JP2006249325A - 金属加工用油剤 - Google Patents

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Masahito Nagao
雅人 長尾
Michio Aoki
道生 青木
Keiichi Kawada
圭一 河田
Hideaki Imanishi
秀明 今西
Yutaka Sato
豊 佐藤
Kazuyoshi Takeda
和好 武田
Koichi Goto
孝一 後藤
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Abstract

【課題】 金属加工品と接触する合成樹脂製部材の不具合を低減することができる金属加工用油剤を提供する。
【解決手段】 金属加工用油剤は、不飽和脂肪酸エステルと、マレイン化された不飽和脂肪酸エステルであるマレイン化エステルとを含有する。この金属加工用油剤の酸価は、1(mgKOH/g)以上である。この酸価は60(mgKOH/g)以下であることが好ましく、30(mgKOH/g)以下であることがさらに好ましい。加えて、この酸価は6〜10(mgKOH/g)であることが最も好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、各種金属を機械加工する際における潤滑剤等として使用される金属加工用油剤に関するものである。
従来、切削加工、研削加工等の機械加工においては、金属材料に加工液を供給しつつ金属材料を加工している。こうした加工液は、金属材料に対する工具の潤滑やその工具の冷却を目的として使用されている。近年では、廃液量の削減、作業環境の改善等を目的として、油剤から形成される油膜によって覆われた水滴を加工液として、その加工液を霧状にして加工点に吹き付ける機械加工方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ところで、例えば自動車部品等において、金属材料を加工して得られる金属加工品は合成樹脂材料と接触した状態で組み合わされた後、各種部品として利用されている。
特開2001−239437号公報
最近では、環境負荷の低減等を目的として、エステル系油剤を機械加工の加工液として使用することによって、環境負荷の低減等を図る試みがなされている。ところで、金属加工品の表面に残留しているエステル系油剤が、合成樹脂製部材に浸透することによって、合成樹脂製部材の残留応力が緩和され、その結果合成樹脂製部材が変形したり、その合成樹脂製部材に亀裂が生じたりすることがある。このようにエステル系油剤は環境負荷の低減という利点がある一方、金属加工品と組み合わせて使用される合成樹脂製部材に対してはそのような亀裂(この亀裂は環境応力亀裂と呼ばれる)等の不具合が発生し易い。
本発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、金属加工品と接触する合成樹脂製部材に対する不具合の発生を低減することができる金属加工用油剤を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の金属加工用油剤は、不飽和脂肪酸エステルと、マレイン化された不飽和脂肪酸エステルであるマレイン化エステルとを含有してなり、酸価が1(mgKOH/g)以上であることを要旨とする。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の金属加工用油剤において、前記酸価が60(mgKOH/g)以下であることを要旨とする。
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の金属加工用油剤において、前記酸価が30(mgKOH/g)以下であることを要旨とする。
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の金属加工用油剤において、前記酸価が6〜10(mgKOH/g)であることを要旨とする。
以下、本発明の「作用」について説明する。
請求項1に記載の発明によると、酸価が1(mgKOH/g)以上に設定されているため、金属加工用油剤中にはマレイン化エステルに結合しているカルボキシル基が有効量存在している。こうしたマレイン化エステルに結合しているカルボキシル基と、不飽和脂肪酸エステルとを共存させることによって、金属加工用油剤の合成樹脂材料に対する浸透力が低下されると推測される。そのため、この金属加工用油剤を加工液として得られる金属加工品を利用するに際し、その金属加工品と接触する合成樹脂製部材に対する金属加工用油剤の影響を低減することができるようになる。
請求項2及び3に記載の発明によると、機械加工の加工液として好適な粘性を有する金属加工用油剤を提供することができるようになる。すなわち、酸価を高くすることは、マレイン化エステルの含有量を増大させることになる。マレイン化エステルの含有量が増大すると、それに伴い金属加工用油剤の動粘度は上昇する。そのため、酸価を60(mgKOH/g)以下に設定することが好ましい。さらに、酸価を30(mgKOH/g)以下に設定することによって、金属加工用油剤の動粘度は一層低下され、金属材料に対する金属加工用油剤の供給形態を霧状にすることも容易となる。
請求項4に記載の発明によると、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる金属材料を加工するに際し、その金属材料の表面にマレイン化エステルのカルボキシル基が吸着し、不飽和脂肪酸エステル及びマレイン化エステルが金属材料の表面に対して安定した保護膜を形成すると推測される。従って、この金属加工用油剤を油膜とした水滴を霧状にして加工点に吹き付けて使用しても、金属材料の表面に形成された保護膜によって、金属材料を水から有効に保護することができるようになる。
本発明によれば、金属加工品と接触する合成樹脂製部材の不具合を低減することができる。
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
金属加工用油剤は、不飽和脂肪酸エステルと、マレイン化された不飽和脂肪酸エステルであるマレイン化エステルとを含有して構成される。この金属加工用油剤の酸価は、1(mgKOH/g)以上である。この金属加工用油剤は、金属材料の機械加工における加工液として、金属材料に対する工具の潤滑や工具の冷却を目的として使用される。この金属加工用油剤を加工液として機械加工された金属加工品は、合成樹脂製部材と接触した状態で各種部品として利用される。
不飽和脂肪酸エステルは、不飽和脂肪酸とアルコールとのエステルであって、マレイン化エステルと共存させることにより、合成樹脂材料に対する影響を低減するために含有される。不飽和脂肪酸エステルを構成する不飽和脂肪酸の具体例としては、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸等が挙げられる。不飽和脂肪酸エステルを構成するアルコールとしては、1価アルコール及び多価アルコールから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。1価アルコールの炭素数は、好ましくは1〜24、より好ましくは1〜12、さらに好ましくは1〜8である。なお、1価アルコールの炭素鎖は直鎖であっても分岐状であってもよい。また、1価アルコールは飽和であっても不飽和であってもよい。多価アルコールとしては、好ましくは2〜10価、より好ましくは2〜4価のものが用いられる。
不飽和脂肪酸エステルの具体例としては、オレイン酸を不飽和脂肪酸とした不飽和脂肪酸エステルの例を示すと、オレイン酸メチル、牛脂脂肪酸メチル、大豆油脂肪酸メチル、オレイン酸n−プロピル、オレイン酸i−プロピル、オレイン酸n−ブチル、オレイン酸i−ブチル、オレイン酸n−ヘキシル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、モノオレイン酸グリセリン、ジオレイン酸グリセリン、トリオレイン酸グリセリン、ジオレイン酸ネオペンチルグリコール、ジオレイン酸ペンタエリスリトール、テトラオレイン酸ペンタエリスリトール、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリオレイン酸トリメチロールプロパン等が挙げられるが、これらに限定されない。不飽和脂肪酸エステルは、単独で配合してもよいし、複数種を組み合わせて配合してもよい。
不飽和脂肪酸エステルは、天然物由来の油脂に含まれる不飽和脂肪酸エステルであってもよいし、合成の不飽和脂肪酸エステルであってもよい。天然物由来の油脂としては、菜種油、紅花油、大豆油、コーン油、ごま油、オリーブ油、米油、綿実油、ひまわり油等の植物油脂、牛脂、豚脂等の動物油脂等が挙げられる。こうした天然物由来の油脂には、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸と、グリセリンとのエステルである不飽和脂肪酸トリグリセリドを主成分としている。これらの油脂の配合によって、金属加工用油剤中に不飽和脂肪酸エステルを含有させることができる。一方、金属加工用油剤には、不飽和脂肪酸とアルコールとの縮合反応等によってエステル化して得られる合成の不飽和脂肪酸エステルを含有させてもよい。
マレイン化エステルは、マレイン化された不飽和脂肪酸エステルであって、不飽和脂肪酸エステルと共存させることにより、合成樹脂材料に対する影響を低減するために含有される。詳述すると、マレイン化エステルは、上述の不飽和脂肪酸エステルを構成する脂肪酸部分の不飽和結合にマレイン酸が結合したものである。マレイン酸が結合した部位における構造の一例を化1に示す。
Figure 2006249325
なお、不飽和結合に結合したマレイン酸の構造は、化1に示す構造に限定されない。ここでいうマレイン化エステルは、不飽和脂肪酸エステルと無水マレイン酸とを加熱混合して得られる化合物をいう。不飽和脂肪酸エステルの不飽和結合に対するマレイン酸の結合は、不飽和結合部分に無水マレイン酸を付加する反応であるディールス・アルダー(Diels−Alder)反応によって実現される。
マレイン化エステルの原料としては、合成の不飽和脂肪酸エステル及び上述の天然物由来の油脂が挙げられる。こうしたマレイン化エステルの原料における不飽和結合量はヨウ素価で示される。マレイン化エステルの原料に含まれる不飽和結合量は、反応性が良好となる結果、マレイン化エステルが収率よく得られるという観点から好ましくは5〜135(gI/100g)、より好ましくは50(gI/100g)以上である。なお、このヨウ素価はJIS K 0070(化学製品の酸価、ケン化価、エステル価、ヨウ素価、水酸基価および不ケン化物の測定方法)の指示薬滴定法により測定した値を示す。マレイン化エステルは、単独で含有させてもよいし、複数種を組み合わせて含有させてもよい。
金属加工用油剤の酸価は、1(mgKOH/g)以上、好ましくは60(mgKOH/g)以下、より好ましくは30(mgKOH/g)以下、さらに好ましくは6〜10(mgKOH/g)である。この酸価が1(mgKOH/g)未満であると、金属加工用油剤が合成樹脂製部材へ浸透し易くなる。また、この酸価が60(mgKOH/g)を超えると、金属加工用油剤の動粘度が高くなるため、機械加工の加工液としての取り扱い性が低下するおそれがある。この酸価を30(mgKOH/g)以下に調整することによって、金属加工用油剤を加工点に霧状に吹き付けることが容易となる。さらに、この酸価を6〜10(mgKOH/g)に調整することによって、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる金属材料を加工する際において、水素の発生を十分に抑制することができるとともに、金属加工用油剤を安定した霧状の形態とすることができるようになる。なお、この酸価はJIS K 0070(化学製品の酸価、ケン化価、エステル価、ヨウ素価、水酸基価および不ケン化物の測定方法)の指示薬滴定法により測定した値を示す。
金属加工用油剤の動粘度は、40℃において、好ましくは40〜120(mm/s)、より好ましくは40〜110(mm/s)以下、さらに好ましくは40〜100(mm/s)である。この動粘度が40〜120(mm/s)であると、金属材料の機械加工、特に切削加工に好適な金属加工用油剤を提供することができる。また、この動粘度が100(mm/s)以下であると、金属加工用油剤を安定した霧状の形態とすることができるようになる。
この金属加工用油剤には、その他の成分として、消泡剤、防食剤、酸化防止剤等を必要に応じて含有させることも可能である。さらに、この金属加工用油剤には、その他の成分として飽和脂肪酸エステルが含有されていてもよい。すなわち、金属加工用油剤の原料として天然由来の油脂を使用した場合、得られる金属加工用油剤には、飽和脂肪酸エステルが含有されることになる。また、金属加工用油剤の原料として合成の不飽和脂肪酸エステルを使用した場合、微量の飽和脂肪酸エステルが含有されることになる。金属加工用油剤中において、不飽和脂肪酸エステルと、マレイン化エステルとの合計の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%である。このように合計含有量を設定することによって、不飽和脂肪酸エステルとマレイン化エステルとの共存による作用、すなわち合成樹脂材料に対する影響を低減する作用がより一層得られるようになる。
この金属加工用油剤は、不飽和脂肪酸エステル又は不飽和脂肪酸エステルを含有する油脂を原料として、その原料に無水マレイン酸を付加反応させることによって得られる。この場合、無水マレイン酸の反応量を調整することにより、不飽和脂肪酸エステルの一部量をマレイン化する。すなわち、得られた反応物である金属加工用油剤には、未反応の不飽和脂肪酸エステルと、反応して得られたマレイン化エステルとが含有することになる。また同様に、無水マレイン酸の反応量を調整することにより、得られた反応物である金属加工用油剤の酸価が1(mgKOH/g)以上に設定される。
また、この金属加工用油剤は、不飽和脂肪酸エステル又は不飽和脂肪酸エステルを含有する油脂と、マレイン化エステル又はマレイン化エステルを含有する油脂とを混合調製することによって得ることもできる。この場合、マレイン化エステル又はマレイン化エステルを含有する油脂の酸価を考慮して、配合量を調整することにより、得られた混合物である金属加工用油剤の酸価が1(mgKOH/g)以上に設定される。
金属加工用油剤の含有成分である不飽和脂肪酸エステル及びマレイン化エステルは、環境負荷を低減するという観点から、天然物由来の油脂を原料とすることが好ましく、植物油脂を原料とすることがさらに好ましく、不飽和脂肪酸エステルであるオレイン酸エステルの含有量が高いという観点から菜種油が一層好ましい。
なお、不飽和脂肪酸エステルと、マレイン化エステルの原料となる不飽和脂肪酸エステルとは異なる種類であってもよい。すなわち、例えばオレイン酸エステルと、マレイン化されたリノール酸エステルとを含有させることによって、金属加工用油剤を構成してもよい。ただし、不飽和脂肪酸エステルとマレイン化エステルとの相溶性が高まるという観点から、不飽和脂肪酸エステルと、マレイン化エステルの原料となる不飽和脂肪酸エステルとは、同種であることが好ましい。
金属加工用油剤を加工液として加工される金属材料は、鉄鋼材料の他に、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタニウム、チタニウム合金、ニッケル基合金、コバルト基合金等の非鉄金属材料が挙げられる。金属加工用油剤を加工液とする機械加工としては、切削加工、研削加工、圧延加工、引抜き加工、プレス加工、鍛造加工等が挙げられる。なお、金属加工用油剤は、その状態で金属材料の加工点に供給してもよいし、この金属加工用油剤を水滴の表面における油膜形成成分に適用し、金属加工用油剤から形成される油膜によって覆われた水滴として加工点に供給してもよい。また、金属加工用油剤の加工点への供給方法は、液状で供給してもよいし、圧縮気体を利用して金属加工用油剤を霧状で供給してもよい。特に、金属加工用油剤と水とを圧縮気体によって噴霧することにより、金属加工用油剤から形成される油膜によって覆われた水滴を霧状に加工点に供給する方法(例えば特許文献1参照)によれば、加工液としての機能を十分に発揮させつつ、金属加工用油剤の使用量を削減することができるようになる。その結果、廃液として処理する加工液の量を削減することができるようになる。
この金属加工用油剤を加工液として加工された金属加工品は、合成樹脂製部材と組み合わされた後、各種部品として利用される。この合成樹脂製部材を構成する合成樹脂としては、結晶性樹脂及び非晶性樹脂に分類される。結晶性樹脂としては、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が挙げられる。非晶性樹脂としてはアクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン三元共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−エチレン・プロピレンゴム−スチレン三元共重合体(AES樹脂)、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。この金属加工用油剤は、特に非晶性樹脂に対する影響を低減する作用に優れている。
次に、このように構成された金属加工用油剤の作用について説明する。
この金属加工用油剤を加工液として加工された金属加工品は、適宜洗浄された後、例えばインサート成形等により合成樹脂製部材で被覆されて製品化される。ここで、金属加工品の表面に残留していた金属加工用油剤と合成樹脂製部材とが接触した状態となる。合成樹脂製部材、すなわち合成樹脂材料に対する金属加工用油剤の浸透力が高い場合、合成樹脂部材の成形に際し、残留している残留応力が金属加工用油剤の浸透によって緩和されると推測され、その結果、合成樹脂製部材において、変形や亀裂といった現象に代表される不具合が発生することになる。本実施形態の金属加工用油剤は、合成樹脂材料に対する浸透力が低下されると推測され、金属加工品と接触する合成樹脂製部材への影響を低減することができるようになる。
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) この実施形態の金属加工用油剤は、不飽和脂肪酸エステルと、マレイン化エステルとを含有してなり、酸価が1(mgKOH/g)以上であるため、合成樹脂材料に対する浸透力を低下させることができると推測され、その結果、金属加工品と接触する合成樹脂製部材に対する不具合の発生を低減することができる。
さらに、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる金属材料を加工するに際し、その金属材料の表面にマレイン化エステルのカルボキシル基が吸着し、不飽和脂肪酸エステル及びマレイン化エステルが金属材料の表面に対して安定した保護膜を形成すると推測される。従って、この金属加工用油剤を油膜とした水滴を霧状にして加工点に吹き付けて使用しても、金属材料の表面に形成された保護膜によって、金属材料を水から有効に保護することができるようになる。その結果、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる金属材料との水とが反応して水素が発生することを抑制することができるため、そうした金属材料に適した金属加工用油剤を提供することができる。
(2) 酸価を60(mgKOH/g)以下に設定することにより、機械加工の加工液として好適な粘性を有する金属加工用油剤を提供することができるようになる。すなわち、酸価を高くすることは、マレイン化エステルの含有量を増大させることになる。マレイン化エステルの含有量が増大すると、それに伴い金属加工用油剤の動粘度は上昇する。そのため、酸価を60(mgKOH/g)以下に設定することが好ましい。さらに、酸価を30(mgKOH/g)以下に設定することによって、金属加工用油剤の動粘度は一層低下され、金属材料に対する金属加工用油剤の供給形態を霧状にすることも容易となる。
(3) 酸価を6〜10(mgKOH/g)に設定することにより、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる金属材料の表面に一層安定した保護膜が形成されるようになると推測され、その結果、そうした金属材料との水とが反応して水素が発生することを一層抑制することができる。さらに、金属加工用油剤の動粘度も低く維持されるため、この金属加工用油剤を油膜とした水滴を霧状にして加工点に吹き付けて使用すると、水素発生抑制効果が十分に得られることに加え、金属加工用油剤の使用量も削減することができるようになる。
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 40℃における動粘度が40〜120(mm/s)である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の金属加工用油剤。この場合、金属材料の機械加工、特に切削加工に好適な金属加工用油剤を提供することができる。
次に、実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
<マレイン化エステルの合成>
温度計及びリービッヒ冷却管を装着したセパラブルフラスコに無水マレイン酸20質量部及び菜種油500質量部を入れた後、200℃で3時間加熱攪拌した。なお、無水マレイン酸と菜種油とのモル比は、無水マレイン酸(分子量=98)のモル:菜種油(平均分子量=885:菜種油の脂肪酸組成をすべてオレイン酸と仮定し、オレイン酸トリグリセリドとして算出)のモル=1:3である。冷却した後、反応生成物を分液ロートにてイオン交換水で洗浄した。この洗浄は廃液が中性になるまで行った。洗浄後の反応生成物は、多量の水によって乳化状態となっているため、70℃に加温してエバポレータによって水分を除去することにより、透明な反応生成物を得た。得られた反応生成物を濾過することによって、最終生成物であるマレイン化菜種油を得た。このマレイン化菜種油の物性は以下の通りであった。
酸価:35(mgKOH/g)
ケン化価:220(mgKOH/g)
ヨウ素価:85(gI/100g)
水分:0.20%以下
(実施例1)
得られたマレイン化菜種油3質量部と、菜種油(酸価0.08(mgKOH/g))97質量部とを攪拌機にて混合することによって金属加工用油剤を調製した。得られた金属加工用油剤の酸価、及び40℃における動粘度を表1に示す。
(実施例2〜4)
マレイン化菜種油及び菜種油の配合量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にして金属加工用油剤を調製した。得られた金属加工用油剤の酸価、及び及び40℃における動粘度を表1に示す。
(比較例1)
菜種油(酸価0.08(mgKOH/g))を比較例1とした。
(比較例2)
マレイン化菜種油及び菜種油の配合量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にして金属加工用油剤を調製した。
(比較例3)
合成エステル油(酸価0.02(mgKOH/g))を比較例3とした。
Figure 2006249325
<環境応力亀裂に対する評価>
合成樹脂製の試験片(サイズ:縦5インチ(127mm)×横1/2インチ(12.7mm)×厚さ1/4インチ(6.4mm))を準備し、その試験片が所定のたわみ量となるように試験片の長手方向両端を支持した。その状態の試験片において、引張応力が生じる側の面に、各例の金属加工用油剤を塗布した後、その試験片を75℃で3時間放置した。金属加工用油剤を塗布した塗布面について、クラックの有無を実体顕微鏡で確認した。試験片のたわみ量δとクラックの有無とから表2に示す評価基準に従って評価した評価点によって採点した。
Figure 2006249325
各合成樹脂製の試験片における評価点を表3に示す。各試験片についての評価点の合計点が4点以下である場合を合格(○)、5点以上である場合を不合格(×)とした結果を表3に併記する。
Figure 2006249325
表3の結果から明らかなように、各実施例では環境応力亀裂について合格であった。これに対し、比較例1及び3ではマレイン化菜種油(マレイン化エステル)が含有されていないため、環境応力亀裂について不合格の結果であった。比較例2では、菜種油(不飽和脂肪酸エステル)及びマレイン化菜種油(マレイン化エステル)が含有されているが、酸価が1(mgKOH/g)未満であるため、環境応力亀裂について不合格の結果であった。
<水素発生抑制効果に対する評価>
金属材料としてのマグネシウム合金(JIS H 5303に記載のAZ91D)を超硬ソリッドスクエアエンドミル(φ20mm)により、下記の条件で加工液を使用せずにピックフィード加工を行ったときに発生する切りくずを利用して評価を行った。
加工条件:回転数3000rpm、送り900mm/min、径方向切り込み量1mm、軸方向切り込み量15mm。
各例の金属加工用油剤を油膜とする水滴を切りくず5gの全体にゆきわたるように20秒間吹き付けた後、その切りくずをガラス容器内に入れ、切りくずから発生する水素ガス量を水上置換法によって測定した。なお、各例の金属加工用油剤を油膜とする水滴は、圧縮気体を利用して金属加工用油剤と水とを噴霧する噴霧装置を用い、その噴霧装置へ金属加工用油剤を10mL/h、水を20mL/min、エアーを60NL/minの条件で供給することにより霧状にする。ここで、実施例1〜3の金属加工用油剤の酸価は、30(mgKOH/g)以下に設定されているため、それら金属加工用油剤の動粘度も100(mm/s)以下の値を示している(表1参照)。その結果、実施例1〜3の金属加工用油剤は、特に安定性の優れる霧状の形態にすることができた。
発生した水素ガス量が5mL未満である場合を優れる(◎)、5mL以上かつ10mL未満である場合を良好(○)、10mL以上である場合を不良(×)とした結果を表3に併記する。
表3の結果から明らかなように、各実施例では水素発生抑制効果について優れる又は良好の結果であった。特に、実施例3及び4の結果から、酸価が6(mgKOH/g)以上であると、水素発生抑制効果について優れる結果が得られることが示唆される。これに対し、各比較例では、各実施例の4倍以上の水素発生量であり、いずれも水素発生抑制効果について不良の結果となった。

Claims (4)

  1. 不飽和脂肪酸エステルと、マレイン化された不飽和脂肪酸エステルであるマレイン化エステルとを含有してなり、酸価が1(mgKOH/g)以上であることを特徴とする金属加工用油剤。
  2. 前記酸価が60(mgKOH/g)以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属加工用油剤。
  3. 前記酸価が30(mgKOH/g)以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属加工用油剤。
  4. 前記酸価が6〜10(mgKOH/g)であることを特徴とする請求項1に記載の金属加工用油剤。
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