JP2006210055A - 異常検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 燃料供給路に設けられた遮断弁の異常を正確に検出しうる異常検出装置を提供する。
【解決手段】 燃料タンクから燃料消費装置へ燃料を供給する供給路(19)に設けられた遮断弁(L3)の異常検出装置であって、該遮断弁(L3)の開弁指令時に、該遮断弁(L3)の上流及び下流の、燃料の状態に基づいて該遮断弁(L3)の異常を判断する。遮断弁(L3)に通じる配管(18)の上流を含めた燃料の状態に応じて異常を判断するので、下流に燃料漏れがあった場合に生じる従来の技術におけるような誤判定を抑制可能である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料タンクから燃料電池に至る配管上の遮断弁異常を検出するための異常検出装置に関する。
従来の遮断弁の異常検出装置として、例えば特開2003−308865号公報に記載されているように、燃料ガス圧力変化量と燃料供給源から供給された推定燃料ガス量とを比較して遮断弁が正常である故障しているかを判定する技術が知られていた(特許文献1)。
また、特開2003−308868号公報には、遮断弁を閉弁しその下流の圧力センサからの圧力情報と経過情報とに基づいて圧力低下率を計算して遮断弁の故障状態を判定する技術(特許文献2)、特開平9−22711号公報には、起動時に遮断弁が閉弁された状態でガス圧から遮断弁の故障診断を行う技術(特許文献3)がそれぞれ記載されている。
特開2003−308865号公報 特開2003−308868号公報 特開平9−22711号公報
しかしながら、配管破損やパージ弁の故障等、遮断弁以外の要因で遮断弁下流においてガス漏れが生じていた場合にも配管の圧力が変化してしまう。上記従来の技術では、下流の圧力変化で異常を診断していたが、下流の圧力変化の要因がいくつもあるため、遮断弁が正常に動作していたような場合にも遮断弁の異常であると誤って検出してしまう可能性があった。
そこで、本発明は、燃料供給路に設けられた遮断弁の異常を正確に検出しうる異常検出装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、燃料タンクから燃料消費装置へ燃料を供給する供給路に設けられた遮断弁の異常検出装置であって、該遮断弁の開弁指令時に、該遮断弁の上流及び下流の、燃料の状態に基づいて該遮断弁の異常を判断すること、を特徴とする。
上記構成によれば、遮断弁は、当該遮断弁に通じる配管の上流を含めた燃料の状態に応じて異常を判断するので、下流に燃料漏れがあった場合に生じる従来の技術におけるような誤判定を抑制可能である。
ここで、燃料の状態とは、燃料に対して計測可能な物理量の値をいい、例えば圧力、温度、及び流量その他のものをいう。このようなものであれば計測が容易で、弁不良が発生していた場合に変化が生じ、弁の異常発見が容易なパラメータだからである。
ここで、燃料消費装置が燃料電池である場合、燃料電池の出力が所定の運転条件から外れた場合に、遮断弁が開弁異常であると判断することは好ましい。燃料電池の出力が低下する場合には、遮断弁が不良で十分な燃料が供給されていない、すなわち遮断弁の開弁異常と考えられるからである。
また、燃料消費装置が燃料電池である場合、遮断弁下流の圧力が所定の圧力条件から外れた場合に、遮断弁が開弁異常であると判断することは好ましい。遮断弁の開弁異常が発生した場合、まず遮断弁下流の圧力が低下し、その帰結として燃料電池の出力が低下する。燃料電池の出力低下は、燃料の圧力低下以外の要因が考えられるため、正しく判定するためには判定ステップが複雑なものになる。この点、本構成によれば、遮断弁下流の出力低下に基づいて遮断弁の開弁異常を判断するので、迅速に遮断弁の異常を診断することができる。
本発明において、燃料電池の運転中において、遮断弁下流の圧力異常と燃料電池の出力異常とを検出する手段をさらに備えている場合、遮断弁下流の圧力異常の検出周期が燃料電池の出力異常の検出周期よりも短く設定されていることは好ましい。本構成によれば、遮断弁下流の圧力異常と燃料電池の出力異常とが独立して検出されるが、圧力異常の検出周期を出力異常の検出周期より短くすることで、遮断弁の開弁異常時に出力異常であると誤検出することを抑制できる。
本発明によれば、遮断弁の上流及び下流の燃料の状態に基づいて遮断弁の異常を判断するので、下流の配管の燃料漏れの影響で遮断弁が異常であると誤検出されることを抑制可能である。
本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態は、本発明の例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されることなく種々に変形して実施可能である。
図1に、本発明の異常検出装置を適用した燃料電池システムのシステムブロック図を示す。当該燃料電池システムは、例えば自動車等の移動体に搭載されるもので、燃料ガスとして液体水素から発生するボイルオフガスを充填する充填手段として充填タンク11〜13を備えており、ボイルオフガスの量に応じて充填タンク11〜13の容積を変更可能に構成されている。このボイルオフガスが本発明における燃料に相当する。
図1に示すように、本燃料電池システムは、燃料電池スタック100に、燃料ガスである水素ガスを供給する水素ガス供給系1、酸化ガスである空気を供給する空気供給系2、燃料電池スタック100を冷却する冷却系3、燃料電池スタック100で発電された電力を充放電する電力系4、およびシステム全体を制御する制御部50を備えている。
水素ガス供給系1は、燃料ガスとして液体水素から発生するボイルオフガスを充填・供給可能に、燃料タンク10及び充填タンク11〜13を中心として構成されている。燃料タンク10は、真空二重構造を備えており、沸点が極めて低い(およそ20K)液体水素を貯蔵可能となっている。また、この液体水素から発生するボイルオフガスをある程度の高圧まで貯蔵することが可能な耐圧構造を備えている。燃料タンク10には、内圧がかなり高くなった場合に内圧を下げるためのリリーフ弁が設けられている。また、燃料タンク10には、液体燃料が液相で残留している量を調べるためのレベルゲージLGが制御部50から読み取り可能に設けられており、液体燃料の液面位置を計測することで液体燃料が液体として存在している量を制御部50に把握させることが可能になっている。
充填タンク11〜13はいずれも類似の構造を備えており、燃料タンク10からのボイルオフガスをある程度の高圧まで充填可能に構成されている。これらの充填タンクにも、所定値以上に内圧が達した場合に内圧を下げるリリーフ弁R1〜R3が設けられている。
これらタンク間を連通する配管・弁構造を説明する。液体燃料充填口FIから燃料タンク10までは燃料充填路16が敷設され、燃料タンク10から充填タンク11〜13の入口側までは充填配管17が互いに連通した構造で敷設されている。また充填タンク11〜13の出口側は各タンクからのボイルオフガスを共通して供給するための燃料供給路18が互いに連通した構造で敷設され、主配管19に接続されている。
燃料充填路16は、液体燃料充填口FIから燃料タンク10への連通路であり、液体燃料充填時に利用されるものである。燃料充填路16には液体燃料充填口FIから順に逆止弁RV1、RV2、手動弁H1、遮断弁L1が設けられている。液体燃料充填口FIは、液体燃料スタンドなどで液体水素充填機の供給ノズルを接続可能な構造を備え、液体水素充填機と当該燃料電池システムの制御部50と間で通信可能なように、図示しないコネクタも設けられている。
逆止弁RV1及びRV2は、直列接続された二重構造になっている。逆止弁により、万一いずれかの弁においてシール不良等の弁不全が生じたとしても液体水素が逆流することを防止することが可能になっている。圧力センサp1及びp2は、逆止弁RV1及びRV2で区画される燃料充填路16の各区間の圧力を計測するために設けられている。
手動弁H1は、製造時の調整やサービス時に手動開閉されるサービス用弁であり、通常使用時には所定の開度で開弁されている。遮断弁L1は制御部50によって開閉制御が可能な電磁弁となっており、液体燃料供給時には開弁するよう制御されるものである。燃料タンク10の入口側にはタンク内圧、すなわち液体水素が気化して発生したボイルオフガスの圧力を計測するための圧力センサp3、及びボイルオフガスの内部温度を計測するための温度センサt1が設けられている。
充填配管17は、燃料タンク10と各充填タンク11〜13とを連通させるものであり、燃料タンク10の出口近傍に手動弁H2が設けられている。また各充填タンク11〜13に分岐した後の充填タンク入口側には、各充填タンクに対応させた逆止弁RV3〜RV5、手動弁H3〜H5がそれぞれ設けられている。
逆止弁RV3〜RV5は本発明に係り、所定の開弁圧力に達すると自動的に開弁するように構成されている。手動弁H3〜H5は、製造時の調整やサービス時に手動開閉されるサービス用弁であり、通常使用時には所定の開度で開弁維持されている。各充填タンク11〜13の入口にはタンク内のボイルオフガス圧力を計測するための圧力センサp4〜p6、及び各タンクの内部温度を計測するための温度センサt2〜t4が設けられている。
燃料供給路18は、各充填タンク11〜13を連通させ主配管19に接続するためのものである。燃料供給路18のうち各充填タンク11〜13に対応した枝管部分には、調整弁R1〜R3、手動弁H6〜H8、遮断弁G1〜G3がそれぞれ対応づけられて設けられている。調整弁R1〜R3は、各充填タンク11〜13から燃料供給路18への供給圧力をそれぞれ規定するもので、所定の差圧でボイルオフガスを出力するように調整されている。手動弁H6〜H8は、製造時の調整やサービス時に手動開閉されるサービス用弁であり、通常使用時には所定の開度で開弁維持されている。
燃料充填路16と燃料供給路18とは、遮断弁L2を介してバイパス可能になっている。これは燃料充填路16内に残留しているボイルオフガスを速やかに遮断弁L2経由で燃料供給路18に供給し燃料電池スタック100で消費させるためである。
主配管19以降の構成について説明する。主配管19の上流側から順に、調圧弁R4,R5、遮断弁L3、燃料電池スタック100内の流路を経て、気液分離器14及び遮断弁SV4、水素ポンプ15、並びにパージ遮断弁L5が設けられ、水素ガスの循環経路を構成している。このうち遮断弁L3が本発明に係り、本発明に係る異常検出装置の動作によって異常を検出する対象となっている。この遮断弁L3より上流、すなわち圧力センサp11、p10等で計測される圧力が遮断弁上流の燃料状態であり、遮断弁L3より下流、すなわち圧力センサp12、p13等で計測される圧力が遮断弁下流の燃料状態となる。
主配管19上、調圧弁R4及びR5は、燃料供給路18からのボイルオフガスを調圧して出力するように構成されている。シール不良に対応するため調圧弁R4及びR5はダイアフラムが二重化されたものである。調圧弁R4やR5のいずれも、配管内が所定以上の圧力になった場合に減圧するためのリリーフ弁が設けられている。本発明に係る遮断弁L3は、発電の開始・停止に応じて開閉し、主配管19上でボイルオフガスの供給の有無を制御可能に構成される。圧力センサp10は、燃料供給路18における内圧を計測可能に設けられ、圧力センサp11は、調圧弁R4−R5間の内圧を計測可能に設けられ、圧力センサp12は、燃料電池スタック100の内圧を計測可能に設けられ、圧力センサp13は、水素ポンプ15の入口圧力を計測可能に設けられている。
燃料電池スタック100は、単セルという発電構造体を複数積層したスタック構造を備える。各単セルは、MEA(Membrane Electrode Assembly)といわれる発電体を、水素ガス(ボイルオフガス)、空気、冷却水の流路が設けられたセパレータ一対によって挟み込んだ構造を備えている。MEAは高分子電解質膜をアノード及びカソードの二つの電極を挟み込んで構成されている。アノードはアノード用触媒層を多孔質支持層上に設けてあり、カソードはカソード用触媒層を多孔質支持層上に設けてある。
燃料電池スタック100のアノードに供給されたボイルオフガスは、マニホールド経由で各単セルに供給され、セパレータの燃料ガス流路を流れて、MEAのアノードにおいて電気化学反応を生じるようになっている。燃料電池スタック100から排出されたボイルオフガス(水素オフガス)は、気液分離器14に供給される。気液分離器14は、通常運転時において燃料電池スタック100の電気化学反応により発生する水分その他の不純物を水素オフガス中から除去し、遮断弁L4を通じて外部に放出するように構成されている。水素ポンプ15は、水素オフガスを強制循環させて主配管19に戻すことにより、循環経路を構成している。パージ遮断弁L5は、パージ時に開放されるが、通常の運転状態及び配管内ガス漏れ判定時には遮断されている。パージ遮断弁SV5からパージされた水素オフガスは希釈器25を含む排気系で処理される。
空気供給系2は、エアクリーナ21、コンプレッサ22、加湿器23、気液分離器24、希釈器25、及び消音器26を備えている。エアクリーナ21は、外気を浄化して燃料電システムに取り入れる。コンプレッサ22は、取り入れられた空気を制御部50の制御に従って圧縮し供給する空気量や空気圧を変更するようになっている。燃料電池スタック100のカソードに供給された空気は、ボイルオフガスと同じくマニホールド経由で各単セルに供給され、セパレータの空気流路を流れて、MEAのカソードにおいて電気化学反応を生じる。燃料電池スタック100から排出された空気(空気オフガス)加湿器23は圧縮された空気に対し、空気オフガスと水分の交換を行って適度な湿度を加える。燃料電池スタック100に供給された空気は、マニホールド経由で各単セルに供給され、セパレータの空気流路を流れて、MEAのカソードにおいて電気化学反応を生じるようになっている。燃料電池スタック100から排出された空気オフガスは、気液分離器24において過剰な水分が除去される。希釈器25は、パージ遮断弁L5から供給された水素オフガスを空気オフガスで混合・希釈し、酸化反応が生じ得ない濃度にまで均一化するよう構成されている。消音器26は、混合された排気ガスの騒音レベルを低減させて排出可能に構成されている。
冷却系3は、ラジエタ31、ファン32、冷却ポンプ33、冷却装置34、及びロータリーバルブC1〜C4を備えている。ラジエタ31は、多数の配管を備え、分流された冷却液がファン32の送風により強制空冷されるようになっている。冷却ポンプ33は、冷却液を燃料電池スタック100内部に循環供給されるようになっている。燃料電池スタック100内に入った冷却液は、マニホールド経由で各単セルに供給されセパレータの冷却液流路を流れ、発電によって生じる熱を奪うようになっている。冷却装置34はコンデンサ等を備えており、空冷を上回る冷却性能を備え、冷却液の温度を低下させることが可能になっている。
当該冷却系3は、冷却経路35〜37のいずれかをロータリーバルブC1またはC2を切り替えることで選択可能になっている。冷却経路35は、ラジエタ31による空冷無しで冷却液を冷却ポンプ33に供給する経路であり、冷却経路36は、ラジエタ31による強制空冷をする経路である。冷却経路37は、本発明の充填タンク11〜13を冷却するための循環経路である。ロータリーバルブC1は、充填タンク11〜13のための冷却経路37か、冷却経路35・36かを切り替えるものであり、ロータリーバルブC2は、充填タンク11〜13から循環してきた冷却液を、空冷無しの冷却経路35を通すか、空冷させる冷却経路36を通すかを切り替えるものである。冷却経路37には、ロータリーバルブC3及びC4が設けられている。ロータリーバルブC3は充填タンク11に冷却液を供給するか否かの選択を、ロータリーバルブC4は充填タンク12に冷却液を供給するか否かの選択をするように構成されている。冷却経路37は、各充填タンク11〜13においてボイルオフガスの入出力口付近(逆止弁RV3〜RV5や調圧弁R1〜3付近)を冷却可能に配管されており、ボイルオフガスの温度を制御して圧力を低減させることが可能になっている。
特にロータリーバルブC1とC2は、起動時に冷却経路35に冷却液が循環するように制御される。起動時にラジエタ31や充填タンク11〜13に冷却液が流れないようにすることで、温度差が大きい冷却液が供給されて生ずる熱衝撃によって破壊を抑制するためである。
電力系4は、DC−DCコンバータ40、バッテリ41、トラクションインバータ42、トラクションモータ43、補機インバータ44,高圧補機45等を備えている。燃料電池スタック100は単セルが直列接続されて構成されるもので、そのアノードAとカソードCとの間に所定の高圧電圧(例えば約500V)が発生する。DC−DCコンバータ40は燃料電池スタック100の出力電圧と異なる端子電圧を有するバッテリ)41との間で双方向の電圧変換を行い、燃料電池スタック100の補助電源としてバッテリ41の電力を利用したり、または、燃料電池スタック100からの余剰電力をバッテリ41に充電したりすることが可能になっている。当該DC−DCコンバータ40は制御部50の制御に対応した端子間電圧を設定可能である。バッテリ41は、バッテリセルが積層されて一定の高電圧を端子電圧とし、図示しないバッテリーコンピュータの制御によって余剰電力を充電したり補助的に電力を供給したりが可能になっている。トラクションインバータ42は直流電流を三相交流に変換し、トラクションモータ43に供給するものである。トラクションモータ43は例えば三相モータであり、当該燃料電池システムが搭載される自動車の主動力源である。補機インバータ44は、高圧補機45を駆動するための直流−交流変換手段である。高圧補機45は、コンプレッサ22、水素ポンプ15、ファン32、冷却ポンプ33等の燃料電池システムの運転に必要な各種モータ類である。
制御部50は、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路等を汎用コンピュータとしての構成を備えている。制御部50は、内蔵ROM等に格納されているソフトウェアプログラムを順次実行することにより、主として水素ガス供給系1、空気供給系2、冷却系3、電力系4を含む燃料電池システム全体を制御することが可能になっている。特に、本実施形態では、本システムを本発明の異常検出装置として動作させるためのソフトウェアプログラムをCPUが実行することによって、本システムに異常検出処理を行わせるようになっている。
次に本実施形態における動作を説明する。
特に本実施形態では、遮断弁L3の開弁指令時に、遮断弁L3の上流及び下流の燃料ガスの状態に基づいて遮断弁L3の異常を判断することが可能に構成されている。本実施形態では燃料ガスの状態としてガス量と圧力、セル電圧を参照している。
具体的には、燃料電池スタック100の出力に対応するセル電圧が所定の運転条件、すなわち所定の下限電圧値から外れた場合に、遮断弁L3が開弁異常であると判断する。
また、遮断弁L3下流の圧力である、燃料電池スタック100の入口圧力が所定の圧力条件から外れた場合に、遮断弁L3が開弁異常であると判断する。
さらに、遮断弁L3下流の圧力異常の検出周期t1が燃料電池の出力異常の検出周期t2よりも短く設定されている。
図2に示すフローチャートに基づいて、本実施形態の異常検出処理を説明する。
異常検出処理の実行周期である時間t1が経過する前は(S0:NO)他の処理が実施される。時間t1が経過したら(S0:YES)、この異常検出処理が実行される。
まず、低圧配管中の燃料ガス量Q1及び高圧配管中の燃料ガス量Q2が測定される(S1)。低圧配管中の燃料ガス量Q1とは、遮断弁L3の下流側の燃料電池スタック100を含む水素ガス循環系の燃料ガス量であり、圧力センサp12で検出される配管内圧及び図示しない温度センサで計測される配管内温度等に基づいて計算される。高圧配管中の燃料ガス量Q2とは、遮断弁L3の上流側の主配管19及び燃料供給路18中の燃料ガス量であり、圧力センサp11及びp10並びに図示しない温度センサで計測される配管内温度等に基づいて計算される。
次いで、燃料電池スタック100の所定の単セルにおいて測定されたセル電圧Vsがしきい値V1以下であるか否かが検査される(S2)。このセル電圧Vsは、燃料電池スタック100を構成する多数の単セルのうち特定の単セルの電圧としてもよいし、複数の単セルにおいて測定された電圧の平均値であってもよい。このように単セル電圧を測定するのは、単セル電圧が低下する原因の一つとして、遮断弁L3の開弁不良が考えられるからである。そのほか単セル電圧が低下する原因として、単セル自体が電解膜の特性低下等で動作不良を生じている場合、遮断弁L3の上流におけるガス量が少ない場合、遮断弁L3の下流の主配管19上において何らかのガス漏れが生じている場合等が考えられる。以下、それらを区別して遮断弁L3の開弁不良が生じているかを検査する。
単セルの電圧Vsがしきい値V1以下と判断された場合(S2:YES)、まず遮断弁L3の上流側に存在する燃料ガス量Q2が十分であるかが検査される(S4)。そもそも遮断弁L3の上流側の燃料ガス量が少なければ遮断弁L3が正常であったとしても燃料ガスが不足し燃料電池スタック100の出力状態、例えば単セルの発電電圧が低下するからである。
遮断弁L3の上流側の高圧配管の燃料ガス量Q2が所定のしきい値Qj1以上であった場合(S4:NO)、単セルにおける発電は一応正常である。このとき主配管19中の圧力センサp11によって計測される配管内圧がpj1以下であるか、圧力センサp10によって計測される配管内圧がpj2以下であるかが判断される(S3)。高圧配管内の圧力p10またはp11がこれらしきい値より低かった場合(S3:YES)、単セルの発電量がたまたま燃料電池スタック100内に蓄積された燃料ガスで持続されていたとしても、そもそも異常検出処理ができる正常な状態ではない。そのため、高圧配管内の燃料ガス量Q2が十分であるかの判断に移行する(S4)。一方、高圧配管内の圧力p10やp11がともにしきい値より大きければ(S3:NO)、特に問題となるような状態は生じていない。そのためそのまま異常検出処理を終了させる。
さて、遮断弁L3の上流側の高圧配管の燃料ガス量Q2が所定のしきい値Qj1より少なかった場合(S4:YES)、燃料ガスがそもそも供給されていないということになる。そこで、充填タンク11〜13からの燃料ガス供給を制御する遮断弁W1〜W3が開閉させられ、ある程度の燃料ガスが燃料供給路18を介して主配管19に排出される(S10)。ここで再度高圧配管内の燃料ガス量Q2がしきい値Qj1と比較される(S11)。
燃料ガス量Q2がしきい値Qj1以上になっていれば(S11:YES)、とりあえず高圧配管における燃料ガス量Q2は異常検出処理に対応するための条件を満たしたものとして、遮断弁W1〜W3とも正常に判断していると判断し、燃料電池スタック100による発電を継続する(S12)。すなわち、予定どおりの高圧配管における燃料ガス量が確保できたため正常運転に戻せたものと判断するのである。
一方、遮断弁W1〜W3を開閉させたはずにも拘わらず燃料ガス量Q2がしきい値Qj1より少ないままである場合には(S11:NO)、充填タンク11〜13に充填された燃料ガスが期待どおりに燃料供給路18に排出されていないと考えられる。そこでこのような場合には遮断弁W1〜W3の総てまたは一部が開弁不良であると判断し、所定の開弁不良の警告処理をする(S13)。また上流の遮断弁W1〜W3の不良は燃料電池システムの運転継続に大きな支障となるため、システム全体の停止処理に移行する。
ステップS4において、遮断弁L3の上流側の高圧配管には十分な燃料ガス量Q2が排出されていると判断された場合(S4:YES)、単セル自体の不良である場合、低圧配管にガス漏れが生じている場合、そして遮断弁L3自体の開弁不良である場合のいずれかが考えられる。
まず低圧配管内の燃料ガス量Q1がしきい値Qj2以上であった場合(S5:YES)、燃料ガス自体は十分な量が燃料電池スタック100に供給されていると考えられる。そこでこのように単セルの発電電圧Vsの低下状態が一定時間t2以上継続しているか否かが検査される(S6)。この一定時間t2は、すなわち燃料電池の発電状態の測定周期である。一定時間t2以上継続している場合には(S6:YES)、十分な燃料ガスの供給があるにも拘わらず単セル自体が発電できないので、電解膜特性の劣化、過剰な水ぬれ等の燃料電池における電気化学反応を妨げる要因が発生しているものとして、電圧が低下している旨の警告をし、これ以上の発電ができない状態となっているため、燃料電池システム全体を停止させる処理に移行する(S8)。単セルの低電圧状態が一定時間t2以上続かなかった場合には(S6:NO)、一時的な電圧低下、例えば一時的に電解質膜表面に発生した水蒸気が過多となって正常な電気化学反応を妨げていた等が存在しただけと考えられるため、正常復帰したものと判断される。
なおここで単セルの発電電圧の低下を監視する周期t2よりも圧力異常を検出する周期t1の方が大きい。このように周期を設定することにより、遮断弁L3が開弁異常であるかそれ以外の圧力低下要因による異常であるかが識別可能である。
さて、低圧配管内の燃料ガス量Q1がしきい値Qj2より少なかった場合(S5:YES)、十分な燃料ガスが燃料電池スタック100に供給されていないものと考えられる。この原因としては、遮断弁L3自体の開弁不良か低圧配管にガス漏れが生じているかのいずれかが考えられる。そこで、まず、予め用意してある燃料電池スタック100による発電量と、低圧配管内の燃料ガス量Q1との二次元マップより、燃料電池スタック100の入口圧力p12の低下速度と、それに基づき燃料ガス量低下速度ΔQdが演算される(S20)。そしてこの燃料ガス量低下速度ΔQdが所定のしきい値Qj3以上であるか否かが検査される(S21)。
燃料ガス量低下速度ΔQdがしきい値Qj3以上である場合(S21:YES)、これは低圧配管内で燃料ガスが急速に減少していることを示している。そこで、この場合には低圧配管におけるガス漏れが生じているものとして、ガス漏れが生じている旨の警告をし、燃料電池システム全体の停止処理に移行する(S22)。
一方、燃料ガス量低下速度ΔQdがしきい値Qj3より小さい場合(S21:NO)、取りあえず低圧配管内にガス漏れは生じていないものとして、遮断弁L3自体の動作確認に移行する。まず遮断弁L3に開閉指示をして高圧配管から低圧配管に一定量の燃料ガスを送り込む(S23)。ここで正しく遮断弁L3が動作していれば、この処理により低圧配管の燃料ガス量は上昇するし、正しく動作していなければ低圧配管の燃料ガス量は上昇しない。
そこで低圧配管内の燃料ガス量Q1がしきい値Q2以上になったかどうかが検査される(S24)。低圧配管内の燃料ガス量Q1が上昇した場合には(S24:YES)、遮断弁L3は正常に動作していると判断できるため、発電を継続させる(S25)。一方、低圧配管内の燃料ガス量Q1しきい値Qj2以上に上昇しなかった場合、すなわち期待とおりに低圧配管内に燃料ガスが供給されなかったときには(S24:NO)、ここで初めて遮断弁L3自体に不良が発生したものと判断し、遮断弁L3に不良が生じた旨の警告をし、燃料電池システム全体の停止処理に移行する(S26)。
以上、本実施形態によれば、遮断弁L3に通じる配高圧配管の燃料状態(燃料ガス量等)を含めて異常を判断するので、遮断弁L3の不良を正しく判定することが可能である。特に単セルの出力低下時に遮断弁L3の開弁不良を含めて異常診断をすることができる。
また本実施形態によれば、遮断弁L3の低圧配管が所定の圧力条件から外れた場合、すなわちガス量減少速度が相対的に少ない場合に、遮断弁が開弁異常であるので、複数存在する燃料電池スタックにおける電圧低下原因から、正しく迅速に、遮断弁L3自体の異常を診断することができる。
さらに本実施形態によれば、圧力異常の検出周期t1を出力異常の検出周期t2より短く設定したので、遮断弁L3の開弁異常時にもかかわらず先に単セルに出力異常があり不良であると誤検出することを抑制できる。
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されることなく種々に変形して適用することが可能である。
例えば、上記各実施形態では、高圧配管内の圧力や燃料ガス量、低圧配管内の燃料ガス量や減少速度等により遮断弁L3の異常検出をしていたが、上記パラメータの他に、燃料ガスの温度その他の要素を燃料ガスの状態として判断してもよい。
また本発明は、燃料電池システムを搭載する車両、船舶、航空機などの移動体のみならず、ビル、家屋などの閉空間に定置された燃料電池システムにも適用することが出来る。つまり、燃料ガスの供給配管に遮断弁を利用するシステム一般に利用可能な構成だからである。
本発明の異常検出装置を搭載した実施形態の燃料電池システムのブロック構成図 本発明の異常検出処理を説明するフローチャート
符号の説明
1 水素ガス供給系、2 空気供給系、3 冷却系、4 電力系、100 燃料電池スタック、10 燃料タンク、11〜13 充填タンク、18 燃料供給路、19 主配管、L1〜5、G1〜G3 遮断弁

Claims (4)

  1. 燃料タンクから燃料消費装置へ燃料を供給する供給路に設けられた遮断弁の異常検出装置であって、
    該遮断弁の開弁指令時に、該遮断弁の上流及び下流の、燃料の状態に基づいて該遮断弁の異常を判断すること、を特徴とする異常検出装置。
  2. 前記燃料消費装置は燃料電池であって、
    前記燃料電池の出力が所定の運転条件から外れた場合に、前記遮断弁が開弁異常であると判断する、請求項1に記載の異常検出装置。
  3. 前記燃料消費装置は燃料電池であって、
    前記遮断弁下流の圧力が所定の圧力条件から外れた場合に、前記遮断弁が開弁異常であると判断する、請求項1に記載の異常検出装置。
  4. 前記燃料電池の運転中において、前記遮断弁下流の圧力異常と前記燃料電池の出力異常とを検出する手段をさらに備え、
    前記遮断弁下流の圧力異常の検出周期が前記燃料電池の出力異常の検出周期よりも短い、請求項2または3に記載の異常検出装置。
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