JP2006210609A - プリント配線基板実装用治具 - Google Patents

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Abstract

【課題】凸部の存在するFPC基板を電子部品の実装に適した状態に剥離可能に保持でき、FPC基板への粘着剤の付着の虞がないプリント配線基板実装用治具を提供する。
【解決手段】搬送パレット11は、パレット基板12と、パレット基板12の片面に形成された粘着性を有するシリコーンエラストマーシート層13とを備えている。搬送パレット11は、シリコーンエラストマーシート層13側にFPC基板に形成されている凸部に合った大きさの凹部14が形成されている。凹部14はシリコーンエラストマーシート層13を貫通しないように形成されている。シリコーンエラストマーシート層13として、動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定したせん断弾性率G’が5.0×10Pa〜5.0×10Paの範囲にあるシリコーンエラストマーのシートが使用されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、プリント配線基板実装用治具に係り、詳しくはFPC基板(Flexible Printed Circuit基板)や薄板プリント配線基板に半導体チップ等の電子部品を表面実装する際に使用するのに好適なプリント配線基板実装用治具に関する。
フレキシブルプリント配線基板(FPC基板)は厚みが薄く、柔軟性に富んでいるために近年、小型電子機器の回路を構成する基材として中心的な役割を果たしている。しかし、FPC基板は強度、平坦度、熱収縮性等の特性から、半導体チップの実装については、紙フェノール基板やガラスエポキシ基板と同様に取り扱うことができない。このため、ステンレス材等で作成された搬送パレットの上に、FPC基板を位置決めして接着テープで貼り付け、ステンレス板を補強板として使用することによって半導体チップを実装する方法が採用されている。
ところが、FPC基板を搬送パレットに位置決めして接着テープで貼るという作業は手作業となるため、作業効率が低下するという問題がある。また、接着テープを剥がした後の糊残りは品質上好ましくない。
このような問題を解決する方法として、図8に示すように、板体よりなる治具ベース41の表面中央部にザグリ部42を形成し、このザグリ部42に弱粘着性樹脂を塗布してプリント配線基板43を剥離可能に貼着するための弱粘着性接着剤層44を形成したプリント配線基板実装用治具45を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。プリント配線基板実装用治具45は、ザグリ部42の周縁寄りにさらに深くザグリされた凹部46が形成されており、凹部46には弱粘着性接着剤層44は形成されず、プリント配線基板43に形成された突部47が凹部46と係合するようになっている。この方法では、プリント配線基板実装用治具45の表面に前記弱粘着性接着剤層44を介してプリント配線基板43を貼着した後、必要箇所に孔が形成されたメタルマスクを前記プリント配線基板の表面に位置合わせして重合し、次いで前記メタルマスクの表面にクリーム半田を塗布して、該クリーム半田を前記メタルマスクの孔に充填する。次に、前記メタルマスクを除去してから、プリント配線基板43上に残ったクリーム半田の上に電子部品を搭載して加熱し、その後、前記プリント配線基板実装用治具45を除去する。
また、接着テープ無しでFPC基板を搬送パレットに密着固定可能なFPC基板用の搬送パレット及びその搬送パレットを使用したFPC基板への半導体チップ実装方法も提案されている(特許文献2参照)。図9に示すように、この搬送パレット51は、非伸縮性の支持体52と、粘着性を有するシリコーンエラストマー層53との積層板として形成されている。
特許第3328248号公報(明細書の段落[0008],[0009]、図1) 特開2003−273581号公報(明細書の段落[0023]〜[0025]、図1,図2)
ところが、特許文献1に記載されたプリント配線基板実装用治具45では、プリント配線基板43全体を治具ベース41に剥離可能に粘着させるため、相応の大きさのザグリ部42が必要であり、ザグリ部42全体に弱粘着性樹脂を塗布して弱粘着性接着剤層44を形成する必要がある。そのため、ザグリ部42の加工に工数がかかる。また、プリント配線基板43を治具ベース41と平行に粘着させるためには、弱粘着性接着剤層44をその表面が平坦になるように形成する必要があるが、ザグリ部42に連続する凹部46が存在するため、凹部46にはみ出さずに弱粘着性接着剤層44を平坦に形成するのが難しい。また、電子部品を実装した後、プリント配線基板実装用治具45を除去した際にプリント配線基板43に弱粘着性樹脂が残らず、しかも電子部品の実装が完了するまで、プリント配線基板43を確実にプリント配線基板実装用治具45上に保持する粘着強度(接着強度)の弱粘着性接着剤層44を形成するのが難しい。
一方、特許文献2に記載された搬送パレット51では、弱粘着性樹脂の塗布に起因する前記の問題はない。しかし、FPC基板に補強板等の凸部が存在する場合、図9に示すように、搬送パレット51のシリコーンエラストマー層53上にFPC基板54を貼付した際、凸部54aと対向する部分が浮き上がり、FPC基板54の電子部品等の実装面、即ちシリコーンエラストマー層53と対向する面と反対側の面が平面に保持されない状態となる。その結果、FPC基板54上への半田印刷や半田リフロー工程で不具合が生じるという問題がある。
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、凸部の存在するFPC基板を電子部品の実装に適した状態に剥離可能に保持でき、FPC基板への粘着剤の付着の虞がないプリント配線基板実装用治具を提供することにある。
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、パレット基板上に、粘着性を有するシリコーンエラストマーシート層が形成され、前記シリコーンエラストマーシート層側には保持すべきプリント配線基板に形成されている凸部に合った大きさの凹部が形成されている。凹部はシリコーンエラストマーシート層を貫通する状態及び貫通しない状態のいずれであってもよい。
この発明のプリント配線基板実装用治具は、シリコーンエラストマーシート層側の面がプリント配線基板の凸部側の面に接する状態で、シリコーンエラストマーシート層の粘着性を利用して、接着テープ無しでFPC基板等のプリント配線基板を搬送パレットに密着保持する。接着テープや粘着剤を使わないため、プリント配線基板を搬送パレットから除去しても糊残り、即ち粘着剤や接着剤がプリント配線基板に付着して残ることがない。前記凸部が前記凹部に収容されることによりプリント配線基板の位置決めが行われるため、プリント配線基板の位置決めを行うための位置決めピンがなくてもプリント配線基板をプリント配線基板実装用治具の所定の位置に密着保持できる。また、プリント配線基板は凸部と反対側の面である半導体チップ等の電子部品の実装面が平坦(水平)な状態でプリント配線基板実装用治具に保持され、半田印刷や半田リフロー工程で不具合が生じるのが回避される。従って、凸部の存在するFPC基板を電子部品の実装に適した状態に剥離可能に保持でき、FPC基板への粘着剤の付着の虞がない。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記凹部は前記シリコーンエラストマーシート層を貫通しないように形成されている。シリコーンエラストマーシート層は耐熱性が高く、半田リフロー工程においても搬送パレットは繰り返し使用できるが、それでも劣化は避けられず、繰り返し使用により劣化した場合、シリコーンエラストマーシート層を新しいものと交換する必要がある。プリント配線基板の凸部の大きさは一定ではなく、凹部の大きさもそれに対応して異なる。従って、凹部がパレット基板にまで達していると、パレット基板を再利用する際、同じ凹部の搬送パレット用としてしか再利用ができず、再利用を行い難い。しかし、凹部がシリコーンエラストマーシート層を貫通しないこの発明では、パレット基板の再利用を行い易い。
請求項3に記載の発明は、パレット基板上に、粘着性を有する2層構造のシリコーンエラストマーシート層が形成され、前記パレット基板と対向して設けられた第1層上に、保持すべきプリント配線基板に形成されている凸部の厚さと同じ厚さの第2層が積層され、前記第2層に前記凸部に合った断面形状の孔が形成されている。ここで、「凸部に合った断面形状」とは、パレット基板に平行な平面による孔の断面形状及び前記凸部の断面形状がほぼ同じで、凸部が孔に嵌合可能であることを意味する。
この発明では、孔の一端が第2層で塞がれることにより凸部に合った大きさの凹部が構成されており、凹部に凸部が収容された状態でプリント配線基板がシリコーンシート層に密着される。従って、請求項1の発明と同様な作用効果を奏する他に、凸部の厚さと同じ深さの凹部をザグリにより形成する場合に比較して凹部を容易に形成することができる。また、パレット基板に凹部を形成しないため、シリコーンエラストマーシート層を新しいものと交換する際にパレット基板の再利用を行い易い。
請求項4に記載の発明は、パレット基板上に、保持すべきプリント配線基板に形成されている凸部の厚さより厚く形成されるとともに前記凸部に合った断面形状の孔が形成された粘着性を有するシリコーンエラストマーシート層が形成され、前記孔内において前記パレット基板上に粘着性を有するシリコーンエラストマーシートが貼付されて深さが前記凸部の厚さに等しい凹部が形成されている。
この発明では、シリコーンエラストマーシート層に形成された孔の一端側が孔内においてパレット基板上に貼付されたシリコーンエラストマーシートで塞がれることにより凸部を収容する凹部が構成されている。従って、請求項1の発明と同様な作用効果を奏する他に、凸部の厚さと同じ深さの凹部をザグリにより形成する場合に比較して凹部を容易に形成することができる。また、パレット基板に凹部を形成しないため、シリコーンエラストマーシート層を新しいものと交換する際にパレット基板の再利用を行い易い。
請求項5に記載の発明は、パレット基板上に、保持すべきプリント配線基板に形成されている凸部の厚さより厚く形成されるとともに粘着性を有するシリコーンエラストマーシート層が形成され、前記シリコーンエラストマーシート層側から前記凸部に合った断面形状で前記シリコーンエラストマーシート層を貫通する孔が一部を構成する凹部が形成され、前記凹部の底には粘着性を有するシリコーンエラストマーシートを貼付した板が、前記シリコーンエラストマーシートが凹部の開口と対向する状態でかつ前記凹部の深さを前記凸部の厚さに等しくするように固定されている。
この発明では、請求項1の発明と同様な作用効果を奏する他に、凸部の厚さと同じ深さの凹部をシリコーンエラストマーシート層にザグリにより形成する場合に比較して凹部を容易に形成することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1、請求項2及び請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記凹部は10000〜60000rpmの回転速度で回転される切削具を使用して形成されている。凹部はプリント配線基板の位置決めの機能を有するため、凸部に合った大きさに精度良く形成する必要がある。シリコーンエラストマー板に貫通孔を形成する場合には、レーザー加工により孔の輪郭に沿って切断加工することで精度良く孔を形成できる。しかし、凹部の場合は輪郭だけでなく凹部全ての領域を焼き切る必要があり、レーザー加工では時間がかかる。しかし、この発明では、凹部は10000〜60000rpmの回転速度で回転される切削具を使用して形成されているため、レーザー加工に比較して凹部を短時間で形成できる。
本発明によれば、凸部の存在するFPC基板を電子部品の実装に適した状態に剥離可能に保持でき、FPC基板への粘着剤の付着の虞がないプリント配線基板実装用治具を提供することができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
図1は搬送パレットの模式断面図を示し、図2は実装装置上に搬送パレットが固定された状態の模式断面図を示す。
図1に示すように、プリント配線基板実装用治具としての搬送パレット11は、パレット基板12と、パレット基板12の片面に形成された粘着性を有するシリコーンエラストマーシート層13とを備えている。搬送パレット11は、シリコーンエラストマーシート層13側に保持すべきプリント配線基板としてのFPC基板(図2に図示)30に形成されている凸部(図2に図示)31に合った大きさの凹部14が形成されている。凹部14はシリコーンエラストマーシート層13を貫通しないように形成されている。また、搬送パレット11には実装装置に対して搬送パレット11を位置決め固定する固定用孔15が形成されている。固定用孔15は搬送パレット11の長手方向の両端部に形成されている。固定用孔15は、パレット基板12及びシリコーンエラストマーシート層13を貫通している。固定用孔15は、シリコーンエラストマーシート層13に形成された部分の孔径がパレット基板12に形成された部分の孔径より若干大きくなるように形成されている。なお、シリコーンエラストマーシート層13及びパレット基板12の部分の孔径の違いは僅かであるため、図では同じに示している。
パレット基板12にはアルミニウム板、アルミニウム合金板、ステンレス板、マグネシウム合金板、繊維強化エポキシ樹脂板等が使用される。パレット基板12は、厚さが、例えば、1mm程度に形成されている。
シリコーンエラストマーシート層13は、凸部31の厚さより厚く形成されており、一般には凸部31の厚さより100μm以上、好ましくは200μm以上厚く形成されている。厚さをあまり厚くしてもコストが高くなる割に利点がないため、凸部31の厚さより厚い部分は1mm以下が好ましい。
シリコーンエラストマーシート層13として、動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定したせん断弾性率G’が5.0×10Pa〜5.0×10Paの範囲にあるシリコーンエラストマーのシートが使用されている。せん断弾性率G’が低すぎると、シリコーンエラストマーが軟らかすぎてシリコーンエラストマーとFPC基板との密着力が大きく、FPC基板の取り外しが困難となる。反対にせん断弾性率G’が高すぎると、シリコーンエラストマーが硬過ぎて、シリコーンエラストマーとFPC基板との密着力が小さく、FPC基板の保持が困難となる。せん断弾性率G’が上記の範囲にあるようにシリコーンエラストマーを形成することにより、シリコーンエラストマーシート層13は、その密着力を適切な大きさにできる。シリコーンエラストマーの目的のせん断弾性率G’は、ポリオルガノシロキサンの種類、分子量、フィラー等、シリコーンエラストマーの組成と架橋度を適当に調整することによって得られる。
シリコーンエラストマーのシートを構成するシリコーンエラストマーは、次に示すようなシロキサン骨格を有するポリオルガノシロキサンを架橋することにより得られるエラストマーである。
Figure 2006210609
このシリコーンエラストマーは、Rのすべてがメチル基であるポリジメチルシロキサンをはじめ、メチル基の一部が他のアルキル基、ビニル基、フェニル基、フルオロアルキル基等の一種あるいはそれ以上と置換された各種のポリオルガノシロキサンを単独あるいは2種類以上ブレンドしたものである。
架橋方法は特に限定されるものではなく、従来より公知の方法が適用できる。例えば、ポリオルガノシロキサンのメチル基あるいはビニル基をラジカル反応で架橋する方法が挙げられる。また、シラノール末端ポリオルガノシロキサンと、加水分解可能な官能基を有するシラン化合物との縮合反応で架橋する方法や、ビニル基へのヒドロシリル基の付加反応で架橋する方法等が挙げられる。
前記のように構成された搬送パレット11の製造方法を説明する。搬送パレット11を製造する際は、先ずパレット基板12の片面にシリコーンエラストマーシート層13を形成する。シリコーンエラストマーシート層13の形成は、パレット基板12に適当なプライマー処理を施した後、未架橋のシリコーンエラストマーシートを積層するか、シリコーンエラストマー液を塗布してシリコーンエラストマー層を形成する。その後、いわゆる加硫接着を行うことで、パレット基板12上にシリコーンエラストマーシート層13を形成する。
次に搬送パレット11に固定用孔15を形成する。固定用孔15はドリル装置を使用して形成される。固定用孔15は、シリコーンエラストマーシート層13に形成された部分の孔径がパレット基板12に形成された部分の孔径より若干大きくなるように、2段階に分けて形成される。先ず、シリコーンエラストマーシート層13及びパレット基板12を貫通する孔が形成された後、シリコーンエラストマーシート層13の部分の孔径を、例えば、レーザー加工で拡大する。
次に搬送パレット11に凹部14を形成する。凹部14は、10000〜60000rpmの回転速度で回転される切削具としてのルータを使用して形成される。即ち、この実施形態では凹部14はザグリ部で構成されている。凹部14を形成する際、製造途中の搬送パレット11を所定の位置に固定する必要があるが、その際、固定用孔15を使用することにより、所定の位置に正確に固定するのが容易になる。
次に、前記のように構成された搬送パレット11を使用した場合の、プリント配線基板としてのFPC基板30への電子部品の実装方法を説明する。搬送パレット11を使用する場合は、図2に示すように、実装装置の載置部35に搬送パレット11を固定する。搬送パレット11は、載置部35に形成された穴36と、固定用孔15とが対応するとともにパレット基板12が載置部35と対向するように配置される。そして、ピン37を固定用孔15を貫通して穴36に嵌合する状態に押し込むことにより、実装装置の載置部35に対して搬送パレット11が位置合わせされた状態で固定される。固定用孔15は、シリコーンエラストマーシート層13の部分の孔径がパレット基板12の部分の孔径より小さく形成されているため、ピン37の挿入の際にシリコーンエラストマーシート層13が引っ張られることが回避される。その結果、シリコーンエラストマーシート層13が引っ張られてパレット基板12から剥がれ易くなるのが防止される。
次に搬送パレット11上にFPC基板30を配置する。FPC基板30は、凸部31が凹部14に収容された状態で配置されることにより、搬送パレット11の所定位置に位置決めされ、凸部31側の面がシリコーンエラストマーシート層13に密着する。そして、シリコーンエラストマーシート層13の粘着力により、FPC基板30が搬送パレット11の所定位置に密着状態で固定される。
次に、FPC基板30への半田ペースト印刷工程、電子部品の半田上への載置工程、半田リフロー工程等を経て図示しない半導体チップ等の電子部品がFPC基板30に実装される。その後、FPC基板30が搬送パレット11から取り外されて実装が終了する。搬送パレット11には次のFPC基板30が固定され、同様に電子部品の実装が繰り返される。
FPC基板30は、凸部31が搬送パレット11の凹部14に収容された状態で搬送パレット11に保持されるため、凸部31が設けられた面と反対側の面が水平な状態に保持される。従って、FPC基板30へのクリーム半田印刷や半田のリフローが円滑に行われる。
この実施形態では以下の効果を有する。
(1)搬送パレット11(プリント配線基板実装用治具)は、パレット基板12上に、粘着性を有するシリコーンエラストマーシート層13が形成され、シリコーンエラストマーシート層13側には保持すべきFPC基板30(プリント配線基板)に形成されている凸部31に合った大きさの凹部14が形成されている。従って、シリコーンエラストマーシート層13の粘着性を利用して、接着テープ無しでFPC基板30を搬送パレット11に密着保持するため、FPC基板30を搬送パレット11から取り外した際に糊残りがない。また、凸部31が凹部14に収容されることによりFPC基板30の位置決めが行われるため、位置決めピンがなくてもFPC基板30を搬送パレット11の所定位置に密着保持できる。また、FPC基板30は凸部31と反対側の電子部品の実装面が平坦(水平)な状態で搬送パレット11に保持され、半田印刷や半田リフロー工程で不具合が生じるのを防止できる。従って、凸部31の存在するFPC基板30を電子部品の実装に適した状態に剥離可能に保持でき、FPC基板30への粘着剤の付着の虞がない。
(2)凹部14はシリコーンエラストマーシート層13を貫通しないように形成されている。従って、凹部14がパレット基板12にまで達している構成に比較して、パレット基板12の再利用を行い易い。
(3)凹部14は10000〜60000rpmの回転速度で回転されるルーター(切削具)を使用して形成されている。従って、凹部14を精度良く所定の大きさに形成できる。また、レーザー加工で形成する場合に比較して凹部14を短時間で形成できる。
(4)固定用孔15は、シリコーンエラストマーシート層13に形成された部分の孔径がパレット基板12に形成された部分の孔径より若干大きくなるように形成されている。従って、実装装置の載置部35に対して搬送パレット11を固定するピン37の固定用孔15への挿入及び固定用孔15からの抜取りの際に、シリコーンエラストマーシート層13が引っ張られることが回避され、シリコーンエラストマーシート層13が引っ張られてパレット基板12から剥がれ易くなるのを防止できる。
(5)シリコーンエラストマーシート層13として、動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定したせん断弾性率G’が5.0×10Pa〜5.0×10Paの範囲にあるシリコーンエラストマーのシートが使用されている。従って、適正な粘着性を有するシリコーンエラストマーシート層13を容易に形成することができる。
(6)未架橋のシリコーンエラストマーシートを積層するか、シリコーンエラストマー液を塗布してシリコーンエラストマー層を形成した後、いわゆる加硫接着を行うことで、パレット基板12上にシリコーンエラストマーシート層13を形成している。従って、耐熱性の接着剤又は粘着剤を使用せずに、シリコーンエラストマーシート層13をパレット基板12に接着させることができる。
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態を図3にしたがって説明する。この実施形態ではシリコーンエラストマーシート層の構成が前記第1の実施形態と異なっている。前記実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略する。
搬送パレット11は、パレット基板12上に、粘着性を有する2層構造のシリコーンエラストマーシート層13が形成されている。パレット基板12と対向して設けられた第1層13a上に、保持すべきFPC基板30に形成されている凸部31の厚さと同じ厚さの第2層13bが積層されている。第2層13bに凸部31に合った断面形状の孔16が形成されている。この実施形態では、孔16の一端が第2層13bで塞がれることにより凸部31に合った大きさの凹部14が構成されている。そして、FPC基板30に半導体チップ等の電子部品を実装する際は、凹部14に凸部31が収容された状態でFPC基板30がシリコーンエラストマーシート層13に密着される。
搬送パレット11を製造する際は、パレット基板12の片面にシリコーンエラストマーシート層13を2回に分けて形成する。先ず第1層13aとなるシリコーンエラストマー層をパレット基板12上に形成した後、加硫接着を行うことで第1層13aを形成する。次に第2層13bとなるシリコーンエラストマー層を第1層13a上に形成した後、加硫接着を行う前にレーザー加工で孔16の外形に相当する溝を第2層13bの厚さと同じか僅かに深く形成する。そして、溝の内側の部分のシリコーンエラストマー層を除去して孔16を形成した後、加硫接着を行って第2層13bを第1層13aに接着する。次に固定用孔15を形成する。
従って、この第2の実施形態では、前記第1の実施形態の効果(1)、(2)、(4)、(5)と同様の効果を有する他に次の効果を有する。
(7)凹部14の形成をザグリ加工ではなく、第2層13bにレーザー加工で孔16を形成することによって形成することができるため、凸部31の厚さと同じ深さの凹部14をザグリにより形成する場合に比較して凹部14を容易に形成することができる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
〇 搬送パレット11を図4に示すような構成としてもよい。即ち、パレット基板12上に、保持すべきプリント配線基板に形成されている凸部の厚さより厚く形成されるとともに前記凸部に合った断面形状の孔17が形成された粘着性を有するシリコーンエラストマーシート層13が形成されている。孔17内においてパレット基板12上に粘着性を有するシリコーンエラストマーシート18が貼付されて深さが前記凸部の厚さに等しい凹部14が形成されている。孔17の形成は、第2の実施形態の場合と同様にレーザー加工によって行われる。この実施形態では、第2の実施形態と同様な作用効果を奏する。また、シリコーンエラストマーシート層13が1層で構成されているため、第2の実施形態より製造が簡単になる。
○ 搬送パレット11を図5に示すような構成としてもよい。即ち、パレット基板12上に、保持すべきプリント配線基板に形成されている凸部の厚さより厚く形成されるとともに粘着性を有するシリコーンエラストマーシート層13が形成されている。そして、シリコーンエラストマーシート層13側から前記凸部に合った断面形状でシリコーンエラストマーシート層13を貫通する孔19aが一部を構成する凹部19が形成されている。凹部19の底には粘着性を有するシリコーンエラストマーシート20aが貼付された板20が、シリコーンエラストマーシート20aが凹部19の開口と対向する状態でかつ前記凹部19の深さを前記凸部の厚さに等しくするように固定されている。板20を凹部19の底に固定するのは、図示しない接着剤やねじにより行われる。この実施形態では、第1の実施形態の(1)、(3)〜(6)と同様な作用効果を奏する。また、シリコーンエラストマーシート20aを貼付した板20として、シリコーンエラストマーシート20aを含めた厚さの異なるものを準備しておくことにより、多品種、即ち異なる厚さの凸部を有するプリント配線基板用の搬送パレット11の製造に対応し易い。
○ パレット基板12上にシリコーンエラストマーシート層13を形成する方法として、加硫接着に代えて、架橋処理されたシリコーンエラストマーシートを耐熱性粘着剤又は耐熱性接着剤を使用してパレット基板12上に接着してもよい。即ち、図6に示すように、パレット基板12とシリコーンエラストマーシート層13との間に耐熱接着層21が設けられた構成としてもよい。耐熱接着層21は半田リフロー工程の環境温度(200〜300℃)に耐えられる耐熱性粘着剤又は耐熱性接着剤で形成される。耐熱性粘着剤又は耐熱性接着剤としては、例えば、シリコーン系粘着剤、シリコーン系接着剤、アクリル系粘着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。この実施形態のようにシリコーンエラストマーシートを耐熱接着層21を介してパレット基板12上に接着すれば、FPC基板30を容易に取り外し可能に密着保持する機能と、FPC基板30を搬送パレット11から取り外す際にシリコーンエラストマーシート層13がパレット基板12から剥がれるのを防止する機能とを両立させることが容易になる。
○ 図7に示すように、シリコーンエラストマーシート層13が耐熱接着層を介してパレット基板12に接着された構成の搬送パレット11において、耐熱接着層を耐熱性粘着剤22a、耐熱フィルム22b及び耐熱性粘着剤22aで3層に構成された両面接着シート22で構成してもよい。耐熱性粘着剤22aとしてアクリル系粘着剤が使用され、耐熱フィルム22bとしてはポリエチレンテレフタレートフィルムが使用された構成の両面接着シートは市販されているため入手し易い。
○ FPC基板30を搬送パレット11の所定位置に位置合わせする場合、搬送パレット11の凹部14とFPC基板30の凸部31とによる位置決めに加えて、位置合わせ用孔とピンを使用する位置決めを併用してもよい。この場合、FPC基板30には位置合わせ用孔が形成され、搬送パレット11には位置合わせ用の穴又は孔が形成される。
○ 搬送パレット11には実装装置の載置部35との固定用孔15が形成されなくてもよいが、固定用孔15を形成すると、搬送パレット11を実装装置の載置部35の所定位置に容易に位置合わせした状態で固定できる。
○ 固定用孔15が形成される位置は、搬送パレット11の長手方向の両端部に限らない。
○ 第2の実施形態及び図4、図5に示す実施形態のように、第2層13bあるいはシリコーンエラストマーシート層13に孔16,17,19aが形成された構成の搬送パレット11の製造方法は、第2層13bあるいはシリコーンエラストマーシート層13をパレット基板12上に設けた後に、孔16,17,19aを形成する製造方法に限らない。例えば、第2層13bあるいはシリコーンエラストマーシート層13に孔16,17,19aが形成されたシリコーンエラストマーシートを第1層13aあるいはパレット基板12に接着してもよい。
○ 図4に示す構成の搬送パレット11に使用されるシリコーンエラストマーシート18及び図5に示す構成の搬送パレット11に使用されるシリコーンエラストマーシート20aは、必ずしも粘着性を備えていなくてもよい。しかし、粘着性を備えている方がFPC基板30を安定して密着保持できる。
○ 凹部14は底面がパレット基板12となる構成でもよい。しかし、粘着性を備えたシリコーンエラストマーシート層13あるいはシリコーンエラストマーシート18,20aが底面を構成する方が好ましい。
○ 搬送パレット11は、パレット基板12の片面全面にシリコーンエラストマーシート層13が形成された構成に限らず、密着保持すべきFPC基板30より広い面積であれば、シリコーンエラストマーシート層13が形成されない部分があってもよい。
○ 搬送パレット11に密着固定されるFPC基板30の数は1個に限らず、複数個であってもよい。その場合、密着保持すべきFPC基板30の凸部31の数に対応した数の凹部14,19が設けられる。
○ プリント配線基板はFPC基板30に限らず、薄板プリント配線基板であってもよい。
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明において、前記シリコーンエラストマーシート層には動的粘弾性測定により周波数10Hz、温度20℃で測定したせん断弾性率G’が5.0×10Pa〜5.0×10Paの範囲にあるシリコーンエラストマーのシートが使用されている。
(2)請求項1〜請求項6及び前記技術的思想(1)のいずれか一項に記載の発明において、前記パレット基板にはプリント配線基板実装用治具を実装装置に位置決め固定する際に使用可能な孔が形成されている。
第1の実施形態における搬送パレットの模式断面図。 実装装置上に搬送パレットが固定された状態の模式断面図。 第2の実施形態における搬送パレットの模式断面図。 別の実施形態における搬送パレットの模式断面図。 別の実施形態における搬送パレットの模式断面図。 別の実施形態における搬送パレットの模式断面図。 別の実施形態における搬送パレットの模式断面図。 従来技術を示す模式断面図。 別の従来技術を示す模式断面図。
符号の説明
11…プリント配線基板実装用治具としての搬送パレット、12…パレット基板、13…シリコーンエラストマーシート層、13a…第1層、13b…第2層、14,19…凹部、16,17,19a…孔、18,20a…シリコーンエラストマーシート、20…板、30…プリント配線基板としてのFPC基板、31…凸部。

Claims (6)

  1. パレット基板上に、粘着性を有するシリコーンエラストマーシート層が形成され、前記シリコーンエラストマーシート層側には保持すべきプリント配線基板に形成されている凸部に合った大きさの凹部が形成されているプリント配線基板実装用治具。
  2. 前記凹部は前記シリコーンエラストマーシート層を貫通しないように形成されている請求項1に記載のプリント配線基板実装用治具。
  3. パレット基板上に、粘着性を有する2層構造のシリコーンエラストマーシート層が形成され、前記パレット基板と対向して設けられた第1層上に、保持すべきプリント配線基板に形成されている凸部の厚さと同じ厚さの第2層が積層され、前記第2層に前記凸部に合った断面形状の孔が形成されているプリント配線基板実装用治具。
  4. パレット基板上に、保持すべきプリント配線基板に形成されている凸部の厚さより厚く形成されるとともに前記凸部に合った断面形状の孔が形成された粘着性を有するシリコーンエラストマーシート層が形成され、前記孔内において前記パレット基板上に粘着性を有するシリコーンエラストマーシートが貼付されて深さが前記凸部の厚さに等しい凹部が形成されているプリント配線基板実装用治具。
  5. パレット基板上に、保持すべきプリント配線基板に形成されている凸部の厚さより厚く形成されるとともに粘着性を有するシリコーンエラストマーシート層が形成され、前記シリコーンエラストマーシート層側から前記凸部に合った断面形状で前記シリコーンエラストマーシート層を貫通する孔が一部を構成する凹部が形成され、前記凹部の底には粘着性を有するシリコーンエラストマーシートを貼付した板が、前記シリコーンエラストマーシートが凹部の開口と対向する状態でかつ前記凹部の深さを前記凸部の厚さに等しくするように固定されているプリント配線基板実装用治具。
  6. 前記凹部は10000〜60000rpmの回転速度で回転される切削具を使用して形成されたザグリ部である請求項1、請求項2及び請求項5のいずれか一項に記載のプリント配線基板実装用治具。
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