JP2006247454A - 静電噴霧装置 - Google Patents

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衛 奥本
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Abstract

【課題】電極における噴霧液の付着量を抑制することである。
【解決手段】溶液タンク(20)内に連通し且つ第1電極を構成する管状の噴霧ノズル(31)と、噴霧ノズル(31)内の液体から絶縁されたリング電極(35)とを備えている。リング電極(35)は、噴霧ノズル(31)の先端から基端側へ後退した位置に設けられると共に、電極面である外周縁部(R)が円弧状に面取り加工されている。これにより、電気力線が湾曲状に形成されると共に、リング電極(35)近傍での電気力線の密度が粗に形成されるので、リング電極(35)への液滴に対する静電気力が低減される。
【選択図】 図4

Description

本発明は、静電噴霧装置に関し、特に、対向電極への噴霧液の付着防止対策に係るものである。
従来より、電気流体力学(EHD:Electro Hydrodynamic)により液体を霧化して噴霧する静電噴霧装置が知られている。この静電噴霧装置は、例えば細径管の開口端の近傍に電界を形成し、その電界の不平等性を用いて細径管内の液体を霧化して噴霧するものである。
例えば、特許文献1や特許文献2には、静電噴霧装置で構成された吸入器が開示されている。この吸入器は、例えば喘息や気管支炎等の治療薬を霧化し、微細な液滴状になった薬剤を鼻から吸入させるために用いられる。また、特許文献3には、静電噴霧装置で構成された手持ち式のスプレー装置が開示されている。このスプレー装置は、液状のファンデーションや香水等の化粧品を霧化し、微細な液滴状になった化粧品を肌に付着させるために用いられる。
具体的に、これらの特許文献に開示された吸入器やスプレー装置では、細径管等の先端近傍に設けられた電極と、細径管等の先端から前方の少し離れた位置に設けられた対向電極とによって細径管等の先端部に電界が形成される。そして、電界の不平等性によって細径管等内の液体が対向電極側へ引っ張られて放出される。
特開昭62−197071号公報 特表2002−532163号公報 特表2003−507166号公報
しかしながら、上述した従来の静電噴霧装置では、特に対向電極が細径管等の先端の前方に設けられている場合、細径管等から放出された液体粒子が対向電極に付着してしまい、目的位置まで供給されないという問題があった。すなわち、従来では、電界内で生じる静電気力について何ら考慮されていないため、その静電気力によって細径管等から放出された液体が対向電極へそのまま引きつけられるという問題があった。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ノズル等の先端近傍に電界を形成するための電極を備えた静電噴霧装置において、ノズル等から噴霧された液体が電極に付着するのを抑制することである。
第1の発明は、液体を貯留する容器(20)と、該容器(20)内に連通する管状のノズル(31)と、該ノズル(31)内の液体に接する第1電極(31)と、上記ノズル(31)内の液体から絶縁された第2電極(35)とを備え、上記両電極(31,35)間に電圧が印可されて該第1電極(31)から第2電極(35)へ向かう電界が形成されるとノズル(31)の先端から液体が噴霧される静電噴霧装置を前提としている。そして、本発明は、上記噴霧された液体の第2電極(35)へ向かう量が抑制されるように上記電界が形成されている。
上記の発明では、ノズル(31)の先端部の気液界面に作用する表面張力により、ノズル(31)の先端から液体は流出しない。しかし、上記両電極(31,35)間に電圧が印可されて第1電極(31)から第2電極(35)へ向かう電界が形成されると、該ノズル(31)の先端部の液体が霧化され、微細な液滴となってノズル(31)の先端から噴霧される。そして、この噴霧された液体の第2電極(35)へ向かう量が抑制されるので、該第2電極(35)に付着する液体量が減少する。
また、第2の発明は、上記第1の発明において、上記電界は、少なくとも第2電極(35)近傍の電気力線の密度が粗に抑制されるように形成されている。
上記の発明では、第2電極(35)近傍の電界密度が粗に形成されるので、電界の強さが小さくなり、噴霧された液体に対して第2電極(35)方向へ吸引しようとする力、つまり静電気力が小さくなる。したがって、上記第2電極(35)へ向かう液体量が抑制され、第2電極(35)への付着量が減少する。
また、第3の発明は、上記第2の発明において、上記第2電極(35)は、電極面が曲面状に形成されている。
上記の発明では、例えば図7に示すように、電気力線が曲面状の部分全体に亘って満遍なく向かうので、例えば図8に示すように直角形状の角部に電気力線が集中する場合と比べて、第2電極(35)近傍の電気力線の密度が粗に形成される。したがって、噴霧された液体の第2電極(35)側への吸引力が確実に小さくなるので、第2電極(35)への付着量が減少する。
また、第4の発明は、上記第1の発明において、上記電界は、電気力線が湾曲するように形成されている。
上記の発明では、電気力線が湾曲するので、第1電極(31)から第2電極(35)へ直線的に向かう場合と比べて、噴霧された液体に対して第2電極(35)側へ向かう方向とは異なる向きの慣性力が作用する。これにより、第2電極(35)側へ向かう液体の一部が慣性力方向に飛散するので、第2電極(35)側へ向かう液体量が減少する。
また、第5の発明は、上記第4の発明において、上記第1電極(31,35)と第2電極(35)の間には、電気力線を邪魔する非導電性材料の邪魔部材(32a)が設けられている。
上記の発明では、電気力線が邪魔部材(32a)を避けて第2電極(35)へ向かう。つまり、電気力線が少なくとも邪魔部材(32a)を避ける際に確実に湾曲する。したがって、電気力線の湾曲部で液体に対して静電気力とは異なる方向の慣性力が作用するので、第2電極(35)側へ向かう液体量が減少する。なお、上記邪魔部材(32a)は、非導電性材料で形成されているので、電界が邪魔部材(32a)を透過することはない。
また、第6の発明は、上記第4の発明において、上記第1電極(31)と第2電極(35)の間の電気力線が湾曲するように該電気力線を変形させる第3電極(37)が設けられている。
上記の発明では、ノズル(31)から第2電極(35)へ向かう電気力線が第3電極(37)側へ向かって吸引されるので、確実に湾曲する。したがって、噴霧された液体に慣性力が作用し、第2電極(35)へ向かう液体量が確実に減少する。なお、例えば、上記第3電極(37)と第1電極(31)との距離を第2電極(35)と第1電極(31)との距離よりも短くしておけば、すなわち第1電極(31)および第2電極(35)間の電界の方を第1電極(31)および第3電極(37)間の電界の強さより強くしておけば、ノズル(31)から噴霧された液体が主として第3電極(37)側へ飛散するのを防止できる。
また、第7の発明は、液体を貯留する容器(20)と、該容器(20)内に連通し且つ第1電極を構成する管状のノズル(31)と、上記ノズル(31)内の液体から絶縁された第2電極(35)とを備え、上記ノズル(31)と第2電極(35)との間に電圧が印可されて電気力線が該ノズル(31)の先端から第2電極(35)へ向かうように電界が形成されるとノズル(31)の先端から液体が噴霧される静電噴霧装置を前提としている。そして、上記第2電極(35)は、ノズル(31)の先端から基端側へ後退した位置に設けられている。
上記の発明では、電気力線がノズル(31)の先端から後方へ折り返す部分で急激に湾曲する。したがって、上記ノズル(31)から噴霧された液体は、ノズル(31)の先端の前方へ向かって慣性力が作用する。つまり、上記第2電極(35)へ向かう方向のほぼ反対方向に向かって慣性力が生じる。これにより、噴霧された液体の一部が慣性力によってノズル(31)先端の方向へ飛散するので、第2電極(35)へ向かう液体量が確実に減少する。
また、第8の発明は、上記第7の発明において、上記ノズル(31)と第2電極(35)との距離が3mm以上20mm以下となっている。
上記の発明では、ノズル(31)と第2電極(35)との距離が近すぎると、噴霧に適した電界をノズル(31)の先端に形成しにくくなり、また形成できたとしても噴霧された液体が第2電極(35)へ多量に付着してしまう。逆に、ノズル(31)と第2電極(35)との距離が遠すぎると、第2電極(35)への液体の付着は抑制されるが、ノズル(31)と第2電極(35)との間に噴霧可能な適切な電位差が生じ得ない。したがって、上記ノズル(31)と第2電極(35)との距離を所定範囲内に設定することで、ノズル(31)から液体が確実に噴霧されると共に、その噴霧された液体の第2電極(35)への付着が抑制される。
また、第9の発明は、上記第7の発明において、上記ノズル(31)と第2電極(35)との間の印可電圧が2kV以上10kV以下となっている。
上記の発明では、ノズル(31)と第2電極(35)との間に印可する電圧が小さすぎると噴霧できなくなり、逆に大きすぎると噴霧された液体が第2電極(35)へ多量に付着してしまう。したがって、上記印加電圧を所定の範囲内に設定することで、ノズル(31)先端から確実に液体が噴霧されると共に、その噴霧された液体の第2電極(35)への付着が抑制される。
また、第10の発明は、上記第2乃至9の何れか1の発明において、上記ノズル(31)が、先端が容器(20)内の液面よりも低い位置に設けられている。
上記の発明では、容器(20)内の液面とノズル(31)の先端とのヘッド差により、容器(20)内の液体がノズル(31)の先端まで確実に供給される。つまり、容器(20)内の液体をノズル(31)先端まで送り出すポンプ等が不要になるので、装置の小型化およびコスト低減が図れる。
したがって、本発明によれば、噴霧された液体の第2電極(35)へ向かう量が抑制されるように電界を形成するので、第2電極(35)における液体の付着量を抑制することができる。
特に、第2の発明によれば、少なくとも第2電極(35)近傍の電気力線の密度を粗に抑制するようにしたので、噴霧された液体に作用する静電気力を低減することができる。したがって、噴霧された液体の第2電極(35)へ向かう量を確実に抑制することができる。
また、第3の発明によれば、第2電極(35)の電極面を曲面状に形成するようにしたので、例えば角部に比べて電気力線の密度を確実に粗にすることができる。したがって、噴霧された液体の第2電極(35)へ向かう量を確実に抑制することができる。
また、第4の発明によれば、電気力線が湾曲するように電界を形成するようにしたので、噴霧された液体に対して第2電極(35)へ向かう方向とは異なる方向へ慣性力を作用させることができる。これにより、液体に作用する第2電極(35)方向への静電気力が低減するので、該第2電極(35)へ向かって飛散する液体量を減少させることができる。この結果、第2電極(35)における液体の付着を抑制することができる。
特に、第5の発明によれば、第1電極(31,35)と第2電極(35)の間に非導電性材料の邪魔部材(32a)が設けるようにしたので、電気力線が邪魔部材(32a)を避けて第2電極(35)へ向かうことによって確実に湾曲させることができる。したがって、慣性力の作用により、第2電極(35)へ向かう液体量を減少させることができる。
特に、第6の発明によれば、第1電極(31)と第2電極(35)の間の電気力線が湾曲するように該電気力線を変形させる第3電極(37)を設けるようにしたので、電気力線を確実に湾曲させることができる。したがって、慣性力の作用により、第2電極(35)へ向かう液体を抑制することができる。
特に、第7の発明によれば、第2電極(35)を第1電極としてのノズル(31)の先端よりも基端側へ後退させているので、ノズル(31)先端から第2電極(35)へ電気力線を急激に湾曲させることができる。したがって、噴霧された液体に作用する慣性力を増大させることができるので、第2電極(35)へ向かう液体量を減少させることができる。
また、第8の発明によれば、ノズル(31)と第2電極(35)との距離が3mm以上20mm以下となるようにしたので、また、第9の発明によれば、ノズル(31)と第2電極(35)との間の印可電圧が2kV以上10kV以下となるようにしたので、ノズル(31)から霧化状態で液体を噴霧させることができると共に、第2電極(35)における液体の付着を確実に抑制することができる。
また、第10の発明によれば、ノズル(31)の先端が容器(20)内の液面よりも低くなるようにしたので、ポンプ等を用いなくても、容器(20)内の液面とノズル(31)の先端とのヘッド差によって容器(20)内の液体をノズル(31)の先端まで供給することができる。したがって、装置の小型化およびコスト低減を図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
図1に示すように、本実施形態1の静電噴霧装置(10)は、噴霧カートリッジ(15)と電源(16)と制御器(17)とを備えている。
上記噴霧カートリッジ(15)は、図2および図3に示すように、タンクである溶液タンク(20)と、ノズルユニット(30)と、電極ホルダー(40)と、リング電極(35)とを備えている。
上記溶液タンク(20)のタンク本体(21)は、やや扁平な直方体状に形成された中空の容器である。このタンク本体(21)の天板には、空気抜き孔(25)が形成されている。上記タンク本体(21)の底面(22)は、タンク本体(21)の背面(図1における右側面)から前面(図1における左側面)へ向かって傾斜し、タンク本体(21)は、その背面側より前面側の方が深くなっている。
上記タンク本体(21)の前面には、管部(23)が設けられている。この管部(23)は、比較的短い円管状に形成され、タンク本体(21)の前面から概ね水平方向に突出している。上記管部(23)は、タンク本体(21)の前面の下側寄りで、且つ該前面の幅方向の概ね中央に配置されている。また、上記タンク本体(21)の前面を形成する壁には貫通孔(24)が形成され、該貫通孔(24)を介してタンク本体(21)の内部空間と管部(23)とが連通している。
上記ノズルユニット(30)は、図3および図4に示すように、ノズルである噴霧ノズル(31)とノズルホルダー(32)とを備えている。
上記噴霧ノズル(31)は、ステンレス製の円管により構成されている。上記ノズルホルダー(32)は、円筒型で有底のキャップ状に形成されている。上記ノズルホルダー(32)は、内径が管部(23)の外径と概ね等しく、溶液タンク(20)の管部(23)が挿入されている。さらに、上記ノズルホルダー(32)には、噴霧ノズル(31)の基端部が挿入されている。そして、上記溶液タンク(20)にノズルユニット(30)を取り付けると、噴霧ノズル(31)がタンク本体(21)の前面から概ね水平方向へ突出し、さらに、噴霧ノズル(31)が管部(23)および貫通孔(24)を介してタンク本体(21)内に連通する。
上記ノズルホルダー(32)には、端子部(33)が設けられている。この端子部(33)は、ノズルホルダー(32)の外周面から突出し、ノズルホルダー(32)の開口端側(図3における奥側)に位置している。上記ノズルホルダー(32)は、端子部(33)を含む全体が樹脂等の導電性材料によって構成されている。そして、上記噴霧ノズル(31)は、ノズルホルダー(32)と電気的に接続され、第1電極を構成している。なお、図5に示すように、この噴霧ノズル(31)の外径は、0.7mmであり、内径Dは、0.4mmである。上記噴霧ノズル(31)の肉厚tは、0.15mmであり、全長に亘って一定である。
上記電極ホルダー(40)は、内筒部(41)と外筒部(42)とを備えている。この内筒部(41)と外筒部(42)とは、共に円筒状に形成されている。そして、上記内筒部(41)および外筒部(42)は、互いに同軸に配置され、基端側で互いに連結されて一体化されている。上記内筒部(41)の内径は、ノズルホルダー(32)の外径と概ね等しくなっている。上記電極ホルダー(40)は、内筒部(41)および外筒部(42)の基端側をタンク本体(21)に向けて内筒部(41)をノズルホルダー(32)に嵌め込み、該ノズルホルダー(32)に取り付けられている。この電極ホルダー(40)は、全体が樹脂等の非導電性材料により構成されている。
上記リング電極(35)は、円環状に形成され、端子部(36)が設けられている。この端子部(36)は、リング電極(35)の外周からその径方向外方へ突出している。上記リング電極(35)は、端子部(36)を含む全体が導電性樹脂によって構成され、第2電極を構成している。このリング電極(35)は、電極ホルダー(40)における外筒部(42)の先端側(図4における左端側)の外周縁部に嵌め込まれている。上記リング電極(35)は、電極ホルダー(40)が非導電性材料であるので、噴霧ノズル(31)から電気的に絶縁されている。
なお、上述した噴霧ノズル(31)およびリング電極(35)の材質は、単なる一例である。つまり、上記噴霧ノズル(31)の材質は、ステンレス以外の導電性材料(例えば、導電性樹脂など)であってもよい。また、上記リング電極(35)の材質は、導電性樹脂以外の導電性材料(例えば、金属など)であってもよい。
上記タンク本体(21)内には、人体に有益な物質の水溶液、例えばアミノ酸の一種であるテアニンの水溶液が貯留されている。このタンク本体(21)内における液面(51)の位置は、タンク本体(21)の下部から水平方向に延びる噴霧ノズル(31)の先端よりも高くなっている。したがって、上記タンク本体(21)内の液面(51)と噴霧ノズル(31)の先端との間にはヘッド差があり、このヘッド差によってタンク本体(21)内の水溶液(50)が噴霧ノズル(31)の先端へ供給される。
上記電源(16)は、直流高電圧電源である。この電源(16)は、正極端子がノズルホルダー(32)の端子部(33)を介して噴霧ノズル(31)に電気的に接続され、負極端子がリング電極(35)の端子部(36)に電気的に接続されている。上記電源(16)の負極端子は、接地(アース)されている。上記電源(16)をオンすると、第1電極としての噴霧ノズル(31)と第2電極としてのリング電極(35)との間に2〜10kVの電圧が印加され、噴霧ノズル(31)の先端部に電界が形成される。これにより、噴霧ノズル(31)から液体を霧化状態で噴霧させるに必要な電界の強さに設定されると共に、噴霧された液体のリング電極(35)への付着を抑制しうる電界の強さに設定される。なお、上記印加電圧は、5〜6kVがより望ましい値である。
上記制御器(17)は、電源(16)のスイッチングを行うものであって、制御手段を構成している。つまり、この制御器(17)は、電源(16)のオン/オフを所定のサイクルで交互に繰り返すように構成されている。
また、上記静電噴霧装置(10)は、図6に示すように、例えば空気清浄機(90)に設けられている。この場合、静電噴霧装置(10)の電源(16)と制御器(17)は、空気清浄機(90)のケーシング(91)内に収納される。一方、上記静電噴霧装置(10)の噴霧カートリッジ(15)は、空気清浄機(90)のケーシング(91)に対して着脱自在となっている。上記空気清浄機(90)のケーシング(91)に噴霧カートリッジ(15)を取り付けると、噴霧ノズル(31)の先端が空気清浄機(90)の吹出口(92)の上方に位置する。そして、この噴霧ノズル(31)の先端から噴霧された水溶液(50)の液滴は、空気清浄機(90)の吹出空気と共に室内へ供給される。なお、上記溶液タンク(20)が空(カラ)になった場合には、噴霧カートリッジ(15)が新しいものに交換される。
なお、上記静電噴霧装置(10)は、空気清浄機(90)の他、空調機に設けられていてもよいことは勿論である。
次に、上記リング電極(35)の詳細な形状、およびリング電極(35)と噴霧ノズル(31)との詳細な位置関係について、図4を参照しながら説明する。
上記リング電極(35)は、径方向断面が略正方形状に形成されている。そして、上記リング電極(35)は、前側端面(35a)と外周面(35b)とが交差する部分(R)、すなわち露出する電極面である外周縁部が円弧状に面取り加工されている。具体的に、この面取り寸法は、リング電極(35)の径方向の幅寸法Bの半分である。つまり、この面取り部(R)の円弧半径の寸法がB/2である。これにより、外部に露出されるリング電極(35)の角部が存在しなくなる。なお、上記面取り部(R)の円弧半径の寸法は、B/2より小さい寸法であっても構わないが、B/2以上の寸法が望ましい。
さらに、上記リング電極(35)は、噴霧ノズル(31)の先端よりもタンク本体(21)寄り、すなわち噴霧ノズル(31)の基端側へ後退して位置している。そして、上記噴霧ノズル(31)の先端面とリング電極(35)の前側端面(35a)との距離L、すなわち水平方向における噴霧ノズル(31)の先端とリング電極(35)との距離Lが10.0mmに設定されている。なお、上記距離Lは、3.0mm以上20mm以下の範囲内で設定されればよく、望ましくは10.0mm以上15.0mm以下の値がよい。
−運転動作−
次に、上述した静電噴霧装置(10)の運転動作について説明する。この静電噴霧装置(10)は、いわゆるコーンジェットモードのEHD噴霧が行われる。
上述したように、噴霧カートリッジ(15)では、溶液タンク(20)内の液面(51)が噴霧ノズル(31)の先端よりも高く位置しており、タンク本体(21)内の液面(51)と噴霧ノズル(31)の先端との間にヘッド差が生ずる。このため、噴霧ノズル(31)の先端に形成される気液界面(52)には、ヘッド差に起因する液圧が作用している。
上記電源(16)がオフの状態、すなわち噴霧ノズル(31)とリング電極(35)とが同電位となって噴霧ノズル(31)の先端部には電界が形成されない。この状態において、噴霧ノズル(31)の先端に形成された気液界面(52)では、図5に示すように、表面張力とヘッド差に起因する液圧とが均衡した状態となり、噴霧ノズル(31)の先端から水溶液(50)が流出することはない。また、内径Dが0.4mmの噴霧ノズル(31)を用いる本実施形態の静電噴霧装置(10)において、テアニン水溶液の濃度が10質量%である場合は、噴霧ノズル(31)の先端の気液界面(52)に20mmH2Oの液圧が作用しても、噴霧ノズル(31)の先端からの水溶液の漏洩が阻止される。
上記電源(16)がオンの状態、すなわち噴霧ノズル(31)とリング電極(35)との間に電位差がある状態では、噴霧ノズル(31)の先端部に電界が形成される。また、上記噴霧ノズル(31)内の水溶液(50)が分極し、噴霧ノズル(31)の先端の気液界面(52)近傍に+(プラス)の電荷が集まる。そして、上記噴霧ノズル(31)の先端では、気液界面(52)が引き延ばされて円錐状となり、この円錐状となった気液界面(52)の頂部から一部の水溶液(50)が引きちぎられるようにして液滴化する。つまり、この引きちぎられた液滴は、+(プラス)に電荷している。
上記噴霧ノズル(31)の先端からは、テアニン水溶液の微細な液滴が放出され、この液滴が室内の空気中へ供給される。在室者は、呼吸する際に空気中の液滴を空気と共に吸い込む。在室者に吸い込まれた液滴は、肺胞の粘膜に付着する。液滴に含まれるテアニンは、肺胞の粘膜を通って在室者の体内に取り込まれる。なお、テアニンは、興奮を抑えてリラックスさせる作用があるといわれている。
ここで、吸気中に含まれる液滴を在室者の肺胞へ到達させるには、液滴の直径を所定の範囲内にすることが必要である。つまり、液滴の直径が大きすぎると、在室者に吸い込まれた液滴は、気道の粘膜に捕捉されてしまって肺胞まで到達しない。逆に、液滴の直径が小さすぎると、在室者に吸い込まれた液滴は、肺胞の粘膜に捕捉されずに呼気と共に排出されてしまう。これらの事情を考慮すると、上記静電噴霧装置(10)から噴霧される液滴の直径は、10nm以上5μm以下であるのが望ましく、更には50nm以上2μm以下であるのが一層望ましい。
上述したように、噴霧カートリッジ(15)では、噴霧ノズル(31)の先端から液滴化された水溶液が放出されてゆく。このため、噴霧ノズル(31)内へ水溶液が補給されなければ、噴霧ノズル(31)内の水溶液の量が減少してしまって噴霧を継続できなくなる。一方、この噴霧カートリッジ(15)では、噴霧ノズル(31)の先端が溶液タンク(20)内の液面(51)よりも低い位置に設けられており、溶液タンク(20)内の液面(51)と噴霧ノズル(31)の先端との間にヘッド差がある。そのため、このヘッド差によって噴霧ノズル(31)内へ溶液タンク(20)内の水溶液(50)が噴霧ノズル(31)へ補給され、噴霧ノズル(31)からの噴霧が継続的に行われる。つまり、本実施形態の静電噴霧装置(10)において、溶液タンク(20)内の水溶液(50)を噴霧ノズル(31)へ供給するためのポンプ等が不要になる。
次に、上記噴霧ノズル(31)の先端部に形成される電界ライン(電気力線)について図7および図8を参照しながら詳細に説明する。
上記電源(16)をオンすると、図7に破線で示すように、噴霧ノズル(31)の先端からリング電極(35)へ向かう電気力線が生じる。具体的に、この電気力線は、先ず噴霧ノズル(31)の先端から前方へ真っ直ぐ延びた後、いわゆる噴水状に後方のリング電極(35)の全周に向かって複数延びる。そして、後方へ延びた各々の電気力線は、リング電極(35)の面取り部(R)の円弧面全体に亘ってほぼ満遍なく到達する(図7のA領域参照)。一方、従来のリング電極の形状では、図8に破線で示すように、噴霧ノズル(31)の先端から噴水状に後方へ延びた複数の電気力線が全て直角に形成された外周角部(C)に集中する(図8のB領域参照)。
このような電界状態において、噴霧ノズル(31)の先端から前方へ放出された液滴は、リング電極(35)へ向かって吸引される静電気力が作用するので、後方へ向かってほぼ180度折り返す。その際、液滴に対して噴霧ノズル(31)の前方へ作用する慣性力が発生するので、放出された液滴の一部がリング電極(35)側へ折り返さずに、そのまま噴霧ノズル(31)の前方へ向かって飛散する。これにより、リング電極(35)へ向かって飛散する液適量が減少する。
また、本実施形態では、リング電極(35)近傍の電気力線の密度、すなわち電界密度が従来に比べて小さくなっているのが分かる。すなわち、リング電極(35)へ向かって吸引される静電気力が低減される。この結果、リング電極(35)へ向かう液滴量が一層減少するので、リング電極(35)への液滴の付着が確実に抑制される。具体的に、面取り加工なしのリング電極(35)を用いて1時間連続で噴霧し続けた場合は、大量にリング電極(35)に液体が付着したが、面取り加工ありのリング電極(35)を用いて6時間連続で噴霧し続けた場合は、全く液体が付着しなかった(図9参照)。
−実施形態1の効果−
以上のように、本実施形態によれば、リング電極(35)の電極面である露出された外周縁部を円弧状に面取り加工するようにしたので、リング電極(35)の近傍の電気力線の密度を粗にすることができる。これにより、噴霧された液滴に対する静電気力、つまりリング電極(35)側へ吸引される力を低減させることができる。したがって、上記リング電極(35)へ向かう液滴量を減少させることができるので、該リング電極(35)における液体の付着を抑制することができる。
特に、上記面取り部の寸法をリング電極(35)における径方向幅寸法の半分としたので、幅寸法に対して曲面を広さを大きく採ることができる。したがって、電気力線の密度を確実に粗にすることができる。
また、上記第2電極(35)を噴霧ノズル(31)の先端から基端側へ後退させた位置に設けるようにしたので、電気力線をほぼ180度折り返すように湾曲させることができる。これにより、電気力線の湾曲部において、リング電極(35)へ向かう方向とはほぼ反対方向に慣性力を噴霧された液滴に作用させることができる。したがって、上記リング電極(35)へ向かって飛散する液滴量を減少させることができる。
さらに、上記噴霧ノズル(31)の先端とリング電極(35)との距離を10.0mmに設定し、また印加電圧を2kV以上10kV以下に設定したので、噴霧に必要な電位差を噴霧ノズル(31)とリング電極(35)との間に生じさせることができると共に、リング電極(35)へ向かって飛散する液滴量を抑制し得る電界の強さにすることができる。
また、上記噴霧ノズル(31)の先端がタンク本体(21)内の液面(51)より低い位置になるようにしたので、上記液面(51)と噴霧ノズル(31)の先端とのヘッド差によってタンク本体(21)の水溶液(50)を噴霧ノズル(31)の先端まで供給させることができる。したがって、上記タンク本体(21)の水溶液(50)を強制的に送り出すポンプ等が不要になるので、装置の小型化およびコスト低減を図ることができる。
《発明の実施形態2》
本実施形態2の静電噴霧装置(10)は、図10に示すように、上記実施形態1におけるノズルホルダー(32)の形状を変形したものである。
具体的に、上記ノズルホルダー(32)は、噴霧ノズル(31)が取り付けられている先端に円盤部(32a)が一体に設けられている。この円盤部(32a)は、噴霧ノズル(31)や電極ホルダー(40)と同軸に配置され、リング電極(35)の外径とほぼ同径に形成されている。そして、この円盤部(32a)は、リング電極(35)の端面、すなわち電極ホルダー(40)の前方の端面から所定間隔を存して位置し、噴霧ノズル(31)およびリング電極(35)間の電気力線を邪魔する邪魔部材を構成している。なお、この円盤部(32a)も非導電性材料で形成されていることは勿論である。
上記の構成の場合、図11に示すように、噴霧ノズル(31)の先端から前方へ延びた電気力線は、リング電極(35)側へ向かって噴水状に折り返す。この電気力線は、ノズルホルダー(32)の円盤部(32a)によって邪魔されるので、該円盤部(32a)を避けるようにその外周を通ってリング電極(35)の面取り部(R)に到達する。すなわち、本実施形態の場合、円盤部(32a)の存在によってリング電極(35)近傍における電気力線の湾曲度が増大する。これにより、液滴(53)に作用する慣性力Fも増大するので、リング電極(35)へ向かって飛散する液滴量が減少する。したがって、上記リング電極(35)における液体の付着を一層抑制することができる。その他の構成、作用および効果は実施形態1と同様である。
なお、上記円盤部(32a)の形状は、これに限らず、外径がリング電極(35)の外径よりやや小さめ又は大きめであってもよいし、噴霧ノズル(31)の先端寄りに位置してもよい。
《発明の実施形態3》
本実施形態3の静電噴霧装置(10)は、図12に示すように、上記実施形態1において噴霧ノズル(31)およびリング電極(35)とは別の補助電極(37)を設けるようにしたものである。
具体的に、上記補助電極(37)は、リング電極(35)と同極の第3電極を構成し、噴霧ノズル(31)の前方に配置されている。この補助電極(37)は、矩形体に形成されている。この補助電極(37)と噴霧ノズル(31)の先端との距離L2は、該噴霧ノズル(31)の先端とリング電極(35)との距離L1より長く設定されている。すなわち、上記補助電極(37)と噴霧ノズル(31)との間に形成される電界は、噴霧ノズル(31)とリング電極(35)との間に形成される電界よりも強さが小さい。
上記の構成の場合、噴霧ノズル(31)から前方へ延びた電気力線の一部は補助電極(37)へそのまま延び、残りはリング電極(35)へ向かって噴水状に折り返す。これにより、リング電極(35)へ向かう電気力線の密度が小さくなる。さらに、リング電極(35)へ向かって折り返す電気力線の一部または全体は、補助電極(37)側へ吸引されて湾曲度が増大することになる。したがって、電気力線の湾曲部での液滴に作用する慣性力が増大する。これらの結果、リング電極(35)へ向かって飛散する量が一層減少するので、リング電極(35)における液体の付着を確実に抑制することができる。その他の構成、作用および効果は実施形態1と同様である。
なお、本実施形態では、上記補助電極(37)を矩形体に形成したが、リング電極(35)と同様の円環状に形成してもよい。その場合、リング電極(35)と同様に噴霧ノズル(31)と同軸に補助電極(37)が配置される。
《その他の実施形態》
例えば、噴霧する液体として、アミノ酸の一種であるγ−アミノ酪酸(GABA)の水溶液を用いてもよい。このγ−アミノ酪酸は、神経伝達物質の一種であり、精神安定作用があると言われている。また、カテキンやプロアントシアニジン等の抗酸化剤の水溶液を用いてもよい。また、微生物の繁殖を抑制したり微生物を死滅させる機能の有る物質を含んだ液体を用いてもよい。また、空気中の臭気分子を中和などによる化学変化で無臭化する物質を含んだ液体を用いてもよい。また、アレルゲンとなるタンパク質の抗原部位を化学的に変化させる物質を含んだ液体を用いてもよい。また、空気中の有害成分を化学変化によって無害化する物質を含んだ液体を用いてもよい。また、各種の香料や害虫の忌避剤等をを含んだ液体を用いてもよい。
また、上記各実施形態において、噴霧ノズル(31)の基端側などにポンプ等を設けて、そのポンプ等によってタンク本体(21)内の水溶液(50)を噴霧ノズル(31)の先端まで送り出す構成の静電噴霧装置にも適用してもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、本発明は、液体を電気流体力学により霧化して噴霧する静電噴霧装置について有用である。
実施形態1に係る静電噴霧装置を示す概略構成図である。 実施形態1に係る噴霧カートリッジを示す斜視図である。 実施形態1に係る噴霧カートリッジを示す分解斜視図である。 実施形態1に係る噴霧カートリッジの要部を示す断面図である。 噴霧中の噴霧ノズルの先端部を示す断面図である。 実施形態1に係る静電噴霧装置が取り付けられる空気清浄機を示す概略斜視図である。 実施形態1に係るリング電極近傍の電気力線を示す断面図である。 従来のリング電極近傍の電気力線を示す断面図である。 リング電極における液体の付着量を示すグラフである。 実施形態2に係る噴霧カートリッジの要部を示す断面図である。 実施形態2に係るリング電極近傍の電気力線を示す断面図である。 実施形態3に係るリング電極近傍の電気力線を示す断面図である。
符号の説明
10 静電噴霧装置
16 電源
20 溶液タンク(容器)
31 噴霧ノズル、電極(ノズル)
32a 円盤部(邪魔部材)
35 リング電極(電極)
37 補助電極(第3電極)

Claims (10)

  1. 液体を貯留する容器(20)と、該容器(20)内に連通する管状のノズル(31)と、該ノズル(31)内の液体に接する第1電極(31)と、上記ノズル(31)内の液体から絶縁された第2電極(35)とを備え、
    上記両電極(31,35)間に電圧が印可されて電気力線が該第1電極(31)から第2電極(35)へ向かうように電界が形成されるとノズル(31)の先端から液体が噴霧される静電噴霧装置であって、
    上記噴霧された液体の第2電極(35)へ向かう量が抑制されるように上記電界が形成されている
    ことを特徴とする静電噴霧装置。
  2. 請求項1において、
    上記電界は、少なくとも第2電極(35)近傍の電気力線の密度が粗に抑制されるように形成されている
    ことを特徴とする静電噴霧装置。
  3. 請求項2において、
    上記第2電極(35)は、電極面が曲面状に形成されている
    ことを特徴とする静電噴霧装置。
  4. 請求項1において、
    上記電界は、電気力線が湾曲するように形成されている
    ことを特徴とする静電噴霧装置。
  5. 請求項4において、
    上記第1電極(31)と第2電極(35)の間には、電気力線を邪魔する非導電性材料の邪魔部材(32a)が設けられている
    ことを特徴とする静電噴霧装置。
  6. 請求項4において、
    上記第1電極(31)と第2電極(35)の間の電気力線が湾曲するように該電気力線を変形させる第3電極(37)が設けられている
    ことを特徴とする静電噴霧装置。
  7. 液体を貯留する容器(20)と、該容器(20)内に連通し且つ第1電極を構成する管状のノズル(31)と、上記ノズル(31)内の液体から絶縁された第2電極(35)とを備え、
    上記ノズル(31)と第2電極(35)との間に電圧が印可されて電気力線が該ノズル(31)の先端から第2電極(35)へ向かうように電界が形成されるとノズル(31)の先端から液体が噴霧される静電噴霧装置であって、
    上記第2電極(35)は、ノズル(31)の先端から基端側へ後退した位置に設けられている
    ことを特徴とする静電噴霧装置。
  8. 請求項7において、
    上記ノズル(31)と第2電極(35)との距離が3mm以上20mm以下となっている
    ことを特徴とする静電噴霧装置。
  9. 請求項7において、
    上記第1電極(31)と第2電極(35)との間の印可電圧が2kV以上10kV以下となっている
    ことを特徴とする静電噴霧装置。
  10. 請求項2乃至9の何れか1項において、
    上記ノズル(31)は、先端が容器(20)内の液面よりも低い位置に設けられている
    ことを特徴とする静電噴霧装置。
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