JP2006249500A - 両親媒性アルコールの電解酸化によるカルボン酸誘導体の製造法 - Google Patents

両親媒性アルコールの電解酸化によるカルボン酸誘導体の製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリエチレングリコール誘導体を出発物質としてそのカルボン酸誘導体を収率よ
く、簡単に得る製造法を提供すること。
【解決手段】ポリエチレングリコール誘導体をN―オキシル誘導体の存在下に緩衝剤を含む単一水溶液中において電解酸化反応せしめることを特徴とするポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法が提供される。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエチレングリコールや置換基を有してもよいモノアルキル化ポリエチレングリコール(PEG誘導体ということもある)などの両親媒性アルコールの電解酸化によるカルボン酸誘導体の製造法に関する。
ポリエチレングリコールや置換基を有してもよいモノアルキル化ポリエチレングルコールのカルボン酸(PEGカルボン酸ということもある) 誘導体は、医薬、歯科材料、生体用高分子材料、食品、化粧料、記録材料、半導体集積回路作製などで使用される電子材料、その他各種工業材料等の広い産業分野において、有用な改質機能材料として提案されている。
具体的には抗腫瘍作用や抗菌作用を有するDC107の化学修飾(WO9825934A1)、ライナマイシンのC−8エステル誘導体の合成(Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters(2003)、13(3)、455-458.)、新規清涼剤を目的とするメントールの化学修飾(WO9928288A1)、インクジェットプリンターに用いられるインク組成物の成分としての応用(US5700316)、ビデオテープのような磁気記録媒体における滑剤への応用(特開平09-132787)、集積回路や半導体の製造工程において使用される酸化シリコンの洗浄用スラリーとしてセシュウムと共に使用される技術(US5759917)、ポリリシン(Polylysine)にメチル化エチレングリコールやジエチレングリコールで修飾することにより水溶性の付与されたペプチドの製造(Journal of the American Chemical Society (1999)、121(51)、12210-12211.)などの提案がある。また金属、金属化合物の修飾としても有用であり、ニッケルフェライトの製造に用いる前駆材料としての技術(Chemistry of Materials(1998)、10(5)、1265-1269.)、フェロエレクトリック薄膜に用いる水溶性金属カルボキシレートプレカーサーとしての技術(ACS Symposium Series(1998)、681 Synthesis and Characterization of Advanced Materials、95-105.)等あらゆる技術分野に亘って様々な提案が行われている。
これらの技術において使用されるポリエチレングリコールやモノアルキル化されたポリエチレングリコールのカルボン酸誘導体の製造法についてもいろいろな提案がされている。通常硝酸、硫酸などの強酸中において金属又は金属化合物触媒の存在下にポリエチレングリコールを酸化反応させて、目的物を分離精製することにより行われる。特許文献1には硝酸中バナジウム化合物を触媒としてグリコール化合物とHCHOとを加熱下反応させる方法、特許文献2にはPt/Pd系及びBi/Pb系を組み合わせた触媒存在下酸素ガスを導入する方法、非特許文献1には硫酸中硫酸セリウム(Ce)によりポリエチレングリコールを酸化する方法、非特許文献2には金属触媒としてMn/Ce複合酸化物がCo/Bi複合酸化物やCu触媒よりも効果的である方法が開示されている。非特許文献3にはブロモアセトアミド、過塩素酸、塩化ルテニウム触媒による方法が提案されている。これらの方法は過激な反応条件、低い収率、精製の困難さ、更には廃水処理などの課題を有する。
上述のような製造法の改良として、触媒として2,2,6,6−テトラメチルピペリジン- N -オキシル(TEMPO)を用い、共酸化剤として過剰(3倍モル当量)のビスアセトキシヨードベンゼンを用いて、水―有機溶媒中で酸化する方法が提案されている(非特許文献4)。この方法は適用範囲が広く簡便な方法ではあるが高価な共酸化剤を大量に使用すること、また比較的低分子のポリエチレングリコール誘導体では目的物の分離、精製が困難であることなどの課題がある。
また非特許文献5に見られるように水ー有機二層溶媒系で、メディエーターとして4ーベンゾイルオキシー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-N-オキシルとハロゲン塩が用いられ、いろいろのアルコール類を電解酸化する方法が提案されている。しかし収率的に適用ができないアルコール類もある。またNOx発生化合物の存在下にポリエチレングリコールを含むポリオキシアルキレンポリオール組成物をN-オキシルのような安定なフリーラジカル酸化窒素と反応させてカルボン酸組成物を製造する技術が特許文献3に記載されている。この方法では製造工程で強い酸である硝酸が発生する。
単一の水系でTEMPOをメディエーターとする電解酸化法は非特許文献6に記載されているが、糖質に関するものである。
DE3209434A1 特開平04−221339号公報 特開2000−198830号公報 Nagarajan,S.ら,POLYMER JOURNAL(Tokyo、Japan)(1994),26(7),851−7. Imamura,Seiichiroら,Industrial & Engineering Chemistry Product Research and Development(1986),25(1),34−7. Singh,Bharatら,Journal of Molecular Catalysis(1988),48(2−3),207−15. Christophe,Massonら,Journal ofPolymer Science :PartA: Polymer Chemistry,Vol.39,4022−4024(2001). Tsutomu Inokuchiら,J.Org.Chem.1991,56,2416−2421. Matthias,Sch繃mannら,Eur.J.Org.Chem.,2003,351−358.
本発明はポリエチレングリコールや置換基を有してもよいモノアルキル化ポリエチレングリコールなどの両親媒性アルコールの酸化によりポリエチレングリコールカルボン酸誘導体を簡便に、高純度で収率良く得ることができ、しかも廃水処理を容易に行うことのできる製造法の開発を課題とする。
本発明者は上述のような従来法の有する問題点を参考に鋭意検討することにより、ポリエチレングリコールやモノアルキル化ポリエチレングリコールなどの両親媒性アルコールの
カルボン酸誘導体の最適な製造法を見出した。即ち(a)、本発明はポリエチレングリコールやモノアルキル化ポリエチレングリコールなどの両親媒性アルコールをN-オキシル触媒の存在下に緩衝剤を含む単一水溶液中で電解酸化することを特徴とするポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法を提供する。本発明は実施の態様として以下のような(b)から(g)に記載の発明を含む。(b)、本発明はポリエチレングリコールカルボン酸誘導体が次の式1で表される上記(a)に記載のポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法を提供する。
Figure 2006249500
上記式1において、Rは水素原子、カルボキシメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ターシャルブチル基、オクチル基、ドデシル基などの分岐を有しても良いアルキル基又はTEMPO誘導体の存在下通電に対して不活性な各種置換基を有するアルキル基 を表し、nは1以上の正数を表す。(c)、本発明は式1においてnが1≦n≦100の範囲にある正数であることを特徴とする上記(b)に記載のポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法を提供する。(d)、本発明はN-オキシル誘導体が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-N-オキシル誘導体であることを特徴とする上記(a)から(c)に記載のポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法を提供する。(e)、本発明はN-オキシル誘導体が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-N-オキシルであることを特徴とする上記(a)から(d)に記載のポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法を提供する。(f)、本発明は緩衝水溶液としてpH6〜pH10の範囲の緩衝水溶液を用いることを特徴とする上記(a)から(e)に記載のポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法を提供する。(g)、本発明は電解反応が10mA/cm2〜500mA/cm2の定電流密度であり、4〜10F/molの通電量の条件下で行われることを特徴とする上記(a)から(f)に記載のポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法を提供する。
本発明はポリエチレングリコールやモノアルキルポリエチレングリコールなどの両親媒性アルコールの電解酸化により、一段階で高純度のカルボン酸誘導体を高収率で製造する経済性、安全性、環境保全性に優れた製造法を提供することが出来る。また本発明の製造法により得られるこれらのカルボン酸誘導体は遊離のアミノ基を持つ化合物、人工アミノ酸、ペプチド、タンパクなどのアミノ化合物との反応、反応性水酸基を有する低分子化合物、糖質、水素結合性金属酸化物などの化合物との反応による新規、有用な機能物質、機能材料を提供することが出来る。このようなことから本発明により得られるポリエチレングリコールカルボン酸誘導体は各種有機材料、無機材料、金属化合物などの極めて有用な親水性改質材となり、医薬、ビタミン、食品添加物、化粧料、生体高分子材料、香気材料、N -オキシル触媒の担持体、機能性インク材料、プラスチック添加剤、工業材料、ゴルフボールなどスポーツ用品などの新規機能性付与に貢献する。
本発明はN-オキシル化合物をメディエーターとして緩衝水溶液中必要な電気を通電するだけで目的のカルボン酸を得ることが出来る。
本発明の対象とするポリエチレングリコールカルボン酸誘導体は上記式(1)で表される。式(1)において、Rは水素原子、カルボキシメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ターシャルブチル基、オクチル基、ドデシル基などの分岐を有しても良いアルキル基、TEMPO誘導体の存在下通電に対して不活性な各種置換基を有するアルキル基を表す。nは1以上の正数を表す。
N-オキシル化合物としては4位に水素原子及び/又はヒドロキシ基、ベンジルオキシ基、
ベンゾイルオキシ基、メトキシ基などの置換基を有する2,2,6,6−テトラメチルピペリジル- N -オキシル、4位にリンカーを介してPEGを結合した2,2,6,6−テトラメチルピペリジル- N -オキシルで水溶性を有する化合物(Organic Letters.2004、Vol.7、No.3, 441-443 )、4位にリンカーを介せず直接PEGを結合した2,2,6,6−テトラメチルピペリジル- N -オキシルで水溶性を有する化合物(J.Org.Chem.2004、69、6851-6859.)などが好適に使用される。4位のヒドロキシル基は自らも一部酸化される性質がみられる。また出発物質であるPEG誘導体は使用目的により様々な分子量のものが選択使用することができる。物質の修飾や改質を目的とするような用途では比較的低分子量が適当であり、式1においてnは500以下、好ましくは100以下が好適である。
電解に用いる緩衝水溶液としては、pH6〜pH10の範囲の緩衝水溶液であれば特に限定はないが、好ましくは炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム緩衝水溶液が用いられる。電解装置としては2枚の電極(陽極,陰極)を付した単一槽の電解装置が用いられるが、フィルタープレス型の電解装置なども用いることができる。電極材料としては、本電解条件で腐食されない電極であれば特に限定はなく、白金、金、チタン、白金で被覆したチタン、ニッケル、ルテニウム,鉄,ステンレスなどの金属電極、グラファイト、グラッシーカーボン、その他各種炭素電極が用いられる。電極間隔は必要な電流が通電できれば特に限定はないが、通常、5mm〜10cm間隔で設置される。電解は電位規制条件あるいは印加電圧規制条件でも行うことができるが、操作の簡便な電流密度規制条件で行うことができる.電流密度としては1mA/cm2〜5000mA/cm2の範囲、好ましくは10mA/cm2〜500mA/cm2の定電流密度で電解する。通電電気量はポリエチレングリコールあるいはモノアルキル置換ポリエチレングリコールの構造や電解条件により一定しないが、通常4〜10F/molの通電量により反応は完結する。電解温度は0〜40℃の範囲であれば特に温度制御は不要であるが、好ましくは0〜25℃で行われる。
以下実施例を上げて本発明を更に詳細に説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明で用いた分析法及び機器は以下の通りである。核磁気共鳴 (NMR) スペクトルはVarian 社製 Gemini−200 (200 MHz) を用いて測定し、化学シフトは内部標準 (テトラメチルシラン) を基準に ppm 単位で表現した。分裂パターンの略記は次の通りである。
s:singlet,d:doublet,m:multiplet,br:broad。
赤外分光 (IR) スペクトルは日本分光社製 FT−IR ValorIIIを用いて測定した。また液体サンプルは液膜法を用いて測定した。
(PEGカルボン酸誘導体の製造(式1において、n=1))
ジエチレングリコールモノメチルエーテル0.061g (東京化成製 M0537,0.5mmol)と2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-N-オキシル 0.017g (TEMPO、0.1mmol) を非分離型電解槽にはかり取り、これに緩衝液(0.40 M aq. Na2CO3 5ml,0.30Maq. NaHCO3、5ml)を加えた。この溶液に約1cmの間隔で配置された二枚の白金電極(1.5×1.0 cm2)を浸し、室温でかき混ぜながら定電流(30 mA)条件下、4.5F/MOL を2時間 通電した。電解終了後、反応液中のTEMPOを酢酸エチルで抽出し、除去した。水層に陽イオン交換樹脂 (amberliteIR120,10ml) を加えて30分間かき混ぜた後ろ過し、ろ液を減圧下蒸発乾固して目的とする2−(2−メトキシエトキシ)酢酸 0.066 g を収率95%で得た。
2−(2−メトキシエトキシ)酢酸 は無色液体であり、1H NMR (200MHz, CDCl3) はδ 3.43 (s,3H), 3.60 (t, J = 4.4Hz, 2H), 3.76 (t, J = 4.4Hz, 2H), 4.18 (s, 2H), 6.92(s, 1H)を示し、IR (neat)は 3458, 2934, 2639, 2551, 1946,1736, 1458,1432,1355,1202,1144,1117,849 cm-1.を示す。
(PEGカルボン酸誘導体の製造(式1において、R=CH2COOH、n= 6〜7))
ポリエチレングリコール0.199 g (和光純薬製161−09065,平均分子量400,0.5mmol) と TEMPO 0.016 g (0.1mmol) を非分離型電解槽にはかりとり, これに緩衝液 (0.40 Maq.Na2CO3, 5ml, 0.30 Maq.NaHCO3, 5ml) を加えた。この溶液に二枚の白金電極 (1.5 x 1.0 cm2。二枚の白金電極は約 1.0 cm の間隔を隔てた。) を浸し, 室温でかき混ぜながら定電流 (30 mA) 条件下, 9 F/molを4時間 通電した。電解終了後, 反応液中の TEMPO を酢酸エチルで抽出, 除去した。水層に陽イオン交換樹脂 (amberliteIR120,10ml) を加え30分間かき混ぜたのちろ過し, ろ液を減圧下乾固して目的とする3,6,9,12,15,18,21,24―オクタオキサヘキサコサンジカルボン酸0.212 gを収率 99% で得た。
3,6,9,12,15,18,21,24―オクタオキサヘキサコサンジカルボン酸は無色液体であり、1H NMR (200 MHz, CDCl3) はδ 3.39−3.95(br s, 28H), 4.06−4.30(br s, 4H), 6.00−6.70(br s, 2H)を示し、IR (neat)は 3515,2879,1755,1638,1440,1351,1289, 1216, 1118,945, 855cm-1 を示す。
他のPEG誘導体も同様の方法で製造することができる。本発明により製造された代表的なPEGカルボン酸誘導体を表1に記載する。
Figure 2006249500
参考例
表2に比較例として、種種の疎水性あるいは親水性のアルコールの電解酸化反応の結果を示す。本発明の電解法はポリエチレングリコールやモノアルキルポリエチレングリコールなどの両親媒性アルコールに特異的に有効であり、一般的な親水性アルコールの酸化には適用できない。
表2 疎水性および親水性アルコール類の電解酸化
Figure 2006249500

本発明によれば、PEG誘導体から電解酸化により、収率良く、簡単且つ安全にPEGカル
ボン酸誘導体を製造することができる。また製造後の廃水処理も簡単であり、負荷が少な
い。
このようなことから、水溶性や親水性付与を目的とする機能性材料の開発、製造において
PEGカルボン酸のニーズが高まり、医薬、食品、化粧品、生体高分子などのバイオ産業
のみならずエレクトロニクス産業の発展にも大いに貢献する。

Claims (7)

  1. ポリエチレングリコール誘導体をN-オキシル誘導体の存在下に緩衝剤を含む単一水溶液中において電解酸化反応せしめることを特徴とするポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法。
  2. ポリエチレングリコールカルボン酸誘導体が次式で表される請求項1に記載のポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法、
    Figure 2006249500
    上記式1において、Rは水素原子、カルボキシメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ターシャルブチル基、オクチル基、ドデシル基などの分岐を有しても良いアルキル基又はTEMPO誘導体の存在下通電に対して不活性な各種置換基を有するアルキル基 を表す。nは1以上の正数を表す。
  3. 式1においてnが、1≦n≦100
    の範囲にある正数であることを特徴とする請求項2に記載のポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法。
  4. N-オキシル誘導体が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン-N-オキシル誘導体であることを特徴とする請求項1から3に記載のポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法。
  5. N-オキシル誘導体が2,2,6,6―テトラメチルピペリジン-N-オキシルであることを特徴とする請求項1から4に記載のポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法。
  6. 緩衝水溶液としてpH6〜pH10の範囲の緩衝水溶液を用いることを特徴とする請求項1から5に記載のポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法。
  7. 電解反応が10mA/cm2〜500mA/cm2の定電流密度であり、4〜10F/molの通電量の条件下で行われることを特徴とする請求項1から6に記載のポリエチレングリコールカルボン酸誘導体の製造法。
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