JP2006249554A - スパッタリングターゲット及びその調製方法ならびにスパッタ方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面が平滑で高い光線透過率と導電性を有するIZO膜をスパッタ法で形成するためのターゲットを提供する。
【解決手段】 少なくとも酸化インジウムと酸化亜鉛を含有してなるスパッタリングターゲットにおいて、酸化インジウムがIn3−x(0<x≦0.25)で表記され、酸化亜鉛がZnO1−y(0≦y≦0.1)で表記されることを特徴とするスパッタリングターゲット、および、化学量論組成からなる酸化インジウムと金属インジウムとZnO1−y(0≦y≦0.1)で表記される酸化亜鉛との混合物を焼結することを特徴とする上記スパッタリングターゲットの調製方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、スパッタリングターゲット及びその調製方法に関し、より詳しくはスパッタリング法を用いて透明導電性酸化物を成膜する際に透明導電性酸化物表面における異常突起の発生を抑制し、安定にスパッタリングを行うことのでき、かつ、透明性に優れ、導電性にも優れるIZO膜を得ることのできるスパッタリングターゲット及びその調製方法に関する。
有機エレクトロルミネッセンス(以下、ELという。)ディスプレイ作成にあたっては、基板上または基板上に形成した着色層乃至は色変換層の上に形成した透明電極上に有機EL層を形成する。
この透明電極としてITO(酸化インジウムと酸化錫の化合物)が広く用いられているが、透明電極としてITOを用いた場合、透明電極を形成後に熱処理をする必要がある。
しかし、この熱処理によって有機物からなる着色層や色変換層の特性が劣化する。
そこで、透明電極として、ITOの代わりにIZO(酸化インジウムと酸化亜鉛の混合物)を用いる提案がある。(例えば、特許文献1参照。)IZOの場合は室温のような低温で透明電極を成膜できるので、ITOの場合のような成膜後の熱処理時の熱による着色層や色変換層の劣化を防ぐことができる。
また、ITOではあるが、スパッタで形成されるITO膜中の微結晶粒を低減させる目的で、化学量論比よりも酸素欠乏側にずれた組成比を有するITOターゲットを用い、スパッタガス中に水蒸気を混入してスパッタを行う提案がある(例えば、特許文献2参照。)。
また、構成元素中の酸素を減少させた酸素欠損のチタン酸ストロンチウムバリウム[(BaSr)TiO]などの酸化物誘電体ターゲットを用いて、安定した直流スパッタを行うという提案もある(例えば、特許文献3参照。)。
国際公開第WO01/38599号公報 特開平9−50712号公報 特開平6−330297号公報
IZOを用いてスパッタ法で成膜する場合、通常、酸素とアルゴンの混合ガス雰囲気中で行うが、得られるIZO膜の比抵抗を低く抑えるためには酸素流量比を低くする必要がある。しかし、酸素流量比を下げると、IZO膜に異常突起が生成し、電流制御の有機ELデバイスでは電界集中による膜構造の破壊が発生してリークの原因となる。また、酸素流量比が低下すると透明電極の光線透過率も低下する。透明電極としては波長460nmで90%以上の透過率を有することが望ましく、透明電極の比抵抗は4×10−4Ωm以下であることが好ましく、異常突起は、表面粗さを指標としてみた場合、平均粗さ(Ra)が0.5nm以下であることが好ましい。
波長460nmでの光線透過率90%以上とするにはスパッタ時の酸素流量比を9%以上にする必要がある。また、平均粗さRaを0.5nm以下にするためには酸素流量比を11%以上にする必要がある。一方、比抵抗を4×10−4Ωm以下にするためには酸素流量比を11%以上にする必要がある。
すなわち、表面が平滑で、高い光線透過率と高い導電性を有する透明電極を得るためには酸素流量比11%の一点のみで、しかも上記3項目とも好ましい範囲の中では最も低い条件のものしか得られない。また、11%を少しでも外れると上記3項目のうち、少なくとも一つは不良となる。
酸素流量比を11%の1点に固定してスパッタしようとしても、流量比は変動しやすく、安定して上記3項目とも良好なものを得るのは困難である。
特許文献2に記載の方法は、雰囲気ガスとして水蒸気または水蒸気と水素の混合ガスを用いることを必須にしており、酸素欠損により生じた未結合手を水素と結合させてITO膜の結晶化を抑制するものである。
特許文献3に記載のものは、従来、直流スパッタでは得られなかった、チタン酸ストロンチウムバリウムやチタン酸ジルコン酸鉛などの酸化物につき、積極的に酸素欠損を導入して低抵抗化することにより直流スパッタを可能にしたものであり、このスパッタで得られる膜は誘電体薄膜である。
本発明は表面が平滑で、高い光線透過率と高い導電性を有するIZO膜をスパッタ法で形成するためのスパッタリングターゲット及びその形成方法ならびに表面が平滑で、高い光線透過率と高い導電性を有するIZO膜を形成するスパッタ方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明のスパッタリングターゲットは、少なくとも酸化インジウムと酸化亜鉛を含有してなるスパッタリングターゲットにおいて、酸化インジウムがIn3−x(0<x≦0.25)で表記され、酸化亜鉛がZnO1−y(0≦y≦0.1)で表記されることを特徴とする。
また、本発明のスパッタリングターゲットの調製方法は、化学量論組成からなる酸化インジウムと金属インジウムとZnO1−y(0≦y≦0.1)で表記される酸化亜鉛との混合物を焼結することを特徴とする。
また、本発明のスパッタ方法は、上記のスパッタリングターゲットを用い、酸素流量比10〜13%のアルゴン・酸素混合ガス雰囲気下で基板上または基板上に形成した着色層乃至は色変換層の上に透明電極を形成することを特徴とする。
本発明のスパッタリングターゲットを用いると、比較的広い酸素流量比の範囲で、表面が平滑で、高い光線透過率と高い導電性を有するIZO膜を形成することができ、これを有機ELデバイスの透明電極に用いると、リーク不良を改善できる。
本発明のスパッタリングターゲットは、少なくとも酸化インジウムと酸化亜鉛を含有し、酸化インジウムがIn3−x(0<x≦0.25)で表記され、酸化亜鉛がZnO1−y(0≦y≦0.1)で表記される化学量論よりも酸素が欠損したターゲットである。スパッタリングターゲットとしては上記の酸化インジウムと上記の酸化亜鉛のみからなるものが好ましいが、スパッタにより形成される酸化物被膜が実質的に透明電極としての機能に悪影響を与えない限り、他の酸化物を配してもよいが、その酸化物は化学量論組成であるか、酸素欠損型であるものとする。このような酸化物としては、Ga、Sb、Al等を挙げることができる。
上記の酸化インジウムはIn3−x(0<x≦0.25)で表記される必要がある。xが0であると、そのスパッタリングターゲットを用いてアルゴン・酸素混合ガス雰囲気でスパッタすると、波長460nmでの光線透過率、導電性が良好で、表面粗さも小さいIZO膜が得られるのが酸素分圧11%のときのみ、それ以外の酸素分圧では上記3項目の少なくとも1つが不十分となり、11%の場合でも表面粗さと導電性がいずれも期待する最下限の値であり、充分なものとはいえない。酸素流量比を11%としてスパッタしても酸素流量比が変動するためか、充分良好な性能を有するIZO膜が得られがたい。xが0.25を超えると、どのような酸素流量比でも、IZO膜の表面荒れやヒロック(異常突起)の発生が目立つようになる。
上記の酸化亜鉛はZnO1−y(0≦y≦0.1)で表記される必要がある。すなわち酸化亜鉛は化学量論のものでもよく、酸素が欠損していてもよい。ただしyが0.1を超えると、どのような酸素流量比でもIZO膜の表面荒れやヒロックの発生が目立つようになる。
上記の酸化インジウムと酸化亜鉛の比率は、原子比率[In/(In+Zn)]が0.75〜0.97であることが好ましい。
本発明のスパッタリングターゲットは、少なくとも化学量論の酸化インジウム(In)と金属インジウムとZnO1−y(0≦y≦0.1)で表記される酸化亜鉛の混合物を焼結することにより得ることができる。焼結は真空中または還元性雰囲気で行うことが好ましい。
焼結時の酸化インジウムと金属インジウムの混合比は、インジウム原子比率で0<In(金属)/[In(金属)+In(酸化物)]≦0.1であることが好ましい。これは、金属インジウムの量を酸化インジウムの2/11以下にすることで達成できる。この範囲にすることでスパッタターゲットの化学量論の酸化インジウムと金属インジウムの合計を酸化インジウムIn3−xと見たとき、xは、0<x≦0.25となる。
本発明のスパッタ方法は、上述のスパッタターゲットを用い、酸素ガス含有量10〜13%のアルゴン・酸素混合ガス雰囲気下で基板上または基板上に形成した着色層乃至は色変換層の上に透明電極を形成する。スパッタターゲットとして上述のような酸素欠損型スパッタターゲットを用いているので、アルゴン・酸素混合ガスとして酸素流量比を10〜13%とすれば、得られるIZO膜は表面が平滑で、高い光線透過率と高い導電性を有するものとなり、これを有機ELデバイスの透明電極に用いると、このデバイスのリーク不良が大幅に低下する。
本発明のスパッタリングターゲットは、酸素・アルゴン混合ガス雰囲気下でのスパッタでIZO膜を形成するためのターゲットであって、良好な導電性(低比抵抗)、透明性(光線透過率)、平滑性(低い表面粗さ)のIZO膜を得るために最適な酸素流量比範囲の比較的広い混合ガス組成を得るためにスパッタターゲットとして特定の酸素欠損組成としたものである。従って、本願発明は、特許文献2のITO膜を得るための酸素欠損型ターゲットや、特許文献3の誘電体薄膜形成用の酸素欠損型の酸化物誘電体が知られていても、これらとはその目的も、その目的を達成するための技術思想もまったく異なるものである。
以下に、実施例を用いて本発明をさらに説明する。
(実施例1)
金属インジウム粉末と、化学量論組成の酸化インジウム粉末と、ZnOの酸化亜鉛粉末を0.7:7:1の重量比で混合後、金型に充填し、250kg/cmの圧力でプレスして成形体を形成した。この成形体を圧力3t/cm2で冷間等方圧プレス(CIP)した後、空気雰囲気中で1,400〜1,600℃に5時間保持して焼成を行い、円板状の焼結体からなるスパッタターゲットを得た。このスパッタターゲットはIn0.85の酸化インジウムとZnO0.95の酸化亜鉛とからなり、In/(In+Zn)は0.82となる。
このターゲットを用い、ガス圧0.2Pa、スパッタパワー0.1W/cm、基板温度を室温とし、アルゴンと酸素の混合ガスからなるスパッタガスの酸素流量比を1〜15%の範囲で変えて、厚さ200nmのIZO膜を370×470mmのコーニング社製1737ガラス基板上にDC(直流)スパッタで成膜した。
得られた膜の比抵抗、460nmの光線透過率、表面粗さを測定した。比抵抗は4端子法で測定し、光線透過率は分光光度計で、460nm近傍のピークとなる透過率を求めた。
表面粗さは、原子間力走査顕微鏡で10μm□の範囲を測定した値とした。その結果と酸素流量比の関係を図1に示す。図1において、比抵抗は4×10−4Ωcm以下の値を示す範囲を良好な範囲とした。光線透過率は90%以上の値を示す範囲を良好な範囲とした。表面粗さについては、0.5nm以下を示す範囲を良好な範囲とした。
図1から、酸素流量比10〜13%の範囲で、得られたIZO膜は比抵抗、光線透過率、表面粗さとも良好な範囲内に入ることがわかった。
この比抵抗、光線透過率、表面粗さとも良好な範囲内に入ったIZO膜を形成したガラス基板を用いて透明電極とし、色変換方式の有機ELデバイスを作製したところ、リーク不良は5%以下であった。
(比較例1)
化学量論組成の酸化インジウムと化学量論組成の酸化亜鉛とからなり、酸化亜鉛10.7wt%のスパッタターゲットを用いた以外は実施例1と同様にしてDCスパッタで厚さ200nmのIZO膜を370×470mmのコーニング社製1737ガラス基板上に成膜した。実施例1と同様にして得られた膜の比抵抗、460nmの光線透過率、表面粗さを測定した。その結果と酸素流量比の関係を図2に示す。図2から、この比抵抗、光線透過率、表面粗さとも良好な範囲内に入るのは酸素流量比11%の1点のみであった。
この酸素流量比を11%として得られたIZO膜を形成したガラス基板を用いて透明電極とし、色変換方式の有機ELデバイスを作製したところ、酸素流量比を充分に安定して成膜できなかったためか、3項目とも良好である膜の比率が低くなり、リーク不良は10%であった。
(実施例2)
化学量論組成の酸化インジウムと金属インジウムの組成を変化させた種々のスパッタターゲットを実施例1と同様に作製した。これらのスパッタターゲットを用いて実施例1と同様にしてDCスパッタで厚さ200nmのIZO膜を370×470mmのコーニング社製1737ガラス基板上に成膜した。実施例1と同様にして得られた膜の比抵抗、460nmの光線透過率、表面粗さを測定し、また、得られたこれらのIZO膜を透明電極として用いて色変換方式の有機ELデバイスを作製したところ、リーク不良との関連を調べた。その結果、化学量論組成の酸化インジウムと金属インジウムからなる、化学量論組成から酸素が欠損した酸化インジウムをIn3−xで表記したとき、xが、0<x≦0.25の範囲にあるとき、酸素流量比10〜13%の範囲で、得られたIZO膜の比抵抗、光線透過率、表面粗さとも良好な範囲内に入り、得られた有機ELデバイスのリーク不良率も小さく良好であった。
(実施例3)
化学量論組成から酸素が欠損した酸化インジウムをIn2.88とし、酸化亜鉛の亜鉛と酸素の比率を変化させた種々の組成の酸化亜鉛を用いた以外は実施例1と同様にしてスパッタターゲットを作製して、DCスパッタで厚さ200nmのIZO膜を370×470mmのコーニング社製1737ガラス基板上に成膜し、酸化亜鉛の組成と、得られた膜の比抵抗、460nmの光線透過率、表面粗さ、これらのIZO膜を透明電極として用いて色変換方式の有機ELデバイスのリーク率の関係を調べたところ、雰囲気ガスの酸素酸化亜鉛をZnO1−yで表記したとき、xが、0≦y≦0.1の範囲にあるとき、酸素流量比10〜13%の範囲で、得られたIZO膜の比抵抗、光線透過率、表面粗さとも良好な範囲内に入り、得られた有機ELデバイスのリーク不良率も小さく良好であった。
(実施例4)
酸化亜鉛の組成をZnO0.95として、実施例2と同様に酸化インジウムの組成を変化させて調べたところ、酸素が欠損した酸化インジウムをIn3−xで表記したとき、実施例2と同様、xが、0<x≦0.25の範囲にあるとき酸素流量比10〜13%の範囲で、良好な結果を示した。
本発明のスパッタターゲットを用いれば、比較的広い範囲の酸素流量比でもIZO膜の比抵抗、光線透過率、表面粗さの良好なIZO膜を得ることができ、このIZO膜を透明電極として用いればリーク不良率の低い有機ELデバイスを得ることができる。
本発明のスパッタターゲットを用いて作製したIZO膜の特性と酸素流量比の関係を示す図である。 従来のスパッタターゲットを用いて作製したIZO膜の特性と酸素流量比の関係を示す図である。

Claims (5)

  1. 少なくとも酸化インジウムと酸化亜鉛を含有してなるスパッタリングターゲットにおいて、酸化インジウムがIn3−x(0<x≦0.25)で表記され、酸化亜鉛がZnO1−y(0≦y≦0.1)で表記されることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  2. In3−x(0<x≦0.25)で表記される酸化インジウムとZnO1−y(0≦y≦0.1)で表記される酸化亜鉛とからなることを特徴とする請求項1記載のスパッタリングターゲット。
  3. 化学量論組成からなる酸化インジウムと金属インジウムとZnO1−y(0≦y≦0.1)で表記される酸化亜鉛との混合物を焼結することを特徴とする請求項2記載のスパッタリングターゲットの調製方法。
  4. 酸化インジウムと金属インジウムの混合比が、インジウム原子比率で0<In(金属)/[In(金属)+In(酸化物)]≦0.1であることを特徴とする請求項3記載のスパッタリングターゲットの調製方法。
  5. 請求項1または2記載のスパッタリングターゲットを用い、酸素流量比10〜13%のアルゴン・酸素混合ガス雰囲気下で基板上または基板上に形成した着色層乃至は色変換層の上に透明電極を形成することを特徴とするスパッタ方法。
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