JP2006263721A - フッ素樹脂系高分子分離膜、その製造方法、およびそれを用いた膜モジュール、分離装置 - Google Patents

フッ素樹脂系高分子分離膜、その製造方法、およびそれを用いた膜モジュール、分離装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 ウイルス除去性に優れ、さらに透水性能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度、耐汚れ性の諸性能が優れたウイルス除去用途に好適なフッ素樹脂系高分子分離膜ならびに該フッ素樹脂系高分子分離膜を有する膜モジュール、水の分離装置を提供する。
【解決手段】 三次元網目構造と球状構造の両方を有すフッ素樹脂系高分子分離膜において、前記三次元網目構造が実質的に5μm以上のマクロボイドを含有せず、かつ、前記フッ素樹脂系高分子分離膜の分子量7.5万のデキストラン除去率が80%以上であるフッ素樹脂系高分子分離膜を得る。三次元網目構造の層は、フッ素樹脂系高分子及びセルロースエステルを含有する高分子溶液から、凝固により形成させる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、飲料水製造、浄水処理、排水処理などの水処理分野、医薬品製造分野、食品工業分野、血液浄化用膜分野等に好適なフッ素樹脂系高分子分離膜に関する。とりわけ、本発明は、液体中のウイルス等の微少物の除去に好適なフッ素樹脂系高分子分離膜に関する。
近年、分離膜は、飲料水製造、浄水処理、排水処理などの水処理分野、食品工業分野等様々な方面で利用されている。飲料水製造、浄水処理、排水処理などの水処理分野においては、分離膜が従来の砂ろ過、凝集沈殿過程の代替として水中の不純物を除去するために用いられるようになってきている。また、食品工業分野においては、発酵に用いた酵母の分離除去や液体の濃縮を目的として、分離膜が用いられている。各分野で用いられる分離膜には、経済的な観点から、優れた透水性能が求められる。優れた透水性能を有していれば、膜面積を減らすことが可能となり、装置がコンパクトになるため設備費を節約でき、膜交換費や設置面積の点からも有利になるからである。
さらに、浄水処理では、膜のバイオファウリング防止の目的で次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤を膜モジュール部分に添加したり、酸、アルカリ、塩素、界面活性剤などで膜そのものを洗浄するため、分離膜には耐薬品性も求められる。さらに、分離膜には、使用中に破断が起こらないように高い物理的強度が要求されている。
このように、分離膜には、優れた分離性能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度および透過性能が求められる。そこで、化学的強度(耐薬品性)と物理的強度を併せ有するポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いた分離膜が使用されるようになってきた。
また、飲料水製造、医薬品製造、食品工業分野では、工程内にウイルス等の病原体が混入すると製造ラインが汚染されるだけでなく消費者の集団感染を引き起こす危険があり、種々の殺菌技術が用いられている。殺菌方法としては、加熱処理や塩素等の化学薬品処理が挙げられるが、熱耐性や薬品耐性を持つウイルスには効果が薄い。そこで、ウイルスを物理的に除去する方法として、分離膜を用いた膜ろ過が注目を集めるようになってきた。膜ろ過では、ウイルスの熱的性質や化学的性質に依存せず、ウイルスの大きさで分離を行うことができる。
分離膜は、上述したように、透水性能に対する要求が強く、透水性能を向上させるための改良が繰り返し行われている。例えば、特許文献1には、優れた分離性能と優れた透水性能を両立するために、膜内部にマクロボイドを有し、膜表面に分離のための薄い緻密層を設けたポリフッ化ビニリデン系樹脂の非対称膜が開示されている。この非対称膜は、薄い緻密層とマクロボイドを設けることにより、ろ過抵抗を小さくし、優れた透水性能を発現させている。この非対称膜は、透過側に少量の分離対象物質が裏抜けしても良い場合、例えば、濁度除去や単純濃縮には有効である。しかしながら、ウイルス除去の場合には、薄い緻密層にピンホールや亀裂のような欠点が存在すると、ウイルスがこの欠点からマクロボイドを通って裏抜けするという問題点があった。
従って、ピンホールや亀裂が生じてもウイルスが裏抜けしないためには、分離膜がマクロボイドを含まない緻密層を有しているか、あるいは、マクロボイドを有していても緻密層の膜厚に対して十分小さい必要がある。特許文献2や特許文献3には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む溶液中に非水溶性アルコールや親水性無機微粉末を添加して製膜し次いでそれらを抽出して分離膜を得る方法が開示されている。これらの方法によって、マクロボイドを含まない緻密層を有する分離膜を得ることができる。しかし、抽出には特別な操作が必要であるし、添加物が膜中に異物として残存する恐れがあった。また、分離膜の透水性能を高めるために膜厚を薄くした場合、上述した用途に好適な程度の物理的強度を発現させることが困難であった。
また、特許文献4には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の溶媒を20%以上含有する凝固浴を用いることにより、相分離速度を遅延させて、マクロボイドを含まない緻密層を有する分離膜を得ている。しかし、この方法では、マクロボイド形成に費やされるはずであった空隙が分離膜全体に分散し、分離膜全体の細孔径が平均化されるために表面細孔径が大きくなり、ウイルス除去用途には使用できなかった。
さらに、特許文献5には、開孔率の大きい粗大構造層と開孔率の小さい緻密構造層を有するウイルス除去用の分離膜が開示されている。しかし、膜厚が80μm以下といずれも薄く、実用的な透水性能を発現させるために物理的強度を犠牲にしており、繰り返し使用することはできなかった。
以上のように、従来の方法では、ウイルス除去が可能な程度に厚く、かつ、マクロボイドを含まない緻密層を形成させた場合には、実用的な物理的強度となるような膜厚にすると透水性能が著しく低下し、逆に、実用的な透水性能とすると物理的強度が著しく低下するという問題点を抱えていた。
非特許文献1には、直径23nmの球形構造を有する大腸菌ファージのQβが、CP10−1010によって99.99999%以上除去されることが開示されている。しかしながら、CP10−1010は、ポリアクリロニトリル製膜であるために、化学的強度と物理的強度が低く、薬液洗浄を行うような運転を実施した場合、短期間で劣化してしまうという問題点があった。
特公平1−02203号公報 特開昭58−91808号公報 特開昭58−93734号公報 特開昭58−91732号公報 国際公開第03/026779号パンフレット 第29回日本水環境学会年会予稿集、p267(1995)
本発明は、従来の技術の上述した問題点に鑑み、実質的に5μm以上のマクロボイドを有さず、ウイルス除去性に優れ、さらに透水性能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度、耐汚れ性の諸性能が優れたウイルス除去用途に好適なフッ素樹脂系高分子分離膜を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、下記(1)〜(9)の構成によって達成される。
(1)三次元網目構造と球状構造の両方を有するフッ素樹脂系高分子分離膜において、前記三次元網目構造が実質的に5μm以上のマクロボイドを含有せず、かつ、前記フッ素樹脂系高分子分離膜の分子量7.5万のデキストラン除去率が80%以上であることを特徴とするフッ素樹脂系高分子分離膜。
(2)前記三次元網目構造がセルロースエステルを含有してなることを特徴とする(1)記載のフッ素樹脂系高分子分離膜。
(3)セルロースエステルが酢酸セルロースであることを特徴とする(2)に記載のフッ素樹脂系高分子分離膜。
(4)球状構造の平均直径が0.1μm以上5μm以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のフッ素樹脂系高分子分離膜。
(5)最表層に三次元網目構造を有してなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のフッ素樹脂系高分子分離膜。
(6)50kPa、25℃における純水透過性能が0.10m/m・hr以上10m/m・hr以下、強力5N以上、かつ、破断伸度50%以上の中空糸膜であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のフッ素樹脂系高分子分離膜。
(7)三次元網目構造の層と球状構造の層とを有するフッ素樹脂系高分子分離膜を製造する際、フッ素樹脂系高分子及びセルロースエステルを含有する高分子溶液であって、該溶液中の総高分子濃度が14〜30重量%、フッ素樹脂系高分子に対するセルロースエステルの混和比が10〜50重量%である高分子溶液を、フッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有する凝固浴中で凝固させて三次元網目構造の層を形成させることを特徴とするフッ素樹脂系高分子分離膜の製造方法。
(8)三次元網目構造の層と球状構造の層とを有するフッ素樹脂系高分子分離膜を製造する際、フッ素樹脂系高分子及びセルロースエステルを含有する高分子溶液であって、該溶液中の総高分子濃度が14〜30重量%、フッ素樹脂系高分子に対するセルロースエステルの混和比が50〜75重量%である高分子溶液を、凝固浴中で凝固させて三次元網目構造の層を形成させることを特徴とするフッ素樹脂系高分子分離膜の製造方法。
(9)(1)〜(6)のいずれかに記載のフッ素樹脂系高分子膜を用いた膜モジュール。
(10)(9)記載の膜モジュールを用いた分離装置。
本発明によれば、球状構造と実質的に5μm以上のマクロボイドを有さない三次元網目構造の両方を有する、分子量7.5万のデキストラン除去率が80%以上であるフッ素樹脂系高分子分離膜が得られる。球状構造は、実質的にフッ素樹脂系高分子のみで構成されるので、化学的強度と物理的強度を併せ有する。この球状構造によって膜全体の物理的強度が担われるため、薬液洗浄を行うような運転を実施した場合でも膜全体の物理的強度が低下せず、糸切れを防止できる。一方、三次元網目構造中には実質的に5μm以上のマクロボイドを有さないため、ウイルスの裏抜けが防止できる。さらに、球状構造によって物理的強度が付与されているため、三次元網目構造の厚みはウイルス除去が可能な範囲で薄くすることが可能となり、透水性能を高くすることができる。従って、得られた膜は、ウイルス除去性、透水性能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度、耐汚れ性の諸性能を従来膜よりも高くすることが可能になる。この膜を用いることにより、信頼性の高いウイルス除去を長期間継続して実施することが可能になる。
本発明のフッ素樹脂系高分子分離膜は、三次元網目構造と球状構造の両方を有し、三次元網目構造が実質的に5μm以上のマクロボイドを有さないことが特徴である。ここで、三次元網目構造とは、図1の表面ないし図2に示すように、固形分が三次元的に網目状に広がっている構造のことをいう。三次元網目構造は、網を形成する固形分に仕切られた細孔およびボイドを有する。一方、球状構造とは、多数の球状もしくは略球状の固形分が、直接もしくは筋状の固形分を介して連結している構造のことをいう。
本発明では、三次元網目構造が実質的に5μm以上のマクロボイドを有さないようにしなければ、信頼性の高いウイルス除去性を達成することができない。一般的に、マクロボイドとは、細孔に比べて数十倍以上の空隙を有する空孔のことであり、透過流体に対してろ過抵抗をほとんど示さない。本発明における実質的に5μm以上のマクロボイドとは、三次元網目構造の断面を走査型電子顕微鏡を用いて3000倍で写真撮影した際に、長径が5μm以上となる空孔のことである。長径を判断することが困難な場合、画像処理装置等によって、空孔が有する面積と等しい面積を有する円(等価円)を求め、等価円直径を空孔の長径とする方法により求められる。三次元網目構造が実質的に5μm以上のマクロボイドを有するか否かは、該構造断面の走査型電子顕微鏡による写真撮影で確認できる。実質的に5μm以上のマクロボイドを有さないことの確認は、精度を上げるために数多くの異なる断面を写真撮影する方法が好ましく採用される。
一般的に、三次元網目構造に用いるフッ素樹脂系高分子は凝集性が強いために、例えばフッ素樹脂系高分子溶液を非溶媒浴中で凝固せしめる、いわゆる非溶媒誘起相分離では内部にマクロボイドを有する構造しか得られない。マクロボイドの形成を抑制するためには、フッ素樹脂系高分子の凝集性を抑制する必要があり、従来から検討が行われてきている。例えば、非溶媒の侵入速度を低下させるために、フッ素樹脂系高分子の良溶媒を凝固浴に添加して凝固浴中の非溶媒濃度を下げる方法がある。本発明でも、凝固浴中への良溶媒の添加は、濃度管理によって容易に調製できるため好ましく採用できる。しかし、この手法ではマクロボイドの形成が抑制される一方で、マクロボイドを形成するために費やされるはずであった空隙が分離膜全体に分散し、分離膜全体の細孔径が平均化されることによって表面細孔径が大きくなる。このため、本発明の目的であるウイルス除去用途の分離膜を得るためには、マクロボイド形成を抑制するだけでなく、表面細孔径を小さくする新たな工夫が必要である。
通常の非溶媒誘起相分離では、高分子溶液への非溶媒の侵入により、高分子溶液の組成が経時的に変化するだけでなく時間変化が急速なため追跡が困難であり、相分離のメカニズムを解析することは現在も学術的関心を集めている。特に、高分子・溶媒・非溶媒の3成分に加えて第4成分以降を添加した場合、統計的な解析はほとんど不可能と言われている。さらに、非溶媒誘起相分離では、組成以外にも、高分子溶液温度および粘度、凝固浴組成および温度、凝固時間などの多数の因子が影響を及ぼし、高分子溶液の組成によって相分離に影響を及ぼす因子の寄与率もそれぞれ異なる。
種々の因子について表面細孔径に影響を及ぼすか否かを検討した結果、本発明のフッ素樹脂系高分子溶液の相分離では高分子溶液の濃度、粘度および凝集性の3つの因子が表面細孔径に影響を及ぼすことを見出した。すなわち、高濃度または高粘度あるいは低凝集性を示すようにフッ素樹脂系高分子溶液を改質すると、小さな表面細孔径を有する分離膜が得られる傾向にあった。この現象の詳細を明らかにすることは困難であるが、3つの因子が空隙率の低下と高分子の凝集速度の低下を導き、極微小部分で相分離が発生したためであると考えられる。高濃度、高粘度、低凝集性を達成するためには、各因子を満足するように他成分を順次添加して改質することが考えられる。しかし、成分数が増加すると、上述したように統計的な解析が困難になるだけでなく、各成分が効果を促進あるいは相殺するために添加効果が明らかでなく、適切な性能を有する分離膜を設計することが困難となる。この問題は、高濃度、高粘度、低凝集性を同時に達成することができる成分を発見することによって解決できると考えられた。
そこで、フッ素樹脂系高分子溶液に、高濃度、高粘度、低凝集性を同時に付与する成分を鋭意検討した結果、セルロースエステルを添加するという本発明に至った。これは、次の3つの要因による。(1)フッ素樹脂系高分子溶液中のセルロースエステルの濃度が増すと、該溶液の濃度および粘度が上昇し、凝集性が低下する。(2)該溶液中のフッ素樹脂系高分子の濃度が増すと、該溶液の濃度および粘度が上昇し、凝集性が上昇する。(3)セルロースエステルはフッ素樹脂系高分子に比べて、添加量に対する粘度の上昇程度が高い。従って、該溶液中のフッ素樹脂系高分子の濃度とセルロースエステルの濃度を適切に調整することにより、濃度、粘度、凝集性を制御することが可能となり、目的とする表面細孔径を有する分離膜を設計することができる。
本発明の目的とするフッ素樹脂系高分子分離膜を得るためには、フッ素樹脂系高分子溶液の高分子濃度は、14重量%以上30重量%以下、好ましくは16重量%以上25重量%以下の範囲である。14重量%未満では、三次元網目構造層の物理的強度が低下するだけでなく該層表面の細孔径が大きくなりウイルス除去性が低下する恐れがある。一方、30重量%を超えると透水性能が低下するため好ましくない。なお、フッ素樹脂系高分子溶液の高分子濃度は、該溶液のセルロースエステル濃度とフッ素樹脂系高分子濃度の和で算出される。
ここで、セルロースエステルのフッ素樹脂系高分子に対する混和比は、得られるフッ素樹脂系高分子溶液の粘度および凝集性が本発明の目的を達成するように自由に設定できるが、セルロースエステルが少ないと、粘度が低く、凝集性が高くなり、得られる三次元網目構造層表面の細孔径が大きくなる。逆に、セルロースエステルが多いと、相対的にフッ素樹脂系高分子の割合が低下するため、得られる三次元網目構造の化学的強度と物理的強度が低下する。従って、セルロースエステルのフッ素樹脂系高分子に対する混和比は、10重量%以上50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは20重量%以上35重量%以下の範囲にある。10重量%未満の場合や50重量%を超える場合、フッ素樹脂系高分子溶液の粘度および凝集性を調整することが難しくなる。なお、セルロースエステルのフッ素樹脂系高分子に対する混和比(%)=(セルロースエステル濃度)/(フッ素樹脂系高分子濃度)×100で算出される。
また、セルロースエステルのフッ素樹脂系高分子に対する混和比が50重量%を超える場合には、フッ素樹脂系高分子溶液は特に顕著な高粘度と低凝集性を示す。従って、この場合、フッ素樹脂系高分子の良溶媒を含む凝固浴を用いなくても、三次元網目構造が実質的に5μm以上のマクロボイドを含有しないフッ素樹脂系高分子分離膜を得られるようになるため、製造プロセスが簡便になり経済的に優位である。この場合には上述したように、セルロースエステルが多くなることにより三次元網目構造の化学的強度と物理的強度が低下するというデメリットがあるが、薬液の洗浄間隔を長く設定する、薬液の濃度を低く設定するなど、得られる分離膜の化学的強度や物理的強度に配慮した条件下で使用される用途の場合には支障無く使用することができる。このような条件下で使用されるフッ素樹脂系高分子分離膜を得るためには、セルロースエステルのフッ素樹脂系高分子に対する混和比が50重量%以上75重量%以下、好ましくは55重量%以上65重量%以下の範囲であれば良い。
また、本発明のフッ素樹脂系高分子分離膜の構造は、球状構造層と三次元網目構造層の両方を有していれば特に限定されないが、球状構造層と三次元網目構造層とが積層されたものであることが好ましい。一般に層を多段に重ねると、各層の界面では層同士が互いに入り込むために緻密になり、透水性能が低下する。層同士が互いに入り込まない場合は、透水性能は低下しないが、界面の剥離強度が低下する。従って、各層の界面の剥離強度と透水性能を考慮すると、球状構造層と三次元網目構造層の積層数は少ない方が好ましく、球状構造層1層と三次元網目構造層1層の合計2層からなるようにすることが特に好ましい。また、球状構造層と三次元網目構造層以外の層、例えば多孔質基材などの支持体層を含んでいても良い。多孔質基材としては、有機材料、無機材料等、特に限定されないが、軽量化しやすい点から有機繊維が好ましい。さらに好ましくは、セルロース系繊維、酢酸セルロース系繊維、ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維などの有機繊維からなる織布や不織布である。
三次元網目構造層と球状構造層の上下や内外の配置は、ろ過方式によって変えることができるが、三次元網目構造層が分離機能を担い、球状構造層が物理的強度を担うため、三次元網目構造層を分離対象側に配置することが好ましい。特に、汚れ物質の付着による透水性能の低下を抑制するためには、分離機能を担う三次元網目構造層を分離対象側の最表層に配置することが好ましい。三次元網目構造層と球状構造層の各厚みは、ウイルス除去性、透水性能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度、耐汚れ性の各性能が要求される条件を満足するように自由に調整できるが、三次元網目構造層が薄いとウイルス除去性や物理的強度が低く、厚いと透水性能が低くなる。
本発明のフッ素樹脂系高分子分離膜はウイルス除去を目的としており、実質的に三次元網目構造層によってウイルスの除去が行われる。ウイルス除去性は、三次元網目構造層の各微少膜厚部分でのウイルス除去の和として現れる。従って、信頼性の高いウイルス除去性を発現するためには、ろ過段数を増やす必要があり、微少膜厚部分がある程度厚い、すなわち三次元網目構造層がある程度厚い必要がある。よって、信頼性の高いウイルス除去性を発現し、かつ、上述した諸性能とのバランスを取るためには、ウイルス濃度などのろ過原水水質や運転方法などにもよるが、三次元網目構造層の厚みは20μm以上120μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以上80μm以下が良い。そして、本発明は三次元網目構造が実質的に5μm以上のマクロボイドを有さないことが特徴であるが、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、5μm未満のマクロボイドを有していても構わない。ただし、三次元網目構造層の厚みが実質的に20μm未満となる場合、ウイルス除去性が低下し、本発明の目的を達成することが困難になる可能性がある。特に、マクロボイドが三次元網目構造層の厚み方向に固まって分布する場合には、上述した三次元網目構造層の厚みやマクロボイドの大きさによるが、実質的な三次元網目構造層の厚みが減少し、ウイルス除去性が著しく低下する。従って、三次元網目構造中の5μm未満のマクロボイドの数は少ないほど良く、全くないことが最良である。
また、球状構造層の厚みも、ウイルス除去性、透過性能、化学的強度(耐薬品性)、物理的強度、耐汚れ性の各性能が要求される条件を満足するように自由に調整できるが、球状構造層が薄いと物理的強度が低く、厚いと透水性能が低くなる。従って、上述した諸性能のバランスを考慮すると、球状構造層の厚みは100μm以上500μm以下、より好ましくは200μm以上300μm以下が良い。
さらに、三次元網目構造層と球状構造層の厚みの比も上述した各性能や運転コストにとって重要であり、三次元網目構造層の割合が大きくなると物理的強度が低下する。従って、三次元網目構造層の平均厚みの球状構造層の平均厚みに対する比は、0.04以上0.5以下が良く、より好ましくは0.1以上0.4以下が良い。
なお、球状構造と三次元網目構造の界面は、両者が互いに入り組んだ構造をしている。本発明における球状構造層とは、フッ素樹脂系高分子分離膜の断面を走査型電子顕微鏡を用いて3000倍で写真撮影した際に、球状構造が観察される範囲の層をいう。また、本発明における三次元網目構造層とは、フッ素樹脂系高分子分離膜の断面を走査型電子顕微鏡を用いて3000倍で写真撮影した際に、球状構造が観察されない範囲の層をいう。
また、球状構造の平均直径が大きくなると、空隙率が高くなり透水性能が増大するが、物理的強度が低下する。一方、平均直径が小さくなると、空隙率が低くなり、物理的強度が増大するが、透水性能が低下する。従って、球状構造の平均直径は0.1μm以上5μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以上4μm以下である。球状構造の平均直径は、フッ素樹脂系高分子分離膜の断面を走査型電子顕微鏡を用いて10000倍で写真撮影し、10個以上、好ましくは20個以上の任意の球状構造の直径を測定し、数平均して求める。画像処理装置等を用いて断面写真から等価円直径を求め、球状構造の平均直径とすることも好ましく採用できる。
三次元網目構造が分離対象側の最表層にある場合、最表層の表面をこの層の真上から観察すると、細孔が観察される。上述したように三次元網目構造が分離機能を担うため、該細孔の平均孔径や最大孔径は制御されるべきである。本発明のフッ素樹脂系高分子分離膜はウイルス除去を目的としており、この三次元網目構造の表面の平均孔径の好ましい値は1nm以上20nm以下が好ましく、より好ましくは5nm以上10nm以下である。また、表面の最大孔径は、除去対象であるウイルスのサイズによって異なるが、100nm以下であることが好ましく、より好ましくは70nm以下であり、更には50nm以下であることが好ましい。表面の平均孔径が20nm以上となる場合や表面の最大孔径が100nm以上となる場合は、三次元網目構造の厚みにもよるが、ウイルスの除去性が低下する。
得られたフッ素樹脂系高分子分離膜がウイルス除去に適するか否かを判断するためには、実際にウイルスを用いて除去性能を評価すれば良い。例えば、直径23nmの正20面体構造を有する大腸菌ファージのQβを含む原水を用いて除去率を評価すれば良い。しかし、ウイルスの取り扱いには衛生的な制限があり、取り扱い工程が煩雑である。また、ウイルスは培養中や保存中、さらには評価中でも生命活動を続ける。このように、ウイルスは生物特有の経時変化を示すため、直接ウイルスを用いて除去性能を定量的に評価することは難しい。そこで、本発明では生物ではないために取り扱いが容易であり、かつ、大腸菌ファージのQβよりも小さなストークス径を有する分子量7.5万のデキストラン(ストークス径=約6nm)を用いてウイルスの除去性を見積もることにした。これは、非特許文献1に記載された大腸菌ファージのQβを99.99999%以上除去する膜(CP10−1010)は容易に入手可能であり、該膜の分子量7.5万のデキストラン除去率を評価すれば、その除去率を上回るフッ素樹脂系高分子分離膜についても大腸菌ファージのQβを除去可能であると考えられるからである。
実際、後述する測定方法によって、CP10−1010膜の分子量7.5万のデキストラン除去率は80%であることが本発明者らの検討により明らかにされた。CP10−1010は、大腸菌ファージのQβを99.99999%以上とほとんど全く検出されない程度にまで除去するにも関わらず、分子量7.5万のデキストランは80%しか除去しない。これは、CP10−1010の細孔が、大腸菌ファージのQβに比べると極めて小さく、細孔の分布も大腸菌ファージのQβが実質的に通過できない範囲にある一方で、直径約6nmと非常に小さい分子量7.5万のデキストランに比べるとその20%の通過を許す程度の大きさであるためである。逆に、ある高分子分離膜が分子量7.5万のデキストランを80%以上除去すれば、少なくともCP10−1010と同等かそれ以下の細孔を有し、細孔の分布も同等か低孔径側に寄っていると考えることができる。然るに、そのような高分子分離膜は、CP10−1010と少なくとも同等かそれ以上の大腸菌ファージのQβ除去性能を示すと考えられる。従って、フッ素樹脂系高分子分離膜が大腸菌ファージのQβに代表されるウイルスを信頼性良く除去するためには、分子量7.5万のデキストラン除去率が80%以上である必要があり、より好ましくは85%以上である。
三次元網目構造の表面の平均孔径は、三次元網目構造の表面を走査型電子顕微鏡を用いて60000倍で写真撮影し、10個以上、好ましくは20個以上の任意の細孔の直径を測定し、数平均して求める。細孔が円状でない場合、画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円(等価円)を求め、等価円直径を細孔の直径とする方法により求められる。
本発明のフッ素樹脂系高分子分離膜は、50kPa、25℃における純水透過性能が0.1m/m・hr以上10m/m・hr以下、強力5N以上、かつ、破断伸度が50%以上であることが好ましい。純水透過性能は、より好ましくは0.2m/m・hr以上7m/m・hr以下である。強力は、より好ましくは6N以上である。破断伸度は、より好ましくは70%以上である。以上の条件を満たすことで、水処理分野、医薬品製造分野、食品工業分野、血液浄化用膜分野等の用途に十分な強度、透水性能を有し、さらにウイルス除去が可能なフッ素樹脂系高分子分離膜を得ることができる。
本発明のフッ素樹脂系高分子分離膜は、中空糸膜形状、平膜形状いずれの形態でも好ましく用いることができるが、中空糸膜は効率良く充填することが可能であり、単位体積当たりの有効膜面積を増大させることができるため好ましく用いられる。
純水透過性能の測定は、中空糸膜では、中空糸膜4本からなる長さ200mmのミニチュアモジュールを作製して行った。温度25℃、ろ過差圧16kPaの条件下に、逆浸透膜ろ過水の外圧全ろ過を10分間行い、透過量(m)を求めた。その透過量(m)を単位時間(h)および有効膜面積(m)あたりの値に換算し、さらに(50/16)倍することにより、圧力50kPaにおける値に換算することで純水透過性能を求めた。平膜では、例えば、膜を直径43mmの円形に切り出し、円筒状のろ過ホルダー(アドバンテック社製攪拌型ウルトラホルダーUHP−43K)にセットし、その他は中空糸膜と同様の操作をすることで求めることができる。純水透過性能は、ポンプ等で加圧や吸引して得た値を換算して求めても良い。水温についても評価液体の粘性で換算しても良い。純水透過性能が0.10m/m・hr未満の場合には、透水性能が低すぎ、フッ素樹脂系高分子分離膜として実用的でない。また、逆に純水透過性能が10m/m・hrを超える場合には、フッ素樹脂系高分子分離膜の孔径が大きすぎて、不純物の阻止性能が低くなり好ましくない。
また、分子量7.5万のデキストラン除去率は、上述したミニチュアモジュールを用いて次の方法で求めた。まず、温度25℃、ろ過差圧16kPa、膜面線速度1m/sの条件下に、分子量7.5万のデキストラン1,000ppm水溶液を10分間外圧クロスフローろ過した。次に、原水中およびろ過水中のデキストラン濃度を示差屈折率計(島津製作所製RID−6A 100V)を用いて求めた。最後に、分子量7.5万のデキストラン除去率(%)=(1−(ろ過水中デキストラン濃度)/(原水中デキストラン濃度))×100とすることにより求めた。平膜では、例えば、膜を直径43mmの円形に切り出し、円筒状のろ過ホルダー(アドバンテック社製攪拌型ウルトラホルダーUHP−43K)にセットし、その他は中空糸膜と同様の操作をすることで求めることができる。
強力と破断伸度の測定方法は、特に限定されるものではないが、例えば、引っ張り試験機を用い、測定長さ50mmの試料を、引っ張り速度50mm/分で引っ張ることにより測定する。この操作を試料を変えて5回以上行い、数平均することにより強力の平均値と破断伸度の平均値を求めることで測定することができる。強力5N未満、または破断伸度50%未満の場合には、フッ素樹脂系高分子分離膜を扱う際のハンドリング性が悪くなり、かつ、ろ過時における膜の破断、糸切れおよび圧壊が生じやすくなるので好ましくない。一般に、破断強度や破断伸度が大きくなると、透過性能が低下する。従って、フッ素樹脂系高分子分離膜の破断強度や破断伸度は、上述したハンドリング性とろ過時における物理的耐久性が達成される範囲であれば良く、透過性能や運転コストなどとのバランスによって決定される。
本発明では、球状構造はフッ素樹脂系高分子のみから実質的に構成され、三次元網目構造はフッ素樹脂系高分子とセルロースエステルから構成される。セルロースエステルを用いた目的は、上述したように、フッ素樹脂系高分子溶液に高濃度、高粘度、低凝集性を同時に付与するためであり、この目的を果たすものであれば特に限定されない。すなわち、複数の化合物を添加することによってフッ素樹脂系高分子溶液に高濃度、高粘度、低凝集性を付与することができる場合にも、本発明に記載したウイルス除去用途に好適に用いられるフッ素樹脂系高分子分離膜を得ることができる。
本発明におけるフッ素樹脂系高分子とは、フッ化ビニリデンホモポリマーおよび/またはフッ化ビニリデン共重合体を含有する樹脂のことである。複数の種類のフッ化ビニリデン共重合体を含有していても良い。フッ化ビニリデン共重合体としては、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化塩化エチレンから選ばれる少なくとも1種とフッ化ビニリデンとの共重合体が挙げられる。また、フッ素樹脂系高分子の重量平均分子量は、要求されるフッ素樹脂系高分子分離膜の強度と透水性能によって適宜選択すれば良いが、重量平均分子量が大きくなると透水性能が低下し、重量平均分子量が小さくなると強度が低下する。このため、重量平均分子量は5万以上100万以下が好ましい。フッ素樹脂系高分子分離膜が薬液洗浄に晒される水処理用途の場合、重量平均分子量は10万以上70万以下が好ましく、さらに15万以上60万以下が好ましい。また、本発明の三次元網目構造および球状構造には、発明の目的を阻害しない範囲で他の成分、例えば、有機物、無機物、高分子などが含まれていても良い。
また、本発明におけるセルロースエステルとは、主鎖および/または側鎖に分子ユニットとしてセルロースエステルを有するものであれば特に限定されず、これら以外の分子ユニットが存在しても良い。セルロースエステル以外の分子ユニットとしては、例えば、エチレン、プロピレンなどのアルケン、アセチレンなどのアルキン、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、メチルメタクリレート、メチルアクリレートなどが挙げられる。特に、エチレン、メチルメタクリレート、メチルアクリレートは安価に入手可能であり、主鎖および/または側鎖に導入しやすいため好ましく用いられる。導入方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などの公知の重合技術を用いることができる。また、セルロースエステルには、実質的にセルロースエステルのみを分子ユニットとするホモポリマーが知られている。ホモポリマーは、安価に入手することができ、取り扱いが容易なため好ましく用いられる。このようなホモポリマーとしては、セルロールアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが挙げられる。
セルロースエステルは、フッ素樹脂系高分子とともに三次元網目構造を形成するために用いるので、フッ素樹脂系高分子と適当な条件で混和することが好ましい。さらには、フッ素樹脂系高分子の良溶媒に、セルロースエステルとフッ素樹脂系高分子が混和溶解する場合には、取り扱いが容易になるので特に好ましい。
セルロースエステルのエステルの一部を加水分解すると、エステルよりも親水性基である水酸基が生成する。水酸基の割合が大きくなると、疎水性であるフッ素樹脂系高分子との混和性は低下するが、得られるフッ素樹脂系高分子分離膜の親水性が増大し、透水性能や耐汚れ性は向上する。従って、フッ素樹脂系高分子と混和する範囲で、エステルを加水分解する手法は、膜性能向上の観点から好ましく採用できる。
上述のフッ素樹脂系高分子分離膜は、原液流入口や透過液流入口などを備えたケーシングに収容され膜モジュールとして使用される。膜モジュールは、膜が中空糸膜である場合には、中空糸膜を複数本束ねて円筒状の容器に納め、両端または片端をポリウレタンやエポキシ樹脂等で固定して、透過液を回収できるようにしたり、平板状に中空糸膜を固定して透過液を回収できるようにする。膜が平膜状である場合には、平膜を集液管の周りに封筒状に折り畳みながらスパイラル状に巻き取り、円筒状の容器に納め、透過液を回収できるようにしたり、集液管の両面に平膜を配置して周囲を密に固定し、透過液を回収できるようにする。
そして、膜モジュールは、少なくとも原液側に加圧手段または透過液側に吸引手段を設け、水などを分離する分離装置として用いられる。加圧手段としてはポンプを用いても良いし、水位差による圧力を利用してもよい。また、吸引手段としては、ポンプやサイフォンを利用すればよい。
この分離装置は、水処理分野であれば浄水処理、上水処理、排水処理、工業用水製造などで利用でき、河川水、湖沼水、地下水、海水、下水、排水などを被処理水とする。
そして、上記のフッ素樹脂系高分子分離膜を血液浄化用膜として用いると、血中老廃物の除去性向上や、破断強度が高いことによる血液浄化用膜の耐久性向上などが期待できる。
本発明の、三次元網目構造と球状構造の両方を有するフッ素樹脂系高分子分離膜は、種々の方法により製造することができる。例えば、球状構造層の表面に、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液を塗布した後に、フッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有する凝固浴中で凝固せしめることにより三次元網目構造層を被覆する方法、三次元網目構造層形成用のセルロースエステル含有フッ素樹脂系高分子溶液および球状構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液を口金から同時に吐出し、フッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有する凝固浴中でそれぞれ凝固および冷却固化せしめることにより三次元網目構造層と球状構造層とを同時に形成する方法が挙げられる。また、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液において、フッ素樹脂系高分子に対するセルロースエステルの混和比が高い場合には、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液をフッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有しない凝固浴中で凝固せしめることにより、本発明のフッ素樹脂系高分子分離膜を製造することができる。
即ち、本発明のフッ素樹脂系高分子分離膜は、三次元網目構造の層と球状構造の層とを有するフッ素樹脂系高分子分離膜を製造する際、フッ素樹脂系高分子及びセルロースエステルを含有する高分子溶液であって、該溶液中の総高分子濃度が14〜30重量%、フッ素樹脂系高分子に対するセルロースエステルの混和比が10〜50重量%である高分子溶液を、フッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有する凝固浴中で凝固させて三次元網目構造の層を形成させることにより製造することが好ましい。
ここで、フッ素樹脂系高分子に対するセルロースエステルの混和比が50〜75重量%である場合には、上記高分子溶液を凝固させる凝固浴としては、フッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有しない凝固浴を用いることもできる。
まず、球状構造層の表面にセルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液を塗布した後に、フッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有する凝固浴中で凝固せしめることにより三次元網目構造層を被覆する方法について説明する。
この製造方法においては、まず、球状構造層を製造する。球状構造層は、フッ素樹脂系高分子を20重量%以上60重量%以下の比較的高濃度で、フッ素樹脂系高分子の貧溶媒または良溶媒に比較的高温で溶解してフッ素樹脂系高分子溶液を調製し、該高分子溶液を冷却固化して相分離せしめることにより製造する。従って、球状構造層は実質的にフッ素樹脂系高分子のみで構成されるので、化学的強度と物理的強度を併せ有する。本発明において、貧溶媒とは、フッ素樹脂系高分子を60℃以下の低温では、5重量%以上溶解させることができないが、60℃以上かつ高分子の融点以下(例えば、高分子がフッ化ビニリデンホモポリマー単独で構成される場合は178℃程度)の高温領域で5重量%以上溶解させることができる溶媒のことである。貧溶媒に対し、60℃以下の低温領域でもフッ素樹脂系高分子を5重量%以上溶解させることができる可能な溶媒を良溶媒、フッ素樹脂系高分子の融点または溶媒の沸点まで、フッ素樹脂系高分子を溶解も膨潤もさせない溶媒を非溶媒と定義する。貧溶媒としては、シクロヘキサノン、イソホロン、γ−ブチロラクトン、メチルイソアミルケトン、フタル酸ジメチル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレンカーボネート、ジアセトンアルコール、グリセロールトリアセテート等の中鎖長のアルキルケトン、エステル、グリコールエステルおよび有機カーボネート等およびそれらの混合溶媒が挙げられる。非溶媒と貧溶媒の混合溶媒であっても、上記貧溶媒の定義を満足するものは、貧溶媒であると定義する。また良溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアキド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、リン酸トリメチル等の低級アルキルケトン、エステル、アミド等およびそれらの混合溶媒が挙げられる。さらに、非溶媒としては、水、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、四塩化炭素、o−ジクロルベンゼン、トリクロルエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、低分子量のポリエチレングリコール等の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール、塩素化炭化水素、またはその他の塩素化有機液体およびそれらの混合溶媒が挙げられる。
上記製造方法では、まずフッ素樹脂系高分子を20重量%以上60重量%以下の比較的高濃度で、フッ素樹脂系高分子の貧溶媒または良溶媒に、80℃以上170℃以下の比較的高温で溶解してフッ素樹脂系高分子溶液を調製する。フッ素樹脂系高分子濃度は高くなれば高い強度、伸度を有するフッ素樹脂系高分子分離膜が得られるが、高すぎるとフッ素樹脂系高分子分離膜の空孔率が小さくなり透過性能が低下する。また、フッ素樹脂系高分子溶液の粘度が適正な範囲に無ければ、取り扱いが困難であり、製膜することができなくなる。従って、フッ素樹脂系高分子濃度は、30重量%以上50重量%以下の範囲とすることが好ましい。
フッ素樹脂系高分子溶液を冷却固化するにあたっては、口金からフッ素樹脂系高分子溶液を冷却浴中に吐出する方法が好ましい。この際、冷却浴に用いる冷却液体としては温度が5〜50℃であり、濃度が60〜100重量%の貧溶媒もしくは良溶媒を含有する液体を用いて固化させることが好ましい。冷却液体には、貧溶媒、良溶媒以外に非溶媒を含有していても良いが、冷却液体に非溶媒を主成分とする液体を用いると、冷却固化による相分離よりも非溶媒滲入による相分離が優先し、球状構造が得られにくくなる。フッ素樹脂系高分子を比較的高濃度で、フッ素樹脂系高分子の貧溶媒もしくは良溶媒に比較的高温度で溶解し、急冷して冷却固化することによって、得られるフッ素樹脂系高分子分離膜の構造は、球状構造、もしくは、緻密な網目構造となる。球状構造を形成させるためには、フッ素樹脂系高分子溶液の濃度および温度、用いる溶媒の組成、冷却液体の組成および温度の組み合わせで相分離を制御しなければならない。
フッ素樹脂系高分子分離膜の形状を中空糸膜とする場合には、フッ素樹脂系高分子溶液を調製した後、二重管式口金の外側の管から吐出するとともに、中空部形成流体を二重管式口金の内側の管から吐出しながら冷却浴中で固化して、中空糸膜とする。この際、中空部形成流体には、通常気体もしくは液体を用いることができるが、本発明においては、冷却液体と同様の濃度が60〜100重量%の貧溶媒もしくは良溶媒を含有する液体を用いることが好ましく採用できる。なお、中空部形成流体は冷却して供給しても良いが、冷却浴の冷却力のみで中空糸膜を固化するのに十分な場合は、中空部形成流体は冷却せずに供給しても良い。
また、フッ素樹脂系高分子分離膜の形状を平膜とする場合には、フッ素樹脂系高分子溶液を調製した後、スリット口金から吐出し、冷却浴中で固化し平膜とする。
以上のようにして製造した球状構造層の表面に、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液を用いて三次元網目構造を被覆する。その方法は、特に限定されないが、以下の方法を好ましく用いることができる。すなわち、球状構造層の表面に、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液を塗布した後、球状構造層の表面に塗布した前記フッ素樹脂系高分子溶液をフッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有する凝固浴中で凝固せしめることにより三次元網目構造層を被覆する方法である。さらに、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液中において、フッ素樹脂系高分子に対するセルロースエステルの混和比が高い場合には、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液をフッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有しない凝固浴中で凝固せしめた場合でも三次元網目構造を被覆することもできる。
この際、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液は、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液であって、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液に対するセルロースエステル濃度とフッ素樹脂系高分子濃度の和を14重量%以上30重量%以下、好ましくは16重量%以上25重量%以下の範囲になるように調製し、かつ、フッ素樹脂系高分子に対するセルロースエステルの混和比を10重量%以上50重量%以下、好ましくは20重量%以上35重量%以下の範囲になるように調製すれば、本発明の目的とするフッ素樹脂系高分子分離膜が得られる。また、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液中において、フッ素樹脂系高分子に対するセルロースエステルの混和比が50重量%以上75重量%以下、好ましくは55重量%65重量%以下の範囲であれば、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液をフッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有しない凝固浴中で凝固せしめた場合でも、本発明の目的とするフッ素樹脂系高分子分離膜が得られる。
ここで、三次元網目構造を形成させるための、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液は、前記したセルロースエステル、フッ素樹脂系高分子および溶媒で構成されるものであるが、溶媒としてはフッ素樹脂系高分子の良溶媒を用いることが好ましい。フッ素樹脂系高分子の良溶媒としては、前記のようなものを用いることができる。
また、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液は、フッ素樹脂系高分子やセルロースエステルの種類・濃度、溶媒の種類、後述する添加剤の種類・濃度によって溶解温度が異なる。再現性良く安定な該溶液を調製するためには、溶媒の沸点以下の温度で攪拌しながら数時間加熱して、透明な溶液となるようにすることが好ましい。さらに、該溶液を塗布する際の温度も重要であり、フッ素樹脂系高分子分離膜を安定して製造するためには、該溶液の安定性を損なわないように温度を制御しつつ、系外からの非溶媒の侵入を防止することが好ましい。該溶液の塗布温度が高すぎると、球状構造からなるフッ素樹脂系高分子分離膜を溶解して、三次元網目構造層と球状構造層の界面に緻密な層を形成しやすく、透水性能が低下する。逆に、塗布温度が低すぎると、塗布中に該溶液の一部分がゲル化し、欠点を多く含む分離膜が形成して、分離性能が低下する。このため、塗布温度は、該溶液の組成や求める分離膜の性能によって鋭意検討して決定する必要がある。
フッ素樹脂系高分子分離膜の形状が中空糸膜である場合、上述した方法で中空糸膜状に製造した球状構造層の表面に、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液を塗布する。例えば、中空糸膜をセルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液中に浸漬したり、中空糸膜に該高分子溶液を滴下したりする方法が好ましく用いられ、中空糸膜の内表面側に該高分子溶液を塗布する場合には、該高分子溶液を中空糸膜内部に注入する方法などが好ましく用いられる。さらに、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液の塗布量を制御する方法としては、該高分子溶液の塗布量自体を制御する以外に、球状構造からなるフッ素樹脂系高分子分離膜を該高分子溶液に浸漬したり、球状構造からなるフッ素樹脂系高分子分離膜に該高分子溶液を塗布した後に、該高分子溶液の一部を掻き取ったり、エアナイフを用いて吹き飛ばしたりする方法も好ましく用いられる。
また、ここでフッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有する凝固浴は、フッ素樹脂系高分子の良溶媒を10重量%以上60重量%以下、好ましくは20重量%以上50重量%以下含有することが好ましい。凝固浴中の良溶媒を前記の範囲に調整することにより、塗布されたセルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液への非溶媒の侵入速度が低下し、実質的に5μm以上のマクロボイドを含有しない三次元網目構造層が形成される。10重量%未満では、非溶媒の侵入速度を抑制することが困難であり、マクロボイドの形成を抑制し難くなる。また、60重量%を超える場合には、凝固速度が著しく低下して、凝固に長時間が必要になる。なお、フッ素樹脂系高分子の良溶媒としては、前記のようなものを好ましく用いることができる。
表面の平均孔径を前記の範囲に制御する方法は、セルロースエステルの種類や濃度によって異なるが、例えば以下の方法で行うことができる。セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液に、孔径を制御するための添加剤を入れ、三次元網目構造を形成する際に、または、三次元網目構造を形成した後に、該添加剤を溶出させることにより、表面の平均孔径を制御することができる。該添加剤としては、有機化合物および無機化合物が挙げられる。有機化合物としては、該高分子溶液に用いる溶媒および非溶媒誘起相分離を起こす非溶媒の両方に溶解するものが好ましく用いられる。例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、デキストランなどの水溶性ポリマー、界面活性剤、グリセリン、糖類などを挙げることができる。無機化合物としては、該高分子溶液に用いる溶媒および非溶媒誘起相分離を起こす非溶媒の両方に溶解するものが好ましく、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硫酸バリウムなどを挙げることができる。また、該高分子溶液に非溶媒を添加することも、相分離速度の制御に有効である。
さらに、本発明の三次元網目構造と他方に球状構造を有するフッ素樹脂系高分子分離膜の別の製造方法として、以下に三次元網目構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液および球状構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液を口金から同時に吐出し、フッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有する凝固浴中でそれぞれ凝固および冷却固化せしめることにより三次元網目構造層と球状構造層とを同時に形成する方法を説明する。この方法によると、三次元網目構造層と球状構造層を同時に形成することができ、製造工程を簡素なものにすることができる。ここで、三次元網目構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液は、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液であって、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液に対するセルロースエステル濃度とフッ素樹脂系高分子濃度の和を14重量%以上30重量%以下、好ましくは16重量%以上25重量%以下の範囲になるように調製し、かつ、フッ素樹脂系高分子に対するセルロースエステルの混和比を10重量%以上50重量%以下、好ましくは20重量%以上35重量%以下の範囲になるように調製すれば、本発明の目的とするフッ素樹脂系高分子分離膜が得られる。なお、セルロースエステルを含有するフッ素樹脂系高分子溶液中において、フッ素樹脂系高分子に対するセルロースエステルの混和比が50重量%以上75重量%以下、好ましくは55重量%以上65重量%以下の範囲であれば、三次元網目構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液をフッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有しない凝固浴中で凝固せしめた場合でも、本発明の目的とするフッ素樹脂系高分子分離膜が得られる。また、球状構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液には、フッ素樹脂系高分子を20重量%以上60重量%以下の比較的高濃度で、該フッ素樹脂系高分子の貧溶媒や良溶媒に、80℃以上170℃以下の比較的高温で溶解して調製したフッ素樹脂系高分子溶液を用いる。ここで、フッ素樹脂系高分子、セルロースエステル、凝固浴、貧溶媒、良溶媒としては、前記のものを好ましく用いることができる。
また、ここでフッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有する凝固浴は、温度が5〜50℃であり、フッ素樹脂系高分子の良溶媒を10重量%以上60重量%以下、好ましくは20重量%以上50重量%以下含有することが好ましい。凝固浴中の良溶媒を前記の範囲に調整することにより、三次元網目構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液への非溶媒の侵入速度が低下し、実質的に5μm以上のマクロボイドを含有しない三次元網目構造層が形成される。10重量%未満では、非溶媒の侵入速度を抑制することが困難であり、マクロボイドの形成を抑制し難くなる。また、60重量%を超える場合には、凝固速度が著しく低下して、凝固に長時間が必要になる。また、凝固浴の温度は、前記の範囲に調整することにより、球状構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液を急冷して冷却固化することができる。
三次元網目構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液と球状構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液とを同時に吐出する場合の口金としては、特に限定されないが、フッ素樹脂系高分子分離膜の形状を平膜とする場合には、スリットが2枚並んだ二重スリット形状のものが好ましく用いられる。また、フッ素樹脂系高分子分離膜の形状を中空糸とする場合には、三重管式口金が好ましく用いられる。三重管式口金の外側の管と中間の管から三次元網目構造層形成用フッ素樹脂系高分子脂溶液と球状構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液を吐出し、中空部形成流体を内側の管から吐出しながら凝固浴中で冷却固化および凝固し、中空糸膜とすることができる。このような製造方法で中空糸膜を製造した場合、中空部形成流体の量を、平膜を製造した場合の冷却固化液体の量よりも少なくすることができ、特に好ましい。三次元網目構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液を外側の管から、球状構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液を中間の管から吐出することにより、三次元網目構造層を外側に、球状構造層を内側に有する中空糸膜を得ることができ、逆に三次元網目構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液を中間の管から、球状構造層形成用フッ素樹脂系高分子溶液を外側の管から吐出することにより、三次元網目構造層を内側に、球状構造層を外側に有する中空糸膜を得ることができる。
上述のフッ素樹脂系高分子分離膜は、原液流入口や透過液流出口などを備えたケーシングに収容され膜モジュールとして使用される。フッ素樹脂系高分子分離膜が中空糸膜の場合には、中空糸膜を複数本束ねて円筒状の容器に納め、両端または片端をポリウレタンやエポキシ樹脂等で固定し、透過液を回収できるようにしたり、平板状に中空糸膜の両端を固定して透過液を回収できるようにする。
フッ素樹脂系高分子分離膜が平膜である場合には、平膜を集液管の周りに封筒状に折り畳みながらスパイラル状に巻き取り、円筒状の容器に納め、透過液をできるようにしたり、集液板の両面に平膜の配置して周囲を水密に固定し、透過液を回収できるようにする。
そして、膜モジュールは、少なくとも原液側に加圧手段もしくは透過液側に吸引手段を設け、造水を行う分離装置として用いられる。加圧手段としてはポンプを用いてもよいし、また水位差による圧力を利用してもよい。また、吸引手段としては、ポンプやサイフォンを利用すればよい。
以下に具体的実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例におけるフッ素樹脂系高分子分離膜の球状構造の平均直径は、フッ素樹脂系高分子分離膜の断面を走査型電子顕微鏡(S−800)(日立製作所製)を用いて10000倍で写真撮影し、30個の任意の細孔の孔径および球状構造の直径を測定し、数平均して求めた。また、三次元網目構造の表面の平均孔径は、フッ素樹脂系高分子分離膜の表面を上記の走査型電子顕微鏡を用いて60000倍で写真撮影し、30個の任意の細孔の孔径の直径を測定し、数平均して求めた。
そして、三次元網目構造層の平均厚みや球状構造層の平均厚みは、フッ素樹脂系高分子分離膜の断面を上記の走査型電子顕微鏡を用いて100倍および1000倍で写真撮影し、その写真から次のような方法で算出した。まず、三次元網目構造層の平均厚みを次の方法で求めた。実施例のフッ素樹脂系高分子分離膜は外層に三次元網目構造層を有し、内層に球状構造を有している。1000倍の写真において、外層表面の任意の1点から内層に向かって外層表面接線に対して垂直に進み、初めて球状構造が観察されるまでの距離を測定する。この距離が、三次元網目構造層の厚みである。この操作を任意の30カ所で行い、数平均して、三次元網目構造層の平均厚みを算出した。同様にして、球状構造層の平均厚みも算出できるが、実施例では球状構造層が厚いため、フッ素樹脂系高分子分離膜断面の表面から反対側の表面までを1000倍で写真撮影すると画面に収まらず、数枚の写真を貼り合わせなければならない。そこで、1000倍で数枚の写真撮影を行う代わりに、次の方法を選択した。すなわち、100倍で写真撮影し、フッ素樹脂系高分子分離膜の厚み(フッ素樹脂系高分子分離膜断面の表面から反対側の表面まで)を求める。このフッ素樹脂系高分子分離膜の厚みから三次元網目構造層の平均厚みを引き算したものが球状構造層の厚みである。この操作を任意の30カ所で行い、数平均して、球状構造層の平均厚みを算出した。
また、三次元網目構造が5μm以上のマクロボイドを有するか否かは、三次元網目構造層の断面を上記の走査型電子顕微鏡を用いて3000倍で写真撮影することにより実施した。すなわち、互いに異なる30箇所の断面を観察し、マクロボイドが存在しない時あるいは長径が5μm未満のマクロボイドしか存在しない時に5μm以上のマクロボイドを有さないとし、長径が5μm以上のマクロボイドが一つでも観察された時に5μm以上のマクロボイドを有すると判断した。
純水透過性能は、次のように求めた。まず、フッ素樹脂系高分子分離膜が中空糸膜の場合には、中空糸膜4本からなる長さ200mmのミニチュアモジュールを作製し、また、フッ素樹脂系高分子分離膜が平膜の場合には、直径43mmの円形に切り出し、円筒型のろ過ホルダーにセットし、温度25℃、ろ過差圧16kPaの条件下に、逆浸透膜ろ過水の外圧全ろ過を10分間行い、透過量(m)を求めた。次に、その透過量(m)を単位時間(h)および有効膜面積(m)あたりの値に換算し、さらに(50/16)倍することにより、圧力50kPaにおける値に換算することで純水透過性能を求めた。
分子量7.5万のデキストラン除去率は、温度25℃、ろ過差圧16kPa、膜面線速度1m/sの条件下に、分子量7.5万のデキストラン(Pharmacia Bioprocess Technology社製デキストランT70)1,000ppm水溶液の外圧クロスフローろ過を10分間行った。次に、原水中およびろ過水中のデキストラン濃度を示差屈折率計(島津製作所製RID−6A 100V)を用いて求めた。最後に、分子量7.5万のデキストラン除去率を、除去率(%)=(1−(ろ過水中デキストラン濃度)/(原水中デキストラン濃度))×100とすることにより求めた。
強力と破断伸度は次の方法で測定した。まず、引っ張り試験機(東洋ボールドウィン製TENSILON/RTM−100)を用い、測定長さ50mmの試料を、引っ張り速度50mm/分で引っ張ることにより測定した。この操作を試料を変えて10回実施し、数平均することにより強力の平均値と破断伸度の平均値を求めることにより測定した。
また、膜の物理的耐久性を、次のエアースクラビング耐久性評価により行った。まず、中空糸膜1500本を束ね、直径10cm長さ100cmの円筒状透明容器内に詰めて膜モジュールを作製した。次に、膜モジュール内を飲料水で満たし、容器下部より100L/分の空気を連続的に122日間供給し、エアースクラビング耐久性評価を行った。なお、122日間は、実運転において30分に1回の頻度でエアースクラビングを1分間実施する運転方法を採用した場合に、10年間分のエアースクラビングに相当する。
<実施例1>
重量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとγ−ブチロラクトンとを、それぞれ38重量%と62重量%の割合で170℃の温度で溶解した。この高分子溶液をγ−ブチロラクトンを中空部形成液体として随伴させながら口金から吐出し、温度20℃のγ−ブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却浴中で固化して球状構造からなる中空糸膜を作製した。
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを14重量%、セルロースアセテート(イーストマンケミカル社、CA435−75S:三酢酸セルロース)を3重量%、N−メチル−2−ピロリドンを77重量%、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(三洋化成株式会社、商品名イオネットT−20C)を3重量%、水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を球状構造からなる中空糸膜表面に均一に塗布し、すぐに30重量%N−メチル−2−ピロリドン水溶液中で凝固させて球状構造層の上に三次元網目構造層を形成させた中空糸膜を作製した。
得られた中空糸膜は、外径1340μm、内径780μm、球状構造の平均直径2.8μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径14nm、三次元網目構造層の平均厚み38μm、球状構造層の平均厚み243μm、純水透過性能0.15m/m・hr、分子量7.5万のデキストラン除去率86%、強力8.0N、破断伸度85%であった。三次元網目構造は5μm以上のマクロボイドを有さなかった。
得られた中空糸膜の断面写真を図1に示す。また、表面写真を図2に示す。
エアースクラビング耐久性評価を実施した結果、122日後にも糸切れは全く観察されなかった。
従って、得られた中空糸膜は、物理的耐久性に優れ、デキストラン除去率も高いためウイルス除去用途に長期間使用できることが分かった。なお、評価結果を表1にまとめた。
<実施例2>
まず、実施例1と同様の方法で球状構造からなる中空糸膜を作製した。
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを13重量%、セルロースアセテート(イーストマンケミカル社、CA435−75S)を4重量%、N−メチル−2−ピロリドンを77重量%、T−20Cを3重量%、水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を球状構造からなる中空糸膜表面に均一に塗布し、すぐに30重量%N−メチル−2−ピロリドン水溶液中で凝固させて球状構造層の上に三次元網目構造層を形成させた中空糸膜を作製した。
得られた中空糸膜は、外径1340μm、内径780μm、球状構造の平均直径2.7μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径10nm、三次元網目構造層の平均厚み35μm、球状構造層の平均厚み244μm、純水透過性能0.11m/m・hr、分子量7.5万のデキストラン除去率90%、強力8.1N、破断伸度86%であった。三次元網目構造は5μm以上のマクロボイドを有さなかった。
エアースクラビング耐久性評価を実施した結果、122日後にも糸切れは全く観察されなかった。
従って、得られた中空糸膜は、物理的耐久性に優れ、デキストラン除去率も高いためウイルス除去用途に長期間使用できることが分かった。なお、評価結果を表1にまとめた。
<実施例3>
まず、実施例1と同様の方法で球状構造からなる中空糸膜を作製した。
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを12重量%、セルロースアセテート(イーストマンケミカル社、CA435−75S)を3重量%、N−メチル−2−ピロリドンを79重量%、T−20Cを3重量%、水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を球状構造からなる中空糸膜表面に均一に塗布し、すぐに30重量%N−メチル−2−ピロリドン水溶液中で凝固させて球状構造層の上に三次元網目構造層を形成させた中空糸膜を作製した。
得られた中空糸膜は、外径1340μm、内径780μm、球状構造の平均直径2.8μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径20nm、三次元網目構造層の平均厚み36μm、球状構造層の平均厚み244μm、純水透過性能0.25m/m・hr、分子量7.5万のデキストラン除去率80%、強力7.9N、破断伸度87%であった。三次元網目構造は5μm以上のマクロボイドを有さなかった。
エアースクラビング耐久性評価を実施した結果、122日後にも糸切れは全く観察されなかった。
従って、得られた中空糸膜は、物理的耐久性に優れ、デキストラン除去率も高いためウイルス除去用途に長期間使用できることが分かった。なお、評価結果を表1にまとめた。
<実施例4>
まず、実施例1と同様の方法で球状構造からなる中空糸膜を作製した。
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを14重量%、セルロースアセテート(イーストマンケミカル社、CA435−75S)を2重量%、N−メチル−2−ピロリドンを78重量%、T−20Cを3重量%、水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を球状構造からなる中空糸膜表面に均一に塗布し、すぐに30重量%N−メチル−2−ピロリドン水溶液中で凝固させて球状構造層の上に三次元網目構造層を形成させた中空糸膜を作製した。
得られた中空糸膜は、外径1340μm、内径780μm、球状構造の平均直径2.8μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径18nm、三次元網目構造層の平均厚み35μm、球状構造層の平均厚み244μm、純水透過性能0.23m/m・hr、分子量7.5万のデキストラン除去率81%、強力7.9N、破断伸度87%であった。三次元網目構造は5μm以上のマクロボイドを有さなかった。
エアースクラビング耐久性評価を実施した結果、122日後にも糸切れは全く観察されなかった。従って、得られた中空糸膜は、物理的耐久性に優れ、デキストラン除去率も高いためウイルス除去用途に長期間使用できることが分かった。なお、評価結果を表1にまとめた。
<実施例5>
まず、実施例1と同様の方法で球状構造からなる中空糸膜を作製した。
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを12重量%、セルロースアセテート(イーストマンケミカル社、CA435−75S)を7.2重量%、N−メチル−2−ピロリドンを80.8重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を球状構造からなる中空糸膜表面に均一に塗布し、すぐに、水100%からなる凝固浴中で凝固させて球状構造層の上に三次元網目構造層を形成させた中空糸膜を作製した。
得られた中空糸膜は、外径1340μm、内径780μm、球状構造の平均直径2.8μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径20nm、三次元網目構造層の平均厚み35μm、球状構造層の平均厚み244μm、純水透過性能0.30m/m・hr、分子量7.5万のデキストラン除去率90%、強力7.0N、破断伸度55%であった。三次元網目構造は5μm以上のマクロボイドを有さなかった。
エアースクラビング耐久性評価を実施した結果、122日後にも糸切れは全く観察されなかった。従って、得られた中空糸膜は、物理的耐久性に優れ、デキストラン除去率も高いためウイルス除去用途に長期間使用できることが分かった。なお、評価結果を表1にまとめた。
<比較例1>
まず、実施例1と同様の方法で球状構造からなる中空糸膜を作製した。
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを16重量%、N−メチル−2−ピロリドンを78重量%、T−20Cを3重量%、水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を球状構造からなる中空糸膜表面に均一に塗布し、すぐに30重量%N−メチル−2−ピロリドン水溶液中で凝固させて球状構造層の上に三次元網目構造層を形成させた中空糸膜を作製した。
得られた中空糸膜は、外径1340μm、内径780μm、球状構造の平均直径2.8μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径56nm、三次元網目構造層の平均厚み34μm、球状構造層の平均厚み244μm、純水透過性能1.05m/m・hr、分子量7.5万のデキストラン除去率32%、強力8.0N、破断伸度84%であった。三次元網目構造は5μm以上のマクロボイドを有していなかった。得られた中空糸膜は、セルロースエステルを含有しないので、三次元網目構造層の表面の平均孔径が大きい膜であった。
エアースクラビング耐久性評価を実施した結果、122日後にも糸切れは全く観察されなかった。従って、得られた中空糸膜は、物理的耐久性に優れるが、デキストラン除去率が低いためウイルス除去用途に適さないことが分かった。なお、評価結果を表2にまとめた。
<比較例2>
まず、実施例1と同様の方法で球状構造からなる中空糸膜を作製した。
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを15重量%、セルロースアセテート(イーストマンケミカル社、CA435−75S)を1重量%、N−メチル−2−ピロリドンを78重量%、T−20Cを3重量%、水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を球状構造からなる中空糸膜表面に均一に塗布し、すぐに30重量%N−メチル−2−ピロリドン水溶液中で凝固させて球状構造層の上に三次元網目構造層を形成させた中空糸膜を作製した。
得られた中空糸膜は、外径1340μm、内径780μm、球状構造の平均直径2.7μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径41nm、三次元網目構造層の平均厚み35μm、球状構造層の平均厚み246μm、純水透過性能0.40m/m・hr、分子量7.5万のデキストラン除去率60%、強力8.1N、破断伸度85%であった。三次元網目構造は5μm以上のマクロボイドを有さなかった。得られた中空糸膜は、セルロースエステルのフッ素樹脂系高分子に対する混和比が低いので、三次元網目構造層の表面の平均孔径が大きい膜であった。
エアースクラビング耐久性評価を実施した結果、122日後にも糸切れは全く観察されなかった。
従って、得られた中空糸膜は、物理的耐久性には優れるが、デキストラン除去率が低いためウイルス除去用途に適さないことが分かった。なお、評価結果を表2にまとめた。
<比較例3>
まず、実施例1と同様の方法で球状構造からなる中空糸膜を作製した。
次いで、実施例1と同様の組成で高分子溶液を調製した。凝固浴を30重量%N−メチル−2−ピロリドン水溶液から水に代えた以外は、実施例1と同様にして球状構造層の上に三次元網目構造層を形成させた中空糸膜を作製した。
得られた中空糸膜は、外径1340μm、内径780μm、球状構造の平均直径2.8μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径16nm、三次元網目構造層の平均厚み38μm、球状構造層の平均厚み243μm、純水透過性能0.30m/m・hr、分子量7.5万のデキストラン除去率54%、強力8.0N、破断伸度85%であった。三次元網目構造は5μm以上のマクロボイドを有していた。得られた中空糸膜は、凝固浴が水であるために、5μm以上のマクロボイドを有する膜であった。
得られた中空糸膜の断面写真を図3に示す。また、表面写真を図4に示す。
エアースクラビング耐久性評価を実施した結果、122日後にも糸切れは全く観察されなかった。
従って、得られた中空糸膜は、物理的耐久性には優れるが、デキストラン除去率が低いためウイルス除去用途に適さないことが分かった。なお、評価結果を表2にまとめた。
<比較例4>
まず、実施例1と同様の方法で球状構造からなる中空糸膜を作製した。
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを11重量%、セルロースアセテート(イーストマンケミカル社、CA435−75S)を2重量%、N−メチル−2−ピロリドンを81重量%、T−20Cを3重量%、水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を球状構造からなる中空糸膜表面に均一に塗布し、すぐに30重量%N−メチル−2−ピロリドン水溶液中で凝固させて球状構造層の上に三次元網目構造層を形成させた中空糸膜を作製した。
得られた中空糸膜は、外径1340μm、内径780μm、球状構造の平均直径2.8μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径34nm、三次元網目構造層の平均厚み35μm、球状構造層の平均厚み245μm、純水透過性能0.34m/m・hr、分子量7.5万のデキストラン除去率52%、強力8.0N、破断伸度86%であった。三次元網目構造は5μm以上のマクロボイドを有さなかった。得られた中空糸膜は、高分子濃度が低いので、三次元網目構造層の表面の平均孔径が大きい膜であった。
エアースクラビング耐久性評価を実施した結果、122日後にも糸切れは全く観察されなかった。
従って、得られた中空糸膜は、物理的耐久性には優れるが、デキストラン除去率が低いためウイルス除去用途に適さないことが分かった。なお、評価結果を表2にまとめた。
<比較例5>
重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを14重量%、セルロースアセテート(イーストマンケミカル社、CA435−75S)を2重量%、N−メチル−2−ピロリドンを78重量%、T−20Cを3重量%、水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この高分子溶液を30重量%N−メチル−2−ピロリドン水溶液を中空部形成液体として随伴させながら口金から吐出し、温度40℃の30重量%N−メチル−2−ピロリドン水溶液中で固化して三次元網目構造のみからなる中空糸膜を作製した。
得られた中空糸膜は、外径1340μm、内径780μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径19nm、三次元網目構造層の平均厚み280μm、純水透過性能0.21m/m・hr、分子量7.5万のデキストラン除去率80%、強力2.0N、破断伸度28%であった。三次元網目構造は5μm以上のマクロボイドを有さなかった。得られた中空糸膜は、球状構造層を有さないので、強力、破断伸度が低い膜であった。
エアースクラビング耐久性評価を実施した結果、11日後に糸切れが観察され、20日後には数十本の糸切れが観察された。
従って、得られた中空糸膜は、デキストラン除去率は高いが、物理的耐久性が劣るためウイルス除去用途に適さないことが分かった。なお、評価結果を表2にまとめた。
<比較例6>
実施例1と同様の方法で球状構造からなる中空糸膜を作製した。この中空糸膜には、球状構造層の上に三次元網目構造層を形成させなかった。
得られた中空糸膜は、外径1340μm、内径780μm、球状構造の平均直径2.7μm、球状構造層の平均厚み280μm、純水透過性能2.02m/m・hr、分子量7.5万のデキストラン除去率10%、強力8.1N、破断伸度84%であった。
エアースクラビング耐久性評価を実施した結果、122日後にも糸切れは全く観察されなかった。
従って、得られた中空糸膜は、物理的耐久性には優れるが、デキストラン除去率が低いためウイルス除去用途に適さないことが分かった。なお、評価結果を表2にまとめた。
<比較例7>
非特許文献1に記載されたCP10−1010(東レ株式会社製、ポリアクリロニトリル製中空糸膜)を用いて行った。該膜は、三次元網目構造のみからなる膜であった。
該膜は、外径480μm、内径350μm、三次元網目構造層の表面の平均孔径10nm、三次元網目構造層の平均厚み65μm、純水透過性能0.18m/m・hr、分子量7.5万のデキストラン除去率80%、強力0.7N、破断伸度85%であった。三次元網目構造は5μm以上のマクロボイドを有さなかった。該膜は、ポリアクリロニトリル製であり、さらに球状構造層を有さないので、強力が低い膜であった。
エアースクラビング耐久性評価を実施した結果、50日後に糸切れが観察され、80日後には数十本の糸切れが観察された。
従って、得られた中空糸膜は、デキストラン除去率は高いが、物理的耐久性が劣るためウイルス除去用途に適さないことが分かった。なお、評価結果を表2にまとめた。
本発明のフッ素樹脂系高分子分離膜は、飲料水製造、浄水処理、排水処理などの水処理分野、医薬品製造分野、食品工業分野、血液浄化用膜分野に利用することができる。とりわけ、液体中のウイルス等の微少物の除去に好適に利用することができる。
本発明に係る実施例1の方法により製造した中空糸膜の断面写真である。 本発明に係る実施例1の方法により製造した中空糸膜の表面写真である。 比較例3の方法により製造した中空糸膜の断面写真である。 比較例3の方法により製造した中空糸膜の表面写真である。

Claims (10)

  1. 三次元網目構造と球状構造の両方を有するフッ素樹脂系高分子分離膜において、前記三次元網目構造が実質的に5μm以上のマクロボイドを含有せず、かつ、前記フッ素樹脂系高分子分離膜の分子量7.5万のデキストラン除去率が80%以上であることを特徴とするフッ素樹脂系高分子分離膜。
  2. 前記三次元網目構造がセルロースエステルを含有してなることを特徴とする請求項1記載のフッ素樹脂系高分子分離膜。
  3. セルロースエステルが酢酸セルロースであることを特徴とする請求項2に記載のフッ素樹脂系高分子分離膜。
  4. 球状構造の平均直径が0.1μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフッ素樹脂系高分子分離膜。
  5. 最表層に三次元網目構造を有してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフッ素樹脂系高分子分離膜。
  6. 50kPa、25℃における純水透過性能が0.10m/m・hr以上10m/m・hr以下、強力5N以上、かつ、破断伸度50%以上の中空糸膜であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフッ素樹脂系高分子分離膜。
  7. 三次元網目構造の層と球状構造の層とを有するフッ素樹脂系高分子分離膜を製造する際、フッ素樹脂系高分子及びセルロースエステルを含有する高分子溶液であって、該溶液中の総高分子濃度が14〜30重量%、フッ素樹脂系高分子に対するセルロースエステルの混和比が10〜50重量%である高分子溶液を、フッ素樹脂系高分子の良溶媒を含有する凝固浴中で凝固させて三次元網目構造の層を形成させることを特徴とするフッ素樹脂系高分子分離膜の製造方法。
  8. 三次元網目構造の層と球状構造の層とを有するフッ素樹脂系高分子分離膜を製造する際、フッ素樹脂系高分子及びセルロースエステルを含有する高分子溶液であって、該溶液中の総高分子濃度が14〜30重量%、フッ素樹脂系高分子に対するセルロースエステルの混和比が50〜75重量%である高分子溶液を、凝固浴中で凝固させて三次元網目構造の層を形成させることを特徴とするフッ素樹脂系高分子分離膜の製造方法。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載のフッ素樹脂系高分子膜を用いた膜モジュール。
  10. 請求項9記載の膜モジュールを用いた分離装置。
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