JP2006221934A - 放電ランプ用陽電極 - Google Patents
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Abstract
【課題】陽電極先端部の溶融、蒸発を防ぐと共に、陽電極の折れ曲がり等の変形を防止する。
【解決手段】アーク放電により発生する高温、高速ガス流を、ガス流入孔12から陽電極の空洞10に吸入することにより、ほぼ均一の温度に熱された陽電極2の内壁から熱エネルギーを陽電極2の外部に放出する。陽電極2の空洞を利用して熱伝導を行っているため、熱エネルギーを陽電極2の先端部だけに集中させることなく、陽電極2全体で効果的に分散させることが可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】アーク放電により発生する高温、高速ガス流を、ガス流入孔12から陽電極の空洞10に吸入することにより、ほぼ均一の温度に熱された陽電極2の内壁から熱エネルギーを陽電極2の外部に放出する。陽電極2の空洞を利用して熱伝導を行っているため、熱エネルギーを陽電極2の先端部だけに集中させることなく、陽電極2全体で効果的に分散させることが可能となる。
【選択図】図1
Description
本発明は、放電ランプに用いられる陽電極に関する技術であり、特に、ランプ性能の劣化を防止する技術に関する。
まず、図5を用いて、従来から用いられている放電ランプの一種であるショートアーク放電ランプ(直流型)の基本的な構造について説明する。
図5に示すように、ショートアーク放電ランプ100は、陰電極102と陽電極104が発光管106の両端部に取り付けられた構造となっている。アーク放電時には、発光部108(陰電極102および陽電極104の隙間)にアーク柱が形成され、その点灯光が多くの用途に利用されている。
しかし、アーク放電中、陽電極104の先端部には、常に超高温ガス(アーク柱により発生するガス)が衝突する。これにより、陽電極104の先端部は、3千度以上に加熱される場合がある。その際、陽電極から蒸発したタングステン微粒子が発光管内壁に付着したり、陽電極表面において再結晶化するため、ランプ性能を劣化してランプ寿命を短命にする要因となっている。ショートアーク放電ランプの場合、特に、かかる問題が顕著に生じている。
このため、陽電極104先端部に集中する熱エネルギーを効果的に逃がす方法が社会的に要請されている。さらに、陽電極104は比較的に重量が重いため、運搬時などにおいて陽電極104が折れ曲がってしまうという問題もあった。
これに対し、陽電極表面の粗目化処理などにより陽電極表面積を拡大し、陽電極からの輻射効率を増大させたもの(特許文献1を参照)が存在する。また、高温下における陽電極の再結晶化を防止するために、タングステン陽電極に高融点酸化物を適量含有させたもの(特許文献2を参照)も存在する。
しかしながら、特許文献1の技術は、陽電極に設けた溝部により表面積が増した分だけしか熱を逃がすことできず、陽電極の寿命を十分に延ばすことができなかった。さらに、陽電極の重量はあまり変わらないため、折れ曲がり等の問題も解消できなかった。特許文献2の技術によっても、陽電極の先端部に熱エネルギーが集中することは何ら変わることはなく、十分に陽電極の寿命を延ばすことはできず、また、折れ曲がり等の問題も解消できなかった。
本発明の空洞型陽電極を用いた放電ランプは、アーク放電時に発生する高温、高速ガス流によって陽電極先端部に集まる熱エネルギーを、陽電極全体で効率的に分散して放熱効果を高めることを目的とする。
(1)この発明の放電ランプ用陽電極は、
高融点金属で構成される放電ランプ用陽電極であって、
前記陽電極の内部に、空洞を設け、
前記陽電極の先端部に、アーク放電時に発生するガスを前記空洞内に流入させるためのガス流入孔を設けた、
ことを特徴とする。
高融点金属で構成される放電ランプ用陽電極であって、
前記陽電極の内部に、空洞を設け、
前記陽電極の先端部に、アーク放電時に発生するガスを前記空洞内に流入させるためのガス流入孔を設けた、
ことを特徴とする。
これにより、陽電極の先端部に集中する熱エネルギーを効果的に分散させることが可能となる。このため、陽電極先端部の損傷を防止して陽電極の寿命を長くすることができる。
(2)この発明の放電ランプ用陽電極は、
前記ガス流入孔の幅を、前記陽電極の内部に設けた空洞の幅よりも狭くした、
ことを特徴とする。
前記ガス流入孔の幅を、前記陽電極の内部に設けた空洞の幅よりも狭くした、
ことを特徴とする。
これにより、陽電極の内部に設けた空洞において、ガス流入孔から流入したガスによる対流を生じさせることができる。
(3)この発明の放電ランプ用陽電極は、
前記ガス流入孔および前記空洞を、前記ガス流入孔から流入させたガスによって陽電極の空洞において対流が生じるような形状とした、
ことを特徴とする。
前記ガス流入孔および前記空洞を、前記ガス流入孔から流入させたガスによって陽電極の空洞において対流が生じるような形状とした、
ことを特徴とする。
これにより、陽電極の内部に設けた空洞内の対流を利用して、熱エネルギーを陽電極全体から外部に効果的に分散させることが可能となる。
(4)この発明の放電ランプ用陽電極は、
前記陽電極の側面部における肉厚を略同じにすることにより、陽電極の内部に前記空洞を設けた、
ことを特徴とする。
前記陽電極の側面部における肉厚を略同じにすることにより、陽電極の内部に前記空洞を設けた、
ことを特徴とする。
これにより、陽電極の内部から熱エネルギーを効果的に分散させることが可能となる。
(5)この発明の放電ランプ用陽電極は、
前記陽電極の内部に設ける空洞を、前記ガス流入孔から流入したガスが有する熱を内壁から外壁へ伝導して、外壁から熱を放出できるような形状にした、
ことを特徴とする。
前記陽電極の内部に設ける空洞を、前記ガス流入孔から流入したガスが有する熱を内壁から外壁へ伝導して、外壁から熱を放出できるような形状にした、
ことを特徴とする。
これにより、陽電極の内壁から外壁へ熱を伝導し、陽電極の外壁から熱を放出させることが可能となり、陽電極の内部から熱エネルギーを効果的に分散させることができる。
(6)この発明の放電ランプ用陽電極は、
前記ガス流入孔を、テーパ状にした、
ことを特徴とする。
前記ガス流入孔を、テーパ状にした、
ことを特徴とする。
これにより、アーク放電時に発生するガスを、より効果的に空洞内に案内することが可能となる。
(7)この発明の放電ランプ用陽電極は、
前記陽電極に圧力調整孔を設けた、
ことを特徴とする。
前記陽電極に圧力調整孔を設けた、
ことを特徴とする。
これにより、陽電極の空洞内が必要以上に高圧とならないように圧力を調節することが可能となる。このため、アーク放電時に発生するガスを、円滑に空洞内に流入させることができる。
(8)この発明の放電ランプ用陽電極は、
前記圧力調整孔を前記陽電極の後端部に設けた、
ことを特徴とする。
前記圧力調整孔を前記陽電極の後端部に設けた、
ことを特徴とする。
これにより、より効果的に空洞内の圧力を調節することが可能となる。このため、アーク放電時に発生するガスを、より円滑に空洞内に流入させると共に、内壁に沿った対流を発生させることができる。
(10)この発明の放電ランプ用陽電極の製造方法は、
前記陽電極を、内部に空洞を設けた器部分と、蓋部分とにより形成し、
前記陽電極の器部分に、アーク放電時に発生するガスを前記空洞内に流入させるためのガス流入孔を設け、
前記陽電極の器部分と蓋部分とを接合した、
ことを特徴とする。
前記陽電極を、内部に空洞を設けた器部分と、蓋部分とにより形成し、
前記陽電極の器部分に、アーク放電時に発生するガスを前記空洞内に流入させるためのガス流入孔を設け、
前記陽電極の器部分と蓋部分とを接合した、
ことを特徴とする。
これにより、陽電極先端部の溶融、蒸発を防ぐと共に、陽電極の折れ曲がり等の変形を防止する放電ランプ用陽電極を提供することができる。
1.放電ランプ用陽電極2の構造(図1)
図1に、本発明の放電ランプ用陽電極2の構造を示す。図1Aは、放電ランプ用陽電極2の構造を示す断面図である。図1Bおよび図1Cは、それぞれ図1Aに示す放電ランプ用陽電極2のα−矢視図、β−矢視図である。
図1に、本発明の放電ランプ用陽電極2の構造を示す。図1Aは、放電ランプ用陽電極2の構造を示す断面図である。図1Bおよび図1Cは、それぞれ図1Aに示す放電ランプ用陽電極2のα−矢視図、β−矢視図である。
図1Aに示すように、本発明の放電ランプ用陽電極2は、高融点金属であるタングステンで構成され、これを支持する導電性の陽電極支持部4に接合されている。なお、陽電極2に用いるタングステンの純度は、99.9%以上としている。
陽電極2は、図1に示すように、器部分6と蓋部分8とで構成されており、側面部P2における肉厚を略同じに成形することで、内部に空洞10を設けるようにしている。なお、この実施形態では、陽電極2の外径を36[mm]、内径を24[mm]とし、全長を80[mm]としている。
陽電極2の先端部P1は、図1Aに示すように、半円状に形成されており、その頂部には、アーク放電時に発生するガスを前記空洞内に流入させるためのガス流入孔12が設けられている。このガス流入孔12の径W1は、図1A、Cに示すように、陽電極2の内部に設けた空洞の径W2よりも狭く成形されている。このようにガス流入孔12と空洞10を形成することで、後述するように、ガス流入孔12から流入させたガスによって前記陽電極2の空洞10に沿った対流が生じると考えられる。なお、この実施形態では、ガス流入孔12の直径を6[mm]としている。
なお、陽電極2の先端部P1における肉厚t2は、図1に示すように、陽電極2の側面部P2における肉厚t1よりも厚くなるようにしている。これは、熱エネルギーが陽電極2の先端部P1から側面部P2に直接伝達されて側面部P2が必要以上に高温状態となるのを緩和するためである。つまり、陽電極2の先端部P1および側面部P2の肉厚を変更することにより、アーク放電時における陽電極2の温度を調節することができる。
また、図1Aに示すように、陽電極2の後端部P3に位置する蓋部分8には、複数の圧力調整孔14が設けられている。これらの圧力調整孔14は、図1Bに示すように、陽電極支持部4を中心とする同心円状上に均等に配置して設けられている。なお、この実施形態では、圧力調整孔14の直径を4[mm]としている。
図1に示す陽電極2の器部分6および蓋部分8は、タングステン鋼棒をそれぞれ所定の厚みに切り出すことにより成形され、陽電極2の空洞10は切り出した鋼片を切削することにより設けられる。陽電極支持部4も同様に、タングステン鋼棒を所定の長さに切り出して成形される。また、図1Aに示す陽電極2の器部分6と蓋部分8の間、陽電極2の蓋部分8と陽電極支持部4の間は、溶接(例えば、TIG溶接)により接合される。さらに、ガス流入孔12や圧力調整孔14は、ドリルで切削することにより所定の径に成形される。
2.放電ランプ用陽電極2における伝熱の仕組み
図1に示す放電ランプ用陽電極2による伝熱の仕組みについて、図2および図3を用いて、以下に説明する。図2は、アーク放電時の陽電極2の空洞内外におけるガスの移動を示す図である。図3は、アーク放電時における陽電極2を介した熱の移動を示す図である。
図1に示す放電ランプ用陽電極2による伝熱の仕組みについて、図2および図3を用いて、以下に説明する。図2は、アーク放電時の陽電極2の空洞内外におけるガスの移動を示す図である。図3は、アーク放電時における陽電極2を介した熱の移動を示す図である。
アーク放電が始まると、まず、図2に示されるように、陰電極3から陽電極2の先端部に向けてアーク柱と共に高温、高速ガス流が発生する(図2のflow1)。この高温、高速ガス流flow1は、ガス流入孔12から陽電極2の空洞内に流入する(図2のflow2)。さらに、空洞内の高温ガスflow2は、空洞内壁に沿って対流(図2のflow3)を発生させると考えられるので、かかる対流による空洞内壁への伝熱促進が期待できる。つまり、空洞内に対流した高温ガスflow3により、陽電極2の内壁に熱が伝達される(図3のheat1)。なお、陽電極2の空洞内に流入したガスによって空洞内の圧力が必要以上に高圧とならないように、圧力調整孔14からガスを流出させている(図2のflow4)。
さらに、高温ガスから陽電極2の内壁へ伝達された熱エネルギーheat1は、図3に示すように、陽電極材(タングステン)を介した熱伝導により外壁へと伝熱されることになる(図3のheat2)。
その後、図3に示すように、陽電極2の外壁表面からの熱放射heat3と、陽電極2外部のガス対流による熱伝達heat4とによって、熱エネルギーが放出される。
後述するように、熱放射量は表面温度の4乗に比例するため、図3に示す陽電極2の外壁表面からの熱放射(輻射)heat3は、陽電極2の外壁表面温度Toutが高温になるほど増大することになる。
一方、図3に示す周辺ガスを介した熱移動heat4は、陽電極2の外壁表面温度Toutが上昇することによりその周辺ガスとの間に生じる温度差に起因して発生する対流flow5(図2)を介して行われる。つまり、陽電極外壁表面の温度Tout(図3)が高くなるほど、陽電極周辺とのガスの温度差が大きくなり、熱エネルギーを持ったガスの対流flow5が促進されるため、熱伝達の効率が上昇することになる。なお、この熱移動heat4には、陽電極2の周辺ガスを介した熱伝導によって移動する熱エネルギーも含まれる。
このように、本発明では、陽電極2の空洞を利用した熱伝導(heat1〜4)を行っているため、熱エネルギーを、陽電極2の先端部だけに集中させることなく、陽電極2全体で効果的に分散させることが可能となる。
これにより、陽電極先端部P1(図1)の損傷を防止して陽電極の寿命を長くすること等が可能となる。さらに、陽電極2の内部に空洞を設けたことで陽電極2の軽量化が図られるため、陽電極の折れ曲がりを防止したり、組み立て作業を容易に行えるという効果も存在する。
4.熱の各移動段階(heat1〜4)についての説明
つぎに、図3に示す熱量の各移動段階(heat1〜4)について、ショートアーク放電ランプ(出力35kW)を用いた場合を例に説明する。
つぎに、図3に示す熱量の各移動段階(heat1〜4)について、ショートアーク放電ランプ(出力35kW)を用いた場合を例に説明する。
(1)「空洞電極内部の高温ガスによる熱伝導(heat1)」
図2に示すように、アーク放電が始まるとプラズマを含む高温、高速ガスflow1が発生する。さらに、この高温、高速ガスが陽電極2の空洞内に流入し(flow2)、空洞内壁に沿った対流flow3が発生する。つまり、図2のflow3に示すように、陽電極2の空洞内に流入したガスflow2は、ガス流入孔12から上昇して蓋部にぶつかった後、側面部の内壁に沿って下降してくると考えられる。
図2に示すように、アーク放電が始まるとプラズマを含む高温、高速ガスflow1が発生する。さらに、この高温、高速ガスが陽電極2の空洞内に流入し(flow2)、空洞内壁に沿った対流flow3が発生する。つまり、図2のflow3に示すように、陽電極2の空洞内に流入したガスflow2は、ガス流入孔12から上昇して蓋部にぶつかった後、側面部の内壁に沿って下降してくると考えられる。
これにより、陽電極2の空洞内が温度Tcu(例えば、2000〜3000°K)の高温ガス流体でほぼ均一に満たされる。このため、陽電極2の内壁に熱エネルギー(図3のheat1)が伝達され、陽電極2の内壁が温度Tin(図3)にほぼ一様に熱せられる。
なお、陽電極2の内壁への伝熱量Qinは、Qin=α(Tcu−Tin)Sinで表される。ここで、αは伝熱係数、Tinは空洞内壁の温度、Tcuは高温ガス流体の温度、Sinは空洞内壁の面積である。また、伝熱係数αは、流体の状態、流体の物性値、内壁表面の状態、内壁の形状、内壁の物性値などに依存する係数である。
(2)「電極材質を介した熱伝導(heat2)」
図3に示すように、空洞内壁に伝達された熱エネルギー(heat1)は、さらに陽電極材を介した熱拡散(heat2)によって伝熱される。円筒の径方向に流れる熱量Qは、円筒の熱抵抗をRHとし、空洞内壁の温度をTin、空洞外壁の温度をToutとすると、
で表される。
図3に示すように、空洞内壁に伝達された熱エネルギー(heat1)は、さらに陽電極材を介した熱拡散(heat2)によって伝熱される。円筒の径方向に流れる熱量Qは、円筒の熱抵抗をRHとし、空洞内壁の温度をTin、空洞外壁の温度をToutとすると、
さらに、熱抵抗RHは、円筒の内半径をrin、外半径をrout、円筒部分の長さをLとし(図3を参照)、陽電極材(タングステン)の熱伝導率をλすると、近似的にはL≫ rin , routとして、
で表される。
例えば、rout = 18 [mm], rin = 12 [mm], L = 80 [mm]であり、タングステン温度が1000K以上の場合に、λ≒ 100 [W/mK]としてRHを求めると、上記式(2)より、RH= 8.0×10‐3 [K/W] が得られることになる。
ここで、例えば、電源から供給される全エネルギー35kwの約60%が熱エネルギーとして陽電極の空洞内に運ばれたと仮定すると、定常状態ではQ≒21 [kJ/s]の熱流が空洞内に流入することになる。さらに、この陽電極の空洞内に運ばれた熱エネルギーの約60%の13[kJ/s]が電極径方向に伝達されると仮定すると、RH×Q≒100 [K]となるので、陽電極の外壁温度Toutは、図3に示す陽電極空洞の内壁温度TinをTin=3000 [K]とすると、上記式(1)より、Tout=Tin−RHQ≒2900[K]となる。
また、陽電極2の空洞に流入した熱エネルギーのうち、径方向に伝達される以外の熱エネルギー(上記仮定では、空洞内に流入する熱流によるエネルギーの40%である8[kJ/s])は、蓋部10や陽電極2の先端部P1の内壁に伝達される。
このように、陽電極2の空洞に流入した熱エネルギーは、陽電極材を介して陽電極2の内壁から外壁へ分散して伝達されることになる。
(3)「空洞型陽電極表面からの熱放射(heat3)」
図3に示す陽電極2の外壁からの熱放射(heat3)は、外壁表面温度Toutの上昇と共に、Toutの4乗に比例して増大する。例えば、陽電極2の側面部(面積S)からの熱放射量Qradは、次式で与えられる。
図3に示す陽電極2の外壁からの熱放射(heat3)は、外壁表面温度Toutの上昇と共に、Toutの4乗に比例して増大する。例えば、陽電極2の側面部(面積S)からの熱放射量Qradは、次式で与えられる。
ここで、5.67・10-8はステファン−ボルツマン定数である。また、垂直指向射出率εnは、物質表面における熱(光)放射の垂直方向に射出する割合を示す各物質に固有の値であり、物質の温度や形状にも依存する。例えば、タングステンWの場合、垂直指向射出率εnの値は、Tout=2000Kのときεn=0.2、Tout=2500Kのときεn=0.25、Tout=3000Kのときεn=0.3となる。
また、陽電極2の側面における面積Sは、rout=18 [mm], L=80 [mm]の場合、S=2πrout×L=9.05×10‐3 [m2] となり、上記式(3)より、タングステンで構成した陽電極2の側面部からの熱放射量Qradは、それぞれ、 Tout=2000Kのとき、Qrad=1.64 [kW]、Tout=2500Kのとき、Qrad=5.00 [kW]、Tout=3000Kのとき、Qrad=12.4 [kW]、となる。
このように、熱放射heat3を利用して、陽電極2の外壁から効率的に熱エネルギーを放出することができる。
(4)「陽電極2の表面から周辺ガスによって伝達される熱(heat4)」
陽電極2の外壁表面からの伝熱は、図3に示す熱放射(heat3)だけでなく、陽電極2の外部周辺にあるガスの熱伝導やガス対流による熱の輸送(heat4)が加わり、熱の移動がより促進される。これは、陽電極2の外壁表面温度Toutが高いと周辺ガスとの温度差が大きくなり、周辺ガス(図2のflow5)の対流が発生するためである。なお、図2に示すように、周辺ガスflow5は、アーク放電時に発生した高温、高速ガスの影響を受けるため、斜め上方に移動することになる。
陽電極2の外壁表面からの伝熱は、図3に示す熱放射(heat3)だけでなく、陽電極2の外部周辺にあるガスの熱伝導やガス対流による熱の輸送(heat4)が加わり、熱の移動がより促進される。これは、陽電極2の外壁表面温度Toutが高いと周辺ガスとの温度差が大きくなり、周辺ガス(図2のflow5)の対流が発生するためである。なお、図2に示すように、周辺ガスflow5は、アーク放電時に発生した高温、高速ガスの影響を受けるため、斜め上方に移動することになる。
陽電極2の周辺で対流するガスflow5による熱流q[kJ/s]は、q=h(Tout-Tgas)で表される。ここで、熱伝達率hは、ガス流速、電極形状などに依存する値であり、Tgasは、陽電極2の外壁表面から所定距離だけ離れた位置のガス温度である。
このように、陽電極2の外壁表面温度Toutを全体的に上昇させることで、周辺の対流ガス(図2のflow5)を利用した熱放出heat4によっても、効率的に熱エネルギーを放出することができる。
5.その他の実施形態(図4)
なお、上記実施形態においては、ガス流入孔12(図1)を同径の孔に成形したが、図4Aに示すように、ガス流入孔12’をテーパ状にしてもよい。図4は、他の実施形態における放電ランプ用陽電極2の構造を示す図である。これにより、アーク放電時に発生するガスを、より効果的に空洞内に案内することが可能となる。なお、図4Aに示すガス流入孔12’は、陽電極2の内壁から外壁に向かって径が広がるようなテーパとしたが、逆に、陽電極2の内壁から外壁に向かって径が狭まるようなテーパとしてもよい。
なお、上記実施形態においては、ガス流入孔12(図1)を同径の孔に成形したが、図4Aに示すように、ガス流入孔12’をテーパ状にしてもよい。図4は、他の実施形態における放電ランプ用陽電極2の構造を示す図である。これにより、アーク放電時に発生するガスを、より効果的に空洞内に案内することが可能となる。なお、図4Aに示すガス流入孔12’は、陽電極2の内壁から外壁に向かって径が広がるようなテーパとしたが、逆に、陽電極2の内壁から外壁に向かって径が狭まるようなテーパとしてもよい。
なお、上記実施形態においては、圧力調整孔14(図1)を陽電極2の後端部P3に位置する蓋部6に設けるようにしたが、他の部分に設けるようにしてもよい。例えば、図4Bに示すように、圧力調整孔14’を、陽電極2の側面部P2に設けるようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では、圧力調整孔14(図1)を複数設けるようにしたが、圧力調整孔14を1つだけ設けるようにしてもよい。また、アーク放電時に発生するガスを空洞内に案内することができるのであれば、圧力調整孔14を設けなくてもよい。
なお、上記実施形態においては、各部材の接合を溶接(TIG溶接)により行っているが、高温下の使用に耐えられる方法であれば、ロウ付け、焼き嵌め、叩き込みなど他の方法を用いても接合してもよい。
なお、上記実施形態においては、陽電極2の空洞10を鋼材を切削することにより成形しているが、鋳造により成形するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、陽電極2の蓋部8と陽電極支持部4を別々に成形して接合するようにしているが、これらを鋳造により一体的に成形するようにしてもよい。
なお、上記実施形態においては、陽電極2本体や陽電極支持部4の材質としてタングステン用いているが、モリブデン、タンタル、ニオブ、レニウム、オスミウム、イリジウム、ルテニウム、ハフニウム、およびこれらの合金などの他の高融点金属を用いてもよい。
なお、上記実施形態においては、図1Aに示すように、陽電極2の先端部P1を半円状に形成したが、例えば、尖形に形成したり、平面や台形状に形成する等、他の形状に形成してもよい。
なお、上記実施形態においては、図1に示すように、陽電極2の輪郭およびその内部に設ける空洞を何れも円柱形状としたが、かかる形状に限定されるものではなく、陽電極2の輪郭およびその内部に設ける空洞の形状は、それぞれ、ガス流入孔12から流入したガスが有する熱を内壁から外壁へ伝導して、外壁から熱を放出できるような形状であればよい。
例えば、陽電極2の輪郭を三角錐の形状とし、その内部に円柱形状の空洞を設けてもよく、逆に、陽電極2の輪郭を円柱形状とし、その内部に三角錐の形状をした空洞を設けてもよい。
なお、上記実施形態においては、ショートアーク放電ランプに用いる陽電極について説明したが、ロングアーク放電ランプなどの他の放電ランプに本発明の陽電極を適用してもよい。
2・・・・陽電極
3・・・・陰電極
4・・・・陽電極支持部
6・・・・器部分(陽電極)
8・・・・蓋部分(陽電極)
10・・・・空洞
12・・・・ガス流入孔
14・・・・圧力調整孔
P1・・・・先端部(陽電極)
P2・・・・側面部(陽電極)
P3・・・・後端部(陽電極)
3・・・・陰電極
4・・・・陽電極支持部
6・・・・器部分(陽電極)
8・・・・蓋部分(陽電極)
10・・・・空洞
12・・・・ガス流入孔
14・・・・圧力調整孔
P1・・・・先端部(陽電極)
P2・・・・側面部(陽電極)
P3・・・・後端部(陽電極)
Claims (10)
- 高融点金属で構成される放電ランプ用陽電極であって、
前記陽電極の内部に、空洞を設け、
前記陽電極の先端部に、アーク放電時に発生するガスを前記空洞内に流入させるためのガス流入孔を設けた、
ことを特徴とする放電ランプ用陽電極。 - 請求項1の放電ランプ用陽電極において、
前記ガス流入孔の幅を、前記陽電極の内部に設けた空洞の幅よりも狭くした、
ことを特徴とする放電ランプ用陽電極。 - 請求項1または請求項2の放電ランプ用陽電極において、
前記ガス流入孔および前記空洞を、前記ガス流入孔から流入させたガスによって陽電極の空洞において対流が生じるような形状とした、
ことを特徴とする放電ランプ用陽電極。 - 請求項1〜請求項3の何れかの放電ランプ用陽電極において、
前記陽電極の側面部における肉厚を略同じにすることにより、陽電極の内部に前記空洞を設けた、
ことを特徴とする放電ランプ用陽電極。 - 請求項1〜請求項4の何れかの放電ランプ用陽電極において、
前記陽電極の内部に設ける空洞を、前記ガス流入孔から流入したガスが有する熱を内壁から外壁へ伝導して、外壁から熱を放出できるような形状にした、
ことを特徴とする放電ランプ用陽電極。 - 請求項1〜請求項5の何れかの放電ランプ用陽電極において、
前記ガス流入孔を、テーパ状にした、
ことを特徴とする放電ランプ用陽電極。 - 請求項1〜請求項6の何れかの放電ランプ用陽電極において、
前記陽電極に圧力調整孔を設けた、
ことを特徴とする放電ランプ用陽電極。 - 請求項7の放電ランプ用陽電極において、
前記圧力調整孔を前記陽電極の後端部に設けた、
ことを特徴とする放電ランプ用陽電極。 - 請求項1〜請求項8の何れかの放電ランプ用陽電極を備えた放電ランプ。
- 高融点金属で構成される放電ランプ用陽電極の製造方法であって、
前記陽電極を、内部に空洞を設けた器部分と、蓋部分とにより形成し、
前記陽電極の器部分に、アーク放電時に発生するガスを前記空洞内に流入させるためのガス流入孔を設け、
前記陽電極の器部分と蓋部分とを接合した、
ことを特徴とする放電ランプ用陽電極の製造方法。
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