JP2006224768A - バッテリの飽和に備えた回生制動制御を含む車輌用制動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】摩擦制動手段と回生制動手段とを組み合わせた自動車等の車輌の制動装置は、磨耗と燃費の観点から、バッテリの蓄電余力と制動性能から許される限り、回生制動手段を作動させることが有利と考えられるが、摩擦制動手段の摩擦係合面を良好な状態を維持するには、摩擦制動手段は常時適度に使用されているべきであり、そのような車輌用制動装置を提供する。
【解決手段】摩擦制動手段と回生制動手段とを備え、運転者によるブレーキペダルの踏込みに応じて車輪の回転を制動する車輌用制動装置に於いて、バッテリの蓄電余力が許す限りに於いて、摩擦制動手段による制動力が全制動力中に占める割合を制動の初期から制動の後期へ向けて低減させる。
【選択図】図3
【解決手段】摩擦制動手段と回生制動手段とを備え、運転者によるブレーキペダルの踏込みに応じて車輪の回転を制動する車輌用制動装置に於いて、バッテリの蓄電余力が許す限りに於いて、摩擦制動手段による制動力が全制動力中に占める割合を制動の初期から制動の後期へ向けて低減させる。
【選択図】図3
Description
本発明は、車輌用制動装置に係り、特に摩擦制動手段と回生制動手段とを組み合わせた車輌用制動装置に係る。
自動車等の車輌を制動する手段としては、ブレーキドラムまたはブレーキディスクにブレーキパッドを押し付ける摩擦制動手段と、車輌の走行に伴って発電機のロータを回転させ、車輌の走行慣性エネルギを電力に変換することにより車輌に制動効果を与える回生制動手段とが知られている。また、かかる摩擦制動手段と回生制動手段とを組み合わせた車輌用制動装置として、摩擦制動手段には或る制動力の範囲で「鳴き」と称される高音階の騒音が発生することに対処し、摩擦制動手段に鳴きが生ずる制動力の領域では回生制動手段の制動力を増大させ、その分摩擦制動手段の制動力を低減させるか、或は逆に回生制動手段の制動力を低減させ、その分摩擦制動手段の制動力を増大させ、鳴きの発生を回避することが下記の特許文献1に記載されている。
特開平10-329681
摩擦制動手段にはその作動時間にほぼ比例して寿命を制限する磨耗が伴うのに対し、回生制動手段にはそのような作動時間に比例する顕著な寿命制限事項はなく、また車輌の走行慣性を電力として回収するという摩擦制動手段にはない有利な機能があるので、車輌用制動装置が摩擦制動手段と回生制動手段とを組み合わせたものであるときには、制動性能上許される限り回生制動手段を作動させることが有利であるように考えられる。
しかし、摩擦制動手段の摩擦係合面は、制動作動時に研削されることにより良好な状態を維持するものであり、摩擦制動手段は、常時適度に使用されていないと、摩擦係合面に錆が生じ、また摩耗粉やダストの固着が生じ、制動性能が劣化し、また作動時に騒音や振動を発生するようになる虞れのあるものである。
上記の観点から、摩擦制動手段と回生制動手段とを備え、運転者によるブレーキペダルの踏込みに応じて車輪の回転を制動する車輌用制動装置に於いて、摩擦制動手段による制動力が全制動力中に占める割合を制動の初期から制動の後期へ向けて低減させるようにすることが考えられる。しかし、回生制動手段を所望の度合に作動させるためには、回生制動手段により発生された電力を蓄えるバッテリがそれに応じた蓄電余力を有していることが必要である。
本発明は、上記の諸事情を勘案し、更に改良された摩擦制動手段と回生制動手段とを組み合わせた車輌用制動装置を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するものとして、本発明は、摩擦制動手段と回生制動手段とを備え、運転者によるブレーキペダルの踏込みに応じて車輪の回転を制動する車輌用制動装置にして、前記回生制動手段により発生された電力を蓄えるバッテリに所定容量以上の蓄電余力があることを条件として、前記摩擦制動手段による制動力が全制動力中に占める割合を制動の初期から制動の後期へ向けて低減させるようになっていることを特徴とする車輌用制動装置を提案するものである。
上記の如き車輌用制動装置に於いて、制動中に前記バッテリの蓄電余力が前記所定容量以上でなくなったときには、前記回生制動手段による回生制動作用を前記摩擦制動手段による摩擦制動作用に置き換え、その際、摩擦制動力の増大速度は前記摩擦制動手段に異音が生ずる虞れのある値以下とされるようになっていてよい
前記摩擦制動手段による制動力が全制動力中に占める割合の低減は制動開始から所定時間が経過したときから開始されるようになっていてよく、該所定時間は、ブレーキペダルの踏込み量が大きいほど、また車速が大きいほど短くされてよい。
摩擦制動手段と回生制動手段とを備え、運転者によるブレーキペダルの踏込みに応じて車輪の回転を制動する車輌用制動装置に於いて、前記回生制動手段により発生された電力を蓄えるバッテリに所定容量以上の蓄電余力があることを条件として、前記摩擦制動手段による制動力が全制動力中に占める割合が制動の初期から制動の後期へ向けて低減させるようになっていれば、摩擦制動手段を制動の度毎に摩擦係合面の状態を良好に維持するに必要して十分な程度に作動させ、それ以外の制動は回生制動により賄い、摩擦制動手段の磨耗を抑制すると共に制動時に車輌の走行慣性より電力を回収して燃費を改善することを、回生制動手段により発生された電力がバッテリにより確実に吸収される状態を確保しつつ実行し、回生制動手段を有効に作動させ、車輌に所要の制動力を確実に作用させることができる。この場合、摩擦制動手段が主として制動の初期に作動されることにより、摩擦制動の後期に発生しやすい「鳴き」と称される高音階の騒音(異音)や振動の発生を確実に回避することができ、また前記所定容量が適当に設定されれば、制動の進行と共に回生制動作用が増大することにより回生制動手段により発生される電力が増大しても、所要の制動力を確保することができる。
また、制動中に前記バッテリの蓄電余力が前記所定容量以上でなくなったときには、回生制動手段による回生制動作用を摩擦制動手段による摩擦制動作用に置き換え、その際、摩擦制動力の増大速度は摩擦制動手段に異音が生ずる虞れのある値以下とされるようになっていれば、バッテリ蓄電余力に関する前記所定容量を適当に設定することにより、バッテリの蓄電余力の縮小を早めに察知し、バッテリの蓄電余力に余裕をもたせて摩擦制動作用の増大速度を任意の緩やかな速度に抑え、摩擦制動力の急増時に生じがちな「鳴き」と称される異音の発生を確実に回避することができる。
摩擦制動手段による制動力が全制動力中に占める割合の低減が制動開始から所定時間が経過したときから開始されるようになっていれば、該所定時間の設定により摩擦制動手段の作動時間を摩擦係合面の状態を良好に維持するために必要して十分な値に適切に制御することができる。この場合、前記所定時間がブレーキペダルの踏込み量が大きいほど短くされ、また車速が大きいほど短くされれば、ブレーキペダルの踏込み量が大きく、運転者がより迅速な車輌の制動を望んでいるほど、また車速が大きく、客観的により迅速な車輌の制動が望まれるほど、より短い時間にて制動が終了すると考えられるので、ブレーキペダルの踏込み量や車速の大小による制動時間の長さの変化に対し摩擦制動手段の作動時期を適切に合わせることができる。
図1は、自動車の運転に於いて最も一般的なブレーキ操作、即ち、ブレーキペダルを或る深さまで踏み込んで暫時そのままに保持するブレーキ操作により車輌に付与される制動力の時間的変化を、車速が小、中、大のそれぞれの場合について、ブレーキペダルの踏込み量の大小に応じて示すマップである。制動装置はブレーキペダルの踏込み量が大きいほどよく効くので、制動期間は一般にブレーキペダルの踏込み量が大きいほど短いと考えられる。また制動操作は車速が速いほど機敏に行われるので、制動期間は一般に車速が大きいほど短いと考えられる。
本発明は、上記の通り、制動装置が摩擦制動手段と回生制動手段とを備える場合に、制動時に摩擦制動手段を適度に作動させ、その摩擦係合面を適度の研削により良好な状態に維持しつつ、回生制動を最大限に作動させ、摩擦制動装置の寿命の延長と回生エネルギ回収により自動車の燃費向上を図るべく、回生制動手段により発生された電力を蓄えるバッテリに所定容量以上の蓄電余力があることを条件として、摩擦制動手段による制動力が全制動力中に占める割合を制動の初期から制動の後期へ向けて低減させるものであり、バッテリが回生制動手段により発生された電力を蓄えるに十分な蓄電余力がある場合に摩擦制動と回生制動の割合を変化させる要領の一例が、図1の中段に車速が中程度でブレーキペダルの踏込み量が中程度の場合について影線にて示されている。即ち、図1の中段の図に於いて、下側にある濃い影線の部分が摩擦制動手段による制動力の大きさを示し、上側にある薄い影線の部分が回生制動手段による制動力の大きさを示している。時間Tは制動開始からの時間であり、Ts1は摩擦制動手段による制動力が全制動力中に占める割合が低減され始める時点を、またTs2は摩擦制動手段による制動力の全制動力中に占める割合の低減が終了する時点を示している。
しかし、回生制動手段により発生された電力を蓄えるバッテリの充電状態が飽和状態に近づくと、回生制動の途中で回生制動により生じた電力がバッテリにより吸収されなくなる事態が生ずることもある。特に上記の如く、摩擦制動手段による制動力が全制動力中に占める割合が制動の初期から制動の後期へ向けて低減されるようになっている場合には、全体として一定の制動力を維持すべく、全制動力中に占める回生制動の割合は制動の初期から制動の後期へ向けて増大されるので、飽和状態近くにあるバッテリはより一層急速に飽和しやすくなる。図2の(A)は、そのようなバッテリの飽和により回生制動力が途中で低下し、途中から必要な制動力が得られなくなる場合の一例を示している。かかる制動力の低下を回避するには、図2の(B)に示す如く回生制動力が低下し始めたときには直ちにこれを補うべく摩擦制動力を増大させなければならない。しかし、バッテリの蓄電状態が図2の(A)に示す如く回生制動力の低下となって現れてからそれを補うよう摩擦制動力を増大させたのでは、摩擦制動力の急増を要し、摩擦制動手段に「鳴き」と称される異音が発生する恐れがある。
そこで、本発明は、摩擦制動手段による制動力が全制動力中に占める割合を制動の初期から制動の後期へ向けて低減させるには、回生制動手段により発生された電力を蓄えるバッテリに所定容量以上の蓄電余力があることを条件とし、従ってバッテリに所定容量以上の蓄電余力が残されていないときには、図1の中段に例示する如く摩擦制動手段による制動力が全制動力中に占める割合を制動の初期(時点Ts1)から制動の後期へ向けて低減させる摩擦制動と回生制動の振り分けは行わないものとする。
その場合、バッテリの蓄電余力に関する上記所定容量が或る十分大きな値に設定されれば、バッテリの蓄電余力がそのような所定容量以下である時には、制動に当って、初めから全制動力中に占める摩擦制動の割合を減じて回生制動の割合を増大させる制御には入らないようにすることができるが、摩擦制動手段の作動は摩擦係合面を良好な研削状態に維持するに必要な最小限度とし、それを満たす範囲で回生制動を最大限に使用するためには、前記所定量はあまり大きくされない方がよく、制動に当って一旦は摩擦制動の割合を減じて回生制動の割合を増大させる制御が開始されても、その途中で充電余裕が所定容量以下になったときには、摩擦制動の割合を減じて回生制動の割合を増大させる制御を中止し、摩擦制動手段に「鳴き」が生じないような緩やかな速度による摩擦制動力の増大によって回生制動を摩擦制動により置き換えることができるような所定容量を選択することがより好ましいと考えられる。
図3の(A)および(B)は、そのように一旦は摩擦制動の割合を減じて回生制動の割合を増大させる制御を開始しても、その途中で充電状態が所定容量以下になったときには、緩やかな速度による摩擦制動力の増大によって回生制動を摩擦制動により置き換える要領を示す同様のマップである。図3の(A)は摩擦制動の割合を減じ回生制動の割合を増大する制御が終わる時点Ts2に達する前に充電余裕が所定容量以下になる場合の例であり、図3の(B)は摩擦制動の割合を減じ回生制動の割合を増大する制御が終わる時点Ts2以後に充電余裕が所定容量以下になる場合の例である。いずれの場合にも、摩擦制動力の増大は摩擦制動手段に「鳴き」が生じないような緩やかな速度にて行われる。
図4は、本発明による車輌用制動装置を4輪自動車に組み込まれた状態にて示す概略図である。図に於いて、10FL、10FR,10RL,10RRはそれぞれ自動車の左前輪、右前輪、左後輪、右後輪であり、図には示されていない車体に図には示されていない車輪懸架装置により懸架されている。これら各輪は、それぞれディスクブレーキユニット12FL,12FR,12RL,12RR、ブレーキペダル14、マスターシリンダ16、油圧管路18F,18FL,18FR,18R,18RL,18RRにより構成された摩擦制動手段により運転者によるブレーキペダル14の踏込みに応じて制動されると共に、電動発電機20FL、20FR,20RL,20RR、バッテリ22、インバータ24により構成された回生制動手段によりマイクロコンピュータを備えた車輌の電子式制御装置26による制御の下に制動されるようになっている。電子式制御装置26には、ブレーキペダル踏込み量センサ28よりブレーキペダル踏込み量Dpを示す信号およびマスターシリンダ油圧センサ30よりマスターシリンダ油圧Pmを示す信号が供給される他、図には示されていない車速センサより車速Vを示す信号が供給される。ブレーキペダルの踏込み量はブレーキペダルの踏込みに対する反力の強さとして検出されてもよい。32はマスターシリンダ油圧を低減調整する油圧調整手段であり、その作動は電子式制御装置26により制御されるようになっている。
図5は、図4に示した如き車輌用制動装置により、図1および図3(A)または(B)に示した如きマップを用いて、車輌の制動制御を行う要領を、一例について示すフローチャートである。かかるフローチャートによる制御は、自動車の運転開始と同時に開始され、自動車の運転中、数ミリセカンド〜数100ミリセカンドの周期にて繰り返される。
制御が開始されると、ステップ10に於いて、フラグF1が0であるか否かが判断される。この種のフラグは制御の開始時に0にリセットされるものであり、制御が後述のステップ60に至ったとき1にセットされるので、差し当たり、答はイエス(Y)であり、その間制御はステップ20へ進む。
ステップ20に於いては、ブレーキペダル踏込み量Dpが所定のしきい値D1以上であるか否かが判断される。このしきい値D1は、ブレーキペダルが実質的に踏み込まれことを示すブレーキペダル踏込み量Dpの最低値である。ブレーキペダルが実質的に踏み込まれておらず、答がノー(N)である間、制御はステップ30へ進み、ブレーキペダル踏込み量Dpが0であるか否かが判断される。Dpが0であれば、制御はステップ40へ進み、後述のタイマーがリセットされ、ステップ50にてフラグF1が0にリセットされる。Dpが0でなければ、ステップ40および50はバイパスされる。ステップ20の答がまだ一度もイエスになっていない状態では、Dpが0でなくてもタイマーは制御開始時にリセットされており、フラグF1も0にリセットされているので、ステップ40および50はバイパスされても、タイマーはリセットされたままである。ステップ20の答が一度イエスとなり、タイマーがセットされた後は、途中のどのような状態からでも、制御がステップ30へ進むこととなったときには、Dpが0となった時点でタイマーがリセットされ、フラグF1が0にリセットされ、制御は開始前の状態に戻る。
ブレーキペダルが実質的に踏み込まれ、ステップ20の答がイエスになると、制御はステップ60へ進み、フラグF1を1にセットした後、ステップ70に於いて上記のタイマーがセットされる。タイマーのセットにより、これより経過時間の計測がなされる。またフラグF1が1にセットされることにより、これ以後制御はステップ10よりステップ80へ進むようになる。
ステップ80に於いては、タイマーにより計測された時間Tに対応して各時点に於けるブレーキペダル踏込み量Dp(T)の追跡記録(プロット)が行われる。ステップ90に於いては、フラグF2が0であるか否かが判断される。フラグF2もまた制御の開始時に0にリセットされており、後述のステップ140にて1にセットされるので、それまでステップ90の答はイエスであり、制御はステップ100へ進む。ステップ100に於いては、図1の中段に影線にて例示した如きマップを参照して、ブレーキペダル踏込み量Dpの値に応じて摩擦制動手段により発生すべき制動力PmがDpの関数Pm(Dp)として算出され、更にステップ110に於いて、図1の中段に影線にて例示した如きマップを参照して、ブレーキペダル踏込み量Dpの値に応じて回生制動手段により発生すべき制動力PgがDpの関数Pg(Dp)として算出される。図示の例では制動の開始時より摩擦制動手段と回生制動手段の両方が作動されるようになっているが、回生制動手段は摩擦制動力の低減が開始される時点Ts1より作動されるようになっていてもよい。
次いで制御はステップ120へ進み、ブレーキペダル踏込み量Dpの時間的変化率dDp/dTが所定の正のしきい値δ1以下であるか否かが判断される。このステップは、ブレーキペダル踏込み量Dpの上昇が一定値に達した時点、即ち、図1に示す如きブレーキペダル踏込み量に対応した制動力の上昇の曲線が水平となる時点を検出するためのものであり、しきい値δ1はそのことを判断するための0に近い或る小さな正の値である。当初は答はノーであり、その間制御はこれよりステップ30へ進み、ステップ40および50をバイパスしてリターンし、時間の経過を待つ。やがてブレーキペダル踏込み量Dpが一定値に近づき、ステップ120の答がノーからイエスに転ずると、制御はステップ130へ進み、ここでその時のブレーキペダル踏込み量Dpの値とそのときの車速Vとに基づき、図6に示す如き3次元マップを参照して、上述の摩擦制動力低減開始時期Ts1と摩擦制動力低減終了時期Ts2がDpとVの関数Ts1(Dp,V)およびTs2(Dp,V)として求められる。次いで制御はステップ140へ進み、フラグF2が1にセットされ、これ以後制御はステップ90よりステップ150へ進むようになる。
ステップ150に於いては、ブレーキペダル踏込み量Dpの時間的変化率dDp/dTが或る負の所定値−δ2と或る正の所定値δ3の間にあるか否かが判断される。これは、制動が開始されてからの経過時間がTs1に達する前にブレーキペダル踏込み量Dpが急速に低下し始めたか、或は急速に上昇し始めたときそれを検出し、そのときには制御をステップ30へ逸らせるものである。答がイエスのとき、制御はステップ160へ進む。
ステップ160に於いては、バッテリの蓄電余裕Rchが或る所定の限界値Rcho以上であるか否かが判断される。この限界値Rchoは、バッテリの蓄電余裕がここまで低下するまでは摩擦制動の割合を減じて回生制動の割合を増大させる制御を開始させるが、しかし該制御が一旦開始されたときでも、途中でバッテリの蓄電余裕がここまで低下したときには、摩擦制動の割合を減じて回生制動の割合を増大させる制御を中止し、緩やかな速度による摩擦制動力の増大によって回生制動を摩擦制動により置き換える制御に切り換える限界となるバッテリ蓄電余裕の値である。答がイエスであるときには、制御はステップ170へ進む。
ステップ170に於いては、ステップ70にてセットされたタイマーによる計測時間Tがステップ130に於いて求められた摩擦制動力低減開始時点Ts1を越えたか否かが判断される。答がノーである間、制御はこれよりリターンして時間の経過を待つが、答がイエスに転ずると、制御はステップ180へ進み、ブレーキペダル踏込み量Dpの時間的変化率dDp/dTが所定の負のしきい値−δ4より小さいか否かが判断される。これは、ブレーキペダルの踏込み量Dpが急減し始める点、即ち、制動が終了し、運転者がブレーキペダルの踏込みを解除し始めたことを検出するためのものである。答がノーである間、即ち、実質的な制動開始から計測した時間Tが摩擦制動力低減開始時期Ts1過ぎた時点以降で運転者がブレーキペダルの踏込みを続けている間、制御はステップ190へ進み、フラグF3が1であるか否かが判断される。フラグF3は後述のステップ310にて1にセットされ、それまでは0にリセットされているので、その間制御はステップ200へ進む。
ステップ200に於いては、ステップ70にてセットされてタイマーによる計測時間Tがステップ130に於いて求められた摩擦制動力低減終了時点Ts2を越えたか否かが判断される。答がノーである間、制御はステップ210へ進み、ブレーキペダルの踏込み量が一定に保持されていても、各時点に於いてブレーキペダル踏込み量Dpと車速Vと制動開始後の経過時間Tとに基づいて、図1の中段に影線にて例示した如きマップに従って摩擦制動力を漸減すべく、油圧調整手段32により、マスターシリンダ油圧Pmが、ブレーキペダル踏込み量Dpと車速Vと経過時間Tの関数Pm(Dp,V,T)として漸減され、次いでステップ220にて摩擦制動力の漸減を補償すべく、回生制動による制動力がDp,V,Tの関数Pg(Dp,V,T)として漸増するよう求められ、またこれに基づいて回生制動手段が作動される。
運転者がブレーキペダルの踏込みを解除し始め、そのことを示すようにdDp/dTが或る負の所定値−δ4より小さくなると、制御はステップ230へ進み、マスターシリンダ油圧Pmを或る偏差ΔPmeずつ低減することが行われる。次いで、ステップ240にてPmの値が正であるか否かが判断される。答がイエスである間、制御はステップ250へ進み、この例では、現在の回生制動による制動力Pgより現在のマスターシリンダ油圧Pmに或る適当な比例定数kを乗じた値を差し引いた値Xが求められる。これは、運転者がブレーキペダルの踏込みを解除し始めたときには、それ迄実行していた回生制動力を各時点に於けるマスターシリンダ油圧Pmの大きさに比例して低減するものである。次いで、ステップ260に於いて、Xが正であるか否かが判断され、Xが正であればステップ270へ進んでXの値をそのまま回生制動力Pgとして回生制動が実行され、Xが負であればステップ280へ進んで回生制動力Pgは0、即ち、回生制動は終了とされる。
一方、制御開始からの時間の経過の如何に拘わらず、各回の制御がステップ160に至った時点に於いてステップ160の答がノーになれば、制御はこれよりステップ290へ逸れる。ステップ290に於いては、回生制動力Pgが正であるか否かが判断される。答がイエスである間、制御はステップ300へ進み、回生制動力Pgをその都度或る所定の偏差ΔPgaずつ低減し、摩擦制動力(マスターシリンダー油圧)Pmを或る所定の偏差ΔPmaずつ増大させる制御が行われる。回生制動力低減の偏差ΔPgaおよび摩擦制動力増大の偏差ΔPmaの大きさは、蓄電余裕値Rchoと関係に於いて許容される回生制動力低減速度の下限値と、好ましいとされる摩擦制動力増大速度とに基づいて、全制動力を一定に保つように適当に設定され、こうして回生制動を摩擦制動に置き換えることが行われる。その態様は図3の(A)および(B)に例示した通りである。
制御がステップ290よりステップ300へ進んだときには、ステップ310にてフラグF3が1にセットされ、これより制御はステップ180へ進む。尚、ステップ290の答がノーとなったときには、制御はそのままステップ180へ進む。このときにも、ブレーキペダルの踏込みが解除される迄は、ステップ180の答はノーであり、制御はステップ180よりステップ190へ向かうが、このときフラグF3は1にセットされているので、制御はステップ200〜220をバイパスして繰り返される。この場合にも、ブレーキ操作が終了し、ブレーキペダルの踏込みが解除されることによりステップ180の答がイエスとなったときの制御は、ステップ230〜280により行われる。
以上に説明した通り、本発明は、摩擦制動手段と回生制動手段とを備えた車輌用制動装置に於いて、摩擦制動手段を制動の度毎に主として制動の初期に於いて作動させ、摩擦係合面の状態を良好に維持しつつ、制動をできるだけ回生制動により行って摩擦制動手段の磨耗を抑制すると共に制動時に車輌の走行慣性より電力を回収し、燃費を改善せんとするものであるが、それを行うのは回生制動手段により発生された電力を蓄えるバッテリに所定容量以上の蓄電余力があるときに限定される。この場合、図5に示した実施の形態に於いては、そのような制動が一旦開始された後、その途中でバッテリの蓄電余力が所定容量以上でなくなったときには、摩擦制動手段に異音を生ずる虞れのある値以下の摩擦制動力増大速度にて、回生制動手段による回生制動作用を摩擦制動手段による摩擦制動作用に置き換えることが行われる。尚、ブレーキペダルが一度踏み込まれ、それが一定値に達し、ステップ120の答が一度イエスとなり、ステップ130にてTs1およびTs2が算出されても、ステップ170にてT>Ts1と判断される前にブレーキペダルの踏込みが解除されたり、或は逆にブレーキペダルが更に踏み込まれたときには、−δ2<dDp/dT<δ3の答はノーとなるので、制御はステップ150よりノーの側へ逸れ、ステップ160以降の制御は行われない。このときには、いずれブレーキペダルの踏込みが解除され、Dpが0に戻るので、そのときステップ30,40,50が実行され、制動装置は作動前の状態に戻される。
以上に於いては本発明を一つの実施の形態について詳細に説明したが、かかる実施の形態について本発明の範囲内にて種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
10FL、10FR,10RL,10RR…車輪、12FL,12FR,12RL,12RR…ディスクブレーキユニット、14…ブレーキペダル、16…マスターシリンダ、18F,18FL,18FR,18R,18RL,18RR…油圧管路、20FL、20FR,20RL,20RR…電動発電機、22…バッテリ、24…インバータ、26…電子式制御装置、28…ブレーキペダル踏込み量センサ、30…マスターシリンダ油圧センサ、32…油圧調整手段
Claims (5)
- 摩擦制動手段と回生制動手段とを備え、運転者によるブレーキペダルの踏込みに応じて車輪の回転を制動する車輌用制動装置にして、前記回生制動手段により発生された電力を蓄えるバッテリに所定容量以上の蓄電余力があることを条件として、前記摩擦制動手段による制動力が全制動力中に占める割合を制動の初期から制動の後期へ向けて低減させるようになっていることを特徴とする車輌用制動装置。
- 制動中に前記バッテリの蓄電余力が前記所定容量以上でなくなったときには、前記回生制動手段による回生制動作用を前記摩擦制動手段による摩擦制動作用に置き換え、その際、摩擦制動力の増大速度は前記摩擦制動手段に異音が生ずる虞れのある値以下とされるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の車輌用制動装置。
- 前記摩擦制動手段による制動力が全制動力中に占める割合の低減は制動開始から所定時間が経過したときから開始されるようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の車輌用制動装置。
- 前記所定時間はブレーキペダルの踏込み量が大きいほど短くされることを特徴とする請求項3に記載の車輌用制動装置。
- 前記所定時間は車速が大きいほど短くされることを特徴とする請求項3または4に記載の車輌用制動装置。
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