JP2006219343A - ヒドロキシルアミンの製造方法 - Google Patents

ヒドロキシルアミンの製造方法 Download PDF

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Takanori Aoki
隆典 青木
Toshitaka Ko
俊孝 廣
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Abstract

【課題】
蒸留によりヒドロキシルアミンを得るに際して、安全にヒドロキシルアミンを高収率で製造する方法を提供すること。
【解決手段】
本発明のヒドロキシルアミンの製造方法は、芳香環上の連続する2以上の炭素原子の各々に水酸基を有する芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種の安定剤の存在下に、ヒドロキシルアミンを蒸留する工程を含むことを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ヒドロキシルアミンを製造するに際して、安全にヒドロキシルアミンを高収率で製造する方法に関する。
ヒドロキシルアミン類は、医農薬中間体の原料、還元剤、金属表面の処理剤、繊維処理、染色など、工業的に幅広い用途で使用されているが、遊離のヒドロキシルアミンは、たとえば金属イオン(特に重金属イオン)の存在下、高温または高濃度などの条件において容易に分解するなど非常に不安定な性質を有することから、一般的には比較的安定なヒドロキシルアミンの塩が製造され、使用されている。
しかしながら、多くの用途においては、ヒドロキシルアミンの塩よりもヒドロキシルアミンが好適であり、さらに、高濃度のヒドロキシルアミン水溶液が必要とされることが多い。そのため、安全にヒドロキシルアミン水溶液を製造する試みがなされている。
例えば、特公昭52−48118号公報には、ヒドロキシルアミンおよび/またはその塩の結晶、またはヒドロキシルアミンを含む溶液中に芳香環上の連続する2以上の炭素原子の夫々に水酸基を有する芳香族化合物を安定剤として添加する安定化方法が記載されている。
しかしながら、該公報にはヒドロキシルアミンの結晶中または溶液中に安定剤を添加してヒドロキシルアミンを安定化する方法が記載されており、ヒドロキシルアミンを製造する蒸留工程に添加して、生成したヒドロキシルアミンの安定化を行うことについては、言及されていない。
同様に、WO03031330号公報には、2,3−ジヒドロキシ安息香酸を添加してヒドロキシルアミン溶液を安定化することが記載されているが、これもヒドロキシルアミンを製造する蒸留工程に添加することについては、言及していない。
特公昭52−48118号公報 WO03031330号公報
本発明は、ヒドロキシルアミンを製造するに際して、安全にヒドロキシルアミンを高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ヒドロキシルアミンを蒸留する際に、芳香環上の連続する2以上の炭素原子の各々に水酸基を置換している芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種の安定剤の存在下で蒸留することで、ヒドロキシルアミンが安全かつ高収率で得られることを見いだした。これらの知見は本発明者らが初めて見いだしたものである。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、以下の[1]〜[21]に関する。
[1]芳香環上の連続する2以上の炭素原子の各々に水酸基を有する芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種の安定剤の存在下にヒドロキシルアミンを含む溶液を蒸留し、該蒸
留によりヒドロキシルアミンを得る蒸留工程を含むことを特徴とするヒドロキシルアミンの製造方法。
[2]前記蒸留工程が、蒸留塔の塔底部からヒドロキシルアミンを得るものである[1]に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[3]前記安定剤が、カテコール、4−tert−ブチルカテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、1,2,4−ベンゼントリオール、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンゾニトリルおよび3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である[1]または[2]に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[4]前記安定剤が、1,2,4−ベンゼントリオール、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンゾニトリルおよび3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である[1]〜[3]のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[5]前記蒸留工程が0℃〜70℃の範囲内で行われる[1]〜[4]のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[6]ヒドロキシルアミンの塩とアルカリ化合物とを反応させてヒドロキシルアミンを得る反応工程を含む[1]〜[5]のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[7]前記反応工程が、アルカリ化合物を含む反応液にヒドロキシルアミンの塩が添加される工程である[6]に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[8]前記反応工程が、反応液のpHを7以上に保ちながら行われる[6]または[7]に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[9]前記反応工程が0℃〜80℃の範囲内で行われる[6]〜[8]のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[10]前記反応工程が、水および/またはアルコールを含む溶媒の存在下に行われる[6]〜[9]のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[11]前記ヒドロキシルアミンの塩が、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミン、硝酸ヒドロキシルアミンおよびリン酸ヒドロキシルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である[6]〜[10]に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[12]前記アルカリ化合物が、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アンモニアおよびアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である[6]〜[10]のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[13]ヒドロキシルアミンをイオン交換により精製する精製工程を含む[1]〜[12]のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[14]前記精製工程が0℃〜70℃の範囲内で行われる[13]に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[15]前記ヒドロキシルアミンを製造する各工程が、反応工程、精製工程および蒸留工程の順に行われる[13]または[14]に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[16]ヒドロキシルアミンと不溶性物質を分離する分離工程を含む[1]〜[15]のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[17]前記分離工程が0℃〜80℃の範囲内で行われる[16]に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[18]前記ヒドロキシルアミンを製造する各工程が、反応工程、分離工程、精製工程および蒸留工程の順に行われる[16]または[17]に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[19]前記蒸留工程の後にヒドロキシルアミンをイオン交換により精製する精製工程をさらに含む[18]に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[20] 前記蒸留工程の後の精製工程が0℃〜70℃の範囲内で行われる[19]に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
[21]前記各工程が安定剤の存在下に行われる[6]〜[20]のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
本発明によれば、ヒドロキシルアミンの蒸留を、芳香環上の連続する2以上の炭素原子の各々に水酸基を置換している芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種の安定剤の存在下で行うため、安全にヒドロキシルアミンを高収率で得ることができる。
以下、本発明に係るヒドロキシルアミンの製造方法についてより詳細に説明する。蒸留工程
本発明のヒドロキシルアミンの製造方法は、芳香環上の連続する2以上の炭素原子の各々に水酸基を置換している芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種の安定剤の存在下にヒドロキシルアミンを含む溶液を蒸留し、蒸留によりヒドロキシルアミンを得る蒸留工程を含む。
本発明の方法でヒドロキシルアミンを蒸留する蒸留工程において用いられる安定剤は、芳香環上の連続する2以上の炭素原子の各々に水酸基を置換している芳香族化合物(以下「特定安定剤」ともいう。)から選ばれる。
芳香環上の連続する2以上の炭素原子の各々に水酸基を置換している芳香族化合物としては、好ましくは、カテコール、4−tert−ブチルカテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、1,2,4−ベンゼントリオール、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンゾニトリル、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸が挙げられ、より好ましくは、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンゾニトリル、特に好ましくは3,4−ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
上記特定安定剤は、市販または工業的に入手できるものであれば、特に制限はないが、好ましくは金属不純物が少ないものがよい。これは、金属不純物が存在することにより、ヒドロキシルアミンの分解を促進することがあるからである。また、電子工業用においては、金属不純物の少ない高純度のヒドロキシルアミンが好ましいからである。また、水和物を用いてもよい。
上記特定安定剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。特定安定剤の存在下に蒸留することにより、金属不純物などによるヒドロキシルアミンの分解を抑制することができる。
本発明のヒドロキシルアミンの製造方法によれば、蒸留によってヒドロキシルアミンを得る際、上記の特定安定剤を存在させることによって、ヒドロキシルアミンを安全に高収率で得ることができる。蒸留工程においては、原料に由来する金属不純物が多く存在するために、生成したヒドロキシルアミンが分解する可能性が高かったが、本発明では、上記の安定剤の存在下で蒸留を行うため、このヒドロキシルアミンの分解を抑制する効果が特に高い。
特定安定剤とヒドロキシルアミンとの質量比(特定安定剤/ヒドロキシルアミン)は、1.0×10-9〜1.0が、好ましくは1.0×10-8〜0.1が適している。上記質量
比が1.0×10-9よりも小さい場合には、金属不純物によるヒドロキシルアミンの分解反応を抑制する効果が得られないことがあり、質量比が1.0よりも大きい場合には、過
剰の安定剤の除去や回収が必要になることがある。
本発明の製造方法の蒸留工程における蒸留の方法としては、単蒸留、多段蒸留、水蒸気蒸留、フラッシュ蒸留などの公知の方法で行うことができる。
また、ヒドロキシルアミンは、目的に応じて、蒸留塔の塔頂部、側塔部あるいは塔底部で得ることができる。
たとえば、単蒸留、水蒸気蒸留などにより塔頂部からヒドロキシルアミン溶液を得ることができる。また、たとえば多段蒸留により水を塔頂から留出させることにより塔底部から濃度の高いヒドロキシルアミン溶液を得ることができる。
蒸留塔としては、棚段式蒸留塔、充填蒸留塔などの公知の蒸留塔を使用することができる。棚段式蒸留塔の棚段の構造としては、たとえば泡鐘トレイ、多孔板トレイ、バルブトレイ、スーパーフラックトレイ、マックスフラクトレイなどが挙げられる。また、充填蒸留塔の充填物としては、規則充填物や不規則充填物が挙げられる。規則充填物としては、たとえば、金属板型、金網型、グリッド型などが挙げられる。不規則充填物としては、たとえば、ラシヒリング、レッシングリング、ベルルサドル、インタロックスサドル、テラレット、ポールリング、フレキシリング、カスケードリングなどが挙げられる。
蒸留工程の温度は、塔底部の温度で0〜70℃が好ましく、さらに好ましくは5〜60℃の範囲内であることが望ましい。塔底部の温度が70℃より高いと、ヒドロキシルアミンの分解などの問題が生じることがある。一方、塔底部の温度が0℃より低いと、多量の冷却エネルギーが必要になるなどの問題が生じることがある。
蒸留工程の圧力は、温度との関係で決まるが、塔底部の圧力で0.5〜60kPaが好ましく、さらに好ましくは0.8〜40kPaの範囲内であることが望ましい。
上記蒸留工程において塔底部で得たヒドロキシルアミン溶液の一部は、ヒドロキシルアミンの反応原料として好ましく用いられるヒドロキシルアミンの塩および/またはアルカリ化合物を溶解もしくは懸濁させる溶媒として用いてもよい。
また、蒸留塔の塔頂部または側塔部から得られるヒドロキシルアミン溶液の一部もしくは全部は、ヒドロキシルアミンの反応原料として好ましく用いられるヒドロキシルアミンの塩および/またはアルカリ化合物を溶解もしくは懸濁させる溶媒として用いてもよい。
上記蒸留工程は、回分式、半回分式、連続式などの公知の方法で行うことができる。
上記蒸留工程において用いることができるヒドロキシルアミンは、たとえば、以下の反応工程を行うことにより製造することができる。
反応工程
ヒドロキシルアミンは、たとえば、ヒドロキシルアミンの塩と、アルカリ化合物とを反応させてヒドロキシルアミンを得る反応工程を行うことにより得ることができる。
上記反応工程で用いられるヒドロキシルアミンの塩としては、ヒドロキシルアミンの硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、亜硫酸塩、亜リン酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機酸の塩、およびギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩などの有機酸の塩が挙げられる。これらの中では、ヒドロキシルアミンの硫酸塩(NH2OH・1/2H2SO4)、塩酸塩(NH2OH・HCl)、硝酸塩(NH2OH・HNO3)およびリン
酸塩(NH2OH・1/3H3PO4)からなる群より選ばれる少なくとも1種の塩が好ましい。
ヒドロキシルアミンの塩は、市販または工業的に入手できるものであれば、特に制限は
ないが、好ましくは金属不純物が少ないものがよい。これは、金属不純物が存在することにより、ヒドロキシルアミンの塩または生成したヒドロキシルアミンの分解を促進することがあるからである。しかし、ヒドロキシルアミンの塩またはヒドロキシルアミンの分解を促進せず、精製工程などで除去できるもの、または製造されたヒドロキシルアミンの用途において問題がないものであれば不純物を含んでいてもよい。
ヒドロキシルアミンの塩は、固体のまま使用しても、溶媒に溶解または懸濁させて使用してもよい。このような溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、たとえば、炭化水素、エーテル、アルコールなどが挙げられるが、反応に影響がなければこれらに限定されるものではない。これらの中では、水および/またはアルコールを含む溶媒が好ましい。また、ヒドロキシルアミンの塩とアルカリ化合物との反応で生じた不溶性の塩などを分離した濾液の少なくとも一部を溶媒として使用してもよい。
上記溶媒の量は、使用するヒドロキシルアミンの塩の量、反応温度などの条件に応じて適宜選択すればよく、通常、溶媒とヒドロキシルアミンの塩との質量比(溶媒/ヒドロキシルアミンの塩)は0.1〜1000、好ましくは1〜100の範囲内である。
上記反応工程で用いられるアルカリ化合物としては、アルカリ金属を含む化合物、アルカリ土類金属を含む化合物、アンモニアおよびアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
アルカリ金属を含む化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩などが挙げられ、好ましくは、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物もしくは炭酸塩である。
アルカリ土類金属を含む化合物としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩などが挙げられ、好ましくは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムの酸化物もしくは水酸化物である。
アンモニアは、ガスとして使用してもよく、アンモニアを溶解させた溶液、たとえばアンモニア水溶液として使用してもよい。
アミンとしては、第1級アミン、第2級アミンおよび第3級アミンを用いることができる。また、アミンはモノアミンでも、分子内に2以上のアミノ基を有するジアミン、トリアミンなどのポリアミンでもよく、さらに、環式アミンでもよい。
モノアミンとしては、たとえば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、トリ−i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、ジ−i−ブチルアミン、トリ−i−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、トリ−tert−ブチルアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、n−オクチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、トリベンジルアミン、ジアミノプロピルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、3−(ジブチルア
ミノ)プロピルアミン、α―フェニルエチルアミン、β−フェニルエチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、o―トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブロモアニリン、p−ブロモアニリン、o−ニトロアニリン、m−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン、p−アミノ安息香酸、スルファニル酸、スルファニルアミド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
ジアミンとしては、たとえば、1,2−ジアミノエタン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,2−ジアミノエタン、N,N,N',N'−テトラエチル−1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N,N',N'−テトラエチル−1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、N−メチル−1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノブタン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,2−ジアミノブタン、3−アミノプロピルジメチルアミン、1,6−ジアミノヘキサン、3,3−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、ベンジジンなどが挙げられる。
トリアミンとしては、たとえば、2,4,6−トリアミノフェノール、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2,3−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、1,3,5−トリアミノベンゼンなどが挙げられる。
テトラアミンとしては、たとえば、β,β',β"−トリアミノトリエチルアミンなどが挙げられる。
環式アミンとしては、たとえば、ピロール、ピリジン、ピリミジン、ピロリジン、ピペリジン、プリン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、3−ピロリン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、ピペラジン、ピリダジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,3−トリアゾール、1,2,5−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,3,4−トリアゾール、モルホリンなどが挙げられる。
アルカリ化合物として用いることができるアミンは、上記の化合物に限定されるものではなく、たとえばエチルメチルアミンのように、置換基の種類が異なる非対称の化合物であってもよい。また、アミンは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記反応工程で用いられるアルカリ化合物は、市販または工業的に入手できるものであれば、特に制限はないが、ヒドロキシルアミンの塩と同様に、好ましくは金属不純物が少ないものがよい。
アルカリ化合物とヒドロキシルアミンの塩との当量比(アルカリ化合物/ヒドロキシルアミンの塩)は0.1〜100、好ましくは0.5〜10、さらに好ましくは1〜2の範囲が適している。なお当量は、ヒドロキシルアミンの塩を1とするとアルカリ金属の場合には1、アルカリ土類金属の場合は2、アンモニアは1、アミンの場合には、たとえばモノアミンは1、ジアミンは2として計算する。
上記当量比が100より大きいと、過剰のアルカリ化合物によるヒドロキシルアミンの分解や、多くの未反応アルカリ化合物の回収が必要になるなどの問題が生じることがある。また、当量比が0.1より小さいと、大量の未反応ヒドロキシルアミンの塩の回収が必
要になるなどの問題が生じることがある。
アルカリ化合物は、溶媒に溶解または懸濁させて使用することができる。このような溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、たとえば、炭化水素、エーテル、アルコールなどが挙げられるが、反応に影響がなければこれらに限定されるものではない。これらの中では、水および/またはアルコールを用いることが好ましい。また、反応で生じた不溶性の塩などを分離した濾液の少なくとも一部を溶媒として使用してもよい。
上記溶媒の量は、使用するアルカリ化合物の量、反応温度などの条件に応じて適宜選択すればよく、通常、溶媒とアルカリ化合物との質量比(溶媒/アルカリ化合物)は0.5〜1000、好ましくは0.8〜100である。
本発明のヒドロキシルアミンの製造方法は、上記蒸留工程を含み、さらに上記の反応工程、および後述する、ヒドロキシルアミンをイオン交換により精製する精製工程を含むことが好ましい。反応工程は、アルカリ化合物を溶媒に溶解もしくは懸濁させた反応液に、ヒドロキシルアミンの塩を添加して反応させる反応工程であることが好ましい。このように、アルカリ化合物を含む反応液に、ヒドロキシルアミンの塩を添加していく方法を用いることにより、生成したヒドロキシルアミンが、副生した塩と錯体を形成しにくくなり、また副生した不溶性の塩に吸着または取り込まれにくくなる。
さらに、アルカリ化合物を含む反応液にヒドロキシルアミンの塩を添加する際に、反応液のpHを好ましくは7以上、より好ましくは7.5以上、さらに好ましくは8以上に保ちながら、ヒドロキシルアミンの塩を添加していくことが望ましい。反応液のpHを上記範囲に保つことにより、生成したヒドロキシルアミンが、副生した塩と錯体を形成しにくくなり、また副生した不溶性の塩に吸着または取り込まれにくくなる。
さらに、上記反応工程は、ヒドロキシルアミンの塩とアルカリ化合物とを、同時に供給して反応させる反応工程であってもよい。その際、反応液のpHを好ましくは7以上、より好ましくは7.5以上、さらに好ましくは8以上に保ちながら、ヒドロキシルアミンの塩およびアルカリ化合物の添加量を調整することが望ましい。ヒドロキシルアミンの塩および/またはアルカリ化合物は、固体のまま添加してもよく、溶媒に溶解または懸濁させて添加してもよい。また、アルカリ化合物がアンモニアなどの場合には、ガスで導入してもよい。
上記反応工程は、後述する分離工程、精製工程と同様に安定剤の存在下で行うことが好ましい。安定剤は、前記した特定安定剤であってもよく、特定安定剤以外の安定剤(以下「他の安定剤」ともいう。)を使用することもできる。以下、特定安定剤と「他の安定剤」を総称して単に「安定剤」と記載することがある。他の安定剤としては、たとえば、8−ヒドロキシキノリン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン−N,N,N’−三酢酸、グリシン、エチレンジアミン四酢酸、シス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、N,N’−ジ(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−二酢酸、N−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、N,N’−ジヒドロキシエチルグリシン、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸、ビスヘキサメチレントリアミン五酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリス(2−アミノエチル)アミン六酢酸、イミノ二酢酸、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、o−アミノキノリン、1,10−フェナントロリン、5−メチル−1,10−フェナントロリン、5−クロル−1,10−フェナントロリン、5−フェニル−1,10−フェナントロリン、ヒドロキシアントラキノン、8−ヒドロキシキノリ
ン−5−スルホン酸、8−ヒドロキシメチルキノリン、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、1−アミノ−2−メルカプト−プロピオン酸、2,2−ジピリジル、4,4−ジメチル−2,2−ジピリジル、チオ硫酸アンモニウム、ベンゾトリアゾール、フラボン、モリン、クエルセチン、ゴッシペチン、ロビチネン、ルテオリン、フィセチン、アピゲニン、ガランギン、クリシン、フラボノール、オキシアントラキノン、1,2−ジオキシアントラキノン、1,4−ジオキシアントラキン、1,2,4−トリオキシアントラキノン、1,5−ジオキシアントラキノン、1,8−ジオキシアントラキノン、2,3−ジオキシアントラキノン、1,2,6−トリオキシアントラキノン、1,2,7−トリオキシアントラキノン、1,2,5,8−テトラオキシアントラキノン、1,2,4,5,8−ペンタオキシアントラキノン、1,6,8−ジオキシ−3−メチル−6−メトキシアントラキノン、キナリザリン、フラバン、ラクトン、2,3−ジヒドロヘキソノ−1,4−ラクトン、8−ヒドロキシキナルジン、6−メチル−8−ヒドロキシキナルジン、5,8−ジヒドロキシキナルジン、アントシアン、ペラルゴニジン、シアニジン、デルフィニジン、ペオニジン、ペツニジン、マルビジン、カテキン、チオ硫酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、1,4−ジメルカプト−2,3−ブタンジオール、チアミンの塩酸塩、2−ヒドロキシピリジン−N−オキシド、1,2−ジメチル−3−ヒドロキシピリジン−4−オン、4−メチルピリジン−N−オキシド、6−メチルピリジン−N−オキシド、1−メチル−3−ヒドロキシピリジン−2−オン、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトシクロヘキシルチアゾール、2−メルカプト−6−t−ブチルシクロヘキシルチアゾール、2−メルカプト−4,5−ジメチルチアゾリン、2−メルカプトチアゾリン、2−メルカプト−5−t−ブチルチアゾリン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラ−n−ブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジエチルチウラムジスルフィド、テトラフェニルチウラムジスルフィド、チウラムジスルフィド、チオ尿素、N,N’−ジフェニルチオ尿素、ジ−o−トリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、チオセトアミド、2−チオウラシル、チオシアヌル酸、チオホルムアミド、チオアセトアミド、チオプロピオンアミド、チオベンズアミド、チオニコチンアミド、チオアセトアニリド、チオベンズアニリド、1,3−ジメチルチオ尿素、1,3−ジエチル−2−チオ尿素、1−フェニル−2−チオ尿素、1,3−ジフェニル−2−チオ尿素、チオカルバジド、チオセミカルバジド、4,4−ジメチル−3−チオセミカルバジド、2−メルカプトイミダゾリン、2−チオヒダントイン、3−チオウラゾール、2−チオウラミル、4−チオウラミル、チオペンタノール、2−チオバルビツール酸、チオシアヌル酸、2−メルカプトキノリン、チオクマゾン、チオクモチアゾン、チオサッカリン、2−メルカプトベンズイミダゾール、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
上記安定剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。安定剤を添加することにより、金属不純物などによるヒドロキシルアミンの塩またはヒドロキシルアミンの分解を抑制することができる。
安定剤は、市販または工業的に入手できるものであれば、特に制限はないが、ヒドロキシルアミンの塩と同様に、好ましくは金属不純物が少ないものがよい。
安定剤とヒドロキシルアミンの塩との質量比(安定剤/ヒドロキシルアミンの塩)は、1.0×10-9〜1.0、好ましくは1.0×10-8〜0.1が適している。上記質量比が1.0×10-9よりも小さい場合、金属不純物によるヒドロキシルアミンの塩またはヒドロキシルアミンの分解反応を抑制する効果が得られないことがあり、質量比が1.0よりも大きい場合、過剰の安定剤の除去や回収が必要になることがある。
安定剤は、固体のまま使用してもよく、溶媒に溶解させて使用してもよい。このような溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、た
とえば、炭化水素、エーテル、エステル、アルコールなどが挙げられるが、反応に影響がなければこれらに限定されるものではない。これらの中では、水および/またはアルコールを用いることが好ましい。溶媒の量は使用する安定剤の種類および量、反応温度などの条件に応じて適宜選択することができる。
上記反応工程で、安定剤を添加する方法は特に制限されず、公知の方法で行うことができる。たとえば、予め反応器に導入して反応を開始してもよく、必要に応じて反応の途中で添加してもよい。また、安定剤を、アルカリ化合物および/またはヒドロキシルアミンの塩とともに溶媒に溶解または懸濁させて添加してもよい。
上記反応工程は、反応温度が0℃〜80℃が好ましく、さらに好ましくは5℃〜50℃の範囲内であることが望ましい。反応温度が80℃より高いと、ヒドロキシルアミンの分解などの問題が生じることがある。一方、反応温度が0℃より低いと、反応速度が遅くなり生産性の低下などの問題が生じることがある。
ヒドロキシルアミンの塩とアルカリ化合物との反応に伴い発生する反応熱は、水、温水または熱媒により系外に排出させることにより、反応温度を一定範囲に保つことができる。また、水、温水または熱媒により系外に排出された熱は、他の設備の熱源として利用することが好ましい。
上記反応工程は、公知の方法、たとえば回分式、半回分式、連続式などで行うことができる。
精製工程
本発明のヒドロキシルアミンの製造方法は、たとえば、上記のようにして反応工程を行うことによって得られたヒドロキシルアミンを、安定剤の存在下にイオン交換により精製する精製工程を含むことが好ましい。
イオン交換の方法としては、陽イオン交換、陰イオン交換、キレート交換などの公知の方法で行うことができる。
陽イオン交換による精製は、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂などを使用する公知の方法により行うことができる。陽イオン交換樹脂は、予め酸処理を行い、H型にして使用することが好ましい。
陰イオン交換による精製は、強塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂などを使用する公知の方法により行うことができる。陰イオン交換樹脂は、予めアルカリ処理を行い、OH型にして使用することが好ましい。
キレート交換による精製は、キレート交換樹脂などを使用する公知の方法により行うことができる。キレート交換樹脂は、予め酸処理を行い、H型として使用することが好ましい。
陽イオン交換、陰イオン交換、キレート交換を組み合わせて精製してもよい。たとえば、陽イオン交換の後に陰イオン交換を行ってもよく、陰イオン交換の後に陽イオン交換を行ってもよい。また、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を混合したモノベッド樹脂またはミックスベッド樹脂などを使用することも可能である。
イオン交換の温度としては、0℃〜70℃が好ましく、さらに好ましくは5℃〜50℃の範囲内であることが望ましい。イオン交換の温度が70℃より高いと、ヒドロキシルアミンの分解などの問題が生じることがある。一方、イオン交換の温度が0℃より低いと、冷却に要するエネルギーが大きくなるなどの問題が生じることがある。
上記精製工程で得たヒドロキシルアミン溶液の一部は、ヒドロキシルアミンの反応原料として好ましく用いられるヒドロキシルアミンの塩および/またはアルカリ化合物を溶解もしくは懸濁させる溶媒として用いてもよい。
上記精製工程は、反応工程と同様にヒドロキシルアミンの安定剤の存在下で行うことが好ましい。精製工程で新たに安定剤を添加してもよく、前工程からの安定剤をそのまま使用してもよい。
安定剤としては、反応工程で使用した安定剤と同じ種類のもの、または異なる種類のものを、精製工程の状況や製造されるヒドロキシルアミンの用途などに応じて選択することができる。安定剤を添加することにより、金属不純物などによるヒドロキシルアミンの分解等の副反応が抑制され、ヒドロキシルアミンの生産効率が向上する。
安定剤の量は、安定剤とヒドロキシルアミンとの質量比(安定剤/ヒドロキシルアミン)が1.0×10-9〜1.0、好ましくは1.0×10-8〜0.1の範囲内となるように
用いることが適している。上記質量比が1.0×10-9よりも小さい場合、金属不純物によるヒドロキシルアミンの分解反応を抑制する効果が得られないことがあり、質量比が1.0よりも大きい場合、過剰の安定剤の除去や回収が必要になることがある。
上記のイオン交換により精製する工程は、公知の方法、たとえば回分式、半回分式、連続式などで行うことができる。
前記ヒドロキシルアミンを製造する各工程は、反応工程、精製工程および蒸留工程の順に行われることが好ましい。
分離工程
本発明のヒドロキシルアミンの製造方法は、たとえば、上記のように反応工程、精製工程および蒸留工程を含む方法が、得られたヒドロキシルアミンと不溶性物質とを分離する分離工程を含むことが好ましく、前記各工程が、反応工程、分離工程、精製工程および蒸留工程の順に行われることが好ましい。
この不溶性物質は、たとえば上記反応工程で反応液中に析出した不溶性物質である。
不溶性物質としては、たとえば上記反応工程でヒドロキシルアミンの塩とアルカリ化合物との反応により生成した塩、ヒドロキシルアミンの塩、アルカリ化合物等が挙げられる。
つまり、上記反応工程でヒドロキシルアミンの塩とアルカリ化合物との反応により生成した塩、ヒドロキシルアミンの塩、アルカリ化合物等が、溶解度よりも濃度が高くなることにより不溶性物質として析出した場合には、不溶性物質を分離する分離工程を含んでもよい。
また、反応工程以外の工程で析出した不溶性物質も同様に分離することができる。
分離の方法としては、濾過、圧搾、遠心分離、沈降分離、浮上分離などの公知の方法を用いることができる。たとえば、濾過による分離では、自然濾過、加圧濾過、減圧濾過のいずれの方法で行ってもよく、沈降分離による分離では、清澄分離、沈殿濃縮のいずれの方法で行ってもよく、浮上分離による分離では、加圧浮上、電離浮上のいずれの方法で行ってもよい。
また、前記分離工程で分離した不溶性物質を溶媒で洗浄することにより、不溶性物質に付着または取り込まれたヒドロキシルアミンを回収することができる。
不溶性物質を洗浄する溶媒としては、反応工程で用いた溶媒と同じ溶媒を使用してもよ
く、別の溶媒を使用してもよい。このような洗浄溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、たとえば、炭化水素、エーテル、エステル、アルコールなどが挙げられるが、ヒドロキシルアミンの回収に影響がなければこれらに限定されるものではない。これらの中では、水および/またはアルコールを洗浄溶媒として用いることが好ましい。また、洗浄溶媒の量は、不溶性物質の種類および量、分離などの条件に応じて適宜選択することができる。
上記分離工程で不溶性物質を分離する際の温度は、0℃〜80℃が好ましく、さらに好ましくは5℃〜50℃の範囲内であることが望ましい。分離する際の温度が80℃より高いと、ヒドロキシルアミンの分解などの問題が生じることがある。一方、温度が0℃より低いと、冷却に要するエネルギーが大きくなるなどの問題が生じることがある。上記分離工程で不溶性物質を分離した濾液および/または不溶性物質を洗浄した濾液の一部もしくは全部を、反応原料であるヒドロキシルアミンの塩および/またはアルカリ化合物を溶解もしくは懸濁させる溶媒として用いてもよい。
上記分離工程は、反応工程と同様にヒドロキシルアミンの安定剤の存在下で行うことが好ましい。分離工程で新たに安定剤を添加してもよく、前工程からの安定剤をそのまま使用してもよい。
安定剤としては、反応工程で使用した安定剤と同じ種類のもの、または異なる種類のものを、分離工程の状況や製造されるヒドロキシルアミンの用途などに応じて選択することができる。安定剤を添加することにより、金属不純物などによるヒドロキシルアミンの分解等の副反応が抑制され、ヒドロキシルアミンの生産効率が向上する。
安定剤は、安定剤とヒドロキシルアミンとの質量比(安定剤/ヒドロキシルアミン)が1.0×10-9〜1.0、好ましくは1.0×10-8〜0.1の範囲内となるように用い
ることが適している。上記質量比が1.0×10-9よりも小さい場合、金属不純物によるヒドロキシルアミンの分解反応を抑制する効果が得られないことがあり、質量比が1.0よりも大きい場合、過剰の安定剤の除去や回収が必要になることがある。
本発明のヒドロキシルアミンの製造方法における分離工程は、公知の方法、たとえば回分式、半回分式、連続式などで行うことができる。
本発明のヒドロキシルアミンの製造方法は、安定剤の存在下、
(1)ヒドロキシルアミンの塩と、アルカリ化合物とを反応させてヒドロキシルアミンを得る反応工程。
(2)蒸留によりヒドロキシルアミンを得る蒸留工程。
を含むことが好ましい。
また、(1)および(2)の工程に、(3)ヒドロキシルアミンをイオン交換により精製する精製工程を含むことがさらに好ましい。これらの工程は、反応工程、精製工程および蒸留工程の順に行なうことが好ましい。また、(1)〜(3)の各工程は、(1)の工程を行った後にいかなる順序で行ってもよく、同じ工程を2回以上行ってもよい。
また本発明のヒドロキシルアミンの製造方法は、(4)ヒドロキシルアミンと不溶性物質とを分離する分離工程を含んでいてもよく、この工程は、上記反応工程の後に行なうことが好ましい。これらの工程は、反応工程、分離工程、精製工程および蒸留工程の順に行なうことが好ましい。また、本発明の製造方法は、(3)の精製工程を2回行うことにより、反応工程、分離工程、精製工程、蒸留工程および精製工程の順に行なうことが特に好ましい。
反応工程、分離工程、精製工程において使用される安定剤(特定安定剤および他の安定剤)は、特に限定はされないが、蒸留工程において使用される特定安定剤と同様のものを使用することが特に好ましい。反応工程において特定安定剤を使用することで、後の分離工程、精製工程、蒸留工程における安定剤の添加を省略することができる。
本発明の方法を用いることにより、10質量%以上の濃度のヒドロキシルアミン溶液を得ることができる。また、20質量%以上の濃度のヒドロキシルアミンを得ることができ、40質量%以上の濃度のヒドロキシルアミンを得ることもできる。
本発明の方法を用いることにより、不純物として含まれる各金属の含有量が1質量ppm以下であるヒドロキシルアミン溶液を得ることができる。また、各金属の含有量が0.1質量ppm以下であるヒドロキシルアミンを得ることができ、各金属の含有量が0.01質量ppm以下のヒドロキシルアミンを得ることもできる。不純物として含まれることのある金属としては、反応工程で用いたアルカリ化合物に由来するアルカリ金属、アルカリ土類金属やヒドロキシルアミンの分解を顕著に促進するFe等が挙げられる。
本発明の方法を用いることにより、不純物として含まれる各アニオンの含有量が100質量ppm以下であるヒドロキシルアミン溶液を得ることができる。また、各アニオンの含有量が10質量ppm以下であるヒドロキシルアミンを得ることができ、各アニオンの含有量が1質量ppm以下のヒドロキシルアミンを得ることもできる。不純物として含まれることのあるアニオンとしては、原料であるヒドロキシルアミンの塩に由来する硫酸イオン、塩化物イオン、硝酸イオン等が挙げられる。
本発明により最終的に得られるヒドロキシルアミンには、新たに安定剤を添加してもよく、前工程からの安定剤をそのまま使用してもよい。
安定剤としては、反応工程で使用した安定剤と同じ種類のもの、または異なる種類のものを、その状況や用途などに応じて選択することができる。安定剤を添加することにより、金属不純物などによるヒドロキシルアミンの分解等の副反応が抑制され、ヒドロキシルアミンの安定性が向上する。
<実施例>
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1−1]
CaO 30.8g(0.550モル)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸 0.020
6g(0.133ミリモル)およびH2O 175g(9.70モル)を1Lのガラス製反応器に仕込み、20℃で攪拌した。このときの反応液のpHは12.8であった。この反応液を撹拌しながら、硫酸ヒドロキシルアミン 82.1g(1.0モル)をH2O 12
3g(6.83モル)に溶解させた液を、反応液のpHを7以上に保ちながら添加していった。添加に要した時間は約40分であった。添加後、さらに20℃で3時間反応させた。反応液の最終的なpHは12.2であった。
得られた反応液を塩酸滴定により分析した結果、反応液中のヒドロキシルアミンは、32.7g(0.99モル)であり、硫酸ヒドロキシルアミンを基準としたヒドロキシルアミンの収率は99%であった。
[実施例1−2]
実施例1−1と同様に反応を行い、得られた反応終了後の20℃の反応液を減圧濾過し、反応液から不溶性の固体を分離した。さらにこの固体を、20℃のH2O 33.0g(
1.83モル)で5回洗浄した。
不溶性の固体を分離した反応液と、分離後の固体を洗浄した液とを混合した液(以下「混合液」ともいう。)について、塩酸滴定により分析した結果、混合液のヒドロキシルアミン濃度は7.6質量%であった。したがって、得られたヒドロキシルアミンは32.4g(0.98モル)であり、硫酸ヒドロキシルアミンを基準としたヒドロキシルアミンの収率は98%であった。
[実施例1−3]
Na型の強酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライト IR120B)
をポリテトラフルオロエチレン製カラムに充填し、これに1N−HCl水溶液を流通させてH型に変換し、さらに、H2Oにより十分に洗浄を行った。この強酸性陽イオン交換樹
脂に実施例1−2と同様の方法を用いて得られたヒドロキシルアミンの水溶液を、空間速度(SV)=1[h-1]で流通させた。
得られた水溶液をICP−MS(セイコーインスツルメンツ(株)製SPQ−900型)により分析した結果、不純物のNa、Caの各濃度は10質量ppb以下であった。
[実施例1−4]
1N−HCl水溶液の代わりに1N−H2SO4水溶液を使用した以外は実施例1−3と同様の操作を行ったところ、同様の結果が得られた。
[実施例1−5]
Cl型の強塩基性陰イオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライト IRA900
J)をポリテトラフルオロエチレン製カラムに充填し、これに1N−NaOH水溶液を流通させてOH型に変換し、さらに、H2Oにより十分洗浄を行った。この強塩基性陰イオ
ン交換樹脂に実施例1−3と同様の方法を用いて得られたヒドロキシルアミンの水溶液を空間速度(SV)=1[h-1]で流通させた。
得られた水溶液を陰イオンクロマトグラフィー(昭和電工(株)製SHODEX IC SI−90 4E)で分析した結果、不純物の硫酸イオン、塩素イオンの各濃度は、1.
0質量ppm以下であった。そして、ICP−MS(セイコーインスツルメンツ(株)製SPQ−900型)により分析した結果、不純物のNa、Ca、Feの各濃度は10質量ppb以下であった。
[実施例1−6]
実施例1−5と同様の方法を用いて得られたヒドロキシルアミンの水溶液に3,4−ジヒドロキシ安息香酸をヒドロキシルアミンに対して600質量ppmとなるように添加した。この液をオルダーショウ型蒸留塔の塔底に仕込み、減圧蒸留により濃縮した。塔底部温度が40℃以下となるように減圧度を調整し、塔頂より水を抜き出し、塔底部よりヒドロキシルアミン濃度が高い水溶液を回収した。
得られた塔底部の液を塩酸滴定により分析した結果、ヒドロキシルアミン濃度は51質量%で、仕込んだヒドロキシルアミンを基準とした収率は99%であった。そして、ICP−MS(セイコーインスツルメンツ(株)製SPQ−900型)により分析した結果、不純物のNa濃度は30質量ppb、Ca濃度は20質量ppb、Fe濃度は15質量ppbであった。さらに、陰イオンクロマトグラフィー(昭和電工(株)製SHODEX
IC SI−90 4E)で分析した結果、不純物の硫酸イオン濃度は1.5質量ppm、塩素イオン濃度は1.5質量ppm以下であった。
[実施例1−7]
Na型の強酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライト IR120B)
をポリテトラフルオロエチレン製カラムに充填し、これに1N−HCl水溶液を流通させてH型に変換し、さらに、H2Oにより十分洗浄を行った。この強酸性陽イオン交換樹脂
に実施例1−6と同様な方法で得られたヒドロキシルアミンの水溶液を、空間速度(SV)=1[h-1]で流通させた。
得られた水溶液を塩酸滴定により分析した結果、ヒドロキシルアミン濃度は51質量%であった。また、得られた水溶液をICP−MS(セイコーインスツルメンツ(株)製SPQ−900型)により分析した結果、不純物のNa、Caの各濃度は10質量ppb以下であった。
[実施例1−8]
Cl型の強塩基性陰イオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライト IRA900
J)をポリテトラフルオロエチレン製カラムに充填し、これに1N−NaOH水溶液を流通させてOH型に変換し、さらに、H2Oにより十分洗浄を行った。この強塩基性陰イオ
ン交換樹脂に実施例1−7と同様の方法を用いて得られたヒドロキシルアミンの水溶液を空間速度(SV)=1[h-1]で流通させた。
得られた水溶液を塩酸滴定により分析した結果、ヒドロキシルアミン濃度は51質量%であった。そして陰イオンクロマトグラフィー(昭和電工(株)製SHODEX IC SI−90 4E)で分析した結果、不純物の硫酸イオン、塩素イオンの各濃度は1.0質
量ppm以下であった。さらに、ICP−MS(セイコーインスツルメンツ(株)製SPQ−900型)により分析した結果、不純物のNa、Ca、Feの各濃度は10質量ppb以下であった。
[実施例1−9]
モノベッド樹脂(オルガノ(株)製超純水級アンバーライト ESG−1)をポリテト
ラフルオロエチレン製カラムに充填し、H2Oにより十分洗浄を行った。このモノベッド
樹脂に実施例1−8と同様な方法で得られたヒドロキシルアミンの水溶液を、空間速度(SV)=1[h-1]で流通させた。
得られた水溶液を塩酸滴定により分析した結果、ヒドロキシルアミン濃度は51質量%であった。そして、ICP−MS(セイコーインスツルメンツ(株)製SPQ−900型)により分析した結果、不純物のNa、Ca、Feの各濃度は10質量ppb以下であった。さらに、陰イオンクロマトグラフィー(昭和電工(株)製SHODEX IC SI−90 4E)で分析した結果、不純物の硫酸イオン、塩素イオンの各濃度は1.0質量p
pm以下であった。
[実施例1−10]
実施例1−2と同様の方法を用いて得られたヒドロキシルアミンの水溶液に3,4−ジヒドロキシ安息香酸をヒドロキシルアミンに対して600質量ppmとなるように添加した。この液を単蒸留塔の塔底に仕込み、減圧蒸留を行った。塔底部温度が40℃以下となるように減圧度を調整し、仕込んだヒドロキシルアミンに対して約半分量に相当するヒドロキシルアミン水溶液を塔頂より抜き出した。
得られた塔頂と塔底からのヒドロキシルアミン水溶液を各々、塩酸滴定により分析した結果、仕込んだヒドロキシルアミンを基準とした収率は合計で99%であった。
[実施例1−11]
実施例1−10と同様の方法を用いて塔頂より得られたヒドロキシルアミンの水溶液に3,4−ジヒドロキシ安息香酸をヒドロキシルアミンに対して600質量ppmとなるよ
うに添加した。この液をオルダーショウ型蒸留塔の塔底に仕込み、減圧蒸留により濃縮した。塔底部温度が40℃以下となるように減圧度を調整し、塔頂より水を抜き出し、塔底部よりヒドロキシルアミン濃度が高い水溶液を回収した。
得られた塔底部の液を塩酸滴定により分析した結果、ヒドロキシルアミン濃度は51質量%で、仕込んだヒドロキシルアミンを基準とした収率は99%であった。
[実施例2−1]
20質量%NaOH水溶液220g(NaOH 1.1モル)および3,4−ジヒドロキシ安息香酸 0.0220g(0.143ミリモル)を1Lのガラス製反応器に仕込み、20℃で攪拌した。この反応液を撹拌しながら、硫酸ヒドロキシルアミン 82.1g
(1.0モル)をH2O 465g(25.8モル)に溶解させた液を、約40分かけて添加していった。添加後、さらに20℃で3時間反応させた。
反応液を塩酸滴定により分析した結果、ヒドロキシルアミン濃度は4.2質量%であった。したがって、得られたヒドロキシルアミンは32.4g(0.98モル)であり、硫酸ヒドロキシルアミンを基準としたヒドロキシルアミンの収率は98%であった。
[実施例2−2]
Na型の強酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライト IR120B)
をポリテトラフルオロエチレン製カラムに充填し、これに1N−HCl水溶液を流通させてH型に変換し、さらに、H2Oにより十分洗浄を行った。この強酸性陽イオン交換樹脂
に実施例2−1と同様の方法を用いて得られたヒドロキシルアミンの水溶液を、空間速度(SV)=1[h-1]で流通させた。得られた水溶液をICP−MS(セイコーインスツルメンツ(株)製SPQ−900型)により分析した結果、不純物のNa、Caの各濃度は10質量ppb以下であった。
[実施例2−3]
1N−HCl水溶液の代わりに1N−H2SO4水溶液を使用した以外は実施例2−2と同様の操作を行ったところ、同様の結果が得られた。
[実施例2−4]
Cl型の強塩基性陰イオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライト IRA900
J)をポリテトラフルオロエチレン製カラムに充填し、これに1N−NaOH水溶液を流通させてOH型に変換し、さらに、H2Oにより十分洗浄を行った。この強塩基性陰イオ
ン交換樹脂に実施例2−2と同様の方法を用いて得られた不純物の陽イオンを除去したヒドロキシルアミンの水溶液を空間速度(SV)=1[h-1]で流通させた。
得られた水溶液を陰イオンクロマトグラフィー(昭和電工(株)製SHODEX IC SI−90 4E)で分析した結果、不純物の硫酸イオン、塩素イオンの各濃度は1.0
質量ppm以下であった。そして、ICP−MS(セイコーインスツルメンツ(株)製SPQ−900型)により分析した結果、不純物のNa、Ca、Feの各濃度は10質量ppb以下であった。
[実施例2−5]
実施例2−4と同様の方法を用いて得られたヒドロキシルアミンの水溶液に3,4−ジヒドロキシ安息香酸をヒドロキシルアミンに対して600質量ppmとなるように添加した。この液をオルダーショウ型蒸留塔の塔底に仕込み、減圧蒸留により濃縮させた。塔底部温度が40℃以下となるように減圧度を調整し、塔頂より水を抜き出し、塔底部よりヒドロキシルアミン濃度が高い水溶液を回収した。
得られた塔底部の液を塩酸滴定により分析した結果、ヒドロキシルアミン濃度は51質量%で、仕込んだヒドロキシルアミンを基準とした収率は99%であった。そして、ICP−MS(セイコーインスツルメンツ(株)製SPQ−900型)により分析した結果、不純物のNa濃度は30質量ppb、Ca濃度は20質量ppb、Fe濃度は15質量ppbであった。さらに、陰イオンクロマトグラフィー(昭和電工(株)製SHODEX
IC SI−90 4E)で分析した結果、不純物の硫酸イオン濃度は1.5質量ppm、塩素イオン濃度は1.5質量ppm以下であった。
[実施例2−6]
Na型の強酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライト IR120B)
をポリテトラフルオロエチレン製カラムに充填し、これに1N−HCl水溶液を流通させてH型に変換し、さらに、H2Oにより十分洗浄を行った。この強酸性陽イオン交換樹脂
に実施例2−5と同様の方法を用いて得られたヒドロキシルアミンの水溶液を、空間速度(SV)=1[h-1]で流通させた。
得られた水溶液を塩酸滴定により分析した結果、ヒドロキシルアミン濃度は51質量%であった。そして、ICP−MS(セイコーインスツルメンツ(株)製SPQ−900型)により分析した結果、不純物のNa、Caの各濃度は10質量ppb以下であった。
[実施例2−7]
Cl型の強塩基性陰イオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライト IRA900
J)をポリテトラフルオロエチレン製カラムに充填し、これに1N−NaOH水溶液を流通させてOH型に変換し、さらに、H2Oにより十分洗浄を行った。この強塩基性陰イオ
ン交換樹脂に実施例2−6と同様の方法を用いて得られた不純物の陽イオンを除去したヒドロキシルアミンの水溶液を空間速度(SV)=1[h-1]で流通させた。
得られた水溶液を塩酸滴定により分析した結果、ヒドロキシルアミン濃度は51質量%であった。そして、陰イオンクロマトグラフィー(昭和電工(株)製SHODEX IC SI−90 4E)で分析した結果、不純物の硫酸イオン、塩素イオンの各濃度は1.0
質量ppm以下であった。さらに、ICP−MS(セイコーインスツルメンツ(株)製SPQ−900型)により分析した結果、不純物のNa、Ca、Feの各濃度は10質量ppb以下であった。
[実施例2−8]
モノベッド樹脂(オルガノ(株)製超純水級アンバーライト ESG−1)をポリテト
ラフルオロエチレン製カラムに充填し、H2Oにより十分洗浄を行った。このモノベッド
樹脂に実施例2−7と同様な方法で得られたヒドロキシルアミンの水溶液を、空間速度(SV)=1[h-1]で流通させた。
得られた水溶液を塩酸滴定により分析した結果、ヒドロキシルアミン濃度は51質量%であった。そして、ICP−MS(セイコーインスツルメンツ(株)製SPQ−900型)により分析した結果、不純物のNa、Ca、Feの各濃度は10質量ppb以下であった。さらに、陰イオンクロマトグラフィー(昭和電工(株)製SHODEX IC SI−90 4E)で分析した結果、不純物の硫酸イオン、塩素イオンの各濃度は1.0質量p
pm以下であった。
[比較例1]
3,4−ジヒドロキシ安息香酸の代わりに1,10−フェナントロリンをヒドロキシルアミンに対して600質量ppmとなるように添加した以外は実施例1−6と同様に蒸留を行い、塔頂より水を抜き出し、塔底部よりヒドロキシルアミン濃度が高い水溶液を回収
した。
得られた塔底部の液を塩酸滴定により分析した結果、ヒドロキシルアミン濃度は51質量%で、仕込んだヒドロキシルアミンを基準とした収率は95%であった。
本発明の製造方法によれば、安全に高濃度のヒドロキシルアミンを高収率で製造することができ、得られたヒドロキシルアミンは、医農薬中間体の原料、還元剤、金属表面の処理剤、繊維処理、染色、電子工業などに、幅広く用いることができる。

Claims (21)

  1. 芳香環上の連続する2以上の炭素原子の各々に水酸基を有する芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種の安定剤の存在下にヒドロキシルアミンを含む溶液を蒸留し、該蒸留によりヒドロキシルアミンを得る蒸留工程を含むことを特徴とするヒドロキシルアミンの製造方法。
  2. 前記蒸留工程が、蒸留塔の塔底部からヒドロキシルアミンを得るものである請求項1に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  3. 前記安定剤が、カテコール、4−tert−ブチルカテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、1,2,4−ベンゼントリオール、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンゾニトリルおよび3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1または2に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  4. 前記安定剤が、1,2,4−ベンゼントリオール、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシベンゾニトリルおよび3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜3のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  5. 前記蒸留工程が0℃〜70℃の範囲内で行われる請求項1〜4のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  6. ヒドロキシルアミンの塩とアルカリ化合物とを反応させてヒドロキシルアミンを得る反応工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  7. 前記反応工程が、アルカリ化合物を含む反応液にヒドロキシルアミンの塩が添加される工程である請求項6に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  8. 前記反応工程が、反応液のpHを7以上に保ちながら行われる請求項6または7に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  9. 前記反応工程が0℃〜80℃の範囲内で行われる請求項6〜8のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  10. 前記反応工程が、水および/またはアルコールを含む溶媒の存在下に行われる請求項6〜9のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  11. 前記ヒドロキシルアミンの塩が、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミン、硝酸ヒドロキシルアミンおよびリン酸ヒドロキシルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項6〜10のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  12. 前記アルカリ化合物が、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アンモニアおよびアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項6〜10のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  13. ヒドロキシルアミンをイオン交換により精製する精製工程を含む請求項1〜12のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  14. 前記精製工程が0℃〜70℃の範囲内で行われる請求項13に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  15. 前記ヒドロキシルアミンを製造する各工程が、反応工程、精製工程および蒸留工程の順に行われる請求項13または14に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  16. ヒドロキシルアミンと不溶性物質を分離する分離工程を含む請求項1〜15のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  17. 前記分離工程が0℃〜80℃の範囲内で行われる請求項16に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  18. 前記ヒドロキシルアミンを製造する各工程が、反応工程、分離工程、精製工程および蒸留工程の順に行われる請求項16または17に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  19. 前記蒸留工程の後にヒドロキシルアミンをイオン交換により精製する精製工程をさらに含む請求項18に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  20. 前記蒸留工程の後の精製工程が0℃〜70℃の範囲内で行われる請求項19に記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
  21. 前記各工程が安定剤の存在下に行われる請求項6〜20のいずれかに記載のヒドロキシルアミンの製造方法。
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