JP2006207002A - 成形装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 成形空間における磁場曲がりの発生を抑え、外周部分における配向不良を解消する。
【解決手段】 成形空間Cの上下に強磁性材料からなる金型(上部金型1及び下部金型2)が配置される。この金型に対して略水平方向に移動し希土類磁石原料粉を略水平方向に加圧する左右パンチ3,4と、成形空間内の希土類磁石原料粉に対して金型を介して略鉛直方向に磁界を印加する磁界印加手段(上下コイル5,6)とを有する。成形空間の少なくとも水平方向における周囲の少なくとも一部に、成形空間と接して非磁性材または弱磁性材が配されている。例えば、下部金型2の成形空間を構成するスライド溝2aの両側部分2cが、非磁性材(弱磁性材)とされている。
【選択図】 図4

Description

本発明は、磁界を印加しながら希土類磁石原料粉を加圧成形する成形装置に関するものであり、磁界印加方向と加圧方向とを互いに直交方向として成形する直交磁界成形方式の成形装置の改良に関する。
ネオジム鉄ボロン系やサマリウムコバルト系等の希土類焼結磁石の製造に際しては、希土類磁石原料粉を所定の形状に加圧成形した後、これを焼結することで所定形状の希土類焼結磁石を得るようにしている。この場合、前記加圧成形は、金型のダイとパンチを用い、一軸方向に圧粉成形するのが一般的である。また、高配向、高磁気特性を得ることを目的に、磁界を印加しながら前記圧粉成形を行う磁界中成形法が行われている。
ここで、前記磁界中成形法には、磁界印加方向と圧粉方向が直交する直交磁界成形法と、磁界印加方向と圧粉方向が同一方向である平行磁界成形法があるが、それぞれ一長一短を有しているのが実情である。例えば、磁極面積が広く、厚みが薄い偏平な希土類焼結磁石を製造しようとする場合には、希土類磁石原料粉を平板状の形状に成形する必要がある。このような形状を前記直交磁界成形法により成形しようとすると、金型ダイの開口部の幅を狭くせざるを得ず、また開口部の面積に比べ深さ方向に深くなることから、希土類磁石原料粉のダイへの均一な充填が難しくなる。均一に充填しようとすると充填時間が長くなり量産性が低下する。したがって、このような形状での成形には、充填時間を短くでき、かつ、均一な充填が容易になるようなダイの開口部を広くとれる平行磁界成形法を採用せざるを得ない。
ただし、平行磁界成形法で得られる成形体の配向度は、直交磁界成形法で得られるそれに比べて低い値となるという欠点がある。平行磁界成形法では、加圧方向と磁界印加方向とが平行であるため、磁界印加による原料粉の配向が加圧によって乱されてしまい、前記配向度の低下が引き起こされるものと考えられる。成形体の配向度が低いと、焼結後に得られる希土類焼結磁石の残留磁束密度が低下し、最大エネルギー積もそれに応じて低下してしまう。実際、成形に平行磁界成形法を用いた磁石では、直交磁界成形法で成形した磁石に比べて、残留磁束密度に3〜8%程度の低下が見られる。
このような状況から、磁界中成形法の改良が試みられており、特許文献1に記載される方法もその一つである。特許文献1に記載される方法では、先ず、上パンチを十分上昇させておき、左・右圧密ダイス及び下パンチにより形成される成形空間に所定の微粉末を供給する。このとき、微粉末の供給口は従来の直交磁界成形法に比べて広いので、均一な供給が行える。微粉末供給終了後、上パンチを所定位置まで下降したら、磁界発生用コイルにより磁界を印加するとともに、左・右圧密パンチで圧密、成形する。
前記特許文献1記載の技術は、直交磁界成形法の1種であり、金型開口部が広く取れる方向を上に向けて原料粉の充填を容易にし、鉛直方向に磁界を印加するとともに、圧粉を行うパンチを水平方向に駆動することで、磁界印加方向と圧粉方向とを直交させている。すなわち、この特許文献1記載の発明は、平行磁界成形法における原料粉の充填し易さと、直交磁界成形法における高配向の双方を実現することを試みたものである。
特開平7−173505号公報
前述の特許文献1記載の発明の考え方は、高配向での成形を容易に行うという観点からは理にかなったものと言える。特に、上パンチ(上部金型)及び下パンチ(下部金型)を強磁性材料により構成すれば、これら金型によりギャップの小さい閉磁路を組むことが可能であり、漏洩磁束を抑えて非常に高い効率で磁界の印加を行うことが可能である。
しかしながら、この場合、成形される希土類磁石原料粉に比べて金型の方が相対的に磁束を通し易いために、前記磁界を印加した際に、特に成形空間の周囲に存在する金型(強磁性材料)に磁束が引き寄せられる形になり、成形体の周辺部分で磁場曲がりによる配向不良が生じ易いという問題がある。
本発明は、前記課題に鑑みて提案されたものであり、成形空間における磁場曲がりの発生を抑えることができ、特に外周部分においても配向不良のない成形体を成形することが可能な成形装置を提供することを目的とする。
前述の目的を達成するために、本発明の成形装置は、成形空間の上下に強磁性材料からなる金型が配置されるとともに、前記金型に対して略水平方向に移動し希土類磁石原料粉を略水平方向に加圧する1つ以上のパンチと、成形空間内の希土類磁石原料粉に対して前記金型を介して略鉛直方向に磁界を印加する磁界印加手段とを有し、前記成形空間の少なくとも水平方向における周囲の少なくとも一部に、前記成形空間と接して非磁性材または弱磁性材が配されていることを特徴とする。
成形空間の上下に強磁性材料からなる金型が配置される成形装置では、金型が強磁性材料によって構成され、小さなギャップ(成形空間の高さに相当するギャップ)で閉磁路が構成されるため、効率的な磁界の印加が可能であり、成形される成形体において、高配向が実現される。
ただし、成形空間を水平平面で見た場合、その周囲に強磁性材料が配されることになり、成形空間内に充填される希土類磁石原料粉との磁気的な特性(例えば透磁率等)の差により、磁場曲がりが生ずる。成形空間の周囲に希土類磁石原料粉よりも磁気的な特性に優れた強磁性材が配されるので、特に成形空間の周囲において磁束が金型側に引き寄せられ、磁束の流れが平行でなくなる。このような状態で磁界が印加されると、当然、希土類磁石原料粉も、この平行でない磁束の流れに倣って配向し、この部分で配向不良を起こす。
そこで、本発明においては、この成形空間の周囲に非磁性材、あるいは弱磁性材を配することで、前記磁場曲がりを解消している。成形空間を水平平面で見て、その周囲に非磁性材または弱磁性材を配すれば、成形空間内とその周囲とが磁気的にほぼ等価になり、磁束の流れが面内方向で均一化される。その結果、成形空間及びその周辺部分において、磁束の方向がほぼ平行となり、磁場曲がりが生ずることがなくなる。このため、配向不良の無い成形体の成形が実現される。
なお、磁場曲がりを解消することにより配向性を改善することについては、例えば特許第3526493号公報等にも開示されている。しかしながら、この特許公報を含め、これまでの考えでは、成形空間内に磁束が引き寄せられる形で形成される磁場曲がりを解消することに主眼が置かれている。これは、周囲に比べて成形空間内の永久磁石粉末の方が磁束を通し易いからである。そのため、その対策として成形空間の周囲に磁性体を配置している。本発明は、前記特許公報等に記載される従来技術とは全く異なる方式の成形装置において、従来技術とは全く異なる現象によって引き起こされる磁場曲がりを解消することを目的に案出されたものであり、前記従来技術とはその技術内容が大きく異なる。
また、鉛直方向上下に強磁性材料からなる金型が配置される成形装置では、前記磁場曲がりの他、充填の際の希土類磁石原料粉の挟み込みも大きな問題である。本発明の成形装置では、構造上、原料粉の噛み込みによる成形不良が発生する可能性がある。例えば、金型の残磁状態が悪いと、すなわち金型が帯磁していると、原料粉が磁気的に吸着されて成形空間の周辺に残り、次の成形の際にこれを噛み込み、寸法不良や密度不良、クラック等の原因となる可能性がある。
これを解消するのが本願の請求項2記載の発明であり、前記成形空間の上下に接する部分に非磁性材または弱磁性材が配されていることを特徴とする。残磁によって原料粉を吸引するのは、金型において、前記成形空間の上面、あるいは下面に対向する面である。したがって、この部分を非磁性材または弱磁性材で構成すれば、磁気的なギャップが拡大されて、残磁の影響が急減に減衰される。
本発明の成形装置によれば、先ず第1に、印加する磁界の方向を加圧成形方向(水平方向)に対して直交方向(鉛直方向)としているので、平行磁界成形法における原料粉の充填し易さと、直交磁界成形法における高配向とを両立することができ、高性能な希土類焼結磁石を生産性良く作製することができる。また、第2に、強磁性材料からなる金型を鉛直方向上下に配置し狭ギャップの閉磁路を構成するとともに、これら金型を介して直接的に磁界を印加しているので、成形空間に非常に強い磁界を印加することができ、成形される成形体において、一層の高配向を実現することができる。
第3に、成形空間の周囲に非磁性材あるいは弱磁性材を配しているので、成形空間周辺における磁場曲がりを解消することができ、成形される成形体における配向不良の発生を抑えることができる。第4に、成形空間の上下に接する部分に非磁性材または弱磁性材を配することにより、成形の際の原料粉の噛み込みを防止することができ、これによる寸法不良や密度不良、クラック等の発生を抑えることができる。
以下、本発明を適用した成形装置について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態の成形装置は、直交磁界成形法により成形を行う成形装置である。図1は、本実施形態の成形装置の概略構成を示すものであり、金型構造としては、鉛直方向、すなわち上下に分割された上部金型1、下部金型2、及び水平方向に可動とされた左パンチ3、右パンチ4を組み合わせた構造とされている。
ここで、上部金型1及び下部金型2は、成形の際に閉空間を形成するためのものであり、例えば板状の成形体を成形する場合に、面積の大きな主面の面出しを行う。したがって、上部金型1の下面(下部金型2との対向面)は、平坦面である。
一方、下部金型2は、先の上部金型1と同様、成形体の反対側の主面の面出しを行うものであるが、前記左パンチ3及び右パンチ4の移動(スライド)をガイドするスライド溝2aが形成されている。このスライド溝2aは、成形空間を構成する溝部に相当するものであり、底面2bによって、前記成形体の反対側の主面の面出しが行われる。また、スライド溝2aの幅や深さは、前記左パンチ3、右パンチ4の幅や厚さとほぼ同じであり、これによって成形体の幅や厚さが決まる。
また、前記上部金型1及び下部金型2は、いずれも強磁性材、例えば鉄により形成されており、磁界発生装置における発生磁界を、前記成形空間に効率的に導き、成形空間内に充填される希土類磁石原料粉に対して非常に強い磁界を印加することが可能である。したがって、磁場配向という点では、極めて効率的な構成と言える。
左パンチ3及び右パンチ4は、加圧手段に相当するものであり、前記スライド溝2a内において水平方向に移動し、前記上部金型1と下部金型2間の空間に充填された希土類磁石原料粉を加圧成形する。したがって、成形の際には、加圧力は水平方向に加わることになる。なお、加圧成形に際しては、一方のパンチによって加圧しても良いが、両方のパンチで加圧する方が原料粉に均一に圧力が加わるのでより好ましい。
成形に際しては、前記左パンチ3や右パンチ4の先端の形状によって成形される成形体の平面形状が決まり、図1に示す左パンチ3、右パンチ4の先端形状の場合、当該先端形状が平面形状であるために、平面形状が矩形の成形体に成形されることになる。例えば、平面形状が円形の円板状の成形体を成形する場合には、左パンチ、右パンチの先端面の形状を円弧状(凹面)とすればよい。また、図1に示す例では、断面が矩形(成形体が平板状)となるように左パンチ3、右パンチ4も板状(スライド溝2aが矩形溝)を成しているが、例えば、断面が円形(成形体が円柱状)となるようにする場合には、上部金型1、下部金型2の主面を円弧状(スライド溝2aが円弧状溝)にすると共に、左パンチ3、右パンチ4の先端形状も円形にするとよい。
本実施形態の成形装置における成形状態を図2に示す。図2に示すように、上下に配置された上部金型1、下部金型2、さらには左右パンチ3,4を型閉めした空間(成形空間C)内に希土類磁石原料粉が充填され、加圧成形される。なお、図2は、成形装置を左右パンチ3,4の挿入方向から見たものであり、したがって左右パンチ3,4は図2には表されていない。
ここで、上部金型1及び下部金型2には、それぞれ鉛直方向に磁界を印加する磁界発生用のコイル5,6が設置されており、成形の際に成形体には鉛直方向に磁界が印加される。すなわち、前記成形状態においては、強磁性材料からなる上部金型1と下部金型2とにより閉磁路が構成され、前記成形空間を磁気的なギャップgとして磁界の印加が行われる。
このとき、成形空間Cの周囲においては、上部金型1と下部金型2とが当接した形になり、磁気的に短絡した形になっている。その結果、図3(a)に模式的に示すように、磁束の流れ(図中、矢印で示す。)は、成形空間Cの周辺において、強磁性材料からなる下部金型2側に引き寄せられる形で磁場曲がりが生ずる。希土類磁石原料粉は、成形空間Cにおける磁束の流れにしたがって配向され、したがって、前記磁場曲がりの発生は、成形される成形体の配向不良に繋がる。
これは、成形空間Cに充填される希土類磁石原料粉よりも強磁性材料からなる下部金型2の方が磁束の通りが良いためであり、成形空間C内(希土類磁石原料粉)とその周囲の磁気的特性の相違によるものである。そこで、本発明では、図4に示すように、成形空間Cの水平面内における周辺部分(図中、着色領域)の少なくとも一部を非磁性材により構成し、前記水平面内における磁気的な不均一さを解消することとする。ただし、この部分も金型としての機能を有するため、使用する非磁性材は、いわゆる超鋼材のような超硬合金により構成されることが好ましい。なお、前記成形空間Cの水平面内における周辺部分に配するのは、非磁性材であることが好ましいが、弱磁性(飽和磁束密度0.8T以下程度)を有する弱磁性材であっても同様の効果を得ることができる。
前記成形空間Cの水平面内における周辺部分を非磁性材(弱磁性材)とする場合、図4に示すように、下部金型2のスライド溝2aの両側部分2cを非磁性材あるいは弱磁性材とすればよいが、この場合には、前記左右パンチ3,4を非磁性材、弱磁性材で構成することが好ましい。
前記のように成形空間Cの周辺部分に非磁性材(弱磁性材)を配することで、前記磁気的な不均一さが解消される。その結果、図3(b)に示すように、印加される磁界の方向が、成形空間Cやその周辺部分において平行且つ均一になり、磁場曲がりによる配向不良が解消される。
以上のような構成を有する成形装置では、成形の際には、前記左パンチ3及び右パンチ4によって加圧力が水平方向に加わることから、磁界印加方向と圧粉方向が直交する直交磁界成形法により成形が行われることになる。また、前記金型構造において、希土類磁石原料粉は、上部金型1を上昇させ、下部金型2のスライド溝2aと左パンチ3、右パンチ4で構成される空間内に充填することになるが、その開口部の面積は、成形体の主面に対応して広く取ることができ、充填を容易に行うことができる。
ただし、前記充填に際して、上部金型1が残磁していると、上部金型1を下降して下部金型2に近づけた時に充填された原料粉が吸引され、金型間への挟み込みの原因となる可能性がある。そこで、通常、この種の成形装置では、前記原料粉の充填に先立って、上部金型1の消磁(脱磁)を行うが、成形体と金型とで磁気特性が異なるため、成形体の消磁条件に合わせると、金型の消磁が不十分になる。例えば、図5に示すように、着磁された成形体に対しては、所定の大きさの逆方向の磁界を印加すれば、残磁が消去される。ただし、成形体と金型とではヒステリシスが異なり、残磁している金型に成形体と同じ逆方向磁界を印加しても、磁化ゼロにはならず、−Mの磁化が残る。
このような現象を解消するには、図6に示すように、前記上部金型1の下部金型2との対向面に、板状の非磁性材(弱磁性材)1aを貼り付ける(例えば銀ロウ等によりロウ付けする)ことも有効である。同様に、下部金型2についても、非磁性材(弱磁性材)によって構成する部分を拡大し、スライド溝2aの底面2bも含めてスライド溝2aの周辺部分2dを非磁性材(弱磁性材)としてもよい。
先にも述べた通り、上部金型1や下部金型2は、磁界印加時に効率的な磁界印加ができるように、その大部分を鉄等の強磁性体で構成する。したがって、残磁があると、上部金型1や下部金型2の表面で原料粉の吸引が起こり、前記問題が発生する。前記のように、上部金型1や下部金型2の対向面を非磁性材(弱磁性材)で構成すれば、その分、磁気的なギャップが生ずることになり、距離(非磁性材の厚さ)とともに残磁の影響が急減に減衰する。
したがって、上部金型1における非磁性材1aの厚さや、下部金型2における周辺部分2dの厚さは、できるだけ厚いことが前記残磁の影響を回避するという観点からは好ましいが、あまり厚くすると、成形時に効率的な磁界の印加が難しくなる。これを考慮すると、前記非磁性材1aや前記周辺部分2dのスライド溝底面部分の厚さは、2mm〜30mmとするのが好ましい。
後述の各実施形態についても同様であるが、本発明の成形装置は、希土類焼結磁石の製造に適用される。製造対象となる希土類焼結磁石は、希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを主成分とするものであり、磁気特性に非常に優れることから、各種デバイスに用いた場合、その小型化、高性能化を実現することができる。
製造する希土類焼結磁石の磁石組成は特に限定されず、用途等に応じて任意に選択すればよい。例えば、希土類元素Rとは、具体的にはY、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb又はLuのことをいい、これらから1種又は2種以上を用いることができる。中でも、資源的に豊富で比較的安価であることから、希土類元素Rとしての主成分をNdとすることが好ましい。また、遷移金属元素Tは、従来から用いられている遷移金属元素をいずれも用いることができ、例えばFe、Co、Ni等から1種又は2種以上を用いることができる。これらの中では、焼結性の点からFe、Coが好ましく、特に磁気特性の点からFeを主体とすることが好ましい。また、前記希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bの他、保磁力等の特性改善を目的として、例えばAl等の元素を添加してもよい。これらの元素の他、不可避的不純物又は微量添加物として、例えば炭素や酸素等が含有されていてもよい。
前記のような希土類焼結磁石の製造には、粉末冶金法が用いられ、その製造プロセスは、例えば、合金化工程、粗粉砕工程、微粉砕工程、磁場中成形工程、焼結工程、時効工程、機械加工工程、被膜形成工程等により構成される。
本発明の成形装置や成形方法は、前記磁場中成形工程に適用され、希土類磁石原料粉を所定の方向に配向した状態で所定の形状に成形する。成形した成形体は、次の焼結工程に供され、焼結が行われる。
図7a〜図7dは、本実施形態の成形装置を用いて希土類磁石原料粉を成形する手順を示すものである。図7a〜図7dにおいては、成形時に磁界を印加する上コイル5及び下コイル6が示されており、これらコイル5,6によって鉛直方向(図中上下方向)に磁界が印加される。また、下部金型2に隣接して支持テーブル8が設けられており、この支持テーブル8の上面は下部金型2のスライド溝2aの底面2bと同一平面を構成している。
希土類磁石原料粉の成形に際しては、先ず、図7aに示すように、上部金型1を上昇させておき、原料粉10が収容され底面が開放されたフィーダーボックス9を往復動させることで、原料粉10を下部金型2と左右両パンチ3,4で囲まれた空間に、いわゆるスリきり状態となるように充填する。この時、下部金型2と左右両パンチ3,4で囲まれた空間の開口面積は、偏平な成形体の主面に対応して大きく取られており、例えば偏平な板状の成形体を縦方向に配置した場合の開口と比べて格段に広くすることができるとともに、深さ方向にも浅くでき、原料粉10を容易に充填することができる。また、原料粉10の充填に先立って、上部金型1の消磁を行っておくことは、先の第1の実施形態と同様である。
次に、図7bに示すように、上部金型1の下面が下部金型2の上面に突き当たるまで上部金型1を下降し、上部金型1、下部金型2、左右パンチ3,4によって囲まれる閉空間を形成する。前記工程で充填された原料粉10は、この閉空間に収容されることになる。
続いて、図7cに示すように、この状態(原料粉10が閉空間に収容された状態)で前記上コイル5及び下コイル6により、原料粉10に対して鉛直方向に磁界を印加する。磁界を印加しながら左パンチ3を図中右方向に、また右パンチ4を図中左方向に移動し、前記充填した原料粉10を左右から加圧して圧粉する。これにより、所定形状の成形体11が形成される。また、原料粉10の磁場配向を促進させるために、磁界印加前に左パンチ3、右パンチ4を加圧方向と逆方向に動作させ、前記閉空間体積を大きくした後に左パンチ3、右パンチ4により加圧を行なっても良い。その時の嵩密度は理論密度の20〜30%の値とすることが好ましい。磁界印加方向は、前記左右のパンチ3,4による加圧方向とは直交する方向であり、したがって、直交磁界成形が行われる。
前記圧粉に際して、左右パンチ3,4による加圧圧力は、使用する原料粉10の種類、大きさ、形状等に応じて適宜設定すればよいが、通常は30MPa〜200MPa程度である。印加する磁界の強さも、同様に、使用する原料粉10に応じて適宜設定すればよく、例えば0.8T〜2.0T程度に設定すればよい。
成形体11の成形の後、図7dに示すように、左パンチ3及び右パンチ4で挟み込んだ状態で成形体11を図中左方向に水平移動させ、上部金型1と下部金型2の間の閉空間から取り出す。このとき、成形体11は、下部金型2のスライド溝2の底面2b、あるいは支持テーブル8の上面に接した状態(支持された状態)で水平移動され、取り出しの際に不用意な力が加わって成形体11を破損するというような事態が回避される。また、成形体11の水平移動の際に、左右パンチ3,4によって成形体11にある程度の加圧力を加えることで、あるいは下部金型2のスライド溝2aに抜きテーパを付与しておくことで、取り出しの際のラミネートクラックの発生も抑制することができる。
以上のように、本実施形態の成形装置によれば、クラックの無い良好な成形体を効率的に金型から取り出すことが可能であり、連続成形が可能となるという効果を有する。
(第2の実施形態)
本実施形態の成形装置では、成形した成形体の取り出しを考慮して、図8aに示すように、下部金型2に下パンチ12が組み込まれている。この下パンチ12は、前記下部金型2に対して鉛直方向に相対移動可能であり、成形時には下部金型2のスライド溝2aの底面2bと同一平面を構成する位置に固定され、その上面が成形面として機能する。成形後には、上部金型1で成形体を挟んだ状態のまま下パンチ12を上昇、あるいは下部金型2を下降させることで、成形体が下パンチ12の上面で支持された状態で金型から取り出される。
この場合、下パンチ12の上面の形状や大きさは、成形後の成形体の下面の形状、大きさとほぼ同じとするか、または若干大きくすることが好ましい。これにより、成形体を破損することなく速やかに金型から取り出すことができる。なお、下パンチ12の上面の大きさを成形体の下面の大きさよりも微量小サイズとすることも可能であるが、下パンチ12の上面の形状や大きさが成形後の成形体の下面の形状や大きさよりも大幅に小さくなると、取り出しに際して成形体に局部的に力が加わるおそれがあり、成形体を破損する可能性が生ずる。
図8a〜図8dは、本実施形態の成形装置を用いて希土類磁石原料粉を成形する手順を示すものである。希土類磁石原料粉の成形に際しては、先ず、図8aに示すように、上部金型1を上昇させておき、原料粉10が収容され底面が開放されたフィーダーボックス9を往復動させることで、原料粉10を下部金型2と左右両パンチ3,4で囲まれた空間に、いわゆるスリきり状態となるように充填する。この時、下部金型2と左右両パンチ3,4で囲まれた空間の開口面積は、偏平な成形体の主面に対応して大きく取られており、例えば板状の成形体を縦方向に配置した場合の開口と比べて格段に広くすることができるとともに、深さ方向にも浅くでき、原料粉9を容易に充填することができる。なお、図8aに示す段階では、下パンチ12は上面が下部金型2のスライド溝2aの底面2bと同一平面となる位置まで下降されている。また、原料粉10の充填に先立って、上部金型1の消磁を行っておくことは、先の各実施形態と同様である。
次に、図8bに示すように、上部金型1の下面が下部金型2の上面に突き当たるまで上部金型1を下降し、上部金型1、下部金型2、左右パンチ3,4によって囲まれる閉空間を形成する。前記工程で充填された原料粉10は、この閉空間に収容されることになる。
続いて、図8cに示すように、この状態(原料粉10が閉空間に収容された状態)で前記上コイル5及び下コイル6により、原料粉10に対して鉛直方向に磁界を印加する。磁界を印加しながら左パンチ3を図中右方向に、また右パンチ4を図中左方向に移動し、前記充填した原料粉10を左右から加圧して圧粉する。これにより、所定形状の成形体11が形成される。また、原料粉10の磁場配向を促進させるために、磁界印加前に左パンチ3、右パンチ4を加圧方向と逆方向に動作させ、前記閉空間体積を大きくした後に左パンチ3、右パンチ4により加圧を行なっても良い。その時の嵩密度は理論密度の20〜30%の値とすることが好ましい。磁界印加方向は、前記左右のパンチ3,4による加圧方向とは直交する方向であり、したがって、直交磁界成形が行われる。
成形体11の成形の後、図8dに示すように、上部金型1を上昇させ、次いで下パンチ12を押し上げ、成形体11を下部金型2から取り出す。偏平な成形体11の面積の大きな下面が下パンチ12の上面で支持された状態で押し上げられるので、成形体11は、破損することなく速やかに下部金型2から取り出される。また、成形体11の取り出しの際に、ラミネートクラックの発生が懸念される場合には、上部金型1と下パンチ12とによって成形体11を挟んだ状態のままで取り出す方法もある。
以上の構成の成形装置においても、先の第1の実施形態の成形装置と同様、下部金型2のスライド溝2aの周辺部分(スライド溝の両側部分や底面部分)や、上部金型1の下部金型2との対向面に非磁性材(弱磁性材)を配し、磁場曲がりによる配向不良や、残磁による原料粉の噛み込み等を解消する。また、前記下パンチ12は、下部金型2の一部を構成するものであるので、効率的な磁界の印加を行うためには強磁性材によって形成するが、前記下部金型2のスライド溝の底面部分を非磁性材(弱磁性材)とする場合には、これに合わせて上面近傍部分を非磁性材(弱磁性材)で構成することが好ましい。
(第3の実施形態)
本実施形態の成形装置は、下パンチ12を下部金型2に対して固定する、固定手段を設けた実施形態である。成形過程において、下パンチ12の長さ方向(図面の上下方向)に下パンチ部材自体の圧縮による歪みを発生する可能性があり、このような歪が生ずると、成形体11にクラックが入る要因となる。そこで、本実施形態の成形装置では、圧縮歪みの量を極力抑えるために下パンチ12の上面近傍に機械的なストッパーを設け、成形加圧時に下パンチ12の歪を抑え、前記上面が下部金型2の成形面と同一平面となるように維持するようにしている。これにより、確実にクラックの無い成形体11を得ることができ、金型から取り出すことが可能となる。
図9a〜図9eは、本実施形態の成形装置による成形手順を示すものである。成形装置の具体的構成としては、例えば図9aに示すように、前記固定手段として下パンチストッパ13が設けられている。
前記下パンチストッパ13は、図中左右方向から下パンチ12に係止し、下パンチ12を所定の位置(上面が下部金型2の成形面と同一平面となる位置)に固定する。下パンチ12の上面から若干後退した位置には、周面に前記下パンチストッパ13に対応して凹部14が形成されており、前記下パンチストッパ13の先端をこの凹部14に挿入することで、下パンチ12が下部金型2に対して固定される。
下パンチストッパ13は、成形時の加圧力に抗して下パンチ12を固定するものであり、その材質は、これに耐え得る強度を有する材質とすればよい。具体的には、超硬合金等により形成するのが好ましい。また、その形状も、ここでは板状としたが、ピン状等、任意の形状とすることができる。さらに、下パンチストッパ13は、本実施形態では左右双方から下パンチ12に係止するようにしたが、これに加えて例えば紙面に対して表裏方向からも下パンチストッパ13が下パンチ12に係止するようにし、4方から下パンチ12に係止してこれを固定するようにしてもよい。
以下、本実施形態の成形装置による成形プロセスを説明すると、先の各実施形態と同様、先ず、図9aに示すように、上部金型1を上昇させておき、原料粉10が収容され底面が開放されたフィーダーボックス9を往復動させることで、原料粉10を下部金型2と左右両パンチ3,4で囲まれた空間に、いわゆるスリきり状態となるように充填する。このとき、下パンチストッパ13は、先端が下パンチ12の凹部14に挿入され、下パンチ12を固定状態としている。また、原料粉10の充填に先立って、上部金型1の消磁を行っておくことは、先の各実施形態と同様である。
次に、図9bに示すように、上部金型1の下面が下部金型2の上面に突き当たるまで上部金型1を下降し、上部金型1、下部金型2、左右パンチ3,4によって囲まれる閉空間を形成する。続いて、図9cに示すように、この状態(原料粉10が閉空間に収容された状態)で前記上コイル5及び下コイル6により、原料粉10に対して鉛直方向に磁界を印加する。磁界を印加しながら左パンチ3を図中右方向に、また右パンチ4を図中左方向に移動し、前記充填した原料粉10を左右から加圧して圧粉する。これにより、所定形状の成形体11が形成される。また、原料粉10の磁場配向を促進させるために、磁界印加前に左パンチ3、右パンチ4を加圧方向と逆方向に動作させ、前記閉空間体積を大きくした後に左パンチ3、右パンチ4により加圧を行なっても良い。その時の嵩密度は理論密度の20〜30%の値とすることが好ましい。磁界印加方向は、前記左右のパンチ3,4による加圧方向とは直交する方向であり、したがって、直交磁界成形が行われる。
前記下パンチ12は、前記成形が終了するまで下パンチストッパ13により固定されており、成形が終了した後には、図9dに示すように、下パンチストッパ13が矢印x方向に後退し、下パンチ12への係止が外れて固定状態が解除される。この状態で上部金型1で挟んだ状態を維持しながら下部金型2及び左右パンチ3,4を矢印z方向へ下降させ(相対的に下パンチ12が上昇する。)、最後に図9eに示すように上部金型1を上昇させ、下パンチ12上の成形体11を取り出す。
本実施形態の成形装置においては、下パンチ12の固定手段である下パンチストッパ13を追加しているので、下パンチ12における歪の発生を解消することができ、この歪に由来するクラックの発生を防止することができる。
以上の構成の成形装置においても、先の第1の実施形態や第2の実施形態の成形装置と同様、下部金型2のスライド溝2aの周辺部分(スライド溝の両側部分や底面部分)や、上部金型1の下部金型2との対向面に非磁性材(弱磁性材)を配する。これにより、磁場曲がりによる配向不良を解消することができ、さらには、残磁による原料粉の噛み込みを解消することができる。
(第4の実施形態)
本実施形態の成形装置は、図10に示すように、金型構造として、水平方向に貫通する成形空間21aが形成された金型21と、この成形空間21a内で水平方向に可動とされた左パンチ22、右パンチ23とを組み合わせた構造を有している。
ここで、金型21は、臼型と称される金型であり、前記の通り、成形空間21aが水平方向に貫通形成されている。したがって、通常の直交磁界成形法で用いられる臼型を、いわば横置きにした状態に相当する。なお、図10においては、便宜上、金型21を上下に分割して描いているが、実際には図11に示すように一体物の金型として形成されている。
この金型21においては、例えば偏平な板状の成形体を成形する場合に、成形空間21aの底面21bや上面が面積の大きな主面の面出しを行う。したがって、前記金型21においては、この面積の大きな底面21bや上面が水平である。
一方、前記成形空間21aは、前記左パンチ22及び右パンチ23の移動(スライド)をガイドする機能も有しており、この成形空間21aの幅や高さは、前記左パンチ22、右パンチ23の幅や厚さとほぼ同じであり、これによって成形される成形体の幅や厚さが決まる。
左パンチ22及び右パンチ23は、加圧手段に相当するものであり、前記成形空間21a内において水平方向に移動し、前記成形空間21aに充填された希土類磁石原料粉を加圧成形する。したがって、成形の際には、加圧力は水平方向に加わることになる。なお、一方のパンチによって加圧しても良いが、両方のパンチで加圧する方が原料粉に均一に圧力が加わるのでより好ましい。
成形に際しては、前記左パンチ22や右パンチ23の先端の形状によって成形される成形体の平面形状が決まり、図10に示す左パンチ22、右パンチ23の先端形状の場合、平面形状が矩形の成形体に成形されることになる。例えば、平面形状が円形の円板状の成形体を成形する場合には、左パンチ22、右パンチ23の先端面の形状を円弧状とすればよい。
本実施形態の成形装置には、図10においては図示を省略するが、鉛直方向に磁界を印加する磁界発生用コイルが設置されており、成形の際に成形体には鉛直方向に磁界が印加される。成形の際には、前記左パンチ22及び右パンチ23によって加圧力が水平方向に加わることから、磁界印加方向と圧粉方向が直交する直交磁界成形法により成形が行われることになる。
以上の金型構造においては、上方から金型21の成形空間21a内に原料粉を充填することができない。金型21は一体物として形成されており、例えば上半分を分離して移動することはできない。そこで、本実施形態の成形装置では、金型21に隣接して充填用テーブル24を設置し、この上で原料粉の充填を行うこととする。
ここで、前記充填用テーブル24は、前記金型21の成形空間21aに対応して、前記左パンチ22及び右パンチ23の移動(スライド)をガイドするガイド溝24aが形成されており、ここを左パンチ22及び右パンチ23がスライドする構成とされている。また、充填用テーブル24のガイド溝24aの底面24bは、前記金型21の成形空間21aの底面21bと同一平面とされている。したがって、前記左右パンチ22,23は、前記金型21の成形空間21aから充填用テーブル24のガイド溝24aまで連続してスライド可能である。
原料粉を充填する場合には、図11に示すように、左パンチ22及び右パンチ23の双方を充填用テーブル24のガイド溝24aに移動する。このとき、左パンチ22の先端と右パンチ23の先端、及びガイド溝24aによって構成される空間が原料粉が充填される空間となり、ここに例えばフィーダーボックス等を用いて原料粉を充填する。したがって、充填に際しては、前記左パンチ22の先端と右パンチ23の先端の間の距離を調整することによって、原料粉の充填量を調整する。充填に際して、前記左パンチ22の先端と右パンチ23の先端、及びガイド溝24aによって構成される空間の開口部の面積は、成形体の主面に対応して広く取ることができ、充填を容易に行うことができる。
前記充填用テーブル24上ので原料粉の充填の終了の後、左右パンチ22,23の相対位置関係を維持したまま水平方向に移動し、金型21の成形空間21a内まで移動する。これによって、充填された原料粉も金型21の成形空間21a内に導入される。すなわち、前記左右パンチ22,23は、原料粉を金型内に導入する原料粉導入機構として機能する。そして、そのまま左右パンチ22,23を互いに突き合わされる方向に加圧することで、充填された原料粉が加圧成形され、図12に示すように、金型21の成形空間21a内で成形体25が成形される。
成形後には、左パンチ22及び右パンチ23を前記成形空間21a内でスライドさせ、成形体25をこれらパンチ22,23で挟み込んだ状態で、前記充填用テーブル24が設置されている方向とは反対側の方向に水平移動し、例えば図13に示すように、成形空間21aから成形体25を取り出す。したがって、前記左右パンチ22,23は、成形体取り出し機構としても機能することになる。
この時、例えば金型21の成形空間21aの底面21bと同一平面を構成する支持テーブルを金型21と隣接して設け、支持テーブルの上面で成形体25の底面が支持された状態で前記パンチ22,23により水平移動すれば、取り出しに際して成形体25に局所的な力が加わることがなく、成形体25の不用意な破損を防止することができる。なお、言うまでも無く、前記支持テーブルは、前記金型21の前記充填用テーブル24が設置される側とは反対側に隣接して設置する。
前記成形体25の取り出しに際しては、急激に圧力が開放されることに起因して、成形体にラミネートクラックと称されるクラックが発生する場合がある。そこで、これを回避するために、前記のように2つのパンチ22,23で挟み込んだ状態で成形体25を水平方向に取り出すとともに、取り出しに際して2つのパンチ22,23により成形体25に所定の加圧力を加えるようにする。これにより、前記急激な圧力の開放が緩和され、クラックの発生が抑制される。なお、前記のように水平移動に際して2つのパンチ22,23により成形体25に所定の加圧力を加えるには、例えばこれらパンチ22,23にダンパやクッションを設けておき、これらダンパやクッションの弾性力により前記加圧力を加えるようにするのが簡便である。ここで、所定の加圧力とは、一定の圧力でも良いが、成形体の抜き出し量に応じて漸減していくことが好ましい。
あるいは、金型21に抜きテーパを設けて、前記ラミネートクラックを抑制するようにしてもよい。前記構造の金型21の場合には、図14に金型21を一部破断して示すように、成形空間21aに幅方向にテーパを設ければよい。この場合、成形体25の取り出し方向を矢印方向とすると、当該成形体25の取り出し方向において、成形空間21aの幅が次第に広がるように抜きテーパを形成する。具体的には、成形空間21aにおいて、右パンチ23による押し込み側端部の幅Wよりも取り出し側端部の幅Wが大きくなるようにする。また、前記抜きテーパは、成形空間21aの幅方向ばかりでなく、高さ方向においても付与することが可能である。
なお、図14においては、テーパを誇張して描画してあるが、実際には目に見えるほどのテーパではなく、非常に僅かな寸法差のテーパを付加すればよい。具体的な数値としては、例えば前記成形空間21aのスライド長さ100mm当たり0.02mm〜0.5mm程度である。テーパの設計としては、これに限らず、金型の閉空間の寸法や成形する材料等に応じて適宜設定すればよい。
以上が本実施形態の成形装置の構成であるが、次に、この成形装置を用いた成形方法について説明する。図15a〜図15eは、図10に示す成形装置を用いて希土類磁石原料粉を成形する手順を示すものである。図15a〜図15eにおいては、成形時に磁界を印加する上コイル26及び下コイル27が示されており、これらコイル26,27によって鉛直方向(図中上下方向)に磁界が印加される。また、金型21に隣接して支持テーブル28が設けられており、この支持テーブル28の上面は金型21の成形空間21aの底面21bと同一平面を構成している。
希土類磁石原料粉の成形に際しては、先ず、図15aに示すように、左右パンチ22,23を充填用テーブル24上に移動させておき、原料粉30が収容され底面が開放されたフィーダーボックス29を往復動させ、図15bに示すように、充填用テーブル24のガイド溝24aと左右両パンチ22,23の先端で囲まれた空間に、原料粉30をいわゆるスリきり状態となるように充填する。この時、金型21や上コイル26が充填の邪魔になることはなく、また充填用テーブル24のガイド溝24aと左右両パンチ22,23の先端で囲まれた空間の開口面積は、偏平な成形体の主面に対応して大きく取られており、例えば偏平な板状の成形体を縦方向に配置した場合の開口と比べて格段に広くすることができるとともに、深さ方向にも浅くでき、原料粉30を容易に充填することができる。
次に、図15cに示すように、左右パンチ22,23を相対位置関係を維持したまま金型21の成形空間21a内へスライドさせる。前記工程で充填された原料粉30は、この左右パンチ22,23の水平移動に伴って、金型21の成形空間21aに導入されることになる。
続いて、図15dに示すように、この状態(原料粉30が金型21の成形空間21aに導入された状態)で前記上コイル26及び下コイル27により、原料粉30に対して鉛直方向に磁界を印加する。磁界を印加しながら左パンチ22を図中右方向に、また右パンチ23を図中左方向に移動し、前記充填した原料粉30を左右から加圧して圧粉する。これにより、所定形状の成形体25が形成される。また、原料粉30の磁場配向を促進させるために、磁界印加前に左パンチ22、右パンチ23を加圧方向と逆方向に動作させ、前記閉空間体積を大きくした後に左パンチ22、右パンチ23により加圧を行なっても良い。その時の嵩密度は理論密度の20〜30%の値とすることが好ましい。磁界印加方向は、前記左右のパンチ22,23による加圧方向とは直交する方向であり、したがって、直交磁界成形が行われる。
前記圧粉に際して、左右パンチ22,23による加圧圧力は、使用する原料粉30の種類、大きさ、形状等に応じて適宜設定すればよいが、通常は30MPa〜200MPa程度である。印加する磁界の強さも、同様に、使用する原料粉30に応じて適宜設定すればよく、例えば0.8T〜2.0T程度に設定すればよい。
成形体25の成形の後、図15eに示すように、左パンチ22及び右パンチ23で挟み込んだ状態で成形体25を図中左方向に水平移動させ、金型21の成形空間21aから取り出す。このとき、成形体25は、支持テーブル28の上面に接した状態(支持された状態)で水平移動され、取り出しの際に不用意な力が加わって成形体25を破損するというような事態が回避される。また、成形体25の水平移動の際に、左右パンチ22,23によって成形体25にある程度の加圧力を加えることで、あるいは金型21の成形空間21aに抜きテーパを付与しておくことで、取り出しの際のラミネートクラックの発生も抑制することができる。
以上のように、本実施形態の成形装置によれば、原料粉30の充填から成形、取り出しまでの一連の工程を左右パンチ22,23の水平移動のみで効率的に行うことができる。原料粉30の充填も容易であり、装置構成の簡略化、金型21の高精度化も実現することができる。また、成形体25をクラックの無い状態で効率的に金型から取り出すことが可能であり、連続成形が可能となる。さらに、成形される成形体25は、直交磁界成形により成形されるので、配向度が高く、これを焼結した磁石は磁気特性に優れたものとなる。したがって、本実施形態によれば、これら効果が相俟って、簡単な装置構成で、高精度、高性能な希土類焼結磁石を量産することが可能可能である。
前述の構成を有する成形装置においても、金型21を強磁性材により形成すれば、効率的な磁界印加が可能であり、高配向が実現可能である。ただし、金型21全体を強磁性材により構成すると、前述の磁場曲がりの問題が生ずる。そこで、本実施形態の成形装置においても、図16に示すように、金型21の成形空間21aの側壁に対応する部分21cを非磁性材(弱磁性材)とすれば、磁場曲がりによる配向不良を解消することができる。この場合、左右パンチ22,23の少なくとも先端部分も非磁性材(弱磁性材)で形成することにより、成形体の全周囲において磁場曲がりを防止することが可能である。
なお、本実施形態の成形装置の場合、金型21は一体化されており、例えば上限に分割されるものではないので、残磁により原料粉の噛み込みの問題が発生することはない。したがって、成形空間21aの上下に接する面は強磁性材のままとすることができ、これにより余分な磁気的ギャップを介在させることなく磁界の印加が可能である。その結果、成形される成形体において、より一層の高配向を実現することが可能である。
第1の実施形態の成形装置の概略構成を示す斜視図である。 第1の実施形態の成形装置における成形状態を示す模式図である。 (a)は磁場曲がりが発生している場合の磁束の流れを説明する模式図であり、(b)は磁場曲がりが発生していない場合の磁束の流れを説明する模式図である。 下部金型における非磁性材(弱磁性材)の配置の一例を示す概略斜視図である。 成形体と金型のヒステリシス曲線の一例を示す図である。 上部金型と下部金型の対向面にそれぞれ非磁性材(弱磁性材)を配置した例を示す概略斜視図である。 第1の実施形態の成形装置による成形プロセスを示す図であり、原料粉充填工程を示す図である。 閉空間形成工程を示す図である。 左右パンチによる磁界中圧粉工程を示す図である。 成形体取り出し工程を示す図である。 第2の実施形態の成形装置による成形プロセスを示す図であり、原料粉充填工程を示す図である。 閉空間形成工程を示す図である。 左右パンチによる磁界中圧粉工程を示す図である。 成形体取り出し工程を示す図である。 第3の実施形態の成形装置による成形プロセスを示す図であり、原料粉充填工程を示す図である。 閉空間形成工程を示す図である。 左右パンチによる磁界中圧粉工程を示す図である。 下パンチストッパ解除及び下部金型下降工程を示す図である。 成形体取り出し工程を示す図である。 第4の実施形態の成形装置の概略構成を示す斜視図である。 原料粉充填時の左右パンチの状態を示す斜視図である。 成形状態を一部破断して示す斜視図である。 成形体の取り出し状態を示す斜視図である。 抜きテーパを付加した成形空間の形状例を示すものであり、金型を一部破断して示す斜視図である。 第4の実施形態の成形装置による成形プロセスを示す図であり、原料粉充填工程を示す図である。 原料粉充填状態を示す図である。 原料粉の成形空間への導入状態を示す図である。 左右パンチによる磁界中圧粉工程を示す図である。 成形体取り出し工程を示す図である。 第4の実施形態の成形装置の金型における非磁性材(弱磁性材)の配置の一例を示す概略斜視図である。
符号の説明
1 上部金型、2 下部金型、2a スライド溝、3 左パンチ、4 右パンチ、5 上コイル、6 下コイル、8 支持テーブル、9 フィーダーボックス、10 原料粉、11 成形体、12 下パンチ、13 下パンチストッパ、21 金型、21a 成形空間、22 左パンチ、23 右パンチ、24 充填用テーブル、25 成形体、26 上コイル、27 下コイル、28 支持テーブル、29 フィーダーボックス、30 原料粉

Claims (12)

  1. 成形空間の上下に強磁性材料からなる金型が配置されるとともに、前記金型に対して略水平方向に移動し希土類磁石原料粉を略水平方向に加圧する1つ以上のパンチと、成形空間内の希土類磁石原料粉に対して前記金型を介して略鉛直方向に磁界を印加する磁界印加手段とを有し、
    前記成形空間の少なくとも水平方向における周囲の少なくとも一部に、前記成形空間と接して非磁性材または弱磁性材が配されていることを特徴とする成形装置。
  2. 前記成形空間の上下に接する部分に非磁性材または弱磁性材が配されていることを特徴とする請求項1記載の成形装置。
  3. 前記強磁性材料からなる金型は上下に2分割されるとともに、下部金型には前記パンチが挿入され、前記成形空間を構成する溝部が形成されており、
    前記下部金型の前記溝部の両側部分が前記非磁性材または弱磁性材により構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の成形装置。
  4. 前記パンチの少なくとも先端部分が前記非磁性材または弱磁性材により構成されていることを特徴とする請求項3記載の成形装置。
  5. 上部金型の下部金型との対向面が非磁性材または弱磁性材により構成されていることを特徴とする請求項3または4記載の成形装置。
  6. 前記下部金型の前記溝部の底面部分が非磁性材または弱磁性材により構成されていることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項記載の成形装置。
  7. 前記パンチは、成形された成形体を略水平方向に取り出す成形体取り出し機構として機能することを特徴とする請求項3から6のいずれか1項記載の成形装置。
  8. 前記下部金型は、当該下部金型に対して鉛直方向に相対移動可能な下パンチを備えることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項記載の成形装置。
  9. 成形時に前記下パンチを固定する固定手段を有することを特徴とする請求項8記載の成形装置。
  10. 前記金型が上下一体に形成されるとともに、水平方向に貫通形成され前記パンチが挿入される成形空間を有し、
    前記金型の前記成形空間の側壁部分が前記非磁性材または弱磁性材により構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の成形装置。
  11. 前記パンチの少なくとも先端部分が前記非磁性材または弱磁性材により構成されていることを特徴とする請求項10記載の成形装置。
  12. 前記非磁性材または弱磁性材が超硬合金により形成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項記載の成形装置。
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