以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明を圧縮着火式内燃機関に適用した場合を示している。なお、本発明は火花点火式内燃機関にも適用することもできる。
図1を参照すると、1は機関本体、2は各気筒の燃焼室、3は各燃焼室2内にそれぞれ燃料を噴射するための電子制御式燃料噴射弁、4は吸気マニホルド、5は排気マニホルドをそれぞれ示す。各気筒部分の#1〜#4はそれぞれ第一気筒から第四気筒を示している。
吸気マニホルド4は吸気ダクト6を介して排気ターボチャージャ7のコンプレッサ7aの出口に連結され、コンプレッサ7aの入口はエアクリーナ8に連結される。エアクリーナ8とコンプレッサ7aとの間には吸入空気量を検出するエアフローメータ43が設けられている。吸気ダクト6内にはステップモータ(図示なし)により駆動されるスロットル弁9が配置され、更に吸気ダクト6周りには吸気ダクト6内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置(インタークーラ)10が配置される。図1に示される実施形態では機関冷却水がインタークーラ10内に導かれ、機関冷却水によって吸入空気が冷却される。
一方、排気マニホルド5は排気ターボチャージャ7の排気タービン7bの入口に連結され、排気タービン7bの出口はNOx吸蔵触媒11を内蔵したケーシング12に連結される。排気マニホルド5の集合部出口には排気マニホルド5内を流れる排気ガス中に例えば炭化水素からなる還元剤を供給するための還元剤添加弁13が配置される。なお、本実施形態においては還元剤として内燃機関の燃料が用いられる。
また、ケーシング12の上流側と下流側、すなわちNOx吸蔵触媒11の上流側と下流側にはそれぞれ排気ガスの温度を検出するための排気ガス温度センサ44、45が配置される。更に、ケーシング12の下流側、すなわちNOx吸蔵触媒11の下流側には排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサ46も配置されている。なお、ここで排気ガスの空燃比とは排気ガス中に含まれる空気と燃料との比率であり、上記空燃比センサ46で検出されるのは、通常、同空燃比センサ46より上流側の排気通路と燃焼室2または吸気通路に供給された空気と燃料との比率である。
排気マニホルド5と吸気マニホルド4とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路14を介して互いに連結され、EGR通路14内には電子制御式EGR制御弁15が配置される。また、EGR通路14周りにはEGR通路14内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置(EGRクーラ)16が配置される。本実施形態では機関冷却水がEGRクーラ16内に導かれ、機関冷却水によってEGRガスが冷却される。更に本実施形態では、EGR通路14のEGRクーラ16の上流に酸化触媒20が設けられており、EGRガス中に含まれる炭化水素等をEGRクーラ16へ流入する前に一定程度処理し、EGRクーラ16の詰まりやEGR制御弁15の固着等を防止するようにされている。
一方、各燃料噴射弁3は燃料供給管17を介して燃料リザーバ、いわゆるコモンレール18に連結される。このコモンレール18内へは電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ19から燃料が供給され、コモンレール18内に供給された燃料は各燃料供給管17を介して燃料噴射弁3に供給される。
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35及び出力ポート36を具備する。上述したエアフローメータ43、排気ガス温度センサ44、45及び空燃比センサ46の出力信号は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して燃料噴射弁3、スロットル弁9駆動用ステップモータ、還元剤添加弁13、EGR制御弁15、及び燃料ポンプ19等に接続される。
図2(A)は要求トルクTQと、アクセルペダル40の踏込み量Lと、機関回転数Nとの関係を示している。なお、図2(A)において各曲線は等トルク曲線を表しており、TQ=0で示される曲線はトルクが0(ゼロ)であることを示しており、残りの曲線はTQ=a、TQ=b、TQ=c、TQ=dの順に次第に要求トルクが高くなる。図2(A)に示される要求トルクTQは図2(B)に示されるようにアクセルペダル40の踏込み量Lと機関回転数Nの関数としてマップの形で予めROM32内に記憶されている。本実施形態では図2(B)に示すマップからアクセルペダル40の踏込み量L及び機関回転数Nに応じた要求トルクTQがまず初めに算出され、この要求トルクTQに基づいて燃料噴射量(より詳細には、要求トルクを得るべく筒内で燃焼させるために筒内に噴射される燃料量であり、以下では「要求トルク対応燃料噴射量」という)等が算出される。
ECU30は、このように内燃機関の各構成要素と信号をやり取りして上記要求トルク対応燃料噴射量の制御等の機関の基本制御を行う他、後述するNOx吸蔵剤(NOx吸蔵触媒11)のNOx還元制御等、各種の制御を行う。
図1に示すNOx吸蔵触媒11はハニカム形状の担体にNOx吸蔵剤を担持したものであり、本実施形態における排気浄化手段を構成する。このNOx吸蔵剤は、例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金Ptのような貴金属とから成る。NOx吸蔵剤は流通する排気ガスの空燃比がリーンの時にはNOxを吸蔵し、流通する排気ガスの空燃比が小さくなり(もしくは酸素濃度が低くなり)、且つ還元剤が存在していれば吸蔵したNOxを離脱して還元浄化する作用(NOxの吸蔵離脱及び還元浄化作用)を有する。
なお、触媒の熱劣化(すなわち、貴金属のシンタリング)を抑制すべく担体にセリア(酸化セリウム)をコーティングする場合があるが、そのようにすると触媒により多くの酸素が保持されるようになり、後述するNOx還元制御における空燃比の制御性が悪化するので、本発明の実施形態においては、そのようなNOx吸蔵触媒を用いるのは好ましくない。
図1に示されるような圧縮着火式内燃機関では、通常運転時の排気ガス空燃比はリーンでありNOx吸蔵剤は排気ガス中のNOxの吸蔵を行う。また、還元剤の添加等により流通する排気ガスの空燃比が小さくされ且つ還元剤の存在する状態にされるとNOx吸蔵剤は吸蔵したNOxを離脱すると共に離脱したNOxを還元浄化する。
次に図3を参照して、上述したNOxの吸蔵離脱及び還元浄化作用のうちNOxの吸収放出及び還元浄化作用のメカニズムについて白金Pt及びバリウムBaを担持させた場合を例にとって簡単に説明する。すなわち、流通する排気ガスの空燃比がかなりリーンになると排気ガス中の酸素濃度が大幅に増大し、図3(A)に示されるようにこれら酸素O2がO2 -またはO2-の形で白金Ptの表面に付着する。一方、排気ガス中のNOは白金Ptの表面上でO2 -またはO2-と反応し、NO2となる。次いで生成されたNO2の一部は白金Pt上で更に酸化されつつNOx吸蔵剤内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら、図3(A)に示されるように硝酸イオンNO3 -の形でNOx吸蔵剤内に拡散する。このようにしてNOxがNOx吸蔵剤内に吸収される。
一方、排気ガス中の酸素濃度が低下してNO2の生成量が低下すると反応が逆方向(NO3 -→NO2)に進み、斯くしてNOx吸蔵剤内の硝酸イオンNO3 -がNO2の形でNOx吸蔵剤から放出される。すなわち、排気ガス中の酸素濃度が低下するとNOx吸蔵剤からNOxが放出されることになる。排気ガスのリーンの度合いが低くなれば排気ガス中の酸素濃度が低下し、したがって排気ガスのリーンの度合いを低くすればNOx吸蔵剤からNOxが放出されることになる。
また、排気ガスの空燃比を小さくすると排気ガス中の酸素濃度が極度に低下するためにNOx吸蔵剤からNO2が放出されることになるが、この場合、放出されたNO2は図3(B)に示されるように未燃HC、COと反応して還元浄化せしめられる。このようにして白金Ptの表面上にNO2が存在しなくなるとNOx吸蔵剤から次から次へとNO2が放出される。したがってNOx吸蔵剤を流通する排気ガスの空燃比を小さくし、且つ還元剤が存在する状態にすると短時間のうちにNOx吸蔵剤からNOxが放出されて還元浄化されることになる。
本実施形態においては、NOx吸蔵剤のNOxの吸蔵離脱及び還元浄化作用を利用して、排気ガスの空燃比がリーンの時に排気ガス中のNOxをNOx吸蔵剤(NOx吸蔵触媒11)に吸蔵させ、一定期間使用して吸蔵したNOxを離脱させて還元浄化すべきであると判定された時に、還元剤添加弁13から還元剤を添加してNOx吸蔵剤に吸蔵したNOxを離脱し還元浄化するNOx還元制御を実施するようにしている。
ところで、上記のようなNOx還元制御を実施する際には、供給した還元剤(燃料)を無駄なく利用して効率的にNOx還元制御を実施できるように還元剤を供給することが望まれる。すなわち、NOx吸蔵剤を流通する排気ガスの空燃比を精度良く制御すると共にNOxの還元浄化に必要な分の還元剤を提供できるように還元剤を供給することが望ましい。本実施形態では、このような点を踏まえ、以下で説明するような制御を行って上記NOx還元制御における還元剤の供給をより高精度に制御して、従来よりも効率的にNOx還元制御を実施できるようにしている。
なお、本実施形態においては上記NOx還元制御中における上記還元剤の供給が、上記還元剤添加弁13による複数回の還元剤添加、すなわち間欠的な噴射によって行われるようになっている。また、各回の還元剤添加は上記還元剤添加弁13から最も近い内燃機関の気筒、すなわち第一気筒(#1)が排気行程にある時にのみ実施されるようになっている。したがって、四気筒内燃機関に適用されている本実施形態の場合には、機関2回転に1回の割合で還元剤添加を行うことができることになる。
また、このように各回の還元剤添加が上記還元剤添加弁13から最も近い内燃機関の気筒が排気行程にある時にのみ実施されるようにすると、添加された還元剤がガスの脈動によって各気筒内へと流入したり、添加された還元剤がEGR通路14内へと流入したりすることが抑制される。これにより、上記NOx還元制御に実際に利用される還元剤の量を増加させることができると共にその量をより高精度に把握することが可能になるため、上記NOx還元制御における還元剤の供給をより一層効率的且つ高精度なものとすることができる。
そして本実施形態では、上記複数回の還元剤添加の各回の要求添加量が、還元剤添加毎に、上記NOx還元制御を行う際の上記NOx吸蔵触媒11へ流入するガスの目標空燃比に基づきつつ、上記NOx吸蔵触媒11に到達する前にガスの経路内に付着してしまう還元剤の量と、既に上記経路内に付着している還元剤のうち上記ガス中に蒸発する還元剤の量とを考慮して決定されるようになっている。
図4は、本実施形態の上記要求添加量を決定するための制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはECU30により所定時間毎もしくは所定機関回転数毎の割込みによって実施される。
この制御ルーチンがスタートすると、まずステップ101においてNOx還元制御の実施中であるか否かが判定される。この判定はより詳細には、予め定めたNOx還元制御開始条件が成立し且つ予め定めたNOx還元制御終了条件が成立していない状態にあるか否かの判定であり、更に換言すれば、NOx還元制御を実施すべき状態にあるか否かの判定である。ステップ101においてNOx還元制御の実施中ではないと判定された場合には、ステップ111に進み、後述する積算要求直達量Fs(n)の値が初期化され(通常はFs(0)=0とされ)、その後本制御ルーチンの制御は一旦終了し再度始めから繰り返される。一方、ステップ101においてNOx還元制御の実施中であると判定された場合には、ステップ103に進む。
ステップ103では瞬時要求直達量Frdが算出される。この瞬時要求直達量Frdは、所定の対象時間tb1(すなわち、通常はステップ103の制御の実行間隔(前回の実行から今回の実行までの時間)であり、NOx還元制御開始直後は、NOx還元制御開始条件成立後、初めにステップ103の制御を実行するまでの時間)について算出されるものであり、上記NOx吸蔵触媒11へ流入するガスの空燃比を目標空燃比にするために、添加される還元剤のうちガス経路に付着する等せずに上記NOx吸蔵触媒11に直接到達することが要求される還元剤の量である。
この瞬時要求直達量Frdは、上記NOx吸蔵触媒11へ流入するガスの目標空燃比をAFo、上記時間tb1の間に上記NOx吸蔵触媒11を流通するガス量をGa、上記時間tb1の間に噴射される要求トルク対応燃料噴射量をFt、上記時間tb1の間にガス経路内に付着している還元剤のうち上記ガス中に蒸発する還元剤の量をFvとすると、以下の式(1)で表すことができる。
Frd=(Ga/AFo)−Ft−Fv … (1)
なお、ここで上記蒸発量Fvは種々の方法で求めることができるが、例えば、前回の還元剤添加量と排気ガス温度センサ44、45の少なくとも一方の検出結果から推定される排気管の内壁温度とを引数として蒸発量Fvを求めるマップを予め作成しておき、そのマップに基づいて求めるようにしても良い。
ステップ103において瞬時要求直達量Frdが算出されると、ステップ105に進み、積算要求直達量Fs(n)が算出される(ここでn≧1であり、Fs(0)は予め定められる初期値)。これは、ステップ103で算出された瞬時要求直達量Frdの積算値であり、前回までの瞬時要求直達量Frdの積算値をFs(n−1)とすると、以下の式(2)で表すことができる。
Fs(n)=Fs(n−1)+Frd … (2)
ステップ105において積算要求直達量Fs(n)が算出されると、ステップ107に進み、要求添加量Fraが算出される。この要求添加量Fraは、ステップ105で算出された積算要求直達量Fs(n)を直達率Drで除算して求められる(式(3)参照)。この直達率Drは、添加される還元剤のうちガス経路に付着する等せずに上記NOx吸蔵触媒11に直接到達する還元剤の量の添加された還元剤の量に対する割合である。ここで直達率Drは、種々の方法で求めることができるが、例えば、ガス流量、排気ガス温度、、排気管の内壁温度を引数として直達率Drを求めるマップを予め作成しておき、そのマップに基づいて求めるようにしても良い。
Fra=Fs(n)/Dr … (3)
なお、積算要求直達量Fs(n)が質量(例えば、グラム)で求められている場合に、要求添加量Fraを体積(例えば、ミリリットル)で求めたい場合には、還元剤の密度ρ(グラム/ミリリットル)で式(3)の右辺を除算すれば良い。
ステップ107において要求添加量Fraが算出されると、ステップ109に進む。ステップ109においては、還元剤添加のタイミング(すなわち、第一気筒(#1)が排気行程にある時に設定されている添加タイミング)が間近であるかが判定される。より詳細には、再度ステップ101からの制御が実施された場合に次にステップ107において要求添加量Fraが算出されるまでの間に還元剤添加のタイミングが到来するか否かが判定される。
そして本実施形態においてこの判定は、次にステップ107において要求添加量Fraが算出されるまでの間に還元剤添加が実施されるか否かの判定であり、つまりは、添加量を直前のステップ107で求めた要求添加量Fraとした還元剤の添加が実施されるか否かの判定であると言える。
ステップ109において還元剤添加がまだ実施されないと判定された場合には、制御は一旦終了し再度始めから繰り返される。つまり、この場合にはステップ101に戻り、要求添加量Fraが再度計算される。一方、還元剤添加が実施されると判定された場合にはステップ111に進み、積算要求直達量Fs(n)の値が初期化され(通常はFs(0)=0とされ)、その後本制御ルーチンの制御が一旦終了して再度始めから繰り返されることになる。
以上の説明から明らかなように、本制御ルーチンは、その時点において適切な要求添加量Fraを算出するものである。そして本実施形態では、還元剤添加のタイミングが到来した時に、その時に算出されている要求添加量Fraの還元剤が添加されるようになっている。
以上、説明したように、本実施形態では、上記NOx還元制御中における複数回の還元剤添加の各回の要求添加量Fraが、ガス経路内への付着還元剤量と、ガス経路からの蒸発還元剤量とを考慮して決定されるようになっている。すなわち、本実施形態では、要求添加量Fraの算出において、上記直達率Drを用いることによって上記付着還元剤量が考慮され、上記蒸発量Fvを用いることで上記蒸発還元剤量が考慮されている。そしてこのようにすることによって、上記NOx還元制御における還元剤の供給をより高精度に制御して、従来よりも更に効率的にNOx還元制御を実施することが可能となる。
また、例えば上記要求添加量を機関運転状態(要求トルク及び機関回転数)に応じて適合した値としてマップで有している場合には、機関運転状態に応じた上記要求トルク対応燃料噴射量の適合条件が変更され、機関運転状態に応じた上記要求トルク対応燃料噴射量(すなわち、図2(b)のマップ)が変更された場合等に上記要求添加量のマップを作成し直す必要が生じる。これに対し、本実施形態のようにして要求添加量Fraを逐次算出する場合には、上記のように機関運転状態に応じた上記要求トルク対応燃料噴射量が変更された場合等にもそのまま対応可能である。
なお、本実施形態では、上記要求添加量Fraがガス経路内への上記付着還元剤量とガス経路からの上記蒸発還元剤量との両方を考慮して決定されるようになっているが、他の実施形態においては、上記付着還元剤量と上記蒸発還元剤量の何れか一方のみを考慮して決定されるようになっていても良い。
また、本発明の更に他の実施形態においては、上記複数回の還元剤添加の各回の要求添加量Fraに、上限値及び下限値が設けられていても良い。すなわち、この実施形態では、還元剤添加のタイミングが到来した時に算出されている要求添加量Fraが上記上限値よりも多い時には、添加量を上記上限値とした還元剤添加が実施され、その時に算出されていた要求添加量Fraと上記上限値との差分については次回の還元剤添加に繰り越されるようになっている。また、還元剤添加のタイミングが到来した時に算出されている要求添加量Fraが上記下限値よりも少ない時には、その回の還元剤添加が実施されず、その時に算出されていた要求添加量Fraについては次回の還元剤添加に繰り越されるようになっている。
図5は、本実施形態で実施される制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはECU30により所定機関回転数毎の割込みによって実施される。また、本制御ルーチンは、図4に示した制御ルーチンと並行して実施される。
本制御ルーチンがスタートすると、まずステップ201においてNOx還元制御の実施中であるか否かが判定される。このステップ201における制御は、図4に示した制御ルーチンのステップ101における制御とほぼ同様である。ステップ201においてNOx還元制御の実施中ではないと判定された場合には、本制御ルーチンの制御は一旦終了し再度始めから繰り返される。一方、ステップ201においてNOx還元制御の実施中であると判定された場合には、ステップ203に進む。
ステップ203では、還元剤添加のタイミング(すなわち、第一気筒(#1)が排気行程にある時に設定されている添加タイミング)が到来したか否かが判定される。ステップ203において還元剤添加のタイミングが到来していないと判定された場合には、本制御ルーチンの制御は一旦終了し再度始めから繰り返される。一方、ステップ203において還元剤添加のタイミングが到来したと判定された場合には、ステップ205に進み、その時点において算出されている要求添加量Fraが取り込まれる。この要求添加量Fraは、上述したように図4に示した制御ルーチンによって算出されている。
ステップ205で上記要求添加量Fraが取り込まれるとステップ207に進む。ステップ207においては、上記要求添加量Fraが予め定めた還元剤添加量の上限値Framax以上であるか否かが判定される。本実施形態では、上記上限値Framaxとして、還元剤の大気への放出や白煙の発生が許容範囲内となる最大の還元剤添加量を用いている。このようにすることで還元剤の添加過多による還元剤の大気への放出や白煙の発生を抑制することができる。また、このような上限値Framaxは、例えば、ガス流量、NOx吸蔵触媒11の温度、触媒の劣化度合等を引数として上記上限値Framaxを求めるマップを予め作成しておき、そのマップに基づいて求めるようにしても良い。
ここで、上記NOx吸蔵触媒11の温度は排気ガス温度センサ44、45の少なくとも一方の検出結果から推定することができる。他の実施形態ではNOx吸蔵触媒11に温度センサを設けるようにしても良い。また、触媒の劣化度合は車両走行距離や触媒劣化係数(最大酸素吸蔵能力)Cmax等から推定することができる。
なお、他の実施形態では、上記上限値Framaxを一定値としても良い。
ステップ207において、上記要求添加量Fraが上記上限値Framax以上であると判定された場合にはステップ209に進み、上記要求添加量Fraが上記上限値Framax未満であると判定された場合にはステップ213に進む。
ステップ209に進んだ場合には、そこで実行添加量Fiaが上記上限値Framaxとされ、同上限値Framaxの還元剤が添加される。そしてステップ209に続いてステップ211に進み、そこで積算要求直達量Fs(n)の初期値Fs(0)が算出される。この初期値Fs(0)の算出は以下の式(4)によって行われる。また、上述のように実行添加量Fiaが上記上限値Framaxとされた場合には、式(5)のようになる。
Fs(0)=Dr・(Fra−Fia) … (4)
=Dr・(Fra−Framax) … (5)
このステップ211で算出される初期値Fs(0)は、図4に示された制御ルーチンのステップ111において積算要求直達量Fs(n)を初期化した時の値として用いられる。そして、このようにすることによって今回添加されなかった上記要求添加量Fraと上記上限値Framaxとの差分について次回の還元剤添加に繰り越されるようになる。ステップ211で上記初期値Fs(0)が算出されると、本制御ルーチンの制御は一旦終了し再度始めから繰り返される。
一方、ステップ213に進んだ場合には、そこで上記要求添加量Fraが予め定めた還元剤添加量の下限値Framin未満であるか否かが判定される。本実施形態では、上記下限値Framinとして、上記還元剤添加弁13で還元剤添加を行う場合に添加量の精度を許容可能な精度以上に維持できる最小添加量を用いている。このようにすることで添加される還元剤の量の精度を維持することができる。
ステップ213において、上記要求添加量Fraが上記下限値Framin未満であると判定された場合にはステップ215に進む。ステップ215では実行添加量Fiaが0(ゼロ)とされる。すなわち、この場合には還元剤の添加は行われない。そして、ステップ211に進み、そこで積算要求直達量Fs(n)の初期値Fs(0)が算出される。この場合、初期値Fs(0)は直達率Drと上記要求添加量Fraとの積(Dr・Fra)とされる。そして、このようにすることによって今回添加されなかった上記要求添加量Fraについては次回の還元剤添加に繰り越されるようになる。ステップ211で上記初期値Fs(0)が算出されると、上述したように本制御ルーチンの制御は一旦終了し再度始めから繰り返される。
一方、ステップ213において、上記要求添加量Fraが上記下限値Framin以上であると判定された場合にはステップ217に進む。ステップ217では実行添加量Fiaが上記要求添加量Fraとされ、同要求添加量Fraの還元剤が添加される。その後、ステップ211に進み、そこで積算要求直達量Fs(n)の初期値Fs(0)が算出される。この場合、初期値Fs(0)は0(ゼロ)とされる。ステップ211で上記初期値Fs(0)が算出されると、上述したように本制御ルーチンの制御は一旦終了し再度始めから繰り返される。
以上、説明したように、本実施形態によれば、上記上限値Framaxを設定することにより還元剤の添加過多による還元剤の大気への放出や白煙の発生を抑制することができ、また、上記下限値Framinを設定することにより添加される還元剤の量の精度を維持することができる。
更に、次に説明する本発明の他の実施形態においては、上記NOx還元制御において各回の要求添加量Fraが上述したような制御によって決定されると共に、上記NOx還元制御を実施する間隔が、上記NOx吸蔵触媒11に到達する還元剤量に対するNOxの還元浄化に使用される還元剤量の割合に基づいて定まる還元効率が高いほど、短くなるようになっている。このようにすると、結果として上記還元効率が高い場合に上記NOx還元制御が行われることが多くなり、従来よりも更に効率的にNOx還元制御を実施することが可能となる。
ここで上記還元効率ηを式で表すと以下の式(6)のようになる。この場合、還元効率ηは、所定の対象時間tb2(例えば、単位時間)について決定されるものであり、式(6)中のFuは上記時間tb2の間にNOxの還元浄化に使用される還元剤量、Fidは上記時間tb2の間にガス経路に付着する等せずに上記NOx吸蔵触媒11に直接到達する添加還元剤の量、Fwは上記時間tb2の間にガス経路内に付着している還元剤のうち上記ガス中に蒸発する還元剤の量、Ftは上記時間tb2の間に噴射される要求トルク対応燃料噴射量、Gbは上記時間tb2の間に上記NOx吸蔵触媒11を流通するガス量、AFsは理論空燃比をそれぞれ表す。
η=Fu/(Fid+Fw+Ft−Gb/AFs) … (6)
上記還元効率ηは上記式(6)のように表せるが、本実施形態では上記還元効率ηを求めるためにNOx吸蔵触媒11の温度TcとNOx吸蔵触媒11のNOx吸蔵量Scとを引数としたマップが予め作成されており、そのマップに基づいて求めるようにしている。なお、NOx吸蔵量Scの推定方法については後述する。図6は、このような上記還元効率ηを求めるためのマップの一例である。図中の曲線C1、C2、C3は等NOx吸蔵量曲線を表しており、C1、C2、C3の順に次第にNOx吸蔵量が多くなる。
次に本実施形態において、上記NOx還元制御を実施する間隔が上記還元効率ηが高いほど短くなるようにすべく実施される具体的な制御について説明する。図7は、本実施形態において実施されているNOx還元制御を開始するか否か(すなわち、NOx吸蔵剤からNOxを離脱させて還元浄化すべきであるか否か)を判定する制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御ルーチンはECU30によりNOx還元制御の終了と同時にスタートされる。
この制御ルーチンがスタートすると、まずステップ301においてNOx吸蔵量Scが予め定めた制御開始必要基準量Scn以上であるか否かが判定される。この制御開始必要基準量Scnは、NOx吸蔵触媒11が飽和する前にNOx還元制御が開始されるようにするために設定されるもので、通常はNOx吸蔵触媒11の最大NOx吸蔵可能量Scamaxより小さい量を制御過渡期間を考慮して設定するようにする。本実施形態においては上記最大NOx吸蔵可能量Scamaxを0.8倍した値を上記制御開始必要基準量Scnとして用いている(Scn=Scamax×0.8)。
なおここで、上記最大NOx吸蔵可能量Scamaxは、例えば以下のようにして求められる。すなわち、図8に示すようなNOx吸蔵触媒11の温度Tcを引数として最大NOx吸蔵可能量Scamaxの基本値Scamaxbを求めるマップを予め作成しておき、このマップに基づいて、まず上記基本値Scamaxbを求めるようにする。そして、次にこの基本値ScamaxbをNOx吸蔵触媒11に含まれている吸蔵剤量、NOx吸蔵触媒11の熱劣化の度合及び硫黄被毒の度合等に基づいて補正して最大NOx吸蔵可能量Scamaxを求めるようにする。
一方、NOx吸蔵量Scは、以下の式(7)に基づいて求められる。
Sc(n)=Scb−Scu−Scc−Scd+Sc(n−1) … (7)
ここで、Sc(n)及びSc(n−1)はそれぞれNOx吸蔵量Scの今回値及び前回値である。Scbは内燃機関の発生するNOx量(機関発生NOx量)であり、この値は機関回転数Nと要求トルク対応燃料噴射量Ftとを引数として予め作成されたマップに基づいて求められる。
Scuは還元浄化されるNOx量(還元NOx量)であり、この値はNOxの還元浄化に使用される還元剤量Fuに基づいて算出される。つまり、上記還元剤量Fuに単位還元剤量に対する理論還元NOx量を乗算することで還元NOx量Scuを算出することができる。また、このようにして算出した還元NOx量ScuをNOx吸蔵触媒11に用いられている貴金属の量Krに基づいて補正するようにしても良い。なお、上記還元剤量Fuは、図6に示されたマップから求められた還元効率ηを上記式(6)に代入して逆算することで求めることができる。
SccはNOx吸蔵触媒11をすり抜けていくNOx量(すり抜けNOx量)であり、この値は、上記NOx吸蔵触媒11を流通するガス量Gb、NOx吸蔵量Scの前回値Sc(n−1)、機関発生NOx量Scb、貴金属量Kr等に基づいて求められるようになっている。
ScdはNOx吸蔵触媒11のNOx吸蔵剤から離脱するNOx量(離脱NOx量)であり、この値は、しみ出しNOx量Scfと、はき出しNOx量Scgとを合計して求められる(Scd=Scf+Scg)。ここで、しみ出しNOx量Scfは、NOx吸蔵触媒11を流通するガスの空燃比が小さくなること(もしくは酸素濃度が低くなること)により離脱したNOx量であり、上記ガス量Gb、還元剤添加量、貴金属量Krに基づいて求められる。一方、はき出しNOx量Scgは、例えばNOx還元制御が長く続いてNOx吸蔵触媒11の温度Tcが上昇し最大NOx吸蔵可能量Scamaxが低下すること等によって離脱せしめられるNOx量であり、NOx吸蔵量Scの前回値Sc(n−1)から現在の最大NOx吸蔵可能量Scamaxを引算して求められる。なお、この引算の結果が負の値になった場合には、はき出しNOx量Scgは0(ゼロ)とされる。
ステップ301においてNOx吸蔵量Scが上記制御開始必要基準量Scn以上であると判定された場合には、ステップ305に進んでNOx還元制御が開始され、本制御ルーチンの制御が終了する。一方、ステップ301においてNOx吸蔵量Scが予め定めた制御開始必要基準量Scn未満であると判定された場合には、ステップ303に進む。
ステップ303では、上記NOx吸蔵量Scが予め定めた制御開始基準量Scs以上であるか否かが判定される。本実施形態においてこの制御開始基準量Scsは、還元効率ηから適切な制御開始基準量Scsが求められるように予め作成されたマップに基づいて求められるようになっている。図9はこのようなマップの一例であり、図9中の曲線Scsは還元効率ηとそれに対応する適切な制御開始基準量Scsとの関係を示したものである。この図に示されているように、制御開始基準量Scsは還元効率ηが高い場合ほど少なくなるようになっている。
ステップ303において、上記NOx吸蔵量Scが上記制御開始基準量Scs未満であると判定された場合には、制御はステップ301に戻ることになる。一方、ステップ303において、上記NOx吸蔵量Scが上記制御開始基準量Scs以上であると判定された場合には、ステップ305に進んでNOx還元制御が開始され、本制御ルーチンの制御が終了する。
以上、説明したように、本実施形態では上記NOx吸蔵量Scが上記制御開始基準量Scs以上であると判定された時には上記NOx還元制御が開始されるようになっており、上記制御開始基準量Scsは、上記還元効率ηが高い場合ほど少なく設定されるようになっている。そして、このようにすると、上記還元効率ηが高い場合ほど上記NOx還元制御が開始され易くなる。この結果、上記還元効率ηが高い時に上記NOx還元制御が行われることが多くなり、従来よりも更に効率的にNOx還元制御を実施することが可能となる。
また、本実施形態では上記制御開始基準量Scsとは別に制御開始必要基準量Scnが更に設定されていて、上記NOx吸蔵量Scが上記制御開始必要基準量Scn以上であると判定された時には、上記NOx吸蔵量Scが上記制御開始基準量Scs以上であるか否かの判定は行わずに、上記NOx還元制御が開始されるようになっている。そして、本実施形態においては、上述したように、上記制御開始必要基準量Scsとして上記最大NOx吸蔵可能量Scamaxより小さい量が設定されている。このようにすると、例えば上記還元効率ηが低く、上記制御開始基準量Scsが多めに設定されている場合であっても、上記NOx吸蔵触媒11に含まれているNOx吸蔵剤が飽和する前に上記NOx還元制御を確実に実施することができる。なお、他の実施形態では、図7の制御ルーチンのステップ301が省略され、制御ルーチンがスタートするとすぐにステップ303に進むようになっていても良い。
次に本実施形態において実施されているNOx還元制御を終了するか否かを判定する制御について説明する。図10はこの制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御ルーチンはECU30によりNOx還元制御の開始と同時にスタートされる。
この制御ルーチンがスタートすると、まずステップ401において上記NOx吸蔵量Scが予め定めた制御終了基準量Sce以下であるか否かが判定される。本実施形態においてこの制御終了基準量Sceは、還元効率ηから適切な制御終了基準量Sceが求められるように予め作成されたマップに基づいて求められるようになっている。図9はこのようなマップの一例であり、図9中の曲線Sceは還元効率ηとそれに対応する適切な制御終了基準量Sceとの関係を示したものである。この図に示されているように、制御終了基準量Sceは還元効率ηが高い場合ほど少なくなるようになっている。
ステップ401において上記NOx吸蔵量Scが上記制御終了基準量Sce以下であると判定された場合には、ステップ403に進み、NOx還元制御が終了せしめられ、本制御ルーチンが終了する。一方、ステップ401において上記NOx吸蔵量Scが上記制御終了基準量Sceより多いと判定された場合には、再度始めから制御が繰り返される。すなわち、この場合には、その後上記NOx吸蔵量Scが上記制御終了基準量Sceとなったと判定された時にNOx還元制御が終了せしめられることになる。
以上、説明したように、本実施形態では上記NOx吸蔵量Scが上記制御終了基準量Sce以下であると判定された時に上記NOx還元制御が終了されるようになっており、上記制御終了基準量Sceは、上記還元効率ηが高い場合ほど少なく設定されるようになっている。そして、このようにすると、上記還元効率ηが高い場合ほど上記NOx還元制御の終了が遅延されることになる。この結果、上記還元効率ηが高い時に上記NOx還元制御が行われることが多くなり、従来よりも更に効率的にNOx還元制御を実施することが可能となる。
また、本発明の他の実施形態においては、NOx還元制御を終了するか否かを判定する際に、更にNOx還元制御の実施に伴う燃費悪化を考慮するようにしても良い。図11はこのように燃費悪化も考慮する場合の制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御ルーチンも、図10に示した制御ルーチンと同様、ECU30によりNOx還元制御の開始と同時にスタートされる。
この制御ルーチンがスタートすると、まずステップ501において、今回のNOx還元制御中に添加された還元剤量の積算値に基づいて決定される燃費悪化指数Eiが予め定めた燃費悪化基準値Eie以上であるか否かが判定される。ここで、上記燃費悪化指数Eiは、今回のNOx還元制御の開始からその時までの還元剤添加量Fiaと要求トルク対応燃料噴射量Ftとの和の積算値を今回のNOx還元制御の開始からその時までの要求トルク対応燃料噴射量Ftの積算値で除算したものである(したがって、Ei≧1)。本実施形態においてこの燃費悪化指数Eiは、NOx還元制御の開始と共に新たに算出が開始され、その回のNOx還元制御の間、継続的に算出されるようになっている。また、上記燃費悪化基準値Eieは、燃費悪化の度合を上述の燃費悪化指数Eiで表した場合における燃費悪化の許容上限値であり、予め設定される。
ステップ501において、上記燃費悪化指数Eiが上記燃費悪化基準値Eie未満であると判定された場合にはステップ503に進む。一方、ステップ501において上記燃費悪化指数Eiが上記燃費悪化基準値Eie以上であると判定された場合にはステップ505に進む。ステップ505では、上記NOx吸蔵量Scが予め定めた制御継続判定必要基準量Sck未満であるか否かが判定される。この制御継続判定必要基準量Sckは、燃費悪化の抑制よりもNOx還元制御の実施を優先すべき場合の判定基準として設定されるもので、この趣旨を考慮して予め決定される。本実施形態においては上記最大NOx吸蔵可能量Scamaxを0.8倍した値を上記制御継続判定必要基準量Sckとして用いている(Sck=Scamax×0.8)。
ステップ505において上記NOx吸蔵量Scが上記制御継続判定必要基準量Sck以上であると判定された場合には、ステップ503に進む。上述したステップ501及びこのステップ505からステップ503に進んだ場合には、先に説明した図10の制御ルーチンのステップ401と同様の制御がなされる。すなわち、上記NOx吸蔵量Scが予め定めた制御終了基準量Sce以下であるか否かが判定される。そして上記NOx吸蔵量Scが上記制御終了基準量Sce以下であると判定された場合には、NOx還元制御が終了せしめられ本制御ルーチンが終了する一方、上記NOx吸蔵量Scが上記制御終了基準量Sceより多いと判定された場合には、再度始めから制御が繰り返される。
一方、ステップ505において上記NOx吸蔵量Scが上記制御継続判定必要基準量Sck未満であると判定された場合には、ステップ507に進み、NOx還元制御が終了せしめられ、本制御ルーチンが終了する。
以上、説明したように、本実施形態ではNOx還元制御の実施に伴う燃費悪化を考慮してNOx還元制御の終了時期が設定されるようになっている。このため、NOx還元制御の実施に伴う燃費悪化を抑制する上で、より適切な時期にNOx還元制御を終了させることができる。
また、特に本実施形態では、上記燃費悪化指数Eiが上記燃費悪化基準値Eie以上であると判定され、且つ、上記NOx吸蔵量Scが上記制御継続判定必要基準量Sck未満であると判定された時に、NOx還元制御が終了されるようになっている。つまり、本実施形態では、燃費悪化が懸念される状態において、上記NOx吸蔵量Scが上記制御継続判定必要基準量Sck未満であればNOx還元制御が終了するようになっている。そしてこのことは、すなわち、燃費悪化が懸念される状態であっても、上記NOx吸蔵量Scが上記制御継続判定必要基準量Sck以上であると判定された時にはNOx還元制御が継続されるようにすることができることを意味している。
つまり、本実施形態では、上記制御継続判定必要基準量Sckを適切に設定することで、所望の場合に燃費悪化の抑制よりもNOx還元制御の実施を優先させるようにすることができ、その結果として、より適切なNOx還元制御の実施が可能になる。そして例えば、上述したように上記制御継続判定必要基準量Sckを比較的多めの量(例えば、上記最大NOx吸蔵可能量Scamaxを0.8倍した値等)に設定しておけば、NOx吸蔵量Scが比較的多い場合には燃費悪化の抑制よりもNOx還元制御の実施が優先され、NOx吸蔵剤が飽和してしまうのを防ぐことができる。
なお、他の実施形態では図11の制御ルーチンのステップ505が省略され、上記燃費悪化指数Eiが上記燃費悪化基準値Eie以上であると判定された時には常にNOx還元制御が終了されるようになっていても良い。
次に、更に他の実施形態において実施されるNOx還元制御を終了するか否かを判定するための制御について説明する。図12はこの制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御ルーチンはECU30によりNOx還元制御の開始と同時にスタートされる。
この制御ルーチンがスタートすると、まずステップ601において排出NOx割合Rhが予め定めた制御終了基準割合Rhe以上であるか否かが判定される。ここで、排出NOx割合Rhとは、今回のNOx還元制御中に上記NOx吸蔵触媒11に含まれているNOx吸蔵剤から離脱されたNOx量Scdの積算値を今回のNOx還元制御中に還元されたNOx量Scuの積算値で除算して求められる値である。本実施形態においてこの排出NOx割合Rhは、NOx還元制御の開始と共に新たに算出が開始され、その回のNOx還元制御の間、継続的に算出されるようになっている。また、上記制御終了基準割合Rheは、NOx吸蔵触媒11よりも下流に排出されてしまうNOx量について上述の排出NOx割合Rhで表した場合における許容上限値であり、予め設定される。
ステップ601において上記排出NOx割合Rhが上記制御終了基準割合Rh以上であると判定された場合には、ステップ603に進み、NOx還元制御が終了せしめられ、本制御ルーチンが終了する。一方、ステップ601において上記排出NOx割合Rhが上記制御終了基準割合Rh未満であると判定された場合には、再度始めから制御が繰り返される。すなわち、この場合にはその後上記排出NOx割合Rhが上記制御終了基準割合Rhとなったと判定された時にNOx還元制御が終了せしめられることになる。
以上、説明したように、本実施形態では上記排出NOx割合Rhが上記制御終了基準割合Rhe以上であると判定された時に上記NOx還元制御が終了されるようになっている。そして、このようにすると、還元されずに排出されてしまうNOxの割合に着目してNOx還元制御の終了時期が設定されるので、NOxの排出を抑制する上で、より適切な時期にNOx還元制御を終了させることができる。
また、他の実施形態においては、上記排出NOx割合Rhに加え、NOx還元制御の実施に伴う燃費悪化を考慮するようにしても良い。図13は、このような実施形態で実施される制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。この制御ルーチンは、これまで説明した制御ルーチン内の制御の組合せであり、これまでの説明に基づいて理解されると考えられるので詳細な説明は省略する。
すなわち、この制御ルーチンは図11に示した制御ルーチンと類似しており、ステップ701、705、707における制御は、それぞれ上述したステップ501、505、507における制御とほぼ同様である。また、ステップ703における制御は、図12に示した制御ルーチンのステップ601における制御と同様である。そしてこの制御ルーチンも、ECU30によりNOx還元制御の開始と同時にスタートされる。
そして、この実施形態によれば、図11の制御ルーチンを実施した場合と同様、NOx還元制御の実施に伴う燃費悪化を抑制する上で、より適切な時期にNOx還元制御を終了させることができる。また、制御継続判定必要基準量Sckを適切に設定することで、所望の場合に燃費悪化の抑制よりもNOx還元制御の実施を優先させるようにすることができ、その結果として、より適切なNOx還元制御の実施が可能になる。そして更に、図12の制御ルーチンを実施した場合と同様、還元されずに排出されてしまうNOxの割合に着目してNOx還元制御の終了時期が設定されるので、NOxの排出を抑制する上で、より適切な時期にNOx還元制御を終了させることができる。
なお、更に他の実施形態では図13の制御ルーチンのステップ705が省略され、燃費悪化指数Eiが燃費悪化基準値Eie以上であると判定された時には常にNOx還元制御が終了されるようになっていても良い。
次に本発明の更に他の実施形態について説明する。この実施形態では、図4に示した制御ルーチンで算出された要求添加量Fra(より詳細には、添加タイミングが到来した時に算出されている要求添加量Fra)が上記空燃比センサ46によってその都度検出される空燃比に応じて補正されるようになっている。すなわち、上記要求添加量Fraがフィードバック補正(F/B補正)されるようになっている。ただし、この実施形態では、NOx還元制御の所要時間が比較的長い場合にのみ上記フィードバック補正を実施するようになっている。
これは、NOx還元制御の所要時間が短い場合に上記要求添加量Fraを上記空燃比センサ46によってその都度検出される空燃比に応じてフィードバック補正するようにすると、上記空燃比センサ46の応答性等が原因で空燃比が安定しないうちにNOx還元制御が終了してしまい、かえって効率的なNOx還元制御が実施できなくなる場合があるためである。以下、この実施形態においてフィードバック補正を実施するか否かを判定するために実施される制御について説明する。
図14はこの制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンの制御は、例えば図7を参照して説明したようなNOx還元制御の開始条件が成立した時にスタートされ、実際にNOx還元制御が開始される前に今回のNOx還元制御においてフィードバック補正を実施するか否かを決定して終了する。
この制御ルーチンがスタートすると、まずステップ801において、NOx還元制御の所要時間Psが推定される。この所要時間Psは、その時のNOx吸蔵触媒11のNOx吸蔵量Sc及び温度Tc、ガス流量等に基づいて求められる。ステップ801で上記所要時間Psが推定されるとステップ803に進む。
ステップ803においては、上記所要時間Psが予め定めたフィードバック可能基準所要時間Psc以上であるか否かが判定される。このフィードバック可能基準所要時間Pscは、空燃比センサ46の応答性等を考慮して決定され、例えば上述したようなフィードバック補正による不都合が生じないNOx還元制御の最短時間とされる。
ステップ803において上記所要時間Psが予め定めたフィードバック可能基準所要時間Psc以上であると判定された場合には、ステップ805に進み、今回のNOx還元制御においては要求添加量Fraのフィードバック補正を実施することを決定して制御が終了する。
なお、ここでの要求添加量Fraのフィードバック補正は、図4に示した制御ルーチンで算出された要求添加量Fra(より詳細には、添加タイミングが到来した時に算出されている要求添加量Fra)を空燃比センサ46によってその都度検出される空燃比に応じて補正することで実施される。そしてこの補正は、例えば上記要求添加量Fraに、下記式(8)によって算出されるフィードバック補正添加量Fbcを加算することによって行われる。なおここで、Gcは還元剤添加間の時間tb3の間に上記NOx吸蔵触媒11を流通するガス量であり、AFgは空燃比センサ46によって検出される空燃比である。
Fcb=(Gc/AFo)−(Gc/AFg) … (8)
一方、ステップ803において上記所要時間Psが予め定めたフィードバック可能基準所要時間Psc未満であると判定された場合には、ステップ807に進み、今回のNOx還元制御においては要求添加量Fraのフィードバック補正を実施しないことを決定して制御が終了する。
以上、説明したように、本実施形態では推定されたNOx還元制御の所要時間Psが予め定めたフィードバック可能基準所要時間Psc以上である場合にのみ、そのNOx還元制御において上記要求添加量Fraが空燃比センサ46によってその都度検出される空燃比に応じてフィードバック補正されるようになっている。したがって、本実施形態によれば、上記フィードバック可能基準所要時間を適切に設定することにより、フィードバック補正を実施しても空燃比が安定しないうちにNOx還元制御が終了してしまい、かえって効率的なNOx還元制御が実施できなくなるというような不都合の発生を回避することができる。
なお、上記要求添加量Fraのフィードバック補正が、最新のフィードバック学習値に基づいて行われる第一補正と、同第一補正を補足するように上記空燃比センサ46によってその都度検出される空燃比に応じて行われる第二補正とを含んでいる場合には、上記フィードバック学習値は、上記要求添加量Fraがフィードバック補正されてNOx還元制御が実施された場合にのみ、そのNOx還元制御の実施中において上記空燃比センサ46によって検出された空燃比に基づいて、そのNOx還元制御が終了した時に算出され更新されるようになっていることが望ましい。
上記要求添加量Fraがフィードバック補正されてNOx還元制御が実施された場合は、すなわち、NOx還元制御の所要時間Psが上記フィードバック可能基準所要時間Psc以上であった場合であり、フィードバック補正を実施して最終的に空燃比を安定化できた場合である。したがって、このような場合にのみ上記フィードバック学習値の算出(及び更新)することによって、適切なフィードバック学習値を得ることができる。
次に更に他の実施形態について説明する。この実施形態においても、図4に示した制御ルーチンで算出された要求添加量Fra(より詳細には、添加タイミングが到来した時に算出されている要求添加量Fra)が上記空燃比センサ46によってその都度検出される空燃比に応じて補正されるようになっている。すなわち、上記要求添加量Fraがフィードバック補正(F/B補正)されるようになっている。ただし、この実施形態では、上記要求添加量Fraが予め定めた基準要求添加量以下であり、且つ、上記ガスの空燃比が目標空燃比よりリッチであると判定される場合には、上記フィードバック補正が禁止されるようになっている。
これは、上記要求添加量Fraがもともと少ない場合に上記ガスの空燃比が目標空燃比よりリッチであると、上記空燃比に応じた要求添加量のフィードバック補正によって還元剤添加量を0(ゼロ)以下にすべきであるとされる場合があり、このような場合には、上記フィードバック補正を行っても上記ガスの空燃比を制御することはできず、同補正の実施が無意味となってしまうことがあるからである。以下、この実施形態において実施される制御について図15を参照しつつ説明する。
図15は本実施形態において実施される制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはECU30により所定機関回転数毎の割込みによって実施される。また、本制御ルーチンは、図4に示した制御ルーチンと並行して実施される。
本制御ルーチンがスタートすると、まずステップ901においてNOx還元制御の実施中であるか否かが判定される。このステップ901における制御は、図4に示した制御ルーチンのステップ101及び図5に示した制御ルーチンのステップ201における制御とほぼ同様である。ステップ901においてNOx還元制御の実施中ではないと判定された場合には、本制御ルーチンの制御は一旦終了し再度始めから繰り返される。一方、ステップ901においてNOx還元制御の実施中であると判定された場合には、ステップ903に進む。
ステップ903では、還元剤添加のタイミング(すなわち、第一気筒(#1)が排気行程にある時に設定されている添加タイミング)が到来したか否かが判定される。このステップ903における制御は、図5に示した制御ルーチンのステップ203における制御とほぼ同様である。ステップ903において還元剤添加のタイミングが到来していないと判定された場合には、本制御ルーチンの制御は一旦終了し再度始めから繰り返される。一方、ステップ903において還元剤添加のタイミングが到来したと判定された場合には、ステップ905に進み、その時点において算出されている要求添加量Fraが取り込まれる。この要求添加量Fraは、図4に示した制御ルーチンによって算出されているものである。
ステップ905で上記要求添加量Fraが取り込まれるとステップ907に進む。ステップ907においては、上記要求添加量Fraが予め定めた基準要求添加量Fcfより多いか否かが判定される。この判定は、要求添加量Fraが少ないためにフィードバック補正をすると不都合が生じてしまう場合を避けるために実施されるものであり、上記基準要求添加量Fcfはこの趣旨に基づいて決定される。すなわち、この基準要求添加量Fcfは、例えば、フィードバック補正の実施上不都合が生じる可能性のある最大の添加量とされ、その値は好ましくはステップ907の後に続く各ステップにおいて実施される制御も考慮して決定される。
ステップ907において上記要求添加量Fraが上記基準要求添加量Fcfより多いと判定された場合にはステップ913に進む。一方、ステップ907において上記要求添加量Fraが上記基準要求添加量Fcf以下であると判定された場合にはステップ909に進む。ステップ909では、空燃比センサ46で検出された空燃比AFgが目標空燃比AFoよりも小さいか否かが判定される。この判定は、上記NOx吸蔵触媒11を流通するガスの空燃比が目標空燃比AFoよりもリッチであるか否かの判定である。
ステップ909において上記空燃比AFgが目標空燃比AFo以上であると判定された場合、すなわち上記ガスの空燃比が目標空燃比AFoよりもリッチではないと判定された場合には、ステップ913に進む。一方、ステップ909において上記空燃比AFgが目標空燃比AFo未満であると判定された場合、すなわち上記ガスの空燃比が目標空燃比AFoよりもリッチであると判定された場合には、ステップ911に進む。
ステップ911では、内燃機関の燃焼空燃比AFc(燃焼室内における空燃比であり、より詳細には筒内に充填される空気量と機関動力を得るべく筒内で燃焼させるために筒内に噴射される燃料量の比)の補正が実施される。より詳細には、スロットル弁9の開度が増大される、もしくはEGR制御弁15の開度が減少される等して燃焼空燃比AFcが増大せしめられる。つまり、上記ガスの空燃比がリーン側に制御される。こうすることによって還元剤添加による空燃比制御が可能な状態にすることができる。また、この場合、制御は次にステップ917へと進み、上記要求添加量Fraのフィードバック補正は実施されずに(すなわち禁止されて)本制御ルーチンの制御は一旦終了する。つまり、この場合にはステップ905で取り込まれた要求添加量Fraの還元剤が到来した添加タイミングにおいて添加されることになる。そして本制御ルーチンの制御は再度始めから繰り返される。
一方、ステップ907またはステップ909からステップ913に進んだ場合には、そこで空燃比センサ46で検出された空燃比AFgから目標空燃比AFoを減算した値(AFg−AFo)が予め定めた基準空燃比偏差AFp以下であるか否かが判定される。この判定は、上記NOx吸蔵触媒11を流通するガスの空燃比が目標空燃比AFoよりもかなりリーンであると判定される場合には、要求添加量Fraのフィードバック補正を実施しないようにするための判定であり、上記基準空燃比偏差AFpはこの趣旨に基づいて決定される正の値である。
上記ガスの空燃比が目標空燃比AFoよりもかなりリーンであると判定される場合に上記フィードバック補正を実施しないようにするのは、このような場合にフィードバック補正を実施すると、補正分(例えば、フィードバック補正添加量Fbc)が非常に大きくなり、制御性が悪化する恐れがあるためである。
ステップ913において上記空燃比AFgから目標空燃比AFoを減算した値が上記基準空燃比偏差AFpより大きいと判定される場合は、上記ガスの空燃比が目標空燃比AFoよりもかなりリーンであると判定される場合であり、この場合にはステップ917に進む。ステップ917に進んだ場合には上述したように上記要求添加量Fraのフィードバック補正は実施されずにステップ905で取り込まれた要求添加量Fraの還元剤が添加される。そして、その後本制御ルーチンの制御は一旦終了し、再度始めから繰り返される。
一方、ステップ913において上記空燃比AFgから目標空燃比AFoを減算した値が上記基準空燃比偏差AFp以下であると判定される場合は、上記ガスの空燃比が目標空燃比AFoよりもややリーンであるか同一、もしくはリッチであると判定される場合であり、この場合にはステップ915に進む。ステップ915に進んだ場合には上記要求添加量Fraのフィードバック補正が実施される。つまり、この場合にはフィードバック補正された要求添加量の還元剤が到来した添加タイミングにおいて添加されることになる。そして制御は一旦終了し、再度始めから繰り返される。なお、本実施形態のように、上記ガスの空燃比が目標空燃比AFoよりもリッチであると判定される場合にフィードバック補正を実施することにより、還元剤過多による白煙の発生を抑制することができる。
以上、説明したように、本実施形態では上記要求添加量Fraが予め定めた基準要求添加量Fcf以下であり、且つ、上記ガスの空燃比が目標空燃比AFoよりリッチであると判定される場合には、上記要求添加量Fraのフィードバック補正が禁止されるようになっている。このようにすることにより、本実施形態によれば上記基準要求添加量Fcfを適切に設定することによって、フィードバック補正により還元剤添加量を0(ゼロ)以下にすべきであるとされて結果的にフィードバック補正が無駄に実施されるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記要求添加量Fraのフィードバック補正が禁止される場合には、内燃機関の燃焼空燃比AFcが増大せしめられるようになっている。そしてこうすることによって、上記NOx吸蔵触媒11を流通するガスの空燃比がリーン側に制御され、還元剤添加による空燃比制御が可能な状態にすることができる。
なお、他の実施形態においては、先に説明した図14に示した制御ルーチンによる制御が実施され、その制御でステップ805に進みフィードバック補正が実施されることが決定された場合に、図15に示した制御ルーチンによる制御が実施されるようになっていても良い。すなわち、この場合には、NOx還元制御の所要時間Psが充分に長い場合であっても、上記要求添加量Fraが予め定めた基準要求添加量Fcf以下であり、且つ、上記ガスの空燃比が目標空燃比AFoよりリッチであると判定される場合には、上記要求添加量Fraのフィードバック補正が禁止されるようになり、また、このようにフィードバック補正が禁止される場合には、内燃機関の燃焼空燃比AFcが増大せしめられるようになる。
次に本発明の更に他の実施形態について説明する。上述したように空燃比センサ46によってその都度検出される空燃比に応じて上記要求添加量Fraが補正される場合、すなわち上記フィードバック補正が実施される場合には、補正の度合等の設定によっては空燃比が大きく振れてしまい、NOx還元制御が効率的に実施できない場合が起こり得る。また、その一方で上記空燃比センサ46によって検出される空燃比に応じた要求添加量Fraの補正が実施されない場合には、還元剤添加量が過多あるいは過少になる可能性が高まる。本実施形態はこのような点を考慮したものであり、上記空燃比センサ46によって検出される空燃比に基づいた段階的な添加量補正を行うことによって、上記フィーバック補正のような瞬間的な補正による制御性の悪化を回避しつつ還元剤添加量の補正を行うようにしたものである。
すなわち、本実施形態では推定されたNOx還元制御の所要時間が予め定めた学習可能基準所要時間以上である場合にのみ、そのNOx還元制御の実施中に上記空燃比センサ46によって検出された空燃比に基づいて、そのNOx還元制御が終了した時に補正学習値が算出され更新されるようになっていて、上記NOx還元制御において上記要求添加量が最新の上記補正学習値に基づいて補正されるようになっている。
図16は、本実施形態において上記補正学習値Vcを求めるために実施される制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンの制御は、例えば図7を参照して説明したようなNOx還元制御の開始条件が成立した時にスタートされる。
この制御ルーチンがスタートすると、まずステップ1001において、NOx還元制御の所要時間Psが推定される。このステップ1001における制御は図14に示した制御ルーチンのステップ801における制御と同様である。すなわち、所要時間Psはその時のNOx吸蔵触媒11のNOx吸蔵量Sc及び温度Tc、ガス流量等に基づいて求められる。ステップ1001で上記所要時間Psが推定されるとステップ1003に進む。
ステップ1003においては、上記所要時間Psが予め定めた学習可能基準所要時間Psd以上であるか否かが判定される。この学習可能基準所要時間Psdは、空燃比センサ46の応答性等を考慮して決定され、例えば空燃比センサ46の応答時定数とされる。
ステップ1003において、上記所要時間Psが上記学習可能基準所要時間Psd未満であると判定された場合にはそのまま制御が終了する。つまり、この場合には今回のNOx還元制御において上記補正学習値Vcの算出は行われない。一方、ステップ1003において上記所要時間Psが上記学習可能基準所要時間Psd以上であると判定された場合には、ステップ1005に進む。
ステップ1005においては、今回のNOx還元制御の開始からその時までに上記空燃比センサ46で検出された空燃比の平均値AFmが算出される。次にステップ1007に進み、そこでNOx還元制御が終了したか否かが判定される。そして、ステップ1007においてNOx還元制御が終了したと判定された場合にはステップ1009に進み、NOx還元制御がまだ終了していないと判定された場合にはステップ1005に戻される。つまり、ここでは今回のNOx還元制御の実施中(すなわち、開始から終了まで)に上記空燃比センサ46で検出された空燃比の平均値AFmが算出されてステップ1009に進むようになっている。
ステップ1009においては、上記補正学習値Vcが算出される。本実施形態では、この補正学習値Vcは下記式(9)に基づいて算出される。
Vc=(AFo−AFm)/AFo … (9)
そして、ここで算出された補正学習値Vcによって既存の補正学習値Vcが更新され、本制御ルーチンの制御が終了する。更新された補正学習値Vcは次に補正学習値Vcが算出されて更新されるまで最新の補正学習値Vcとして保持される。
次に、本実施形態において上記要求添加量Fraを上記補正学習値Vcに基づいて補正するために実施される制御について説明する。図17は、この制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはECU30により所定機関回転数毎の割込みによって実施される。また、本制御ルーチンは、図4に示した制御ルーチンと並行して実施される。
本制御ルーチンがスタートすると、まずステップ1101においてNOx還元制御の実施中であるか否かが判定される。このステップ1101における制御は、図4に示した制御ルーチンのステップ101等における制御とほぼ同様である。ステップ1101においてNOx還元制御の実施中ではないと判定された場合には、本制御ルーチンの制御は一旦終了し再度始めから繰り返される。一方、ステップ1101においてNOx還元制御の実施中であると判定された場合には、ステップ1103に進む。
ステップ1103では、還元剤添加のタイミング(すなわち、第一気筒(#1)が排気行程にある時に設定されている添加タイミング)が到来したか否かが判定される。このステップ1103における制御は、図5に示した制御ルーチンのステップ203等における制御とほぼ同様である。ステップ1103において還元剤添加のタイミングが到来していないと判定された場合には、本制御ルーチンの制御は一旦終了し再度始めから繰り返される。一方、ステップ1103において還元剤添加のタイミングが到来したと判定された場合には、ステップ1105に進み、その時点において算出されている要求添加量Fraが取り込まれる。この要求添加量Fraは、図4に示した制御ルーチンによって算出されているものである。
ステップ1105で上記要求添加量Fraが取り込まれるとステップ1107に進む。ステップ1107では、その時点における最新の補正学習値Vcが取り込まれる。この補正学習値Vcは、例えば前回のNOx還元制御が終了したときに算出されたものである。そしてステップ1107で補正学習値Vcが取り込まれるとステップ1109に進み、補正係数Kcが求められる。本実施形態においてこの補正係数Kcは、補正学習値Vc、ガス流量及び要求トルク対応燃料噴射量に基づいて求められるようになっている。すなわち、これらの値を引数として適切な補正係数Kcが求められるマップが予め作成されており、このマップに基づいて求めるようにしている。
ステップ1109において補正係数Kcが求められると、ステップ1111に進む。ステップ1111では、ステップ1105で取り込まれた要求添加量Fraが上記補正係数Kcで補正され、学習値補正要求添加量Frkが算出される。より具体的には、上記要求添加量Fraに上記補正係数Kcが乗算されて上記学習値補正要求添加量Frkが算出される(Frk=Fra×Kc)。
ステップ1111において上記学習値補正要求添加量Frkが算出されるとステップ1113に進み、そこで実行添加量Fiaが上記学習値補正要求添加量Frkとされ、同学習値補正要求添加量Frkの還元剤が添加される。その後、本制御ルーチンの制御は一旦終了し再度始めから繰り返される。
以上、説明したように、本実施形態では推定されたNOx還元制御の所要時間Psが上記学習可能基準所要時間Psd以上である場合にのみ、そのNOx還元制御の実施中に上記空燃比センサ46によって検出された空燃比に基づいて、そのNOx還元制御が終了した時に補正学習値Vcが算出され更新されるようになっていて、上記NOx還元制御において上記要求添加量Fraが最新の上記補正学習値Vcに基づいて補正されるようになっている。そして、このようにすることによって、上記空燃比センサ46によって検出される空燃比に基づいた段階的な添加量補正を行うことができ、上記フィーバック補正のような瞬間的な補正による制御性の悪化を回避しつつ還元剤添加量の補正を行うことができる。
なお、他の実施形態においては、図16に示した制御ルーチンによる制御と共に図14に示した制御ルーチンによる制御が実施され、図14に示した制御ルーチンによる制御でステップ807に進みフィードバック補正を実施しないことが決定された場合に、図17に示した制御ルーチンによる制御が実施されるようになっていても良い。すなわち、この場合には、NOx還元制御の所要時間Psが短く上記フィードバック可能基準所要時間Psc未満であっても、上述したような補正学習値Vcに基づく要求添加量Fraの補正が実施されることになる。このようにすることによって、上記フィードバック補正が実施されない場合に還元剤添加量が過多あるいは過少になってしまってNOx還元制御が効率的に実施できなくなるという場合を低減することができる。
なお、上述した実施形態においては、上記NOx吸蔵触媒11に流入するガスへの還元剤の供給が還元剤添加弁13によって行われていたが、他の実施形態では例えば燃料噴射弁3によるポスト噴射等、他の手段によって行われても良い。