試料を作製し、150℃×30分の熱処理を施してフェノール樹脂を硬化させた。得られたリング型試料の両端をワニ口クリップで挟み、印加電圧10Vで電気抵抗を測定した。初透磁率μiと品質係数Qの周波数特性は、LCRメータを用いてN=50巻、印加電流0.2mA、周波数100k〜30MHzの条件下で測定し、コアロスは交流BHアナライザーを用いてN1=85巻、N2=10巻、周波数f=50kHz、磁束密度Bm=100mTの条件下で測定した。
本発明例および比較例の電気抵抗、初透磁率μi、品質係数Qおよびコアロスの評価結果を表2に併せて示す。表2に示すように、本発明に係る範囲のマグネタイト−鉄複合粉末を用いることにより、高抵抗、高初透磁率μi、高品質係数Qおよび低コアロスを同時に満足することができる。
以上の実施例で示した通り、本発明に係るマグネタイト−鉄複合粉末を用いることで、飽和磁束密度Bsの高い金属系の圧粉磁芯で、高周波域の磁気特性を改善することができ、本発明の効果が確認できた。

Claims (3)

  1. マグネタイトを含有し、平均一次粒径が0.7〜3.0μm、嵩密度が0.6〜2.1g/cm、クロム含有量が0.01〜0.5mass%であることを特徴とする圧粉磁芯用マグネタイト−鉄複合粉末。
  2. 請求項1に記載の圧粉磁芯用マグネタイト−鉄複合粉末の製造方法であって、
    マグネタイトを含有し、さらに、製造後のマグネタイト−鉄複合粉末のクロム含有量が0.01〜0.5mass%となる量のクロムを含有する酸化鉄を、還元性雰囲気中で還元した後、さらに、酸化性雰囲気中で徐酸化処理することを特徴とする圧粉磁芯用マグネタイト−鉄複合粉末の製造方法。
  3. 請求項1に記載のマグネタイト−鉄複合粉末と、樹脂および/または無機絶縁材料とを混合し、成形してなることを特徴とする圧粉磁芯。
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