JP2006254877A - 糖脂質を含んだキャリア及びそれを用いた遺伝子導入法 - Google Patents

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哲之 赤尾
Kenichi Kusumoto
賢一 楠本
Satoko Yamashita
聡子 山下
Itaru Hamachi
格 濱地
Kazumi Sasamoto
一美 佐々本
Tsuyoshi Ido
剛志 井土
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Abstract

【課題】高効率で化合物を細胞内に導入することのできる、化合物の細胞内導入用キャリアの提供
【解決手段】二分子膜型脂質と糖脂質を含有してなる化合物の細胞内導入用キャリアを提供する。該キャリアを用いれば、非常に高効率で核酸等の化合物を細胞内に導入することが可能である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、核酸等の化合物を効率よく細胞内に導入するのに適した、糖脂質複合化リポソームから成るキャリア、並びに該キャリアを用いた目的化合物の細胞内導入方法等に関する。
近年、脳腫瘍、アルツハイマー病、パーキンソン病やその他の脳疾患の治療法のひとつとして、神経細胞に遺伝子を導入する遺伝子治療に期待が集まっている。しかし適当な遺伝子導入法がないため、これまで神経細胞への遺伝子導入や薬物運搬について充分検討がなされなかった。また、遺伝子治療を取り巻く環境も、最も実用化に近かったウイルスを用いた遺伝子導入法において導入細胞がガン化するなどの事故が発生したため、ウイルスを使用しない効率的な遺伝子導入法が求められている。
従来の細胞内への遺伝子導入法として、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン試薬等の試薬を用いた方法等があるが、多くの場合その導入効率は低く、また細胞毒性が認められる。一方、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、遺伝子銃(パーティクルガン)法等の機器を用いる方法は、導入効率が比較的高い反面、高価な機器を購入しなくてはならない点や、操作に熟練を要する等の問題から、大量の細胞を処理するのには適さない。
これらの問題点を解決する遺伝子導入試薬のひとつに、リポソームを核酸キャリアとして用いる試みがあり、現在市販されている遺伝子導入試薬のほとんどはリポソーム系である。しかし、既存のリポソーム系遺伝子導入試薬は、1)効率的に導入できる細胞が限定される、2)化学的に不安定なため長期の品質保持は不可能であり劣化しやすい、3)非常に高価である、といった問題点を有しており、ユーザーは不満を持ちながらもやむを得ず、既存の遺伝子導入試薬を使用している。
これまで本発明者らは、合成両親媒性分子より構成されたリポソームが、動物細胞への遺伝子導入能を有することを発見し(特許文献1)、新規調製法(特許文献2)を用いて遺伝子導入試薬 DoFect GT1を開発してきた。この遺伝子導入試薬は、現在市販されているどの導入試薬の中でも、トップクラスの導入効率を持つものであるが、既存の導入試薬と同じように血球系細胞、神経細胞、正常細胞、初代培養細胞に対する遺伝子導入効率は低いままであった。
特許第1984767号公報 特願2003−408231号
本発明は、特殊な機器を必要とせず、安価に、簡便且つ安全に、効率よく且つ低毒性で細胞内に化合物を導入することができる細胞内導入方法、およびそのための化合物キャリアを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究したところ、陽イオン性脂質分子と、特定の糖脂質分子とを複合化させたリポソーム(糖脂質複合化リポソーム)を用いることにより、核酸等の化合物の細胞内への導入効率が格段に向上することを見出した。本発明者らはこれらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は:
(1)下記式(I):
Figure 2006254877
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して炭化水素基を:ZおよびZはそれぞれ独立して−O−CO−または−CO−O−を:mは0、1または2を:nは0、1または2を:Yは>N−または>CH−NH−を:pは1〜16の整数を:R、RおよびRはそれぞれ独立して炭化水素基を:Xはハロゲン原子を示す)
および、下記式(II):
Figure 2006254877
(式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して炭化水素基を:Xはハロゲン原子を示す)
であらわされる化合物から選択される少なくとも一種の化合物と、下記式(III):
Figure 2006254877
(式中、R10およびR11はそれぞれ独立して炭化水素基を:R12は糖残基を:Lは結合手または2価のスペーサー基を:qは1または2を示す)
で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有してなる、化合物の細胞内導入用キャリア、
(2)リポソームである、上記(1)記載のキャリア、
(3)負に荷電している化合物を細胞内に導入するための、上記(1)または(2)記載のキャリア、
(4)核酸を細胞内に導入するための、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のキャリア、
(5)核酸がプラスミドDNAである、上記(4)記載のキャリア、
(6)核酸がsiRNAである、上記(4)記載のキャリア、
(7)ペプチドまたはタンパク質を細胞内に導入するための、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のキャリア、
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のキャリアと化合物との複合体、
(9)該化合物が負に荷電している、上記(8)記載の複合体、
(10)該化合物が核酸である、上記(8)または(9)記載の複合体、
(11)核酸がプラスミドDNAである、上記(10)記載の複合体、
(12)核酸がsiRNAである、上記(10)記載の複合体、
(13)該化合物がペプチドまたはタンパク質である、上記(8)または(9)記載の複合体、
(14)上記(8)〜(13)のいずれかに記載の複合体と細胞とを接触させることを含む、化合物の該細胞内への導入方法、
(15)上記(8)〜(13)のいずれかに記載の複合体を、ヒトまたはヒト以外の対象に投与することを含む、該対象の生体内で化合物を細胞内へ導入する方法、
に関する。
本発明の化合物の細胞内導入キャリアを用いれば、非常に高い効率で化合物を細胞内に導入することが可能である。また、神経細胞や初代培養細胞等にも高効率で化合物を導入することができる。
本明細書中で使用する用語「炭化水素基」としては、例えば、「アルキル基」、「シクロアルキル基」、「アルケニル基」、「シクロアルケニル基」、「アルキニル基」、「アリール基」、「アラルキル基」、「シクロアルキルアルキル基」などの炭素数1〜20の炭化水素基が挙げられる。
「アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコサニルなどの「直鎖状または分枝状のC1−20アルキル基」が挙げられる。
「シクロアルキル基」としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどの「C3−8シクロアルキル基」が挙げられる。
「アルケニル基」としては、例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−オクテニル、9−オクタデセニルなどの「C2−20アルケニル基」が挙げられる。
「シクロアルケニル基」としては、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニルなどの「C3−8シクロアルケニル基」が挙げられる。
「アルキニル基」としては、例えば、エチニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、5−ヘキシニルなどの「C2−20アルキニル基」が挙げられる。
「アリール基」としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、フェナントリル、アントリルなどの「C6−14アリール基」が挙げられる。
「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル、フェネチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、(1−ナフチル)メチル、2−(1−ナフチル)エチル、2−(2−ナフチル)エチルなどの「C7−20アラルキル基(すなわち、C6−14アリール−C1−6アルキル基)」が挙げられる。
「シクロアルキルアルキル基」としては、例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルメチル、2−シクロプロピルエチル、2−シクロブチルエチル、2−シクロペンチルエチル、2−シクロヘキシルエチル、2−シクロヘプチルエチル、2−シクロオクチルエチルなどの「C3−8シクロアルキル−C1−6アルキル基」が挙げられる。
本発明における化合物の細胞内導入用キャリア(以下、「本発明のキャリア」と略称する場合がある)は、陽イオン性脂質分子と糖脂質分子とを含むことを特徴とする。
本発明のキャリアに用いることのできる陽イオン性脂質分子として、下記式(I):
Figure 2006254877
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して炭化水素基を:ZおよびZはそれぞれ独立して−O−CO−または−CO−O−を:mは0、1または2を:nは0、1または2を:Yは>N−または>CH−NH−を:pは1〜16の整数を:R、RおよびRはそれぞれ独立して炭化水素基を:Xはハロゲン原子を示す)で表される化合物が挙げられる。
およびRは、より好ましくはC10−18アルキル基であり、特に好ましくはデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルである。RとRは同一の基であり得る。
、RおよびRは、より好ましくはC1−6アルキル基であり、特に好ましくはメチルである。R、RおよびRは同一の基であり得る。
Xのハロゲンとしては、F、Cl、BrまたはIがあげられ、好ましくはClまたはBrである。
とZは同一の基であり得る。
式(I)で表される化合物の好ましい例として、RおよびRがC10−18アルキル基:ZおよびZが−O−CO−:mは0:nは1:Yは>CH−NH−:pは2〜16の整数を:R、RおよびRがメチル:Xはハロゲン原子の化合物が挙げられる。該化合物は、同一分子内に親水部と疎水部とを有する両親媒性分子であるが、該化合物において、疎水部の2つのアルキル鎖(即ち、RおよびR)の炭素数をt個とし、親水部のアシル基の炭素数がp個であり、疎水部と親水部を繋ぐ部分は、アスパラギン酸骨格を有することから、以下、tAsppまたはtApと、略記することもある。tApで表される化合物において、tは好ましくは10〜16の整数であり、より好ましくは12、14または16である。p(pは2〜11の整数)は好ましくは2〜10の整数であり、より好ましくは2、4、および6からなる群から選ばれる整数、さらに好ましくは2である。
また、式(I)で表される化合物の別の好ましい例として、RおよびRがC10−18アルキル基:ZおよびZが−O−CO−:mは0:nは2:Yは>CH−NH−:pは2〜16の整数を:R、RおよびRがメチル:Xはハロゲン原子の化合物が挙げられる。該化合物は、同一分子内に親水部と疎水部とを有する両親媒性分子であるが、該化合物において、疎水部の2つのアルキル鎖(即ち、RおよびR)の炭素数をt個とし、親水部のアシル基の炭素数がp個であり、疎水部と親水部を繋ぐ部分は、グルタミン酸骨格を有することから、以下、tGlupまたはtGpと、略記することもある。tGpで表される化合物において、tは好ましくは10〜16の整数であり、より好ましくは12、14または16である。p(pは2〜11の整数)は好ましくは2〜10の整数であり、より好ましくは2、4、および6からなる群から選ばれる整数、さらに好ましくは2である。
さらに、式(I)で表される化合物の別の好ましい例として、RおよびRがC10−18アルキル基:ZおよびZが−CO−O−:mは2:nは2:Yは>N−:pは2〜16の整数を:R、RおよびRがメチル:Xはハロゲン原子の化合物が挙げられる。該化合物は、同一分子内に親水部と疎水部とを有する両親媒性分子であるが、該化合物において、疎水部の2つのアルキル鎖(即ち、RおよびR)の炭素数をt−1個とし、親水部のアシル基の炭素数がp個であり、疎水部と親水部を繋ぐ部分は、ジエチルエタノールアミン骨格を有することから、以下、tDeapまたはtDpと、略記することもある。tDpで表される化合物において、tは好ましくは10〜16、より好ましくは12、14、16の整数である。p(pは2〜15の整数)は好ましくは2〜10の整数であり、より好ましくは2、4または6である。
式(I)で表される化合物の具体例として、以下の化合物を挙げることができる。
Figure 2006254877
Figure 2006254877
Figure 2006254877
Figure 2006254877
特に、式(I)で表される陽イオン性脂質分子において、nが1または2である化合物は容易に水中でリポソームを形成し、取り扱いが容易である。
式(I)で表される化合物は、自体公知のいかなる方法によっても製造することができ、例えば、「Journal of the American Chemical Society, vol.102, p6642(1980)」、「Bulletin of the Chemical Society of Japan, vol.64, p3677(1991)」、「Biochemistry and Molecular Biology International, vol.34, p915(1994)」および「Biochemistry and Molecular Biology International, vol.34, p915(1994)」に開示される方法により合成することができるが、それらに限定されない。
本発明のキャリアに用いることのできる別の陽イオン性脂質分子として、下記式(II):
Figure 2006254877
(式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して炭化水素基を:Xはハロゲン原子を示す)で表される化合物が挙げられる。
およびRは、それぞれ独立して、より好ましくはC10−18アルキル基であり、特に好ましくはドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルである。
およびRは、それぞれ独立して、より好ましくはC1−6アルキル基であり、特に好ましくはメチルである。
式(II)において、Xのハロゲンとしては、F、Cl、BrまたはIがあげられ、好ましくはClまたはBrである。
式(II)で表される化合物は、自体公知のいかなる方法によっても製造することができ、例えば、「Bulletin of the Chemical Society of Japan, vol.51, p1877(1978)」に開示される方法により合成することができるが、それらに限定されない。
遺伝子導入に用いられる陽イオン性脂質分子は、一般に、化合物(好ましくは負に荷電した化合物)と相互作用(好ましくは静電的相互作用)して安定な複合体を形成することにより、該化合物の分解(例えば、ヌクレア-ゼやペプチダーゼによる)を抑え、且つ負に荷電した細胞表面への送達を容易にするが、本発明に用いられる上記陽イオン性脂質分子は、特に低分子核酸などの比較的低分子量の化合物の細胞への導入効率にも優れ、しかも細胞毒性が低いという利点を有する。
本発明のキャリアに用いることのできる糖脂質分子として、下記式(III):
Figure 2006254877
(式中、R10およびR11はそれぞれ独立して炭化水素基を:R12は糖残基を:Lは結合手または2価のスペーサー基を:qは1または2を示す)で表される化合物が挙げられる。
スペーサー基とは、窒素原子とR12の結合を介する基であり、その骨格を構成する原子の数は1〜40、より好ましくは1〜15であり、原子の種類としては、C、N、O、S等が挙げられ、C1−20アルキル基、C1−20アルコキシ基、オキソ基、ヒドロキシ基等の置換基で置換されていてもよい。
具体的には、2価のスペーサー基としては、下記式(IV):
Figure 2006254877
(式中、rは1〜10の整数を示す)
下記式(V):
Figure 2006254877
(式中、sは1〜10の整数を示す)
下記式(VI):
Figure 2006254877
(式中、KおよびKはそれぞれ独立してC1〜4アルキレン基を:u1およびu2は0または1を示す)
または、下記式(VII):
Figure 2006254877
(式中、K〜Kはそれぞれ独立してC1〜4アルキレン基を:u1〜u4は0または1を示す)
で表される基が挙げられる。
好ましくはR10およびR11は、それぞれ独立して、アルキル基またはシクロアルキルアルキル基である。該アルキル基は、より好ましくはC10−18アルキル基であり、特に好ましくはデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルである。該シクロアルキルアルキル基は、より好ましくはC3−6シクロアルキルC1−3アルキル基であり、特に好ましくはシクロヘキシルメチルである。R10とR11は同一の基であり得る。
糖残基としては、糖類から誘導される基、即ち、糖のアノマー炭素原子上の水酸基から水素原子を除いた基、あるいはアルデヒドから水素原子を除いた基、糖のカルボキシル基から水酸基を除いた基等が挙げられる。
糖残基を形成する糖類としては、例えば、D−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−イドース、L−フコース、L−ラムノース、D−キシロース、L−アラビノース、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、N−アセチル−D−マンノサミン、N−アセチルノイラミン酸、N−グリコリルノイラミン酸、D−グルクロン酸、D−ガラクツロン酸、L−イズロン酸等の単糖、セロビノラクトン、ラクトノラクトン等の二糖、単糖が数個以上脱水縮合して生じたオリゴ糖、多糖からなる糖鎖等の糖類が挙げられる。
具体的に、好ましくは、
Figure 2006254877
Figure 2006254877
などの糖残基が挙げられる。
式(III)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
Figure 2006254877
Figure 2006254877
Figure 2006254877
Figure 2006254877
Figure 2006254877
Figure 2006254877
Figure 2006254877
Figure 2006254877
Figure 2006254877
Figure 2006254877
Figure 2006254877
等が例示されるが、これらに限定されない。
式(III)で表される化合物は、自体公知のいかなる方法によっても製造することができ、例えば、「K. Kobayashi et. al., Synthesis and functions of polystyrene derivatives having pendant oligosaccharides, Polymer Journal, vol. 17, 567-575(1985)」に開示される方法により合成することができるが、それらに限定されない。
本発明のキャリアは、上記陽イオン性脂質分子のいずれか1種と上記糖脂質分子のいずれか1種を含有する。あるいは、上記陽イオン性脂質分子の2種以上と上記糖脂質分子の2種以上を、上記陽イオン性脂質分子のいずれか1種と上記糖脂質分子の2種以上を、上記陽イオン性脂質分子の2種以上と上記糖脂質分子のいずれか1種を、それぞれ組み合わせて含有してもよい。あるいはまた、該キャリアは、化合物の細胞内導入効率や低細胞毒性などの本発明の利点を損なわない範囲であれば、上記陽イオン性脂質分子および上記糖脂質分子以外の両親媒性分子(例えば、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン等の生体膜由来のリン脂質など)、界面活性剤(CHAPS、コール酸ナトリウム、オクチルグルコシド、N−D−グルコ−N−メチルアルカンアミド類など)、ポリエチレングリコール、糖脂質、ペプチド脂質、蛋白質などをさらに含有してもよい。
本発明のキャリアは、上記陽イオン性脂質分子と上記糖脂質分子とが組織化された集合体をいう。「組織化」とは、陽イオン性脂質および糖脂質を含む両親媒性分子同士が疎水結合等の非共有結合を介して集合することをいう。組織化された集合体としては、両親媒性分子の疎水部同士が疎水結合し形成される二重膜、リポソーム、多重ベシクル、ひも状会合体、ディスク状会合体、ラメラ状会合体、ロッド状会合体等及びこれらの混合物が含まれる。該集合体としては、特に限定されないが、リポソームが好ましい。
本発明のキャリアは、上記陽イオン性脂質分子と上記糖脂質分子とを適当な分散媒、例えば、水性溶媒中に分散させ、必要に応じて組織化を誘導する操作を行って、分子集合体を形成させた状態で調製することができる。「組織化を誘導する操作」としては、例えば、超音波処理、加熱、ボルテックス、エーテル注入法、フレンチ・プレス法、コール酸法、Ca2+融合法、凍結−融解法、逆相蒸発法等などの自体公知の各種方法が挙げられるが[これらの各方法についての詳細は、例えば、野島、砂本、井上編「リポソーム」(南江堂,1988年発行)の“第2章 リポソームの調製”(砂本、岩本著)等に記載されている]、それらに限定されない。また、一定条件下では、上記陽イオン性脂質および糖脂質を含む両親媒性分子同士が、上記のような人為的に組織化を誘導する操作を行うことなく、水性溶媒中で自律的に集合して集合体を形成(自己組織化)することもできる。自己組織化により得られる集合体は、通常、上記の各種形態の混合物であるが、上記のような組織化を誘導する操作を一定条件下で行うことにより、単一の形態を有する集合体を形成することも可能である。
上記陽イオン性脂質分子は、導入する化合物により適宜選択することができ、例えばプラスミドDNAを導入する場合には12G2、14D2、14D6等が、siRNAを導入する場合には12G2、12A2等が選択され得るが、これらに限定されない。
上記糖脂質分子は、導入する化合物により適宜選択することができ、例えばプラスミドDNAを導入する場合には10GGlc、12GGlc、12GCL等が、siRNAを導入する場合には12GGlc等が選択され得るが、これらに限定されない。
本発明のキャリアの調製に用いられる上記陽イオン性脂質分子と上記糖脂質分子の配合比率は、化合物の細胞内導入効率が増加する限り、特に限定されない。ここで「化合物の細胞内導入効率が増加」とは、上記陽イオン性脂質分子のみをキャリアとしたときと比し、例えば約1.2倍以上の導入効率を有する場合をいう。上記陽イオン性脂質分子および上記糖脂質分子の配合比率は、特に限定されないが、好ましくは、約等モル量(例えば、陽イオン性脂質分子:糖脂質分子が1:0.8〜1.2モル量)である。
本発明のキャリアの調製に用いられる上記陽イオン性脂質分子および上記糖脂質分子の組み合わせは、特に限定されないが、例えば、12G2と10GGlc、12G2と12GGlc、14D2と10GGlc、14D2と12GGlc、14D2と12GCL、14D6と10GGlc、14D6と12GGlc、12G2と12GGlc、12A2と12GGlc等が挙げられる。これらの組み合わせは、導入する化合物により適宜選択することができ、例えばプラスミドDNAを導入する場合には、12G2と10GGlc、12G2と12GGlc、14D2と10GGlc、14D2と12GGlc、14D2と12GCL、14D6と10GGlc、14D6と12GGlc等が、siRNAを導入する場合には、12G2と12GGlc、12A2と12GGlc等が選択されるが、これらに限定されない。
好ましい一実施態様においては、本発明のキャリアの調製に用いられる上記陽イオン性脂質分子および糖脂質分子は固体であり、より好ましくは粉体である。該陽イオン性脂質分子および糖脂質分子を分散させる分散媒は、特に限定されないが、例えば、水(脱イオン水等)、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、当業者が通常の細胞培養で用いる培地(例えばRPMI1640、DMEM、HAM F−12、イーグル培地等)等の水性溶媒が挙げられる。当該水性溶媒は血清等の蛋白質成分を含有しないことが好ましいが、ポリリジン処理などで蛋白質成分を予め除去することにより、陽イオン性脂質分子および糖脂質分子を含む両親媒性分子の組織化またはその後の細胞内導入される化合物と陽イオン性脂質分子および糖脂質分子集合体との複合体形成の阻害を防ぐこともできる。また、細胞内導入される化合物がRNAやDNAなどの核酸、オリゴペプチドや蛋白質などのペプチド性化合物である場合などは、RNaseやDNaseなどの核酸分解酵素、ペプチダーゼやプロテアーゼなどの蛋白質(ペプチド)分解酵素の混入により導入化合物の安定性が低下するので、水性溶媒は、陽イオン性脂質分子および糖脂質分子を分散させる前にそれら酵素を失活させるために、加熱処理を施されることが好ましい。加熱処理としては、例えば、約50〜約100℃で約5分〜約3時間行うことができるが、それに限定されない。従って、水性溶媒は当該加熱処理が可能なものであることが好ましい。従来、核酸の細胞内導入に用いられている各種培養液ではRNaseなどの酵素除去が不可能な場合が多いが、本発明における陽イオン性脂質分子および糖脂質分子は、例えば、NaCl、塩化カリウムなどの化合物を含有する水溶液中に分散させた場合にも、その後の細胞内導入操作において高い導入効率を示す。従って、核酸やペプチド性化合物などの化合物を細胞内に導入する場合には、水性溶媒として、上記の化合物を含有する水溶液等が好ましく例示される。
水性溶媒のpHは特に限定されないが、pH4〜10の範囲であることが好ましく、より好ましくはpH7〜8の範囲である。
好ましい実施態様として、(1)超音波処理、(2)加熱処理による糖脂質複合化リポソームの調製について以下により具体的に説明する。
(1)超音波処理法
まず上記陽イオン性脂質分子(例えば、12G2、12A2、14D2、14D6等)と、糖脂質分子(例えば、10GGlc、12GGlc、12GCL等)のそれぞれを、有機溶媒(例えば、クロロホルム等)に溶解し、ナス型フラスコ等の容器に入れ、ロータリーエバポレーターなどを用いて溶媒を減圧除去して、容器壁面に脂質薄膜を形成させる。これに水性溶媒(例えば、リン酸緩衝液(pH7.0)等)を加えて振とう膨潤させ、例えばボルテックスミキサーなどを用いて薄膜を剥離させることにより、多重層リポソームの懸濁液が得られる。ここで膨潤操作は、陽イオン性脂質分子の相転移温度(Tc;例えば、12G2のTcは約4℃、12A2のTcは6.7℃、14D2のTcは33.7℃、14D6のTcは37.0℃である)以上の温度で行うことが好ましい。尚、分解した脂質等を除去するために、セファデックス2B、4BまたはG−50カラムなどを用いてゲル濾過を行うこともできる。
上記のようにして得られる多重層リポソームの懸濁液に、超音波処理装置(プローブ型、浴槽型など)を用いて、氷浴もしくは水浴上、陽イオン性脂質分子のTc以上の温度で、高い出力(例えば、約100〜約200W)の超音波を、約1〜約2分間照射(例えば、1分間照射、30秒間インターバルのサイクルを約2〜4回繰り返すなど)することにより、ほぼ均一な単層リポソームを調製することができる。
本発明の陽イオン性脂質分子および糖脂質分子においては、その粉末をそれぞれ適当量チューブに取り、MiliQ水などを加えて(最終濃度が約20mMとなるように)混合し、上記と同様の超音波処理を行うだけでも、容易に糖脂質複合化リポソームを調製することができる。
(2)加熱処理法
上記陽イオン性脂質分子(例えば、12G2、12A2、14D2、14D6等)の粉末と、糖脂質分子(例えば、10GGlc、12GGlc、12GCL等)の粉末をそれぞれ適当量チューブに取り、MiliQ水などを加えて(最終濃度が約20mMとなるように)、約90℃で約15分間加熱することにより、糖脂質複合化リポソームを調製することができる。
得られる糖脂質複合化リポソーム中の上記陽イオン性脂質分子および糖脂質分子の濃度は、用いる陽イオン性脂質分子および糖脂質分子の種類等を考慮し適宜設定できるが、通常1〜200mM、好ましくは1〜100mM、より好ましくは1〜50mMの範囲である。
濃度が低すぎると充分量の糖脂質複合化リポソームが形成されず、濃度が高すぎると陽イオン性脂質分子および糖脂質分子が析出することがある。
本発明のキャリアは、化合物の細胞内導入効率や低細胞毒性などの本発明の利点を損なわない範囲で、適当な添加剤を含んでいてもよい。本発明のキャリアを、化合物を生体内の細胞に導入する目的で使用する場合には、該添加剤は医薬上許容されるものであることが必要である。例えば、従来公知のリポソーム製剤に配合される各種医薬添加物を用いることができる。
以上のようにして得られうる、本発明のキャリアは、化合物を低毒性で効率よく細胞内に導入するための薬剤として有用である。本発明のキャリアにより細胞内へ導入され得る化合物は、特に制限されず、例えば、核酸、ペプチド、脂質、糖、脂質、糖、生理活性物質、薬物(Doxorubicin(抗腫瘍薬)、Daunorubicin(抗腫瘍薬)、Vincristine(抗腫瘍薬)、Vinblastine(抗腫瘍薬)、Idarubicin(抗腫瘍薬)、Dibucaine(局所麻酔薬)、Propranolol(β遮断薬)、Quinidine(不整脈治療薬)、Dopamine(強心・昇圧薬)、Imipramine(抗うつ薬)、Diphenhydramine(抗ヒスタミン薬)、Quinine(抗マラリア薬)、Chloroquine(抗マラリア薬)、Diclofenac(抗炎症薬)等)、化粧品等用の保湿剤(マンニトール等)、その他の合成もしくは天然化合物等が挙げられる。
また、本発明のキャリアは、上記陽イオン性脂質分子を含有するので、該キャリアと安定な複合体を形成するためには、化合物は負に荷電していることが好ましい。したがって、本発明のキャリアにより細胞内に導入され得る化合物としては、ポリアニオンである核酸やペプチドが好ましく例示される。
本発明のキャリアにより細胞内に導入され得る特に好ましい化合物は核酸である。核酸としては、特に制限はなく、DNA、RNA、DNAとRNAのキメラ核酸、DNA/RNAのハイブリッド等いかなるものであってもよい。また、核酸は1〜3本鎖のいずれも用いることができるが、好ましくは1本鎖又は2本鎖である。核酸は、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のオリゴマー(例えば、市販のペプチド核酸(PNA)等)または特殊な結合を含有するその他のオリゴマー(但し、該オリゴマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などであってもよい。さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えば蛋白質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。
例えば、DNAの種類は、使用の目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えばプラスミドDNA、アンチセンスDNA、染色体DNA、PAC、BAC等が挙げられ、好ましくはプラスミドDNA、アンチセンスDNAであり、より好ましくはプラスミドDNAである。プラスミドDNA等の環状DNAは適宜制限酵素等により消化され、線形DNAとして用いることもできる。また、RNAの種類は、使用の目的に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えばsiRNA、アンチセンスRNA、メッセンジャーRNA、トランスファーRNA、リボゾーマルRNA等が挙げられ、好ましくはsiRNA、miRNA、アンチセンスRNAであり、更に好ましくはsiRNA、miRNAである。
核酸の大きさは、特に限定されず、染色体(人工染色体等)等の巨大な核酸分子(例えば約10kbpの大きさ)から、低分子核酸(例えば約5bpの大きさ)を導入することが可能であるが、細胞内への核酸導入効率を考慮すると、15kbp以下であることが好ましい。例えばプラスミドDNAのような高分子核酸の大きさとしては、2〜15kbp、好ましくは2〜10kbpが例示される。また、siRNAのような低分子核酸の大きさとしては5〜1000bp、好ましくは5〜500bp、さらに好ましくは5〜200bpが例示される。
核酸は天然に存在するもの又は合成されたもののいずれでもよいが、100bp程度以下の大きさのものであれば、ホスホトリエチル法、ホスホジエステル法等により、通常用いられる核酸自動合成装置を利用して合成することが可能である。
本発明において用いられる核酸は、特に限定されないが、当業者が通常用いる方法により精製されていることが好ましい。
本発明のキャリアを生体内の細胞へ化合物を導入するために用いる態様としては、例えば、疾患の予防および/または治療(以下、「予防・治療」と略記する)を目的とした、いわゆる遺伝子治療をはじめとする予防・治療用化合物の生体内(in vivo)投与における使用が挙げられる。従って、本発明の好ましい一実施態様においては、本発明のキャリアにより細胞内へ導入される化合物は、ある所定の疾患に対して予防・治療活性を有するものである。そのような化合物としては、例えば、核酸、ペプチド、脂質、糖、生理活性物質、薬物、その他の天然または合成の化合物が挙げられる。
遺伝子治療は、前記のように、欠損した遺伝情報を補うことを目的とするものと、疾病の原因遺伝子(標的遺伝子)の発現制御を目的とするものとに大別することができる。
例えば、標的遺伝子の発現を制御し得る化合物が低分子核酸である場合、該低分子核酸としては、例えば、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、デコイオリゴヌクレオチド(例えば、転写因子もしくは転写抑制因子が認識して結合し得る塩基配列を含むオリゴヌクレオチド)等が挙げられる。
標的遺伝子の発現を制御し得る化合物がペプチドまたは蛋白質である場合、該ペプチド/蛋白質は、例えば、標的遺伝子に結合して該遺伝子の転写を制御するか、あるいは標的遺伝子のmRNAもしくは初期転写産物に結合して蛋白質への翻訳を制御するペプチド/蛋白質、あるいは標的遺伝子の発現を制御する受容体からのシグナルを増強し得るペプチド性リガンド、もしくは該シグナルを遮断し得るアンタゴニスト様ペプチド/蛋白質などが挙げられる。
あるいは、疾患予防・治療活性を有する化合物は、疾病の原因蛋白質の活性を制御し得るものであってもよい。そのような例としては、標的である受容体蛋白質のリガンドであるペプチド/蛋白質や非ペプチド性化合物(例えば、脂肪酸、ステロイドホルモンなど)、アゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する種々の天然もしくは合成化合物、キナーゼのリン酸化部位の部分アミノ酸配列をミミックしたペプチドなどが挙げられるが、それらに限定されない。
本発明はまた、本発明のキャリアと細胞内に導入されるべき化合物、好ましくは、本明細書において既に言及したような化合物との複合体を提供する。
上記キャリアを化合物の細胞内への導入に用いるためには、当該キャリアと導入化合物とを接触させることにより、当該キャリアと導入化合物との複合体(以下単に「複合体」と称する場合がある)を形成させる。複合体は、当該複合体が安定に存在し、例えば、ヌクレア−ゼやペプチダーゼなどによる導入化合物(核酸、ペプチドなど)の分解を抑制し得る限り、いかなる相互作用によって形成されてもよい。当該キャリアは陽イオン性であるので、好ましい一態様においては、該複合体は、陰イオン性の(即ち、負に荷電した)化合物(核酸、ペプチドなど)との間で、静電的相互作用による非共有結合を介して形成されるが、正に荷電した化合物や中性荷電の化合物であっても、他の相互作用を介して、あるいは負に荷電した化合物と予め結合させることにより、複合体を形成することができる。複合体の形態としては、例えば、該キャリアがリポソームの場合、化合物は該リポソームに結合した形態であっても、内に取り込まれた形態であってもよく、好ましくはリポソーム内に取り込まれた形態である。
上記キャリアと導入化合物との複合体は、当該キャリアを含む水性溶媒と導入化合物とを混合し、インキュベーションすることにより得られる。当該水性溶媒の種類は、上述と同様である。
また、当該インキュベーション時の温度は、上記糖脂質複合化リポソームの調製方法における温度と同様の範囲で設定されることが好ましい。
当該混合液中の上記キャリアの濃度は、用いられる陽イオン性脂質分子および糖脂質分子の種類等を考慮して適宜設定できるが、通常1〜200mM、好ましくは1〜100mM、より好ましくは1〜50mM、更に好ましくは5〜50mM、最も好ましくは10〜30mMの範囲である。
濃度が低すぎると充分量の安定な複合体が形成されず、濃度が高すぎるとキャリアが析出することがある。
混合物中の導入化合物の濃度は、用いる化合物の種類、サイズ(分子量)等を考慮し適宜設定できるが、該化合物が核酸である場合は、通常約0.01〜約100ng/μLの範囲である。
該化合物がDNAである場合は通常3〜100ng/μLの範囲である。
たとえばDNAが通常のプラスミドDNA(サイズが3kbp程度)である場合は、当該混合液中のDNA濃度は好ましくは10〜90ng/μL、より好ましくは20〜80ng/μL、更に好ましくは30〜70ng/μL、最も好ましくは40〜60ng/μLの範囲である。
濃度が低すぎると細胞へ導入されたDNAが期待された機能を発現することができず、濃度が高すぎるとかえって核酸導入効率が低下する。
該化合物がRNAである場合も、RNAのサイズ等を考慮し、濃度を適宜設定できるが、RNAのサイズが数kbp程度である場合は、上記混合液中のRNA濃度は、通常3〜100ng/μL、好ましくは10〜90ng/μL、より好ましくは20〜80ng/μL、更に好ましくは30〜70ng/μL、最も好ましくは40〜60ng/μLの範囲である。
特に核酸がsiRNAのように約20〜約200bpの非常に小さいものである場合、該核酸の濃度は、通常1〜500nM、好ましくは20〜400nM、より好ましくは20〜300nM、更に好ましくは20〜200nM、最も好ましくは20〜100nMの範囲である。
濃度が低すぎると細胞へ導入されたRNAが期待された機能を発現することができず、濃度が高すぎるとかえって核酸導入効率が低下する。
当該キャリアを含む水性溶媒と導入化合物とを混合した後のインキュベーションの時間は、用いる試薬の種類等の条件を考慮し適宜設定することが可能であるが、通常0.5〜100分間、好ましくは0.5〜60分間、より好ましくは0.5〜30分間、更に好ましくは0.5〜15分間、最も好ましくは1〜5分間の範囲である。
インキュベーション時間が短すぎると、導入化合物とキャリアとの複合体形成が不十分となり、インキュベーション時間が長すぎると、形成された複合体が不安定化する場合があり、いずれも導入化合物の導入効率が低下する。
上記工程によって、導入化合物の細胞内への導入に用いるキャリアと該化合物との複合体を含む混合液(以下「複合体含有溶液」と記載することがある)を得ることができる。
更に、上記工程で得られた複合体と細胞とを接触させることで、複合体に含まれる導入化合物を細胞内へ導入することができる。
上記「細胞」の種類は、特に限定されず、原核生物及び真核生物の細胞を用いることができるが、好ましくは真核生物である。真核生物の種類も、特に限定されず、例えば、ヒトを含む哺乳類(ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター、ウシ等)、鳥類(ニワトリ、ダチョウ等)、両生類(カエル等)、魚類(ゼブラフィッシュ、メダカ等)などの脊椎動物、昆虫(蚕、蛾、ショウジョウバエ等)などの非脊椎動物、植物、酵母等の微生物等が挙げられる。より好ましくは、本発明で対象とされる細胞は、動物もしくは植物細胞、さらに好ましくは哺乳動物細胞である。
当該細胞は、癌細胞を含む培養細胞株であっても、個体や組織より単離された細胞、あるいは組織もしくは組織片の細胞であってもよい。また、細胞は接着細胞であっても、非接着細胞であってもよい。
複合体と細胞とを接触させる工程をより具体的に説明すると、例えば次の通りである。
即ち、細胞は当該複合体との接触の数日前に適当な培地に懸濁され、適切な条件で培養される。当該複合体との接触時において、細胞は増殖期にあってもよいし、そうでなくてもよい。
当該接触時の培養液は、血清含培地であっても血清不含培地であってもよいが、培地中の血清濃度は20%以下、好ましくは10%以下であることが好ましい。培地中に過剰な血清等の蛋白質が含まれていると、複合体と細胞との接触が阻害される可能性があるからである。
当該接触時の細胞密度は、特に限定されず、細胞の種類等を考慮して適宜設定することが可能であるが、通常0.5×10〜5×10細胞/mL、好ましくは0.5×10〜4×10細胞/mL、より好ましくは0.5×10〜3×10細胞/mL、更に好ましくは1×10〜3×10細胞/mL、最も好ましくは1×10〜2×10細胞/mLの範囲である。
このように調製された細胞を含む培地に、上述の複合体含有溶液を添加する。複合体含有溶液の添加量は、特に限定されず、細胞数等を考慮して適宜設定することが可能であるが、培地1mLにつき、通常1〜1000μL、好ましくは1〜500μL、より好ましくは1〜300μL、更に好ましくは1〜200μL、最も好ましくは1〜100μLの範囲である。
培地に複合体含有溶液を添加後、細胞を培養する、培養時の温度、湿度、CO濃度等は、細胞の種類を考慮して適宜設定する。哺乳動物の細胞の場合は、通常約37℃、湿度約95%、CO濃度は約5%である。
また、培養時間も用いる細胞の種類等の条件を考慮して適宜設定することが可能であるが、通常1〜36時間、好ましくは1〜24時間、より好ましくは1〜12時間、更に好ましくは2〜8時間、最も好ましくは3〜6時間の範囲である。
上記培養時間が短すぎると、導入化合物が十分細胞内へ導入されず、培養時間が長すぎると、細胞が弱ることがある。
上記培養により、化合物が細胞内へ導入されるが、好ましくは培地を新鮮な培地と交換するか、培地に新鮮な培地を添加して更に培養を続ける。細胞が哺乳動物由来の細胞である場合は、新鮮な培地は血清又は栄養因子を含むことが好ましい。
更なる培養の時間は、導入された化合物に期待される機能等を考慮して、適宜設定することが可能であるが、該化合物が発現ベクター等のプラスミドDNAである場合は、通常16〜72時間、好ましくは16〜60時間、より好ましくは16〜48時間、更に好ましくは16〜36時間、最も好ましくは16〜24時間の範囲である。該化合物がsiRNAなどの標的遺伝子の発現を制御し得る低分子核酸である場合には、通常0〜72時間、好ましくは1〜48時間、より好ましくは1〜36時間、更に好ましくは1〜24時間、最も好ましくは1〜16時間の範囲である。
また、上記の通り、本発明のキャリアと化合物との複合体を用いることで、試験管内(in vitro)のみならず、生体内(in vivo)においても該化合物を細胞内へ導入することが可能である。即ち、該複合体を対象に投与することにより、該複合体が標的細胞へ到達・接触し、生体内で該複合体に含まれる化合物が細胞内へ導入される。
該複合体を投与可能な対象としては、特に限定されず、例えば、ヒトを含む哺乳類(ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスター、ウシ等)、鳥類(ニワトリ、ダチョウ等)、両生類(カエル等)、魚類(ゼブラフィッシュ、メダカ等)などの脊椎動物、昆虫(蚕、蛾、ショウジョウバエ等)などの無脊椎動物、植物等を挙げることが出来る。好ましくは、該複合体の投与対象としては、ヒトまたは他の哺乳動物が挙げられる。
また、該複合体の投与方法は、標的細胞へ該複合体が到達・接触し、該複合体に含まれる導入化合物を細胞内へ導入可能な範囲で特に限定されず、導入化合物の種類や、ターゲット細胞の種類や部位等を考慮して、自体公知の投与方法(経口投与、非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、局所投与、経皮投与、皮下投与、腹腔内投与等)等)を適宜選択することができる。
該複合体の投与量は、化合物の細胞内への導入を達成可能な範囲で特に限定されず、投与対象の種類、投与方法、導入化合物の種類、ターゲット細胞の種類や部位等を考慮して適宜選択することができるが、経口投与の場合、一般的に例えばヒト(60kgとして)においては、その1回投与量は複合体として約0.001mg〜10000mgである。非経口的に投与する場合(例えば静脈内投与等)は、一般的に例えばヒト(60kgとして)においては、その1回投与量は複合体として約0.0001mg〜3000mgである。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
本発明のキャリアを用いれば、極めて高い効率で化合物を細胞内へ導入することが可能であるので、本発明は、該キャリアを含む、生体外又は生体内で化合物を細胞内へ導入するための剤を提供する。該剤は研究用試薬、医薬等として提供され得る。該剤を上述の方法において用いることによって、容易に所望の化合物を細胞内へ導入することが可能である。
本発明のキャリアを、化合物を細胞内へ導入するための剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
該剤が研究用試薬として提供される場合は、本発明のキャリアは、そのままで、あるいは例えば水もしくはそれ以外の生理学的に許容し得る液(例えば上述の水溶性溶媒等)との無菌性溶液、または懸濁液等として提供され得る。該剤は適宜、自体公知の生理学的に許容し得る、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤等を含むことが出来る。
また、該剤が医薬として提供される場合は、本発明のキャリアは、そのままで、あるいは薬学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに、一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって経口剤(例えば錠剤、カプセル剤等)あるいは非経口剤(例えば注射剤等)として製造することができる。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射剤用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例:エタノール)、ポリアルコール(例:プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例:ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、上記剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。
これらの剤に含まれる本発明のキャリアの含有量は、上記方法において用いられたときに化合物の細胞内への導入が達成されうる範囲において特に限定されず、剤型の種類、導入される化合物の種類等に応じて適宜選択することが可能である。
あるいは、本発明の剤に含まれるキャリアは、細胞内への導入が所望される化合物との複合体であってもよい。
本発明のキャリアは、化合物を細胞内へ導入するためのキットとして提供することもできる。当該キットは、本発明のキャリアを用いた化合物の細胞内導入方法において用いられ得るあらゆる試薬等(例えば、上記水性溶媒、調製プロトコールが記載された指示書、反応容器等)を更に含むことが出来る。該キットを用いることにより、上述の方法に従い、容易に所望の化合物を細胞内へ導入することが可能である。
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はいかなる意味においてもこれらに限定されない。
〔実施例1〕糖脂質複合化リポソームの作製
(1)プラスミドDNA用糖脂質複合化リポソームの作製
1.3mMの各種二分子型脂質(12G2の塩化物塩、14D2の臭化物塩、14D6の臭化物塩)水溶液(0.5ml)に、1.3mMの各種糖脂質(10GGlc、12GGlc、12GCL)クロロホルム/メタノール溶液(0.5ml)を加えた。
混合溶液を、プローブ型超音波発生装置(BRANSON SONIFIER 450D)を用いて分散させ、糖脂質複合化リポソーム(12G2/10GGlc、12G2/12GGlc、14D2/10GGlc、14D2/12GGlc、14D2/12GCL、14D6/10GGlc、14D6/12GGlc、14D6/12GCL)を作製した。
(2)siRNA用糖脂質複合化リポソームの作製
1.3mMの各種二分子型脂質(12G2の塩化物塩、12A2の塩化物塩)水溶液(0.5ml)に、1.3mMの糖脂質(12GGlc)クロロホルム/メタノール溶液(0.5ml)を加えた。
混合溶液を、プローブ型超音波発生装置を用いて分散させ、糖脂質複合化リポソーム(12G2/12GGlc、12A2/12GGlc)を得た。
〔実施例2〕糖脂質複合化リポソームを用いた培養細胞へのプラスミドDNA導入
培養細胞(CHO細胞、HC細胞、HepG2細胞、HeLa細胞)1〜2×105細胞/ウェルを、24ウェルプレート中、16時間前培養(10%FBS含有DMEM培地(CHO細胞)、10%FBS含有FD培地(HC細胞)、10%FBS含有DMEM培地(HepG2細胞)、10%FBS含有DMEM培地(HeLa細胞))した後、導入時に、新しく0.5mlの10%FBS含有培地に交換した。
1ウェルあたり1μgのプラスミドDNA(GFP)(入手先:日本ジーン社)を25μlのNaCl溶液(150mM)に混合し、1.3mMの各種糖脂質複合化リポソーム(12G2/10GGlc、12G2/12GGlc、14D2/10GGlc、14D2/12GGlc、14D2/12GCL、14D6/10GGlc、14D6/12GGlc、14D6/12GCL)および二分子膜型脂質(12G2、14D2、14D6)各5μlを上記のプラスミドDNA溶液に混合して5分間インキュベート後、糖脂質複合化リポソーム−プラスミドDNA複合体および陽イオン性脂質分子集合体−プラスミドDNA複合体を得た。これを上記細胞に加え、CO2インキュベーター(5% CO2/95%大気)中37℃で20時間インキュベートした。細胞を観察し、フローサイトメトリーにより蛍光を測定した。結果を図1〜3に示す。糖脂質複合化リポソームをキャリアとして用いた場合に、プラスミドDNA(GFP)が高頻度で細胞内に導入されていることが分かった。
また、同様の方法で、糖脂質複合化リポソーム(12G2/マンノース脂質(F)、14D6/マンノース脂質)および二分子膜型脂質(12G2、14D6)を用いて、プラスミドDNA(GFP)を細胞内に導入した。結果を図4に示す。糖脂質複合化リポソームをキャリアとして用いた場合に、プラスミドDNA(GFP)が高頻度で細胞内に導入されていることが分かった。
〔実施例3〕糖脂質複合化リポソームを用いた培養細胞へのsiRNA導入
CHO-EGFP細胞(蛍光タンパク質Enhanced Green Fluorescent Ptotein (EGFP)を恒常的に発現するCHO細胞;CHO細胞(入手先:理化学研究所))に、常法によりEGFP遺伝子発現ベクターをトランスフェクトして作製した)1〜2×105細胞/ウェルを、24ウェルプレート中で16時間前培養(10%FBS含有DMEM培地中)した後、導入時に、新しく0.5mlの10%FBS含有培地に交換した。
50pMのEGFP siRNAを25μlのNaCl溶液(150mM)に混合し、1.3mMの各種糖脂質複合化リポソーム(12G2/12GGlc、12A2/12GGlc)および二分子膜型脂質(12G2、12A2)各5μlを上記のsiRNA溶液に混合して5分間インキュベート後、糖脂質複合化リポソーム−siRNA複合体および陽イオン性脂質分子集合体−siRNA複合体を得た。これを上記CHO-EGFP細胞に加え、CO2インキュベーター(5% CO2/95%大気)中37℃で4時間インキュベートした後、血清を含む培地に交換した。翌日、細胞を観察し、フローサイトメトリーにより蛍光を測定した。結果を図5に示す。siRNA導入効率は、二分子膜型脂質(12G2、12A2)だけの時を1とし、相対活性で示している。糖脂質複合化リポソーム(12G2/12GGlc、12A2/12GGlc)をキャリアとして用いた場合に、siRNAが高頻度で細胞内に導入されていることが分かった。
〔実施例4〕糖脂質複合化リポソームを用いたマウスへのsiRNA導入
2nMのCy-3 siRNA(蛍光標識siRNA)を200μlのNaCl溶液(150mM)に混合した。1.3mMの糖脂質複合化リポソーム(12G2/12GGlc)(各50μl)を上記の溶液に混合した後、5分間インキュベートした。この混合液をBalb/cマウス(7週齢)の尾静脈から注射し、4時間後マウスを解剖し、肺、肝臓、脾臓および腎臓を抽出し、小片にカットした後、蛍光顕微鏡で各組織を観察した。表1に結果を示す。
Figure 2006254877
表1はマウスの各臓器へのsiRNA導入の結果を示す。表中、++はsiRNAが約25%の細胞に導入されていること、+は約10%の細胞に導入されていること、±はわずかに導入されていること、―は導入されていないことをそれぞれ示す。表1に示されるように、12G2/12GGlcを用いることにより、生体内の各臓器へsiRNAを導入できた。特に肝臓と脾臓への導入効率が優れていた。
本発明のキャリアは、siRNAなどの低分子核酸を含む化合物を効率よく細胞内に導入することができる。また、細胞毒性が低く、比較的安価且つ化学的変性を受けにくいので、研究用および医薬用の高性能な化合物細胞内導入試薬として有用である。
CHO細胞、HC細胞へのプラスミドDNA導入における二分子膜型脂質に複合化した糖脂質の効果を示す図である。(a)CHO細胞(b)HC細胞 HepG2細胞、HeLa細胞へのプラスミドDNA導入における二分子膜型脂質に複合化した糖脂質の効果を示す図である。(a)HepG2細胞(b)HeLa細胞 CHO細胞、HC細胞へのプラスミドDNA導入における二分子膜型脂質に複合化した糖脂質の効果を示す図である。(a)CHO細胞(b)HC細胞 プラスミドDNA導入における二分子膜型脂質に複合化した糖脂質の効果を示す図である。12G2とマンノース脂質(F)(Aで示す)、14D6とマンノース脂質(Bで示す)の効果を示している。 CHO-EGFP細胞へのsiRNA導入における二分子膜型脂質に複合化した糖脂質の効果を示す図である。導入効率は二分子膜型脂質(12G2、12A2)だけの時を1とし、相対活性として示す。

Claims (15)

  1. 下記式(I):
    Figure 2006254877

    (式中、RおよびRはそれぞれ独立して炭化水素基を:ZおよびZはそれぞれ独立して−O−CO−または−CO−O−を:mは0、1または2を:nは0、1または2を:Yは>N−または>CH−NH−を:pは1〜16の整数を:R、RおよびRはそれぞれ独立して炭化水素基を:Xはハロゲン原子を示す)
    および、下記式(II):
    Figure 2006254877

    (式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して炭化水素基を:Xはハロゲン原子を示す)
    であらわされる化合物から選択される少なくとも一種の化合物と、下記式(III):
    Figure 2006254877

    (式中、R10およびR11はそれぞれ独立して炭化水素基を:R12は糖残基を:Lは結合手または2価のスペーサー基を:qは1または2を示す)
    で表される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有してなる、化合物の細胞内導入用キャリア。
  2. リポソームである、請求項1記載のキャリア。
  3. 負に荷電している化合物を細胞内に導入するための、請求項1または2記載のキャリア。
  4. 核酸を細胞内に導入するための、請求項1〜3のいずれかに記載のキャリア。
  5. 核酸がプラスミドDNAである、請求項4記載のキャリア。
  6. 核酸がsiRNAである、請求項4記載のキャリア。
  7. ペプチドまたはタンパク質を細胞内に導入するための、請求項1〜3のいずれかに記載のキャリア。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のキャリアと化合物との複合体。
  9. 該化合物が負に荷電している、請求項8記載の複合体。
  10. 該化合物が核酸である、請求項8または9記載の複合体。
  11. 核酸がプラスミドDNAである、請求項10記載の複合体。
  12. 核酸がsiRNAである、請求項10記載の複合体。
  13. 該化合物がペプチドまたはタンパク質である、請求項8または9記載の複合体。
  14. 請求項8〜13のいずれかに記載の複合体と細胞とを接触させることを含む、化合物の該細胞内への導入方法。
  15. 請求項8〜13のいずれかに記載の複合体を、ヒトまたはヒト以外の対象に投与することを含む、該対象の生体内で化合物を細胞内へ導入する方法。
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