JP2006226396A - トルクリミッタ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 トルクリミッタ装置の作動トルクの安定化を図る。
【解決手段】 トルクリミッタ装置3は、エンジン側からトルクが入力される入力側部材10と、出力軸5に連結されるクラッチディスク組立体20と、入力側部材10に対して相対回転可能に配置され入力側部材10からクラッチディスク組立体20へ伝達されるトルクが予め設定された作動トルク値を超えると入力側部材10及びクラッチディスク組立体20の相対回転を可能にする伝達トルク制限部30と、入力側部材10への入力トルク値が予め作動トルク値よりも小さく設定された目標トルク値を超えると、入力トルク値と目標トルク値とのトルク差に比例した相対角度だけ入力側部材10と伝達トルク制限部30とを相対回転させるトルク検出機構40と、作動トルク値が目標トルク値に近づくよう相対角度に応じて作動トルク値を調整可能な作動トルク調整機構50とを備えている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、トルクリミッタ装置、特にフィードバック機構を有するトルクリミッタ装置に関する。
車両において、エンジンから伝達される過大トルクによるトランスミッション等の破損を考慮して、エンジンとトランスミッションとの間に、所定値以上のトルクの伝達を遮断するトルクリミッタ装置が設けられることがある。このトルクリミッタ装置は、例えば、1枚以上の摩擦フェーシングを1対のプレートで両側から所定の挟持力で挟み込み、その入力側をエンジン側の部材としてのフライホイール等に連結し、出力側をトランスミッション側の入力軸等に連結するものである。
この種のトルクリミッタ装置は、外周部に1対のプレートによって所定の挟持力で挟み込まれた摩擦連結部を有するドライブプレートと、トランスミッションの入力軸に連結されるドリブン側部材と、これらの間に設けられたスプリングダンパーとを有している(例えば、特許文献1を参照)。この装置では、摩擦連結部を挟み込む1対のプレート(あるいは摩擦連結部の外周部に設けられたダンパーカバー)がフライホイールに連結されている。また、摩擦連結部に対して狭持力を与えるために、一方のプレートはコーンスプリングにより摩擦連結部側に付勢されている。
このトルクリミッタ装置では、エンジンのトルクは、フライホイールから摩擦連結部を介してドライブプレートに伝達され、さらにスプリングダンパーを介してドリブン側部材及びトランスミッションの入力軸に伝達される。そして、エンジンからのトルクが所定のトルクを上回ると、摩擦連結部とプレートとの間で滑りが発生する。これにより、所定のトルクを上回るトルクが入力されても、トランスミッション側に伝達されず、過大トルクの伝達によるトランスミッションの破損を防止することができる。
特開2002−39210号公報
以上のようなトルクリミッタ装置は、組み付け後の検査により、実際に作動するトルク(作動トルク)の管理が行われている。検査では、実際にトルクリミッタ装置にトルクを入力し、作動時の作動トルクを測定することでトルク管理が行われている。
しかし、このように検査等でトルク管理を行っていても、トルクリミッタ装置の組み付け後の作動トルクは不安定な場合が少なくない。例えば、摩擦面の静摩擦係数と動摩擦係数との相違、あるいは摩擦面の摩耗や経年劣化等により、作動トルクが大きく変化してしまうことがある。この結果、トルクリミッタ装置の実際の作動トルクが目標としている作動トルクを大きく上回ってしまい、下流側の装置の保護が図れない場合がある。
本発明の課題は、トルクリミッタ装置の作動トルクの安定化を図ることにある。
請求項1に記載のトルクリミッタ装置は、エンジン側から出力軸側へ伝達されるトルクを制限するためのものである。このトルクリミッタ装置は、エンジン側からトルクが入力される入力側部材と、出力軸に連結される出力側部材と、入力側部材に対して相対回転可能に配置され入力側部材から出力側部材へ伝達されるトルクが予め設定された作動トルク値を超えると入力側及び出力側部材の相対回転を可能にする伝達トルク制限部と、入力側部材への入力トルク値が予め作動トルク値よりも小さく設定された目標トルク値を超えると、入力トルク値と目標トルク値とのトルク差に比例した相対角度だけ入力側部材と伝達トルク制限部とを相対回転させるトルク検出機構と、作動トルク値が目標トルク値に近づくよう相対角度に応じて作動トルク値を調整可能な作動トルク調整機構とを備えている。
このトルクリミッタ装置では、トルク検出機構と作動トルク調整機構とを備えているため、入力トルク値と目標トルク値とのトルク差を入力側部材と伝達トルク制限部との相対角度として検出することができる。この結果、相対角度に応じて、すなわちトルク差に応じて伝達トルク制限部での作動トルク値が目標トルク値に近づくよう調整される。このように、トルク差により作動トルク値が目標トルク値付近に自動的に調整される、いわゆるフィードバック機構を実現できるため、このトルクリミッタ装置では摩耗や経年劣化等による作動トルク値の変化に影響されない安定したリミッタ性能を得ることができる。
ここで、作動トルク値とは、伝達トルク制限部が実際に作動する入力トルク値をいい、目標トルク値とは、トルク検出機構において設定されたリミッタ性能として目標とするトルク値をいう。
請求項2に記載のトルクリミッタ装置は、請求項1において、トルク検出機構が入力側部材と伝達トルク制限部との相対回転により円周方向に圧縮可能なよう設けられた少なくとも1つの弾性部材を有している。弾性部材は、入力側部材から伝達トルク制限部へ伝達されるトルクが目標トルク値になるとさらに圧縮が進行するよう、予め圧縮された状態で設けられている。
このトルクリミッタ装置では、弾性部材の圧縮状態や剛性により目標トルク値の設定を実現することができるため、目標トルク値の設定が容易になるととともに、目標トルク値が安定する。
請求項3に記載のトルクリミッタ装置は、請求項1または2において、伝達トルク制限部が、出力側部材に連結された摩擦連結部と、摩擦連結部に近接して配置された環状の第1部材と、第1部材とともに摩擦連結部を狭持するための環状の第2部材と、第2部材と作動トルク調整機構との間に配置され第2部材を第1部材側へ付勢するための環状の付勢部材とを有している。
請求項4に記載のトルクリミッタ装置は、請求項3において、伝達トルク調整機構が入力側部材に対して相対回転不能にかつ軸方向へ相対移動可能に設けられた複数の第1調整部材と、伝達トルク制限部に対して相対回転不能にかつ軸方向へ相対移動可能に設けられ第1調整部材及び付勢部材に係合する環状の第2調整部材とを有している。第2調整部材は、第1及び第2調整部材の相対回転により軸方向へ移動して付勢部材の付勢力を減少させる。
このトルクリミッタ装置では、トルク検出機構が作動して入力側部材と伝達トルク制限部とが相対回転すると、第1及び第2調整部材が相対回転する。この結果、第2調整部材が付勢部材の付勢力を減少させ、伝達トルク制限部での作動トルクを減少させることができる。これにより、このトルクリミッタ装置では、入力トルクを利用して簡易かつ低廉なフィードバック機構を実現することができる。
請求項5に記載のトルクリミッタ装置3は、請求項4において、第1調整部材が第2調整部材との係合部分にテーパ面を有している。
このトルクリミッタ装置では、第1調整部材がテーパ面を有しているため、両部材の相対回転を軸方向への相対移動に変換可能となる。
請求項6に記載のトルクリミッタ装置は、請求項4または5において、第1及び第2調整部材の間には、少なくとも1つの転動体が配置されている。
このトルクリミッタ装置では、第1及び第2調整部材の間に転動体が配置されているため、両部材の相対回転や軸方向への相対移動がスムーズに行われる。
請求項7に記載のトルクリミッタ装置3は、請求項4から6のいずれかにおいて、付勢部材が第2部材と第2調整部材との間に軸方向へ弾性変形可能に配置されている。付勢部材の外周部は、第2調整部材により軸方向に支持されている。付勢部材の内周部は、第2部材を軸方向に付勢している。
このトルクリミッタ装置では、第2調整部材が弾性部材の外周部を軸方向に支持しているため、第1及び第2調整部材の相対回転により第2調整部材の支持点が軸方向へ移動する。これにより、入力側部材と伝達トルク制限部との相対回転により付勢部材の付勢力を変化させることができる。
請求項8に記載のトルクリミッタ装置は、請求項4から7のいずれかにおいて、入力側部材がエンジン側からトルクが入力される入力プレートと、入力プレートに対して相対回転不能に固定される環状のカバーとを有している。第1調整部材は、カバーに対して相対回転不能にかつ軸方向へ相対移動可能に係合している。トルク検出機構は、入力プレート及びカバーの少なくともいずれか一方の外周側に設けられている。
請求項9に記載のトルクリミッタ装置は、請求項2から8のいずれかにおいて、トルク検出機構が弾性部材を圧縮状態で収容するための少なくとも1つの収容部と、伝達トルク制限部の外周側に固定され弾性部材の端部に円周方向に係合する少なくとも1つの係合部材とをさらに有している。
請求項10に記載のトルクリミッタ装置は、請求項1から9のいずれかにおいて、出力側部材が摩擦連結部と出力軸とを回転方向に弾性的に連結するためのダンパー機構を有している。
このトルクリミッタ装置では、ダンパー機構を有しているため、トルクリミッタ作動時等の衝撃や回転変動等を減衰・吸収することができる。
本発明に係るトルクリミッタ装置では、入力トルクを利用した簡易かつ低廉なフィードバック機構を実現することで、作動トルクの安定化を図ることが可能となる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
1.トルクリミッタ装置の構成
図1に本発明の一実施形態としてのトルクリミッタ装置の断面模式図、図2に機械回路図を示す。図1に示す模式図は、本発明の構成の概略を示しており、詳細な構造については省略してある。図1に示すように、トルクリミッタ装置3は、入力側部材10と、クラッチディスク組立体20(出力側部材)と、伝達トルク制限部30と、トルク検出機構40と、作動トルク調整機構50とを備えている。
(1)入力側部材
入力側部材10は、エンジン1(図2参照、図1では左側に配置)からトルクが入力される部材であり、入力プレート11と、第1カバー12(カバー)と、連結部材13とから構成されている。入力プレート11は、クランクシャフト4の先端に固定されている。第1カバー12は、入力プレート11のトランスミッション2(図2参照、図1では左側に配置)側に相対回転不能に係合されている。
(2)クラッチディスク組立体
クラッチディスク組立体20は、トランスミッション側から延びる出力軸5に連結されており、スプラインハブ21と、摩擦連結部22と、ダンパー機構23とから構成されている。スプラインハブ21は、出力軸5の外周側にスプライン係合している。摩擦連結部22は、スプラインハブ21の外周側に配置された一対の環状の摩擦ディスクから構成されており、後述する第1及び第2部材32、33により狭持されることで摩擦力を発生させる部分であり、後述する伝達トルク制限部30の一部を構成している。ダンパー機構23は、スプラインハブ21と摩擦連結部22とを回転方向に弾性的に連結するためのものであり、トルクリミッタ作動時等の衝撃や回転変動等を減衰・吸収する。クラッチディスク組立体20は通常のクラッチ等で用いられるものと何ら変わらないため、詳細な説明は省略する。
(3)伝達トルク制限部
伝達トルク制限部30は、入力側部材10に対して相対回転可能に配置されており、入力側部材10からクラッチディスク組立体20へ伝達されるトルクを制限するためのものである。伝達トルク制限部30は、第2カバー31と、第1部材32と、第2部材33と、コーンスプリング35(付勢部材)とから構成されている。
第2カバー31は、第1部材32等を内部に収容するためのもので、入力プレート11の内周側に設けられた環状の突出部11a及び第1軸受36により半径方向に支持されている。また、突出部11aと第2カバー31との軸方向間には、第2軸受37が設けられており、第2カバー31に軸方向荷重が作用しても入力プレート11と第2カバー31との相対回転を阻害しないよう軸方向に支持されている。
第1部材32は、第2カバー31の内部に固定された環状の部材であり、クラッチディスク組立体20の摩擦連結部22に近接して配置されている。第2部材33は、第1部材32とともに摩擦連結部22を狭持するための環状の部材である。第2部材33は、第2カバー31に対して相対回転不能にかつ軸方向へ相対移動可能に設けられている。
コーンスプリング35は、第2部材33を第1部材32側へ付勢するためのもので、第2部材33と作動トルク調整機構50(後述)との間に予め軸方向に弾性変形した状態で配置されている。トルク検出機構40及び作動トルク調整機構50(後述)が作動していない状態で作動トルク値が目標トルク値よりも大きくなるよう、コーンスプリング35の変形量は決定されている。
コーンスプリング35の内周部は、第2部材33の内周側に形成された複数の突起34と当接している。コーンスプリング35の外周部は、作動トルク調整機構50の第2調整部材52と当接している。また、コーンスプリング35は、第2カバー31に対して相対回転不能にかつ軸方向へ弾性変形可能に設けられている。
以上に述べたように、伝達トルク制限部30は各部材が一体回転するよう設けられている。摩擦連結部22が第1及び第2部材32、33に狭持されると、入力側部材10からクラッチディスク組立体20へトルクが伝達される。入力トルクが伝達トルク制限部30の作動トルク値を超えると、摩擦連結部22と第1及び第2部材32、33との間で滑りが発生し、入力側部材10からクラッチディスク組立体20へ伝達されるトルクが作動トルク値に制限される。
(4)トルク検出機構
トルク検出機構40は、過大トルクを検出するためのもので、入力側部材10の外周側に配置されている。具体的には、トルク検出機構40は、複数の収容部42と、複数の係合部材43と、複数のコイルスプリング41(弾性部材)とから構成されている。
収容部42は、第1カバー12の外周側から半径方向外方へ突出した箱状の部分である。収容部42の内周側は、第1カバー12の内部と連通している。係合部材43は、第2カバー31の外周側に固定された半径方向外方へ延びる板状の部材である。
コイルスプリング41は、入力側部材10と伝達トルク制限部30との相対回転により円周方向に圧縮可能なよう設けられている。具体的には、コイルスプリング41は、収容部42に形成された窓孔部42aに圧縮された状態で収容されている。係合部材43は、コイルスプリング41の端部に係合している。そして、入力側部材10と伝達トルク制限部30とが相対回転すると、コイルスプリング41は窓孔部42aと係合部材43との間で圧縮される。つまり、コイルスプリング41はイニシャルトルクを発生しており、それが目標トルク値となる。コイルスプリング41の剛性や圧縮長さ等は、トルク検出機構40の目標トルク値に応じて決定される。
これらの構成により、トルク検出機構40では、入力側部材10への入力トルク値がコイルスプリング41により予め設定された目標トルク値を超えると、入力トルク値と目標トルク値とのトルク差に比例した長さだけコイルスプリング41が圧縮する。この結果、トルク差に比例した相対角度だけ入力側部材10と伝達トルク制限部30とが相対回転する。すなわち、トルク検出機構40では、入力トルク値と目標トルク値とのトルク差を入力側部材10と伝達トルク制限部30との相対角度として検出することが可能となる。
(5)作動トルク調整機構
作動トルク調整機構50は、伝達トルク制限部30での作動トルク値がトルク検出機構40での目標トルク値に近づくよう相対角度に応じて作動トルク値を調整するためのものである。図3(a)に作動トルク調整機構50周辺の断面模式図、図3(b)に図3(a)のA−A断面図をしめす。図3のR1方向は、入力側部材10の回転方向を示す。図3に示すように、作動トルク調整機構50は、複数の第1調整部材51と、第2調整部材52と、複数の転動体53a、53bと、支持部材54とから構成されている。
第1調整部材51は、第1カバー12に対して相対回転不能にかつ軸方向へ相対移動可能に設けられた部材である。具体的には、第1カバー12には、軸方向に連通する複数の開口部12aが形成されており、第1調整部材51は開口部12aに挿嵌されている。第1調整部材51の第2調整部材52側には、第1及び第2調整部材51、52の相対回転を軸方向への相対移動に変換するためにテーパ面51cが形成されている。
第2調整部材52は、伝達トルク制限部30に対して相対回転不能にかつ軸方向へ相対移動可能に設けられた環状の部材であり、第1調整部材51及びコーンスプリング35との軸方向間に配置されている。第2調整部材52と第1調整部材51との間には、1つの転動体53aが挟み込まれている。第1及び第2調整部材51、52の対向する面には、それぞれ円周方向に延びる溝部51a、52aが形成されており、転動体53aは溝部51a、52aに嵌め込まれている。また、第2調整部材52のコーンスプリング35側には、コーンスプリング35と軸方向に当接する環状の突起部55が形成されており、第2調整部材52はコーンスプリング35により第1調整部材51へ押圧されている。
支持部材54は、第1調整部材51の第2調整部材52と反対側に配置された環状の部材であり、第2カバー31に固定されている。支持部材54と第1調整部材51との間には、2つの転動体53bが挟み込まれている。支持部材54と第1調整部材51との対向する面には、それぞれ円周方向に延びる溝部54a、51bが形成されており、転動体53bは溝部54a、51bに嵌め込まれている。
これらの構成により、第2調整部材52がコーンスプリング35により押圧されて転動体53a、53bが各部材間に狭持されるとともに、溝部51a、52a、51b、54aに沿って円周方向へ移動することが可能となる。そして、作動トルク調整機構50では、テーパ面51cにより第1及び第2調整部材51、52の相対回転を第1及び第2調整部材51、52の軸方向への相対移動に変換することが可能となる。
2.トルクリミッタ装置の動作
本発明に係るトルクリミッタ装置3の動作について説明する。図4に本発明の一実施形態としてのトルクリミッタ装置のトルク変化図を示す。図4は、縦軸がトルク、横軸が時間を示している。実際のトルク変動等は短時間で発生するため、分かりやすいように横軸は短時間のものを拡大して示している。
(1)通常トルク入力時
通常トルク入力時には、図4に示すようにトルクリミッタ装置3には目標トルク値よりも低いトルクが入力される。この状態では、トルク検出機構40のコイルスプリング41の弾性力が入力トルクよりも大きいため、コイルスプリング41は圧縮されない。この結果、入力側部材10と伝達トルク制限部30とは一体回転する。また、伝達トルク制限部30での作動トルク値は目標トルク値よりも大きく設定されているため、伝達トルク制限部30とクラッチディスク組立体20とは一体回転する。これにより、通常のトルクではトルクリミッタ装置3は作動せず、エンジン1からのトルクがトランスミッション2へ伝達される。
(2)過大トルク入力時
エンジンでの燃焼変動等によりトルク変動等が生じ、トルクリミッタ装置3に目標トルク値を超える過大トルクが入力されると、トルク検出機構40が作動する。具体的には、入力トルク値とコイルスプリング41の発生するトルク値(初期状態では目標トルク値)とのトルク差によりトルク検出機構40のコイルスプリング41が圧縮される。この結果、入力側部材10と伝達トルク制限部30とが相対回転する。この場合の相対角度はトルク差に比例したものとなるため、トルク差を相対角度として検出することができる。
入力側部材10が伝達トルク制限部30に対してR1方向(図3b)へ相対回転すると、作動トルク調整機構50の第1調整部材51が第2調整部材52及び支持部材54に対してR1方向へ相対移動する。この結果、転動体53aがテーパ面51cに沿って形成された溝部51aを転がるため、第2調整部材52はコーンスプリング35に押されて軸方向第1調整部材51側へ移動する。第2調整部材52の軸方向への移動距離は、テーパ面51cにより入力側部材10と伝達トルク制限部30との相対角度、すなわち入力トルク値と目標トルク値とのトルク差に比例したものとなる。
これにより、トルク差に応じてコーンスプリング35の付勢力が減少し、伝達トルク制限部30での作動トルク値が入力トルク値に近づく。そして、作動トルク値が入力トルク値に一致し伝達トルク制限部30が作動するまで、コイルスプリング41は圧縮を続け、コーンスプリング35の付勢力は減少を続ける。入力トルク値と作動トルク値とが一致すると、伝達トルク制限部30が作動しトルク伝達が制限される。このとき、コイルスプリング41の圧縮は停止し、作動トルク調整機構50の動作も停止する。
入力トルク値が作動トルク値以下になると、コイルスプリング41が初期の圧縮状態に戻ろうとする。この結果、入力側部材10が伝達トルク制限部30に対してR2方向(図3b)へ相対回転し、第1調整部材51が第2調整部材52及び支持部材54に対してR2方向へ相対移動する。これにより、伝達トルク制限部30の作動トルクは上昇し、コイルスプリング41及びコーンスプリング35が初期状態に戻ると、伝達トルク制限部30での作動トルク値も初期の状態に戻る。
このように、伝達トルク制限部30の初期作動トルク値を目標トルク値よりも大きく設定しておけば、摩擦連結部等の摩耗や経年劣化等により作動トルク値が変化した場合であっても、トルク検出機構40及び作動トルク調整機構50により実際の作動トルク値を自動的に調整することができる。これにより、このトルクリミッタ装置3では、目標トルク値を超えた入力トルクに対して確実にトルクリミッタ装置3を作動させることができ、作動トルクの安定化を図ることができる。
3.作用効果
このトルクリミッタ装置3では、トルク検出機構40と作動トルク調整機構50とを備えているため、入力トルク値と目標トルク値とのトルク差を入力側部材10と伝達トルク制限部30との相対角度として検出することができる。この結果、相対角度に応じて、すなわちトルク差に応じて伝達トルク制限部30での作動トルク値が目標トルク値付近に自動的に調整される。これにより、このトルクリミッタ装置3では、作動トルクの安定化を図ることができる。
また、このトルクリミッタ装置3では、コイルスプリング41の圧縮状態や剛性により目標トルク値を設定することができるため、目標トルク値の設定が容易になるとともに、目標トルク値が摩擦連結部22の摩耗や経年劣化等で変化することがない。
さらに、このトルクリミッタ装置3では、トルク検出機構40が作動して入力側部材10と伝達トルク制限部30とが相対回転すると、第1及び第2調整部材51、52が相対回転する。この結果、第2調整部材52によりコーンスプリング35の付勢力を減少させることができ、伝達トルク制限部30での作動トルクを減少させることができる。
以上に述べたように、このトルクリミッタ装置3では、入力トルクを利用したフィードバック機構を簡易かつ低廉な構造で実現することができるため、作動トルクの安定化を図ることができる。
4.その他の実施形態
本発明は係る上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
本発明のその他の実施形態を以下に示す。
(1)調整部材51
前述の実施形態では、第1調整部材51は複数の部材として記載しているが、第2調整部材52が軸方向へ移動するようテーパ面を有していれば環状の部材であってもよい。
(2)転動体53a、53b
前述の実施形態では、転動体53a、53bは球状のもので記載しているが、円柱状のころ等であってもよい。
本発明の一実施形態としてのトルクリミッタ装置の断面模式図。 本発明の一実施形態としてのトルクリミッタ装置の機械回路図。 作動トルク調整機構50周辺の断面模式図。 図3(a)のA−A断面図。 本発明の一実施形態としてのトルクリミッタ装置のトルク変化図。
符号の説明
3 トルクリミッタ装置
10 入力側部材
11 入力プレート
12 第1カバー(カバー)
13 連結部材
20 クラッチディスク組立体(出力側部材)
21 スプラインハブ
22 摩擦連結部
23 ダンパー機構
30 伝達トルク制限部
31 第2カバー
32 第1部材
33 第2部材
34 突起
35 コーンスプリング(付勢部材)
40 トルク検出機構
41 コイルスプリング(弾性部材)
42 収容部
43 係合部材
50 作動トルク調整機構
51 第1調整部材
52 第2調整部材

Claims (10)

  1. エンジン側から出力軸側へ伝達されるトルクを制限するためのトルクリミッタ装置であって、
    エンジン側からトルクが入力される入力側部材と、
    前記出力軸に連結される出力側部材と、
    前記入力側部材に対して相対回転可能に配置され、前記入力側部材から前記出力側部材へ伝達されるトルクが予め設定された作動トルク値を超えると前記入力側及び出力側部材の相対回転を可能にする伝達トルク制限部と、
    前記入力側部材への入力トルク値が予め前記作動トルク値よりも小さく設定された目標トルク値を超えると、前記入力トルク値と前記目標トルク値とのトルク差に比例した相対角度だけ前記入力側部材と前記伝達トルク制限部とを相対回転させるトルク検出機構と、
    前記作動トルク値が前記目標トルク値に近づくよう前記相対角度に応じて前記作動トルク値を調整可能な作動トルク調整機構とを備えた、トルクリミッタ装置。
  2. 前記トルク検出機構は、前記入力側部材と前記伝達トルク制限部との相対回転により円周方向に圧縮可能なよう設けられた少なくとも1つの弾性部材を有し、
    前記弾性部材は、前記入力側部材から前記伝達トルク制限部へ伝達されるトルクが前記目標トルク値になるとさらに圧縮が進行するよう、予め圧縮された状態で設けられてる、
    請求項1に記載のトルクリミッタ装置。
  3. 前記伝達トルク制限部は、前記出力側部材に連結される摩擦連結部と、前記摩擦連結部に近接して配置された環状の第1部材と、前記第1部材とともに前記摩擦連結部を狭持するための環状の第2部材と、前記第2部材と前記作動トルク調整機構との間に配置され前記第2部材を前記第1部材側へ付勢するための環状の付勢部材とを有している、
    請求項1または2に記載のトルクリミッタ装置。
  4. 前記伝達トルク調整機構は、前記入力側部材に対して相対回転不能にかつ軸方向へ相対移動可能に設けられた複数の第1調整部材と、前記伝達トルク制限部に対して相対回転不能にかつ軸方向へ相対移動可能に設けられ前記第1調整部材及び付勢部材に係合する環状の第2調整部材とを有し、
    前記第2調整部材は、前記第1及び第2調整部材の相対回転により軸方向へ移動して前記付勢部材の付勢力を減少させる、
    請求項3に記載のトルクリミッタ装置。
  5. 前記第1調整部材は、前記第2調整部材との係合部分にテーパ面を有している、
    請求項4に記載のトルクリミッタ装置。
  6. 前記第1及び第2調整部材の間には、少なくとも1つの転動体が配置されている、
    請求項4または5に記載のトルクリミッタ装置。
  7. 前記付勢部材は、前記第2部材と前記第2調整部材との間に軸方向へ弾性変形可能に配置されており、
    前記付勢部材の外周部は、前記第2調整部材により軸方向に支持されており、
    前記付勢部材の内周部は、前記第2部材を軸方向に付勢している、
    請求項4から6のいずれかに記載のトルクリミッタ装置。
  8. 前記入力側部材は、前記エンジン側からトルクが入力される入力プレートと、前記入力プレートに対して相対回転不能に固定される環状のカバーとを有しており、
    前記第1調整部材は、前記カバーに対して相対回転不能にかつ軸方向へ相対移動可能に係合しており、
    前記トルク検出機構は、前記入力プレート及びカバーの少なくともいずれか一方の外周側に設けられている、
    請求項4から7のいずれかに記載のトルクリミッタ装置。
  9. 前記トルク検出機構は、前記弾性部材を圧縮状態で収容するための少なくとも1つの収容部と、前記伝達トルク制限部の外周側に固定され前記弾性部材の端部に円周方向に係合する少なくとも1つの係合部材とをさらに有している、
    請求項2から8のいずれかに記載のトルクリミッタ装置。
  10. 前記出力側部材は、前記摩擦連結部と前記出力軸とを回転方向に弾性的に連結するためのダンパー機構を有している、
    請求項1から9のいずれかに記載のトルクリミッタ装置。
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