以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
本発明の実施形態1を図1〜図3に基づいて説明する。図1は本実施形態の浴室システムのブロック図であり、この浴室システムは、湯槽に入れた湯水の温度や湯量、或いは、浴室内の照明や空調などの浴室内の環境条件を制御する浴室コントローラ10と、浴室コントローラ10からの制御信号を受けて浴室環境を調整する給湯器や空気調整器や照明装置などの環境制御機器を制御する各種のコントローラ20とを備える。
コントローラ20としては、例えばカランや湯槽に湯水を供給する給湯装置(図示せず)の湯温や湯量や給湯時間などを調整する給湯コントローラ21や、浴室内に設置された1個又は複数個の照明器具(図示せず)の点灯/消灯や照度などを個別に制御する照明コントローラ22や、浴室に設置された空気調整器(図示せず)の動作(冷房、暖房、除湿、乾燥、送風)を制御する空調コントローラ23や、浴室の壁などに設けた噴出口から細かい霧状のシャワーを噴出するミストシャワー装置(図示せず)の動作(シャワーの噴出量など)を制御するミストシャワーコントローラ24や、湯槽に設けた複数個の噴出口からジェット噴流を発生させるジェットバス装置の動作(ジェット噴流の噴出量や強弱)を制御するジェットバスコントローラ25などがある。なお、図1では図示を省略しているが、異なる種類の入浴剤がそれぞれ投入されている複数の入浴剤タンク(図示せず)を備え、何れかの入浴剤を選択して入浴剤タンクから所定量を湯槽に投入する入浴剤投入装置(図示せず)の動作を制御するコントローラなどもある。
一方、浴室コントローラ10は個人認識部11と浴室環境調整部12と記憶部13と浴室環境制御部14と音声入力部15とを主要な構成として備える。
個人認識部11は音声認識を利用して人物を識別するものであり、内蔵するRAMやフラッシュメモリからなるメモリ(図示せず)には浴室を使用する人物の音声データが予め登録されている。浴室には人物の発する音声を電気信号に変換するマイクMCが設けられ、マイクMCの出力信号は音声入力部15によって増幅されて、個人認識部11および浴室環境調整部12に出力されるようになっている。そして浴室に入った人物が個人認識のために音声を発すると、人物の発した音声がマイクMCと音声入力部15とを介して個人認識部11に入力され、個人認識部11が入力された音声をもとにメモリに記憶してある個人毎の音声データを照合することによって浴室内の人物を認識し、認識結果を浴室環境調整部12と記憶部13と浴室環境制御部14とに出力する。
記憶部13は例えばRAMやフラッシュメモリなどの記憶装置からなり、個々の人物毎に設定された環境条件の履歴情報を履歴記憶部13aに保存している。なお履歴記憶部13aには、個々の人物毎に予め設定された環境条件の初期設定や、この初期設定をもとに浴室環境調整部12によって調整された調整後の環境条件などが履歴情報として記憶される。
浴室環境調整部12は個々の人物毎に浴室内の環境条件を調整するためのもので、個人認識部11から人物の認識結果が入力されると、記憶部13の履歴記憶部13aからこの人物の環境条件の履歴情報を読み出して、この履歴情報から環境条件を決定し、この環境条件の内容を設定表示部17に出力する。
なお浴室環境調整部12では環境条件を調整する方法として、浴室内に設置された入力ボタン16を用いて環境条件を直接入力する方法と、入浴中の人物が音声で命令した環境条件を音声認識により取得する方法の何れかを用いることができる。ここに入力ボタン16や音声認識部12aなどから、環境条件の初期設定、或いは、この初期設定の環境条件を調整する調整内容の少なくとも何れか一方を入力する入力手段が構成される。
入力ボタン16による入力方法では、入浴中の人物が入力ボタン16を直接操作すると、浴室環境調整部12が入力ボタン16からの入力内容をもとに環境条件を作成し、履歴記憶部13aに環境条件の設定内容を記憶させるとともに、浴室環境制御部14と設定表示部17とに設定内容を出力する。また音声による入力方法では、入浴中の人物が環境条件を音声で命令すると、人物の発した音声がマイクMCと音声入力部15とを介して音声認識部12aに出力され、浴室環境調整部12では、音声認識部12aの認識結果をもとに音声で発せられた命令の内容を取得し、その命令をもとに環境条件を設定して履歴記憶部13aに記憶させるとともに、浴室環境制御部14と設定表示部17とに出力する。
設定表示部17は浴室内の人物が環境条件の設定内容を容易に確認できるように設けられており、例えば浴室の壁に設置された液晶ディスプレイ(図示せず)と浴室内に音声を出力するスピーカ(図示せず)とで構成される。そして、浴室環境調整部12から設定表示部17に環境条件の設定内容が入力されると、液晶ディスプレイの画面上に設定内容を表示させるとともに、音声合成処理により設定内容を報知する音声メッセージを作成してスピーカから出力させており、浴室内の人物に文字情報と音声情報とで設定内容を報知させている。
また浴室環境制御部14では、浴室環境調整部12から環境条件の設定内容が入力されると、この設定内容に基づいて各種のコントローラ21〜25に送出する制御信号を生成し、各コントローラ21〜25が制御対象の機器の動作を制御することで、浴室環境を所望の環境に制御するのである。
以下に本実施形態の浴室システムの動作を図2および図3に基づいて説明する。図2(a)は個人認識に用いる音声データを登録する場合のフロー図であり、先ず入力ボタン16を用いて登録する人物の個人名を入力した後(ステップS1)、マイクMCに音声を入力すると(ステップS2)、マイクMCに入力された音声が音声入力部15を介して個人認識部11に与えられ、個人認識部11が内蔵するメモリ(音声記憶手段)に入力された音声と個人名とを対応付けて記憶させる(ステップS3)。
また図2(b)は入力ボタン16を用いて環境条件を設定する場合のフロー図であり、入力ボタン16を用いて環境条件を登録する人物の個人名や、環境条件の設定内容を入力すると(ステップS4)、環境条件設定部12が入力ボタン16からの入力内容に基づいてこの人物の環境条件を生成して、記憶部13と設定表示部17とに環境条件の設定内容を出力し、記憶部13の履歴記憶部13aに、この人物の個人名と環境条件とを対応付けて記憶させる(ステップS5)。また設定表示部17では環境条件の設定内容が入力されると、その設定内容を液晶ディスプレイに表示させたり、音声メッセージで出力する。表1は個人毎に設定された環境条件の一例を示しており、個人名として「お父さん」「お母さん」「お兄ちゃん」といった名称が入力され、各個人毎に環境条件が登録されている。環境条件の設定項目としては、湯温、湯量、照明の明るさ、空調の動作状態、ミストのON/OFF、ジェットバスのON/OFFおよび強度などの項目を設定することができ、各環境条件には個別の設定番号が割り当てられている。なお、表1には個人毎に1つの環境条件しか示されていないが、入浴した人物がその日の体調や気分に合わせて環境条件を調整すると、調整後の環境条件が履歴記憶部13aに保存されるようになっており、履歴記憶部13aには個々の人物毎に環境条件の履歴情報が保存されている。
次に入浴時の動作を図2(c)に基づいて説明する。浴室内の人物が個人認識のための音声を発すると(ステップS6)、人物の発した音声がマイクMCと音声入力部15とを介して個人認識部11に与えられ(ステップS7)、個人認識部11では、音声入力部15から入力された音声と、内蔵するメモリに登録した音声データとを比較することで人物の認識を行う(ステップS8)。ここで、個人認識部11による認識結果を判定し(ステップS9)、個人認識に成功していれば認識結果が浴室環境調整部12に与えられ、浴室環境調整部12が履歴記憶部13aからこの人物の環境条件の履歴情報を読み出す(ステップS10)。浴室環境調整部12は、読み出した履歴情報から環境条件を決定するとともに、この環境条件をもとに制御信号を生成して各種コントローラ21〜25に出力し、浴室環境を制御する(ステップS11)。ここで、浴室環境調整部12が履歴情報をもとに環境条件を設定する方法としては、例えば環境条件が湯温や湯量の場合にはその平均値を求めて、平均値を湯温や湯量の設定値に決定するとともに、ミストシャワーやジェットバスなどの設定については最も多い設定内容を当日の設定値に決定することで環境条件を決定できる。
一方、個人認識に失敗した場合は、個人認識に失敗したという情報が浴室環境調整部12に出力され、浴室環境調整部12が設定表示部17を用いて個人認識に失敗したことを表示させ、入力ボタン16により再度個人認識を行うか否かを入力させる(ステップS12)。再度個人認識を行う場合はステップS6に戻って上述の処理を繰り返し、個人認識を行わない場合は浴室環境調整部12が記憶部13に予め登録されている環境条件の初期設定(デフォルト設定)を取り込み(ステップS13)、このデフォルト設定をもとに制御信号を作成して各種コントローラ21〜25に出力し、浴室環境を制御する(ステップS11)。
ここで、履歴情報をもとに決定した環境条件に基づいて浴室環境が制御されている場合に、浴室内の人物が環境条件を微調整する際の動作を図3のフローチャートにしたがって説明する。浴室環境の制御中、浴室コントローラ10では環境条件の微調整が可能な状態となっており、この状態では浴室内の人物が発する微調整のための音声を待ち受ける状態となっている(ステップS14)。ここで、浴室環境調整部12は、音声による命令を取得して環境条件を微調整しているが、入力ボタン16を用いて環境条件の変更内容を入力することによって環境条件を微調整するようにしても良い。
浴室内の人物が微調整のための命令を音声で発すると(ステップS15)、その音声がマイクMCと音声入力部15とを介して音声認識部12aに入力され(ステップS16)、音声認識部12aが音声認識を行うことで命令の内容を認識する(ステップS17)。音声認識部12aが認識処理を終えると、浴室環境調整部12では認識処理が成功したか否かを判定し(ステップS18)、命令の内容が認識できた場合には浴室環境調整部12が認識結果をもとに現在の環境条件を微調整して、調整後の環境条件を履歴記憶部13に記憶させるとともに、浴室環境制御部14と設定表示部17とに出力する(ステップS19)。このとき設定表示部17では微調整された環境条件を液晶ディスプレイに表示させたり、スピーカから音声メッセージで出力させており、環境条件を微調整した結果が容易に把握できるようになっている。また、浴室環境制御部14では、浴室環境調整部12から入力された環境条件の設定内容をもとに各種のコントローラ21〜25に送出する制御信号を生成し、各コントローラ21〜25が制御対象の機器を制御することで、浴室環境を所望の環境に制御する(ステップS20)。例えば音声認識部12aにより音声認識を行った結果、人物の発した音声の内容が「もう少し熱くする」という命令であれば、浴室環境調整部12は湯温を高めるように環境条件を微調整して、調整後の環境条件を記憶部13に記憶させるとともに、浴室環境制御部14と設定表示部17とに出力する。浴室環境制御部14では浴室環境調整部12から調整後の環境条件が入力されると、湯温を熱くする制御信号を給湯コントローラ21に送信し、給湯コントローラ21では水栓を制御して、湯槽の湯を自動的に排水するとともに、新しい高温の湯を所定量注水することで、湯槽の温度を所望の温度に制御する。また音声認識の結果、人物の発した音声の内容が「水位を上げる」という命令であれば、浴室環境調整部12は湯槽の湯量を増やすように環境条件を微調整して、調整後の環境条件を記憶部13に記憶させるとともに、浴室環境制御部14と設定表示部17とに出力する。浴室環境制御部14では浴室環境調整部12から調整後の環境条件が入力されると、湯量を増やす制御信号を給湯コントローラ21に送信し、給湯コントローラ21が湯槽に湯水を入れ、水位が所定のレベルに達した時点で注水を停止することにより、湯槽の水位を自動的に制御する。なお、音声入力部15は個人認識部11と音声認識部12aとで共用されており、音声入力部15を個人認識と音声認識の両方に兼用することで、浴室システムの構成を簡単にできるという利点がある。
一方、ステップS18の判定の結果、音声認識に失敗した場合、浴室コントローラ10はステップS14に戻って微調整のための音声を待ち受ける状態で動作する。音声認識部12aが音声認識に失敗した場合には、浴室環境調整部12が設定表示部17を用いて液晶ディスプレイに音声認識の失敗を知らせるメッセージを表示させたり、スピーカから音声認識の失敗を知らせる音声メッセージを出力させても良く、浴室内の人物に対して命令の再入力を促すことができる。
なお、音声認識部12aによる認識精度を高めるために、浴室内の人物に対して応答する応答メッセージを音声合成により生成する音声合成手段と、音声の認識結果をもとに生成した応答メッセージを音声合成手段から出力させる対話制御手段とを音声認識部12aに設け、対話制御手段が生成した音声メッセージを音声合成手段から出力させることで、環境条件を微調整するための命令を対話形式で取得するようにしても良く、音声による命令をより確実に取得することが可能になる。
以上説明したように本実施形態の浴室コントローラ10では、人物の発する音声をもとにその人物を特定した後、浴室環境記憶部に記憶されたこの人物の環境条件の履歴情報を読み出して、履歴情報をもとに環境条件を決定しており、この人物が過去に設定した内容を用いて環境条件を決定することで、環境条件を再設定する手間を省くことができ、例えば過去の同じ季節の浴室環境をもとに環境条件を決定すれば、季節の変化に応じて浴室環境を自動的に制御することが出来る。しかも、浴室環境調整部12では、音声入力や入力ボタン16の操作入力に応じて環境条件の設定内容を微調整しているので、その日の体調や気分に合わせて環境条件を調整することで、自分の好みに合わせた環境で入浴できるという効果もある。さらに、浴室コントローラ10では人物の発する音声をもとにその人物を特定しており、音声認識により特定された人物の履歴情報を履歴記憶部13aから自動的に読み込んで、その履歴情報をもとに環境条件の設定内容を決定しているので、環境条件の設定作業を行うことなく好みの浴室環境で入浴することができる。
また履歴記憶部13に記憶された履歴情報をもとに環境条件を決定し、この環境条件の設定内容に基づいて浴室環境を制御している場合でも、浴室内の人物が発した音声の音声認識を行って命令の内容を取得することで、入力ボタン16で手入力することなく音声の内容に応じて環境条件を微調整することができ、この人物の好みにより近い環境で入浴することが可能になる。
また本実施形態において履歴記憶部13aに登録する環境条件として、入浴開始時からの時間経過に応じて変化する浴室内の環境条件の履歴情報を登録させても良く、入浴時間を計時する計時タイマ(図示せず)を浴室コントローラ10に設け、浴室環境調整部12が、個人認識部11で特定された人物の履歴情報を記憶部13から読み出して、読み出した履歴情報をもとに入浴開始時からの時間経過に応じて変化する環境条件を決定し、浴室環境制御部12が、浴室環境調整部12で調整された環境条件と、計時手段としての計時タイマが計時した入浴開始時からの経過時間とに基づいて、浴室内の環境を制御するようにしても良く、入浴開始時からの時間経過に応じて入浴中に入力手段による環境条件の調整を行うことなく浴室環境を好みの環境に自動的に変化させることができる。例えば入浴開始時からの時間経過に応じて浴槽にためた湯水の温度を変化させる場合に、入浴開始時は熱く感じるのを防ぐために40℃程度のぬるめの温度に設定し、その数分から十数分後の中盤時点では43℃程度の高めの温度に設定して体を温めた後、入浴終了時は外気との温度差を少なくするために41℃程度に下げるような設定を履歴記憶部13aに登録しておけば、この設定に応じて入浴開始時からの時間経過に応じて湯温などの環境条件をユーザ自身が調整することなく、自動的に変化させることができる。
また浴室環境調整部12では、履歴情報をもとに環境条件を決定するに当たり、入浴当日前の所定期間における浴室環境の履歴情報を記憶部13から読み出し、読み出した履歴情報をもとに環境条件の変化傾向を分析した結果をもとに浴室環境を決定しても良く、その人物の趣向の変化や季節の変化に応じて環境条件がある傾向をもって変更された場合には、その変化傾向に合わせて環境条件を自動的に決定することが可能になる。
ここで制御部11が、記憶部13から入浴当日前の所定期間の履歴情報を読み出し、履歴情報をもとに環境条件の変化傾向を分析する方法を湯温を例に説明する。制御部11は記憶部13から入浴当日前の所定期間の湯温設定を読み出し、一定期間当たりの湯温の変化量を計算する。制御部11が湯温の変化量を計算するに当たっては、日々の環境のばらつきによる設定変更の影響を低減するために、例えば過去一週間の湯温の移動平均を算出して、移動平均値の変化量から湯温の変化量を求めるのが好ましい。この平均化処理を数式で表すと、以下の式(1)のようになる。ここで、TDは測定日Dにおける湯温の測定結果、avr(TD)は測定日Dにおける平均湯温、Nは移動平均を求める日数で1週間の移動平均であればN=7である。
制御部11では上記の式(1)を用いて湯温の移動平均を求めた後、ある測定日の平均値とその1週間前の平均値との差分を求めて、この差分を1週間当たりの変化量として算出しており、1週間当たりの変化量から湯温設定の変化傾向を推定し、その変化傾向に合わせて当日の湯温を設定すれば、変化傾向に合わせて環境条件を自動的に決定することができる。なお、制御部11が、上述のようにして求めた湯温の移動平均をもとに当日の湯温を設定しても良く、入浴当日前の所定期間における湯温の設定値をもとに湯温を決定することができる。
(実施形態2)
本発明の実施形態2を図4および図5を参照して説明する。上述の実施形態1では個人認識部11が人物の発する音声をもとに個人認識を行っているのに対して、本実施形態では人物の音声と体重を組み合わせて個人認識を行っている。すなわち本システムでは、図4に示すように、浴室内にいる人物の体重をデジタル値に変換して個人認識部11に出力する体重計18(体重測定手段)を設け、この体重計18の測定値と、記憶部13に予め登録された個々の人物の体重とを比較することによって浴室内にいる人物を特定している。なお、個人認識部11および体重計18以外の構成は実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
体重計18は、例えば浴室に出入りするためのドア付近の洗い場の床に埋め込んであり、この体重計18で計測された体重の測定データは、個人認識時は個人認識部11に出力され、個々の人物の体重を登録する際には記憶部13に出力される。体重計18は、ドア付近の洗い場の床に埋め込まれているので、入浴のために浴室に入った人物は着衣を身に付けていない状態で体重計18の上に乗ることになり、この人物が特に意識することなくその体重を正確に測定できる。なお浴室の外側にある脱衣場において、浴室に出入りするためのドア付近の床に体重計18を埋め込んでも良く、入浴しようとする人物が着衣を付けていない状態で体重計18の上に乗るから、その人物の体重を正確に測定できる。また体重計18を別の場所に設けて、その測定値を個人認識部11に出力するようにし、入浴前に体重計18を用いて体重を量ることを促すようにしても良い。なお、この場合には体重計18で体重を計った人物が全て入浴するとは限らないので、個人認識部11に対して入浴開始を知らせる操作ボタンを体重計18に設け、これから入浴する人物がこの操作ボタンを押してから体重計18に載って体重を計るようにしても良い。
次に本実施形態の動作を図5のフロー図をもとに説明する。図5(a)は個々の人物の体重を登録する動作を示し、体重を登録したい人物が入力ボタン16を操作して、個人名などを入力した後(ステップS21)、体重計18に乗ると(ステップS22)、体重計18により測定された体重の測定値が個人名と対応付けて記憶部13(体重記憶手段)に記憶させる(ステップS23)。表2は記憶部13に記憶された個人名と体重の測定値の一例を示し、個々の人物毎に体重の測定値が記憶されている。
図5(b)は入浴時のフロー図であり、入浴開始時には人物が体重計18の上に乗るので、この人物の体重が測定され、測定データが個人認識部11に出力される(ステップS24)。個人認識部11は、体重計18の測定データと記憶部13に予め登録された体重とを比較することで浴室内の人物の識別を行う(ステップS25)。個人認識部11による認識結果を判定し(ステップS26)、個人認識に成功していれば、認識結果が浴室環境制御部14に与えられる。この時、浴室環境制御部14では、実施形態1と同様に履歴記憶部13aからこの人物の環境条件の履歴情報を読み出し(ステップS27)、読み出した履歴情報をもとに制御信号を生成して各種コントローラ21〜25に出力し、浴室環境を制御する(ステップS28)。
一方、個人認識に成功していない場合は、個人の絞り込みができたか否かを判断し(ステップS29)、ある程度絞り込めている場合は浴室に入った人物が個人認識のための音声を発すると(ステップS30)、その音声がマイクMCと音声入力部15とを介して個人認識部11に与えられ(ステップS31)、個人認識部11では、絞り込まれた人物の中で、入力された音声とメモリ内に登録された音声とを比較することで浴室内の人物の識別を行う(ステップS32)。個人認識部11による認識結果を判定し(ステップS33)、個人認識に成功していれば、認識結果を浴室環境制御部14に出力して、上述のステップS27以降の処理を行わせる。またステップS33において個人認識に失敗してれば、個人認識に失敗したことを示す情報が浴室環境制御部14に与えられる。浴室環境制御部14では、体重でも音声でも認識に失敗した場合、例えば記憶部13からデフォルト設定を取り込んで(ステップS34)、このデフォルト設定をもとに制御信号を作成して各種コントローラ21〜25に出力し、浴室環境を制御する(ステップS28)。
またステップS29の判定の結果、個人を絞り込めなかった場合は浴室に入った人物が個人認識のための音声を発すると(ステップS35)、その音声がマイクMCと音声入力部15とを介して個人認識部11に与えられ(ステップS36)、個人認識部11では、入力された音声とメモリ内に登録された全ての人物の音声とを比較することで浴室内の人物の識別を行う(ステップS37)。このとき個人認識部11による認識結果を判定し(ステップS33’)、個人認識に成功していれば、認識結果を浴室環境制御部14に出力して、上述のステップS27以降の処理を行わせる。またステップS33’において個人認識に失敗してれば、個人認識に失敗したことを示す情報が浴室環境制御部14に与えられ、浴室環境制御部14では、体重でも音声でも認識に失敗した場合、例えば記憶部13からデフォルト設定を取り込んで(ステップS34)、このデフォルト設定をもとに制御信号を作成して各種コントローラ21〜25に出力し、浴室環境を制御する(ステップS28)。
本実施形態では、実施形態1で説明した浴室システムにおいて、個人認識部11が人物の音声と体重を組み合わせて個人を識別しているので、より高い精度で個人を識別することが可能になる。なお本実施形態では体重と音声とを組み合わせて個人を識別しているが、各個人の体重の違いが明確に判別でき、体重だけで個人を識別することが可能であれば、個人認識部11が体重のみで個人を識別するようにしても良い。なお個人認識部11では、識別手段たる個人認識部11が、体重計18で体重を測定した結果と、記憶部13に記憶されている体重とを比較することで個人の識別を行っているので、個人を識別するために浴室内の人物が自分の名前を入力するといった操作が不要になり、個人の識別を自動的に行うことができる。
(実施形態3)
本発明の実施形態3を図6および図7に基づいて説明する。本実施形態では、上述した実施形態2の浴室システムにおいて、個人の行動情報や当日の環境情報などの情報を入力する外部入力部19を設け、履歴記憶部13aに記憶されている環境条件の履歴情報と、外部入力部19を用いて入力された情報とをもとに、環境条件を決定している。なお、外部入力部19以外の構成は実施形態2と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
上述の実施形態1で説明したように、浴室環境調整部12では、入力ボタン16や音声で調整された環境条件を履歴記憶部13aに出力するとともに、浴室環境制御部14と設定表示部17とに出力しており、浴室環境制御部14では、入力された環境条件をもとに制御信号を生成して、各種のコントローラ21〜25に出力する。浴室環境制御部14は、各種コントローラ21〜25に出力する制御信号を記憶部13に出力しており、記憶部13の履歴記憶部13aには、各種コントローラ21〜25に出力する制御信号の履歴情報が、入浴日や入浴時刻や入浴時間などの情報や環境条件の設定値に対応付けて保存されている。また記憶部13には、外部入力部19から入浴中の人物の当日の行動情報や前日からの睡眠情報などの情報が入力されており、これらの情報も各種コントローラ21〜25に出力する制御信号や環境条件の設定値に対応付けて保存されている。
次に本システムの動作を図7に基づいて説明する。図7(a)は個人毎に環境条件の履歴情報を保存する場合のフロー図であり、浴室環境制御部14が、浴室環境調整部12から入力された環境条件の設定に基づいて各種コントローラ21〜25を制御する制御信号を生成して、各コントローラ21〜25に出力する場合、浴室環境の制御結果を記憶部13にも送信する(ステップS38)。また浴室コントローラ10は、入浴中の人物についてのその他の情報を外部入力部19から取得すると、取得した情報を記憶部13に送信する(ステップS39)。このように記憶部13には環境条件の設定値に加えて浴室環境の制御結果と個人情報とが入力されており、環境条件の設定値と制御結果と個人情報とを対応付けて個々の人物毎に履歴記憶部13aに記憶させている(ステップS40)。なお外部入力部19から取得する情報としては、浴室内にいる人物の当日の行動情報、睡眠時間、食事内容、天候、外気温、室内温などの情報がある。また睡眠時間として、入浴後によく眠れたか否かを判断した結果を入力しても良く、その場合は履歴記憶部13aに記憶されている前日のデータに追加して登録すれば良い。また履歴記憶部13aに登録する情報として、入浴中又は入浴後に入力ボタン16或いは音声でその日に入浴の気持ちよさを入力した結果を登録しても良い。尚、表3は履歴記憶部13aに記憶されている個人の情報の一例を示しており、個々の人物毎に個人名と環境条件の設定値(湯温、湯量、照明など)とその他の情報(当日の天候や最高気温など)が登録されている。
また図7(b)は履歴情報を利用して浴室環境を決定する場合のフロー図を示し、実施形態1又は2で説明した方法で個人の識別を行い(ステップS41)、個人が特定された場合、浴室環境調整部12では個人の認識結果をもとに履歴記憶部13aからこの人物の環境条件の履歴情報を読み出し、履歴情報の中から最適な環境条件を選択する(ステップS42)。ここで、環境条件を選択する方法の一例としては、過去数日の入浴日の湯温とその入浴日の入浴後の睡眠状況とをもとに、その人物に適した湯温を自動的に選択するといった方法がある。表4はある月の1日から10日までの間でその人物が入浴した時の湯温と、当日の入浴後の睡眠状況とを対応付けて記憶したデータを示しており、浴室環境調整部12ではこのデータをもとに過去10日間の湯温の平均値を算出して、本日の湯温をその平均値(40℃)に設定したり、睡眠状況が悪い日(睡眠レベルが1と2の日)を除いた8日分の湯温の平均値を算出して、本日の湯温をその平均値(39℃)に設定することができる。
また浴室コントローラ10では、外部入力部19から当日の行動などの人物についての情報を取得するとともに(ステップS43)、天候、気温といった環境情報を取得する(ステップS44)。ここで、外部入力部19により外出の有無を示す情報を取得する場合には、例えば外部入力部19として玄関などの家の出入口に人感センサやTVカメラなどのセンサを取り付けて設置し、これらのセンサで人物の外出の有無を検出すれば良い。また、個々の人物に歩数計を所持させ、この歩数計の計数値を行動情報として取得しても良いし、人物にGPS装置を所持させ、このGPS装置の出力をもとに当日の行動情報を取得するようにしても良い。また外部入力部19で取得される環境情報としては、当日の最高気温や最低気温、或いは入浴開始直前の気温(外気温や室内温度)などがあり、天候や湿度などの情報を取得しても良い。
そして、浴室環境調整部12では、ステップS42で選択した環境条件を、ステップS43,S44で取得した情報をもとに微調整し(ステップS45)、微調整された環境条件の設定内容をもとに各種のコントローラ21〜25に送出する制御信号を生成し、各コントローラ21〜25が制御対象の機器を制御することで、浴室環境を所望の環境に制御する(ステップS46)。例えば入浴中の人物の当日の行動が多い場合、浴室環境調整部12は、ステップS42で選択された環境条件をもとに、さらに疲れが取れるようジェットバスの強度を強めにしたり、湯槽に長時間つかることができるよう湯温をぬるめにするなどの微調整を行っている。また浴室環境調整部12により当日の環境情報を考慮して浴室の環境条件を微調整する方法としては、履歴記憶部13aに記憶された過去の浴室環境の設定値(環境条件)と湯温や外気温といった環境情報との間の相関関係を抽出し、その相関関係と本日の環境情報とに基づいて浴室の環境条件を微調整するといった方法がある。例えば履歴記憶部13aに記憶された過去の履歴情報より、気温が低いと湯温を高めに設定する傾向がある人物の場合は当日の気温に応じて湯温を微調整するようにしても良い。また、異なる種類の入浴剤がそれぞれ投入されている複数の入浴剤タンクと、浴室環境調整部12からの制御信号に応じて、何れかの入浴剤を選択して入浴剤タンクから所定量を湯槽に投入する投入装置とを備えている場合に、浴室環境調整部12が、湿度の高い日にはさらっとする入浴剤を選択し、乾燥している日には潤い成分を多く含む入浴剤を選択するようにしても良い。
上述のように本実施形態では、履歴記憶部13aに環境条件の履歴情報を個人毎に記憶しておき、履歴情報を利用して浴室内にいる人物に適した環境条件を設定しているから、その人物に適した浴室環境で入浴することが可能になる。また外部入力部19により当日の行動情報や環境情報を入力することができ、これらの行動情報および環境情報を用いて、履歴情報をもとに決定した浴室環境の設定値(環境条件)を微調整することで、個人の好みにより近い浴室環境で入浴することが可能になる。また、入浴中の人物が入力ボタン16を用いて手入力したり、音声で入力することなく環境条件を微調整することができるので、環境条件の設定を簡単に行うことができる。
(実施形態4)
本発明の実施形態4を図8および図9に基づいて説明する。なお、浴室システムの基本的な構成は実施形態1〜3と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
本実施形態では、上述した実施形態1〜3の浴室システムにおいて、図8に示すように湯槽30に入れた湯水31の水位を測定する水位センサ32を設けてある。水位センサ32は湯槽30に入れた湯水31の水位を測定して、測定結果を浴室環境調整部12に出力している。ある人物が湯槽に浸かる前と後とでは水位が変化するので、浴室環境調整部12では、水位センサ32により測定された水位の上昇分から湯水に浸かった人体の体積を測定することができる。ここで、湯槽30に浸かった人物の浸かり具合で水位が変動するため、浴室環境調整部12が音声合成により音声メッセージを生成して、設定表示部17の備えるスピーカから「肩まで浸かってください」というような音声メッセージを出力させて、音声対話により浸かり具合(全身浴、半身浴、8分目など)と水位の関係を把握しても良い。また水位上昇予測手段たる浴室環境調整部12が、水位センサ32からの測定結果をもとに、この人物が湯槽30に浸かった時の水位上昇の最大値を予測して、個々の人物毎に水位上昇の予測値を記憶部13に記憶させている。
次に本システムの動作を図9に基づいて説明する。図9(a)は個々の人物が湯槽30に浸かった時の水位上昇を測定する場合のフロー図であり、実施形態1〜3で説明した方法で個人の識別に成功すると(ステップS47)、浴室環境調整部12に個人認識部11から認識結果が与えられる。また浴室環境調整部12には水位センサ32から水位の測定結果が入力されており、入浴前の測定結果をもとに湯量および水位を把握する。浴室環境調整部12は、水位センサ32からの入力を常時監視しており、給湯コントローラ21が湯量調整を行っていない状態で水位センサ32の測定値が上昇すると入浴中の人物が湯槽30に浸かったと判断して、水位センサ32の測定値の増加分を水位上昇の予測値として、個人毎に記憶部13に記憶させる。なお湯槽30から湯水が溢れた場合、すなわち水位センサ32の測定値が最大値で飽和した場合は、人物が湯槽30の外に出たときの水位と湯槽30の最高水位との差を水位上昇の予測値として、個人毎に記憶部13に記憶させれば良い。
また図9(b)は入浴時のフロー図を示しており、実施形態1〜3で説明した方法で個人の識別に成功すると(ステップS52)、浴室環境調整部12に個人認識部11から認識結果が与えられる。浴室環境調整部12では、個人の認識結果が入力されると、記憶部13からこの人物について設定された環境条件と水位上昇の予測値とを読み込むとともに、その日の好みの入浴方法を取得する(ステップS53)。ここで入浴方法を取得する方法としては、予め設定された複数の方法から所望の方法を入力ボタン16で選択すれば良い。なお入浴方法としては、満水などの水量を表す言葉で選択しても良いし、全身浴や半身浴や八分目といった言葉で選択しても良い。ここで全身浴の場合の水位を予め決めておき、半身浴の場合は全身浴の場合の水位の何パーセント(例えば50%)と予め設定してある。
浴室環境調整部12では、個人の認識結果をもとに記憶部13に記憶された環境条件の履歴から環境条件を選択するとともに、水位上昇の予測値を取得しており、さらに入力ボタン16によりその日の入浴方法を取得する。また浴室環境調整部12には水位センサ32から測定結果が入力されており、現在の水位と、好みの入浴方法で湯槽30に浸かった時の水位上昇分とを考慮して、湯槽30に浸かった時に湯槽30から水が溢れてしまわないように湯槽30に入れた湯水31の量を設定し、その設定値を浴室環境制御部14に出力する。このとき、浴室環境制御部14が、浴室環境調整部12から入力された湯量の設定値をもとに制御信号を生成し、この制御信号に基づいて給湯コントローラ21が湯量を制御する(ステップS54)。
このように本実施形態では浴室に入った個々の人物毎に湯槽30に入れた湯水31の湯量を調整できるので、湯槽30に浸かった時に湯水31が溢れないように湯量を設定することで、湯槽30から湯水31が溢れてしまう無駄を無くすことができる。またその日の入浴方法を設定する際に、個人毎に湯量を例えば160リットルのような表現(体積値)で設定するのではなく、「全身浴」「半身浴」「8分目」といった表現で設定しているので、入浴方法の設定が判りやすく、好みの湯量で入浴することができる。
ところで、ある人物が湯槽に浸かる前後で水位が変化し、その変化分は個々の人物毎に略一定の値となるので、水位センサ32により測定された水位の上昇分から湯水に浸かった人物を特定することも可能である。すなわち、水位記憶手段としての記憶部13に複数の人物が湯槽に浸かった場合の水位の上昇値を予め登録しておき、識別手段たる個人認識部11が、湯槽に人物が浸かった時の水位の上昇値を水位センサ32で測定した値と、記憶部13に登録された水位の上昇値とを比較することで、個人を識別するようにしても良く、個人を識別するために浴室内の人物が自分の名前を入力するといった操作が不要になり、個人の識別を自動的に行えるという利点がある。
なお、本発明の精神と範囲に反することなしに、広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は、特定の実施形態に制約されるものではない。