JP2006224386A - 液体噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エアロゾルを安定して収集できる液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】 液体噴射装置であって、導電性のノズルプレート260を有する記録ヘッド210と、ノズルプレート260に対向して配され、液体が通過する通過領域435を有する中間電極434と、ノズルプレート260と中間電極434との間に電位差を発生させる中間電位差発生手段700と、液体が吐出される方向について中間電極434よりもノズルプレート260から遠くに配された終端電極430と、ノズルプレート260に対する中間電極434と同方向の電位差を中間電極434に対して終端電極430に発生させて、中間電極434の通過領域435を通過した液体を電気的に終端電極430に引き付ける終端電位差発生手段600と、終端電極430に隣接して配され、終端電極430へ引き付けられた液体を吸収して保持する廃液吸収材420とを備える。
【選択図】図4

Description

本発明は液体噴射装置に関する。より詳細には、液体噴射ヘッドに装着されたノズルプレートの開口から吐出させた液体を被記録物に付着させる液体噴射装置に関する。
液体噴射装置では、被記録物の周縁部に余白を残すことなく液体を付着させる場合に、被記録物および液体噴射ヘッドの不可避な位置ずれを見込んで、被記録物の寸法よりもやや広い領域に対して液体が噴射される。このため、被記録物の両側縁部および前後端部の近傍では、被記録物の存在しない領域に対しても液体が吐出されることになる。このとき、被記録物に付着し得ない余剰な液体を飛散させないように、液体噴射ヘッドに対して液体が吐出される方向について対向する位置に吸収部材が配置され、余剰の液体はこの吸収部材に吸収される。
なお、液体の付着した被記録物は伸びて皺を生じる場合がある。伸びた被記録物が、その皺による撓みで上記の吸収部材に接触すると、すでに吸収部材に吸収されていた液体が被記録物に付着して汚染される。そこで、液体噴射装置では、被記録物の伸びも見込んで、被記録物と吸収部材との間に2〜4mm程度の間隙が設けられている。なお、液体噴射ヘッドと被記録物との間にも1mm程度のギャップが設けられている。
一方、昨今の液体噴射装置では、記録画像の解像度向上への要求により、ノズルプレートの開口から吐出される液滴が数pl程度にまで微細化されている。このような微細な液滴は、自身の質量が非常に小さいので、いったん吐出されると雰囲気の粘性抵抗等により運動エネルギーを急速に失う。具体的には、例えば8pl未満の液滴は3mm程度の行程を飛翔すると速度がゼロになる。運動エネルギーを失った微細な液滴は、重力加速度による落下運動と雰囲気の粘性抵抗力とが殆どつり合い、落下し切るまでに長い時間を要する。
なお、例えば、上記被記録物と吸収部材との間隔に、ノズルプレートと被記録物とのギャップを加えた3〜5mm程度の距離について、ノズルプレートから吸収部材表面まで液滴を届かせることを意図して3pl程度の液滴に対する液体噴射装置の吐出速度を高くしても、液滴に作用する雰囲気の粘性抵抗がさらに上昇して到達距離はかえって短くなる。更に、液滴がノズルプレートから離脱するときに、サテライト・インクと呼ばれる更に微細な液滴を生じるようになる。
また、液体噴射装置では、フラッシングと呼ばれる動作が周期的に実行される。フラッシングは、被記録物の存在しない状態で液体噴射ヘッドに駆動信号を送り、液体をいわば空撃ちする動作である。このような動作により、吐出量の少ないノズルにおいて増粘した液体が除去される。ただし、このフラッシングに際して吐出される液体はフラッシングのためだけに消費されるので、液体の消費を節約すべく小さな液滴が吐出される。また、フラッシングに要する時間は本来の記録動作のスループットを低下させることになるので、フラッシングでは短時間の内にすべてのノズルから液体を吐出させる。このようなフラッシング動作においても、大量のサテライト・インクが生じる。
上記のようなさまざまな現象の結果として生じたサテライト・インクは、液体噴射ヘッドの周囲に浮遊するエアロゾルとなる。エアロゾルは、一部は液体噴射装置の外部にまで浮遊して液体噴射装置の周囲に付着する。また、エアロゾルの多くは、やがて液体噴射装置内の各部に付着する。エアロゾルがプラテン等の被記録物の搬送経路に付着した場合は、次に搬送される被記録物が汚染される。エアロゾルが液体噴射装置の電気・電子回路、リニアスケールあるいは各種光学センサ等に付着した場合は、装置自体の誤動作を招くこともある。更に、エアロゾルの付着した部材にユーザが触れると、ユーザの手が汚される場合もある。
下記特許文献には、上記エアロゾルを積極的に収集する機能を備えた液体噴射装置が開示されている。
特開2004−202867号公報
この文献に開示された液体噴射装置は、被記録物に付着しなかった余剰な液体を吸収する目的で、ノズルプレートに対向する位置に配置された吸収部材を備えている。更に、一方の電極となる金属部材が上記吸収部材の表面上に配置され、液体を吐出する開口を含むノズルプレートが他方の電極とされる。これら電極およびノズルプレートに互いに異なる電圧が印加され、両者の間に電界が形成される。また、このような液体噴射装置では、ノズルプレートから吐出される液滴は、ノズルプレートから吐出される瞬間にノズルプレートと同極に帯電する。エアロゾルとして浮遊する液滴も帯電しているので、自身と電界との間に作用するクーロン力により電極に向かって加速され、最終的に自身と逆極性の電位にある電極に吸着される。
なお、上記のような液体噴射装置において用いられる吸収部材については、到来した液滴の撥ね等を防止する目的で、吸収速度が高い材料、換言すれば空隙率の高い材料が選択される。しかしながら、空隙率の高い材料は液体を保持する力が小さい材料でもある。よって、吸収部材が限界まで液体を吸収してしまうと、吸収部材の表面に液面が形成され、その液面に液滴が衝突したときにミルククラウンによるエアロゾルが発生する。
そこで、上記吸収部材とは別に、吸収容量の大きな廃液吸収材を実装することが提案されている。即ち、吸収部材よりも吸収容量が大きく、且つ、毛細管現象による液体の吸収力が吸収部材よりも大きな材料で形成された廃液吸収材を、吸収部材に接触させた状態で装備することにより、吸収部材が吸収した液体を更に廃液吸収材に誘導し、もって吸収部材の液体による飽和を防止できる。
上記のような装置では、電界を利用して収集したエアロゾルの多くが電極自体に付着する。しかしながら、前述の通り、付着した液体は電極と逆極性で帯電している。このため、電極に多量の液体が付着すると、液体の電荷が電極の発生する電場を打ち消して有効な電界を弱めてしまう。こうして、エアロゾル除去効果は、液体噴射装置の稼働時間の蓄積と共に低下してしまうという問題があった。
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態においては、導電性のノズルプレートを有し、ノズルプレートの開口から被記録物へ液体を吐出する液体噴射ヘッドと、液体が吐出される方向についてノズルプレートに対向して配され、液体が通過する通過領域を有する中間電極と、ノズルプレートと電極との間に電位差を発生させて液体を電気的に中間電極側へ引き付ける中間電位差発生手段と、液体噴射装置における液体が吐出される方向について中間電極よりもノズルプレートから遠くに配された終端電極と、ノズルプレートに対する中間電極の電位差と同方向の電位差を、中間電極に対して終端電極に発生させて、中間電極の通過領域を通過した液体を電気的に終端電極に引き付ける終端電位差発生手段と、終端電極に隣接して配され、終端電極へ引き付けられた液体を吸収して保持する廃液吸収材とを備える。これにより、中間電極付近に吸収部材を設けることなく、中間電極よりも遠くに配された終端電極近傍の廃液吸収部に液体を引き付けることができる。
上記液体噴射装置は、ノズルプレート、中間電位差発生手段および終端電位差発生手段が短絡した場合に抵抗負荷となる短絡保護抵抗を更に備えてもよい。これにより、紙詰まりなどにより、ノズルプレート、中間電極または終端電極のいずれか2つの間が短絡した場合に、過電流が流れることを防ぐことができる。
上記液体噴射装置は、被記録物を支持し、電気的な絶縁性を有するプラテンを更に備え、プラテンは、中間電極、終端電極および廃液吸収材を収容してもよい。これにより、中間電極、終端電極および廃液吸収材が周囲の部材に接触して電気的に短絡することを防ぐことができる。
上記液体噴射装置において、終端電位差発生手段が中間電極に対して終端電極に発生する電位差は、中間電位差発生手段がノズルプレートに対して中間電極に発生する電位差よりも小さくてもよい。これにより、終端電位差発生手段および中間電位差発生手段を併せて駆動するための電力を節約できる。
本発明の第2の形態においては、プラテンユニットであって、液体噴射装置における、液体が吐出される方向についてノズルプレートに対向して配され、液体が通過する通過領域を有する中間電極と、液体噴射装置における液体が吐出される方向について中間電極よりもノズルプレートから遠くに配された終端電極と、終端電極に隣接して配され、終端電極へ電気的に引き付けられた液体を吸収して保持する廃液吸収材と、被記録物を支持し、中間電極、終端電極および廃液吸収材を収容するプラテンとを備えた。これにより、第1の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本発明の実施形態となり得る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置11を概観する斜視図であり、カバーとしての上ケース22を開いた状態で描かれている。同図に示すように、このインクジェット式記録装置11は、装置の基部となる下ケース20と、下ケース20と共に筐体を形成する上ケース22と、下ケース20の後部に装着されたホッパー10と、下ケース20の前面に形成された排出トレー30とを備えている。また、このインクジェット式記録装置11は、下ケース20内に水平に配置されたプラテン400と、プラテン400の上方に配置されたキャリッジ200とを筐体の内側に備えている。
上記のようなインクジェット式記録装置11では、ホッパー10に収容された被記録物300が、図示されていない搬送部により1枚ずつプラテン400上に送り出され、更に、図示されていない排出部により排出トレー30に送り出される。また、このインクジェット式記録装置11では、プラテン400の上方で、キャリッジ200が被記録物300の搬送方向と直交する方向に往復移動する。従って、被記録物300の搬送とキャリッジ200の往復移動を交互に行うことにより、被記録物300の上面全体をキャリッジ200で走査でき、被記録物300上の任意の場所で記録動作ができる。
図2は、図1に示したインクジェット式記録装置11の内部機構12を、フレーム100および側面部110、111ごと抜き出して示す斜視図である。同図に示すように、この内部機構12は、後方に略鉛直に配置されたフレーム100と、フレーム100の両側端部から互いに平行に前方に向かって延在する1対の側面部110、111とによって画成される領域の内側に形成されている。
図2に示す通り、この内部機構12において、キャリッジ200は、自身を貫通するガイド軸220に支持されている。ガイド軸220は、その端部を側面部110と側面部111とに支持され、フレーム100に平行に配置されている。従って、キャリッジ200はガイド軸220に沿って水平に移動できる。
キャリッジ200の後方では、1対のプーリ242、244と、プーリ242、244に掛けわたされたタイミングベルト230がフレーム100の前面に配置されている。一方のプーリ244はキャリッジモータ246により回転駆動される。また、タイミングベルト230はキャリッジ200の後部に結合されている。従って、キャリッジモータ246の動作に応じてキャリッジ200を往復移動させることができる。
また、キャリッジ200は、インクカートリッジ250を装荷されると共に、その下面に記録ヘッド210を備えている。記録ヘッド210は、インクを吐出するための開口を含む金属製のノズルプレート260を備えている。従って、インクは、キャリッジ200から下方に向かって吐出される。
更に、キャリッジ200は、テープ状の多芯ケーブル270を介して、フレーム100後方の電子回路120に結合されている。多芯ケーブル270は、キャリッジ200の移動に従って柔軟に撓むので、キャリッジ200の往復移動を妨げることはない。
キャリッジ200が通過する領域の下方には、プラテン400が配置されている。プラテン400は、キャリッジ200の下を通過する被記録物300を下方から支持して、ノズルプレート260と被記録物300との間隔を一定に維持する。また、プラテン400の上面には陥没部410が形成されており、この陥没部410には後述する中間電極及び終端電極と廃液吸収材420とが収容されている。
プラテン400の後方には搬送ローラ310が配置されている。搬送ローラ310は、フレーム100の後方に配置された搬送モータ320により駆動され、図示されていない従動ローラと共働して被記録物300をプラテン400上に送り出す。前述の通り、キャリッジ200は被記録物300の搬送方向と直交する方向に往復移動できる。従って、被記録物300の搬送とキャリッジ200の往復移動を交互に行う一方で、キャリッジ200下面の記録ヘッド210を断続的に作動させて、被記録物300上の任意の領域に対してインクを吐出させ、付着させることができる。
更に、この内部機構12では、プラテン400の側面部110側の側方に、キャップ部材500が配置されている。キャップ部材500は上下に移動可能で、キャリッジ200が側面部110に近いホームポジションで停止したときに上昇してノズルプレート260の表面を封止する。また、キャップ部材500の内部はポンプユニット510に結合されている。ポンプユニット510は、ノズルプレート260表面に付着したインクを吸引できる。ポンプユニット510に吸引されたインクは、図示されていないパイプを介して、キャップ側廃液吸収部材に吸収される。
更に、プラテン400とキャップ部材500との間には、ワイピング手段520が配置されている。キャップ部材500から開放されたキャリッジ200がその上方を通過するとき、ワイピング手段520はノズルプレート260の下面を払拭して清浄にする。
図3は、図1に示すインクジェット式記録装置11で用い得るエアロゾル収集機構13の構造を示す分解斜視図である。また、図3は、後述する終端電極430および中間電極434とノズルプレート260との電気的な関係も併せて示す。なお、図1および図2に示した構成要素と同じ部材には同じ参照符号を付して、重複する説明を省いている。同図に示すように、このプラテン400は、深い陥没部410を有するプラテン本体401と、陥没部410に収容された廃液吸収材420、終端電極430および中間電極434とを含む。
プラテン本体401の陥没部410の中にはいくつかの島部412が形成されている。また、陥没部410の前後に細長く延在する縁部402、404の上面と、島部412の頂面には、それぞれにリブ418が形成されている。リブ418は、被記録物300の搬送方向に沿って互いに平行に形成されており、その先端で被記録物300を下方から支持する。更に、陥没部410の開口近くには、陥没部410の上端側が広くなるような段差411が周囲にわたって形成されている。なお、このようなプラテン本体401は、例えば射出成形により樹脂等で一体に製造することができる。
廃液吸収材420および終端電極430は、陥没部410の底部と略同じ形状と寸法を有しており、上記段差411よりも低い位置で陥没部410の内部に重ねて収容されている。これに対して、中間電極434は、終端電極430よりもわずかに大きく、段差411に周縁部を支持されて段差内に収容される。
なお、廃液吸収材420、終端電極430および中間電極434には、プラテン本体401の島部412を挿通するための島部挿通穴422、432、436がそれぞれに形成されている。また、インクジェット式記録装置が稼働してインクを吸収すると、廃液吸収材420は膨潤して高さが増す。このときに終端電極430と中間電極434とが接触しないように、初期状態では、終端電極430と中間電極434との間には十分な間隙、具体的には5mmから10mm程度の間隙が設けられている。また、廃液吸収材420の材料としては、紙パルプまたは合成繊維若しくはこれらに高分子吸収体を含有させたものを吸収部材として用いることができる。
更に、図3中に模式的に示すように、終端電位差発生手段600及び中間電位差発生手段700は直列に接続される。終端電位差発生手段600の一端は、終端電極430と電気的に接続され、かつ、中間電位差発生手段700の一端は、複数の開口262を有するノズルプレート260に電気的に接続されている。また、終端電位差発生手段600の他端と中間電位差発生手段700の他端とが電気的に接続され、さらに、中間電極434に接続されている。終端電位差発生手段600は、終端電極430の側がより高電位となる向きに、終端電極430と中間電極434との間に電位差Vを発生させる。また、中間電位差発生手段700は、中間電極434の側がより高電位となる向きに、中間電極434とノズルプレート260との間に電位差Vを発生させる。また、ノズルプレート260の電位は接地電位又は負の電位であることが好ましい。電位差の関係についてはさらに図4を用いて説明する。
図4は、図3に示したエアロゾル収集機構13の、動作中のノズルプレート260付近を模式的に拡大して示す概念図である。図4においても、図1から図3までに示したものと同じ構成要素には同じ参照符号を付して重複する説明を省いている。
同図に示すように、ノズルプレート260にはインクを吐出する複数の開口262が形成されている。ノズルプレート260の直下には、プラテン本体401のリブ418が下方から支持する被記録物300が存在している。従って、ノズルプレート260から吐出された液滴268は被記録物300に付着する。
しかしながら、被記録物300の縁部に余白無くインクを付着させようとした場合、被記録物300の側縁部並びに先端および後端において、一部の開口262の直下に被記録物300が存在しないことがある。このような場合、開口262から吐出することによって液滴266に与えられた運動エネルギーは雰囲気の粘性抵抗により急速に失われ、一部の液滴では廃液吸収材420に到達する遥か前に完全に失われる。また、液滴266の質量は非常に小さいので、重力加速度による落下運動と前記粘性抵抗力とが殆どつり合い、液滴266の落下速度は極めて遅くなる。こうして、ノズルプレート260の下方に浮遊するエアロゾルが発生する。
このエアロゾル収集機構13において開口262から押し出されるインクは、液滴266となる直前の瞬間に、ノズルプレート260から下垂するインク柱264となる。このとき、インク柱264の先端Aとインク柱264付近Bのノズルプレート260下面との間でいわゆる避雷針効果が生じる。即ち、ここでいう避雷針効果とは、インク柱264の先端A(図中では下端)を頂点とする頂角50°から60°の円錐形で包囲されるノズルプレート260表面の領域Bが液滴266の帯電に寄与することをいう。この避雷針効果により、液滴266は、インク柱264の水平断面積に対応する電荷よりも大きな電荷で帯電する。
インク柱264は、やがてノズルプレート260から離れて液滴266となるが、この液滴266は上記のような避雷針効果により蓄積された電荷qで帯電している。一方、図4に示すエアロゾル収集機構13では、まず、ノズルプレート260と中間電極434との間に印加された電位差Vにより電界Eが形成されている。従って、電荷qを有する液滴266は、電界Eからクーロン力Fe(qE)を受けて運動エネルギーを得、減速されること無く中間電極434に向かって移動する。
更に、エアロゾル収集機構13では、中間電極434と終端電極430との間に印加された電位差Vにより、中間電極434と終端電極430との間に電界Eが形成されている。ここで、上述の通り、液滴266には、中間電極434に向かって飛来する過程ですでに電界Eにより運動エネルギーが付与されている。このため、電界Eにより液滴266に付与されるクーロン力が電界Eに基づくクーロン力より小さくても、液滴266は中間電極434に付着すること無く通過領域435を通過して終端電極430に向かって移動し、最終的に廃液吸収材420に付着、吸収される。また、中間電極434は、ノズルプレート260に比較的近い位置に配置されているので、電界Eを形成するために印加する電圧Vも、終端電極430がない場合に比べて小さくすることができる。以上により、図4に示す形態において、終端電位差発生手段600が中間電極434に対して終端電極430に発生する電位差Vは、中間電位差発生手段700がノズルプレート260に対して中間電極434に発生する電位差Vよりも小さい。
なお、仮に中間電極434が無く、ノズルプレート260から離れた廃液吸収材420の表面に配置された終端電極430だけでエアロゾルを収集する場合、ノズルプレート260の近傍で発生したエアロゾルに十分なクーロン力を作用させるためには、極めて強い電界が形成されなければならない。中間電極434がないとした場合に、本実施形態に係るインクジェット式記録装置11で中間電極434とノズルプレート260との間に印加する電圧の3倍程度の電圧が必要になる。
また、仮に終端電極430が無く、ノズルプレート260に比較的近い位置に配置された中間電極434だけでエアロゾルを収集する場合、電荷qで帯電した液滴266の一部が通過領域435を通過せず、中間電極434に徐々に付着して堆積し絶縁体となって中間電極434表面を覆う。更に電荷qで帯電した液滴266の一部が通過領域435を通過せず、中間電極434に付着すると、帯電液滴266の電荷qが電界Eを遮蔽するため、長期にわたる安定したエアロゾル収集が困難になる。
図4に示す形態において、ノズルプレート260と中間電極434との間に形成させる電界は25kV/m以上に、中間電極434と終端電極430との間に形成する電界は10kV/m程度とすることができる。また、廃液吸収材420は被記録物300から十分に遠方に配置されているので、その表面でミルククラウンによるエアロゾルが発生しても、被記録物300まで到達して付着することはない。従って、インクの吸収速度の速さよりも、吸収容量の大きさを重視して材料を選択できる。
なお、中間電極434および終端電極430の材料としては、インクジェット式記録装置のインクに対して耐蝕性のある金属、例えば金、ステンレスまたはニッケル等、あるいは、銅等にこれらの金属をメッキしたものを例示することができる。また、中間電極434に用いる部材としては、これらの材料で形成された直径0.08から0.3mm程度の線材を、0.6mmから2mm程度の間隔で平行に並べたものあるいは格子状に組み合わせたものを使用できる。更に、終端電極430に用いる部材としては、これらの材料で形成された直径0.1から0.5mm程度の線材を、0.5mmから4mm程度の間隔で平行に並べたものあるいは格子状に組み合わせたものを使用できる。また、中間電極434は、液滴を通過させる大きな通過領域435を有していることが好ましい。
図5は、上記のようなインクジェット式記録装置11における印加電界とエアロゾルの発生量との関係を示すグラフである。なお、ここでは、中間電極434と終端電極430との間の電界Eを10kV/mに固定する一方、中間電極434とノズルプレート260の間にさまざまな強さの電界Eを形成した上でインクジェット式記録装置11を稼働させ、その結果発生したエアロゾルの発生量を測定してプロットした。測定に際しては、液滴の大きさを7plとして、5枚の被記録物に対して印刷開始から7分38秒の時間をかけて記録動作させ、更に、印刷開始後8分が経過するまでに計数できたエアロゾルの総数を8で割って1分当たりのエアロゾル数とした。同図に示すように、電界Eがなかった場合に計測領域で1800個発生していたエアロゾルは、電界が25kV/mを越えると顕著に減少し始める。
図6は、他の実施形態であるエアロゾル収集機構13の構造を模式的に示す図である。なお、この図は図4に対応して描かれており、主に電位差発生手段600、700の接続にその特徴がある。
即ち、この実施形態においては、中間電位差発生手段700は、図4に示した実施形態と同様に、ノズルプレート260と中間電極434との間に接続されている。これに対して、終端電位差発生手段600は、ノズルプレート260と終端電極430との間に接続されている。このような構造により、中間電位差発生手段700と終端電位差発生手段600は相互に影響を受けにくくなり、電界の安定性が増す。
図7は、図4に示すインクジェット式記録装置の更に他の実施形態としてのエアロゾル収集機構13を示す。同図に示すように、この実施形態は、図4に示した実施形態に短絡保護抵抗610、710が付加されている。即ち、この実施形態では、中間電極434は短絡保護抵抗710および中間電位差発生手段700を介してノズルプレート260に結合されている。また、終端電極430は、短絡保護抵抗610および終端電位差発生手段600を介してノズルプレート260に結合されている。
各短絡保護抵抗610、710は、ノズルプレート260および中間電極434、または、ノズルプレート260および終端電極430のいずれかの間が、何らかの理由で短絡したときに過大な電流が流れることを防止する。このような短絡は、ノズルプレート260とプラテン400の間に被記録物300等が詰まった場合、または、インクジェット式記録装置内部に不用意に物や手が入れられた場合等に発生し得る。更に、この実施形態では、中間電極434と終端電極430とが何らかの理由で短絡した場合にも、短絡保護抵抗610、710の作用により両者の間に過大な電流が流れることを防止できる。
図8は、図6に示すインクジェット式記録装置の更に他の実施形態としてのエアロゾル収集機構13を示す。同図に示すように、この実施形態は、図6に示した実施形態に短絡保護抵抗610、710が付加されている。即ち、この実施形態では、中間電極434は短絡保護抵抗710および中間電位差発生手段700を介してノズルプレート260に結合されている。また、終端電極430は、短絡保護抵抗610および終端電位差発生手段600を介してノズルプレート260に結合されている。
この実施形態では、前述の通り、中間電位差発生手段700および終端電位差発生手段600の出力が分離されているので、相互に影響を受けることが少なく、各電界が安定する。また、各短絡保護抵抗610、710は、ノズルプレート260および中間電極434、または、ノズルプレート260および終端電極430のいずれかの間が、何らかの理由で短絡したときに過大な電流が流れることを防止する。
以上詳細に説明したように、本発明の実施形態に係る液体噴射装置は、浮遊するエアロゾルに運動エネルギーを与える電界を形成する中間電極と、中間電極に誘引されたエアロゾルを吸収部材に誘導する終端電極とを組み合わせることにより、中間電極への液体の付着を減少させて長期にわたる安定した動作を実現している。これにより、エアロゾルの収集機能が長期にわたって有効に働くので、被記録物、液体噴射装置自体、液体噴射装置の周囲、液体噴射装置を操作するユーザの手等をエアロゾルで汚染することがない。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
また、この発明が適用できる液体噴射装置の具体例として、液晶ディスプレイ用カラーフィルタの製造における色材噴射装置、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の製造における電極形成装置またはバイオチップ製造に使用する試料噴射ヘッド等をあげられるが、これらに限定されるわけではない。
本発明の実施形態に係る液体噴射装置の全体を概観する斜視図。 図1に示す液体噴射装置の内部機構12近傍を抜き出して示す斜視図。 図1に示す液体噴射装置のエアロゾル収集機構13の構造を示す斜視図。 液体噴射装置のノズルプレート260付近を拡大して示す側面図。 液体噴射装置におけるエアロゾル発生数と電界強度との関係を示すグラフ。 他の実施形態を模式的に示す図。 図4に示した実施形態を変形した実施形態を模式的に示す図。 図6に示した実施形態を変形した実施形態を模式的に示す図。
符号の説明
10 ホッパー、11 インクジェット式記録装置、12 内部機構、13 エアロゾル収集機構、20 下ケース、22 上ケース、30 排出トレー、100 フレーム、110、111 側面部、120 電子回路、200 キャリッジ、210 記録ヘッド、220 ガイド軸、242、244 プーリ、230 タイミングベルト、250 インクカートリッジ、260 ノズルプレート、262 開口、264 インク柱、266、268 液滴、270 多芯ケーブル、300 被記録物、310 搬送ローラ、320 搬送モータ、400 プラテン、401 プラテン本体、402 縁部、404 縁部、410 陥没部、411 段差、412 島部、418 リブ、420 廃液吸収材、422、432、436 島部挿通穴、430 終端電極、434 中間電極、435 通過領域、500 キャップ部材、510 ポンプユニット、520 ワイピング手段、600 終端電位差発生手段、610 短絡保護抵抗、710 短絡保護抵抗、700 中間電位差発生手段、

Claims (5)

  1. 導電性のノズルプレートを有し、前記ノズルプレートの開口から被記録物へ液体を吐出する液体噴射ヘッドと、
    液体が吐出される方向について前記ノズルプレートに対向して配され、液体が通過する通過領域を有する中間電極と、
    前記ノズルプレートと前記電極との間に電位差を発生させて液体を電気的に中間電極側へ引き付ける中間電位差発生手段と、
    液体噴射装置における液体が吐出される方向について前記中間電極よりも前記ノズルプレートから遠くに配された終端電極と、
    前記ノズルプレートに対する前記中間電極と同方向の電位差を、前記中間電極に対して前記終端電極に発生させて、前記中間電極の前記通過領域を通過した液体を電気的に前記終端電極に引き付ける終端電位差発生手段と、
    前記終端電極に隣接して配され、前記終端電極へ引き付けられた液体を吸収して保持する廃液吸収材と
    を備える液体噴射装置。
  2. 前記ノズルプレート、前記中間電位差発生手段および前記終端電位差発生手段が短絡した場合に抵抗負荷となる短絡保護抵抗を更に備える請求項1に記載の液体噴射装置。
  3. 前記被記録物を支持し、電気的な絶縁性を有するプラテンを更に備え、
    前記プラテンは、前記中間電極、前記終端電極および前記廃液吸収材を収容する請求項1に記載の液体噴射装置。
  4. 前記終端電位差発生手段が前記中間電極に対して前記終端電極に発生する電位差は、前記中間電位差発生手段が前記ノズルプレートに対して前記中間電極に発生する電位差よりも小さい請求項1に記載の液体噴射装置。
  5. 液体噴射装置における、液体が吐出される方向についてノズルプレートに対向して配され、液体が通過する通過領域を有する中間電極と、
    前記液体噴射装置における液体が吐出される方向について前記中間電極よりも前記ノズルプレートから遠くに配された終端電極と、
    前記終端電極に隣接して配され、前記終端電極へ電気的に引き付けられた液体を吸収して保持する廃液吸収材と、
    被記録物を支持し、前記中間電極、前記終端電極および前記廃液吸収材を収容するプラテンと
    を備えたプラテンユニット。
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