JP2006265317A - フェノール樹脂成形材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、熱安定性を損ねることなく、硬化性に優れたフェノール樹脂成形材料を提供することである。
【解決手段】 フェノール樹脂、及び12ヒドロキシステアリン酸化合物を含有することを特徴とし、前記12ヒドロキシステアリン酸化合物は、12ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12ヒドロキシステアリン酸マグネシウムの中から選ばれた1種以上を含むものであることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、フェノール樹脂成形材料に関するものである。
フェノール樹脂成形材料から得られる成形品は、耐熱性、寸法安定性、成形加工性等に優れる為、身近な厨房、漆器製品から耐熱性や強度面で信頼性を要求される自動車、電気、電子等の基幹産業分野において長期にわたり使用されてきた実績がある。特に最近では、金属部品をガラス繊維で強化した高強度のフェノール樹脂成形品に置換することで、大幅なコストダウン及び軽量化が可能となることから、積極的な代替の検討が行われている。
これらの成形材料を成形する際の成形時間は、生産コストに大きな影響を及ぼす。すなわち、硬化時間を現状と比較し短縮することができれば、生産ラインのハイサイクル化を達成する事ができ、生産性を高めることが可能であるということである。従来、ノボラック型フェノール樹脂を用いたフェノール樹脂成形材料の硬化時間を短縮する為に、様々な改良が行われている。
例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ヘキサメチレンテトラミンとフタル酸、安息香酸、及びサリチル酸等の各種カルボン酸、パラトルエンスルホン酸、及びベンゼンスルホン酸等の各種スルホン酸等の酸性物質を樹脂組成物に混合する方法等が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では硬化時間を短縮することはできるが、フェノール樹脂成形材料の熱安定性が低下する問題が生じていた。また、前述の酸性物質と塩基性物質の複合塩を樹脂組成物に混合する方法、通常のランダムノボラック樹脂の代わりにフェノール性水酸基のオルト‐オルト位にメチレン鎖を有するハイオルソ・ノボラック樹脂を使用する方法等が挙げられる(例えば、特許文献2参照)。しかし、これらの方法でも、硬化時間を短縮することはできるが、熱安定性が低下する問題が生じていた。
特開平11−343384号公報 特開平09−025390号公報
本発明の目的は、熱安定性を損ねることなく、硬化性に優れたフェノール樹脂成形材料を提供することである。
このような目的は、下記(1)〜(4)に記載の本発明により達成される。
(1)フェノール樹脂、及び12ヒドロキシステアリン酸化合物を含有することを特徴とする、フェノール樹脂成形材料。
(2)前記12ヒドロキシステアリン酸化合物の含有量は、成形材料全体の0.1〜3重量%である(1)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(3)前記12ヒドロキシステアリン酸化合物は、12ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12ヒドロキシステアリン酸マグネシウムの中から選ばれた1種以上を含むものである(1)又は(2)に記載のフェノール樹脂成形材料。
(4)更に、ガラス繊維と、クレー、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、及び、タルクの中から選ばれた1種以上とを含むものである(1)〜(3)のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
本発明のフェノール樹脂成形材料は、フェノール樹脂、及び12ヒドロキシステアリン酸化合物を含有することを特徴とするものであり、熱安定性を損ねることなく、硬化性に優れたフェノール樹脂成形材料を得ることができるものである。
また、12ヒドロキシステアリン酸化合物の含有量を成形材料全体の0.1〜3重量%にすることで、硬化性を更に優れたものにすることができる。
以下、本発明のフェノール樹脂成形材料(以下、単に「成形材料」ということがある)について詳細に説明する。
本発明の成形材料は、フェノール樹脂、及び12ヒドロキシステアリン酸化合物を含有することを特徴とするものである。
本発明の成形材料に用いられるフェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂またはレゾール型フェノール樹脂が挙げられ、これらを単独、あるいは両者を併用することができる。ノボラック型フェノール樹脂を使用する場合、通常、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを使用する。ヘキサメチレンテトラミンを用いる場合、その含有量は特に限定されないが、ノボラック型フェノール樹脂100重量部に対して、10〜30重量部配合することが好ましく、特に15〜25重量部配合することが好ましい。ヘキサメチレンテトラミンの含有量が上記上限値を越えると、成形品の機械的強度が低下する場合があり、上記下限値未満では、成形収縮を充分低減することができず、成形品の機械的強度が低下する場合がある。
本発明の成形材料には、12ヒドロキシステアリン酸化合物を使用する。これにより、成形材料に熱安定性、及び優れた硬化性を付与することができる。
上記12ヒドロキシステアリン酸化合物としては、12ヒドロキシステアリン酸の金属塩を好適に用いることができる。
このような12ヒドロキシステアリン酸の金属塩としては特に限定されないが、例えば、12ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12ヒドロキシステアリン酸マグネシウムが挙げられ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもかまわない。この中でも特に12ヒドロキシステアリン酸亜鉛が、硬化性及び熱安定性を向上させる効果が高いことから好ましい。
上記特性を発現するメカニズムは明確ではないが、12ヒドロキシステアリン酸化合物は、一般にポリマーへの充填剤の分散性を良くすることから、フェノール樹脂への硬化剤、硬化助剤の分散が高分散となり、硬化反応の効率が高まり、優れた硬化性を付与すると共に、優れた潤滑作用により外部応力によるせん断発熱を抑える為、高い熱安定性を発現していると推測される。
12ヒドロキシステアリン酸化合物の含有量は特に限定されないが、成形材料全体に対して0.1〜3重量%であることが好ましく、特に好ましくは1〜2重量%である。上記下限値未満では優れた硬化性が充分に発現しない場合があり、上記上限値を超えると成形材料製造時の作業性が低下する場合がある。
本発明の成形材料には、ガラス繊維を使用することができる。これにより、得られる成形品の機械的強度が向上する。ガラス繊維の繊維径は、特に限定されないが、10〜15μmが好ましい。これにより、成形材料化段階での作業性を向上させることができる。また、ガラス繊維の繊維長は、特に限定されないが、1〜3mmのチョップドストランドタイプのものを使用することが好ましい。これにより、成形材料化時の作業性、成形性及び成形物の強度を向上させることができる。
上記ガラス繊維の含有量は、特に限定されないが、成形材料全体に対して30〜60重量%が好ましく、特に45〜55重量%が好ましい。ガラス繊維の含有量が上記下限値よりも少ないと、成形品の機械的強度が不十分となる場合があり、上記上限値よりも多いと、成形材料製造時の作業性が低下する場合がある。
本発明の成形材料は、上記ガラス繊維以外に無機充填材を含有することができる。この無機充填材としては、特に限定されないが、粉末状のものであることが好ましい。これにより、得られる成形物の機械的強度を向上させるとともに、寸法安定性を向上させることができる。
上記粉末状の無機充填材としては、特に限定されないが、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、アルミナ、シリカ、ロックウール、未焼成クレー、焼成クレー、硫酸バリウム等を挙げることができる。これらの中でもクレー、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、タルクが好ましく、これらの中から1種以上を選択し、使用することができる。これにより成形材料製造時の作業性を向上させることができる。
上記粉末状の無機充填材の含有量は、特に限定されないが、成形材料全体の5〜30重量%が好ましく、特に10〜20重量%が好ましい。かかる含有量が上記下限値未満であると、成形材料製造時の作業性が低下する場合があり、上記上限値を超えると、成形品の機械的強度が低下する場合がある。
本発明の成形材料には、本発明の目的を損なわない範囲で硬化助剤、顔料、エラストマ等の添加剤を添加することができる。
エラストマとしては例えば、アクリルニトリルブタジエンゴム、ポリビニルブチラールなどを用いることができる。
以上に説明したように、本発明の成形材料は、12ヒドロキシステアリン酸化合物の有する潤滑性により熱安定性を損ねることなく、優れた分散性により、高い硬化性を持つフェノール樹脂成形材料を得ることができるものである。
本発明の成形材料の製造方法は特に限定されないが、例えば上述の各原料を均一に混合後、ロール、コニーダ、二軸押出し機等の混錬機単独またはロールと他の混合機との組み合わせで加熱混練した後、粉砕して得られる。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
成形材料全体に対して、ノボラック型フェノール樹脂32重量%、ヘキサメチレンテトラミン5重量%、ガラス繊維50重量%、無機充填材として未焼成クレー10重量%、12ヒドロキシステアリン酸亜鉛1重量%、硬化助剤1重量%、顔料1重量%を配合し、約90℃の加熱ロールで約10分間混練し、冷却後粉砕して成形材料を得た。
(実施例2)
12ヒドロキシステアリン酸亜鉛の代わりに、12ヒドロキシステアリン酸カルシウムとした以外は、実施例1と同様にして成形材料を得た。
(実施例3)
12ヒドロキシステアリン酸亜鉛の代わりに12ヒドロキシステアリン酸マグネシウムステアリン酸亜鉛とした以外は、実施例1と同様にして成形材料を得た。
(比較例1)
成形材料全体に対して、ノボラック型フェノール樹脂32重量%、ヘキサメチレンテトラミン5重量%、ガラス繊維50重量%、無機充填材として未焼成クレー10重量%、ステアリン酸マグネシウム1重量%、硬化助剤1重量%、顔料1重量%を配合し、約90℃の加熱ロールで約10分間混練し、冷却後粉砕して成形材料を得た。
(比較例2)
ステアリン酸マグネシウムの代わりに、ステアリン酸亜鉛とした以外は、実施例1と同様にして成形材料を得た。
(比較例3)
ステアリン酸マグネシウムの代わりに、モンタン酸カルシウムとした以外は、比較例1と同様にして成形材料を得た。
(比較例4)
ステアリン酸マグネシウムの代わりに、モンタン酸亜鉛とした以外は、比較例1と同様にして成形材料を得た。
(比較例5)
ステアリン酸マグネシウムの代わりに、ステアリン酸カルシウムとした以外は、比較例1と同様にして成形材料を得た。
実施例及び比較例の原材料配合を、表1に示す。数字は全て重量%を示す。
Figure 2006265317
(使用した原料)
(1)ノボラック型フェノール樹脂:住友ベークライト社製 A−1082(数平均分子量800)
(2)ヘキサメチレンテトラミン:住友精化社製ウロトロピン
(3)ガラス繊維:日本板硝子社製 RES03−BM38(平均繊維径11μm、平均繊維長3mmのチョップドストランド)
(4)未焼成クレー:ECC社製 ECKALITEI
(5)12ヒドロキシステアリン酸亜鉛:日東化成工業社製 ZS−6
(6)12ヒドロキシステアリン酸カルシウム:日東化成工業社製 CS−6
(7)12ヒドロキシステアリン酸マグネシウム:日東化成工業社製 MS−6
(8)ステアリン酸マグネシウム:日東化成工業社製 Mg−St
(9)ステアリン酸亜鉛:日東化成工業社製 Zn−St
(10)モンタン酸カルシウム:日東化成工業社製 CS−8CP
(11)モンタン酸亜鉛:日東化成工業社製 ZS−8
(12)ステアリン酸カルシウム:日東化成工業社製 Ca−St
(13)硬化助剤:協和化学社製 キョウワマグ30
(14)顔料:三菱化学社製 カーボンブラック#750B
実施例および比較例により得られた成形材料を用いて、次の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
Figure 2006265317
(測定方法)
(1)シャルピー衝撃強さ、曲げ強さ、曲げ弾性率:試験片は、トランスファ成形(175℃,硬化時間3分間)により試験片を作製し、JIS K 6911に準拠して測定した。
(2)硬化時間:150℃におけるキュラストメーターを測定することにより算出した。
(3)安定時間:150℃におけるラボプラストミルを測定することにより算出した。
表2の結果から、12ヒドロキシステアリン酸化合物を含有する本発明の成形材料から得られた実施例1〜3は、それを含まない比較1〜5に比較し、機械的強度は変わらず、硬化時間が短縮された。特に、12ヒドロキシステアリン酸亜鉛を含む実施例1は、硬化時間を短縮しつつ、熱安定性にも優れた成形材料であることが示された。
本発明によれば、熱安定性を向上させつつ硬化時間を短縮したフェノール樹脂成形材料を得ることができる。

Claims (4)

  1. フェノール樹脂及び12ヒドロキシステアリン酸化合物を含有することを特徴とする、フェノール樹脂成形材料。
  2. 前記12ヒドロキシステアリン酸化合物の含有量は、成形材料全体に対し、0.1〜3重量%である請求項1に記載のフェノール樹脂成形材料。
  3. 前記12ヒドロキシステアリン酸化合物は、12ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12ヒドロキシステアリン酸マグネシウムの中から選ばれた1種以上を含むものである請求項1又は2に記載のフェノール樹脂成形材料。
  4. 更に、ガラス繊維と、クレー、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、及び、タルクの中から選ばれた1種以上とを含むものである請求項1〜3のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN102051009A (zh) * 2009-10-29 2011-05-11 株式会社吴羽 聚1,1-二氯乙烯树脂组合物、其制造方法、和由该树脂组合物形成的成型品

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