JP2006236769A - スパークプラグ - Google Patents

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Abstract

【課題】 エンジンヘッドに螺合する主体金具のねじ緩みを防止することができるスパークプラグを提供する。
【解決手段】 スパークプラグ100の主体金具50の外周に形成した雄ねじ部52の有効径から構成される円筒体の形状は、元部522から胴部523を経て先部521に向けて次第に細くなるテーパ形状となるように構成されている。すなわち、雄ねじ部52の先部521における有効径Aと比べ、元部522における有効径Bを大きく構成している。このようなスパークプラグ100をエンジンヘッドに組み付けた場合、先部521側よりも元部522側のねじ山が、エンジンヘッドの雌ねじ部のねじ山に対し、より大きな接触面積で当接するため、エンジンヘッドとスパークプラグ100との螺合が冷熱サイクルの影響を受けにくい元部522側で維持されるので、ねじ緩みの発生が防止される。
【選択図】 図2

Description

本発明は、内燃機関用のスパークプラグに関するものである。
従来、内燃機関には点火のためのスパークプラグが用いられている。一般的なスパークプラグは、中心電極が挿設された絶縁碍子を保持する主体金具と、この主体金具の先端面に溶接された接地電極を有しており、その接地電極の他端部と、中心電極の先端部とが対向して火花放電ギャップを形成している。そして、中心電極と接地電極との間で火花放電が行われる。このようなスパークプラグを内燃機関に組み付けるには、通常、主体金具の外周面上に設けた雄ねじを、エンジンヘッドに設けた雌ねじに螺合させている。
このようなスパークプラグでは、エンジンから伝達される熱や振動によりねじ緩みが発生する虞がある。そこで従来のスパークプラグでは、ねじの有効径を大きくしたり、ばね性能の高いワッシャー(ガスケット)をエンジンヘッドの座面と主体金具の座面との間に設け、初期締め付けトルクを大きくして初期軸力を向上させることで、ねじ緩みを防止していた。なお、「有効径」とは、雄ねじ部のねじ山の幅とねじ溝の幅とが等しくなるような仮想的な円筒または円錐の直径をいう。
ところで、近年の自動車のエンジン出力の向上にともなって、燃焼室内の温度は上昇する傾向にある。このようなエンジンに取り付けられるスパークプラグには従来より熱負荷が大きくかかるため、スパークプラグの寿命を確保するには電極部分の放熱を十分に行う必要が生ずる。そのためにはエンジンヘッドのウォータージャケットを拡大してスパークプラグからの放熱効率を高めることが有効であり、これに合わせてエンジンヘッドに係合する主体金具のねじリーチ(雄ねじ部の長さ)を長くしたスパークプラグが利用されている(例えば、特許文献1参照。)。このようなスパークプラグをエンジンヘッドに取り付けたとき、主体金具とエンジンヘッドとの接合面(互いのねじ部)には、次のような力が働いている。
主体金具は雄ねじ部のねじ山がエンジンヘッドの雌ねじ部と螺合することによって、自身の座面またはガスケットを基点として締め付け方向の力が内部に働く。この力は主体金具とエンジンヘッドのそれぞれのねじ部において、ねじ山同士の面圧として応力を及ぼし合う様態である。スパークプラグをエンジンヘッドに取り付けたエンジン始動前、すなわちエンジンの冷間時では、上記面圧は、ねじ部の元部側(エンジンヘッドにおいて燃焼室側とは反対側の外表面側)より燃焼室側において、大きく作用している。
特開平11−273827号公報
しかしながら、エンジンが駆動すると、ねじ部の先端側にある燃焼室が高温となるため、主体金具およびエンジンヘッドは燃焼室側から元部側へ向かって高温から低温となる熱分布となる(これを熱間時と称する。)。燃焼室の温度上昇にともなって、主体金具およびエンジンヘッドはそれぞれの材質の熱膨張率に基づき熱膨張する。このとき両者の熱膨張率の差から、ねじ部の先端側において過大な面圧が発生する。この過大な面圧によりねじ部には負荷がかかるため、ねじ部の燃焼室側でクリープをともなった塑性変形を生じてしまう場合がある。この変形はエンジンを駆動するたび、すなわちエンジンの冷熱によって、繰り返し発生する可能性がある。その結果ねじ部が塑性変形してしまうと、変形した部分での面圧は低下してしまい、ねじ緩みが発生しやすくなる虞が生ずる。また、繰り返して変形を起こすことによって、ねじ部の燃焼室側のみで生じていた変形が徐々に元部へ進行してしまう虞もあり、ひいては主体金具とエンジンヘッドとのねじピッチが異なってしまい、補修用のスパークプラグが使用できなくなる懸念もある。なお、「ねじ部」とは、主体金具に形成される雄ねじおよびエンジンヘッドに形成される雌ねじの両者を統合した呼称とする。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、エンジンヘッドに螺合する主体金具のねじ緩みを防止することができるスパークプラグを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のスパークプラグは、自身の先端部を発火部とする中心電極と、前記中心電極の軸線方向に延びる軸孔を有し、その軸孔の内部で前記中心電極を保持する絶縁碍子と、前記絶縁碍子の径方向周囲を取り囲んで保持する筒状体で、内燃機関のエンジンヘッドに取り付けるための座面よりも先端側の外周に形成された、前記エンジンヘッドの取付孔に螺合する雄ねじ部を有する主体金具とを備えたスパークプラグであって、前記雄ねじ部は、前記主体金具の前記エンジンヘッドへの取り付け方向において先端側の部位である先部と、後端側の部位である元部と、前記先部および前記元部の間の部位である胴部とから構成され、前記胴部もしくは前記元部に、その有効径が最大となる部位を有し、かつ、少なくとも前記先部に、その有効径が最小となる部位を有することを特徴とする。
また、請求項2に係る発明のスパークプラグは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記雄ねじ部の前記有効径が最大となる部位は、前記主体金具の前記エンジンヘッドへの取り付け方向において、前記雄ねじ部の後端から前記先部に向けて20mm以内の位置にあることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明のスパークプラグは、請求項1または2に記載の発明の構成に加え、前記雄ねじ部は、前記元部から前記先部にかけて、その有効径が小さくなるテーパ状に形成されていることを特徴とする。
請求項1に係る発明のスパークプラグでは、雄ねじ部の有効径が最大となる部位を胴部もしくは元部に有し、かつ、有効径が最小となる部位を少なくとも先部に有したことで、主体金具をエンジンヘッドの取付孔に螺合した際に、先部よりも胴部もしくは元部において、ねじ山同士の当接面積を大きくして面圧を高めることができる。元部側にて有効径を大きくしたので、エンジン駆動中の熱間時においても、燃焼室からの熱は元部に達するまでにエンジンヘッドへも逃げてゆくことも加味し、冷間時と同様に締め付けによる面圧を得ることが可能となる。さらに先部(燃焼室側)において有効径を小さくしていることから、エンジンヘッドの雌ねじ部へ与える面圧を小さくすることができ、雌ねじ部のクリープをともなった塑性変形を低減させることが可能となる。ねじ部の先部での面圧が小さくなるため、従来のものに比較して熱間時にかかる面圧を小さくすることができ、先部における変形を低減できることに加え、元部へ進行する変形をも抑制することが可能となる。このように元部での面圧を維持しつつねじ部の変形を抑制するので、ねじ緩みの発生を防止することができる。
また、請求項2に係る発明のスパークプラグでは、請求項1に係る発明の効果に加え、主体金具のエンジンヘッドへの取り付け方向、すなわち、主体金具の軸線方向に沿って、雄ねじ部の後端から先部に向けて20mm以内の位置に、有効径の最大となる部位が設けられている。つまり、雄ねじ部において、有効径の最大となる部位を確実に元部もしくは元部寄りの位置に形成することができる。これにより、内燃機関の駆動にともなう熱の影響でエンジンヘッドと主体金具とが熱膨張しても、雌ねじと雄ねじのねじ山同士に大きな面圧がかかる部位の位置が確実に、その熱の影響の大きな先部ではなく、熱の影響の少ない元部もしくは元部寄りの位置となるため、ねじ山の塑性変形にともなうねじ緩みの発生を防止することができる。
また、請求項3に係る発明のスパークプラグでは、請求項1または2に係る発明の効果に加え、雄ねじ部を、元部から先部にかけてその有効径が小さくなるテーパ状に形成したので、有効径が最大となる部位を確実に元部に形成することができる。また、有効径の部分的な拡大ではなく、次第に有効径が変化するように形成すれば、転造もしくは削り出しによるねじ山の加工を行いやすい。さらに、雄ねじ部のねじ山は、雌ねじのねじ山に対する面圧が先部から元部にかけて次第に高くなる構成となるため、部分的に面圧の高い部位ができにくく、雄ねじ部全体にかかる負荷を分散して雄ねじ部の耐久性を高めることができる。
以下、本発明を具体化したスパークプラグの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明に係るスパークプラグの一例としてスパークプラグ100の構造について説明する。図1は、スパークプラグ100の部分断面図である。なお、図1に示す軸線O方向において、中心電極20が設けられた側をスパークプラグ100の先端側(前方側)とし、接続端子40が設けられた側を後端側(後方側)として説明する。
図1に示すように、スパークプラグ100は、概略、絶縁碍子10と、この絶縁碍子10を保持する主体金具50と、絶縁碍子10の軸孔12内に保持された中心電極20と、主体金具50に接合され、先端部31が中心電極20の先端部22に対向する接地電極30と、絶縁碍子10の後端側に設けられた接続端子40とから構成されている。
まず、このスパークプラグ100の絶縁碍子10について説明する。絶縁碍子10は、周知のようにアルミナ等を焼成して形成され、軸線O方向に軸孔12を有する筒状の絶縁部材である。軸線O方向の略中央には外径が最も大きな鍔部19が形成されており、これより後端側には後端側胴部18が形成されている。また、その後端側胴部18よりさらに後端側に、沿面距離を稼ぐためのコルゲーション部16が形成されている。鍔部19より先端側には後端側胴部18より外径の小さな先端側胴部17が形成され、さらにその先端側胴部17よりも先端側に、先端側胴部17よりも外径の小さな脚長部13が形成されている。脚長部13は先端側ほど縮径されており、スパークプラグ100が図示外の内燃機関に組み付けられた際には、その燃焼室に曝される。
次に、中心電極20について説明する。中心電極20は、インコネル(商標名)600または601等のニッケル系合金等からなる電極母材の中心部に、放熱促進のための銅、あるいは銅合金などで構成された芯材23が埋設された棒状の電極である。中心電極20の先端部22は絶縁碍子10の先端面から突出しており、先端側に向かって径小となるように形成されている。その先端部22の先端面には、耐火花消耗性を向上するための貴金属からなる貴金属チップ90が接合されている。
また中心電極20は、軸孔12の内部に設けられたシール材14およびセラミック抵抗3を経由して、軸孔12の後端側に保持される接続端子40と電気的に接続されている。接続端子40の後端部42は絶縁碍子10の後端より露出され、この後端部42に、プラグキャップ(図示外)を介して高圧ケーブル(図示外)が接続され、高電圧が印加されるようになっている。
次に、接地電極30について説明する。接地電極30は耐腐食性の高い金属から構成され、一例として、インコネル(商標名)600または601などのニッケル合金が用いられている。この接地電極30は、自身の長手方向と直交する横断面が略長方形を有しており、屈曲された角棒状の外形を呈している。そして、角棒状の基端側の基部32が、主体金具50の先端側の先端面57に抵抗溶接により接合されている。一方、この接地電極30の基部32とは反対側の先端部31は、中心電極20の先端部22に対向するように屈曲されている。中心電極20に対向する側の面である接地電極30の内面33は軸線Oに対して略直交しており、中心電極20の貴金属チップ90が対向する位置に、貴金属チップ90と同様の貴金属チップ91が抵抗溶接されている。そして、この貴金属チップ91と貴金属チップ90との間で火花放電ギャップが形成される。
次に、主体金具50について説明する。主体金具50は絶縁碍子10を保持し、図示外の内燃機関にスパークプラグ100を固定するためのものである。主体金具50は、絶縁碍子10の鍔部19近傍の後端側胴部18から、鍔部19、先端側胴部17および脚長部13を取り囲むようにして絶縁碍子10を保持している。主体金具50は低炭素鋼材で形成され、図示外のスパークプラグレンチが嵌合する工具係合部51と、図示外の内燃機関のエンジンヘッド200に形成された雌ねじ部202(図3,図4参照)に螺合する雄ねじ部52とを備えている。
さらに、主体金具50は工具係合部51の後端側に加締め部53を有しており、この加締め部53を加締めることにより、主体金具50の内周に形成した段部56に、絶縁碍子10の先端側胴部17と脚長部13との間の段部15が板パッキン8を介して支持され、主体金具50と絶縁碍子10とが一体にされる。加締めによる密閉を完全なものとするため、主体金具50の加締め部53近傍の内周面と、絶縁碍子10の鍔部19近傍の後端側胴部18の外周面との間に環状のリング部材6,7が介在され、リング部材6,7の間にはタルク(滑石)9の粉末が充填されている。また、主体金具50の中央部には鍔部54が形成され、雄ねじ部52の後端部側(図1における上部)近傍、すなわち鍔部54の座面55にはガスケット5が嵌挿されている。
ここで図2に示すように、主体金具50の雄ねじ部52において、軸線O方向におけるスパークプラグ100の先端側(主体金具50の先端面57側)に位置する部位を先部521、後端側(主体金具50の座面55側)に位置する部位を元部522、先部521と元部522との間に位置する部位を胴部523とする。より具体的には、先部521は、軸線O方向の先端側のねじ山の起点(ねじ山の形成開始位置)から5山目のねじ山までの部位を指し、元部522は、後端側のねじ山の起点から5山目のねじ山までの部位を指す。本実施の形態のスパークプラグ100では、雄ねじ部52の有効径から構成される仮想の円筒体の形状が、元部522から胴部523を経て先部521に向けて次第に細くなるテーパ形状となるように構成されている。すなわち、雄ねじ部52の先部521における有効径Aと比べ、元部522における有効径Bは大きく構成されている。
なお、図2では説明のため、先部521の有効径Aと元部522の有効径Bとの差が明確となるように図示しているが、本実施の形態では、有効径Aと有効径Bとの差をd、ねじリーチ(軸線O方向において雄ねじ部52のねじ山の両起点間の長さ)をLとしたとき、(d/L)×100が0.8(%)以上1.97(%)以下となることが望ましい。(d/L)×100が1.97(%)より大きいと、主体金具50の雄ねじ部52と、エンジンヘッド200の雌ねじ部202(図3参照)との間に間隙が生じ、中心電極20や接地電極30の熱を主体金具50を介して効率よくエンジンヘッド200に逃がすことが難しくなり、スパークプラグ100の耐久性が低下してしまう。また、(d/L)×100が0.8(%)未満であれば、先部521の有効径より元部522の有効径を十分に大きくすることができず、エンジンヘッド200とスパークプラグ100との螺合を確実に元部522側で維持させることが難しくなり、後述する評価試験の結果に基づくと、ねじ緩みの発生を効果的に防止することができない。
このようなスパークプラグ100を、主体金具50の雄ねじ部52の元部522の有効径Bと略同一の有効径Dを有する雌ねじ部202(図3参照)が形成されたエンジンヘッド200に組み付けた場合、図3に示すように、雄ねじ部52の元部522において、元部522のねじ山の斜面525は、雌ねじ部202のねじ山の斜面205に対してその略全面で当接する。一方、図4に示すように、雄ねじ部52の先部521では有効径Aが有効径Dより小さいため、先部521のねじ山の斜面526は、雌ねじ部202のねじ山の斜面206に対してその一部が当接することとなる。
ところでスパークプラグ100は、内燃機関の駆動にともない発生した熱により加熱されるが、この熱を主体金具50を介しエンジンヘッド200に逃がしている。主体金具50自身にも燃焼ガスからの熱が直接流入されるため、雄ねじ部52では元部522よりも先部521の方が冷熱サイクルによる温度差が大きい。そのため、主体金具50とエンジンヘッド200との熱膨張差により、エンジンヘッド200の雌ねじ部202のねじ山や、その雌ねじ部202と当接する主体金具50の雄ねじ部52のねじ山にはクリープをともなった塑性変形(クリープ変形)が生じやすい。しかし雄ねじ部52の元部522やその元部522に当接するエンジンヘッド200の雌ねじ部202のねじ山では、先部521側よりも燃焼室から遠く冷熱サイクルの影響が小さいため、こうしたクリープ変形が生じにくい。本実施の形態のスパークプラグ100では、先部521側よりも元部522側のねじ山が、エンジンヘッド200の雌ねじ部202のねじ山に対してより小さな接触面積で当接するようにして、接触面積の大きい元部522側では面圧を維持するとともに、ねじ部52,202の変形の発生自体を抑制し、ねじ緩みの発生を防止している。
もっとも、こうしたねじ緩みの防止の効果を得るためには、雄ねじ部52の有効径から構成される仮想の円筒体の形状が、必ずしも元部522から先部521に向けて細くなるテーパ状である必要はない。つまり、有効径の最大となる位置が雄ねじ部52の先部521ではなく胴部523や元部522にあれば、冷熱サイクルの影響が小さく、上記同様の効果を得ることができる。このためには雄ねじ部52の有効径から構成される仮想の円筒体の形状が、本実施の形態のように元部522から先部521に向けて先細るテーパ状であってもよいし、少なくとも先部521では有効径が最小であり、元部522や胴部523において有効径が最大の部位を有する形状であってもよい。本実施の形態では、後述する評価試験の結果に基づき、雄ねじ部52の後端、すなわち、雄ねじ部52の後端側のねじ山の起点から軸線O方向に20mm以内の位置に、有効径が最大となる部位を形成している。
このように、主体金具50の雄ねじ部52の有効径が最大となる部位を規定したことによる効果を確認するため、以下に示す評価試験を行った。
[実施例1]
この評価試験では、図5に示すように、主体金具のねじリーチ(雄ねじ部の軸線O方向の長さ)をL、鍔部の座面から有効径が最大となる位置までの距離(最大径距離)をaとし、ねじリーチLと最大径距離aとの組合せを異ならせた複数の主体金具(太鼓型)のサンプルを作製した。そして、これら各サンプルをアルミ材から作製したアルミブッシュに組み付け、熱負荷を加えた後、戻しトルク(主体金具の取り外しに必要なトルク)を測定して評価を行った。
アルミブッシュは、アルミ製のバー材に、JIS B8031に記載されたスパークプラグのM12雌ねじ有効径(中央値が11.278mm±0.02mm)を有する雌ねじ部をNC加工にて形成し、作製した。主体金具は、ねじリーチLが12.7mm,19.0mm,26.5mm,34.0mmのものを用意し、それぞれの雄ねじ部の最大径距離aとして、2.5mm,5mm,10mm,15mm,20mm,25mm,30mmのうち可能な組合せでねじ山を形成した。なお、各サンプルの雄ねじ部の有効径は、JIS B8031に記載されたスパークプラグのM12雄ねじ有効径の範囲内となるように、最大径(距離a部分の有効径)を11.125mmとし、雄ねじ部の先部が雄ねじ部において最小となるように10.993mmと設定した。なお、このように作製した各サンプルは、公知の三針法を用いてその有効径を測定し、上記各値を満たしているか確認した。
また比較例として、図6に示す、ねじリーチLが26.5mmで、元部から先部にかけての有効径がテーパ状に細くなるもの(先細型)、太くなるもの(先太型)、変わらないもの(ストレート型)の主体金具を作製した。先細型の主体金具は、雄ねじ部の元部の1山目のねじ山の有効径が11.05mm、先部の1山目のねじ山の有効径が10.99mmとなるようにねじ山を形成した。先太型の主体金具は、元部の1山目のねじ山の有効径が10.99mm、先部の1山目のねじ山の有効径が11.05mmとなるようにねじ山を形成した。そしてストレート型の主体金具は、元部および先部の各1山目のねじ山の有効径が11.05mmとなるようにねじ山を形成した(表1参照)。
これら各サンプルの座面に銅製のワッシャーを設け、所定の締め付けトルクで各サンプルをアルミブッシュに組み付け固定した。次いで、これらサンプルを200℃の加熱器に入れ、室温から200℃まで1時間かけて昇温し、その後200℃のまま10時間の熱負荷を加え、室温となるまで5時間かけて冷却した。そして、それぞれのサンプルについて、主体金具をアルミブッシュから取り外す際の戻しトルクを測定した。この評価試験の結果をグラフ化したものを図7に示す。
図7に示すように、ねじリーチLが12.7,19.0,26.5,34.0(mm)のいずれの主体金具も、最大径距離aが15mm未満であれば、戻しトルクが12.5N・mより大きい値を示した。さらに最大径距離aが20mm未満であれば、燃焼ガスの吹き抜け等の問題が発生しうる戻しトルクの限界値としての5N・m(スパークプラグを内燃機関に組み付け駆動させた際にねじ緩みによる燃焼圧の吹き抜けが発生しない戻しトルクであり、本評価試験とは別に行った予備試験により約5N・mであることが確認されている。)より大きい値を示した。一方、比較例としての先細型、ストレート型、先太型の各主体金具では、戻しトルクがそれぞれ16.0,13.0,3.0(N・m)となった(表1参照)。なお、この比較例としての主体金具は、ねじリーチLが26.5mmのものを用い、戻しトルクの測定を行った。
Figure 2006236769
この評価試験の結果、主体金具の雄ねじ部には、その元部で鍔部の座面から20mm以内の部位に有効径が最大となる部位が形成されるように、ねじ山を形成すれば、少なくとも上記限界値より大きい戻しトルクを得られ、冷熱サイクルによるねじ緩みを防止することができることがわかった。また、鍔部の座面から15mm以内の部位に有効径が最大となる部位が形成されるようにねじ山を形成すれば、ストレート型よりも大きな戻しトルクを得ることができ望ましい。さらには、有効径が最大となる部位が鍔部に近づくほど、より大きな戻しトルクを得られることがわかった。すなわち、スパークプラグの雄ねじ部の有効径からなる仮想円筒の形状は、図6に示す先細型、図5に示す太鼓型、図6に示すストレート型、そして先太型の順に、戻しトルクが小さくなるが、いずれも上記限界値よりは大きく、ねじ緩みを防止できることが分かった。そして先太型のスパークプラグでは、上記限界値よりも戻しトルクが小さくなり、ねじ緩みが発生してしまう虞があることが分かった。
なお、本発明は上記実施の形態に限られず、各種の変更が可能である。例えば、雄ねじ部52の有効径から構成される仮想の円筒体の形状を、元部522から先部521に向けて次第に細くなるテーパ形状としたが、少なくとも元部522または胴部523において有効径が最大となる部位を設け、その部位以外の有効径が一定となるように段状に形成してもよい。
また、主体金具50の座面55は、本実施の形態ではスパークプラグ100の軸線方向と直交する面として構成しているが、テーパシートであってもよい。また、ガスケット5として平板状のワッシャーを用いてもよく、本実施の形態のように平板の加工によりその断面がS字状となるように形成したものに限定されるものではない。
また、スパークプラグは接地電極を複数備えていてもよい。また、接地電極が棒状に突出しておらず、主体金具の先端部と中心電極との間で火花放電間隙を形成するようなものであってもよい。もちろん、貴金属チップの有無を問うものでもない。
本発明は、主体金具の外周に形成した雄ねじ部を内燃機関のエンジンヘッドに螺合させるスパークプラグやグロープラグに適用することができる。
スパークプラグ100の部分断面図である。 雄ねじ部52付近を拡大したスパークプラグ100の側面図である。 雄ねじ部52の元部522におけるエンジンヘッド200の雌ねじ部202との螺合の状態を示す断面図である。 雄ねじ部52の先部521におけるエンジンヘッド200の雌ねじ部202との螺合の状態を示す断面図である。 太鼓型の主体金具の外形形状を示す模式図である。 ストレート型、先細型および先太型の主体金具の外形形状を示す模式図である。 雄ねじ部の後端から有効径が最大となる位置までの距離(最大径距離)と、戻しトルクとの関係を示すグラフである。
符号の説明
10 絶縁碍子
12 軸孔
20 中心電極
50 主体金具
52 雄ねじ部
100 スパークプラグ
521 先部
522 元部
523 胴部

Claims (3)

  1. 自身の先端部を発火部とする中心電極と、前記中心電極の軸線方向に延びる軸孔を有し、その軸孔の内部で前記中心電極を保持する絶縁碍子と、前記絶縁碍子の径方向周囲を取り囲んで保持する筒状体で、内燃機関のエンジンヘッドに取り付けるための座面よりも先端側の外周に形成された、前記エンジンヘッドの取付孔に螺合する雄ねじ部を有する主体金具とを備えたスパークプラグであって、
    前記雄ねじ部は、前記主体金具の前記エンジンヘッドへの取り付け方向において先端側の部位である先部と、後端側の部位である元部と、前記先部および前記元部の間の部位である胴部とから構成され、前記胴部もしくは前記元部に、その有効径が最大となる部位を有し、かつ、少なくとも前記先部に、その有効径が最小となる部位を有することを特徴とするスパークプラグ。
  2. 前記雄ねじ部の前記有効径が最大となる部位は、前記主体金具の前記エンジンヘッドへの取り付け方向において、前記雄ねじ部の後端から前記先部に向けて20mm以内の位置にあることを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグ。
  3. 前記雄ねじ部は、前記元部から前記先部にかけて、その有効径が小さくなるテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスパークプラグ。
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