JP2006224021A - 水素貯蔵材料およびその製造方法、水素貯蔵材料前駆体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 水素放出ピーク温度を低温化させた水素貯蔵材料とその製造方法を提供する。
【解決手段】 水素貯蔵材料は、金属水素化物と金属アミド化合物との混合物および反応物を有し、金属種をナトリウムとマグネシウムの2種類とした。例えば、金属水素化物として水素化マグネシウムを、金属アミド化合物としてナトリウムアミドを用い、これらをミリング処理等により粉砕、混合して水素貯蔵材料を製造する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、燃料電池等の燃料として用いられる水素を発生させる水素貯蔵材料およびその製造方法、水素の吸放出により水素貯蔵材料との間で可逆的に変化する水素貯蔵材料前駆体に関する。
NOXやSOX等の有害物質やCO2等の温室効果ガスを出さないクリーンなエネルギー源として燃料電池の開発が盛んに行われており、既に幾つかの分野で実用化されている。この燃料電池技術を支える重要な技術として、燃料電池の燃料となる水素を貯蔵する技術がある。水素の貯蔵形態としては、高圧ボンベによる圧縮貯蔵や液体水素化させる冷却貯蔵、水素貯蔵物質による貯蔵等が知られている。
これらの水素貯蔵形態の中で、水素貯蔵物質による貯蔵は、分散貯蔵や輸送の点で有利である。水素貯蔵物質としては、水素貯蔵効率の高い材料、つまり水素貯蔵物質の単位重量または単位体積あたりの水素貯蔵量が高い材料、低い温度で水素の吸収/放出が行われる材料、良好な耐久性を有する材料が望まれる。
公知の水素貯蔵物質としては、希土類系、チタン系、バナジウム系、マグネシウム系等を中心とする金属材料、金属アラネード(例えば、NaAlH4やLiAlH4)等の軽量無機化合物、カーボン等が挙げられる。また、例えば、下式(1)で示されるリチウム窒化物を用いた水素貯蔵方法も報告されている(例えば、非特許文献1、2参照)。
Li3N+2H2⇔Li2NH+LiH+H2⇔LiNH2+2LiH…(1)
Li3N+2H2⇔Li2NH+LiH+H2⇔LiNH2+2LiH…(1)
ここで、Li3Nによる水素の吸収は100℃程度から開始し、255℃、30分で9.3質量%の水素吸収が確認されている。また、吸収された水素の放出特性としては、ゆっくり加熱することによって200℃弱で6.3質量%、320℃以上で3.0質量%と、二段階のステップを経ることが報告されている。すなわち、上記(1)式の右辺部分に相当する下式(2)の反応は200℃弱で進行し始め、上記(1)式の左辺部分に相当する下式(3)の反応は約320℃で進行し始めることが示されている。
LiNH2+2LiH→Li2NH+LiH+H2↑ …(2)
Li2NH+LiH→Li3N+H2↑ …(3)
LiNH2+2LiH→Li2NH+LiH+H2↑ …(2)
Li2NH+LiH→Li3N+H2↑ …(3)
しかしながら、上記(1)式に示されるリチウム窒化物は水素放出ピーク温度が高いという問題がある。
Ruff, O. , and Goerges, H., Berichte derDeutschen Chemischen Gesellschaft zu Berlin,Vol.44,502-6(1911) Ping Chen et al., Interaction of hydrogenwith metalnitrides and imides, NATURE Vol.420, 21 NOVEMBER 2002, p302〜304
Ruff, O. , and Goerges, H., Berichte derDeutschen Chemischen Gesellschaft zu Berlin,Vol.44,502-6(1911) Ping Chen et al., Interaction of hydrogenwith metalnitrides and imides, NATURE Vol.420, 21 NOVEMBER 2002, p302〜304
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、水素放出ピーク温度の低い水素貯蔵材料を提供することを目的とする。また本発明はこのような水素貯蔵材料の製造方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、水素の吸放出により水素貯蔵材料との間で可逆的に変化する水素貯蔵材料前駆体を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点によれば、金属水素化物と金属アミド化合物との混合物および反応物を有し、これらの金属種がナトリウムとマグネシウムの2種類であることを特徴とする水素貯蔵材料、が提供される。
この水素貯蔵材料においては、金属水素化物として水素化マグネシウムを用い、金属アミド化合物としてナトリウムアミドを用いることが好ましい。このとき、ナトリウムアミドに対する水素化マグネシウムの混合比はモル比で0.3以上5以下とすることが好ましく、0.3以上1以下とすることがより好ましい。
また、この水素貯蔵材料においては、金属水素化物として水素化ナトリウムを用い、金属アミドとしてはマグネシウムアミドを用いることも好ましい。このとき、マグネシウムアミドに対する水素化ナトリウムの混合比はモル比で0.5以上5以下とすることが好ましく、1以上4以下とすることがより好ましい。
このような水素貯蔵材料は、水素吸放出能を高める触媒をさらに含んでいることが好ましい。この触媒としては、B、C、Mn、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Rh、Na、Mg、K、Ir、Nb、Nd、La、Ca、V、Ti、Cr、Cu、Zn、Al、Si、Ru、Mo、Ta、Zr、HfおよびAgから選ばれた1種もしくは2種以上の化合物、または水素貯蔵合金、が好適に用いられる。このような触媒の担持量は、金属水素化物と金属アミド化合物との混合物および反応物の0.1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。さらにこの水素貯蔵材料は、メカニカルミリング処理によりナノ構造化・組織化されていることが好ましい。
本発明の第2の観点によれば、このような水素貯蔵材料の製造方法が提供される。すなわち、金属成分としてナトリウムとマグネシウムを含む金属水素化物と金属アミド化合物とを、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において混合する工程と、
前記混合工程においてさらに水素吸放出能を有する触媒をさらに加えることによって前記触媒を被処理物に担持させる工程、または前記混合工程後に得られる被処理物と水素吸放出能を有する触媒とを混合して当該被処理物に当該触媒を担持させる工程、または前記混合工程前に前記金属水素化物と前記金属アミド化合物の少なくとも一方に水素吸放出能を有する触媒を担持させる工程、のいずれかの工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法、が提供される。
前記混合工程においてさらに水素吸放出能を有する触媒をさらに加えることによって前記触媒を被処理物に担持させる工程、または前記混合工程後に得られる被処理物と水素吸放出能を有する触媒とを混合して当該被処理物に当該触媒を担持させる工程、または前記混合工程前に前記金属水素化物と前記金属アミド化合物の少なくとも一方に水素吸放出能を有する触媒を担持させる工程、のいずれかの工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法、が提供される。
この水素貯蔵材料の製造方法において、金属水素化物と金属アミド化合物の混合工程は、得られる被処理物がナノ構造化・組織化されるように、メカニカルミリング処理により行うことが好ましく、また、その混合工程は大気圧以上のガス圧雰囲気下で行うことが好ましい。なお、金属水素化物または金属アミド化合物に、またはこれらの混合物および反応物にそれぞれ添加する触媒は先に示した通りである。
本発明の第3の観点によれば、上記製造方法により製造されたことを特徴とする水素貯蔵材料、が提供される。
本発明の第4の観点によれば、水素と反応することによって、ナトリウムとマグネシウムの2種類の金属を含む金属水素化物と金属アミドとの混合物および反応物からなる水素貯蔵材料に可逆的に変化する、ナトリウムイミドとマグネシウムイミドの混合物および複合物、または窒化ナトリウムと窒化マグネシウムの混合物および複合物、またはナトリウムイミドと窒化マグネシウムの混合物および複合物、を有することを特徴とする水素貯蔵材料前駆体、が提供される。
本発明によれば、水素貯蔵材料の水素放出ピーク温度を従来よりも大きく下げることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明に係る水素貯蔵材料は、金属水素化物と金属アミド化合物との混合物および反応物を有し、これらの金属種はナトリウム(Na)とマグネシウム(Mg)の2種類である。具体的には、(a)金属水素化物を構成する金属がナトリウムであり、金属アミド化合物を構成する金属がマグネシウムである水素貯蔵材料、(b)金属水素化物を構成する金属がナトリウムであり、金属アミド化合物を構成する金属がマグネシウムおよびナトリウムである水素貯蔵材料、(c)金属水素化物を構成する金属がマグネシウムであり、金属アミド化合物を構成する金属がナトリウムである水素貯蔵材料、(d)金属水素化物を構成する金属がマグネシウムであり、金属アミド化合物を構成する金属がマグネシウムおよびナトリウムである水素貯蔵材料、(e)金属水素化物を構成する金属がマグネシウムおよびナトリウムであり、金属アミド化合物を構成する金属がマグネシウムおよびナトリウムである水素貯蔵材料、が挙げられる。
本発明に係る水素貯蔵材料は、金属水素化物と金属アミド化合物との混合物および反応物を有し、これらの金属種はナトリウム(Na)とマグネシウム(Mg)の2種類である。具体的には、(a)金属水素化物を構成する金属がナトリウムであり、金属アミド化合物を構成する金属がマグネシウムである水素貯蔵材料、(b)金属水素化物を構成する金属がナトリウムであり、金属アミド化合物を構成する金属がマグネシウムおよびナトリウムである水素貯蔵材料、(c)金属水素化物を構成する金属がマグネシウムであり、金属アミド化合物を構成する金属がナトリウムである水素貯蔵材料、(d)金属水素化物を構成する金属がマグネシウムであり、金属アミド化合物を構成する金属がマグネシウムおよびナトリウムである水素貯蔵材料、(e)金属水素化物を構成する金属がマグネシウムおよびナトリウムであり、金属アミド化合物を構成する金属がマグネシウムおよびナトリウムである水素貯蔵材料、が挙げられる。
好適な構成は、水素放出温度の低温化のみを考慮すると、金属水素化物が水素化マグネシウム(MgH2)であり、かつ、金属アミド化合物がナトリウムアミド(NaNH2)の単体またはこれとマグネシウムアミド(Mg(NH2)2)との混合物である、という組み合わせである。これは、水素化マグネシウムは金属水素化物の中では分解温度が低いという性質を有するからであり、ナトリウムアミドは水素化マグネシウムより低温で分解し、アンモニア(NH3)を生成するからである。
マグネシウムとナトリウムとが当量となるように、水素化マグネシウムとナトリウムアミドを用いて水素貯蔵材料を構成する場合には、下式(4)に示す組成とすればよく、水素化ナトリウム(NaH)とマグネシウムアミドとを用いて水素貯蔵材料を構成する場合には、下式(5)に示す組成とすればよい。下式(4),(5)にそれぞれ示す水素貯蔵材料の理論水素貯蔵率はともに3.83質量%となる。
MgH2+2NaNH2⇔MgNH+Na2NH+2H2 …(4)
Mg(NH2)2+2NaH⇔MgNH+Na2NH+2H2 …(5)
MgH2+2NaNH2⇔MgNH+Na2NH+2H2 …(4)
Mg(NH2)2+2NaH⇔MgNH+Na2NH+2H2 …(5)
水素化マグネシウムとナトリウムアミドを用いて水素貯蔵材料を構成する場合は、ナトリウムアミドに対する水素化マグネシウムの混合比(=水素化マグネシウム/ナトリウムアミド)をモル比で0.3以上5以下とすることが好ましい。この混合比が0.3未満であると、水素化マグネシウムが不足し、反応系外にナトリウムアミドから放出されたアンモニアが反応しきれずに放出される恐れがある。一方、この混合比が5超となると、水素化マグネシウムが過剰となり、放出可能な水素の質量%が低下する。
水素化マグネシウムとナトリウムアミドを用いて水素貯蔵材料を構成する場合は、さらに、ナトリウムアミドに対する水素化マグネシウムの混合比を0.3以上1以下とすることが、より好ましい。例えば、ナトリウムアミドに対する水素化マグネシウムの混合比をモル比で1とした場合の化学反応式を下式(6)に示す。この下式(6)に示す水素貯蔵材料の理論水素貯蔵率は6.12質量%となり、上記(4)式に示す水素貯蔵材料よりも高い水素貯蔵率が得られる。
3MgH2+3NaNH2⇔Mg3N2+Na3N+6H2 …(6)
3MgH2+3NaNH2⇔Mg3N2+Na3N+6H2 …(6)
また、3モルの水素化マグネシウムと4モルのナトリウムアミドから水素貯蔵材料を構成した場合(つまり、ナトリウムアミドに対する水素化マグネシウムの混合比をモル比で0.75とした場合)の化学反応式を下式(7)に示す。この下式(7)に示す水素貯蔵材料の理論水素貯蔵率は5.11質量%となり、上記(6)式には及ばないものの上記(4)式と比べて高いものとなる。
3MgH2+4NaNH2⇔Mg3N2+2Na2NH+6H2 …(7)
3MgH2+4NaNH2⇔Mg3N2+2Na2NH+6H2 …(7)
水素化ナトリウムとマグネシウムアミドを用いて水素貯蔵材料を構成する場合には、マグネシウムアミドに対する水素化ナトリウムの混合比(=水素化ナトリウム/マグネシウムアミド)をモル比で0.5以上5以下とすることが好ましい。この混合比が0.5未満であると、水素化ナトリウムが不足し、反応系外にマグネシウムアミドから放出されたアンモニアが反応しきれずに放出される恐れがある。一方、この混合比が5超であると、水素化マグネシウムが過剰となり、放出可能な水素の質量%が低下する。
水素化ナトリウムとマグネシウムアミドを用いて水素貯蔵材料を構成する場合には、さらに、マグネシウムアミドに対する水素化ナトリウムの混合比をモル比で1以上4以下とすることが、より好ましい。たとえば、マグネシウムアミドに対する水素化ナトリウムの混合比をモル比で4とした場合の化学反応式を下式(8)に示す。この下式(8)に示す水素貯蔵材料の理論水素貯蔵率は5.25質量%となり、上記(6)式には及ばないものの上記(5)式と比べて高いものとなる。
3Mg(NH2)2+12NaH⇔Mg3N2+4Na3N+12H2 …(8)
3Mg(NH2)2+12NaH⇔Mg3N2+4Na3N+12H2 …(8)
また、3モルのマグネシウムアミドと8モルの水素化ナトリウムから水素貯蔵材料を構成した場合(つまり、マグネシウムアミドに対する水素化ナトリウムの混合比をモル比で約2.67とした場合)の化学反応式を下式(9)に示す。この下式(9)に示す水素貯蔵材料の理論水素貯蔵率は4.43質量%となり、上記(8)式には及ばないものの上記(5)式と比べて高いものとなる。
3Mg(NH2)2+8NaH⇔Mg3N2+4Na2NH+8H2 …(9)
3Mg(NH2)2+8NaH⇔Mg3N2+4Na2NH+8H2 …(9)
なお、前記非特許文献1,2に記載されている上記(1)式の逆反応(すなわち水素放出反応)においては、リチウムアミド(LiNH2)と水素化リチウム(LiH)が窒化リチウム(Li3N)となることで9.3質量%の水素放出率が確認されているものの、この水素放出率を得るためには、リチウムアミドと水素化リチウムから水素が放出されることにより生成するリチウムイミド(Li2NH)をさらに水素化リチウムと反応させて窒化リチウムとする必要があるため、高い水素放出率は得られるものの、高温が必要であり水素放出温度を低温化することは困難である。
これに対して、金属水素化物と金属アミド化合物の組み合わせを、水素化リチウムとリチウムアミドの組み合わせよりも分解反応が進行しやすいナトリウムとマグネシウムの組み合わせに変え、上記(6)〜(9)式に示す組成とすることで、比較的高い水素放出率を維持しながら、水素放出ピークを低温化することができる。
このような金属種がナトリウムとマグネシウムの2種である金属水素化物と金属アミド化合物との混合物および反応物は、メカニカルミリング処理によりナノ構造化・組織化されていることが好ましい。このメカニカルミリング処理は、少量生産の場合には遊星型ボールミル等を用いることで行うことができ、大量生産の場合にはローラーミルや内外筒回転型ミル、アトライター、インナーピース型ミル、気流粉砕型ミル等を用いて行うことができる。なお、発明者らは、先に特願2004−036967号において、このような大量生産に適した水素貯蔵材料の製造装置および製造方法について、提案している。
金属種がナトリウムとマグネシウムの2種である金属水素化物と金属アミド化合物との混合物および反応物を得るための、金属水素化物と金属アミド化合物の混合/粉砕処理は、不活性ガス(例えば、アルゴンガス、窒素ガス)雰囲気下、または水素ガス雰囲気下、または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において行う。このとき、雰囲気圧力(ガス圧力)を大気圧以上とすることが好ましい。これにより、混合/粉砕処理後の混合物および反応物からの水素放出量を増加させることができる。
金属種がナトリウムとマグネシウムの2種である金属水素化物と金属アミド化合物との混合物および反応物は、水素吸放出能を高める触媒を含んでいることが好ましい。好適な触媒としては、B、C、Mn、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Rh、Na、Mg、K、Ir、Nb、Nd、La、Ca、V、Ti、Cr、Cu、Zn、Al、Si、Ru、Mo、Ta、Zr、HfおよびAgから選ばれた1種もしくは2種以上の化合物、または水素貯蔵合金を挙げることができる。
このような触媒の担持量は、金属種がナトリウムとマグネシウムの2種である金属水素化物と金属アミドとの混合物および反応物の0.1質量%以上20質量%以下とすることが好ましい。触媒担持量が0.1質量%未満の場合には、水素発生反応促進の効果が得られず、20質量%を超えると逆に金属水素化物等の反応物質どうしの反応を阻害したり、単位質量あたりの水素放出率が目減りするという問題が生じる。
金属種がナトリウムとマグネシウムの2種である金属水素化物と金属アミド化合物との混合物および反応物に、水素吸放出能を有する触媒物質を担持させる方法としては、以下の3つの方法のいずれかが用いられる。すなわち、(a)金属水素化物と金属アミド化合物を混合、粉砕する際に触媒物質を加えることにより、被処理物(つまり、金属水素化物、金属アミド化合物、これらの混合物、これらの反応物)に担持させる方法、(b)金属水素化物と金属アミド化合物を混合、粉砕することによって得られる被処理物と触媒物質とを混合することによって被処理物に触媒物質を担持させる方法、(c)金属水素化物と金属アミド化合物を混合、粉砕する前に、金属水素化物と金属アミド化合物の少なくとも一方に水素吸放出能を有する触媒物質を混合粉砕処理等により担持させる方法、のいずれか用いられる。
上述したナトリウムとマグネシウムの2種類の金属を含む金属水素化物と金属アミドとの混合物および反応物からなる水素貯蔵材料は、水素を放出することによって、水素貯蔵材料前駆体(つまり、水素を吸収することによって元の水素貯蔵材料に戻る物質)に変化する。つまり、水素貯蔵材料と水素貯蔵材料前駆体との間では、水素の授受を通した可逆的な反応を行うことができる。このような水素貯蔵材料前駆体は、上式(4)・(5)の右辺に示されるように、ナトリウムイミド(Na2NH)とマグネシウムイミド(MgNH)の混合物および複合物、または上式(6)・(8)の右辺に示されるように、窒化ナトリウム(Na3N)と窒化マグネシウム(Mg3N2)の混合物および複合物、または上式(7)・(9)の右辺に示されるように、ナトリウムイミドと窒化マグネシウムの混合物および複合物、である。
ナトリウムとマグネシウムの2種類の金属を含む金属水素化物と金属アミドとの混合物および反応物からなる水素貯蔵材料は、先に上述の水素貯蔵材料前駆体を製造し、それに水素を吸蔵させてもよい。つまり、例えば、ナトリウムイミドとマグネシウムイミドをメカニカルミリング処理を用いて混合し、得られた水素貯蔵材料前駆体を水素と反応させもよい。
次に、本発明の実施例と比較例について説明する。
(マグネシウムアミドの調整)
マグネシウムアミドは、1gの水素化マグネシウムを高純度アルゴングローブボックス内で高クロム鋼製のミル容器(内容積:250ml)に投入した後、このミル容器内を真空排気し、続いてアンモニアガスを下記(10)式のモル比以上となるように、かつ、ミル容器内が0.4MPa以下(絶対圧)となるように、ミル容器内に導入した後にミル容器を封止し、次いでこれを室温、大気雰囲気下、250rpmの回転数で所定時間ミリング処理することにより、調整した。ミリング処理後のミル容器から反応ガス中の水素量やXRD測定により各種金属アミドの生成を確認した。なお、使用原料の詳細は表1に示す通りである。
MgH2+2NH3(g)→ Mg(NH2)2+2H2(g)…(10)
マグネシウムアミドは、1gの水素化マグネシウムを高純度アルゴングローブボックス内で高クロム鋼製のミル容器(内容積:250ml)に投入した後、このミル容器内を真空排気し、続いてアンモニアガスを下記(10)式のモル比以上となるように、かつ、ミル容器内が0.4MPa以下(絶対圧)となるように、ミル容器内に導入した後にミル容器を封止し、次いでこれを室温、大気雰囲気下、250rpmの回転数で所定時間ミリング処理することにより、調整した。ミリング処理後のミル容器から反応ガス中の水素量やXRD測定により各種金属アミドの生成を確認した。なお、使用原料の詳細は表1に示す通りである。
MgH2+2NH3(g)→ Mg(NH2)2+2H2(g)…(10)
(実施例1〜6の試料調製)
表2および表3に実施例1〜6の出発原料の配合組成を示す。水素化ナトリウム、水素化マグネシウム、ナトリウムアミド、マグネシウムアミドから選ばれた所定の原料(表1参照)を、表2および表3に示すようにナトリウムとマグネシウムが含まれる所定の組成となるように、高純度アルゴングローブボックス中で計量し、高クロム鋼製のバルブ付ミル容器に投入した。続いて、このミル容器内を真空排気した後、高純度水素ガスを1MPa導入し、遊星型ボールミル装置(Fritsch社製,P−5)を用いて、室温、大気雰囲気下、250rpmの回転数で2時間、ミリング処理した。ミリング後の試料は、ミル容器内を真空排気してアルゴンガスを充填した後、高純度アルゴングローブボックス中で取り出した。
表2および表3に実施例1〜6の出発原料の配合組成を示す。水素化ナトリウム、水素化マグネシウム、ナトリウムアミド、マグネシウムアミドから選ばれた所定の原料(表1参照)を、表2および表3に示すようにナトリウムとマグネシウムが含まれる所定の組成となるように、高純度アルゴングローブボックス中で計量し、高クロム鋼製のバルブ付ミル容器に投入した。続いて、このミル容器内を真空排気した後、高純度水素ガスを1MPa導入し、遊星型ボールミル装置(Fritsch社製,P−5)を用いて、室温、大気雰囲気下、250rpmの回転数で2時間、ミリング処理した。ミリング後の試料は、ミル容器内を真空排気してアルゴンガスを充填した後、高純度アルゴングローブボックス中で取り出した。
(比較例1〜4の試料調製)
表4に比較例1〜4の出発原料の配合組成を示す。比較例1,2では水素化リチウムとマグネシウムアミドを、比較例3では水素化リチウムとリチウムアミドとを、比較例4では水素化マグネシウムとマグネシウムアミドとを、それぞれ表4に示す所定の組成となるように、かつ、三塩化チタン(TiCl3)が出発原料の金属成分の合計モル量の1.0mol%となるように、高純度アルゴングローブボックス中で計量し、それぞれ、高クロム鋼製のバルブ付ミル容器に投入した。続いて各ミル容器について、その内部を真空排気した後、高純度水素ガスを1MPa導入し、遊星型ボールミル装置を用いて、室温、大気雰囲気下、250rpmの回転数で2時間、ミリング処理した。ミリング後の試料は、ミル容器内を真空排気してアルゴンガスを充填した後、高純度アルゴングローブボックス中で取り出した。
表4に比較例1〜4の出発原料の配合組成を示す。比較例1,2では水素化リチウムとマグネシウムアミドを、比較例3では水素化リチウムとリチウムアミドとを、比較例4では水素化マグネシウムとマグネシウムアミドとを、それぞれ表4に示す所定の組成となるように、かつ、三塩化チタン(TiCl3)が出発原料の金属成分の合計モル量の1.0mol%となるように、高純度アルゴングローブボックス中で計量し、それぞれ、高クロム鋼製のバルブ付ミル容器に投入した。続いて各ミル容器について、その内部を真空排気した後、高純度水素ガスを1MPa導入し、遊星型ボールミル装置を用いて、室温、大気雰囲気下、250rpmの回転数で2時間、ミリング処理した。ミリング後の試料は、ミル容器内を真空排気してアルゴンガスを充填した後、高純度アルゴングローブボックス中で取り出した。
(試料評価方法)
上述の通り作製した試料を、高純度アルゴングローブボックス内に設置されたTG−MASS装置(熱重量・質量分析装置)を用い、昇温速度を5℃/分として昇温し、その際の各試料からの脱離ガスを採取して分析を行った。
上述の通り作製した試料を、高純度アルゴングローブボックス内に設置されたTG−MASS装置(熱重量・質量分析装置)を用い、昇温速度を5℃/分として昇温し、その際の各試料からの脱離ガスを採取して分析を行った。
(結果)
図1に実施例1〜3のTG−MASS装置による昇温に伴う脱離水素ガスの放出スペクトル、つまり、温度と水素放出強度と関係を示すグラフを、図2に比較例1〜4のTG−MASS装置による昇温に伴う脱離水素ガスの放出スペクトルを、図3に実施例4〜6のTG−MASS装置による昇温に伴う脱離水素ガスの放出スペクトルをそれぞれ示す。また、表2〜表4に各試料の水素ガスの放出スペクトル曲線のピーク温度(℃)(以下「水素放出ピーク温度」という)を併記する。
図1に実施例1〜3のTG−MASS装置による昇温に伴う脱離水素ガスの放出スペクトル、つまり、温度と水素放出強度と関係を示すグラフを、図2に比較例1〜4のTG−MASS装置による昇温に伴う脱離水素ガスの放出スペクトルを、図3に実施例4〜6のTG−MASS装置による昇温に伴う脱離水素ガスの放出スペクトルをそれぞれ示す。また、表2〜表4に各試料の水素ガスの放出スペクトル曲線のピーク温度(℃)(以下「水素放出ピーク温度」という)を併記する。
図1および表1に示されるように、実施例1〜3の水素放出ピーク温度はそれぞれ149℃,147℃,163℃であり、これらは、図2に示した比較例1〜4のそれぞれの水素放出ピーク温度の192℃,209℃,240℃,317℃と比較して、大きく低温化することが確認された。
特に、ナトリウムアミドに対する水素化マグネシウムの混合比がモル比で0.3〜1.0の範囲にある実施例1〜3(実施例1では0.375、実施例2では0.5、実施例3では0.75)においては水素放出ピーク温度が低くなっており、特に実施例1および実施例2の水素放出ピーク温度の低温化が顕著であった。
また表3および図3に示されるように、水素化ナトリウムとマグネシウムアミドを用いた実施例4〜6においても、比較例1〜4と比較すると、水素放出ピーク温度が低温化することが確認された。なお、マグネシウムアミドに対する水素化ナトリウムの混合比がモル比で1である実施例4においては、水素放出ピーク温度が低温部でシャープになっており、水素放出ピーク温度の低温化が顕著に現れることを確認した。
本発明は、水素と酸素を燃料として発電する燃料電池およびその運転等に好適である。
Claims (17)
- 金属水素化物と金属アミド化合物との混合物および反応物を有し、これらの金属種がナトリウムとマグネシウムの2種類であることを特徴とする水素貯蔵材料。
- 前記金属水素化物は水素化マグネシウムであり、前記金属アミド化合物はナトリウムアミドであることを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵材料。
- ナトリウムアミドに対する水素化マグネシウムの混合比がモル比で0.3以上5以下であることを特徴とする請求項2に記載の水素貯蔵材料。
- ナトリウムアミドに対する水素化マグネシウムの混合比がモル比で0.3以上1以下であることを特徴とする請求項3に記載の水素貯蔵材料。
- 前記金属水素化物は水素化ナトリウムであり、前記金属アミドはマグネシウムアミドであることを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵材料。
- マグネシウムアミドに対する水素化ナトリウムの混合比がモル比で0.5以上5以下であることを特徴とする請求項5に記載の水素貯蔵材料。
- マグネシウムアミドに対する水素化ナトリウムの混合比がモル比で1以上4以下であることを特徴とする請求項6に記載の水素貯蔵材料。
- 水素吸放出能を高める触媒をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の水素貯蔵材料。
- 前記触媒は、B、C、Mn、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Rh、Na、Mg、K、Ir、Nb、Nd、La、Ca、V、Ti、Cr、Cu、Zn、Al、Si、Ru、Mo、Ta、Zr、HfおよびAgから選ばれた1種もしくは2種以上の元素の化合物または水素貯蔵合金であることを特徴とする請求項8に記載の水素貯蔵材料。
- 前記触媒の担持量は、前記金属水素化物と金属アミド化合物の混合物および反応物の0.1質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の水素貯蔵材料。
- 前記混合物および反応物はメカニカルミリング処理によりナノ構造化・組織化されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の水素貯蔵材料。
- 金属成分としてナトリウムとマグネシウムを含む金属水素化物と金属アミド化合物とを、不活性ガス雰囲気下もしくは水素ガス雰囲気下または不活性ガスと水素ガスとの混合ガス雰囲気下において混合する工程と、
前記混合工程においてさらに水素吸放出能を有する触媒をさらに加えることによって前記触媒を被処理物に担持させる工程、または前記混合工程後に得られる被処理物と水素吸放出能を有する触媒とを混合して当該被処理物に当該触媒を担持させる工程、または前記混合工程前に前記金属水素化物と前記金属アミド化合物の少なくとも一方に水素吸放出能を有する触媒を担持させる工程、のいずれかの工程と、
を有することを特徴とする水素貯蔵材料の製造方法。 - 前記金属水素化物と金属アミド化合物との混合工程は、得られる被処理物がナノ構造化・組織化されるように、メカニカルミリング処理により行われることを特徴とする請求項12に記載の水素貯蔵材料の製造方法。
- 前記金属水素化物と金属アミド化合物との混合工程は、大気圧以上のガス圧力雰囲気下で行うことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の水素貯蔵材料の製造方法。
- 前記触媒は、B、C、Mn、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Rh、Na、Mg、K、Ir、Nb、Nd、La、Ca、V、Ti、Cr、Cu、Zn、Al、Si、Ru、Mo、Ta、Zr、HfおよびAgから選ばれた1種もしくは2種以上の化合物、または水素貯蔵合金であることを特徴とする請求項12から請求項14に記載の水素貯蔵材料の製造方法。
- 請求項12から請求項15のいずれかの水素貯蔵材料の製造方法により製造されたことを特徴とする水素貯蔵材料。
- 水素と反応することによって、ナトリウムとマグネシウムの2種類の金属を含む金属水素化物と金属アミドとの混合物および反応物からなる水素貯蔵材料に可逆的に変化する、ナトリウムイミドとマグネシウムイミドの混合物および複合物、または窒化ナトリウムと窒化マグネシウムの混合物および複合物、またはナトリウムイミドと窒化マグネシウムの混合物および複合物、を有することを特徴とする水素貯蔵材料前駆体。
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JP2010215464A (ja) * | 2009-03-18 | 2010-09-30 | Toyota Central R&D Labs Inc | 水素化物複合体及び水素ガスの製造方法 |
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WO2005014165A1 (ja) * | 2003-08-11 | 2005-02-17 | National University Corporation Hiroshima University | 水素貯蔵材料およびその製造方法ならびにその製造装置 |
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- 2005-02-18 JP JP2005042435A patent/JP2006224021A/ja active Pending
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