JP2006256519A - 油圧パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 車両の走行中に種々の外乱に起因して発生する進路変化を修正する修正操舵を、可及的に簡素な構成により、通常の操舵を阻害することなく可能とする油圧パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】 操舵補助用のパワーシリンダ2と油圧ポンプPとの間に、ピニオン軸11の中途に構成された油圧制御弁3と、操舵制御部6からの制御指令により駆動される電動モータ5により動作する電動制御弁4とを介装し、これらと油圧ポンプPとの間に第1の切換弁7を、同じくパワーシリンダ2との間に第2,第3の切換弁8,9を介装し、油圧制御弁3及び電動制御弁4の上流側の油圧の作用による第1の切換弁7の動作により、油圧制御弁3及び電動制御弁4と油圧ポンプPとの連通を、また油圧制御弁3及び電動制御弁4の下流側の油圧の作用による第2,第3の切換弁8,9の動作により、油圧制御弁3及び電動制御弁4とパワーシリンダ2との連通を選択的に切り換える構成とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 操舵補助用のパワーシリンダ2と油圧ポンプPとの間に、ピニオン軸11の中途に構成された油圧制御弁3と、操舵制御部6からの制御指令により駆動される電動モータ5により動作する電動制御弁4とを介装し、これらと油圧ポンプPとの間に第1の切換弁7を、同じくパワーシリンダ2との間に第2,第3の切換弁8,9を介装し、油圧制御弁3及び電動制御弁4の上流側の油圧の作用による第1の切換弁7の動作により、油圧制御弁3及び電動制御弁4と油圧ポンプPとの連通を、また油圧制御弁3及び電動制御弁4の下流側の油圧の作用による第2,第3の切換弁8,9の動作により、油圧制御弁3及び電動制御弁4とパワーシリンダ2との連通を選択的に切り換える構成とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、操舵部材の操作に応じてなされる車両の操舵を、操舵機構中に配したパワーシリンダの発生力により補助すべく構成された油圧パワーステアリング装置に関し、更に詳しくは、走行中の外乱による進路変更に対する修正操舵を可能とした油圧パワーステアリング装置に関する。
油圧パワーステアリング装置は、操舵機構中に配した複動式の油圧シリンダ(パワーシリンダ)が発生する油圧力により操舵を補助し、操舵部材としてのステアリングホィールの操作に要する運転者の労力負担を軽減して快適な操舵感覚を得ようとするものであり、前記パワーシリンダの両シリンダ室と、油圧源としての油圧ポンプ及び排油先としての油タンクとの間に、ステアリングホイールに加わる操舵トルクの方向及び大きさに応じて油圧の給排制御を行う油圧制御弁を介装して構成されている。
前記油圧制御弁としては、操舵部材としてのステアリングホイールと操舵機構とを連結する連結軸の回転を直接的に利用するロータリ式の油圧制御弁が一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。この油圧制御弁は、前記連結軸をトーションバーを介して同軸に連結された2軸に分割し、一方の連結端に係合された筒形のバルブボディーの内側に他方の連結端部に一体に形成したバルブスプールを嵌め合わせ、ステアリングホイールに操舵トルクが加えられたとき、トーションバーの捩れを伴ってバルブボディーとバルブスプールとの間に相対角変位を生ぜしめる構成となっている。
バルブボディーとバルブスプールとの嵌合周(前者の内周と後者の外周)上には、軸長方向に延びる各複数の油溝が周方向に千鳥配置されている。これらの油溝の夫々は、油圧源及び排油先に夫々連なる給油溝及び排油溝と、給油溝の両側にて排油溝との間に夫々位置し、送油先となるパワーシリンダの両シリンダ室に各別に連なる一対の送油溝とを構成しており、各油溝間には、前記相対角変位に応じて絞り面積を変える絞り部が形成されている。
以上の構成により、ステアリングホイールに操舵トルクが加えられた場合、バルブスプールとバルブボディーとの嵌合周上に並ぶ絞り部の絞り面積が変化し、油圧源から給油溝に供給される作動油は、絞り面積を増した側の絞り部を経て一方の送油溝に導入され、該送油溝に連通された一方のシリンダ室と他方の送油溝に連通された他方のシリンダ室との間に圧力差が生じ、この圧力差に応じてパワーシリンダが発生する油圧力が操舵機構に加えられて操舵が補助される。また、この動作により他方のシリンダ室から押し出される作動油は、他方の送油溝に還流し、この送油溝の一側にて絞り面積を増した絞り部を経て排油溝に導入され、排油先に排出される。
特開平8−239052号公報
さて、車両の走行中には、例えば、滑り易い路面の走行時に発生する車輪のスリップ、不整地走行時に車輪に加わる路面反力、車体に加わる横風等、操舵に影響を及ぼす種々の外乱が作用し、予期せぬ進路変化が生じることがある。このような場合、運転者は、ステアリングホイールの操作により進路変化を相殺するための修正操舵を強いられる。
例えば、急旋回時に車輪のスリップに起因して発生するスピンを抑えるためには、車体がスピンしている方向へのステアリングホイールの操作、所謂、カウンターステアが必要となるが、これは、未熟な運転者にとって違和感を伴う困難な操作である。また横風の作用による進路変化の修正には、微細なステアリング操作の繰り返しを強いられることとなり、運転疲労の原因となる
ここで、操舵補助力の発生源として電動モータを用い、ステアリングホイールに加えられる操舵トルクをトルクセンサにより検出し、この検出トルクに基づくアシスト制御部の動作により操舵補助用の電動モータを駆動する構成とした電動パワーステアリング装置においては、電動モータが発生する操舵補助力と前記検出トルクとの対応関係を自在に変更可能であり、検出トルクの如何、即ち、ステアリングホイールの操作の如何に拘らず電動モータを駆動することにより外乱の発生時における前述した修正操舵を自動的に行わせることも可能である。
しかしながら、前述の如く構成された従来の油圧パワーステアリング装置においては、パワーシリンダの作動油を給排制御する油圧制御弁が、ステアリングホイールに加わる操舵トルクによるトーションバーの捩れを利用した機械的な動作をなす弁であることから、ステアリングホイールの操作なしに操舵を行わせることはできず、外乱発生時における修正操舵への対応は難しい。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、車両の走行中に種々の外乱に起因して発生する進路変化を修正する修正操舵を、可及的に簡素な構成により、通常の操舵を阻害することなく可能とする油圧パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
本発明の第1発明に係る油圧パワーステアリング装置は、車両の操舵機構に操舵補助力を加えるパワーシリンダと、該パワーシリンダと油圧源との間に介装され、前記操舵機構と操舵部材との連結軸の中途に構成された油圧制御弁とを備え、前記操舵部材の操作に応じた前記油圧制御弁の動作により、前記油圧源から送給される作動油を前記パワーシリンダに給排する油圧パワーステアリング装置において、前記油圧制御弁に並設された電動制御弁と、該電動制御弁及び前記油圧制御弁と前記油圧源との間に介装してあり、前記電動制御弁及び油圧制御弁の上流側の油圧の作用により動作し、前記電動制御弁又は油圧制御弁と前記油圧源との連通を選択的に切り換える第1の切換弁と、前記電動制御弁及び前記油圧制御弁と前記パワーシリンダとの間に介装してあり、前記電動制御弁及び油圧制御弁の下流側の油圧の作用により動作し、前記電動制御弁又は油圧制御弁と前記パワーシリンダの両シリンダ室との連通を選択的に切り換える第2,第3の切換弁と、前記車両の走行状態の検出結果に基づいて前記電動制御弁を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
また本発明の第2発明に係る油圧パワーステアリング装置は、第1発明における電動制御弁が、前記操舵機構に機械的に連結してあることを特徴とする。
本発明の第1発明に係る油圧パワーステアリング装置においては、操舵部材の操作に応じた油圧制御弁の動作と、制御手段により制御される電動制御弁の動作と、これらの動作により発生する油圧の作用による第1〜第3の切換弁の切換動作とによりパワーシリンダも作動油が独立して給排されるから、電動制御弁により給排される作動油により、外乱に起因する進路変化を修正する修正操舵を、電動制御弁に対する制御のみにより、操舵部材の操作による通常の操舵を阻害することなく行わせることが可能となる。
また第2発明に係る油圧パワーステアリング装置においては、操舵機構に機械的に連結された電動制御弁の動作が、前記操舵機構による拘束下にて生じるから、該電動制御弁又は制御手段のフェイル発生時における誤った修正操舵を、操舵部材の操作による操舵機構への入力により防止することが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る油圧パワーステアリング装置の全体構成を示すブロック図である。なお本図には、操舵部材としてのステアリングホイール1と、該ステアリングホイール1にステアリング軸10を介して連結されたピニオン軸11と、該ピニオン軸11の下端に設けたピニオン12と、該ピニオン12に噛合され、車体の左右方向に延設されたラック軸13とを備え、ステアリングホイール1の操作に応じたピニオン軸11の回動を、ピニオン12と噛合するラック軸13の軸長方向の移動に変換し、この移動を、ラック軸13の両端に各別のタイロッド14,14を介して連結された左右の操舵用の車輪15,15に伝えて操舵を行わせるようにした公知のラックピニオン式の操舵機構を備える車両への適用例が示されているが、以下に述べる本発明の特徴的な構成は、ラックピニオン式以外の形式の操舵機構を備える車両への適用も可能であることは言うまでもない。
本発明に係る油圧パワーステアリング装置は、ラック軸13の中途に復動式の油圧シリンダとして構成された操舵補助用のパワーシリンダ2と、該パワーシリンダ2の作動油圧の発生源としての油圧ポンプP及び排油先としての油タンクTと、これらの間に介装され、ピニオン軸11の中途に構成された油圧制御弁3とを備えている。
図2は、油圧制御弁3の構成を示す縦断面図である。ピニオン軸11は、トーションバー30を介して同軸上に連結された入力軸 11aと出力軸 11bとに分割構成され、筒形をなすピニオンハウジングH1 の内部に回転自在に支持されている。入力軸 11aの上端は、ピニオンハウジングH1 の外側に突出され、ステアリングホイール1に前述の如く連結されている。ピニオンハウジングH1 の下半部には、前記ラック軸13を支承するラックハウジングHが連設されており、出力軸 11bの下半部に形成された前記ピニオン12は、ラックハウジングHとの連設部においてラック軸13に噛合されている。
油圧制御弁3は、出力軸 11bと一体回転可能に連結され、ピニオンハウジングH1 の該当部位に同軸上での回転自在に保持された円筒形のバルブボディー31と、該バルブボディー31の内側への入力軸 11aの嵌合部に一体に形成されたバルブスプール32とを備え、両者の嵌合周上に、トーションバー30の捩れを伴って生じる相対角変位に応じて絞り面積を変える複数の可変絞りを並設してなる公知の構成を有している。
このように構成された油圧制御弁3は、ピニオンハウジングH1 を内外に貫通するポンプポート33及びタンクポート34を介して油圧ポンプP及び油タンクTに後述の如く接続され、同じくシリンダポート35,36を介してパワーシリンダ2のシリンダ室SL ,SR に後述の如く接続されており、油ポンプPから送給される作動油を、バルブボディー31とバルブスプール32との相対角変位に応じた可変絞りの絞り面積の変化に応じて一方のシリンダ室SL (又はSR )に選択的に送り出し、他方のシリンダ室SR (又はSL )から還流する作動油を油タンクTに排出させる給排動作をなす。このような作動油の給排によりパワーシリンダ2は、シリンダ室SL ,SR 間に生じる圧力差に応じた油圧力を発生し、この油圧力がラック軸13に加えられる。
本発明に係る油圧パワーステアリング装置は、以上の如く機械的な給排動作をなす油圧制御弁3と共に、電動アクチュエータにより動作する電動制御弁4を備えている。この電動制御弁4は、図1に示す如く、ピニオン軸11に並設された第2ピニオン軸16の中途に構成されている。第2ピニオン軸16の下部には、ラック軸13の中途に噛合する第2ピニオン17が設けられ、また第2ピニオン軸16の上部には、電動アクチュエータとしての電動モータ5が後述の如く構成されている。
図3は、電動制御弁4の構成を示す縦断面図である。第2ピニオン軸16は、ピニオン軸11と同様に、トーションバー40を介して同軸上に連結された上部軸 16aと下部軸 16bとに分割構成され、筒形をなす第2ピニオンハウジングH2 の内部に回転自在に支持されている。第2ピニオンハウジングH2 の下半部には、前記ラック軸13を支承するラックハウジングHが連設されており、下部軸 16bの下半部に形成された第2ピニオン17は、ラックハウジングHとの連設部においてラック軸13に噛合されている。なお. 第2ピニオン17と噛合するラック歯は、前記ピニオン12と噛合すべくラック軸13に形成されたラック歯と兼用することができるが、ピニオン12が噛合するラック歯と第2ピニオン17が噛合するラック歯とを、ラック軸13の異なる部位に別体に設けることも可能である。
一方、上部軸 16aの上半部は、オイルシール18により液密に封止して第2ピニオンハウジングH2 の上部に延長されている。この延長部には、外周に複数のマグネットを固着してロータ50が一体構成されており、また第2ピニオンハウジングH2 には、ロータ50の外側に面してステータコイル51が内嵌固定されており、該ステータコイル51への通電によりロータ50に回転力を発生する電動モータ5が構成されている。該電動モータ5が発生する回転力は、ロータ50が固定された上部軸 16aに加えられる。
電動制御弁4は、下部軸 16bと一体回転可能に連結され、第2ピニオンハウジングH2 の該当部位に同軸上での回転自在に保持された円筒形のバルブボディー41と、該バルブボディー41の内側への上部軸 16aの嵌合部位に一体に形成されたバルブスプール42とを備えている。バルブボディー41とバルブスプール42との嵌合周上には、油圧制御弁3におけると同様に、トーションバー40の捩れを伴って生じる相対角変位に応じて絞り面積を変える複数の可変絞りが並設されている。
このように構成された電動制御弁4は、第2ピニオンハウジングH2 を内外に貫通するポンプポート43及びタンクポート44を介して油圧ポンプP及び油タンクTに、同じくシリンダポート45,46を介してパワーシリンダ2のシリンダ室SL ,SR に、夫々後述の如く接続されており、前記油圧制御弁3におけると同様に、油タンクPから送給される作動油を、バルブボディー41とバルブスプール41との相対角変位に応じた可変絞りの絞り面積の変化に応じてパワーシリンダ2のシリンダ室SL 又はSR に選択的に送り出し、他方のシリンダ室SR 又はSL から還流する作動油を油タンクTに排出させる給排動作をなす。この給排動作によりパワーシリンダ2は、シリンダ室SL ,SR 間に生じる圧力差に応じた油圧力を発生し、この油圧力がラック軸13に加えられる。
以上の如く本発明に係る油圧パワーステアリング装置においては、油圧制御弁3及び電動制御弁4による作動油の給排動作によりパワーシリンダ2が油圧力を発生する。ここで油圧制御弁3による給排動作は、ステアリングホイール1の操作に応じてピニオン軸11に加えられる操舵トルクの作用により、バルブボディー31とバルブスプール32との間に発生する相対角変位に応じて生じる。これに対し電動制御弁4による給排動作は、電動モータ5が発生する回転力が上部軸 16aを介してバルブスプール42に加えられ、該バルブスプール42がトーションバー40の捩れを伴ってバルブボディー41に対して相対角変位することにより生じる。
従って、油圧制御弁3の動作によって作動油が給排される場合、パワーシリンダ2は、運転者によりステアリングホイール1に加えられる操舵トルクの方向に、この操舵トルクに対応する大きさの油圧力を発生し、この油圧力が、ステアリングホイール1の操作による操舵を補助するための操舵補助力としてラック軸13に加えられる。一方、電動制御弁4の動作によって作動油が給排される場合、パワーシリンダ2は、アクチュエータとしての電動モータ5が発生する回転力の方向に、この回転力に対応する油圧力を発生する。この油圧力は、ステアリングホイール1の操作に対して独立して発生させることができる。
電動モータ5は、マイクロプロセッサを用いてなる操舵制御部6から駆動回路60を介して与えられる制御指令に応じて回転駆動される。操舵制御部6には、車両の適宜部位に配した走行状態センサ61から、車速、横加速度、ヨーレート等、操舵に影響を及ぼす走行状態の検出結果が、またステアリング軸10の中途に配したトルクセンサ62から、ステアリングホイール1に加えられる操舵トルクの検出値が、更に、操舵機構に配した舵角センサ63及び軸力センサ64から、操舵機構の動作により実現されている実舵角及び操舵機構に加わる外力の検出値が夫々与えられている。
操舵制御部6は、走行状態センサ61から与えられる走行状態の検出結果、及び舵角センサ63及び軸力センサ64から与えられる操舵状態の検出結果を用い、横風、スリップ等の外乱による進路変化を予測演算して、この進路変化を相殺するために必要な電動モータ5の回転方向及び回転力を求め、求められた回転力を発生すべく電動モータ5に制御指令を発する動作をなす。この制御指令に従って電動モータ5が駆動された場合、電動制御弁4が前述の如く動作し、この動作により給排される作動油によりパワーステアリング2が発生する油圧力がラック軸13に加えられ、操舵用の車輪15,15が修正操舵される。なお、トルクセンサ62、舵角センサ63及び軸力センサ64による検出値は、制御指令の補正、電動モータ5の駆動により生じる修正操舵のフィードバック信号として用いられる。
このような修正操舵のために電動制御弁4の動作による作動油の給排は、ステアリングホイール1の操作に応じた油圧制御弁3の動作による作動油の給排と共に、単一の油圧ポンプPを共通の油圧発生源とし、ラック軸13の中途に構成されたパワーシリンダ2を共通の送油先としてなされる。本発明に係る油圧パワーステアリング装置においては、油圧制御弁3と電動制御弁4とによる作動油の給排の干渉を避けるべく、油圧ポンプPと油圧制御弁3及び電動制御弁4とを連絡する油路の中途に第1の切換弁7が介装され、またパワーシリンダ2の両シリンダ室SL ,SR と油圧制御弁3及び電動制御弁4とを連絡する油路の中途に第2,第3の切換弁8,9が夫々介装されている。
図4〜図6は、第1〜第3の切換弁7〜9の構成及び動作説明のための油圧回路図である。第1の切換弁7は、筒形をなすハウジング70の空洞部内に軸長方向への摺動自在に嵌挿されたバルブスプール71を備えている。バルブスプール71は、軸長方向の中央及び両側を大径としてなる3つのランド72,73,74を備えており、両側のランド73,74の端面に弾接する中立ばね75,76のばね力により、図4に示す中立位置に位置決めされている。
ハウジング70の内面には、バルブスプール71が中立位置にあるとき、中央のランド72の両側に略等しい幅のギャップを介して連通する環状溝が周設されており、この環状溝の内部に給油口77が開設され、また前記環状溝の両側に2つの送油口78,79が夫々開設されている。
以上の如く構成された第1の切換弁7は、油圧ポンプPからの送油路を給油口77に接続し、また油圧制御弁3のポンプポート33を一方の送油口78に、電動制御弁4のポンプポート43を他方の送油口79に夫々接続して、油圧ポンプPと油圧制御弁3及び電動制御弁4との間に介装されている。
第2,第3の切換弁8,9は、互いに同一の構成を有しており、第1の切換弁7と同様に、筒形をなすハウジング80又は90の空洞部内に軸長方向への摺動自在に嵌挿されたバルブスプール81又は91を備えている。バルブスプール81,91は、軸長方向の両側に振り分けて形成された各2つのランド82,83又は92,93を備えており、一方のランド82又は92の端面に弾接する付勢ばね84又は94のばね力により他方のランド83又は93の側に向けて付勢され、図4に示す如く、ハウジング80又は90の同側端面に押し付けられた初期位置に位置決めされている。
ハウジング80又は90の内面には、前記初期位置にある2つのランド82,83間、又はランド92,93間に適宜のギャップを介して連通する環状溝が周設されており、これらの環状溝の内部に送油口85又は95が開設され、また前記環状溝の両側に2つの給排油口86,87又は96,97が夫々開設されている。
以上の如く構成された第2の切換弁8は、油圧制御弁3のシリンダポート35を給排油口86に、電動制御弁4のシリンダポート45を給排油口87に夫々接続し、またパワーシリンダ2の一方のシリンダ室SL を送油口85に接続して、油圧制御弁3及び電動制御弁4とパワーシリンダ2との間に介装されている。また第3の切換弁9は、油圧制御弁3のシリンダポート36を給排油口96に、電動制御弁4のシリンダポート46を給排油口97に夫々接続し、またパワーシリンダ2の他方のシリンダ室SR を送油口95に接続して、油圧制御弁3及び電動制御弁4とパワーシリンダ2との間に介装されている。
図4には、油圧制御弁3及び電動制御弁4が動作していない状態が示されている。このとき油圧ポンプPから第1の切換弁7に送給される作動油は、給油口77を経て中央のランド72の両側に略均等に分配されて導入されることとなり、該ランド72の両側に圧力差は発生せず、バルブスプール71は、中立ばね75,76により設定される中立位置を維持し、前記作動油は、送油口78,79を経て油圧制御弁3及び電動制御弁4の双方に送給される。
ここで非動作状態にある油圧制御弁3においては、バルブボディー31とバルブスプール32との嵌合周上に並ぶ可変絞りの絞り面積が生じておらず、ポンプポート33に送給される作動油は、油圧制御弁3の内部を通ってタンクポート34から送出され、油タンクTに排油される。このとき油圧制御弁3のシリンダポート35,36間に圧力差は発生せず、これらに第2,第3の切換弁8,9を介して夫々接続されたパワーシリンダ2のシリンダ室SL ,SR 間にも圧力差は生じず、パワーシリンダ2は油圧力を発生しない。
一方、非動作状態にある電動制御弁4においても全く同様の作動油の流れが生じる。このときシリンダポート45,46に発生する油圧は、給排油口87,97を経て第2,第3の切換弁8,9に導入され、夫々のバルブスプール81,91のランド83,93を付勢ばね84,94のばね力に抗して押圧するが、これらの作用油圧は小さく、第2,第3の切換弁8,9は、図4に示す初期位置を保つ。
図5には、ステアリングホイール1が左方向に回転操作された状態が示されている。このとき油圧制御弁3が動作し、バルブボディー31とバルブスプール32との相対角変位に応じて可変絞りの絞り面積が変化する。これにより油圧制御弁3の上流側の油圧が上昇し、上流側に位置する第1の切換弁7においては、送油口78を介して加わる油圧が中央のランド72の左側に作用し、図中に白抜矢符にて示す如く、バルブスプール71が右側の中立ばね76のばね力に抗して右向きに移動することとなり、右側の送油口79と給油口77との連通が中央のランド72により遮断される。
従って油圧ポンプPから送給される作動油は、図中に矢符により示す如く、送油口78を経て油圧制御弁3に全量が送り込まれ、該油圧制御弁3の内部にて前述の如く生じる可変絞りの絞り面積の変化に応じてシリンダポート35,36間に圧力差が発生する。ステアリングホイール1が左操作されている場合、シリンダポート35の側に高圧が発生し、このシリンダポート35に第2の切換弁8を介して接続されたパワーシリンダ2のシリンダ室SL の内圧が高くなり、パワーシリンダ2は、他方のシリンダ室SR との間に生じる圧力差に応じた油圧力を発生し、この油圧力が、ステアリングホイール1の操作による操舵を補助するための操舵補助力として、図中に白抜矢符にて示す如くラック軸13に加えられる。
またこの動作により他方のシリンダ室SR から押し出される作動油は、第2の切換弁9に送油口95を経て導入され、図中に矢符にて示す如く、給排油口96を経て油圧制御弁3のシリンダポート36に還流されて、油タンクTに排油される。なお以上の動作中、電動制御弁4は非動作状態にあるため、シリンダポート45,46を経て第2,第3の切換弁8,9に導入される油圧は低く、夫々のバルブスプール81,91は、前述した初期位置を保った状態にある。
ステアリングホイール1が右方向に操作された場合には、油圧制御弁3の動作によりシリンダポート36の側に高圧が発生し、このシリンダポート36に第2の切換弁9を介して接続されたシリンダ室SR の内圧が高くなり、パワーシリンダ2は、シリンダ室SR からシリンダ室SL に向かう操舵補助力を発生する。
本発明に係る油圧パワーステアリング装置においては、ステアリングホイール1の操作に応じた以上の動作により、左右両方向の操舵補助がなされる。この操舵補助は、第1の切換弁7の切換え動作により、油圧ポンプPから送給される作動油の全量を用いてなされるから、電動制御弁4を備えていない一般的な油圧パワーステアリング装置と同等の力及び速度での操舵補助が行える。
図6には、電動モータ5が右操舵の方向に駆動された状態が示されており、この場合、電動制御弁4が前述の如く動作し、バルブボディー41とバルブスプール42との相対角変位に応じて可変絞りの絞り面積が変化する。この動作により電動制御弁4の上流側の油圧が上昇する結果、第1の切換弁7においては、バルブスプール71が、図中に白抜矢符にて示す如く、送油口79を介して加わる油圧の作用により左側の中立ばね75のばね力に抗して左向きに移動し、右側の送油口78と給油口77との連通が遮断される。
従って油圧ポンプPから送給される作動油は、図中に矢符により示す如く、送油口79を経て動作状態にある電動制御弁4に全量が送り込まれ、該電動制御弁4の内部にて前述の如く生じる絞り面積の変化に応じてシリンダポート45,46間に圧力差が発生する。電動モータ5が右操舵の方向に駆動されている場合、シリンダポート46の側に高圧が発生し、この高圧の作動油が、図中に矢符により示す如く、給排油口97を経て第2の切換弁9に導入され、バルブスプール91のランド93に作用する。
これによりバルブスプール91は、図中に白抜矢符にて示す如く、付勢ばね94のばね力に抗して左向きに移動し、給排油口97が送油口95に連通され、前記高圧の作動油は、送油口95を経てパワーシリンダ2のシリンダ室SR に送り込まれ、パワーシリンダ2は、他方のシリンダ室SL との間に生じる圧力差に応じた油圧力を発生し、この油圧力が、図中に白抜矢符にて示す如くラック軸13に加わえられる。なおこの動作により他方のシリンダ室SL から押し出される作動油は、第1の切換弁8に送油口85を経て導入され、図中に矢符にて示す如く、給排油口86を経て油圧制御弁3のシリンダポート35に還流されて、油タンクTに排油される。
電動モータ5が、左操舵の方向に駆動された場合には、電動制御弁4の動作によりシリンダポート45の側に高圧が発生し、このシリンダポート45に接続された第1の切換弁8において切換動作がなされ、高圧の作動油の導入によりシリンダ室SL の内圧が高くなり、パワーシリンダ2は、シリンダ室SL からシリンダ室SR に向かう油圧力がラック軸13に加えられる。
以上の如くラック軸13に加えられる油圧力は、電動モータ5の駆動に応じた電動制御弁4の動作によりステアリングホイール1の操作によらずに生じるものであり、また電動モータ5は、操舵制御部6の前述した動作により、車両走行中の外乱による進路変化を相殺すべく駆動されるから、前記油圧力の作用による操舵により、種々の進路変化に対する修正操舵を自動的に行わせることができる。
またこのような修正操舵は、第1の切換弁7の切換え動作により、油圧制御弁3への作動油の送給を遮断して行われるから、油圧制御弁3の動作と干渉することなく生じ、ステアリングホイール1を操作する運転者に違和感を与える虞れがない。第1の切換弁7の切換え動作は、電動制御弁4の動作に応じて上流側に発生する油圧の作用によりなされるから、修正操舵のために操舵制御部6は、電動モータ5を駆動制御する動作のみを行えばよく、ステアリングホイール1の操作に干渉しない修正操舵を、簡素な構成にて確実に行わせることができる。
また電動制御弁4は、第2ピニオン17によりラック軸13に噛合する第2ピニオン軸16の中途に構成され、操舵機構に機械的に連結されているから、電動制御弁4の動作は、ラック軸13を備える操舵機構による拘束下にて生じることとなり、電動制御弁4又は操舵制御部7のフェイル発生時に無用な修正操舵がなされる虞れを、ステアリングホイール1の操作による操舵機構への入力により防止することができる。
1 ステアリングホイール(操舵部材)
2 パワーシリンダ
3 油圧制御弁
4 電動制御弁
6 操舵制御部(制御手段)
7 第1の切換弁
8 第2の切換弁
9 第3の切換弁
P 油圧ポンプ(油圧源)
SL ,SR シリンダ室
2 パワーシリンダ
3 油圧制御弁
4 電動制御弁
6 操舵制御部(制御手段)
7 第1の切換弁
8 第2の切換弁
9 第3の切換弁
P 油圧ポンプ(油圧源)
SL ,SR シリンダ室
Claims (2)
- 車両の操舵機構に操舵補助力を加えるパワーシリンダと、該パワーシリンダと油圧源との間に介装され、前記操舵機構と操舵部材との連結軸の中途に構成された油圧制御弁とを備え、前記操舵部材の操作に応じた前記油圧制御弁の動作により、前記油圧源から送給される作動油を前記パワーシリンダに給排する油圧パワーステアリング装置において、
前記油圧制御弁に並設された電動制御弁と、
該電動制御弁及び前記油圧制御弁と前記油圧源との間に介装してあり、前記電動制御弁及び油圧制御弁の上流側の油圧の作用により動作し、前記電動制御弁又は油圧制御弁と前記油圧源との連通を選択的に切り換える第1の切換弁と、
前記電動制御弁及び前記油圧制御弁と前記パワーシリンダとの間に介装してあり、前記電動制御弁及び油圧制御弁の下流側の油圧の作用により動作し、前記電動制御弁又は油圧制御弁と前記パワーシリンダの両シリンダ室との連通を選択的に切り換える第2,第3の切換弁と、
前記車両の走行状態の検出結果に基づいて前記電動制御弁を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする油圧パワーステアリング装置。 - 前記電動制御弁は、前記操舵機構に機械的に連結してある請求項1記載の油圧パワーステアリング装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005078119A JP2006256519A (ja) | 2005-03-17 | 2005-03-17 | 油圧パワーステアリング装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005078119A JP2006256519A (ja) | 2005-03-17 | 2005-03-17 | 油圧パワーステアリング装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2006256519A true JP2006256519A (ja) | 2006-09-28 |
Family
ID=37096206
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2005078119A Pending JP2006256519A (ja) | 2005-03-17 | 2005-03-17 | 油圧パワーステアリング装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2006256519A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013132961A (ja) * | 2011-12-26 | 2013-07-08 | Jtekt Corp | 油圧式パワーステアリング装置 |
US20210300463A1 (en) * | 2020-03-27 | 2021-09-30 | Jtekt Corporation | Steering control device |
WO2023184737A1 (zh) * | 2022-04-02 | 2023-10-05 | 全兴精工集团有限公司 | 双源电机泵 |
-
2005
- 2005-03-17 JP JP2005078119A patent/JP2006256519A/ja active Pending
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