以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について具体的に説明する。本実施形態では、半導体ウエハ(ウエハ)の搬入、洗浄、乾燥、搬出をバッチ式に一貫して行うように構成された洗浄処理装置とその洗浄処理装置を用いた洗浄処理方法について説明する。
図1は洗浄処理装置1の斜視図であり、図2はその平面図である。これら図1および図2に示されるように、洗浄処理装置1は、ウエハWを収納可能なキャリア(基板収納容器)Cの搬入出が行われるイン・アウトポート(容器搬入出部)2と、ウエハWに対して洗浄処理を実施する洗浄処理ユニット3と、イン・アウトポート2と洗浄処理ユニット3との間に設けられ、洗浄処理ユニット3に対してキャリアCの搬入出を行うためのステージ部4と、キャリアCを洗浄するキャリア洗浄ユニット5と、複数のキャリアCをストックするキャリアストックユニット6とを備えている。なお、参照符号7は電源ユニットであり、8はケミカルタンクボックスである。
イン・アウトポート2は、4個のキャリアCを載置可能な載置台10と、キャリアCの配列方向に沿って形成された搬送路11を移動可能に設けられ、載置台10のキャリアCをステージ部4に搬送し、かつステージ部4のキャリアCを載置台10に搬送するためのキャリア搬送機構12とを有している。キャリアC内には、例えば、26枚のウエハWが収納可能となっており、キャリアCはウエハWの面が鉛直に配列されるように配置されている。
ステージ部4は、キャリアCを載置するステージ13を有しており、イン・アウトポート2からこのステージ13に載置されたキャリアCがシリンダを用いたキャリア搬送機構35により洗浄処理ユニット3内に搬入され、洗浄処理ユニット3内のキャリアCがこのキャリア搬送機構35によりステージ13に搬出される。なお、ステージ13には、載置台10からキャリア搬送機構12のアームを回転させてキャリアCが載置されるため、載置台10とは逆向きにキャリアCが載置される。このため、ステージ13にはキャリアCの向きを戻すための反転機構(図示せず)が設けられている。
ステージ部4と洗浄処理ユニット3との間には仕切壁14が設けられており、仕切壁14には搬入出用の開口部14aが形成されている。この開口部14aはシャッター15により開閉可能となっており、処理中にはシャッター15が閉じられ、キャリアCの搬入出時にはシャッター15が開けられる。
キャリア洗浄ユニット5は、キャリア洗浄槽16を有しており、後述するように洗浄処理ユニット3においてウエハWが取り出されて空になったキャリアCが洗浄されるようになっている。
キャリアストックユニット6は、洗浄前のウエハWが入ったキャリアCや洗浄前のウエハWが取り出されて空になったキャリアCを一時的に待機させるためや、洗浄後のウエハWを収納するための空のキャリアCを予め待機させるためのものであり、上下方向に複数のキャリアCがストック可能となっており、その中の所定のキャリアCを載置台10に載置したり、その中の所定の位置にキャリアCをストックしたりするためのキャリア移動機構を内蔵している。
次に、洗浄処理ユニット3について説明する。図3は洗浄処理ユニット3の内部を示す断面図、図4および図5は洗浄処理ユニットの洗浄処理部を示す断面図であり、図4は内側チャンバ27を外側チャンバ26の外部に出した状態(内側チャンバ27が「退避位置」にある状態)、図5は外側チャンバ26の内部に内側チャンバ27を配置した状態(内側チャンバ27が「処理位置」にある状態)を示している。
洗浄処理ユニット3の内部には、図3に示すように、洗浄処理部20と、洗浄処理部20の直下にキャリアCを待機させるキャリア待機部30と、キャリア待機部30に待機されたキャリアC内の複数のウエハWを押し上げて洗浄処理部20に移動させ、かつ洗浄処理部20の複数のウエハWを保持してキャリア待機部30のキャリアCに収納させるためのウエハ移動機構40とが設けられている。
キャリア待機部30は、キャリア搬送機構35のスライドステージ32を載置するステージ31を有しており、ステージ31上でキャリアCを待機させるようになっている。キャリア搬送機構35は、ベース部材34と、その上に設けられた2本のガイドレール33と、ガイドレール33に沿って、ステージ部4のステージ13とキャリア待機部30のステージ31との間を移動するスライドステージとを有している。キャリア待機部分であるステージ31は、ロータ24の直下に設けられている。
なお、図3に示すように、キャリア待機部30上方のウエハ移動路の途中には、ウエハ移動路を挟んで前後に発光子および受光子が配置された複数対の光学センサからなるウエハ検知部115が設けられており、このウエハ検知部115をウエハが通過することにより、ウエハWの枚数確認および正規に保持されていないウエハ(いわゆるジャンプスロット)の有無の確認が行われる。
ウエハ移動機構40は、ウエハWを保持するウエハ保持部材41と、鉛直に配置されウエハ保持部材41を支持する支持棒42と、支持棒42を介してウエハ保持部材41を昇降する昇降駆動部43とを有している。昇降駆動部43によりウエハ保持部材41を昇降させることにより、キャリア待機部30にあるキャリアCに収納された洗浄処理前のウエハWを上方の洗浄処理部20のロータ24内に移動させ、またはロータ24内の洗浄処理後のウエハWをキャリア待機部30にあるキャリアCに移動させるようになっている。
なお、ウエハ保持部材41にはウエハWを保持するための溝が所定のピッチで、例えば、52箇所形成されており、ウエハWはこの溝を1箇所飛ばしに保持され、洗浄処理前のウエハWをロータ24への搬入するために使用する溝と、洗浄処理が終了した後のウエハWを保持するための溝とを、区別して用いるようになっている。
洗浄処理部20は、ウエハWのエッチング処理後にレジストマスク、エッチング残渣であるポリマー層等を除去するものであり、鉛直に設けられた支持壁18と、スピンドル(回転軸)23aを水平にして支持壁18に固定された回転駆動機構の1つであるモータ23と、モータ23のスピンドル23aに取り付けられたロータ24と、モータ23のスピンドル23aを囲繞する円筒状の支持筒25と、支持筒25に支持され、ロータ24を囲繞するように構成される外側チャンバ26と、外側チャンバ26の内側に配置された状態で薬液処理を行う内側チャンバ27とを有している。
ロータ24は、鉛直にされた複数(例えば26枚)のウエハWを垂直状態として水平方向に所定間隔で配列した状態で保持可能となっており、このロータ24は、モータ23によってスピンドル23aを介して、係止部材71a・71b(71aの背面に位置するため図示せず)・72a・72b(72bは72aの背面に位置するため図示せず)によって係止され、ウエハ保持部材83a・83b(83bは83aの背面に位置するため図示せず)により保持された複数のウエハWとともに回転されるようになっている。なお、係止部材71a・71b・72a・72bは、所定の間隔をおいて配置された一対の円盤70a・70bに架設されている。
外側チャンバ26は円筒状をなし、処理位置(図3の二点鎖線)と支持筒25の外側の退避位置(図3の実線)との間で移動可能に構成されており、ウエハWの搬入出時には図3に示すように退避位置に位置される。また、図4に示すように、外側チャンバ26が処理位置にあり、内側チャンバ27が退避位置にある際には、外側チャンバ26とモータ23側の垂直壁26aと先端側の垂直壁26bとで処理空間51が形成される(図4参照)。
内側チャンバ27は外側チャンバ26よりも径が小さい円筒状をなし、図5に示す処理位置と図3、図4に示す支持筒25の外側の退避位置との間で移動可能に構成されており、ウエハWの搬入出時には外側チャンバ26とともに退避位置に位置される。また、図5に示すように内側チャンバ27が処理位置にある際には、内側チャンバ27と、垂直壁26a・26bとで処理空間52が形成される。なお、処理空間51および処理空間52は、シール機構により密閉空間とされる。また、支持筒25のモータ23側端部には外側チャンバ26、内側チャンバ27を係止する係止部材25aが設けられている。
処理空間51を形成する外側チャンバ26の上端近傍部分には、複数の吐出口53を有する2本の吐出ノズル54(1本のみ図示)が、吐出口53が水平方向に並ぶようにして、垂直壁26bに取り付けられている。吐出ノズル54からは、図示しない供給源から供給された純水、IPA等の揮発性薬剤、各種薬液等の処理液や窒素(N2)ガスが吐出可能となっている。吐出ノズル54から吐出される処理液は、例えば、吐出口53から扇状に拡がる液膜の形で吐出され、1箇所の吐出口53から吐出される処理液が1枚のウエハ処理面に当たるように処理液を吐出することができるようになっている。
処理空間52を形成する内側チャンバ27の上端近傍には、複数の吐出口55を有する2本の吐出ノズル56(1本のみ図示)が、吐出口55が水平方向に並ぶようにして配置されている。吐出ノズル56からは、図示しない供給源から供給された各種薬液、純水、IPA等の処理液や、N2ガス等が吐出可能となっている。
これらの吐出ノズル54・56は外側・内側チャンバ26・27にそれぞれ2本より多く配設することが可能であり、また、吐出ノズル54・56の他にも、処理液に応じて異なる構造のノズルを、各チャンバの上部以外の場所に設けることもできる。これら吐出ノズル54・56としては、例えば、PTFEやPFA等のフッ素樹脂製のもの、ステンレス製のものが好適に用いられる。吐出ノズル54・56は同等の構造を有するものを用いることが可能であり、例えば、吐出ノズル54の一形態である吐出ノズル54a・54bの斜視図を図6に示す。
図6(a)に示す吐出ノズル54aの一表面には、吐出口53aが形成された吐出口部材91a(両端を除く26箇所)・91b(両端の2箇所)が取り付けられており、1個の吐出口部材91aに形成された吐出口53aから吐出される処理液は、例えば扇形に平面状に拡がって1枚のウエハWの処理面に所定の角度で当たるように設計されている。また、吐出ノズル54aの背面には、処理液の供給管92が配設されている。
吐出口部材91bに形成された吐出口53aから吐出される処理液は、ウエハWには当たらずに排液または回収液となるが、吐出口部材91bは、吐出口部材91bのすぐ隣に配設されている吐出口部材91aから吐出される処理液が所定のウエハW(26枚並べられたウエハの両端に位置するウエハ)の処理面に当たるように、吐出口部材91aから吐出される処理液の吐出方向を制御する役割を果たす。つまり、逆に吐出口部材91bを設けなかった場合には、吐出口部材91aの両端の2箇所から吐出される処理液の軌道が曲がってしまい、所定のウエハWの処理面に当たらなくなり、液処理が不均一なものになるという問題を生ずるが、吐出口部材91bを設けることにより、このような問題が解決される。
なお、吐出ノズル54aにおいて、吐出口53aが千鳥状に配置されているのは、吐出口部材91a・91bの大きさを考慮し、またウエハWの保持間隔に対応させたものである。従って、吐出口部材91a・91bの形状を変更することにより1列に配置することもできる。その場合には、吐出ノズル54aを細くすることが可能であるから、吐出ノズル54aの配置スペースが小さくなり、例えば、処理チャンバの小型化を図ることも可能となる。
図6(b)に示す吐出ノズル54bは、吐出口53bが吐出ノズル54bの箱体93の表面に一体的に形成された形態を有している。この場合には、吐出口53bを1列に配設することが容易であり、また、吐出ノズル54aに用いた吐出口部材91a・91bの取り付けも必要でなく、形状をコンパクトなものとすることができる。吐出ノズル54bについても吐出口53bは28箇所形成されており、両端の2箇所については前出した吐出ノズル54aの両端の2箇所と同様の目的で形成されている。
垂直壁26aは支持筒25に取り付けられており、支持筒25とスピンドル23aとの間にはベアリング28が設けられている。そして、垂直壁26aと支持筒25の先端部にはシール部29が形成されている。このシール部29近傍の構成をより詳しく図7の断面図に示す。ガス供給機構85からガス流量制御機構81を通して支持筒25に形成されたガス導入孔86へ、外側・内側チャンバ26・27の処理雰囲気に悪影響を与えない窒素ガス等のパージガスが供給される。
ガス供給機構85は主としてパージガス供給源やパージガス供給源の開閉バルブ等で構成されている。また、ガス流量制御機構81は、後述するように、処理液の吐出の有無や外側・内側チャンバ26・27の開閉状態を知らせる信号を基に電磁開閉バルブ等の流量制御弁の開閉制御や絞り制御等を行い、また、圧力センサ90からの信号値に応じてパージガス流量を決定して流量制御弁等の開閉制御や絞り制御等を行い、さらに、処理液の種類や温度によってパージガスの流量を設定して流量制御弁等の開閉制御や絞り制御等を行う設定制御部の他、流量計(フローメータ)等を有する。
支持筒25の垂直壁26a側の先端近傍の内周側には、例えば、正六角形の各頂点に相当する位置6箇所に孔部87が形成されており、各孔部87に連通するようにガス導入孔86は6箇所形成されている。また、スピンドル23aの外周とスピンドル23aが貫通している垂直壁26aに形成された孔部88の内周との間には、例えば、幅が0.2mm程度のリング状の間隙部89が形成されており、各孔部87が間隙部89に連通している。
このような構成により、ガス供給機構85からガス流量制御機構81を経て供給されるパージガスは、ガス導入孔86と孔部87を経て間隙部89からリング状となって外側・内側チャンバ26・27によって形成される処理空間51・52へ供給されるようになっており、このリング状のパージガスにより間隙部89から処理液が処理空間51・52から外部に漏洩することが防止される。こうして洗浄処理部20が漏洩した処理液により汚染されることが回避される。なお、パージガスの一部は、モータ23で発生するパーティクル等が処理空間51に侵入することを防止するために、モータ23側へも流れるようになっており、パーティクルのウエハWへの付着を防止することができるようになっている。
内側チャンバ27の上部内壁には、円盤70a・70bの内側面(ウエハWに対向する面)を洗浄するための処理液の吐出ノズル75a・75bが配設されており、また、垂直壁26a・26bには、円盤70a・70bのそれぞれ垂直壁26a・26bと対向する外側面を洗浄するための処理液の吐出ノズル74a・74bが配設されている。これらの吐出ノズル74a・74b・75a・75bは、主に、種々の薬液処理後に純水で円盤70a・70bの洗浄を行う目的に使用される。
垂直壁26bの下部には、図4の状態において処理空間51から使用済みの薬液、純水、IPAを排出する第1の排液ポート61が設けられており、第1の排液ポート61の上方には図5の状態において処理空間52から使用済みの薬液、純水、IPAを排出する第2の排液ポート62が設けられている。また、第1の排液ポート61および第2の排液ポート62には、それぞれ第1の排液管63および第2の排液管64が接続されている。
図8は第1・第2の排液ポート61・62からの排液経路の一実施形態を示した説明図である。第2の排液ポート62に接続された第2の排液管64は、6連バルブV1〜V6に接続されている。例えば、内側チャンバ27による処理空間52を用いた洗浄処理において異なる4種類の薬液(薬液1〜4)を適宜使い分けるとすると、バルブV1〜V4のそれぞれに薬液1〜4を割り当てて、薬液1〜4毎にリターンラインに送り、薬液1〜4を再利用することが可能となっている。
また、バルブV5は、後述する外側チャンバ26による処理空間51を用いた洗浄処理と共通する薬液、例えば、IPAや純水を用いる場合の廃棄ルートとして用いることができるようになっている。バルブV6はさらに4連バルブV6a〜V6dに接続されており、バルブV6a〜V6dにはそれぞれ廃棄1〜4のルートが形成されている。こうして、薬液1〜4をそれぞれバルブV6a〜V6dに割り当てることにより薬液1〜4の分別廃棄、分別回収が可能となっている。
一方、第1の排液ポート61に接続された第1の排液管63は、4連バルブV7〜V10に接続されている。例えば、外側チャンバ26による処理空間51を用いた洗浄処理において異なる3種類の薬液(薬液5〜7)を適宜使い分けるとすると、バルブV7〜V9のそれぞれに薬液5〜7を割り当てて、薬液5〜7毎にリターンラインに送り、薬液5〜7を再利用することができるようになっている。また、バルブV10はさらに3連バルブV10a〜V10cに接続されており、バルブV10a〜V10cにはそれぞれ廃棄5〜7のルートが形成されている。こうして、薬液5〜7をそれぞれバルブV10a〜V10cに割り当てることにより薬液5〜7の分別廃棄が可能となっている。
ここで、例えば、外側チャンバ26による処理空間51を用いて、薬液5による洗浄処理に続いて純水による水洗処理を行うとすると、水洗処理によって廃棄される洗浄水には、その前段で使用された薬液5が含まれることとなる。そこで、廃棄5のルートは薬液5を用いた洗浄処理における劣化した薬液5を回収するルートとして使用し、廃棄6のルートを薬液5による洗浄処理後の水洗処理により排出される薬液5を含んだ洗浄水の廃棄ルートとして使用し、廃棄7のルートを薬液5が殆ど含まれていなくなった状態以降の洗浄水の廃棄ルートとして使用することも可能である。
つまり、使用する薬液が別の薬液と混合する場合に、それらの混合液を種類別に回収することも可能であり、その目的のためには、使用する薬液の種類に応じて、バルブV10a〜V10cに限定されず、さらに多くのバルブを設け、廃棄ルートを増設すればよい。こうして、純度の高い薬液の回収が可能となり、再利用処理を容易なものとすることが可能となる。
垂直壁26bの上部には、図4の状態において処理空間51を排気する第1の排気ポート65が設けられており、第1の排気ポート65の下方には図5の状態において処理空間52を排気する第2の排気ポート66が設けられている。また、第1の排気ポート65および第2の排気ポート66には、それぞれ第1の排気管67および第2の排気管68が接続されている。
ここで、第1・第2の排気ポート65・66からの排気経路の一実施形態を示す説明図を図9に示す。第2の排気ポート66に接続された第2の排気管68には3連バルブV11〜V13が配設され、排気1〜3で示される3つの排気ルートが形成され、それぞれにミストトラップM1〜M3が配設されるとともに、ミストトラップM1〜M3にそれぞれドレインD1〜D3が設けられている。これにより、例えば、内側チャンバ27による処理空間52において使用する薬液が、アミン系のもの、フッ化アンモニウム系のもの、水系のものの3系統があった場合に系統毎にバルブV11〜V13を切り替えて、専用の排気ルートを用いて排気し、またミストトラップM1〜M3において系統毎にミストを捕集し、ドレインD1〜D3を通して分別廃棄することが可能となる。
第1の排気ポート65に接続された第1の排気管67についても、3連バルブV14〜V16が配設され、排気4〜6で示される3つの排気ルートが形成されている。それぞれの排気ルートにミストトラップM4〜M6が配設されるとともにミストトラップM4〜M6にそれぞれドレインD4〜D6が設けられている。これらの廃棄ルートの用い方は、前述した第2の排気管68からの廃棄方法と同様であり、使用する薬液の系統により排気ルートを分けることができる。
なお、図9においては、説明を容易とするために第1・第2の排気ポート65・66とバルブV11〜V16を区別して示したが、バルブV11〜V16を直接に第1・第2の廃棄ポート65・66の位置に配設することも可能であり、図示した合計6つの排気ルートより多くの排気ルートを設けることもできる。
また、第1・第2の排気ポート65・66の配設位置は、図4・5に示される位置に限定されるものではない。例えば、処理空間52を形成する垂直壁26bの一部分は、処置空間51を形成する垂直壁26bの一部分でもあることから、図10(a)の説明図に示すように、処理空間52を形成する垂直壁26bの部分に、第1・第2の排気ポート65・66を併設しても構わない。図10(a)に示した第1・第2の排気ポート65・66からの排気経路は、例えば、図9と同じ構成とすることができ、バルブV11〜V16の切替によって排気ルートを選択することができる。
さらに、バルブV11〜V16の切替により排気ルートを選択することが可能であることを考慮すると、図10(b)の説明図に示すように、処理空間52を形成する垂直壁26bの一部分に1箇所のみ排気ポート65aを設けて排気管67aを接続し、排気管67aに6連バルブV11〜V16を配設して、図9や図10(a)と同様に6つの排気ルートを形成することも可能である。液処理に使用される処理液に応じて6連バルブV11〜V16を切り替えることにより、適切な排気ルートを選択することができる。
図11は、第1・第2の排気ポート65・66の一実施形態を示す断面図である。垂直壁26bに形成された孔部76は蓋体77により開口/閉口され、その動作は、蓋体77をスライド移動可能とするシリンダ78の制御により行われる。蓋体77と垂直壁26bとの間はシール材79により気密シールが可能となっている。また、孔部76の外周部の垂直壁26bの形状は、液溜まりが生じ難いような段差構造となっている。シリンダ78の上部側面には第1・第2の排気管67・68が形成されており、蓋体77が点線位置にあるときは処理空間51・52と第1・第2の排気管67・68が孔部76を通じて連通し、排気が行われ、一方、実線位置では孔部76が閉塞されて処理空間51・52が密閉空間とされる。
次に、ガス流量制御機構81の制御形態、すなわちパージガスの供給/停止または減量等の制御形態について説明する。処理液が処理空間51・52(外側・内側チャンバ26・27内)に供給されている状態もしくは処理空間51・52が形成されている状態、つまり外側・内側チャンバ26・27が密閉されている状態、または処理空間51・52の圧力つまり外側・内側チャンバ26・27内の圧力が所定圧力以上の状態にある場合には、ガス流量制御機構81は、間隙部89を通して所定流量のパージガスを処理空間51・52に供給する。
一方、処理液が処理空間51・52に供給されていない状態、もしくは処理空間51・52が形成されずに解放されている状態、または処理空間51・52の圧力が所定圧力未満の状態にある場合には、パージガスの供給を停止または減量するように、ガス流量制御機構81の制御が行われる。通常、このようなガス流量制御機構81の制御は、自動で行われるが、液処理の進行状況を把握しながら手動で行うこともできる。
先ず、処理液が処理空間51・52に供給されている状態か否かは、例えば、吐出ノズル54・56へ処理液を供給する図示しない処理液供給機構の動作状態を示す信号により判断することができ、この信号をガス流量制御機構81へ送ることによってパージガス流量を制御することができる。例えば、処理液供給機構の有する送液ポンプが作動して処理液が吐出ノズル54・56に送液されている状態を示す信号がガス流量制御機構81へ送られている場合には、ガス流量制御機構81は、所定量のパージガスをガス導入孔86へ向けて供給するように、電磁開閉バルブ等を操作する。
一方、処理液供給機構の送液ポンプが作動していない信号がガス流量制御機構81に送られている場合には、処理液が吐出ノズル54・56からは吐出されていないと判断して、ガス供給機構85からのパージガスのガス導入孔86へ向けての供給を停止または減量するようにガス流量制御機構81が動作する。
ここで、処理液供給機構からの処理液の供給/停止は一定のシーケンスによって制御されることが一般的であることから、そのシーケンスに従って処理液の供給が始まる所定時間前にパージガスの供給を開始し、一方、処理液の供給が停止した後にも所定時間が経過するまではパージガスを供給するようにガス流量制御機構81を制御することも好ましい。
パージガスの供給/停止はON/OFF制御により行うことができ、この場合にはパージガスの流路には、構造の簡単な電磁開閉バルブ等の開閉スイッチのON/OFF動作のみで制御可能な部品を配設することができることから、装置コストが安価となり、また、パージガスの消費が抑えられ処理コストの低減が図られるという利点がある。なお、パージガスの供給が停止されるときは、モータ23の回転もまた停止状態にあることが一般的であることから、パージガスの供給を停止しても、モータ23で発生するパーティクルが間隙部89を通して処理空間51・52に拡散することは殆どなく、ウエハWの処理品質に不良が生じることはない。
一方、パージガスの流量が所定の流量となるように増減制御する場合には、電磁バルブ等の開口度が所定の状態となるように制御する必要があり、このために制御系が複雑となり、また電磁バルブ等自体も高価なものとなり、コスト的に不利となる。またパージガス流量を減量して少量としても、パージガスの供給を停止する場合と比較すると、一定量のパージガスを流し続ける点でランニングコストの点では不利である。
しかし、従来のように常に所定量のパージガスを流し続ける場合と比較してランニングコストが抑えられることはいうまでもなく、また、確実に処理液の漏洩を防止することが可能となる利点がある。さらに、モータ23に発生するパーティクルが間隙部89を通して処理空間51・52に侵入することを確実に防止することが可能となる。従って、パージガスの供給を停止するかまたは減量するかは、ウエハWの品質や処理コスト等を勘案して、適宜決定すればよい。
続いて、処理空間51・52が形成されている状態か否か、つまり外側・内側チャンバ26・27が密閉されている状態か解放されている状態かの判断は、洗浄処理部20に光学式センサ(非接触式センサ)やスイッチセンサ(接触式センサ)等を配設して、外側・内側チャンバ26・27が待避位置にあるか処理位置にあるかを検出することにより行うことができる。
例えば、内側チャンバ27による処理空間52を用いた処理を前提として、図4に示したように内側チャンバ27が待避位置にある状態においては、内側チャンバ27の右側面が係止部材25aの左側面に設けられた図示しないスイッチセンサと接触して、スイッチセンサがONの状態にあるとする。この状態ではパージガスの供給を停止または減量して供給している状態とする。一方、内側チャンバ27を用いた洗浄処理を行うために、内側チャンバ27を処理位置側にスライドさせると、スイッチセンサと非接触の状態となり、スイッチセンサはOFFの状態に切り替わる。このときのスイッチセンサの信号の変化を検知して、パージガスの供給を開始するようにガス流量制御機構81を制御することができる。
逆に、内側チャンバ27が処理位置にあるときにスイッチセンサがONの状態となり、処理位置から待避位置へ移動する際にスイッチセンサがOFFの状態となるように、例えば、内側チャンバ27が処理位置にあるときに、内側チャンバ27の右側面と垂直壁26bの内側が近接する位置に、スイッチセンサを設けることもできる。さらに、内側チャンバ27にスライド移動途中に光学式センサを配設して、内側チャンバ27のスライドの状態に合わせて、ガス流量制御機構81にパージガスの供給や停止または減量を指示する信号を送ってもよい。
次に、処理空間51・52の圧力、つまり外側・内側チャンバ26・27内の圧力が所定圧力(例えば、大気圧)よりも高い状態にあるか否かは、例えば、垂直壁26bに配設した圧力センサ90の圧力測定値により判断することができる。使用する処理液の吐出量や、処理液の温度によって処理空間51・52の圧力は変動することから、処理空間51・52の圧力に応じてパージガスの流量、供給圧を変化させることで処理液の漏洩を効率的に防止することが可能となる。このため、圧力センサ90を用いたガス流量制御機構81の制御は、主として洗浄処理中に用いられ、例えば、圧力センサ90の圧力測定値の大きさと比例するように、パージガスの流量を増減するようにガス流量制御機構81を制御することができる。
なお、圧力センサ90を用いたパージガス流量の制御は、液処理中であることを確認した上で行うことが好ましい。これは、使用する処理液によっては、また液処理条件によっては、処理液を供給している場合であっても処理空間51・52の圧力が上がらない場合も考えられ、このような場合に圧力センサ90の測定値が小さいからといってパージガスの供給を停止すれば、処理液の間隙部89からの漏洩が起こる可能性が大きくなるためである。従って、処理液の漏洩が起こらないように、ガス流量制御機構81の他の制御因子とも比較しながら、圧力センサ90によるガス流量制御機構81の制御を行うことが好ましい。
なお、上述した種々のガス流量制御機構81の制御因子は総合的に判断して用いることが、より好ましい。例えば、処理液を供給していない状態ではパージガスの供給を停止または減量しなければならないわけではなく、他の条件でパージガスの供給を必要としているならば、パージガスの供給を行うようにガス流量制御機構81を制御することが好ましい。
上述のようにしてガス流量制御機構81を制御するにあたって、例えば、内側チャンバ27による処理空間52において所定の薬液を用いた液処理を行い、外側チャンバ26による処理空間51において水洗および/または乾燥処理を行うように、外側チャンバ26と内側チャンバ27を使い分けた場合には、一般的に薬液を用いた処理では薬液温度が高く、処理空間52の圧力が大きくなり易い一方で、水洗処理や乾燥処理では処理空間内の圧力が大きくは上がらないことから、内側チャンバ27を用いる場合に供給するパージガスの流量が、外側チャンバ26を用いる場合に供給するパージガスの流量よりも多くなるように、ガス流量制御機構81を制御することも好ましい。つまり、内側・外側チャンバ26・27の用途別にパージガスの流量設定を行い、また、流量制御を行うことも好ましい。
さらに、乾燥処理時のパージガス流量は、水洗処理時よりも少なくともよいこと等を考慮すると、同一の処理空間を用いて異なる処理を行う場合には、その処理毎にパージガス流量を異ならしめるようにガス流量制御機構81を制御することもできる。
ところで、近年、処理液の種類が多様化し、粘性が低い薬液や界面活性剤等を含んだ濡れ性の良好な薬液が使用されるようになってきているが、このような薬液は間隙部89に侵入し易い性質を有する。間隙部89に薬液が侵入、滞留した場合には、その後の洗浄処理や乾燥処理の際に間隙部89を通してパージガスを処理空間51・52へ供給したときに、薬液がミストとなって処理空間51・52に飛散、拡散し、処理中のウエハWに付着してパーティクルとなるおそれがある。
そこで、例えば、間隙部89に侵入し易い薬液を用いる場合には、水洗時等に供給するパージガス流量よりも多くパージガスを供給する等、使用する薬液の種類によってパージガスの流量を変えることにより、薬液の間隙部89への侵入を防止を図ることも好ましい。これにより、ウエハWへのパーティクルの付着が回避され、品質を高く保つことが可能となる。
次に、上述した洗浄処理装置1を用いたウエハWの洗浄処理方法について説明する。載置台10の所定位置に処理すべきウエハWが収容されたキャリアCを載置し、キャリア搬送機構12を用いてキャリアCをステージ部4へ搬入する。このときキャリアCは、ステージ部4に設けられたステージ13上に待機しているスライドステージ32上に載置される。続いて、スライドステージ32をキャリア待機部30側へ移動させ、外側・内側チャンバ26・27を待避位置側にスライドさせた状態として、昇降駆動部43によりウエハ保持部材41を上昇させることにより、キャリアCに収容されたウエハWを上方の洗浄処理部20のロータ24内に移動させ、ウエハWをロータ24内で保持した後に、ウエハ保持部材41を降下させる。この過程ではパージガスは供給されていない。
外側・内側チャンバ26・27を処理位置にスライドさせて図5の状態に示されるように、処理空間52を形成する。例えば、こうして洗浄処理の開始が可能となった時点で、パージガスの供給を開始する。そして、モータ23による回転駆動によりロータ24を所定速度で回転させ、ウエハWを回転させながら吐出ノズル56から所定の薬液を吐出し、例えば、レジスト除去処理を行う。この処理は、所定時間ほど1回または複数回行う。薬液を吐出しながら圧力センサ90を用いて処理空間52の圧力を測定し、測定圧力に応じて、パージガスの流量を増減させることができる。
このように、ウエハWの搬送時等のパージガスが必要でないときにはパージガスが供給されないことから、消費量が抑えられて処理コストを低減することができる。また、モータ23の回転開始よりもパージガスの供給開始が時間的に早いことから、モータ23でパーティクルが発生しても、パージガスによりパーティクルが処理空間52に拡散することが防止される。さらに処理液が間隙部89を通じて処理空間52外部に漏洩することも防止され、洗浄処理部20の環境が良好に保たれる。さらにまた、洗浄処理中に処理空間52の圧力に応じてパージガスの流量を制御することができることから、処理液の処理空間52外部への漏洩を効率的かつ確実に行うことができる。
次に、薬液の吐出とモータ23の回転を停止し、十分に薬液が第2の排液ポート62から排出された時点で、内側チャンバ27を待避位置へスライドさせて、外側チャンバ26による処理空間51を形成し、純水を用いたリンス処理を行う。ここで、この薬液の吐出の終了または内側チャンバ27の待避位置へのスライド移動の開始から次のリンス処理の開始まで間は、パージガスの供給を停止してもよいが、この間の時間が短い場合には継続してパージガスを供給しても構わない。
処理空間51が形成された時点では所定量のパージガスが供給されている状態として、再びモータ23による回転駆動によりロータ24を所定速度で回転させ、ウエハWを回転させながら吐出ノズル54から純水をウエハWに向けて吐出させるリンス処理を行う。このリンス処理の間に、圧力センサ90が検出する処理空間51の圧力値に従ってパージガス流量を変化させてもよい。
リンス処理が終了した後にはIPA乾燥処理を行う。洗浄処理装置1では、リンス処理とIPA乾燥処理は連続して行うことができ、この場合にはパージガスの供給を停止しなくともよい。但し、IPA乾燥処理時のパージガス流量を水洗処理時のパージガス流量と異ならしめるときは、ガス流量制御機構81による流量制御を行う。
IPA乾燥処理は、ロータ24を所定回転数で回転させながら、吐出ノズル54から所定量のIPAをウエハWに向けて吐出して行われる。IPA乾燥処理中も処理空間51の圧力値に従ってパージガスの流量を変化させることができる。
IPA乾燥処理が終了した後には、吐出ノズル54から、例えばN2ガスを吐出させながらウエハWを乾燥させるガス乾燥処理を行う。このガス乾燥処理においては、ロータ24およびウエハWは静止した状態でもよく、所定の回転数で回転させてもよい。このガス乾燥処理により、IPA乾燥処理後にウエハWの表面に微量に残留するIPAがほぼ完全に除去される。ガスを供給することなく、ウエハWを高速回転させるスピン乾燥によって、ウエハWの乾燥を行ってもよい。
なお、上述したように、所定時間、所定回数のリンス処理が終了した後のウエハWに洗浄水が付着した状態から引き続いてIPA等を用いた乾燥処理を行ってもよいが、純水の供給を停止した状態で、ロータ24およびウエハWを、例えば、800rpm程度の高速回転で回転させ、ウエハWに付着している純水を振り切るスピン乾燥処理を行い、その後にIPA乾燥処理を行うことも好ましい。このスピン乾燥時には、パージガス流量をリンス処理の流量よりも少なく設定することができる。
洗浄処理装置1では、このようなガス乾燥処理もまたリンス処理やIPA乾燥処理に連続させて行うことが可能であるから、パージガスの供給も連続して行うことができる。IPAを用いない乾燥処理においては、薬液、純水、IPA等の処理液を用いた場合よりも少ない流量のパージガスで足りる。
上述した一連の洗浄処理が終了した後には、次処理の開始まで、パージガスの供給を停止し、または少量を供給し続け、続いての洗浄処理を行わない場合にはパージガスの供給を停止する。このパージガスの供給停止のタイミングは、吐出ノズル54からのN2ガスの吐出停止や外側チャンバ26の待避位置へのスライド移動に合わせることができる。こうして、洗浄処理が行われない間には、パージガスの消費が抑制されることから、処理コストが低減される。
外側チャンバ26を待避位置へスライドさせてロータ24が露出した状態とし、先にウエハWをロータ24内へ搬入した際に使用された保持溝とは異なる保持溝でウエハWを受け取るようにウエハ保持部材41を上昇させる。洗浄後のウエハWが保持されたウエハ保持部材41を降下させ、その際にウエハ検知部115により再度ウエハWの枚数等が確認される。そして、ウエハ保持部材41がキャリア待機部30に待機しているキャリアCと通過する際に、ウエハWがキャリアCのウエハ保持溝に保持される。
ウエハWが収容されたキャリアCは、キャリア搬送機構35によりステージ部4へ搬出され、さらにキャリア搬送機構12によりイン・アウトポート2の載置台10に載置され、作業者または自動搬送装置により搬出され、一連の洗浄処理が終了する。そして、別に処理するウエハWを収容したキャリアCがある場合には、前述した工程に従って、再び所定の洗浄処理を開始することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明が上記実施の形態に限定されるものでないことはいうまでもなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では外側チャンバ26および内側チャンバ27の2つの処理チャンバを用いて液処理を行う場合について説明したが、チャンバは1つであってもよいし、3つ以上あってもよい。
また、上記実施の形態では、複数枚のウエハを一度に処理する場合について説明したが、1枚のウエハを処理するいわゆる枚葉式の洗浄処理装置、洗浄処理方法にも本発明を適用することが可能である。さらに、上記実施の形態では、ロータ24とモータ23を連結し、処理チャンバの壁面を貫通するスピンドル23aを貫通部材の例として説明したが、処理チャンバ内に配設される治具や部材と処理チャンバ外に配設される治具や部材が、処理チャンバの壁面を貫通するように配設された貫通部材によって連結された構造を有する全ての液処理装置に本発明を適用することが可能である。さらにまた、上記実施の形態では半導体ウエハの洗浄処理に適用した場合について示したが、これに限らず液晶表示装置(LCD)用基板等の他の基板の洗浄処理装置に用いることができ、洗浄処理に限らず、例えば、レジスト塗布・現像処理装置にも適用することが可能である。