JP2011249027A - 放電ランプ - Google Patents

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Abstract

【課題】電極特性に影響を与えることなく、様々な固体を組み合わせた電極を構成する。
【解決手段】ショートアーク型放電ランプにおいて、高融点の金属部材40と熱伝導率の高い金属部材50とをSPS接合させることによって、陽極30を構成する。円錐台形状の金属部材40と円柱形状の金属部材50とを接合することにより、接合面Sを、電極軸Xに対して垂直な方向、すなわち陽極断面径方向に沿って形成する。接合面S付近における結晶粒の径は、接合面に沿って均一であり、接合面垂直方向に沿ってほぼ均一となっている。
【選択図】図2

Description

本発明は、露光装置等に利用される放電ランプに関し、特に、ショートアーク型放電ランプなど高出力放電ランプの電極構造に関する。
ショートアーク型放電ランプでは、高輝度の光を基板など露光対象物に照射する。露光対象物の大型化、さらにスループット向上のため、放電ランプの高出力化が要求されており、それに伴って定格消費電力の増加が求められる。大電力化すると、従来の電極構造では、電子放出、熱放出、耐久性などに影響が生じる。そのため、結晶、種類などの異なる金属を組み合わせた電極構造が求められている。
例えば、定格電力を大きくすると、陰極先端部における電流密度が大きいために電極消耗が激しくなり、アーク放電の輝点が動いて不安定な放電となる。そこで、アーク放電を安定化させる構成として、直流放電処理装置によって陰極先端部を溶融し、先端部の結晶構造を粗大化させる電極構造が知られている(特許文献1参照)。
また、定格電力を大きくすると、ランプの電極間に流れる電流量が増加し、電極温度が上昇する。特に、陽極先端部が高温状態になって、時間経過とともに陽極先端部が溶融、蒸発する。その結果、不安定なアーク放電、および陽極溶融による金属の管内表面付着などによって発光効率が低下するとともに、電極消耗によってランプ寿命が低下する。
このような過熱による電極溶融を防ぐため、金属の電極本体よりも熱伝導率が高く、融点の低い金属材料を本体内部空間に封入する電極構造が知られている(特許文献2参照)。そこでは、有底筒状の金属部材に蓋部材を溶接し、密閉空間を設けた電極を形成する。
特開2002−110083号公報 特開2004−259644号公報
電極表面付近の結晶構造、金属組成を変えても、熱伝導性、導電性、耐久性などの電極特性を全体的に大きく改善させることはできない。特に、大出力型放電ランプの場合、熱放出特性の大きな向上は望めない。しかしながら、同種類、あるいは異種類の部材を組み合わせて電極を構成すると、部材間の接合状態が耐久性、熱伝導性等に影響を与える。
例えば、電子ビーム溶接などの溶接によって金属部材を接合し、電極を構成する場合、接合面に沿って金属結晶の径が肥大化し、径の大きさが不均一となる。また、電極軸方向に沿った結晶径の変化が不連続となり、接合部分に結晶境界が現れる。そのため、電極強度が接合部分において低下する。
また、結晶径の大きさなど金属組織が接合面付近で不均一、あるいは不連続である場合、電極軸方向に沿った熱の伝導特性が接合面全体で均一化せず、電極内部の熱輸送がうまく働かない。その結果、電極内部に局所的な過熱状態が発生し、電極消耗を早める。
したがって、電極特性に悪影響を与えないように、複数の部材を組み合わせて電極を構成することが求められる。
本発明の放電ランプは、放電管と、放電管内に配置される一対の電極とを備え、例えば、ショートアーク型放電ランプ(特に大出力放電ランプ)として構成される。そして、放電ランプの少なくとも一方の電極が、複数の固体部材を固相接合させた電極によって構成され、少なくとも1つの固体部材は金属部材から成る。例えば、複数の金属部材を接合することが可能であり、電極を構成する固体部材の数は任意である。また、固体部材同士を直接接合し、あるいは、部材間に接合性能等を向上させる部材を介在させて接合してもよい(この介在部材を複数の固体部材とみなすことも可能である)。
電極本体を構成する複数の固体部材には、電極支持棒に支持される固体部材(以下では、後端側固体部材という)と、電極先端面を有する固体部材(以下、先端側固体部材という)とが含まれており、後端側固体部材と先端側固体部材との間で固相接合することにより形成される。固相接合では、固体部材間の接合面を接触させ、加圧、加熱しながら固体部材同士を接合する。
本発明では、金属部材の接合面を形成する結晶粒(以下、接合面結晶粒という)の少なくとも一部が接合により変形する一方、それ以外の結晶粒が接合前後において実質的に変形しない。例えば接合面結晶粒は、結晶粒の変形、あるいは粒界移動が接合面(接合に寄与する面)の全体的に渡って生じ、結晶粒の変形は接合に寄与する変形となっている。特に、接合面が超平滑面でない場合、大きな結晶粒が形成され易く、微小な隙間が生じる。
一方、接合面結晶粒以外の金属結晶粒では、接合面付近において、接合に起因する変形が接合面垂直方向に沿って実質的に生じていない。ここで、「実質的に生じていない」とは、接合に直接寄与する結晶粒変形(結晶粒生成)、粒界移動が生じておらず、接合前の結晶粒は接合後においてほとんど変形していないことを意味する。
このような固相接合、すなわち、接合面結晶粒を直接接合に利用し、それ以外の金属組織(結晶粒)を接合の影響から除外する部材間接合により、接合後における金属部材の接合面付近における結晶径は、均一特性を備えている。すなわち、金属部材の結晶粒は、前記金属部材の接合面に沿ってほぼ均一となり、また、接合面垂直方向に沿ってほぼ均一になっている。
したがって、接合面付近においては、電子ビーム溶接などのように、一次、二次再結晶による肥大化結晶粒が生成し、肥大化結晶粒が接合面垂直方向に沿って層状に形成されることがなく、結晶径などの金属組織特性は、接合面方向、接合面垂直方向に関して不連続に変化していない。
これによって、接合面における金属結晶組織については、耐久性、熱伝導性に関してバランスのよい優れた構成になっている。接合面では確実な固相接合によって必要な強度が得られる一方、熱輸送、導電性については、接合面上のみ他の金属組織と結晶特性が異なるだけであるため、その能力が一体構造の電極と比べて著しく低下することがない。
このように、接合面付近において導電性、熱伝導性、耐久性が安定しているため、熱伝導性、耐久性などが局所的に低下し、急激な部分的電極消耗が生じる恐れがなく、熱伝達性、電子放出特性、耐久性などを向上させるように異種あるいは同種の固体部材を選択し、電極形状を自由に設計しながら接合することが可能であり、優れた特性をもつ電極構造を得ることができる。
接合面における結晶粒変形は、部分的、局所的に偏在するのを避ける条件を満たす範囲で全般的に形成されていればよい。固相接合方式に関しては、熱拡散、電界拡散等を利用した固相接合法を適用すればよい。固体部材の接合面の滑らかさの程度は様々であり、超平滑面ではない場合、微小な隙間が接合面に生じる。微小な隙間だけを対象に加熱して結晶粒変形を生じさせないようにすることを考慮すれば、放電プラズマ焼結方式による接合(SPS接合)によって固体部材同士を接合するのが好ましい。
熱輸送効果、耐久性など目的に応じて固体部材の組み合わせを決定すればよく、電極形状も目的に応じて定めればよい。例えば、ショートアーク型放電ランプなどでは、円錐台形状の電極先端部と円柱状の電極胴体部によって電極が構成されているが、接合面は、固体部材の組み合わせ、形状に応じて電極先端部、あるいは電極胴体部に位置する。
固体部材の組み合わせとしては、先端側固体部材と電極側固体部材の2つの組み合わせで電極本体を構成してもよい。例えば、円柱状部分と円錐台形状部分からなる電極形状の場合、電極先端部と電極胴体部の一部を構成する固体部材と残りの電極胴体部を構成する固体部材を接合することも可能であり、また、電極胴体部と電極先端部の一部を構成する固体部材と残りの電極先端部を構成する固体部材を接合することができる。あるいは、電極先端部と電極胴体部をそれぞれ別々の固体部材で構成し、接合しても良い。
電極軸方向に沿った熱輸送効果を高めることを考慮すれば、熱伝導率の異なる固体部材を接合し、熱伝導率の相対的に高い固体部材によって電極支持棒側の電極胴体部を構成するのが好ましい。例えば、純タングステンなどの高融点固体部材を電極胴体部として構成することができる。一方、自由な電極形状を構成することを目的として、同じ種類、同じ特性の固体部材同士を接合させて電極を形成することも可能である。
電極先端部全体を一つの固体部材で構成する場合、円錐台形状の電極先端部と、円柱形状接合部によって先端側固体部材を構成することができる。このような電極構造にすると、胴体部に内部空間を形成する、あるいは放熱フィンを周方向に形成するなど、胴体部の構成を比較的自由に設計することができる。一方、電極先端部の一部だけを1つの固体部材で構成してもよい。
通常、電極形状は電極軸を中心として対称的であり、熱、電流は電極軸に沿った移動となる。したがって、電極軸に沿って固体部材を適所、適材に配置するのが望ましく、接合面が電極軸垂直方向に沿って形成されるように、固体部材を固相接合させるのがよい。例えば、固相接合させた後に電極を切削成形する場合、電極軸垂直方向に沿って接合面を形成すると、作業中の電極安定性が優れたものになる。
また、陽極を鉛直上側に配置させた放電ランプにおいて、タングステンなどの電極先端部に熱伝導率の高い固体部材を接合させる場合、電極先端面から接合面まで電極軸方向の距離が等しくなる。そのため、電極軸に沿った熱の輸送にバラツキがなく、ランプ点灯中の温度分布は電極軸を中心として対称的な分布となり、局所的な過熱による電極摩耗が生じない。
電極の過熱を防ぐことを考慮すれば、熱輸送とともに熱放出効果を上げるのが望ましい。接合する固体部材の接触面を完全な平坦(超平滑面)にしなければ、接合面に沿って隙間が接合後においても部分的に残り、ランプ点灯中に隙間から熱が放出される。したがって、接合面に沿って隙間が形成されるような接触面をもつ固体部材同士を固相接合させるのがよい。例えば、電極表面付近に楔を周方向に沿って形成し、隙間を設けてもよい。
電極の製造工程では、例えば、SPS接合によって複数の固体部材が接合可能である。この場合、出来るだけ接合面に送る電流密度を高めることによって、接合面を局所的に加熱するのが望ましい。したがって、金属部材の接合面に沿った面積(接合に寄与する面積)をS01、前記金属部材の充填部分における電極軸垂直方向に沿った断面積をS02とすると、S02>S01を満たすように構成するのが望ましい。例えば、接合面付近を円錐形状にして接合面面積を縮小してもよい。あるいは、電極内部に密閉空間を設け、接合面を縁部分として構成してもよい。接合部分(すなわち加熱部分)が電極軸に関して均一分布にすることで接合時の強度バランスが優れることを考慮し、略円柱状の電極胴体部の径方向の断面積において最小となる、すなわち、接合面が円状、あるいは環状となるように、S01を構成するのが望ましい。
接合面の平滑程度に関係なく固体部材間の接合状態を向上させるため、軟らかい部材を間に挟んで固体部材同士を接合させてもよい。接合強度を上げることを考慮すれば、介在固体部材を介して金属部材を他の固体部材と接合するのが望ましく、介在固体部材は、接合する固体部材よりも軟らかい部材として構成される。ここで、「軟らかい」部材とは、例えば、硬度が低いことや、延性や展性が富む(高い)ことで、接合時において固体部材よりも変形が大きくなる部材のことをいう。
例えば、金属部材がタングステンである場合、タングステンよりも軟らかい金属として、モリブデン、タンタル、バナジウム、ニオブ、チタン、金、プラチナ、レニウムの少なくともいずれか1つを含むように構成すればよい。また、熱伝導性、導電性を安定させることを考慮し、介在固体部材にタングステンを含む合金にするのがよい。
電極構造としては、凹状金属部材を設け、前記複数の固体部材を接合することによって電極内部に密閉空間を形成し、点灯時に溶融する低融点金属を密閉空間に挿入することによって、電極軸方向の熱輸送効率を向上させることが可能である。
この場合、電極本体が形成された後、電極支持棒が後端側固体部材に接合される。このとき、電極支持棒側からの圧力によって、後端側固体部材が変形し、その圧力が接合面に伝わることによって接合面剥離が生じる恐れがある。
これを防ぐため、凹状金属部材の接合面は、導電性の電極支持棒に支持される後端側固体部材の前記電極支持棒との接合先端部よりも、ランプ中心側(他方の電極側)に位置させることが望ましい。接合面においては、密閉空間に通じる隙間が生じないように接合面を構成する(例えば、金属部材の凹部壁面と端面両方に接合面を構成する)のが望ましい。また、接合面へ溶融金属が入り込むのを防ぐことを考慮し、凹状金属部材の接合面が、前記点灯時に溶融する点灯時溶融金属の凝固範囲よりも電極支持棒側に位置するように構成するのが望ましい。
電極自体の放熱効果を高めるためには、表面積を増加させるのが好ましい。複数の固体部材を接合してフィン形状、スライス形状に電極を形成することにより、従来の製造では難しかった深溝の電極構造が可能となる。
例えば、サイズ、径の異なる複数の板状固体部材を備え、電極軸方向に沿って電極径が変化するように前記複数の板状固体部材を接合させてもよい。径の異なる板状の固定部材を接合することによって、柱状電極胴体部に対して電極軸垂直方向の電極径が断続的に増加、減少する電極を構成することができる。
あるいは、電極軸方向に沿ってフィンを配設した電極形状にすることも可能である。例えば、複数の固体部材として、電極先端面を有する電極先端部材と、電極先端部材よりもサイズ、径の小さい筒状部材から径方向に延在する複数のフィンが周方向に所定間隔で並ぶ胴体部材とを用意し、前記電極先端部材と前記筒状部材を同軸的に接合させた電極を構成してもよい。これにより、柱状電極胴体部には、深い溝が電極軸方向に沿って形成可能となる。また、フィンと電極先端部材も接合させる構成としてもよい。
このようなフィン形状を有する電極の場合、電極先端部材の接合面が溝の終端面の一部を構成するようにフィンを形成し、フィンを放電から保護し、放電により過熱されたガスが接合部に直接入り込むのを防ぐのがよい。複数のフィンは、前記電極先端部材の接合面から突出しない径方向サイズをもつように形成される。
また、放熱性を高めるためにフィンの数を多くすると、電極胴体部分の断面積が小さくなり、電極軸方向の熱伝導が低下する。そのため、胴体部材の電極軸垂直方向に沿った断面積をS11、前記複数のフィンの間の溝を埋めた場合の仮想胴体部材の電極軸垂直方向に沿った断面積をS11とすると、S12×2/3≦S11を満たすように構成するのがよい。
本発明の他の局面における放電ランプ用電極は、放電ランプの放電管内に配置され、電極先端面を含む先端側固体部材と電極支持棒に支持される後端側固体部材とを含む複数の固体部材から構成される電極であって、前記複数の固体部材を、前記先端側固体部材と前記後端側固体部材の間で固相接合することによって形成され、前記複数の固体部材のうち少なくとも1つが金属部材であって、前記金属部材の接合面を形成する接合面結晶粒の少なくとも一部が、接合により変形し、前記接合面結晶粒以外の金属結晶粒については、接合面付近において、接合による変形が接合面垂直方向に沿って実質的に生じていないことを特徴とする。
本発明の他の局面における放電ランプ用電極の製造方法は、電極先端面を含む先端側固体部材と電極支持棒に支持される後端側固体部材とを含み、少なくとも1つが金属部材である複数の固体部材を、前記先端側固体部材と前記後端側固体部材の間で固相接合させる製造方法であって、前記金属部材の接合面を形成する接合面結晶粒の少なくとも一部が、接合により変形し、前記接合面結晶粒以外の金属結晶粒については、接合面付近において、接合による変形が接合面垂直方向に沿って実質的に生じないように、前記複数の固体部材を固相接合させることを特徴とする。
接合面結晶粒だけ接合に寄与させる固相接合方法としては、接合面の微小隙間に局所的加熱を与えるSPS接合を適用するのが望ましい。
本発明の他の局面における放電ランプ用電極、あるいは放電ランプは、上述したような固相接合、すなわち、実質的接合面結晶粒だけによる面接合による電極だけでなく、融接など他の溶接の方法によって複数の固体部材を接合した電極も包含する。放電ランプの場合、放電管と、前記放電管内に配置される一対の電極とを備え、少なくとも一方の電極が、複数の固体部材を溶接することによって形成される電極であり、前記複数の固体部材のうち少なくとも1つが金属部材である。
そして、放電ランプ用電極、あるいは放電ランプは、上述したような特徴、すなわち、介在固体部材を設ける構成、密閉空間を設けて電極支持棒接合部、金属凝固範囲に対する接合面の位置を調整する構成、電極表面積を増加させたスライス構造、フィン構造を備えた電極の少なくともいずれか1つの構成を備える。
このような本発明の他の局面における放電ランプ用電極、あるいは放電ランプは、固相接合において接合面を傾斜化させた電極を備えることが可能である。すなわち、放電管と、前記放電管内に配置される一対の電極とを備え、少なくとも一方の電極が、複数の固体部材を固相接合することによって形成される電極であり、前記複数の固体部材のうち少なくとも1つが金属部材であって、金属部材の結晶径が部材間の接合面に沿ってほぼ均一であり、金属部材の接合面付近において金属結晶が接合面垂直方向に沿って傾斜化している。接合方式としては、SPS接合が可能であり、加熱、加圧条件等を傾斜化させるように設定する。
本発明によれば、電極特性に影響を与えることなく、様々な固体を組み合わせた電極を構成することができる。
第1の実施形態であるショートアーク型放電ランプを模式的に示した平面図である。 陽極の概略的断面図である。 放電プラズマ焼結装置を示した図である。 第2の実施形態における放電ランプの陽極断面図である。 第3の実施形態における放電ランプの陽極断面図である。 第4の実施形態における放電ランプの陽極断面図である。 第5の実施形態である放電ランプの陽極断面図である。 第6の実施形態における放電ランプの陽極断面図である。 第7の実施形態における放電ランプの陽極を上から見た平面図である。 第7の実施形態における放電ランプの陽極の側面図である。 第7の実施形態における放電ランプの陽極断面図である。 第8の実施形態における放電ランプの陽極断面図である。 陽極の結晶径均一の接合状態を表す電子顕微鏡写真を示した図である。 介在金属部材を金属部材間に介在させた陽極の結晶径均一の接合状態を表す電子顕微鏡写真を示した図である。 陽極の傾斜化している接合状態を表す電子顕微鏡写真を示した図である。 電子ビーム接合による陽極の接合状態を表す電子顕微鏡写真を示した図である。
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態であるショートアーク型放電ランプを模式的に示した平面図である。
ショートアーク型放電ランプ10は、パターン形成する露光装置(図示せず)の光源などに使用可能な放電ランプであり、透明な石英ガラス製の放電管(発光管)12を備える。放電管12には、陰極20、陽極30が所定間隔をもって対向配置される。
放電管12の両側には、対向するように石英ガラス製の封止管13A、13Bが放電管12と一体的に設けられており、封止管13A、13Bの両端は、口金19A、19Bによって塞がれている。放電ランプ10は、陽極30が上側、陰極20が下側となるように鉛直方向に沿って配置されている。後述するように、陽極30は、2つの金属部材40、50から構成されている。
封止管13A、13Bの内部には、金属性の陰極20、陽極30を支持する導電性の電極支持棒17A、17Bが配設され、金属リング(図示せず)、モリブデンなどの金属箔16A、16Bを介して導電性のリード棒15A、15Bにそれぞれ接続される。封止管13A、13Bは、封止管13A、13B内に設けられるガラス管(図示せず)と溶着しており、これによって、水銀、および希ガスが封入された放電空間DSが封止される。
リード棒15A、15Bは外部の電源部(図示せず)に接続されており、リード棒15A、15B、金属箔16A、16B、そして電極支持棒17A、17Bを介して陰極20、陽極30の間に電圧が印加される。放電ランプ10に電力が供給されると、電極間でアーク放電が発生し、水銀による輝線(紫外光)が放射される。
図2は、陽極の概略的断面図である。
陽極30は、電極先端面40Sを有する金属部材(先端側固体部材)40と、金属部材40と接合する金属部材(後端側固体部材)50から構成される電極であり、金属部材40は、電極先端面40Sを含む円錐台形状部分40Aと、円柱状の金属部材50と同一径を有し、金属部材50と接合する円柱状形状部分40Bによって構成される。金属部材50は、後端面50Bにおいて電極支持棒17Bによって支持される。
金属部材40は、純タングステンなどの高融点、あるいはタングステンを主成分とする合金によって構成される。一方、円柱状金属部材50は、金属部材40よりも熱伝導率の高い金属(例えば、大形状可能な純タングステン、モリブデン、ゲッター効果のあるタンタル、熱伝導性の高い窒化アルミ、カーボン素材など)を含有する金属によって構成される。
金属部材40、50は、放電プラズマ焼結(SPS焼結)方式に従って固相接合している。本実施形態では、接合時の過熱、加圧を調整することにより、接合面を構成する金属部材40、50の結晶粒となる接合面結晶粒が接合に寄与するように変形し、それ以外の金属組織内では、接合に起因する結晶変形が電極軸方向に沿って実質的に生じてない。
金属部材40、50は、それぞれ金属粉末を焼結することによって固形化されており、金属組織は一次再結晶化構造となっている。一方、金属部材40、50を固相接合して電極30を構成すると、金属部材40、50の接合面S付近においては、電極軸方向、接合面方向に沿って、二次再結晶による結晶粒肥大化、粒界移動などは生じておらず、電極軸Xに沿って結晶組織が肥大化、変形した接合層が形成されない。
すなわち、金属部材40、50の接合面にて対向して現れていた(露出していた)接合面結晶粒同士が接合変形するだけであって、それ以外の金属結晶粒については、接合面方向、垂直方向に関しても、接合に寄与する変形、再結晶化、粒界移動がほとんど生じない。このような固相接合により、接合後における前記金属部材の接合面付近における結晶径が、前記金属部材の接合面に沿ってほぼ均一となり、また、接合面垂直方向に沿ってほぼ均一となっている。
このような接合面Sをもつ金属組織を形成することにより、熱伝導特性、導電性については、接合面Sに沿ってバラツキが生じない。ランプ点灯によって高温になる電極先端面40S(1000℃以上)から電極支持棒17Bに向けて熱が輸送される間、陽極内部の温度分布は、電極軸Xを中心として対称的な分布となり、熱輸送は接合面Sによる影響を殆ど受けない。
図3は、放電プラズマ焼結装置を示した図である。
放電プラズマ焼結(SPS)による接合法は、成形体の粒子間隙にパルス状の電気エネルギーを直接投入し、火花放電現象により瞬時に発生する放電プラズマの高温エネルギーを熱拡散、電界拡散などへ適用した接合方法である。
図3の放電プラズマ焼結装置60は、真空チャンバー65を備え、真空チャンバー65内部に設けられた上部パンチ80A、下部パンチ80Bおよびグラファイト製ダイ80の間に、図2に示した形状をもつ金属部材40、50がそれぞれ接合させる面を接触させた状態で設置される。金属部材40、50は、金属粉体を焼結して固形化された後、切削などの金属加工処理によって成形されている。なお、金属部材40、50を接合させた後に、切削などにより成形してもよい。
グラファイト製の上部パンチ80A、下部パンチ80Bは、上部パンチ電極70A、下部パンチ電極70Bとそれぞれ接続されている。装置内を真空雰囲気にした後、パルス電源90によって上部パンチ80A、下部パンチ80Bの間に電圧が印加される。
そして、通電とともに、加圧機構(図示せず)によって上部パンチ80A、下部パンチ80Bの間に圧力が加えられる。通電による放電プラズマによって所定の焼結温度まで昇温された後、圧力が加えられた状態で一定時間保持する。これにより、図2に示す形状をもつ陽極が得られる。圧力、焼結温度は、上記接合状態が実現されるように定められ、例えば、圧力50〜100MPa、加圧時間5分〜20分、接合面付近の焼結温度は1600℃〜1800℃の範囲に定められる。
このように本実施形態によれば、ショートアーク型放電ランプ10の陽極30が、高融点の金属部材40と熱伝導率の高い金属部材50をSPS接合させることによって構成される。円錐台形状の金属部材40と円柱形状の金属部材50とを接合することにより、接合面Sは、電極軸Xに対して垂直な方向、すなわち陽極断面径方向に沿っている。
ランプ点灯中、電極先端面40S付近は非常に高温となるが、金属部材50によって先端部の熱は効果的に電極支持棒側へ輸送される。これにより、電極過熱による電極消耗を防ぐことができる。また、接合面Sに沿った結晶粒に対して接合に起因する結晶変形が生じる一方、他の結晶粒については接合による再結晶、肥大化、変形、粒界移動などがほとんど生じない。
よって、電極軸Xに垂直な接合面Sにおいて熱伝導性、導電性等が全体的に等しく、バラツキのない状態となる。その結果、電極軸に沿った熱輸送が陽極内部全体で生じ、電極内部で局所的に過熱する恐れがない。
次に、図4を用いて第2の実施形態である放電ランプについて説明する。第2の実施形態では、金属部材間に接合強度を高める金属部材(以下、介在金属部材という)が設けられている。それ以外の構成については、第1の実施形態と実質的に同じである。
図4は、第2の実施形態における放電ランプの陽極断面図である。
陽極130は、金属部材140と金属部材150を固相接合することによって形成された電極である。そして、金属部材140と金属部材150との間には、接合をより確実にする介在金属部材155が間に介在している。
介在金属部材155は、タングステンと、タングステンよりも軟らかい(延性などの高い)金属(例えば、モリブデン、バナジウム、ニオブ、チタン、金、タンタル、プラチナ、レニウム、など)との混合体を板状、箔状に形成した部材であり、金属部材140、150よりも軟らかい。
軟らかいため、金属部材140、150を直接接合させるよりも接合性能が高くなり、金属部材140、150の接合面があまり平滑でなくても、良好な接合状態を維持することができる。また、タングステンが含有されているため、熱伝導性、導電性が電極全体として不均一となりにくい。
このように第2の実施形態によれば、接合強度を高める介在金属部材を挟んで金属部材が接合される。これにより、電極の接合強度がより一層高まる。特に、金属部材の接合面が超平滑面でない微小な凹凸を含む場合においても、確実に接合させることができる。なお、介在金属部材155としては、電極特性が安定することを考えてレニウム、タングステンを混合した金属部材が好ましいが、タングステンを含有させない金属部材を介在させるように構成してもよい。
次に、図5を用いて第3の実施形態である放電ランプについて説明する。第3の実施形態では、陽極内部に密閉空間が形成され、溶融金属が密閉空間に封入される。それ以外の構成については、第1の実施形態と実質的に同じである。
図5は、第3の実施形態における放電ランプの陽極断面図である。
陽極230は、筒状凹部240Pが形成される金属部材240と、電極支持棒217Bに接合される金属部材250から構成されている。金属部材240の環状周縁部分240Wが金属部材250と接合している。金属部材250の接合部分には段差が形成されており、金属部材240の周縁部分240Wに合わせて溝が周方向に形成されている。
電極支持棒217Bは、陽極250を成形した後、金属部材250の嵌合部255に嵌められて接合される。接合面Sは、嵌合部255の先端部分よりもランプ中心側に位置する。これにより、電極支持棒217Bを嵌合させるときに金属部材250が全体的に変形し、接合部分が剥離するのを防ぐ。
金属部材240、250の間に形成された密閉空間245には、低融点の溶融金属が封入されている。溶融金属はランプ点灯時に溶融し、密閉空間245内で熱の循環が電極軸Xに沿って生じる。接合面Sは凝固端面(上端)よりも電極支持棒側に位置するため、溶融金属が接合面Sに入り込む恐れがない。
また、接合面Sには密閉空間245に通じる隙間を設けず、凹状金属部材240の凹部側面240Tおよび周縁部分240Wが金属部材250と接合し、金属部材金属部材250の内表面が接合面Sよりもランプ中心側に突出している。そのため、溶融金属が接合面S付近に入り込むのを確実に防止する。
このように第3の実施形態によれば、陽極内部に密閉空間が形成され、ランプ点灯時に溶融する金属が封入されている。これにより、陽極先端側から電極支持棒側への熱輸送が効果的に発揮される。
また、密閉空間が形成されるため、金属部材250の接合面Sに沿った断面積に対し、接合面断面積(環状である周縁部分240Tの面積)の方が小さくなる。これにより、接合時の加熱が局所的、かつ電極軸に対して均一な分布となり、より効果的な接合を実現することできる。一般的には、接合面面積が金属部材断面積より小さくなるように構成すればよい。
次に、図6、図7を用いて第4、第5の実施形態である放電ランプについて説明する。第4、第5の実施形態では、溶融金属に接触する突起部が設けられる。それ以外の構成については、第3の実施形態と実質的に同じである。
図6は、第4の実施形態における放電ランプの陽極断面図である。図7は、第5の実施形態である放電ランプの陽極断面図である。
図6に示すように、陽極330は、金属部材340、350から構成されており、金属部材350には、柱状金属突起部材390が電極軸Xに沿って固相接合されている。ここで、柱状金属突起部材390は、切削により成形することで金属部材350と一体としても良い。突起部材390の先端部は溶融金属370と接する。突起部材390の熱伝導性、融点は、タングステンよりも低く、溶融金属370よりも高い。
このような突起部材390を設けることによって、熱輸送効率が高まる。また、突起部材390の材料を、熱伝導性、融点の観点から任意に選定することが可能となる。なお、突起部材390を金属部材340に当接させてもよい。
図7に示す陽極330Aでは、金属部材340に突起部材390Aが固相接合されている。これによって、熱輸送がよりランプ点灯後早い段階で進行し、金属部材340の強度が高まる。なお、突起部材390Aを金属部材350に当接させてもよい。
次に、図8を用いて第6の実施形態である放電ランプについて説明する。第6の実施形態では、電極胴体周りに放熱フィンが形成されている。それ以外の構成については、第1の実施形態と同じである。
図8は、第6の実施形態における陽極断面図である。
陽極430は、電極支持棒417Bに支持される金属部材450と、先端側の金属部材440との間に、サイズ(径)の異なる円盤形状の板状金属部材480、490を交互に配設させた構造であり、これらの部材を固相接合させている。板状金属部材480、490は、軸部材470に挿通されて同軸配置されている。
これにより、フィンとして機能する板状金属部材480を、所定の間隔で電極軸Xに沿って配置した電極構造を実現することができる。その結果、熱の放出をより一層高めることができる。なお、板状金属部材480、490の形状は任意(四角形など)であり、異なる材質の板状金属部材を固相接合させてもよい。
次に、図9〜図11を用いて第7の実施形態である放電ランプについて説明する。第7の実施形態では、電極軸方向に延びる放熱フィンが電極胴体部に形成されている。それ以外の構成については、第1の実施形態と同じである。
図9は、第7の実施形態における陽極を後端側から見た平面図である。図10は、第7の実施形態における陽極の側面図である。図11は、第7の実施形態における陽極断面図である。
図9に示すように、陽極530は、円錐台形状の先端部540と柱状胴体部550とフィン部550Aから構成されており、先端部540と胴体部550を固相接合することによって陽極530が構成されている。
胴体部550には、柱状本体部分550Sから径方向に突出する形でフィン部550Aが一体的に形成されており、複数のフィンが周方向に所定間隔で並ぶ。電極軸Xに沿って延びるフィン部550Aは、先端部540の後端面540Tで接合している。先端部540はタングステンから成る金属部材であり、柱状本体部分550S、フィン部550Aは放熱作用の優れたモリブデンを主成分とする金属部材として構成される。ここでは、柱状本体部分550Sおよびフィン部550Aは、切削により一体的に形成されている。
フィン部550Aの径方向長さは、先端部540の後端面から突出しないように定められている。これにより、胴体部550のフィン部550Aの間から放出した熱は、電極支持棒側および電極側面側へ放出される。これにより、電極先端面が過熱することを防ぐことができる(図11参照)。また、モリブデンのフィン部550Aやその接合部が、先端部540の後端面540Sによって陽極先端側に露出しない。そのため、放電から保護することができる。なお、フィンの配置、数、形状は任意である。
胴体部に対するフィンのサイズを大きくして放熱性を高めると、胴体部550の導電性、熱伝導性が低下し、先端部540が過熱する恐れがある。そこで、胴体部550の柱状本体部分550Sとフィン部550Aとからなる断面積をS11、フィン部550Aの隣接するフィンの間の溝を埋めた場合の柱状部分の断面積(ここでは、先端部540の後端面の面積)をS12とすると、S12×2/3≦S11を満たすように定めている。
次に、図12を用いて第8の実施形態である放電ランプについて説明する。第8の実施形態では、第1〜第7の実施形態と異なり、接合面付近において傾斜化している。それ以外の構成については、第1の実施形態と同じである。
図12は、第8の実施形態における放電ランプの陽極断面図である。
陽極630は、金属部材680と金属部材670を接合することによって形成された電極である。金属部材670は、円柱形状部分672と、凹部674Sを有する円錐台形状部分674から構成される。そして、電極先端面680Sを有する金属部材680は、金属部材670に嵌るように成型されている。SPS接合による接合面S付近では、金属結晶が接合面の径方向に沿ってほぼ均一であり、電極軸Xの方向に沿って傾斜化している。
すなわち、接合面S付近では傾斜化した層が形成されており、結晶径など金属組織特性が電極軸Xに沿って連続的、あるいは漸次的、段階的に変化し、急激な変化が生じていない。傾斜化により、結晶径は電極軸Xに沿って連続的に変化している。
このような接合により、熱伝導特性、導電性については接合面Sに沿ってバラツキがない。ランプ点灯によって高温になる電極先端面40S(1000℃以上)から電極支持棒17Bに向けて熱が輸送される間、陽極内部の温度分布は、電極軸Xを中心として対称的な分布となり、熱輸送は接合面Sによる影響を受けない。
接合面付近で傾斜化させた電極を製造する方法として、SPS接合が実行される。圧力、焼結温度は、上記接合状態が実現されるように定められる。例えば、圧力50〜100MPa、加圧時間10分〜60分、接合面付近の焼結温度は1600℃〜2000℃の範囲に定められ、材質などを考慮して適宜定められる。
次に、図13〜図16を用いて、本発明の実施例1〜3について説明する。ここででは、第1、第2、第8の実施形態に対応した陽極であって、SPS接合によって成形した陽極の接合面状態と、電子ビーム溶接によって成形した接合面状態とを比較する。
図13は、実施例1による陽極の接合状態を電子顕微鏡写真で示した図である。第1の実施形態に従い、形状の異なる2つの金属部材をSPS接合することによって電極を形成した。2つの金属部材は、タングステン(WVMW W 15−40ppmK)の粉末を焼結させて固形化させたものであり、第1の実施形態に示した円錐台形状、円柱状形状の2つの金属から構成される。
SPS接合を行う装置として、SPSシンテックス株式会社製SPS焼結装置を使用し、真空雰囲気の条件下で、圧力90MPaを金属部材両側から加え、接合面付近の焼結温度1700℃に10分間保持して接合を行った。
図13では、陽極表面の接合面付近を、マイクロオーダーレベルで撮影した写真を示しており、接合面の金属組織が明らかにされている。紙面の左右方向に沿って接合面が形成されている。
図13に示すように、接合面を形成する接合面結晶粒のみが接合時に変形し、それ以外の結晶粒については、接合に寄与する結晶粒変形、肥大化は接合面垂直方向に沿って生じていない。すなわち、接合による結晶粒の変形、肥大化した層が形成されていない。結晶径は、接合面方向、および接合面垂直方向に沿ってほぼ均一である。接合面結晶粒が変形した証拠として、接合前と接合後の電極の電極軸方向長さが変化した。
図14は、実施例2による陽極の接合状態を電子顕微鏡写真で示した図である。第2の実施形態に従い、2つのタングステン金属部材の間にタングステン−レニウム合金(厚さ0.5mm)を介在させ、SPS接合させた。SPS接合の条件は実施例1と実質的に同じである。
図14に示すように、実施例1と同様、接合面を形成する接合面結晶粒のみが接合時に変形し、それ以外の結晶粒については、接合に寄与する結晶粒変形、肥大化は接合面垂直方向に沿って生じていない。
図15は、実施例3による陽極の接合状態を電子顕微鏡写真で示した図である。第8の実施形態に従い、形状の異なる2つの金属部材をSPS接合することによって電極を形成した。ただし、電極形状は、図12とは異なって、第1の実施形態に示す円錐台形状、円柱状形状の2つの金属から構成される。
SPS接合においては、真空雰囲気の条件下で、傾斜化層を接合面に形成するように、圧力90MPaを金属部材両側から加えて、接合面付近の温度1800℃に20分間保持して接合を行った。
図15に示すように、接合面に沿った金属結晶径はほぼ均一であり、また、電極軸に沿って結晶径などの金属結晶特性は連続的に変化し、傾斜化している。
図16は、電子ビーム接合による陽極の接合面状態を示した電子顕微鏡写真を示した比較図である。電子ビーム接合による電極も、同様に2つの金属から構成される。電子ビーム接合には、NECコントロールシステム株式会社製の電子ビーム溶接装置を使用した。
図16には、陽極表面付近の接合面を拡大した写真を示している。図16では、接合面に沿った金属粒子径が不均一であること(電極表面付近参照)が明らかになっている。また、電極軸方向(紙面上下方向)に沿った結晶粒についても急激、かつ断続的に変化している。
このように、SPS焼結によって成形する電極では、金属組織が接合面付近において安定化している。その結果、電極強度、点灯中の放熱性について、従来の電極と比べて優れた性能を発揮する。
なお、SPS焼結法以外の拡散接合方法によって電極を製造してもよい。例えば、ホットプレス(HP)、熱間静水圧加圧(HIP)など、加圧しながら焼結する接合方式によって電極を製造可能である。さらに、それ以外の固相接合法(摩擦圧接法、超音波接合法など)も適用可能であり、このような方法によっても金属組織を均一に安定化することが可能である。また、陰極についても、複数の金属部材を固相接合させた電極構造にしてもよい。
熱輸送以外の電極特性を考慮して、接合面を電極軸垂直方向以外の方向に沿って形成してもよい。また、接合面に沿って形成された隙間を楔形状にして電極表面をフィン形状に構成し、一層熱放射効果を高めることも可能である。その一方で、隙間を接合面に設けないように構成することも可能である。
電極を構成する金属の数は任意であり、3つ以上の金属によって電極を構成してもよい。また、同種類の金属を固相接合させてもよく、第3〜第8の実施形態においても、第2の実施形態と同様に介在金属部材を介在させてもよい。
第3の実施形態では、密閉空間が内部に形成されるため、接合面積が金属部材断面積よりも小さくなる構成であったが、この構成を第1〜2、第4〜第8の実施形態にも適用してもよい。すなわち、金属部材の接合面に沿った面積(接合に寄与する面積)をS01、前記金属部材の充填部分における電極軸垂直方向に沿った断面積をS02とすると、S02>S01を満たすように構成するのがよい。
さらには、一方を金属部材、他方を非金属部材(タングステンとセラミックスなど)として固相接合させてもよく、少なくとも接合させる部材の1つを金属とすればよい。このような部材の組み合わせでも、接合面付近において金属組織は上記接合状態になる。
第1〜第7実施形態で示した電極については、第8実施形態のように接合面付近において傾斜化させた接合状態をもつ電極を構成してもよい。また、第3〜第7実施形態については、固相接合以外の溶接(例えば、電子ビーム溶接などの融接)によって電極を構成してもよい。
10 放電ランプ
12 放電管
30 陽極
40 金属部材
50 金属部材
S 接合面

Claims (18)

  1. 放電管と、
    前記放電管内に配置される一対の電極とを備え、
    少なくとも一方の電極が、複数の固体部材を固相接合することによって形成される電極であり、
    前記複数の固体部材のうち少なくとも1つが金属部材であって、
    前記金属部材の接合面を形成する接合面結晶粒の少なくとも一部が、接合により変形し、
    前記接合面結晶粒以外の金属結晶粒については、接合面付近において、接合による変形が接合面垂直方向に沿って実質的に生じていないことを特徴とする放電ランプ。
  2. 放電管と、
    前記放電管内に配置される一対の電極とを備え、
    少なくとも一方の電極が、複数の固体部材を固相接合することによって形成される電極であり、
    前記複数の固体部材のうち少なくとも1つが金属部材であって、
    接合後における前記金属部材の接合面付近における結晶径が、前記金属部材の接合面に沿ってほぼ均一であって、また、接合面垂直方向に沿ってほぼ均一であることを特徴とする放電ランプ。
  3. 前記金属部材の接合面に沿った面積をS01、前記金属部材の充填部分における電極軸垂直方向に沿った断面積をS02とすると、S02>S01を満たすことを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の放電ランプ。
  4. 前記金属部材が、介在固体部材を介して他の固体部材と接合し、
    前記介在固体部材が、接合する固体部材よりも軟らかいことを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の放電ランプ。
  5. 前記介在固体部材が、モリブデン、タンタル、バナジウム、ニオブ、チタン、金、プラチナ、レニウムの少なくともいずれか1つを含む金属部材であることを特徴とする請求項4に記載の放電ランプ。
  6. 前記介在固体部材が、タングステンを含む金属部材であることを特徴とする請求項5に記載の放電ランプ。
  7. 前記複数の固体部材が、凹状金属部材と、導電性の電極支持棒に支持される後端側固体部材とを有し、前記凹状金属部材と前記後端側固体部材とを接合することによって前記電極内に密閉空間が形成され、
    前記凹状金属部材の接合面は、前記後端側固体部材の前記電極支持棒との接合先端部よりもランプ中心側に位置することを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の放電ランプ。
  8. ランプ点灯時に溶融する点灯時溶融金属が前記密閉空間に封入され、
    前記凹状金属部材の接合面が、前記点灯時溶融金属の凝固範囲よりも電極支持棒側に位置することを特徴とする請求項7に記載の放電ランプ。
  9. 前記電極が、径の異なる複数の板状固体部材を備え、電極軸方向に沿って前記複数の板状固体部材を接合していることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の放電ランプ。
  10. 前記複数の固体部材が、電極先端面を有する電極先端部材と、前記電極先端部材よりサイズの小さい筒状部材から径方向に延在する複数のフィンが周方向に所定間隔で並ぶ胴体部材とを有し、前記電極先端部材と前記筒状部材を同軸的に接合していることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の放電ランプ。
  11. 前記複数のフィンが、前記電極先端部材の接合面から突出しない径方向サイズを有することを特徴とする請求項10に記載の放電ランプ。
  12. 前記胴体部材の電極軸垂直方向に沿った断面積をS11、前記複数のフィンの間の溝を埋めた場合の仮想胴体部材の電極軸垂直方向に沿った断面積をS12とすると、S12×2/3≦S11を満たすことを特徴とする請求項10に記載の放電ランプ。
  13. 前記接合面が、電極軸垂直方向に沿った面であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の放電ランプ。
  14. 前記接合面に沿って隙間が形成されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の放電ランプ。
  15. 前記複数の固体部材が、熱伝導性の異なる複数の固体部材を含むことを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の放電ランプ。
  16. 放電ランプの放電管内に配置され、電極先端面を含む先端側固体部材と電極支持棒に支持される後端側固体部材とを含む複数の固体部材から構成される電極であって、
    前記複数の固体部材を、前記先端側固体部材と前記後端側固体部材の間で固相接合することによって形成され、
    前記複数の固体部材のうち少なくとも1つが金属部材であって、
    前記金属部材の接合面を形成する接合面結晶粒の少なくとも一部が、接合により変形し、
    前記接合面結晶粒以外の金属結晶粒については、接合面付近において、接合による変形が接合面垂直方向に沿って実質的に生じていないことを特徴とする放電ランプ用電極。
  17. 電極先端面を含む先端側固体部材と電極支持棒に支持される後端側固体部材とを含み、少なくとも1つが金属部材である複数の固体部材を、前記先端側固体部材と前記後端側固体部材の間で固相接合させる製造方法であって、
    前記金属部材の接合面を形成する接合面結晶粒の少なくとも一部が、接合により変形し、
    前記接合面結晶粒以外の金属結晶粒については、接合面付近において、接合による変形が接合面垂直方向に沿って実質的に生じないように、前記複数の固体部材を固相接合させることを特徴とする放電ランプ用電極の製造方法。
  18. 前記複数の固体部材を、SPS接合によって接合することを特徴とする請求項17に記載の放電ランプ用電極の製造方法。

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