JP2006231115A - 汚戻水の処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】転炉集塵水系で発生する汚戻水中の微細な懸濁粒子を凝集処理により除去し、汚戻水のろ過装置への負荷を低減するか、又はろ過装置の使用を省略することができる汚戻水の処理方法を提供する。
【解決手段】転炉集塵水系で発生する酸化鉄とグラファイトを含む汚戻水に、無機凝集剤を添加して懸濁物質を粗粒化したのち、高分子凝集剤を添加して凝集処理し、固液分離することを特徴とする汚戻水の処理方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、汚戻水の処理方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、転炉集塵水系で発生する汚戻水中の微細な懸濁粒子を凝集処理により除去し、汚戻水のろ過装置への負荷を低減することができるか、又はろ過装置を必要としない汚戻水の処理方法に関する。
製鉄所の転炉からは、操業中に多量のガスが発生する。このガスの大部分は一酸化炭素であり、回収して燃料として利用される。しかし、このガスには多量のダストが含まれているので、清浄化する必要があり、その清浄化手段として、通常は湿式集塵器、例えば、ベンチュリースクラバーなどが用いられる。
図1は、転炉OG法の系統図の一例である。この例では、転炉1において発生したガスは、誘引通風ファン2により誘引され、ダクト3を経由して第一集塵器4に導かれてダストが除去され、さらに第二集塵器5に導かれてダストが除去される。ダストが除去された転炉ガスは、回収弁6及び水封V弁7を経由してガスホルダー8に貯留され、燃料として利用される。集塵用水が第二集塵器に供給され、第二集塵器から排出された集塵排水は、いったん第二集塵器ピット9に貯留されて、次いで第一集塵器に供給される。第一集塵器から排出された排水は、粗粒分離機10で粗粒を除去したのち、シックナー11に導かれて固液分離処理される。シックナーの処理水は、いったん処理水槽12に貯留されたのち、第二集塵器に給水されて集塵用水として再利用される(特許文献1参照)。
この水系において、転炉の運転状況に応じて集塵用水が供給されるために、バランス上、第二集塵器ピットから集塵排水がオーバーフローし、その水は工場内の側溝で集水され、汚戻水ピット(図示しない。)に流入する。汚戻水ピットに流入する汚戻水には、工場内のダストや混銑車、溶銑鍋から飛散するグラファイトなどが混入し、懸濁物質は平均500mg/L、最大3,000mg/L程度となっている。従来は、この汚戻水は、粗粒分離機で懸濁物質を粗取りし、ろ過器で処理して懸濁物質40mg/L以下としたのち、再度集塵用水として使用されていた。しかし、汚戻水に含まれるグラファイトが極めて微細なそのために、ろ過器がすぐに目詰まりを起こし、ろ過器の差圧上昇による通水量低下が発生し、頻繁に保守管理を行う必要があった。しかも、微細なグラファイトはろ材に固着してしまい、剥離するのに大変な手間を要していた。
特開2002−126787号公報(第2頁、第3頁)
本発明は、転炉集塵水系で発生する汚戻水中の微細な懸濁粒子を凝集処理により除去し、汚戻水のろ過装置への負荷を低減することができるか、又はろ過装置を必要としない汚戻水の処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、転炉集塵水系で発生する汚戻水に無機凝集剤を添加して懸濁物質を粗粒化したのち、高分子凝集剤を添加して凝集処理し、固液分離することにより、汚戻水中の微細な懸濁物質を効果的に除去して、ろ過装置への負荷を低減し得るか、又はろ過装置を不要とし得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)転炉集塵水系で発生する酸化鉄とグラファイトを含む汚戻水に、無機凝集剤を添加して懸濁物質を粗粒化したのち、高分子凝集剤を添加して凝集処理し、固液分離することを特徴とする汚戻水の処理方法、
(2)無機凝集剤が、ポリ塩化アルミニウム又は鉄塩である(1)記載の汚戻水の処理方法、
(3)ポリ塩化アルミニウムが、半導体のエッチング工程から得られるpH1以下の硫酸を含む廃ポリ塩化アルミニウムである(2)記載の汚戻水の処理方法、及び、
(4)固液分離手段が、沈殿又はろ過である(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の汚戻水の処理方法、
を提供するものである。
本発明の汚戻水の処理方法によれば、転炉集塵水系で発生する汚戻水中の酸化鉄とグラファイトを効果的に除去し、ろ過装置への負荷を低減することができる。本発明方法によれば、汚戻水中の懸濁物質を40mg/L以下に低下させ、汚戻水の回収再生系統において、ろ過器の設置を省略することも可能となる。
本発明の汚戻水の処理方法においては、転炉集塵水系で発生する酸化鉄とグラファイトを含む汚戻水に、無機凝集剤を添加して懸濁物質を粗粒化したのち、高分子凝集剤を添加して凝集処理し、固液分離する。
本発明方法は、転炉集塵水系で発生する汚戻水の処理に適用する。転炉集塵水系で発生する汚戻水は、純酸素上吹転炉の排ガス回収装置において、第二集塵器ピットからオーバーフローした集塵排水が、工場内の側溝で集水され、汚戻水ピットに貯留された排水である。汚戻水ピットに流入する汚戻水には、工場内のダストや混銑車、溶銑鍋から飛散するグラファイトなどが混入し、懸濁物質として300〜3,000mg/L、平均的には400〜800mg/Lを含んでいる。汚戻水のpHは6〜12の範囲で変動し、転炉の吹錬時にはpH6〜8と低めであり、吹錬していないときにはpH10〜12と高めとなる。
本発明方法においては、汚戻水に無機凝集剤を添加して懸濁物質を粗粒化する。無機凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC)などのアルミニウム化合物、塩化第二鉄、硫酸第一鉄などの鉄塩、消石灰などを挙げることができる。これらの中で、ポリ塩化アルミニウム及び鉄塩を好適に用いることができる。汚戻水のpHが高い場合は、鉄塩又はポリ塩化アルミニウムを、とりわけ半導体のエッチング工程などから得られるpH1以下の硫酸を含む廃ポリ塩化アルミニウムを好適に用いることができる。無機凝集剤の添加量は、1〜1,000mg/L、好ましくは20〜200mg/Lである。
本発明方法においては、汚戻水に無機凝集剤を添加して懸濁物質を粗粒化したのち、高分子凝集剤を添加して凝集処理する。高分子凝集剤としては、アニオン性高分子凝集剤、カチオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤のいずれをも用いることができる。アニオン性高分子凝集剤としては、例えば、ポリアクリル酸又はその塩、アクリルアミドとアクリル酸又はその塩との共重合体、ポリアクリルアミドの部分加水分解物又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、マレイン酸又はその塩の共重合体、カルボキシメチルセルロース又はその塩、アルギン酸又はその塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸又はその塩の共重合体などを挙げることができる。
カチオン性高分子凝集剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドとの共重合体、キトサン、アクリロニトリルとN−ビニルホルムアミドとの共重合物を加水分解、環化して得られるアミジン構造を有するカチオン性重合体、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ジアルキルアミンとエピクロロヒドリンとの付加重合体、ポリエチレンイミン、アルキレンジクロライドとアルキレンジアミンとの付加重合体、ジシアンジアミドとホルムアルデヒドとの付加重合体などを挙げることができる。ノニオン性高分子凝集剤としては、例えば、ポリアクリルアミドなどを挙げることができる。高分子凝集剤の添加量は、0.1〜5mg/Lであることが好ましく、0.5〜3mg/Lであることがより好ましい。
本発明方法において、凝集処理後の固液分離方法に特に制限はなく、例えば、自然沈殿、遠心沈殿などの沈殿法、清澄ろ過、膜ろ過などのろ過法などを挙げることができるが、本発明方法において生成する凝集物は、粒径が大きく、酸化鉄を含んで密度が大きいので、それらを用いずとも自然沈殿法により良好に固液分離することができる。固液分離後の上澄水を採取し、集塵用水又はその他の用水として再利用することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
吹錬時の転炉集塵水系から発生した汚戻水を処理した。汚戻水の水質は、pH7.7、懸濁物質500mg/Lであった。また、懸濁物質の成分分析結果は、酸化鉄28.2重量%、酸化アルミニウム15.5重量%、酸不溶解分13.2重量%、強熱減量35.2重量%であった。強熱減量は、グラファイトに相当する。
ビーカーに汚戻水1Lを取り、ポリ塩化アルミニウム50mgを添加して2分間撹拌し、次いでアニオン性高分子凝集剤(ポリアクリルアミドの部分加水分解物)1mgを添加して1分間撹拌した。その後1時間静置して固液分離し、上澄液中の懸濁物質を、JIS K 0102 14.1に準じて測定した。懸濁物質は、10mg/Lであった。
実施例2
アニオン性高分子凝集剤の代わりに、カチオン性高分子凝集剤(ポリメタクリロイルオキシトリメチルアンモニウムクロライド)1mgを添加した以外は、実施例1と同じ操作を行った。上澄液中の懸濁物質は、14mg/Lであった。
比較例1
ビーカーに実施例1と同じ汚戻水1Lを取り、ポリ塩化アルミニウム50mgを添加して2分間撹拌した。その後1時間静置して固液分離し、実施例1と同様にして、上澄液中の懸濁物質を測定した。懸濁物質は、334mg/Lであった。
比較例2
ポリ塩化アルミニウムの添加量を100mgとした以外は、比較例1と同様にして汚戻水を処理し、上澄液中の懸濁物質を測定した。懸濁物質は、32mg/Lであった。
比較例3
ビーカーに実施例1と同じ汚戻水1Lを取り、アニオン性高分子凝集剤(ポリアクリルアミドの部分加水分解物)1mgを添加して1分間撹拌した。その後1時間静置して固液分離し、実施例1と同様にして、上澄液中の懸濁物質を測定した。懸濁物質は、166mg/Lであった。
比較例4
アニオン性高分子凝集剤の代わりに、カチオン性高分子凝集剤(ポリメタクリロイルオキシトリメチルアンモニウムクロライド)1mgを添加した以外は、比較例3と同じ操作を行った。上澄液中の懸濁物質は、332mg/Lであった。
実施例3
非吹錬時の転炉集塵水系で、pH11.0、懸濁物質700mg/Lの汚戻水が発生したので、この汚戻水の処理を行った。
ビーカーにこの汚戻水1Lを取り、半導体のエッチング工程から得られたpH1以下の硫酸を含む廃ポリ塩化アルミニウム50mgを添加して2分間撹拌した。液のpHは、10.0となった。次いで、アニオン性高分子凝集剤(ポリアクリルアミドの部分加水分解物)2mgを添加して1分間撹拌した。その後1時間静置して固液分離し、上澄液中の懸濁物質を、実施例1と同様にして測定した。懸濁物質は、25mg/Lであった。
実施例1〜3及び比較例1〜4の結果を、第1表に示す。
Figure 2006231115
第1表に見られるように、転炉集塵水系で発生したpH7.7、懸濁物質500mg/Lの汚戻水に、ポリ塩化アルミニウム50mg/Lを添加して懸濁物質を粗粒化したのち、アニオン性又はカチオン性高分子凝集剤1mg/Lを添加して凝集処理した実施例1と実施例2では、上澄水の懸濁物質はそれぞれ10mg/L、14mg/Lとなり、集塵用水として再利用するに際して、ろ過装置を必要としない水質に達している。
これに対して、汚戻水にポリ塩化アルミニウム50mg/Lのみを添加して処理した比較例1では、上澄水の懸濁物質は334mg/Lであり、ポリ塩化アルミニウムの添加量を100mg/Lとした比較例2でやっと、上澄水の懸濁物質は32mg/Lまでに低下した。しかし、ポリ塩化アルミニウムの添加量増大はそのまま汚泥量の増大となり好ましくない。また、アニオン性又はカチオン性高分子凝集剤1mg/Lのみを添加した比較例3と比較例4では、上澄水の懸濁物質はそれぞれ166mg/Lと332mg/Lである。
この結果から、転炉集塵水系で発生する汚戻水に、無機凝集剤を添加して懸濁物質を粗粒化したのち、高分子凝集剤を添加して凝集処理し、固液分離することにより、処理水の水質を飛躍的に向上し得ることが分かる。
汚戻水の水質がpH11.0、懸濁物質700mg/Lに変動しても、実施例3のように、ポリ塩化アルミニウムに代えて酸性度の強い廃ポリ塩化アルミニウム50mg/Lを添加して懸濁物質を粗粒化し、アニオン性高分子凝集剤2mg/Lを添加して凝集処理することにより、上澄水の懸濁物質を25mg/Lまで低下させることができる。
本発明の汚戻水の処理方法によれば、転炉集塵水系で発生する汚戻水中の酸化鉄、グラファイトなどの懸濁物質を効果的に除去し、汚戻水の回収再生系のろ過装置への負荷を低減することができる。本発明方法によれば、汚戻水中の懸濁物質を40mg/L以下に低下させ、汚戻水の集塵用水への回収再生系において、ろ過器の設置を省略することも可能となる。本発明方法を採用することにより、転炉集塵水系で発生する汚戻水の処理装置の初期投資額を大幅に低減し、汚戻水の処理を安定して行うことができる。
転炉OG法の系統図の一例である。
符号の説明
1 転炉
2 誘引通風ファン
3 ダクト
4 第一集塵器
5 第二集塵器
6 回収弁
7 水封V弁
8 ガスホルダー
9 第二集塵器ピット
10 粗粒分離機
11 シックナー
12 処理水槽

Claims (4)

  1. 転炉集塵水系で発生する酸化鉄とグラファイトを含む汚戻水に、無機凝集剤を添加して懸濁物質を粗粒化したのち、高分子凝集剤を添加して凝集処理し、固液分離することを特徴とする汚戻水の処理方法。
  2. 無機凝集剤が、ポリ塩化アルミニウム又は鉄塩である請求項1記載の汚戻水の処理方法。
  3. ポリ塩化アルミニウムが、半導体のエッチング工程から得られるpH1以下の硫酸を含む廃ポリ塩化アルミニウムである請求項2記載の汚戻水の処理方法。
  4. 固液分離手段が、沈殿又はろ過である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の汚戻水の処理方法。
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