JP2006197826A - 紫サツマイモ酢の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 蒸煮して磨砕した紫サツマイモと水の混合物に有機酸とでんぷん分解酵素とアルコール発酵酵母培養液を添加してもろみを構成し糖化とアルコール発酵を並行して行いアルコール発酵液を生成する糖化・アルコール発酵工程S2と、このアルコール発酵液に酢酸菌培養液を添加して酢酸発酵を行い酢酸を生成する酢酸発酵工程S3とを有するものである。
【選択図】 図1
Description
この特許文献1に開示された発明では、穀類の麹で一次酢醪を生成して糖化酵素の溶出と酵母の増殖を十分に行わせた後、さつまいもを加えて二次酢醪を生成することにより、穀物の麹に含まれる有機酸類を利用して糖化工程において発生する酵母以外の微生物の増殖を抑制するので、さつまいもを原料とする醸造酢を安定して製造することを可能としている。
この特許文献2に開示された発明では、着色用のアントシアンを含有する甘しょをアルコール発酵が終了した後のアルコール発酵液に添加することにより、糖化及びアルコール発酵時におけるアントシアンの分解を防止するので、赤色の色調に優れた食酢を製造することができる。また、精製したアルコールを使用することによって原料に由来する独特の風味や不快な発酵臭が少ない食酢の製造も可能にしている。
この特許文献3に開示された発明では、酸性領域で有効に作用する黒麹菌の産生する至適pHの低いでんぷん分解酵素と酢酸耐性の強いアルコール発酵酵母を組み合わせて使用することによって仕込み当初に酢酸菌培養液を添加することを可能にし、同一容器内で糖化、アルコール発酵及び酢酸発酵を併行して行うことができる。その結果、工程が簡略化されるので製造管理が容易でかつ製造期間を大幅に短縮することができる。しかも、有害微生物に対して生育抑制効果が高い酢酸を含有する酢酸菌培養液を使用するので、雑菌汚染を受けにくく異常発酵や発酵不良を防止することができる。
この特許文献4に開示された発明では、従来の加熱による殺菌処理に代わって有機酸を添加して果実液をpH4.0〜4.5とし、温度40〜50℃で保持する方法を適用しているので、加熱処理に伴う生果実のエキスやビタミン等の成分の揮発や変質を防止し、栄養価が高く、美味で芳香のよい果実酢を製造することができる。しかも、アルコール発酵と酢酸発酵を同一系内で行うので、製造工程が簡略化し、製造期間を短縮することができる。
上記構成の紫サツマイモ酢の製造方法では、糖化とアルコール発酵を並行して行うので製造工程が簡略化されるという作用を有する。また、糖化・アルコール発酵工程においては、添加する有機酸によってもろみは酸性を示すという作用を有する。
図1は、本発明の本実施の形態に係る紫サツマイモ酢の製造方法の工程を示す概念図である。
図1において、紫サツマイモ酢の製造方法は、ステップS1の蒸煮・磨砕工程、ステップS2の糖化・アルコール発酵工程、ステップS3の酢酸発酵工程及びステップS4の熟成・殺菌工程から構成されている。
ステップS1の蒸煮・磨砕工程では、原料の紫サツマイモの前処理として、洗浄、蒸煮、剥皮及び磨砕を行うものである。
また、ステップS2の糖化・アルコール発酵工程では、ステップS1において前処理された紫サツマイモに水、酢酸、糖化酵素剤及びアルコール発酵酵母を添加して糖化反応とアルコール発酵反応を並行して進め、アルコール発酵液を生成するものである。
そして、ステップS3の酢酸発酵工程では、ステップS2において生成されたアルコール発酵液に酢酸菌を添加して酢酸発酵反応を進め、紫サツマイモ酢を生成するものである。
最後に、ステップS4では、ステップS3で生成された紫サツマイモ酢の後処理として、熟成及び殺菌処理を行うものである。
まず、図2を用いて蒸煮・磨砕工程について説明する。
図2は、本実施の形態に係る紫サツマイモ酢の製造方法の蒸煮・磨砕工程を分解して示す詳細な工程の概念図である。
図2において、ステップS1の蒸煮・磨砕工程では、まず、ステップS1−1において紫サツマイモ洗浄する。そして、ステップS1−2において洗浄した紫サツマイモを蒸煮し、続いて、ステップS1−3において剥皮する。そして、最後にステップS1−4において磨砕を行う。
ステップS1−2の蒸煮工程では、紫サツマイモの有する酸化酵素の失活と雑菌汚染防止を行うことが主な目的である。
酸化酵素が活性の状態にあると、酸化酵素と空気中の酸素が反応してアントシアニン色素を退色させる原因になるので、このステップS1−2の蒸煮工程において酸化酵素を完全に失活させることが重要となる。
また、原料の紫サツマイモは土中から掘り出されるために、洗浄のみでは雑菌汚染が避けられないので、蒸煮処理における加熱によって殺菌する必要がある。
なお、蒸煮の方法は、常圧蒸煮又は加圧蒸煮のいずれの方法でもよい。
また、ステップS1−2の蒸煮工程とステップS1−3の剥皮工程の順序に関しては、色調に関する知見が得られている。すなわち、本実施の形態で示す工程の順序で処理した紫サツマイモを用いて作成した糖化液と、ステップS1−2の蒸煮工程とステップS1−3の剥皮工程の順序を入れ替えて、洗浄、剥皮、蒸煮及び磨砕の順序で処理した紫サツマイモを用いて作成した糖化液の530nmの吸光度を測定すると、本実施の形態で示す工程で作成した糖化液の方が強い吸光度を示したのである。したがって、濃い色調の糖化液を得るためには、洗浄、蒸煮、剥皮及び磨砕の順序で紫サツマイモを処理することが有効である。
なお、糖化液は、紫サツマイモ200g、水200ml、糖化酵素剤0.4g及び酢酸2mlを混合し、40℃で時々攪拌させて作成した。
図3は、本実施の形態に係る紫サツマイモ酢の製造方法の糖化・アルコール発酵工程を分解して示す詳細な工程の概念図である。
図3において、ステップS2−1は加水工程を示している。このステップS2−1では、前述のステップS1の蒸煮・磨砕工程で処理された紫サツマイモに水を加えるものである。なお、加える水の割合は、糖化もろみの攪拌性と濾過性を考慮すると、紫サツマイモ1に対して水1の割合が好適である。
まず、アントシアニン色素の安定性について説明する。
紫サツマイモに含有されるアントシアニン色素はpHによって大きく色調が変化し、pHが高くなるにつれて色調が青みがかってくるとともに、発色も悪くなり鮮明さが低下する。また、その安定性に関しては、pHが低いほど安定であり、一般にpH4以下の食品において使用されている。後述の酢酸発酵工程はpH4以下の条件となるためにアントシアニン色素は安定しているが、糖化工程及びアルコール発酵工程は、通常、pH4以上の条件で行われるのでアントシアニン色素は不安定となる。そこで、酢酸を添加してもろみを酸性にすると、アントシアニン色素を安定させた状態で、糖化反応及びアルコール発酵反応を進めることができるのである。
一般に、酸を添加してpHを低下させると、微生物の生育が抑制されることが知られている。また、その効果は、同等のpHに調整された場合でも添加する酸の種類によって異なっており、果実や発酵食品等に含有される酢酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸及び酒石酸等の有機酸の中では酢酸が最も強い微生物の生育抑制効果を示す。したがって、本実施の形態では、酢酸を選定して添加することにより、糖化・アルコール発酵工程における雑菌汚染を効果的に防止することができる。
表1は、酢酸の添加量を変えた場合の糖化反応後のグルコース濃度を測定したものである。なお、試料は、紫サツマイモ100g、水100ml、糖化酵素0.05gと酢酸を0,1,2,4,6,8,10mlと変化させて各々混合し糖化反応を進めて7日間保持して作成し、グルコース濃度を測定した。表1に示すように、酢酸の添加量は2mlまで糖化反応に影響しないことがわかる。
したがって、糖化反応への影響を考慮すると、紫サツマイモ100g、水100mlに対して酢酸の添加量は1〜2ml、すなわち、もろみの酢酸濃度が0.5〜1.0w/v%になるように添加することが最適であるといえる。なお、この際のもろみのpHは3.9〜4.1となり、アントシアニン色素の安定化も十分に確保されるようになっている。
また、添加される酸は有機酸であれば特に限定されるものではないが、微生物の生育抑制効果の観点からは酢酸又は醸造酢が好ましい。
また、グルコアミラーゼ活性を有する糖化酵素剤を選定すると、でんぷんが完全にグルコースに分解されるので、次工程のアルコール発酵反応を効率よく進めることができる。酸性下でグルコアミラーゼ活性を有する市販の糖化酵素剤としては、例えば、グルクザイムAF6(天野エンザイム社商品名)等を使用することができる。
なお、糖化酵素剤に代わって麹を用いることも可能であり、この場合は、糖化酵素剤のグルコアミラーゼ力価と同等の力価となる量の麹の添加が必要である。
表2は、糖化酵素剤の添加量を変えた場合の糖化反応後のグルコース濃度を測定したものである。なお、試料は、紫サツマイモ100g、水100ml、酢酸1mlと糖化酵素0,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05gと変化させて各々混合し糖化反応を進めて7日間保持して作成し、グルコース濃度を測定した。表2に示すように、糖化酵素剤は0.05g添加すると十分にでんぷんがグルコースに分解され糖化反応が進んでいることがわかる。また、表中には示していないが、糖化反応に要する時間は、4日間で十分であった。
また、アルコール発酵酵母培養液の添加量については、アルコール発酵酵母培養液の添加量を変化させた試料を作成し、アルコール生成量の測定により検討した。なお、試料は、紫サツマイモ200g、水200ml、酢酸2ml、糖化酵素0.1gとアルコール発酵酵母培養液2,5,10,20mlと変化させて各々混合して作成した。
その結果、アルコール発酵酵母培養液の添加量が少ないと、アルコール生成開始時間が長くなる傾向はあるものの、4日後のアルコール生成量はいずれの試料についても7.5w/v%以上となった。したがって、アルコール発酵酵母培養液の添加量は5mlで十分であると考えられる。
なお、本実施の形態のように糖化反応とアルコール発酵反応を並行して同一工程で行う場合と、糖化反応とアルコール発酵反応を別個の工程で行う場合とで生成されるアルコール発酵液のアルコール取得率を比較すると、得られたアルコール取得率は、前者の場合が67%、後者の場合が57%となり、糖化反応とアルコール発酵反応を並行して同一工程で行う場合の方が発酵効率が良いことがわかっている。
また、ステップS2−1からステップS2−4における各種成分の添加の順序は特に限定されるものではなく、これらの工程の順序は入れ替えて行うことが可能である。
図4は、本実施の形態に係る紫サツマイモ酢の製造方法の酢酸発酵工程を分解して示す詳細な工程の概念図である。
図4において、ステップS3−1はアルコール濃度の調整工程を示す。このステップS3−1では、前述のステップS2において生成されたアルコール発酵液のアルコール濃度を調整することにより、所望の酢酸濃度の紫サツマイモ酢を製造することができる。一般的には、アルコール濃度を5〜6w/v%前後に調整することが好ましい。
酢酸菌の種類は、紫サツマイモが含有するポリフェノールにより酢酸発酵が阻害されなければ特に限定されるものではなく、例えば、アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti IFO3284)やアセトバクター・ランセンス(Acetobacter rancens SKU1108)等を用いることができる。
なお、酢酸菌培養液の添加量は、使用するアルコール発酵液に対して10v/v%が適当である。
通気攪拌による深部発酵法は、表面で発酵反応を進めて約30日間の発酵時間を要する静置発酵法に比べて、発酵時間は4〜5日間であり、発酵時間が短いのでアントシアニン色素の色調への影響が少なく、紫サツマイモ酢の製造に適した方法である。
最後に、ステップS3−4は菌体の分離工程を示している。このステップS3−4では、ステップS3−3において生成された紫サツマイモ酢に残存する菌体を濾過法により分離する。
図5は、本実施の形態に係る紫サツマイモ酢の製造方法の熟成・殺菌工程を分解して示す詳細な工程の概念図である。
図5において、ステップS4−1は熟成工程を示している。このステップS4−1では、ステップS3の酢酸発酵工程において生成された紫サツマイモ酢を適当な温度で長時間放置することによって、味に旨みを持たせるものである。なお、熟成に要する期間は、一般的な食酢の製造方法と同様でよく、例えば、8ヶ月から2年以上の期間行うとよい。
また、ステップS4−2は濾過工程を示している。このステップS4−2では、ステップS4−1の熟成工程において熟成された紫サツマイモ酢を濾過し、ゴミ等の浮遊物を除去するものである。
紫サツマイモ酢に含有されるアントシアニン色素は、90℃で60分間の加熱処理を行っても安定していることがわかっているので、加熱条件は、一般的な条件でよく、例えば、60℃で5分間、70℃で4分間又は80℃で2分以上等の条件を選択するとよい。なお、ステップS4−3の殺菌工程は、図示していないが、出荷や保存のための容器充填作業の後に行ってもよい。
また、加熱殺菌処理に代わって、一部の醸造酢に適用されている膜濾過法による殺菌処理を用いることも可能である。
また、酢酸の添加により、雑菌汚染防止の効果を得ることができる。
そして、糖化酵素剤及びアルコール発酵酵母を同一系内に添加して糖化反応とアルコール発酵反応を並行して進めるので、製造工程を減じて作業及び製造管理を容易にするとともに、効果的にアルコール発酵反応を進めることができる。
さらに、工程数に応じて使用する容器等の器具類が減少するので不要な雑菌の混入についても防止することができる。
以下、本実施の形態に係る紫サツマイモ酢の製造方法の実施例を挙げて説明する。
次に、磨砕した紫サツマイモ1000gに水1000ml、酢酸10ml及び市販の糖化酵素剤グルクザイムAF6(天野エンザイム社商品名)0.5gを加えて混合した。そして、この混合液に、アルコール発酵酵母サッカロマイセス・セルビシエの培養液25mlを添加し、30℃で保持して時々攪拌した。5日後にアルコール発酵液を濾過し、アルコール濃度7.1w/v%、酢酸濃度0.5w/v%、pH4.3のアルコール発酵液1320mlを得た。
続いて、アルコール濃度を5.5w/v%に調整したアルコール発酵液2000mlに、酢酸菌アセトバクター・ランセンスの培養液200mlを添加し、ジャーファーメンターを用いて、30℃、0.2vvm、800rpmの条件で酢酸発酵を行った。43時間後、酢酸濃度5.5w/v%の紫サツマイモ酢を得た。
この紫サツマイモ酢の成分は、総酸5.9w/v%、不揮発酸0.1w/v%、全窒素0.04w/v%、可溶性固形分1.9w/v%、灰分0.3w/v%、pH3.1、波長530nmにおける吸光度12.1、没食子酸としてのポリフェノール164mg/100mlであり、鮮やかな赤紫色を呈し、原料の紫サツマイモの香りを有するまろやかな醸造酢であった。
Claims (4)
- 蒸煮して磨砕した紫サツマイモと水の混合物に有機酸とでんぷん分解酵素とアルコール発酵酵母培養液を添加してもろみを構成し糖化とアルコール発酵を並行して行いアルコール発酵液を生成する糖化・アルコール発酵工程と、前記アルコール発酵液に酢酸菌培養液を添加して酢酸発酵を行い酢酸を生成する酢酸発酵工程とを有することを特徴とする紫サツマイモ酢の製造方法。
- 前記有機酸は酢酸又は醸造酢であることを特徴とする請求項1に記載の紫サツマイモ酢の製造方法。
- 前記もろみの酢酸濃度が0.5〜1.0w/v%になるように前記酢酸又は醸造酢を添加することを特徴とする請求項2に記載の紫サツマイモ酢の製造方法。
- 前記でんぷん分解酵素はグルコアミラーゼ活性を有する糖化酵素剤又は麹であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の紫サツマイモ酢の製造方法。
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