JP2006193638A - 繰り返し使用可能な記録媒体用筆記具および筆記方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 常温で発色状態と消色状態を維持可能なヒステリシス性により、常温で発色状態を維持しつつ、記録媒体の発消色温度以上の温度域で消色状態をとる色材を含有する、繰り返し使用可能な記録媒体用筆記具。
【選択図】 図1
Description
従来から、リユースペーパー等への筆記に関する提案として、上記熱ペンのほかにも種々の試みが為されているが、未だ要求を完全に満たすものとは到っていない。
例えば、いわゆるホワイトボード用マーカー等を使用するものでは、表面に付着したインキを乾式除去するので、インキの粉ふきが生じたり、洗浄がしにくい、等の不具合が生ずることがあった。また、特殊化学繊維等で拭き取るものや、大がかりな装置などが必要なものもあった(特許文献4)。
温度で軟化するインキを用い、消去時における加熱時にヘラなどで掻き取るタイプも提案があるが、同様に大がかりである上、完全な除去は望めないものであった(特許文献5)。
また、その点を改善すべく、水で消去可能なインキを使用したものも提案されている(特許文献6)。しかしながら、水による洗浄をする構造上、水が必須でドライタイプは不可能であった。
リユースペーパー等の記録媒体と同様な熱特性を有するインキを用いて、筆記を行うといったもので、記録媒体の記録像と同条件で消去可能なので、簡易的な利用が可能である。しかしながら、発色現象も同条件なので、繰り返し利用する、次の記録のための加熱を行った際に、当該加筆したインキ部分も発色してしまい、その場合、微妙な色差やインキ厚み分による段差で発色した加筆インキの筆跡が光線の屈折率の変化等により見えてしまう等の不具合があった(特許文献7)。
すなわち、本発明は、
「1.常温より高い温度の加熱により発色および消色の双方を制御する、繰り返し使用可能な記録媒体の表面に筆記する、常温で発色状態と消色状態を維持可能なヒステリシス性を有し、常温で発色状態を維持しつつ、前記記録媒体の発消色温度以上の温度域で消色状態をとる色材を含有する、繰り返し使用可能な記録媒体用筆記具。
2.前記、記録媒体用筆記具の色材が、常温で発色状態を維持しつつ、少なくとも前記記録媒体の発色温度と消色温度のいずれか低い温度以上の温度域で消色状態をとる色材を含有する、第1項に記載の繰り返し使用可能な記録媒体用筆記具。
3.前記、記録媒体用筆記具の色材が、5℃以下で発色し、常温でその発色状態を維持しつつ、少なくとも前記記録媒体の発色温度と消色温度のいずれか低い温度以上の温度域で消色状態をとる色材を含有する、第1項または第2項の何れかに記載の繰り返し使用可能な記録媒体用筆記具。
4.前記、記録媒体用筆記具の色材が、−10℃以下で発色し、常温でその発色状態を維持しつつ、50℃以上の温度域で消色状態をとる色材を含有する、第1項または第2項の何れかに記載の繰り返し使用可能な記録媒体用筆記具。
5.常温より高い温度の加熱により発色および消色の双方を制御する、繰り返し使用可能な記録媒体の表面に、常温で発色状態と消色状態を維持可能なヒステリシス性を有し、常温で発色状態を維持しつつ、前記記録媒体の発消色温度以上の温度域で消色状態をとる色材を含有する筆記具により、加筆・筆記する、熱により繰り返し使用可能な記録媒体の表面に、熱による繰り返し筆跡表示可能な筆記方法。」に関する。
熱により繰り返し使用可能な記録媒体の表面上に良好に加筆でき、かつ良好に消去することができる。消去にあたっては、温度による消去なら、部分的または全体を冷却することにより加筆事項の履歴表示ができる。さらに、色分けすれば日替わり等の履歴表示も可能である。
常温より高い温度の加熱により発色および消色の双方を制御する、繰り返し使用可能な記録媒体の発色または消色のいずれか低い方の温度以下での消去であれば、該記録媒体のリライト記録はそのままに、加筆記録だけを消すことができる。さらにその際、冷却による履歴表示も可能である。
必要なら、該記録媒体のリライト記録を書き替えた後に、部分的または全体を冷却すれば、リライト表示を書き替えた後であっても、リライト記録の書き替え前に表示していた加筆表示を再現できる。
加筆筆記具用のインキを水や擦過でも消去可能なインキにすれば、従来の熱により消去することができない加筆用筆記具と同様に完全消去ができるほか、加熱し、無色化したあとに消去すれば、物理的消去時に粉ふきなどが生じても、目立たず、周囲を汚染しにくいといった相乗効果も望める。
本発明に用いる、常温より高い温度の加熱により発色および消色の双方を制御する、繰り返し使用可能な記録媒体は、その応用技術として、種々、研究および商品化が行われており、以下のような構成、発色及び消色の制御を行っている。
例えば、特許2981558号公報等にあるような、電子供与性呈色性化合物と、長鎖脂肪族炭化水素基を有するホスホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物、およびフェノール化合物から選ばれた電子受容性化合物を用い、電子供与性呈色性化合物との組合せにより、発色と消色を加熱と冷却の制御により、容易に可逆記録を行わせることができ、それらを室温において、安定に保持する記録媒体などである。
こういった記録媒体は、発色温度域に加熱されたとき両化合物が溶融し反応することにより呈色性化合物が開環して発色し、これを急冷することによって室温でも発色状態を保持できるとされている。そして、発色した組成物を発色温度域より低い温度の消色温度域に加熱したときに電子受容性化合物の長鎖アルキル基が凝集を起こし、電子受容性化合物が単独の結晶となり、発色体から分離し、その結果として消色すると推定されている。即ち、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との二者の関係において、両化合物が反応した状態で保持されたまま固化することにより発色状態が維持され、電子受容性化合物が熱的条件下で分離結晶化し、単独の結晶を作り、消色状態を維持すると述べられている。
つまり、消色制御も発色制御も常温より高い温度、すなわち「加熱」により制御されているのである。
このような色材は、温度変化によるヒステリシス特性を有する色材で、温度履歴により、高温側から常温にするか、低温側から常温にするかにより、常温(20℃)で発色態様と消色態様の両態をとりうる色材である。
図1により説明するとt1への冷却により発色し、そのまま常温に戻せば、そのヒステリシス性により、常温でも発色状態を維持することができる色材である。すなわち、事前に筆記具全体をt1へ冷却しておけば、その色材を含有する筆記具にて筆記した場合、熱により繰り返し使用可能な記録媒体の表面上に着色された筆跡を得ることができる。
その筆跡は、色材の種類により、様々な色調にすることが可能である。
そしてその筆跡中の色材は、加熱され、t4に達すると、消色状態となる。そしてそのヒステリシス性により、常温でも消色状態を維持することができるのである。
さらに特筆すべきは、該記録媒体は「加熱」により発色並びに消色の両方を制御するが、本発明の筆記用具に使用する色材は、「加熱」により消去される。つまり、記録媒体の発色および消色のどちらの制御操作においても筆記用インキとしては消色する方向にしか作用しないので、より一層の好適な消去性を得ることができるのである。
しかしながら、不可逆反応による消去可能な色材を含有した筆記具では、一度消去してしまうと、その文字を再現することはできない。
可逆反応をする色材を含有した筆記具であっても、記録媒体に用いる色材と同じ反応性色材を筆記具に詰めたものによる筆跡においても同様に、記録媒体上の記録と加筆筆跡が加熱制御により同時に消え、同時に発色するので、加筆筆跡のみを元どおりに再現することはできない。
発消色の温度条件を記録媒体と筆記具の間に差を持たせたものであれば、それらの発消色性に差を生ずることは可能であるが、同様な発消色制御思想を有するもの同士であるので、同様に加筆インキのみの発消色制御は不可能である。
したがって、記録媒体上への再記録により記録媒体上の色材と加筆筆跡上の色材とが同時に発色した場合には、同じ色調のインキに構成されているので、一見して加筆インキが消去されているように見えるものの、その塗布厚や筆記具として必須な第三成分などの影響で微妙な屈折率の差を生じ、また、同じ色調に構成しているとはいえ不可避的に発生する色差により、加筆筆跡が浮き出ることが予想され、2回目以降の記録媒体への表示に余分な濃淡を作り出す不具合が生じていた。
この現象は、本発明の履歴表示の効果とは異なり、積極的に筆跡を再現させることができるという本発明の主旨とは異なるものである。
t4の好適な温度としては、誤って容易に筆跡が消去されないよう、40℃以上が好ましい。夏期の室内環境温度と筆跡消去の容易性、並びに繰り返し使用可能な記録媒体の消去温度設定から考えると、50℃以上、さらに60℃以上がより好ましい。
本発明に用いる常温とは、繰り返し使用可能な記録媒体を使用する際の環境温度を指し、夏期と冬季、室内と屋外、工場と事務所などによって変化するが、おおむね20℃を想定するのでよい。
ここで、一度目に筆記した色調と異なる色で、二度目の筆記をし、n回目まで異なる色にて筆記と消去を繰り返せば、筆記の履歴効果を得ることができ、さらに好ましい。
例えば、第1のインキで1日目に赤字の筆跡を得た後、加熱により筆跡を消去し、2日目にピンクの筆跡を、3日目にオレンジの筆跡を、という具合にn日目までn個の色調の筆跡を得れば、加熱によりそれぞれの色調はすべてなくなるが、冷却することによりすべての色調を同時に表示させることができ、何日目にどのような内容を記載したのか、の履歴効果を得ることができるのである。
さらに、それぞれのインキ中の色材のt1〜t4の温度設定に差を設ければ、用途はさらに広がる可能性を有する。
また、各色調は、有色から無色(消色)への変化のみならず、通常の色材を併用したり、2種の熱変色性色材を併用したりして有色から有色(呈色)への変化によるものも本発明に含まれる。着色された記録媒体に用いる際には有効であるからである。
このような色材としては、特公平4−17154号公報、特開平7−33997号、特開平7−179777号等に記載の組成物を応用することができる。このような色材は、温度−色濃度の関係においてヒステリシス特性を示して変色する、即ち変色温度域より低温側から温度を上昇させていく場合と、逆に変色温度域より高温側から温度を下降させていく場合とでは異なる経路をたどって変色する現象を呈するものである。この点を再度図1において説明する。
t4の好適な温度としては、誤って容易に筆跡が消去されないよう、40℃以上が好ましい。夏期の室内環境温度と筆跡消去の容易性、並びに繰り返し使用可能な記録媒体の消去温度設定から考えると、50℃以上、さらに60℃以上がより好ましい。
このようなより好ましい温度域の色材としては、特願2003−319039号、特願2004−21611号、特願2004−119869号等に記載の色材を使用することができる。
固形芯の場合、賦形材の選択によるが、厚く塗ることができ、発色性がよいので好ましい。また、水性ゲルなどの水溶性材料を用いれば、水による完全除去を試みる際にも良好な洗浄性能を有する。
ただし、固形芯の場合、筆跡は、乾燥、固化しにくい、または、しないという性質を有するので、2度目以降の熱記録時には注意が必要である。例えば、サーマルヘッドによるものでは、予めクリヤーシートをかぶせるなど、ヘッド通過の際に直接接しないようなサーマルヘッド保護の工夫が必要である。
(筆記具)
色材として、感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包した可逆熱変色性顔料(t1:2℃、t2:6℃、t3:37℃、t4:44℃、平均粒子径:2.5μm、暗緑色から無色に色変化する)30部、保湿剤5部、防菌材0.7部、水64.3部からなる可逆熱変色性インキを調製した。
その後、前記インキを、予め2℃以下に冷却して可逆熱変色性顔料を発色させた後、室温(20℃)下にて、合成樹脂フィルムで被覆した繊維集束インキ吸蔵体中に含浸させ、先端部にポリエステル繊維の樹脂加工ペン体を備えた筆記具の軸筒に格納し、該繊維集束インキ吸蔵体とペン体とを接触状態に組み立て、繰り返し使用可能な記録媒体用筆記具として水性マーカーを完成した。
(記録媒体)
繰り返し使用可能な記録媒体としては、常温より高い温度の加熱により発色および消色の双方を制御するロイコ染料等をマトリックスポリマー中に保持した感熱可逆性記録層をプラスチックシート上に設けた記録媒体が用いられ、該記録媒体は、約110℃/急冷、にて発色記録を行い、約60℃/徐冷、にて消色記録を行うものを用いた。
(筆記)
上記記録媒体上に、前記筆記具を用いて加筆・筆記したところ、良好に筆記できた。また、その筆跡は、2℃以下に冷却すると暗緑色を示し、44℃以上で無色となり、ヒステリシス性により6℃〜37℃の温度域では、前記暗緑色の筆跡を記憶保持させて視覚させることができると共に、無色の筆跡、即ち、不可視状態の筆跡も記憶保持させることができた。尚、前記実施例中の部は質量部を示し、以下の実施例も同様である。
(筆記具)
実施例1における可逆熱変色性インキを、色材として、感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包した可逆熱変色性顔料(t1:3℃、t2:6℃、t3:38℃、t4:45℃、平均粒子径:2.5μm、青色から無色に色変化する)20部、保湿剤5部、防菌材0.7部、水74.3部からなる可逆熱変色性インキとしたほかは実施例1と同様にして、繰り返し使用可能な記録媒体用筆記具としての水性マーカーを完成した。
(筆記)
実施例1で用いた記録媒体上に、前記筆記具を用いて加筆・筆記したところ、良好に筆記できた。また、その筆跡は、3℃以下に冷却すると暗緑色を示し、45℃以上で無色となり、ヒステリシス性により6℃〜38℃の温度域では、前記暗緑色の筆跡を記憶保持させて視覚させることができると共に、無色の筆跡、即ち、不可視状態の筆跡も記憶保持させることができた。
熱により繰り返し使用可能な記録媒体の表面上に良好に加筆でき、かつ良好に消去することができる加筆用筆記具等に利用可能である。
消去にあたっては、温度による消去なら、部分的または全体を冷却することにより加筆事項の履歴表示ができる。さらに、色分けすれば日替わり等の履歴表示も可能である。
常温より高い温度の加熱により発色および消色の双方を制御する、繰り返し使用可能な記録媒体の発色または消色のいずれか低い方の温度以下での消去であれば、該記録媒体のリライト記録はそのままに、加筆記録だけを消すことができる。さらにその際、冷却による履歴表示も可能である。
必要なら、該記録媒体のリライト記録を書き替えた後に、部分的または全体を冷却すれば、リライト表示を書き替えた後であっても、リライト記録の書き替え前に表示していた加筆表示を再現できる。
加筆筆記具用のインキを水や擦過でも消去可能なインキにすれば、従来の熱により消去することができない加筆用筆記具と同様に完全消去ができるほか、加熱し、無色化したあとに消去すれば、物理的消去時に粉ふきなどが生じても、目立たず、周囲を汚染しにくいといった相乗効果も望める。
Claims (5)
- 常温より高い温度の加熱により発色および消色の双方を制御する、繰り返し使用可能な記録媒体の表面に筆記する、常温で発色状態と消色状態を維持可能なヒステリシス性を有し、常温で発色状態を維持しつつ、前記記録媒体の発消色温度以上の温度域で消色状態をとる色材を含有する、繰り返し使用可能な記録媒体用筆記具。
- 前記、記録媒体用筆記具の色材が、常温で発色状態を維持しつつ、少なくとも前記記録媒体の発色温度と消色温度のいずれか低い温度以上の温度域で消色状態をとる色材を含有する、請求項1に記載の繰り返し使用可能な記録媒体用筆記具。
- 前記、記録媒体用筆記具の色材が、5℃以下で発色し、常温でその発色状態を維持しつつ、少なくとも前記記録媒体の発色温度と消色温度のいずれか低い温度以上の温度域で消色状態をとる色材を含有する、請求項1または2の何れかに記載の繰り返し使用可能な記録媒体用筆記具。
- 前記、記録媒体用筆記具の色材が、−10℃以下で発色し、常温でその発色状態を維持しつつ、50℃以上の温度域で消色状態をとる色材を含有する、請求項1または2の何れかに記載の繰り返し使用可能な記録媒体用筆記具。
- 常温より高い温度の加熱により発色および消色の双方を制御する、繰り返し使用可能な記録媒体の表面に、常温で発色状態と消色状態を維持可能なヒステリシス性を有し、常温で発色状態を維持しつつ、前記記録媒体の発消色温度以上の温度域で消色状態をとる色材を含有する筆記具により、加筆・筆記する、熱により繰り返し使用可能な記録媒体の表面に、熱による繰り返し筆跡表示可能な筆記方法。
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