JP2006190631A - 固体酸化物形燃料電池用空気極及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】空気極材料の粒子同士が空隙を介して互いに連結された多孔質構造の空気極において、一般式A1−xBxC1−yDyO3(A:La及び/又はSm、B:Sr、Ca及びBaのうちの1種以上、C:Co及び/又はMn、D:Fe及び/又はNi、0.1≦x≦0.5、0≦y≦0.3)で表わされる第1の材料の一部に、例えばFe、Co、Ni、Cu、Znのような遷移金属の酸化物を含む第2の材料を介在させる。
【選択図】図1
Description
空気極上においては、反応に係わる酸素分子が酸素原子に解離し、イオン化される。したがって、空気極の表面積が大きければ大きいほど反応場が多くなり、スムーズに電極反応が進行する。また、空気極には酸素分子をイオン化するために、電子を酸素分子あるいは原子になるべく早く供給する能力、すなわち高い電子伝導性が要求される。
一般的に、固体酸化物形燃料電池の空気極材料としては、一般式A1−xBxC1−yDyO3(0.1≦x≦0.5、0≦y≦0.3)で表わされ、AがLa及びSmの一方又は両方の元素、BがSr、Ca及びBaから成る群より選ばれた少なくとも1種の元素、CがCo及びMnの一方又は両方、DがFe及びNiの一方又は両方の元素である酸化物電極が用いられている。
また、電解質材料と空気極材料の間で酸素イオンの移動が行われる必要があり、電解質材料と強固に接合されている必要がある。
ところが、出発形態が粒子である空気極材料が、この高温プロセス時においてシンタリングを起こし、粒子径の成長と共に、電極表面積が減少する傾向があり、セルの内部抵抗が増大し、発電能力の向上が阻害されるという問題がある。
また、本発明の固体酸化物形燃料電池は、本発明の上記空気極と多孔質燃料極とによって、固体酸化物から成る緻密な電解質を挟持したことを特徴としている。
すなわち、これら遷移金属元素は、市場での入手が容易で、比較的安価な材料であると共に、第2の材料中には一般式(A1−xBxC1−yDyO3)で表わされる第1の材料のAとBは含まれないことから、第2の材料の中の遷移金属元素の含有量が第1の材料の含有量よりも多いという特徴を有する。
このような粒子構成の空気極を得るためには、以下に述べるように、第2の材料の出発原料として、例えば空気中の焼成によって酸化物となる無機塩や有機化合物などから成る酸化物前駆体を用いることや、第2の材料の出発原料として、酸化物前駆体ではなく最初から酸化物となっているものを使用する場合には、第1の材料の出発原料である酸化物粉末よりも微細な酸化物粉末を用いることによって製造することができる。
例えば、第1の材料の出発原料である酸化物粉末、バインダー、分散剤、溶媒、第2の材料の出発原料である酸化物前駆体を調合したインク又はペーストを準備し、このインク又はペーストを被成膜表面、例えば固体酸化物から成る電解質の表面や、支持基板の表面などに塗布した後、空気中で焼成することによって固体酸化物形燃料電池用空気極を得ることができる。
具体的には、塩化鉄(FeCl3)、酢酸鉄(Fe(CH3COO)2)、トリ−イソプロポキシ鉄(Fe(OCH(CH3)CH2OCH3)3)、塩化コバルト(CoCl2)、酢酸コバルト(Co(CH3COO)2)、ジ−イソプロポキシコバルト(Co(Oi−C3H7)2)、塩化ニッケル(NiCl2)、酢酸ニッケル(Ni(CH3COO)2)、炭酸ニッケル(NiCO3)、硝酸第二銅(Cu(NO3)2)、塩化第二銅(CuCl2)、酢酸第二銅(Cu(CH3COO)2)、硝酸亜鉛(Zn(NO3)2)、塩化亜鉛(ZnCl2)、酢酸亜鉛(Zn(CH3COO)2)、ジ−n−プロポキシ亜鉛(Zn(OnC3H7)2)などを好適に用いることができる。
すなわち、第1の材料の出発原料である上記したような酸化物粉末と、これよりも微細な粒度構成を有する、例えば酸化鉄(Fe2O3)、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)などの遷移金属酸化物と、バインダー、分散剤、溶媒を調合したインク又はペーストを準備し、このインク又はペーストを被成膜表面に、塗布した後、空気中で焼成することによって固体酸化物形燃料電池用空気極を得ることができる。なお、バインダーや分散媒、溶媒、造孔剤等については、上記同様のものを使用することができる。
(1)燃料極基板の作製
NiOとYSZの混合粉末と造孔剤、バインダー、分散剤、溶媒とを調合し、混練したのち、プレス装置にて成型して、気孔率約25%の燃料極基板を作製した。
YSZ粉末とバインダー、分散剤、溶媒を調合してYSZペーストを作製した。
SDC粉末とバインダー、分散剤、溶媒を調合してSDCペーストを作製した。
Sm0.5Sr0.5CoO3粉末(平均粒径0.8μm)、FeCl3とバインダー、分散剤、溶媒を調合して空気極ペーストを作製した。
なお、FeCl3の添加量は、このFeCl3が焼成後すべてFe2O3に酸化されると仮定して、Sm0.5Sr0.5CoO3とFe2O3の質量比が100:1となるようにした。
上記工程(1)で得られた燃料極基板の片面に、工程(2)で調整したYSZペーストをスクリーン印刷によって塗布し、充分に乾燥させたのち、さらに工程(3)で調整したSDCペーストを同じくスクリーン印刷によって塗布し、1300℃の温度で1時間以上焼成することによって燃料極/電解質基板を得た。
上記によって得られた燃料極/電解質基板のSDC層の上面に、空気極ペーストをスクリーン印刷にて塗布して、1100℃の温度で1時間焼成することによって、固体酸化物形燃料電池単セルを形成した。なお、上記SDC層の形成は、YSZから成る電解質層と、Sm0.5Sr0.5CoO3を含む空気極層との直接接触を避けることを目的としている。
上記実施例1の工程(4)においてFeCl3の代わりにCoCl2を用いて、空気極ペーストを作製した。なお、CoCl2の添加量は、このCoCl2が焼成後すべてCoOに酸化されると仮定して、Sm0.5Sr0.5CoO3とCoOの質量比が100:1となるようにした。
これ以外は、上記実施例1と同様の操作を繰返すことによって、本例の固体酸化物形燃料電池単セルを形成した。
上記実施例1の工程(4)においてFeCl3の代わりにNiCl2を用いて、空気極ペーストを作製した。なお、NiCl2の添加量は、このNiCl2が焼成後すべてNiOに酸化されると仮定して、Sm0.5Sr0.5CoO3とNiOの質量比が同様に100:1となるように配合した。
これ以外は、上記実施例1と同様の操作を繰返すことによって、本例の固体酸化物形燃料電池単セルを形成した。
上記実施例1の工程(4)においてFeCl3を添加することなく空気極ペーストを作製したこと以外は、上記実施例1と同様の操作を繰返すことによって、本例の固体酸化物形燃料電池単セルを形成した。
上記実施例1の工程(4)においてSm0.5Sr0.5CoO3の代わりにLa0.8Sr0.2MnO3(平均粒径0.8μm)を用いて空気極ペーストを作製した。
この空気極ペーストを用いたことと、上記工程(5)においてSDCペーストの塗布を省略したこと以外は、上記実施例1と同様の操作を繰返すことによって、本例の固体酸化物形燃料電池単セルを形成した。
上記実施例1の工程(4)においてSm0.5Sr0.5CoO3の代わりにLa0.8Sr0.2MnO3(平均粒径0.8μm)を用いると共に、FeCl3の代わりにCoCl2を用いて、空気極ペーストを作製した。このとき、CoCl2の添加量は、このCoCl2が焼成後すべてCoOに酸化されると仮定して、La0.8Sr0.2MnO3とCoOの質量比が100:1となるようにした。
これ以外は、上記実施例4と同様の操作を繰返すことによって、本例の固体酸化物形燃料電池単セルを形成した。
上記実施例1の工程(4)においてSm0.5Sr0.5CoO3の代わりにLa0.8Sr0.2MnO3(平均粒径0.8μm)を用いると共に、FeCl3の代わりにNiCl2を用いて、空気極ペーストを作製した。このとき、NiCl2の添加量は、このNiCl2が焼成後すべてNiOに酸化されると仮定して、La0.8Sr0.2MnO3とNiOの質量比が100:1となるようにした。
これ以外は、上記実施例4と同様の操作を繰返すことによって、本例の固体酸化物形燃料電池単セルを形成した。
上記実施例1の工程(4)においてSm0.5Sr0.5CoO3の代わりにLa0.8Sr0.2MnO3を用いると共に、FeCl3を添加することなく、空気極ペーストを作製した。 これ以外は、上記実施例4と同様の操作を繰返すことによって、本例の固体酸化物形燃料電池単セルを形成した。
上記実施例1の工程(4)においてFeCl3の代わりにFe2O3粉末(平均粒径40nm)を用いて、空気極ペーストを作製した。なお、Fe2O3粉末の添加量は、Sm0.5Sr0.5CoO3とFe2O3の質量比が100:1となるようにした。
そして、実施例1の工程(5)と同様にして得られた燃料極/電解質基板のSDC層の上面に、上記空気極ペーストをスクリーン印刷にて塗布して、1000℃の温度で1時間焼成することによって、固体酸化物形燃料電池単セルを形成した。
上記実施例1の工程(4)においてFeCl3の代わりにCoO粉末(平均粒径25nm)を用いて、空気極ペーストを作製した。なお、CoO粉末の添加量については、Sm0.5Sr0.5CoO3とCoOの質量比が100:1となるようにした。
これ以外は、上記実施例7と同様の操作を繰返すことによって、本例の固体酸化物形燃料電池単セルを形成した。
上記実施例1の工程(4)においてFeCl3の代わりにNiO粉末(平均粒径25nm)を用いて、空気極ペーストを作製した。なお、NiO粉末の添加量については、Sm0.5Sr0.5CoO3とNiOの質量比が100:1となるようにした。
これ以外は、上記実施例7と同様の操作を繰返すことによって、本例の固体酸化物形燃料電池単セルを形成した。
上記実施例1の工程(4)においてFeCl3の代わりにCuO粉末(平均粒径50nm)を用いて、空気極ペーストを作製した。なお、CuO粉末の添加量については、Sm0.5Sr0.5CoO3とCuOの質量比が100:1となるようにした。
これ以外は、上記実施例7と同様の操作を繰返すことによって、本例の固体酸化物形燃料電池単セルを形成した。
上記実施例1の工程(4)においてFeCl3の代わりにZnO粉末(平均粒径35nm)を用いて、空気極ペーストを作製した。なお、ZnO粉末の添加量については、Sm0.5Sr0.5CoO3とZnOの質量比が100:1となるようにした。
これ以外は、上記実施例7と同様の操作を繰返すことによって、本例の固体酸化物形燃料電池単セルを形成した。
上記実施例1の工程(4)においてFeCl3を添加することなく空気極ペーストを作製すると共に、工程(5)における空気極の焼付け温度を1000℃にしたこと以外は、上記実施例1と同様の操作を繰返すことによって、本例の固体酸化物形燃料電池単セルを形成した。
なお、本例においては、空気極の焼付けが不十分であることから、焼付け工程後、空気極が剥離する結果となった。
上記実施例1〜11及び比較例1、2において得られた単セルを用いて、各セルの発電評価を行った。
発電温度は600℃とし、燃料極側には3%の水蒸気を含む水素ガスを、空気極側には乾燥空気を用いて発電試験を行い、出力電流を制御しながら電流−電圧曲線を測定した。そのときの最大出力を表1に示した。
また、第1の材料の出発原料である酸化物粉末よりも微細な遷移金属酸化物粉末を含む空気極ペーストを焼付けた本発明の実施例7〜11による固体酸化物形燃料電池単セルにおいては、比較例3、すなわち遷移金属の酸化物が含まれておらず、空気極の強度を充分に確保できないためにセル出力の測定が困難であったものと同温度条件で焼付けたにも拘らず、空気極の焼付けが充分であり、より高温で焼付けた比較例1〜3と同等の出力で発電可能であることが判明した。
なお、実施例1〜3、7の空気極には、○で囲んでマークしているように、比較例1では観察されない微粒子の存在が確認されている。そして、当該マーキング部分について、実施例1においてはSm0.5Sr0.5CoO3(第1の材料)には含まれないFeが検出され、実施例3においてはNiが検出された。また、実施例2においては、上記第1の材料成分に比較して、Coの成分が多く含まれることが判明した。さらに、実施例7においては、Feが検出された。
Claims (10)
- 空気極材料の粒子同士が空隙を介して互いに連結されて成る多孔質構造を有し、一般式A1−xBxC1−yDyO3(式中のAはLa及びSmの一方又は両方の元素、BはSr、Ca及びBaから成る群より選ばれた少なくとも1種の元素、CはCo及びMnの一方又は両方の元素、DはFe及びNiの一方又は両方の元素であって、0.1≦x≦0.5、0≦y≦0.3)で表わされる第1の材料の一部に、遷移金属酸化物を含む第2の材料が介在していることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用空気極。
- 上記第2の材料を構成する酸化物粉末の平均粒径が第1の材料を構成する酸化物粉末の平均粒径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用空気極。
- 上記第2の材料に含まれる遷移金属酸化物がFe、Co、Ni、Cu及びZnから成る群より選ばれた少なくとも1種の元素の酸化物であって、当該遷移金属元素の含有量が第1の材料中の含有量よりも多いことを特徴とする請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池用空気極。
- 請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の燃料電池用空気極の製造方法であって、第1の材料の出発原料としては酸化物を使用し、第2の材料の出発原料としては電極形成工程において酸化物となる酸化物前駆体を用いることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用空気極の製造方法。
- 第1の材料の出発原料である酸化物粉末と、バインダーと、分散剤と、溶媒と、第2の材料の出発原料である酸化物前駆体を調合したインク又はペーストを調整し、このインク又はペーストを塗布した後、空気中で焼成することを特徴とする請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池用空気極の製造方法。
- 第2の材料の出発原料として、空気中で焼成することによって酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅及び酸化亜鉛から成る群より選ばれた少なくとも1種の酸化物を生成し得る酸化物前駆体を用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の固体酸化物形燃料電池用空気極の製造方法。
- 第2の材料の出発原料として、Fe、Co、Ni、Cu及びZnから成る群より選ばれた少なくとも1種の元素の無機塩及び/又は有機化合物を用いることを特徴とする請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池用空気極の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の燃料電池用空気極の製造方法であって、第1の材料の出発原料として酸化物を使用し、第2の材料の出発原料として上記第1の材料の出発原料である酸化物粉末よりも微細な酸化物粉末を用いることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用空気極の製造方法。
- 第1の材料の出発原料である第1の酸化物粉末と、第2の材料の出発原料であって、上記第1の酸化物粉末よりも微細な第2の酸化物粉末と、バインダーと、分散剤と、溶媒を調合したインク又はペーストを調整し、このインク又はペーストを塗布した後、空気中で焼成することを特徴とする請求項8に記載の固体酸化物形燃料電池用空気極の製造方法。
- 固体酸化物から成る緻密な電解質を多孔質燃料極と請求項〜3のいずれか1つの項に記載の空気極により挟持して成ることを特徴とする固体酸化物形燃料電池用セル。
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