JP2006233270A - スパークプラグ用電極及びその製造方法 - Google Patents

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直義 秋吉
Kenji Hirose
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Abstract

【課題】 内燃機関用のスパークプラグ用電極であって、耐消耗性に優れた貴金属系の電極と、それを比較的安価で製造できる方法を提供すること。
【解決手段】 白金及び/又はイリジウムを総量で80重量%以上含有する貴金属系スパークプラグ用電極であって、全体が円柱状の燒結体からなり、その先端部が部分的に溶融したのち凝固した緻密な組織となっているスパークプラグ用電極。この電極は、原料粉末を成形し、燒結した後、先端部にレーザー光又は電子ビームを照射して先端部を部分的に溶融したのち、凝固させることにより製造することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、内燃機関用のスパークプラグ用電極とその製造方法に関するものである。
自動車のエンジン等の内燃機関で従来広く使用されてきたスパークプラグ用電極は、耐熱性に優れたW,Cr等を主成分とするものであり、これらの他に、Ni,Fe等を含むものもある。最近、スパークプラグ用電極の耐消耗性をさらに向上させるため、これら従来の電極の成分に代えて、白金、イリジウム等の貴金属を主成分とする電極が使用されるようになった。この種の貴金属系電極としては、例えば白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム等を含む電極があり、これらについては、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されている。
特開平5−234662号公報 特開2004−335446号公報
上記特許文献1には、Pt,Ir又はこれらの合金、Pt,Niの合金、Pt,Irと稀土類元素とのサーメット、Pt,Niと稀土類元素酸化物とのサーメット等が挙げられている。また、特許文献2には、イリジウム合金が記載されている。なお、特許文献1には、レーザービームを照射して貴金属チップを溶解させる旨の記載があるが、これはチップの全体を電極母材にほぼ楔状に溶解させて固着するためのものである。
従来の貴金属系合金電極は、構成元素を溶解してインゴットを作製し、その後、鍛造、伸線、切断工程等を経て製造されるのが一般的である。しかしながら、合金中の元素に比重差がある場合は、均質な組成のインゴットを得ることが困難であり、しかも従来の製造方法は工程が比較的長いため、コストが高くなるという問題点があった。
上記合金構成元素の比重差に起因する金属組織不均一という問題点を解決するため、原料粉末を混合し、プレス成形及び燒結を行ってインゴットを作製し、このインゴットに熱間鍛造、伸線、切断等の加工を施して電極を得る製造方法が考えられる。しかしながら、この方法も、工程が長いため、得られる電極は高価格となる。
また、原料粉末をプレス成形し、燒結するだけで電極を製造する方法が考えられるが、この方法で得られる電極は、全体が燒結体であるから、電極としての作用部に残留ポアが存在し、スパークプラグ用電極としての性能に問題がある。そこで本発明は、粉末冶金法の利点を生かしつつ、先端部の残留ポアをなくすことができる製造方法と、それによって得られる高性能のスパークプラグ用電極を提供することを課題としている。
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用した。すなわち、請求項1に記載の本発明に係るスパークプラグ用電極は、白金及び/又はイリジウムを総量で80重量%以上含有する貴金属系スパークプラグ用電極であって、全体が円柱状の燒結体からなり、その先端部が部分的に溶融したのち凝固した緻密な組織となっていることを特徴としている。
また、請求項2に記載のスパークプラグ用電極の製造方法は、原料粉末をプレス成形して得られる成形体を、燒結して円柱状の燒結体とし、当該燒結体の先端部にレーザー光又は電子ビームを照射して先端部を部分的に溶融したのち、凝固させることを特徴としている。
請求項1に記載のスパークプラグ用電極は、白金、イリジウムを主成分とする貴金属系電極であるから、耐消耗性に優れている。また、全体が燒結体でありながら、電極として作用する先端部分が一旦溶融した後凝固した組織であるから、当該先端部が緻密で、ポアが残留しない。このため、スパークプラグ用電極として高性能を有するものである。
また、請求項2に記載の発明によると、電極としての作用部である先端部が緻密な貴金属系電極を比較的短い工程で安価に製造することができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について具体的に説明する。図1及び図2は、スパークプラグの外観を例示するもので、図1のスパークプラグ1では、中心電極2のみに本発明の電極が使用されている。また、図2のスパークプラグ1’では、中心電極2と接地電極3の両方に本発明の電極が使用されている。電極2(3)は、スパークプラグ母材にレーザー溶接等で固着されている。
図3は、本発明に係るスパークプラグ用電極2の外観図である。この電極は、外形が円柱状(丸棒状)であり、全体が燒結体であるが、その先端部Aは燒結後に溶融したのち凝固することにより、他の部分よりは緻密な組織となっている。
本発明のスパークプラグ用電極2は、粉末冶金法で製造される。その製造法について説明すると、まず、原料となる粉末を混合して均質な混合粉末を得る。原料粉末としては、白金及び/又はイリジウムの粉末を用いるが、場合によっては、これらの他にロジウム、ルテニウム等の貴金属粉末を加えることもできる。さらに耐久性を向上させるため、ニッケル粉末等、他の金属粉末を添加する場合もある。
これらの金属粉末は、平均粒度数ミクロンの粉末であり、混合のための装置としては、例えばボールミル等、金属粉末の混合に通常使用される混合機を使用することができる。混合用の溶媒としては、例えばアルコールを使用することができる。得られた混合粉末は、プレス成形を容易にするために造粒を行い、粒度の大きい造粒粉とする。
得られた造粒粉は、所定の金型に入れてプレス機でプレス成形する。成形圧力は、十分な強度の成形体が得られる圧力であり、通常は1平方cm当り数トンの圧力である。得られた成形体は、非酸化性雰囲気中で高温で燒結する。これにより、高密度の燒結体である電極素材が得られる。燒結体の密度は、鍛造加工を施した場合の密度の95%以上とするのが好ましい。
燒結体である得られた電極素材の一方の端部にレーザー光又は電子ビームを照射して、高温に加熱し、端部のみを溶融させる。この溶融により、端部の材料が液状化し、緻密化する。この場合、丸棒状電極素材をそのまま溶融すると、表面張力によって先端部が球面化する。電極の用途によっては、先端部が球面である方が好ましい場合もあると考えられるが、平坦な端面を得るためには、溶融した先端部を底面が平坦なキャップ状の型に挿入した状態で凝固させればよい。
なお、このスパークプラグ用電極は、レーザー接合等によりプラグ本体に固着されるが、電極の先端部の溶融は、プラグ本体に固着する前に行ってもよく、プラグ本体に固着した後に行ってもよい。
以下、実際に本発明の製造方法によりスパークプラグ用電極を製作した例について説明する。まず、平均粒度3ミクロンのイリジウム粉末と、平均粒度5ミクロンのロジウム粉末と、平均粒度4ミクロンのルテニウム粉末とを、重量比でそれぞれ80%、15%、5%の割合で配合し、ボールミル中でアルコールを溶媒として20時間以上湿式混合した。得られた混合粉末に、造粒材としてPVPを1.5%添加して造粒し、50〜100ミクロンの造粒粉末を得た。
得られた造粒粉をプレス金型中に入れ、3トン/cm2 の圧力で円柱状にプレス成形した。得られた円柱状の成形体を、水素雰囲気中で2000℃で30分燒結し、ф0.6x0.8mmの燒結体を得た。この燒結体には、僅かな空隙(ポア)が存在しており、その後鍛造した場合の密度の95%程度の密度となっていた。
得られた燒結体の一方の先端部にレーザ光を照射して溶融した。この溶融により、先端部が球面化した。このまま凝固させれば、先端部が球面状の電極が得られるが、今回は底面が平面である円筒状のアルミナ製型を使用し、その中へ溶融した先端部を挿入した状態で冷却凝固させた。これにより、図4に示すような、平坦な先端面を有する円柱状の電極2(3)が得られた。この電極の先端部の組織は緻密であり、顕微鏡組織においてもポアは認められなかった。
得られたスパークプラグ用電極の組成その他と性能を調べた結果は表1のとおりであった。表1には、上記と異なる組成の電極のデータも併記している。
Figure 2006233270
表1において、酸化揮発残量率は、大気中1000℃で35時間電極を暴露した後の重量変化で表している。また、先端部緻密さは、全体の相対密度で表現できないので、断面を研磨し、ポアの量を観察した。なお、相対密度は、燒結後の燒結体の値である。先端部緻密さを表す記号の意味は次のとおりである。
◎ :ポアは殆ど観察されない。相対密度は99〜100%
○ :ポアはいくらか観察される。相対密度は95〜98%
△ :ポアは観察される。相対密度は94%以下
また、表1において、火花消耗率は、火花消耗ギャップ増加(mm)で表しており、記号の意味は次のとおりである。
◎ :0〜0.05mm
○ :0.05〜0.1mm
△ :0.1〜0.3mm
表1からわかるとおり、本発明に係るスパークプラグ用電極では、先端部が緻密となり、酸化揮発残量率で見られるように、高温での耐酸化性は改善され、また、火花消耗特性も改善されている。また、本発明の製造方法では、レーザ照射の費用がかかるので、その分はコストアップの要因となるが、燒結後に鍛造、伸線、切断等の工程が省略されるので、従来のこの種のものと比較すると、製造コストを低く抑えることができる。
本発明は、自動車エンジン等の内燃機関に用いられるスパークプラグ用電極として、内燃機関製造分野等で大いに利用可能である。なお、本発明を自動車エンジン用のスパークプラグ用電極以外の電極として使用できることは言うまでもない。
中心電極のみに本発明に係る電極を使用した例を表すスパークプラグの外観図である。 中心電極と外側電極(接地電極)の両方に本発明の電極を使用した例を表すスパークプラグの外観図である。 先端面が球面となったスパークプラグ用電極の外観図である。 先端面が平面であるスパークプラグ用電極の外観図である。
符号の説明
1 スパークプラグ
2 中心電極
3 外側電極(接地電極)
A 先端部

Claims (2)

  1. 白金及び/又はイリジウムを総量で80重量%以上含有する貴金属系スパークプラグ用電極であって、全体が円柱状の燒結体からなり、その先端部が部分的に溶融したのち凝固した緻密な組織となっていることを特徴とするスパークプラグ用電極。
  2. 原料粉末をプレス成形して得られる成形体を、燒結して円柱状の燒結体とし、当該燒結体の先端部にレーザー光又は電子ビームを照射して先端部を部分的に溶融したのち、凝固させることを特徴とするスパークプラグ用電極の製造方法。
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