JP2006255540A - 金属材料の塗装方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属材料の表面に、ZrおよびTiから選ばれる少なくとも1種の金属元素(A)の酸化物および/または水酸化物を含有する非晶質の表面処理皮膜層を析出させる表面処理を施す表面処理工程と、前記表面処理工程後、前記表面処理皮膜層上に粉体塗装または固体潤滑塗装を行う塗装工程とを具備する金属材料の塗装方法。
【選択図】なし
Description
粉体塗装は、いずれの方法も、一般の溶剤塗装と比較して膜厚が格段に厚くなるという特徴を有している。また、膜厚が厚く、かつ、塗料が粉体であるために、平滑な塗装外観を得るためには、塗装後に高温で長時間焼き付ける必要がある。
例えば、特許文献1には、シランカップリング剤水溶液を用いたリン酸亜鉛処理の後処理方法が記載されている。また、特許文献2には、Cuを含有する水溶液でリン酸亜鉛処理後に後処理を行う方法が記載されている。また、特許文献3には、水と、フルオロ金属酸アニオンと、リン酸塩アニオンと、2価又は4価の金属カチオンと、ポリヒドロキシルアミノメチル置換のビニルフェノールポリマーとを含有する後処理液が記載されている。
しかしながら、上述したいずれの方法においても、6価クロムを使用しない後処理でリン酸亜鉛処理皮膜の塗装後の耐食性や密着性が改善されるが、粉体塗装や固体潤滑塗装の場合の密着性および耐食性を改善するものではなかった。
しかしながら、塗装下地処理としてリン酸亜鉛処理皮膜を用いている限り、高温焼き付け時のリン酸亜鉛皮膜結晶からの脱水反応による皮膜破壊は避けられず、根本的な原因を解決するには至っていない。また、特許文献4中に記載はないが、固体潤滑塗装に上記方法を適用した場合には、塗装後の使用環境下において塗膜表面が高面圧、高加重、更には高温下にさらされるため、下地であるリン酸亜鉛皮膜結晶の破壊が起こり、塗膜のはく離が生じることがある。
しかしながら、リン酸鉄皮膜は、塗装後の耐食性がリン酸亜鉛皮膜よりも著しく低いため、塗装後の製品の使用場所が室内に限られる場合が多い。
しかしながら、いずれの処理方法も塗装下地処理用のリン酸亜鉛処理と比較すると耐食性に劣り、密着性に関しても改良の余地を残している。
(1)金属材料の表面に、ZrおよびTiから選ばれる少なくとも1種の金属元素(A)の酸化物および/または水酸化物を含有する非晶質の表面処理皮膜層を析出させる表面処理を施す表面処理工程と、
前記表面処理工程後、前記表面処理皮膜層上に粉体塗装を行う塗装工程と
を具備する金属材料の塗装方法。
(2)前記表面処理工程において、前記金属元素(A)と、フッ素(B)と、MgおよびAlの少なくとも1種の金属元素(C)とを含有し、前記金属元素(A)の濃度が5〜5000ppmであり、前記金属元素(A)に対する前記フッ素(B)のモル濃度の比が6以上であり、前記フッ素(B)に対する前記金属元素(C)のモル濃度の比が0.3〜30である水溶液を、前記金属材料の前記表面に接触させることにより、前記表面処理皮膜層を析出させる上記(1)に記載の金属材料の塗装方法。
(3)前記金属材料が鉄系材料であり、前記金属元素(A)の酸化物および/または水酸化物の付着量が、前記金属元素(A)として20mg/m2以上である上記(1)または(2)に記載の金属材料の塗装方法。
(4)金属材料の表面に、ZrおよびTiから選ばれる少なくとも1種の金属元素(A)の酸化物および/または水酸化物を含有する非晶質の表面処理皮膜層を析出させる表面処理を施す表面処理工程と、
前記表面処理工程後、前記表面処理皮膜層上に固体潤滑塗装を行う塗装工程と
を具備する金属材料の塗装方法。
(5)前記表面処理工程において、前記金属元素(A)と、フッ素(B)と、MgおよびAlの少なくとも1種の金属元素(C)とを含有し、前記金属元素(A)の濃度が5〜5000ppmであり、前記金属元素(A)に対する前記フッ素(B)のモル濃度の比が6以上であり、前記フッ素(B)に対する前記金属元素(C)のモル濃度の比が0.3〜30である水溶液を、前記金属材料の前記表面に接触させることにより、前記表面処理皮膜層を析出させる上記(4)に記載の金属材料の塗装方法。
(6)前記金属材料が鉄系材料であり、前記金属元素(A)の酸化物および/または水酸化物の付着量が、前記金属元素(A)として20mg/m2以上である上記(4)または(5)に記載の金属材料の塗装方法。
本発明の金属材料の塗装方法の第1の態様は、金属材料の表面に、ZrおよびTiから選ばれる少なくとも1種の金属元素(A)の酸化物および/または水酸化物を含有する非晶質の表面処理皮膜層を析出させる表面処理を施す表面処理工程と、前記表面処理工程後、前記表面処理皮膜層上に粉体塗装を行う塗装工程とを具備する金属材料の塗装方法である。
また、本発明の金属材料の塗装方法の第2の態様は、金属材料の表面に、ZrおよびTiから選ばれる少なくとも1種の金属元素(A)の酸化物および/または水酸化物を含有する非晶質の表面処理皮膜層を析出させる表面処理を施す表面処理工程と、前記表面処理工程後、前記表面処理皮膜層上に固体潤滑塗装を行う塗装工程とを具備する金属材料の塗装方法である。
表面処理工程は、本発明の第1の態様と第2の態様とで共通である。
表面処理工程は、金属材料の表面に、ZrおよびTiから選ばれる少なくとも1種の金属元素(A)の酸化物および/または水酸化物を含有する非晶質の表面処理皮膜層を析出させる表面処理を施す工程である。
金属材料は、特に限定されないが、好ましくは、鉄系材料である。鉄系材料としては、例えば、冷延鋼板、熱間圧延鋼板等の鋼板;棒綱、形綱、綱帯、鋼管、線材、鋳鍛造品、軸受綱のような特殊用途綱が挙げられる。
また、金属材料は、亜鉛系材料、アルミニウム系材料、マグネシウム系材料等であってもよい。
亜鉛系材料としては、例えば、亜鉛ダイキャスト、亜鉛含有めっきを施された材料が挙げられる。亜鉛含有めっきを施された材料とは、亜鉛、または、亜鉛と他の金属、例えば、ニッケル、鉄、アルミニウム、マンガン、クロム、マグネシウム、コバルト、鉛、アンチモン等の少なくとも1種との合金と、不可避不純物とによりめっきされた材料である。めっき方法、例えば、溶融めっき、電気めっき、蒸着めっき等は、限定されない。
アルミニウム系材料としては、例えば、5000系アルミニウム合金、6000系アルミニウム合金等のアルミニウム合金板材;ADC−12に代表されるアルミニウム合金ダイキャストが挙げられる。
マグネシウム系材料としては、例えば、マグネシウム合金を用いた板材、ダイキャストが挙げられる。
上記水溶液と被処理金属材料とを接触させると、被処理金属材料の表面で化学反応が起こることによって、被処理金属材料の表面にZrおよびTiから選ばれる少なくとも1種の金属元素(A)の酸化物および/または水酸化物を含有する非晶質の表面処理皮膜層が析出する。
上記水溶液に用いられるTiの供給源は、可溶性のチタン化合物、または、何らかの酸成分を加えることによって水溶化が可能なチタン化合物であれば特に限定されない。例えば、TiCl4、Ti(SO4)2、TiOSO4、Ti(NO3)、TiO(NO3)2、TiO2OC2O4、H2TiF6、H2TiF6の塩、TiO2、TiF4が挙げられる。
上記範囲であると、塗装後の性能を得るための十分な付着量を実用的な処理時間およびコストで得ることができる。
前記金属元素(A)に対する前記フッ素(B)のモル濃度の比が小さすぎると、表面処理皮膜層を析出させることは可能であるが、水溶液の安定性が低いためにZrまたはTiから選ばれる少なくとも1種が水溶液中で析出する可能性があり、実際の工業的用途における連続操業上の不具合が発生するおそれがある。
より好ましくは、金属元素(C)としてMgを単独で用いる場合またはMgおよびAlを併用する場合は、上記モル濃度の比が0.3〜20であるのが好ましい。また、金属元素(C)としてMgを単独で用いる場合は、上記モル濃度の比が0.3〜20であるのが好ましく、0.3〜10であるのがより好ましい。
本発明者は、鋭意研究した結果、ZrおよびTiから選ばれる少なくとも1種の金属元素と、フッ素とを含有する水溶液に、MgおよびAlの少なくとも1種の金属元素を添加し、更に、前記MgおよびAlの少なくとも1種の金属元素とフッ素とのモル比を上記範囲に定めることによって、非晶質の表面処理皮膜層の析出効率を高め、かつ、得られた表面処理皮膜層をクラックのない均一なものとする作用があることを見出したのである。
上記モル濃度の比が大きすぎると、表面処理皮膜層の析出効率を高める効果が限界となり、かつ、水溶液の安定性を損ねるおそれがある。
水溶液のpHをアルカリ側へ調整する場合には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アルカリ土類金属の水酸化物や酸化物;アンモニア;アミン化合物等のアルカリ成分を用いることができる。
被処理金属材料が鉄系材料や亜鉛系材料の場合には、上記アルカリ成分は限定されないが、アルミニウム系材料を単独でまたは鉄系材料や亜鉛系材料と同時に処理する場合には、被処理金属材料から溶出したアルミニウムイオンと、水溶液中のフッ素成分と、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属との間で不溶性の塩を生成しスラッジとなる可能性があるため、アルカリ成分としてアンモニアやアミン化合物を用いるのが好ましい。
中でも、硝酸が、酸化力を有するため表面処理皮膜層の析出を促進する作用もあるので、好ましい酸の1種である。表面処理皮膜層の析出を促進させる目的で水溶液中に含有させる際の硝酸濃度は、1000〜100000ppmであるのが好ましく、1000〜80000ppmであるのがより好ましい。
この場合、上記水溶液におけるこれらの酸素酸またはその塩の濃度は、酸化剤として十分な効果を発揮するためには、10〜5000ppm程度であるのが好ましい。
本発明の金属材料の塗装方法により得られる金属材料は十分な塗膜密着性および耐食性等の性能を有しているが、更なる性能が必要な場合には、所望の性能に応じて高分子化合物を適宜選択して水溶液に含有させ、表面処理皮膜層の物性を改質することができる。
水溶性高分子化合物および水分散性高分子化合物は、特に限定されないが、金属の表面処理に常用されている高分子化合物を用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルレート等のアクリル系単量体との共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、ポリウレタン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、アミノ変性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、キトサンおよびその誘導体、タンニンならびにタンニン酸およびその塩、フィチン酸が挙げられる。
また、表面処理皮膜層の付着量は、1g/m2以下であるのが好ましく、800mg/m2以下であるのがより好ましい。上記範囲であると、表面処理皮膜層にクラックが発生する可能性が極めて低くなる。
実際の金属の腐食環境では、金属の溶出が起こるアノード部ではpHの低下が、また、還元反応が起こるカソード部ではpHの上昇が起こる。したがって、耐酸性および耐アルカリ性に劣る表面処理皮膜は、腐食環境下で溶解しその効果が失われていく。これに対して、本発明に用いられる表面処理皮膜層の主成分は、酸やアルカリに侵されにくいため、腐食環境下においても優れた効果が持続する。
上述した表面処理工程後、塗装工程を行う。
本発明の第1の態様における塗装工程は、前記表面処理工程後、前記表面処理皮膜層上に粉体塗装を行う工程である。
粉体塗装は、従来公知の方法で行うことができる。
粉体塗装に用いられる粉体塗料は、特に限定されず、従来公知の熱可塑性または熱硬化性の粉体塗料を用いることができる。熱可塑性の粉体塗料としては、例えば、塩化ビニル樹脂粉体塗料、ナイロン粉体塗料、ポリエチレン粉体塗料、フッ素樹脂粉体塗料が挙げられる。熱硬化性の粉体塗料としては、例えば、エポキシ樹脂粉体塗料、ポリエステル樹脂粉体塗料、エポキシ・ポリエステル樹脂粉体塗料、アクリル樹脂粉体塗料、ビニル樹脂粉体塗料が挙げられる。
粉体塗装方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、粉体塗料を表面処理皮膜層に直接スプレーする方法、静電気を利用した粉体静電吹き付け法、表面処理皮膜層が形成された金属材料を加熱した状態で粉体塗料の流動層に入れ粉体塗料を融着させる流動浸せき法が挙げられる。
粉体塗膜の膜厚、焼き付け温度等についても、特に限定されず、選定した粉体塗料に応じて膜厚、焼き付け温度等を適宜設定することができる。
固体潤滑塗装は、従来公知の方法で行うことができる。
固体潤滑塗装に用いられる固体潤滑塗料は、特に限定されず、従来公知の固体潤滑塗料を用いることができる。例えば、二硫化モリブデン、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、グラファイト等からなる潤滑成分を、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等のバイダーに配合した塗料が挙げられる。
固体潤滑塗装方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、固体潤滑塗料を表面処理皮膜層に直接スプレーする方法、固体潤滑塗料中に表面処理皮膜層が形成された金属材料を浸せきさせる浸せき法が挙げられる。
固体潤滑塗膜の膜厚、焼き付け温度等についても、特に限定されず、選定した固体潤滑塗料に応じて膜厚、焼き付け温度等を適宜設定することができる。
200〜400℃程度の高温焼付けが必要な塗料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、アルミナ、酸化ケイ素等の成分を含有するセラミック塗料;ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂等の成分を含有する耐熱塗料;フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を含有する高温焼付け塗料が挙げられる。
(実施例1)
ヘキサフルオロチタン酸(IV)水溶液と、硝酸マグネシウム試薬と、硝酸アルミニウム試薬と、フッ化水素酸試薬とを用いて、チタン濃度が2500ppm、マグネシウム濃度が2100ppm、アルミニウム濃度が300ppmであり、チタンに対するフッ素のモル濃度の比が6.1であり、フッ素に対するマグネシウムおよびアルミニウムの合計のモル濃度の比が0.3である水溶液を調製した。ついで、水溶液を45℃に加温した後、アンモニア水試薬でpH3.0に調整し表面処理用処理液とした。
脱脂後に水洗を施した冷延鋼板(略号SPC:JIS G 3141)を、前記表面処理用処理液に120秒間浸せきさせて表面処理皮膜層を析出させた。ついで、水洗、イオン交換水洗、更に乾燥を行い、冷延鋼板表面の表面処理用処理液および水分を除去した。
前記表面処理皮膜層を析出させた冷延鋼板に、静電粉体塗装機(日本パーカライジング(株)製)を用いて膜厚が80μmとなるようにポリエステル系粉体塗料(エバクラットNo.4800、関西ペイント(株)製)を塗装した。更に、塗装後に180℃で20分間焼き付けを行い供試板とした。
オキシ硝酸ジルコニウム試薬と、硝酸マグネシウム試薬と、フッ化水素酸試薬とを用いて、ジルコニウム濃度が5ppm、マグネシウム濃度が300ppmであり、ジルコニウムに対するフッ素のモル濃度の比が14.4であり、フッ素に対するマグネシウムのモル濃度の比が15.6である水溶液を調製した。ついで、水溶液を50℃に加温した後、アンモニア水試薬でpH4.5に調整し表面処理用処理液とした。
脱脂後に水洗を施した冷延鋼板(略号SPC:JIS G 3141)に、前記表面処理用処理液を120秒間噴霧して表面処理皮膜層を析出させた。ついで、水洗、イオン交換水洗、更に乾燥を行い、冷延鋼板表面の表面処理用処理液および水分を除去した。
前記表面処理皮膜層を析出させた冷延鋼板に、静電粉体塗装機(日本パーカライジング(株)製)を用いて膜厚が80μmとなるようにエポキシ系粉体塗料(エバクラットNo.3520、関西ペイント(株)製)を塗装した。更に、塗装後に180℃で20分間焼き付けを行い供試板とした。
オキシ硝酸ジルコニウム試薬と、硝酸マグネシウム試薬と、フッ化水素酸試薬とを用いて、ジルコニウム濃度が5ppm、マグネシウム濃度が300ppmであり、ジルコニウムに対するフッ素のモル濃度の比が14.4であり、フッ素に対するマグネシウムのモル濃度の比が15.6である水溶液を調製した。ついで、水溶液にポリアリルアミン水溶液(PAA−10C、日東紡績(株)製)を50ppm添加し50℃に加温した後、アンモニア水試薬でpH4.5に調整し表面処理用処理液とした。
脱脂後に水洗を施した冷延鋼板(略号SPC:JIS G 3141)に、前記表面処理用処理液を120秒間噴霧して表面処理皮膜層を析出させた。ついで、水洗、イオン交換水洗、更に乾燥を行い、冷延鋼板表面の表面処理用処理液および水分を除去した。
前記表面処理皮膜層を析出させた冷延鋼板に、静電粉体塗装機(日本パーカライジング(株)製)を用いて膜厚が80μmとなるようにエポキシ系粉体塗料(エバクラットNo.3520、関西ペイント(株)製)を塗装した。更に、塗装後に180℃で20分間焼き付けを行い供試板とした。
ヘキサフルオロジルコン酸(IV)水溶液と、酸化マグネシウム試薬と、硝酸アルミニウム試薬とフッ化水素酸試薬とを用いて、ジルコニウム濃度が100ppm、マグネシウム濃度が1500ppm、アルミニウム濃度が250ppmであり、ジルコニウムに対するフッ素のモル濃度の比が20.4であり、フッ素に対するマグネシウムおよびアルミニウムの合計のモル濃度の比が3.2である水溶液を調製した。ついで、水溶液に硝酸試薬を硝酸根として10000ppmとなるように添加した後に40℃に加温し、更にアンモニア水試薬でpH4.0に調整し表面処理用処理液とした。
脱脂後に水洗を施した冷延鋼板(略号SPC:JIS G 3141)を、前記表面処理用処理液に90秒間浸せきさせて表面処理皮膜層を析出させた。ついで、水洗、イオン交換水洗、更に乾燥を行い、冷延鋼板表面の表面処理用処理液および水分を除去した。
前記表面処理皮膜層を析出させた冷延鋼板に、静電粉体塗装機(日本パーカライジング(株)製)を用いて膜厚が80μmとなるようにポリエステル系粉体塗料(エバクラットNo.4800、関西ペイント(株)製)を塗装した。更に、塗装後に180℃で20分間焼き付けを行い供試板とした。
ヘキサフルオロジルコン酸(IV)水溶液と、ヘキサフルオロチタン酸(IV)水溶液と、硝酸マグネシウム試薬とを用いて、ジルコニウム濃度が200ppm、チタン濃度が50ppm、マグネシウム濃度が14000ppmであり、ジルコニウムおよびチタンの合計に対するフッ素のモル濃度の比が6.0であり、フッ素に対するマグネシウムのモル濃度の比が29.7である水溶液を調製した。ついで、水溶液を35℃に加温した後、アンモニア水試薬でpH3.5に調整し表面処理用処理液とした。
脱脂後に水洗を施した冷延鋼板(略号SPC:JIS G 3141)を、前記表面処理用処理液に60秒間浸せきさせて表面処理皮膜層を析出させた。ついで、水洗、イオン交換水洗、更に乾燥を行い、冷延鋼板表面の表面処理用処理液および水分を除去した。
前記表面処理皮膜層を析出させた冷延鋼板に、静電粉体塗装機(日本パーカライジング(株)製)を用いて膜厚が80μmとなるようにアクリルポリエステル系粉体塗料(エバクラットNo.4500、関西ペイント(株)製)を塗装した。更に、塗装後に180℃で20分間焼き付けを行い供試板とした。
ヘキサフルオロチタン酸(IV)水溶液と、硝酸マグネシウム試薬と、硝酸アルミニウム試薬と、フッ化水素酸試薬とを用いて、チタン濃度が2500ppm、マグネシウム濃度が2100ppm、アルミニウム濃度が300ppmであり、チタンに対するフッ素のモル濃度の比が6.1であり、フッ素に対するマグネシウムおよびアルミニウムの合計のモル濃度の比が0.3である水溶液を調製した。ついで、水溶液を45℃に加温した後、アンモニア水試薬でpH3.0に調整し表面処理用処理液とした。
脱脂後に水洗を施した炭素綱鋼材丸綱(略号S45C:JIS G 4051、φ10mm×35mm、表面粗さRzjis 2μm)を、前記表面処理用処理液に120秒間浸せきさせて表面処理皮膜層を析出させた。ついで、水洗、イオン交換水洗、更に乾燥を行い、炭素綱鋼材丸綱表面の表面処理用処理液および水分を除去した。
前記表面処理皮膜層を析出させた炭素綱鋼材丸綱に、二硫化モリブデン75質量部、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)5質量部およびポリイミド樹脂(バインダー)20質量部からなる組成物に、溶剤としてキシレン200質量部を添加し、分散させて調製した固体潤滑塗料を膜厚が50μmとなるように塗装した。更に、塗装後に200℃で30分間焼き付けを行い供試材とした。
オキシ硝酸ジルコニウム試薬と、硝酸マグネシウム試薬と、フッ化水素酸試薬とを用いて、ジルコニウム濃度が5ppm、マグネシウム濃度が300ppmであり、ジルコニウムに対するフッ素のモル濃度の比が14.4であり、フッ素に対するマグネシウムのモル濃度の比がマグネシウムのモル濃度をフッ素元素のモル濃度で除した比が15.6である水溶液を調製した。ついで、水溶液を50℃に加温した後、アンモニア水試薬でpH4.5に調整し表面処理用処理液とした。
脱脂後に水洗を施した炭素綱鋼材丸綱(略号S45C:JIS G 4051、φ10mm×35mm、表面粗さRzjis 2μm)に、前記表面処理用処理液を120秒間噴霧して表面処理皮膜層を析出させた。ついで、水洗、イオン交換水洗、更に乾燥を行い、炭素綱鋼材丸綱表面の表面処理用処理液および水分を除去した。
前記表面処理皮膜層を析出させた炭素綱鋼材丸綱を50℃に加温した後に、二硫化モリブデン系固体潤滑塗料(デフリックコート HMB−2、(株)川邑研究所製)を膜厚が50μmとなるように塗装した。更に、塗装後に190℃で60分間焼き付けを行い供試材とした。
ヘキサフルオロジルコン酸(IV)水溶液と、酸化マグネシウム試薬と、硝酸アルミニウム試薬と、フッ化水素酸試薬とを用いて、ジルコニウム濃度が100ppm、マグネシウム濃度が1500ppm、アルミニウム濃度が250ppmであり、ジルコニウムに対するフッ素のモル濃度の比が20.4であり、フッ素に対するマグネシウムおよびアルミニウムの合計のモル濃度の比が3.2である水溶液を調製した。ついで、水溶液に硝酸試薬を硝酸根として10000ppmとなるように添加した後に40℃に加温し、更にアンモニア水試薬でpH4.0に調整し表面処理用処理液とした。
脱脂後に水洗を施した炭素綱鋼材丸綱(略号S45C:JIS G 4051、φ10mm×35mm、表面粗さRzjis 2μm)を、前記表面処理用処理液に90秒間浸せきさせて表面処理皮膜層を析出させた。ついで、水洗、イオン交換水洗、更に乾燥を行い、炭素綱鋼材丸綱表面の表面処理用処理液および水分を除去した。
前記表面処理皮膜層を析出させた炭素綱鋼材丸綱に、フッ素系固体潤滑塗料(デフリックコート FH−70、(株)川邑研究所製)を膜厚が50μmとなるように塗装した。更に、塗装後に180℃で60分間焼き付けを行い供試材とした。
ヘキサフルオロジルコン酸(IV)水溶液と、ヘキサフルオロチタン酸(IV)水溶液と、硝酸マグネシウム試薬とを用いて、ジルコニウム濃度が200ppm、チタン濃度が50ppm、マグネシウム濃度が14000ppmであり、ジルコニウムおよびチタンの合計に対するフッ素のモル濃度の比が6.0であり、フッ素に対するマグネシウムのモル濃度の比がマグネシウムのモル濃度をフッ素元素のモル濃度で除した比が29.7である水溶液を調製した。ついで、水溶液を35℃に加温した後、アンモニア水試薬でpH3.5に調整し表面処理用処理液とした。
脱脂後に水洗を施した炭素綱鋼材丸綱(略号S45C:JIS G 4051、φ10mm×35mm、表面粗さRzjis 2μm)を、前記表面処理用処理液に60秒間浸せきさせて表面処理皮膜層を析出させた。ついで、水洗、イオン交換水洗、更に乾燥を行い、炭素綱鋼材丸綱表面の表面処理用処理液および水分を除去した。
前記表面処理皮膜層を析出させた炭素綱鋼材丸綱を50℃に加温した後に、二硫化モリブデン系固体潤滑塗料(デフリックコート HMB−2、(株)川邑研究所製)を膜厚が50μmとなるように塗装した。更に、塗装後に200℃で60分間焼き付けを行い供試材とした。
ヘキサフルオロジルコン酸(IV)水溶液と、硝酸アルミニウム試薬とを用いて、ジルコニウム濃度が3ppm、アルミニウム濃度が5ppmであり、ジルコニウムに対するフッ素のモル濃度の比が6.0であり、フッ素に対するアルミニウムのモル濃度の比が0.9である水溶液を調製した。ついで、水溶液に硝酸試薬を硝酸根として1000ppmとなるように添加した後に45℃に加温し、更にアンモニア水試薬でpH4.0に調整し表面処理用処理液とした。
脱脂後に水洗を施した炭素綱鋼材丸綱(略号S45C:JIS G 4051、φ10mm×35mm、表面粗さRzjis 2μm)に、前記表面処理用処理液を60秒間噴霧して表面処理皮膜層を析出させた。ついで、水洗、イオン交換水洗、更に乾燥を行い、炭素綱鋼材丸綱表面の表面処理用処理液および水分を除去した。
前記表面処理皮膜層を析出させた炭素綱鋼材丸綱に、フッ素系固体潤滑塗料(デフリックコート FH−70、(株)川邑研究所製)を膜厚が50μmとなるように塗装した。更に、塗装後に180℃で60分間焼き付けを行い供試材とした。
オキシ硝酸ジルコニウム試薬と、硝酸マグネシウム試薬と、フッ化水素酸試薬とを用いて、ジルコニウム濃度が50ppm、マグネシウム濃度が9ppmであり、ジルコニウムに対するフッ素のモル濃度の比が6.7であり、フッ素に対するマグネシウムのモル濃度の比が0.1である水溶液を調製した。ついで、水溶液を40℃に加温した後、アンモニア水試薬でpH3.5に調整し表面処理用処理液とした。
脱脂後に水洗を施した冷延鋼板(略号SPC:JIS G 3141)を、前記表面処理用処理液に120秒間浸せきさせて表面処理皮膜層を析出させた。ついで、水洗、イオン交換水洗、更に乾燥を行い、冷延鋼板表面の表面処理用処理液および水分を除去した。
前記表面処理皮膜層を析出させた冷延鋼板に、静電粉体塗装機(日本パーカライジング(株)製)を用いて膜厚が80μmとなるようにエポキシ系粉体塗料(エバクラットNo.3520、関西ペイント(株)製)を塗装した。更に、塗装後に180℃で20分間焼き付けを行い供試板とした。
リン酸鉄系表面処理剤(パルフォス1077、日本パーカライジング(株)製)を水で5質量%濃度に希釈し、全酸度および酸消費ポイントをカタログ値の中心に調整し、更に50℃に加温した水溶液を表面処理用処理液とした。
脱脂後に水洗を施した冷延鋼板(略号SPC:JIS G 3141)に、前記表面処理用処理液を60秒間噴霧して表面処理皮膜層を析出させた。ついで、水洗、イオン交換水洗、更に乾燥を行い、冷延鋼板表面の表面処理用処理液および水分を除去した。
前記表面処理皮膜層を析出させた冷延鋼板に、静電粉体塗装機(日本パーカライジング(株)製)を用いて膜厚が80μmとなるようにアクリルポリエステル系粉体塗料(エバクラットNo.4500、関西ペイント(株)製)を塗装した。更に、塗装後に180℃で20分間焼き付けを行い供試板とした。
リン酸マンガン系表面処理剤(パルフォスM1A、日本パーカライジング(株)製)を水で14質量%濃度に希釈し、全酸度、酸比(全酸度/遊離酸度)および鉄分濃度をカタログ値の中心に調整し、更に96℃に加温した水溶液を表面処理用処理液とした。
脱脂後に水洗を施した炭素綱鋼材丸綱(略号S45C:JIS G 4051、φ10mm×35mm、表面粗さRzjis 2μm)を、前記表面処理用処理液に120秒間浸せきさせて表面処理皮膜層を析出させた。ついで、水洗、イオン交換水洗、更に乾燥を行い、炭素綱鋼材丸綱表面の表面処理用処理液および水分を除去した。
前記表面処理皮膜層を析出させた炭素綱鋼材丸綱を50℃に加温した後に、二硫化モリブデン系固体潤滑塗料(デフリックコート HMB−2、(株)川邑研究所製)を膜厚が50μmとなるように塗装した。更に、塗装後に200℃で60分間焼き付けを行い供試材とした。
リン酸亜鉛系表面処理剤(パルボンドL3020、日本パーカライジング(株)製)を4.8質量%に水道水で希釈し、カタログに記載の添加剤を所定量添加した後に、全酸度および遊離酸度をカタログ値の中心に調整し、更に42℃に加温した水溶液を表面処理用処理液とした。
脱脂後に水洗を施し、更に、リン酸亜鉛処理用の表面調整処理剤(プレパレンZN(登録商標)、日本パーカライジング(株)製)を0.1質量%に水道水で希釈した液を室温で30秒間噴霧した冷延鋼板(略号SPC:JIS G 3141)を、前記表面処理用処理液に120秒間浸せきさせて表面処理皮膜層を析出させた。ついで、水洗、イオン交換水洗、更に乾燥を行い、冷延鋼板表面の表面処理用処理液および水分を除去した。
前記表面処理皮膜層を析出させた冷延鋼板に、静電粉体塗装機(日本パーカライジング(株)製)を用いて膜厚が80μmとなるようにポリエステル系粉体塗料(エバクラットNo.4800、関西ペイント(株)製)を塗装した。更に、塗装後に180℃で20分間焼き付けを行い供試板とした。
(1)表面処理皮膜層の皮膜質量測定
塗装前の表面処理皮膜層の皮膜質量を蛍光X線分析装置(システム3270、理学電気工業(株)製)で測定した。結果を第1表に示す。
なお、実施例6〜10および比較例2においては、試験片に丸綱を使用したため、丸綱切断面の平面部の皮膜質量を測定した。また、実施例6〜10および比較例2においては、蛍光X線分析装置で測定された表面処理皮膜層中のZrおよびTiから選ばれる少なくとも1種の金属元素の付着量(ZrおよびTiを併用した場合は、合計付着量)を皮膜質量とした。
実施例1〜11で得られた塗装前の表面処理皮膜層を、X線回折分析装置(X’PERT−MRD、フィリップス社製)を用いて、薄膜分析法(入射角0.5°)で分析した。
その結果、基材である鉄以外のピークは認められず、表面処理皮膜層が非晶質であることが確認された。
(1)塗膜の耐食性
上記で得られた供試板および供試材の塗装面に、鋭利なカッターでクロスカットを入れた後、5質量%塩水を840時間噴霧した(JIS Z 2371に準ずる。)。噴霧終了後にクロスカット部からの両側最大膨れ幅を測定した。結果を第1表に示す。
上記で得られた供試板および供試材を40℃の脱イオン水に240時間浸せきさせた。浸せき後、塗装面に鋭利なカッターで2mm間隔の碁盤目を100個切った。碁盤目部のセロハンテープはく離を行い、碁盤目の残存個数を数えた。結果を第1表に示す。
実施例1〜5および11ならびに比較例1および3については、供試板の塗装面が凸となるように、エリクセン試験機で5mm押し出しを行った(JIS Z 2247)。ついで、エリクセン試験機で押し出した供試板の凸部のセロハンテープはく離を行い、塗膜のはく離の有無を目視で判定した。結果を第1表に示す。
荷重:10kgf/minでステップアップさせ、最大荷重100kgfまで荷重付与
回転数:2m/secの速度で常時回転数を一定とした
潤滑油:なし
また、実施例6〜10と比較例2との比較から、固体潤滑塗装を用いた本発明の金属材料の塗装方法の第2の態様は、従来の固体潤滑塗装方法より優れた耐食性を有していることが分かる。
これに対して、従来の塗装方法である結晶質のリン酸塩処理皮膜を表面処理皮膜層として用いた比較例2および3においては、塗膜の耐水性および塗膜の密着性の一方または両方の試験において塗膜はく離が生じていた。
また、従来の塗装方法であるリン酸鉄処理皮膜を表面処理皮膜層として用いた比較例1においては、実施例1〜5および11と比較して、塗膜の耐食性が著しく劣っていた。
Claims (6)
- 金属材料の表面に、ZrおよびTiから選ばれる少なくとも1種の金属元素(A)の酸化物および/または水酸化物を含有する非晶質の表面処理皮膜層を析出させる表面処理を施す表面処理工程と、
前記表面処理工程後、前記表面処理皮膜層上に粉体塗装を行う塗装工程と
を具備する金属材料の塗装方法。 - 前記表面処理工程において、前記金属元素(A)と、フッ素(B)と、MgおよびAlの少なくとも1種の金属元素(C)とを含有し、前記金属元素(A)の濃度が5〜5000ppmであり、前記金属元素(A)に対する前記フッ素(B)のモル濃度の比が6以上であり、前記フッ素(B)に対する前記金属元素(C)のモル濃度の比が0.3〜30である水溶液を、前記金属材料の前記表面に接触させることにより、前記表面処理皮膜層を析出させる請求項1に記載の金属材料の塗装方法。
- 前記金属材料が鉄系材料であり、前記金属元素(A)の酸化物および/または水酸化物の付着量が、前記金属元素(A)として20mg/m2以上である請求項1または2に記載の金属材料の塗装方法。
- 金属材料の表面に、ZrおよびTiから選ばれる少なくとも1種の金属元素(A)の酸化物および/または水酸化物を含有する非晶質の表面処理皮膜層を析出させる表面処理を施す表面処理工程と、
前記表面処理工程後、前記表面処理皮膜層上に固体潤滑塗装を行う塗装工程と
を具備する金属材料の塗装方法。 - 前記表面処理工程において、前記金属元素(A)と、フッ素(B)と、MgおよびAlの少なくとも1種の金属元素(C)とを含有し、前記金属元素(A)の濃度が5〜5000ppmであり、前記金属元素(A)に対する前記フッ素(B)のモル濃度の比が6以上であり、前記フッ素(B)に対する前記金属元素(C)のモル濃度の比が0.3〜30である水溶液を、前記金属材料の前記表面に接触させることにより、前記表面処理皮膜層を析出させる請求項4に記載の金属材料の塗装方法。
- 前記金属材料が鉄系材料であり、前記金属元素(A)の酸化物および/または水酸化物の付着量が、前記金属元素(A)として20mg/m2以上である請求項4または5に記載の金属材料の塗装方法。
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