JP5434606B2 - ショートアーク型放電ランプ - Google Patents
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Description
このように定格消費電力が大きなランプは、電極の熱負荷が高くなるため、電極先端が高温化し、電極構成物質であるタングステンが蒸発する。そのため、蒸発物が発光管の内壁に付着していわゆる黒化現象が生じ、ランプの点灯時間とともに光透過性が損なわれる。
このような電極からの蒸発物による照度低下を回避する目的で、特許文献1,2には陽極温度を低下させるための技術が開示されている。
また、特許文献2には、陽極の背面に内部リード棒接合部用の穴よりも内径が大きい凹部を形成し、同じく放熱性を向上させることで過熱を防止した放電ランプが開示されている。
上述した特許文献によれば、陽極の胴部や後端部に放熱機構を設けて、温度上昇を回避するようにしたものである。しかしながら、発光空間は密閉状態にあり、電極の胴部における放熱作用のみで電極先端温度を下げるには表面積を大きくする必要があり、実効的に電極先端温度の低下を図ろうとすると現実には多くの加工が必要で、製造工程が煩雑かつ負荷のかかるものになって、生産コストがかかるといった問題がある。
本発明は、発光管の内部に陽極および陰極が対向配置されたショートアーク型放電ランプにおいて、前記陽極は円柱状であり、陽極先端面からその後方に向かって徐々に径が広がるテーパー部を備え、前記テーパー部に、当該陽極の軸上に中心を有する環状の溝よりなる凹所が形成されると共に、前記凹所内面における先端側の側面が、先端から後方に向かって陽極の軸から離れるよう傾斜するか、若しくは、陽極の軸に対して平行に伸びてなり、前記凹所は、陽極の軸を含む断面において開口部の長さをL1(mm)、底面の長さをL2(mm)、テーパー部の表面から底面までの長さをd(mm)とすると、
5≦L1≦10
0.5≦L2/L1≦0.8
0.5≦d≦2
を満足することを特徴とする。
(2)
また、本発明は、発光管の内部に陽極および陰極が対向配置されたショートアーク型放電ランプにおいて、前記陽極は円柱状であり、陽極先端面からその後方に向かって徐々に径が広がるテーパー部を備え、前記テーパー部に、当該陽極の軸上に中心を有する環状の溝よりなる凹所が形成されると共に、前記凹所内面における先端側の側面が、先端から後方に向かって陽極の軸に近づくよう傾斜してなり、前記凹所は、陽極の軸を含む断面において開口部の長さをL1(mm)、底面の長さをL2(mm)、テーパー部の表面から底面までの長さをd(mm)とすると、
5≦L1≦10
0.5≦L2/L1≦0.8
0.5≦d≦1
を満足することを特徴とする。
(3)
また、前記凹所は切削加工によって形成されたものであることを特徴とする。
図1は本願第1の発明の実施形態を説明するショートアーク型放電ランプの断面図である。
この放電ランプにおいて、発光管10は、石英ガラスにより形成され、発光空間を囲繞する楕円球形の発光部11と、この発光部11の両端から外方に伸びるよう連設された筒状の封止管部12とにより構成されており、それぞれ当該発光部11に続く封止管部12の発光部11に接近した個所に、封止管部12の一部が縮径された状態の絞り込み部12aが形成されている。
また、発光管10内部には、キセノン、アルゴン、クリプトン等の希ガス若しくはこれらの混合物よりなる封入ガスおよび水銀などの発光物質が封入されている。本発明にかかるショートアーク放電ランプの定格消費電力は、おおむね数kW〜25kWであるが、本発明はその原理から容易に推測されるとおり、これら消費電力に限定されるものではない。
なおここでいうテーパー部21とは、テーパー部の稜線が丸みを帯びたものや、直線と曲線の組み合わせからなるもの含む。また、陽極20の先端面は電極棒15にほぼ垂直な平面により構成される。
この陽極20のテーパー部21には、表面の傾斜に沿って凹所30が形成されている。凹所30は、陽極20を先端側から見たときにその中心が、電極の中心軸M(以下、「電極軸M」という。)と略一致する環状の溝よりなり、半径方向の幅が所定の大きさを有して形成されたものである。
これに対し、本発明に係る陽極によれば、テーパー面に沿って流れる高温の側面流からの伝熱を低減するため、陽極温度の大きな低減効果が得られる。凹所の開口幅を大きくとれるので、その加工においては、陽極の先端部表面の切削時に凹所を同時に形成することが可能となるため、電極の切削作業と同時に加工することができる。つまり、本発明では、簡単な加工でありながら、陽極先端部の温度低下を図ることができ、ランプの長寿命化を実現することができる。従って、従来公知の技術(特許文献1,2など)と比較した場合、装置や設備が簡単であると共に、工数が少なくて済み、生産コストを低く抑えながらも高い効果を得ることができるショートアーク型放電ランプを得ることができる。
要は、本発明に係る電極の凹所形状においては、ランプのスペック等に関連付けられて最適な凹所の開口幅および深さが決まる。その大きさはアークに続く表面の流れを引き込まない範囲において可及的に大きい方が効果的である。このことは、従来技術にかかる放射による放熱を目的とする細溝とは、構成上対照的であるということができる。
さらには、凹所の大きさによる影響は、先端部の径、凹所の陽極先端側境界の位置によって変わるが、凹所配設の位置はなるべく先端部に近くアークおよびその気流の温度が高い領域でより大きな効果を発揮するようになる。このため、必然的に凹所形成位置は先端に近いことが好ましいということになる。なお、先端面に隣接して続くテーパー面はその表面に沿って流れるアークおよびその気流の方向に影響する重要な領域であることから、および凹所の陽極先端寄りの部分はとりもなおさず先端面から陽極部にかけて形成される熱の流路を狭隘化することになるので、あまり先端面に近づけすぎると、先端部で受ける熱の陽極部への伝熱の断面積が小さくなるために高温となる孤立領域が形成され、熱が溜まることになるので、あまり近づけることは好ましくない。凹所の先端寄りの端部の先端面からの距離は、例えば1mmないし2mmは設けることが好ましい。
図3〜図5はそれぞれ、図1〜図2で示した陽極の凹所を形状を変えて形成した説明用拡大断面図である。
仮に、上記範囲から外れて、L2の長さが比較的小さくなると、凹所30の側面31,33がテーパー部21の表面(稜線)に近接するような斜面を形成するため、熱を受け取りやすくなり、期待される効果が得られない。よって、L2の長さをL1の長さに対して0.5以上とすることが望ましい。また、これとは逆にL2の長さが長い場合は、熱流から受け取る熱量を小さく抑えることができるが、陽極の容積が減少するため陽極先端の熱が後方に逃げ難くなる。よって、L2の長さをL1の長さに対して0.8以下とすることが望ましい。
図3に示した陽極20は、凹所30が、その先端側側面31に沿う仮想線Pが後方に向かうに従って電極軸Mから遠ざかるように傾斜して形成されている。このように、凹所の形状が陽極20の断面積が増加するように設けられている場合、深さdは0.5mm〜2mmの間で適宜に設定することができる。
この仮想線Nに対する仮想線Pの間のαの大きさは、例えば45°であり、また、α0の大きさは例えば60°である。この場合、α0−α=15(°)であるため、陽極先端を通過した熱流は、凹所開口の上部を通過して凹所に流れ込むことが抑制される。しかしながら、αがこれ以上大きくなり過ぎると、凹所の内壁面の傾きαがテーパー面の傾きと近似するため、熱流が凹所の底部に流れ込み易くなる。αの角度については詳細にはアークからの流れの速さに関係するためランプのスペックによって決まるが、おおむねα0−αの大きさが15°以上であるのが好ましい。
図4に示した実施例2にかかる陽極では、凹所の側面31に沿う仮想線Pが電極軸Mと平行に伸びるものであり、陽極20の断面積に関して増減がなく、一定の径となるよう形成されている。
この場合も、深さdは0.5mm〜2mmの間で適宜に設定することができる。
このような場合、α0の大きさは例えば60°であると、αの大きさは0°であるので、α0−α=60(°)となり、陽極先端を通過した熱流は凹所開口の上部を通過して底部に流れこむことはない。
図5に示した実施例3にかかる陽極では、凹所側面に沿う仮想線Pが電極軸Mに近づくように傾斜している。このため、凹所30の縁部30Aから側面31の後端に至るまでの間は陽極の断面積が後方に向かって減少する領域となる。
このような場合、陽極断面積の減少が陽極先端の熱の蓄積に影響し、温度上昇することがあり、凹所の深さについて注意する必要が生じる。実用の範囲においては、凹所の深さdは0.5mm〜1mmの間である。
この仮想線Nに対する仮想線Pの間の角αの大きさは例えば−30°であり、α0の大きさが例えば60°であると、α0−α=90(°)となる。従って、陽極先端を通過した熱流はテーパー面に沿って凹所開口の上部を確実に通過し、凹所底部に流れ込むことはない。
(1)α≧0の場合
陽極の先端に形成されたテーパー部の表面に、開口幅L1が5〜10mmの範囲となるよう環状の凹所を形成し、凹所底部の幅L2を開口幅L1に対して0.5〜0.8とするとともに、深さdを0.5〜2mmの範囲とする。
すなわち下記の関係を満たす。
5≦L1≦10
0.5≦L2/L1≦0.8
0.5≦d≦2
このような関係を満足する凹所を有する陽極によれば、凹所形成個所において陽極断面積が減少することがないので、陽極先端の熱の移動を妨げることなく、凹所を形成することによる熱量の受け取りを抑制することができるようになる。
開口幅L1は5〜10mmの範囲であり、凹所底部の幅L2を開口幅L1に対して0.5〜0.8とすることで、凹所形成に伴い陽極先端の体積が減少しても、陽極先端がアーク先端の熱流から受け取る熱量を、実用的に温度低下に寄与できる程度に少なく抑えることができる。
(2)α<0の場合
陽極の先端に形成されたテーパ面に、開口幅L1は5〜10mmの範囲となるよう環状の凹所を形成し、凹所底部の幅L2を開口幅L1に対して0.5〜0.8とするとともに、深さdを0.5〜1mmの範囲とする。
すなわち下記の関係を満たす。
5≦L1≦10
0.5≦L2/L1≦0.8
0.5≦d≦1
このような陽極によれば、αが0未満であるため、凹所形成個所において陽極断面積が減少するが、深さdを0.5〜1mmの範囲とすることで熱の移動を妨げない程度に深さdが設定されているため、陽極の温度低下を実現できるようになる。
この場合も、開口幅L1を5〜10mmの範囲とし、凹所底部の幅L2を開口幅L1に対して0.5〜0.8とすることで、凹所形成に伴い陽極先端の体積が減少しても、陽極先端がアーク先端の熱流から受け取る熱量を、実用的に温度低下に寄与できる程度に少なく抑えることができる。
[実験例]
図3〜図5で示した断面形状の陽極を多数製作し、これらを用いて図1で示したようなショートアーク型の放電ランプを製作した。放電ランプの主な仕様は下記の通りである。
定格消費電力:12kW
定格電流120A
封入水銀:24mg/cc
封入バッファガス:キセノン
陽極:最大径部直径30mm、長さ60mm、先端径φ10、コーン部開き角120°(すなわちα0=60°)
この結果を、ランプ1〜ランプ13のL2,α,dの数値とともに図6にまとめて示す。
ここで、照度維持率と陽極の温度との関係を簡単に説明すると、陽極の過熱に由来して発光管内面に黒化が生じ、照度が低下するため、照度維持率を評価することで、陽極の温度上昇の程度を予測することができる。
(2)ランプ2〜ランプ7はいずれもα>0である凹所が形成された陽極を備えた放電ランプである。
ランプ2は十分な照度維持率が得られなかった。この理由はαが50°であり、テーパー面の傾斜α0に対して近似した角度を有するものであるために、アークに続く高温の流れが凹所内に入り込んでしまったためと推察される。
ランプ3は照度維持率が良好で、大きな改善が図られた。すなわち陽極の温度上昇を回避できたためと推察される。なおα0−αの大きさは15°であったことから、αの角度としてはテーパー面の傾斜角度に対して15°以上の差異を有するよう凹所側面を形成することが望ましい。
ランプ4,5,6の各ランプもまた十分な照度維持率が得られなかった。
ランプ4はαが適正な大きさであったにも拘らず、凹所底面の長さL2が短く、後方側の凹所の壁面を通じて熱を受け取った可能性が高い。
ランプ5もまた、αは適正な大きさであったが、L2の長さが足りず、後方側の凹所の壁面が熱流に近接していたために高温化したことが原因と見られる。
一方、ランプ6は逆にL2が長過ぎたため、陽極体積が不足したか或いは断面積の減少が影響したことによる熱の伝達不足が生じたため、高温化したと考えられる。
ランプ7は、L1の長さ、L2/L1の割合、dの全てにおいて適正値であり、照度維持率の改善が見られた。
(3)ランプ8はαが0°であり、テーパー部に部分的に直径一定の箇所が形成されるものである。このランプにおいても、照度維持率に改善が見られた。これのことから、L1,L2/L1及びdがそれぞれ適正値であったと考えられる。
(4)ランプ9〜ランプ13はいずれもαが−30°であり、凹所が形成されることにより陽極断面積が後方に向かって小さくなる部分が形成される。この場合、深さdが2mmであるランプ11においては、照度維持率は悪化した。またL2/L1の比が0.9となったランプ12においても、照度維持率に関し期待した結果が得られなかった。この理由は、L2が長過ぎたため、陽極体積が不足したか或いは断面積の減少が影響したことによる熱の伝達不足が生じたためと考えられる。そのほかのランプ9,ランプ10,ランプ13はいずれも照度維持率が良好で、L1,L2/L1及びdがそれぞれ適正値であったと考えられる。
11 発光部
12 封止管部
12a 絞込み部
14 陰極
15 電極棒
16 口金
20 陽極
21 テーパー部
22 胴部
30 凹所
31 側面
32 底面
33 側面
Claims (3)
- 発光管の内部に陽極および陰極が対向配置されたショートアーク型放電ランプにおいて、
前記陽極は円柱状であり、陽極先端面からその後方に向かって徐々に径が広がるテーパー部を備え、
前記テーパー部に、当該陽極の軸上に中心を有する環状の溝よりなる凹所が形成されると共に、
前記凹所内面における先端側の側面が、先端から後方に向かって陽極の軸から離れるよう傾斜するか、若しくは、陽極の軸に対して平行に伸びてなり、
前記凹所は、陽極の軸を含む断面において開口部の長さをL1(mm)、底面の長さをL2(mm)、テーパー部の表面から底面までの長さをd(mm)とすると、
5≦L1≦10
0.5≦L2/L1≦0.8
0.5≦d≦2
を満足することを特徴とするショートアーク型放電ランプ。 - 発光管の内部に陽極および陰極が対向配置されたショートアーク型放電ランプにおいて、
前記陽極は円柱状であり、陽極先端面からその後方に向かって徐々に径が広がるテーパー部を備え、
前記テーパー部に、当該陽極の軸上に中心を有する環状の溝よりなる凹所が形成されると共に、
前記凹所内面における先端側の側面が、先端から後方に向かって陽極の軸に近づくよう傾斜してなり、
前記凹所は、陽極の軸を含む断面において開口部の長さをL1(mm)、底面の長さをL2(mm)、テーパー部の表面から底面までの長さをd(mm)とすると、
5≦L1≦10
0.5≦L2/L1≦0.8
0.5≦d≦1
を満足することを特徴とするショートアーク型放電ランプ。 - 前記凹所は、切削加工によって形成されたものである
ことを特徴とする請求項1または2に記載のショートアーク型放電ランプ。
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