近年の油圧ショベル等の作業機械では、作業機械自体の大型化やメンテナンス性及び作業効率の向上の点から燃料タンクの大型化が進み、例えば容量が2000リットル(以下「リットル」を「L」で表す)、さらには3000Lを超える大容量型の燃料タンクが実用化されてきている。このような大容量型の燃料タンクにおいても、収容されている燃料の残量を計測する手段としては、上記特許文献1〜4等で用いられているフロートセンサーが主として利用されている。
しかしながら、従来から一般的に用いられているフロートセンサーでは、1つのフロートセンサーによって計ることのできる計測可能な範囲は、燃料タンクの横断面積の大きさによっても異なるが、最大でも1200〜1300L程度の量である。したがって、上記のような大容量型の燃料タンクでは、1つのフロートセンサーを用いて燃料タンク内の残量を満タンの状態から空の状態に至るまでの全ての状態に渡って残量を計測することはできなかった。
そのため、従来の大容量型の燃料タンクでは、例えば燃料タンクの下部にフロートセンサーを配設し、低残量領域のみにおいて残量の計測を行っている。一方、フロートセンサーの計測範囲を超える上部側の残量領域では、残量の計測は基本的に行われておらず、残量表示計器では常に「Full」と表示されるようになっていた。
このため、従来の燃料の残量表示では、燃料タンク内の残量がフロートセンサーの計測範囲に減少するまでの長い間はFull状態の表示が行われている。残量がフロートセンサーの計測範囲まで減少したときには、Full状態の表示からフロートセンサーにより計測された残量の表示に切り換わり、フロートセンサーで計測された残量が残量表示計器に正確に表示されるようになる。しかしながら、この場合、残量表示計器でFull状態の表示が長時間行われていたのに対し、フロートセンサーにより計測された残量を表示し始めてからEmpty状態の表示になるまでの時間が短くなる。特に、油圧ショベル等の燃料消費量が大きい作業機械の場合には、短時間でEmpty状態の表示になってしまうという問題があった。
そのため、作業機械を操縦する運転者からは、燃料タンク内の残量が満タンの状態から空の状態まで正確に表示されること、さらに燃料タンクの残量の状態を容易に把握できるように、残量表示計器に示される残量の増減が滑らかに表示されることが望まれていた。
上記のような大容量型の燃料タンクにおける問題を解消する方法として、例えば計測範囲の広い大型のフロートセンサーを用いて大容量型の燃料タンクの残量を計測することが考えられる。しかしながら、計測範囲の広い大型のフロートセンサーを用いて残量の計測を行う場合、計測の誤差が非常に大きく、信頼性に乏しいという問題があった。そのため、例えば燃料タンクの低残量領域での残量表示に誤差が生じた場合には、燃料タンクへの補給を適切な時期に行うことができなくなる。このため、作業機械が燃料切れを起こして作業の停止を余儀なくされたり、また反対に、燃料タンク内に燃料が十分に残っているにも関わらず燃料の補給が行われてしまい、燃料タンクへの補給回数が必要以上に多くなって作業の効率化を妨げるといった問題もあった。
また、大容量型の燃料タンクの残量を正確に計測し、且つ残量の計測範囲を広くする方法として、例えば従来から用いられているフロートセンサーを燃料タンクの上下方向に複数個並べて配設し、燃料の液面レベルの変位を複数個のフロートセンサーで連続的に計測することが考えられる。しかしながら、この場合は複数個のフロートセンサーが必要になるため、コストアップを招くという問題があった。
さらにその他の方法として、例えば上記特許文献3及び4に例示されているような、超音波やレーザ光を利用して燃料の液面までの距離を測定することにより、大容量型の燃料タンクの残量を広い範囲で正確に計測する方法も考えられる。しかしながら、この場合も超音波やレーザ光などの設備コストが高くなり、実用化に適さないという問題があった。
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、大容量型の燃料タンクにおいて、残量が満タンの状態から空の状態に至るまでの全体に渡って、残量の表示を安価な手段で適切に行うことができ、しかも低残量領域での残量表示を正確に行うことができ、さらに残量の変化を全体に渡って滑らかに表示することが可能な燃料の残量表示システム及び残量表示方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の残量表示システムは、大容量型の燃料タンク内にある燃料の残量を計測して表示する残量表示システムであって、前記燃料タンク内の残量が所定の基準量以下となる範囲において、残量を計測するフロートセンサーと、前記燃料タンク内の残量が前記基準量を超える範囲において、残量を検知する少なくとも一つのフロートスイッチと、前記フロートセンサーにより得られる残量を表示するセンサー残量表示部及び前記フロートスイッチにより得られる残量を表示するスイッチ残量表示部を有する表示手段と、を備えてなることを最も主要な特徴とするものである。
本発明の残量表示システムにおいて、前記フロートスイッチが、前記燃料タンクの異なる高さ位置において多段に設けられ、前記燃料タンク内の残量を多段階に分けて検知してなることが好ましい。
また、上記残量表示システムでは、前記フロートスイッチによる検知信号を受けると演算を開始し、前記検知信号を受けたのちの時間の経過に伴う燃料タンク内の燃料の消費量を算出する消費量演算部と、前記フロートスイッチで検知したときの残量から、前記消費量演算部で算出した消費量を減算し、前記燃料タンク内の残量を演算する残量演算部とを有する燃料残量演算手段を備え、前記燃料残量演算手段で求めた前記燃料タンク内の残量を、前記表示手段のスイッチ残量表示部に連続的に表示してなることが好ましい。
この場合、前記燃料タンク内の燃料を消費するエンジンの燃料噴射量を制御するエンジンコントローラーを備え、前記エンジンコントローラーから出力されたエンジンの燃料噴射量のデータに基づいて、前記消費量演算部が前記消費量を演算してなることが望ましい。
さらに本発明の残量表示システムは、前記表示手段が、前記燃料タンク内の残量が所定の警告量以下になったときに警報を出力してなることが好ましい。
次に、本発明に係る残量表示方法は、大容量型の燃料タンク内にある燃料の残量を計測して表示する残量表示方法であって、前記燃料タンク内の残量が所定の基準量以上のときに、少なくとも一つのフロートスイッチで残量を検知すること、前記燃料タンク内の残量が前記基準量以下となるときに、フロートセンサーで残量を計測すること、前記フロートスイッチにより得られる残量及び前記前記フロートセンサーにより得られる残量を表示手段に表示することを含んでなることを最も主要な特徴とするものである。
このような本発明の残量表示方法では、前記燃料タンクの異なる高さ位置に多段に設けた前記フロートスイッチにより、前記燃料タンク内の残量を多段階に分けて検知することを含んでなることが好ましい。
また、上記残量表示方法において、前記フロートスイッチによる検知信号を受けると演算を開始し、同演算により前記検知信号を受けたのちの時間の経過に伴う燃料タンク内の燃料の消費量を算出すること、前記フロートスイッチで検知したときの残量から、前記算出した消費量を減算して、前記燃料タンク内の残量を演算すること、前記演算された燃料タンク内の残量を前記表示手段に連続的に表示することを含んでなることが好ましい。
本発明に係る燃料の残量表示システムは、燃料タンク内で所定の基準量以下となる範囲の残量を計測するフロートセンサーと、所定の基準量を超える範囲の残量を検知する少なくとも一つのフロートスイッチと、これらフロートセンサー及びフロートスイッチより得られる残量を表示する表示手段とを備えている。これにより、燃料タンク内の残量が基準量以下の範囲では、フロートセンサーで残量の計測を連続的に且つ正確に行うことができ、一方燃料タンク内の残量が所定基準量を超える範囲では、フロートスイッチが配設されている位置で残量を確実に検知することができる。また、上記表示手段では、残量が基準量を超えるときにはフロートスイッチにより得られた残量をスイッチ残量表示部に表示でき、残量が基準量以下のときにはフロートセンサーより得られた残量をセンサー残量表示部に表示できるため、燃料タンク内の残量を満タンの状態から空の状態に至るまでの全ての状態に渡って適切に表示することができる。さらに、この表示手段の残量表示は、フロートセンサー及びフロートスイッチにより得られる残量が表示されるため、信頼性の高いものとなり、しかも、残量が基準量以下のフロートセンサーより計測される低残量領域では、残量の表示を非常に正確に行うことができる。
なお、本発明において、上記所定の基準量とは、フロートセンサーを、残量が空の状態を含む低残量領域の残量計測ができるように配設したときに、そのフロートセンサーが計測可能な残量範囲の上限量を示している。
また本発明は、フロートスイッチが燃料タンクの異なる高さ位置において多段に設けられることにより、燃料タンク内の残量を多段階に分けて検知することができる。これにより、燃料タンク内の残量が基準量を超えているときに、残量の変化を段階的に検知でき、また表示手段では各フロートスイッチで検知された残量を表示することができる。
さらに本発明では、フロートスイッチによる検知信号を受けたのちの時間の経過に伴う燃料タンク内の燃料の消費量を算出する消費量演算部と、フロートスイッチで検知したときの残量から消費量演算部で算出した消費量を減算して、燃料タンク内の残量を演算する残量演算部とを有する燃料残量演算手段を備えることができ、この燃料残量演算手段で求めた燃料タンク内の残量を表示手段で連続的に表示することができる。これにより、燃料タンク内の残量が基準量を超える範囲において、フロートスイッチでは検知されない範囲の残量を燃料残量演算手段で補間して求めることができる。さらに、この燃料残量演算手段で演算した残量を表示手段に表示することにより、基準量を超える範囲の残量の変化を表示手段で連続的に且つ滑らかに表示することができる。
この場合、エンジンの燃料噴射量を制御するエンジンコントローラーを備えることができ、前記消費量演算部では、エンジンコントローラーから出力されたエンジンの燃料噴射量のデータに基づいて消費量を演算することができる。このようにエンジンの燃料噴射量に基づいて演算された消費量を用いることにより、燃料タンク内の残量を燃料残量演算手段の残量演算部で正確に演算することができ、表示手段での残量表示もより信頼性の高いものとなる。
さらに本発明では、表示手段が燃料タンク内の残量が所定の警告量以下になったときに警報を出力させることができる。この出力された警報により、運転者は、燃料タンク内の残量がなくなりかけていることを確実に把握することができ、燃料切れにより作業機械の稼動が停止する前に給油を合理的に行うことができる。
次に、本発明に係る残量表示方法は、燃料タンク内の残量が所定の基準量以上のときに少なくとも一つのフロートスイッチで残量を検知すること、燃料タンク内の残量が所定の基準量以下となるときにフロートセンサーで残量を計測すること、フロートスイッチにより得られる残量及びフロートセンサーにより得られる残量を表示手段に表示することを含んでいる。
これにより、燃料タンク内の残量が所定基準量以下の範囲では、残量の計測をフロートセンサーで正確に行うことができ、また燃料タンク内の残量が所定基準量以上の範囲では、少なくとも一つのフロートスイッチによって、残量をフロートスイッチが配設されている位置で確実に検知することができる。さらに、これらフロートセンサー及びフロートスイッチより得られる燃料タンク内の残量を表示手段に表示することにより、表示手段では、燃料タンク内の残量を満タンの状態から空の状態に至るまで適切に表示することができる。特に、残量が基準量以下となる低残量領域においては、残量表示を正確に行うことができる。
また、本発明の残量表示方法は、燃料タンクの異なる高さ位置に多段に設けたフロートスイッチにより、燃料タンク内の残量を多段階に分けて検知することができる。これにより、燃料タンク内の残量が基準量を超えているときに、多段に設けたフロートスイッチで残量の変化を段階的に検知でき、表示手段でより正確に残量の表示を行うことができる。
さらに本発明では、フロートスイッチによる検知信号を受けると、この検知信号を受けたのちの時間の経過に伴う燃料タンク内の燃料の消費量を算出し、フロートスイッチで検知した残量から算出した消費量を減算して燃料タンク内の残量を演算し、この演算された燃料タンク内の残量を表示手段に連続的に表示することができる。これにより、フロートスイッチでは検知されない範囲の残量を燃料残量演算手段で補間して求めて、表示手段で連続的に且つ滑らかに表示することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係る燃料の残量表示システムの構成を模式的に表す模式図であり、図2は、表示手段の具体的な態様の一例を概略的に示す図である。
本発明に係る燃料の残量表示システムは、例えば油圧ショベル等の作業機械等に適用されるような容量が2000L、さらには3000Lを超える大容量型の燃料タンク内の残量を計測して表示する残量表示システムである。図1には、その一例として、燃料の最大容量が3200Lである燃料タンクの残量を計測して表示する残量表示システムの構成が示されている。
この図1に示した残量表示システム1は、大容量型の燃料タンク2内に収容されている燃料3の残量が所定の基準量以下となる範囲において残量を計測するフロートセンサー4と、残量が所定の基準量を超える範囲において残量を検知する第1、第2、及び第3のフロートスイッチ5,6,7と、フロートセンサー4により得られる残量及びフロートスイッチ5,6,7により得られる残量を表示するための残量表示計器となる表示手段10とが備えられている。
ここで、上記基準量は、フロートセンサー4における残量計測可能範囲の上限となる値である。この基準量の値は、燃料タンクのサイズやフロートセンサーの測定能力によって変化するが、例えば油圧ショベル等に配設される燃料の最大容量が3000Lを超えるようなサイズの燃料タンクに対して、現在実用化されているフロートセンサーの中で最も大型のものを使用した場合、フロートセンサーの残量計測可能な範囲の上限は1200〜1300L程度である。本実施形態においては、フロートセンサー4として、最大容量が3200Lの燃料タンクに対する残量計測範囲の上限が1280Lであるものを使用し、基準量の値を1280Lとする場合について説明する。なお、フロートセンサー4としては、上記のような残量を1280Lの範囲で測定できるフロートセンサーに限定されるものではない。
このようなフロートセンサー4としては、従来から一般的に使用されているものを使用することができる。例えば図1に示したように、可変抵抗器11と、可変抵抗器11に上下回動可能に支持されたアーム12と、アーム12の先端に取り付けられたフロート13とからなり、燃料3の液面レベルをフロート13の上下動位置により検出するものを使用することができる。また、本実施形態においては、フロートセンサー4を、燃料タンク2内で基準量(1280L)以下の低残量領域において残量を計測できるように、燃料タンクの下部の所定高さ位置に設置する。
また、燃料タンク内の残量を検知する第1〜第3のフロートスイッチ5,6,7は、燃料タンク2内の1280Lを超える範囲において、異なる高さ位置に3段で設けられている。これらのフロートスイッチ5,6,7は、燃料タンクに収容されている燃料の液面レベルに応じてスイッチのON/OFF作動を行って、燃料の残量を検知するものであり、従来一般的に用いられているようなフロートスイッチを利用することができる。
従って、第1〜第3のフロートスイッチ5,6,7をそれぞれ燃料タンクの異なる高さ位置に設置しておき、その高さ位置においてフロートスイッチのONからOFFへの変化を調べることによって、燃料の残量を第1〜第3のフロートスイッチ5,6,7が設置されている各ポイントで正確に求めることができる。
例えば、図1に示した最大容量が3200Lの燃料タンクにおいては、第1のフロートスイッチを2800Lの残量が検知できる位置に設置し、また第2及び第3のフロートスイッチ6,7は、それぞれ2300L及び1800Lの残量が検知できる位置に設置する。このように3段階でフロートスイッチを設けることにより、燃料タンク内の残量を、2800L、2300L及び1800Lの各ポイントで段階的に検知することができる。なお、本実施形態では、3台のフロートスイッチを等間隔に配設する場合について説明しているが、本発明はこれに限定されず、各フロートスイッチの設置間隔を適宜変更することも可能である。
そして、本実施形態の残量表示システムでは、上記フロートセンサー4は計測した残量のデータを出力し、また、第1〜第3のフロートスイッチ5,6,7は検知された残量のデータをそれぞれ出力することができる。そして、フロートセンサー4及び第1〜第3のフロートスイッチ5,6,7から出力された残量のデータは、燃料残量演算手段8に入力されるように構成されている。
この燃料残量演算手段8は、第1〜第3のフロートスイッチ5,6,7の何れかによる検知信号を受けると演算を開始し、前記検知信号を受けたのちの時間の経過に伴う燃料タンク内の燃料の消費量を算出する消費量演算部と、その検知信号を出力したフロートスイッチで検知した残量から、消費量演算部で算出した消費量を減算することにより、燃料タンク内の残量を演算する残量演算部とを有している。
この場合、例えば図1に示したように、残量表示システム1が、燃料タンク2内の燃料を消費するエンジンの燃料噴射量を制御するエンジンコントローラー9を備えることにより、このエンジンコントローラー9からエンジンの燃料噴射量のデータを出力し、この出力された燃料噴射量のデータを燃料残量演算手段8の消費量演算部に入力することができる。
これにより、燃料残量演算手段8の消費量演算部では、第1〜第3のフロートスイッチ5,6,7の何れかで残量を検知した後に、エンジンコントローラー9より入力されたエンジンの燃料噴射量のデータに基づいて、フロートスイッチで残量を検知したのちの時間の経過に伴って燃料タンクから消費される燃料の消費量を算出することができる。さらに、燃料残量演算手段8の残量演算部では、フロートスイッチ5,6,7で検知された残量のデータから、前記消費量演算部で算出した燃料消費量を減算することにより、第1〜第3のフロートスイッチ5,6,7では検知されない範囲の残量を演算して求めることができる。
また、燃料残量演算手段8は、フロートセンサー4及び第1〜第3のフロートスイッチ5,6,7により得られた実残量のデータ、及び燃料残量演算手段8で求めた計算上の残量のデータを表示手段10に向けて出力することができる。
表示手段10では、燃料残量演算手段8から出力された残量のデータが連続的に入力されて、この入力されたデータに基づいて燃料タンク内の残量を運転者に対して表示することができる。例えば、表示手段10は、図2に示したように、フロートセンサー4で計測した残量を表示するセンサー残量表示部と、第1〜第3のフロートスイッチ5,6,7で検知した残量及び燃料残量演算手段8で演算された残量を表示するスイッチ残量表示部とを有している。また、この表示手段10は、燃料残量演算手段8から連続的に入力される残量のデータに基づいて、モニター15で針16が残量の目盛りを指すことによって、残量を表示するようなデジタル表示を行うことができる。
これにより、表示手段10のセンサー残量表示部では、フロートセンサー4により計測された実残量を連続的に表示でき、残量が基準量以下であるときの残量の変化を滑らかに表示することができる。また、表示手段10のスイッチ残量表示部では、第1〜第3のフロートスイッチ5,6,7によって燃料タンク内の残量を2800L、2300L及び1800Lの各ポイントで検知した際に、針16の位置をそれぞれFull、2300L及び1800Lに合わせて表示することができる。さらにスイッチ残量表示部では、燃料残量演算手段8で求めた計算上の残量をスイッチ残量表示部で連続的に表示することにより、残量が基準量を超えているときの残量の変化を滑らかに表示することができる。
なお、本実施形態において、フロートセンサー4の残量計測範囲の上限となる基準量は上記のように1280Lである。一方、図2に示した表示手段10では、センサー残量表示部とスイッチ残量表示部との間の目盛りは1300Lで表示している。しかし、この表示手段10における1300Lの目盛りは、運転者に対して残量の表示を判り易くするために付したものであり、上記基準量を示す数値ではない。また、この表示手段10において、目盛りの位置や数値は適宜変更することが可能である。
また、上記表示手段10は、燃料タンク内の残量が所定の警告量以下になったときに、運転者に残量不足になることを知らせるための警報を出力することができる。例えば、油圧ショベル等においては、1〜2時間程度の作業を行うためにおよそ180〜190L程度の燃料が必要とされる。したがって、本実施形態では、上記警告量を例えば186Lに設定しておき、燃料タンク内の残量が186L以下になった場合に、図2に示すように警報として「Empty」の表示17等をモニター15に出すことができる。
さらに、本実施形態において、上記の燃料残量演算手段8は、作業機械の作動を停止したときに、その時点での燃料タンク内に収容されている燃料の残量を記憶できるように構成されている。
次に、上記残量表示システムを用いて、作業機械に備えられた大容量型の燃料タンク内の残量を表示する残量表示方法について詳細に説明する。ここで、図3は、本発明に係る残量表示方法の一例を示すフローチャートである。なお、この図3では、フロートスイッチをフロートSWと略記している。
本実施形態における残量表示方法では、運転者が作業機械のエンジン始動(ステップ1、以下「ステップ」は「S」と略記する)を行った直後に、前記燃料残量演算手段8において、現在の燃料タンク内の残量が、前回に作業機械の作動を停止したときの燃料タンク内の残量と同じであるのか、または異なっているのかを判断する(S2)。ここで、エンジン始動時の燃料タンク内の残量が、前回の残量と同じである場合は、以下で説明するようなS3において作業機械の作動停止時に記憶した残量状態から残量の表示を開始する。
一方、作業機械の作動停止時に給油等が行われて、燃料タンク内の残量が前回の作動停止時における残量の状態と変化している場合は、先ず第1のフロートスイッチ5におけるON/OFFの状態を確認する(S4)。
このとき、第1のフロートスイッチ5がONの場合は、燃料タンク内の残量が2800以上であるため、表示手段10での残量の表示を「F(Full)」に合わせる(S5)。一方、第1のフロートスイッチ5がOFFの場合は、次に第2のフロートスイッチ6におけるON/OFFの状態を確認し(S13)、さらに第2のフロートスイッチ6がOFFの場合は、第3のフロートスイッチ7におけるON/OFFの状態を確認する(S22)。
これにより、エンジン始動時の燃料タンク内に収容されている残量を概略的に確認して、表示手段10に表示することができる。例えば、第1のフロートスイッチ5がOFFで、第2のフロートスイッチ6がONの場合は、燃料タンク内の残量は2300L以上であることが確認され、表示手段10での残量の表示を「2300L」に合わせる(S14)。その後、第2のフロートスイッチ6におけるON/OFFの状態が繰り返し確認され(S15)、第2のフロートスイッチ6がOFFになったことが判断された場合、以下で説明するS16以降の作業が行われる。
また、第1及び第2のフロートスイッチ5,6がOFFで、第3のフロートスイッチ7がONの場合は、燃料タンク内の残量は1800L以上であることが確認され、表示手段10での残量の表示を「1800L」に合わせる(S23)。その後、第3のフロートスイッチ7におけるON/OFFの状態が繰り返し確認される(S24)。このS24で、第3のフロートスイッチ7がOFFになったことが判断された場合、以下で説明するS25以降の作業が行われる。
さらに、第1〜第3のフロートスイッチ5,6,7が全てOFFの場合は、表示手段10での残量の表示を1280Lにした後(S30)、フロートセンサー4による残量の計測が開始されているか否かが確認される(S31)。このとき、フロートセンサー4での残量の計測が開始されていなければ、表示手段10での残量の表示を1280Lに合わせておく(S30)。一方、フロートセンサー4での残量の計測が開始されていれば、以下で説明するS32以降の作業が行われる。
次に、上記で燃料タンク内の残量を概略的に確認したときに、第1のフロートスイッチ5がONとなっていて、表示手段10での残量の表示を「F(Full)」に合わせた(S5)後の作業について説明する。この場合、第1のフロートスイッチ5がONからOFFへ変わるまでは、表示手段10での残量の表示を「F(Full)」に合わせておくとともに、第1のフロートスイッチ5におけるON/OFFの状態を繰り返し確認する(S6)。
そして、作業機械の駆動により燃料タンク内の残量が減少していく際に、第1のフロートスイッチ5がONからOFFに変化した時点で、燃料タンク内の残量が2800Lであることが検知される。このとき、燃料残量演算手段8は、第1のフロートスイッチ5による検知信号を受けて、例えば燃料残量演算手段8に前回の燃料残量演算時に用いた燃料噴射量及び燃料消費量のデータが残存している場合は、それらのデータを消去する。
上記S6で第1のフロートスイッチ5がONからOFFに変化したことが判断された後、エンジンコントローラー9からエンジンの燃料噴射量のデータを、例えば0.1秒という短い周期で連続的に出力し、この出力された燃料噴射量のデータを燃料残量演算手段8の消費量演算部に連続的に入力する(S7)。続いて、燃料残量演算手段8の消費量演算部では、前記の第1のフロートスイッチ5による検知信号を受けて演算を開始し、入力された燃料噴射量のデータに基づき、検知信号を受けた後の時間の経過に伴う燃料タンクで消費される燃料の消費量を算出する(S8)。この燃料消費量の値は、例えば、「Σ(第1のフロートスイッチがOFFになった後の燃料噴射量)」の計算式で、第1のフロートスイッチがOFFになった後の燃料噴射量の総和を求めることにより算出することができる。
その後、燃料残量演算手段8は、残量演算部において、第1のフロートスイッチ5で検知された燃料の残量2800Lから、前記消費量演算部で算出した燃料消費量を減算することによって、燃料タンク内の計算上の残量を演算する(S9)。これにより、実際に燃料タンク内に収容されている実残量に相当する計算上の残量を求めることができる。そして、この燃料残量演算手段8で求めた計算上の残量のデータは、燃料残量演算手段8から表示手段10に連続的に入力されることにより、表示手段10のスイッチ残量表示部で表示される(S10)。
次いで、第2のフロートスイッチ6におけるON/OFFの状態を繰り返し確認し(S11)、第2のフロートスイッチ6がONの状態の場合は、上記S7からS10までの作業を連続的に繰り返して行う。これにより、例えば図2に示した表示手段10のスイッチ残量表示部において、燃料残量演算手段で演算された計算上の残量をFull表示から2300L表示までの間で連続的に表示できるため、残量の変化を滑らかに示すことができる。
なお、建設機械においては、旋回等作業中の激しい揺動で油面が短い周期で変動する。そのため、残量を誤検知しないようにフィルタリングすることが必要である。つまり、本実施形態において、上記第1のフロートスイッチ5、及び、以下で説明する第2及び第3のフロートスイッチ6,7において、スイッチのONからOFFへの変化の判断は、10秒間におけるフロートスイッチのON時間とOFF時間を比較することによって行うことができる。すなわち、フロートスイッチのOFF時間がON時間よりも長くなったとき、つまり10秒間のうちでOFF時間が5秒を超えた場合に、フロートスイッチがOFFになったと判断することができる。
また場合によっては、上記S6で第1のフロートスイッチ5がOFFになったことが判断された後、再びフロートスイッチのON時間が長くなって、スイッチがONであることが確認されることがある。このときは、作業をS5に戻して、表示手段10における残量表示を再び「F(Full)」に合わせるとともに、第1のフロートスイッチ5がOFFに変わるまで、第1のフロートスイッチ5のON/OFFを繰り返し確認する。このようなスイッチにおけるON/OFFの判断は、第2及び第3のフロートスイッチ6,7においても同様である。
一方、作業機械の駆動により燃料タンク内の残量がさらに減少していき、上記S11で第2のフロートスイッチがOFFになったことが判断された時点で、燃料タンク内の残量が2300Lであることが検知される。このS11で第2のフロートスイッチがOFFになったことが判断されたら、燃料残量演算手段8から表示手段10に出力する残量のデータを切り替えて、表示手段10での残量表示を第2のフロートスイッチ6で検知された「2300L」に合わせる(S12)。このとき、燃料残量演算手段8に、上記S7〜S10の作業で用いた燃料噴射量及び燃料消費量のデータが残存している場合は、それらのデータを消去する。
上記S12で表示手段10での残量表示を「2300L」に合わせる理由は、以下の通りである。すなわち、例えば上記S7からS10までの作業を繰り返し行った際に、燃料残量演算手段8によって演算される計算上の残量(すなわち、表示手段に表示される残量)と、燃料タンク内にある実際の実残量との間には誤差が生じることが考えられる。しかしながら、S11で第2のフロートスイッチ6がOFFになったことが判断されたときに、S12で表示手段における残量表示を「2300L」に合わせることにより、上記のような残量表示の誤差を補正して、燃料タンク内にある実際の残量と表示手段に表示される残量とを一致させることができる。これにより、燃料タンク内の残量を表示手段10で正確に表示することができる。
このS12において残量表示を「2300L」に合わせた後、上記で説明したS7〜10の作業と同様にして、エンジンの燃料噴射量のデータを燃料残量演算手段8の消費量演算部に入力し(S16)、この消費量演算部で燃料噴射量のデータに基づいて燃料消費量(=Σ第2のフロートスイッチがOFFになった後の燃料噴射量)を算出する(S17)。次に、燃料残量演算手段8の残量演算部で、第2のフロートスイッチ6で検知された燃料の残量2300Lから、消費量演算部で算出した燃料消費量を減算することによって計算上の残量を演算する(S18)。そして、この燃料残量演算手段8で演算された計算上の残量を、表示手段10のスイッチ残量表示部に表示する(S19)。
次いで、第3のフロートスイッチ7におけるON/OFFの状態を繰り返し確認し(S20)、第3のフロートスイッチ7がONの状態の場合は、上記S16からS19までの作業を連続的に繰り返して行う。一方、このS20で第3のフロートスイッチ7がOFFになったことが判断された場合は、燃料タンク内の残量が1800Lであることが検知され、表示手段10での残量の表示を「1800L」に合わせる(S21)。このときも、上記S16〜S19の作業で用いた燃料噴射量及び燃料消費量のデータが残存している場合は、それらのデータを消去する。
S21で残量表示を「1800L」に合わせた後、上記で説明したS7〜10の作業やS16〜19の作業と同様にして、エンジンの燃料噴射量のデータを燃料残量演算手段8に入力し(S25)、この燃料噴射量のデータに基づいて燃料消費量(=Σ第3のフロートスイッチがOFFになった後の燃料噴射量)を算出する(S26)。次に、第3のフロートスイッチ7で検知された燃料の残量1800Lから燃料消費量を減算することによって計算上の残量を演算する(S27)。そして、この燃料残量演算手段8で演算された計算上の残量を、表示手段10のスイッチ残量表示部に表示する(S28)。
その後、S29でフロートセンサー4により残量の計測が開始されることが判断されるまでは、すなわち、燃料タンク内の残量が基準量を超えている状態のときは、上記S25からS28までの作業を連続的に繰り返して行う。
一方、燃料タンク内の残量が減少していき、S29でフロートセンサー4による残量計測が開始されたことが判断された場合、すなわち、燃料タンク内の残量が基準量以下となった場合は、残量の測定手段を上記フロートスイッチからフロートセンサーに切り替えて、フロートセンサー4による残量の計測を行う(S32)。そして、このフロートセンサー4で計測された燃料タンク内の残量を、例えば図2に示した表示手段10のセンサー残量表示部に連続的に表示する(S33)。
さらに、本実施形態の残量表示方法によれば、燃料タンク内の残量が基準量以下となる範囲である場合に、燃料タンク内の残量が所定の警告量以下であるか否かを判断し(S34)、残量が所定の警告量以下になったときに表示手段10で警報を出力することができる(S35)。
例えば、前述のように警告量を予め186Lに設定しておき、燃料タンク内の残量が186L以下になったときに、表示手段10のモニター15に「Empty」表示17等の警報を出力する。このような警報を出力することによって、作業機械を操作している運転者は、燃料タンク内の燃料がなくなりかけていることを把握して、燃料タンクへの燃料補給が必要であることを認識することができる。これにより、燃料切れで作業機械の稼動が停止する前に、適切な時期に合理的に給油を行うことができる。
次に、前記で説明した作業機械のエンジン始動(S1)直後に、S2において燃料タンク内の残量が前回の残量と同じであると判断された場合について説明する。この場合、作業機械の作動停止時に燃料残量演算手段8に記憶した残量を表示手段に表示する。それと併せて、その記憶された残量に応じて、残量が2800L以上であれば上記S6から、残量が2300L以上2800L未満であれば上記S7から、残量が1800L以上2300L未満であれば上記S16から、残量が1280Lより多く1800L未満であれば上記S25から、及び残量が1280L以下であれば上記S32から作業を開始する。これにより、前回の作動停止時に記憶した残量の値から残量表示を適切に行うことができる。
以上のような本実施形態の残量表示方法によれば、燃料タンク内の残量がフロートセンサーにおける残量計測範囲の上限である基準量以下の範囲においては、残量の計測をフロートセンサーで正確に行うことができる。このフロートセンサーによる残量の計測結果を表示手段で連続的に表示することにより、残量が減少していく様子を滑らかに示すことができる。これにより、運転者が表示手段の残量表示に違和感を抱くことなく、燃料の残量をリアルタイムで正確に確認でき、また燃料の減り具合を容易に把握することができる。
また残量が所定基準量を超える範囲においては、第1〜第3の各フロートスイッチで燃料の残量を段階的に正確に検知して表示手段に表示することができる。さらに、第1〜第3の各フロートスイッチで検知した残量から、エンジンの燃料噴射量に基づいて算出した消費量を減算することによって、フロートスイッチでは検知できない残量の変化を計算によって求めて、表示手段に連続的に表示することができる。
これにより、表示手段が例えば図2のような残量の表示を行う場合、F表示、2300L表示、及び1800L表示の各ポイントで残量表示の誤差を補正して、燃料タンク内の実際の残量を表示手段で正確に表示することができる。さらに、F表示から2300L表示までの残量の変化、2300L表示から1800L表示までの残量の変化、及び1800L表示から1280Lの表示までの残量の変化を滑らかに示すこともできる。
なお、本発明においては、フロートスイッチは燃料タンクに少なくとも一つ配設すれば良いが、上記のように第1〜第3の3つのフロートスイッチで燃料の残量を段階的に検知することにより、フロートスイッチが設置された3箇所のポイントで残量表示の誤差を補正できる。これにより、表示手段において、基準量を超える範囲の残量をより正確に表示することができる。
すなわち、本発明によれば、大容量型の燃料タンクに収容されている燃料の残量を表示する際に、表示手段での残量表示を、燃料タンク内の残量が満タンの状態から空の状態に至るまでの全ての状態に渡って適切に且つ滑らかに行うことができる。また、残量が基準量以下の低残量領域での燃料の残量表示を非常に正確に、一方、残量が基準量を超える領域での燃料の残量表示を適度に正確に行うことができるため、残量表示の信頼性を向上させることができる。さらに、本発明は、燃料タンクにフロートセンサーを複数設置しなくても良く、また超音波やレーザ光を利用する必要も無いので、簡便なシステムで残量表示が可能となる。
なお、本発明では、作業機械に給油を行った際に、その給油量と給油前の燃料タンク内の残量とを合計して得られる給油後の残量が正確に分る場合には、例えばエンジンを始動したときに給油後の残量を燃料残量演算手段8に入力して、表示手段10に表示することも可能である。このように給油後の残量を燃料残量演算手段8に入力すれば、例えば前記のような残量を概略的に確認する作業を省略できる。また、燃料残量演算手段8において、入力された給油後の残量から燃料消費量を減算して燃料タンク内の残量を演算することによって、エンジンの始動直後から表示手段10で燃料タンク内の残量をリアルタイムで正確に表示することができる。さらにこれにより、例えば表示手段10で残量を3200Lから表示できるようにモニターの目盛りを変更しておけば、燃料タンク内の残量が2800L以上である場合でも、その残量を表示手段に正確に表示することも可能である。
さらに、上記説明では、燃料タンクに3台のフロートスイッチを備える場合を例に挙げているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、燃料タンクにフロートスイッチを1台だけ設置することができるし、設置スペースやコストを考慮してフロートスイッチを2台、4台、又はそれ以上の台数で設置することもできる。さらに上記では、フロートセンサー4で計測した残量を燃料残量演算手段8に一旦出力した後、表示手段10に出力して表示させる場合について説明しているが、例えば、フロートセンサー4で計測した残量を直接表示手段10に出力して表示させることもできる。