JP2006182615A - 窒素含有化合物の光分解方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 アンモニアなどの窒素含有化合物を光分解により、無害で環境を汚染しない窒素等の物質とし、またさらには、エネルギー源なりうる水素等の物質に変換し有効利用する方法を提供する。
【解決手段】 窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体の当該媒体中に、n−型半導体を装入し、この半導体を含む媒体中に光照射して溶存窒素含有化合物を分解し、窒素と水素に変換するか、光を吸収して励起し電子の授受を行うことのできる増感剤を当該媒体中に装入し、光照射してこの窒素含有化合物を分解する。また、窒素含有化合物を含む水系媒体等の液相媒体中に、半導体電極及びその対極を挿入し、当該電極を外部導線で接続して外部回路を形成し光照射することにより、当該窒素含有化合物を分解し、光電流を発生させる光燃料電池を形成することもできる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、窒素含有化合物を、太陽光や人工光などの光で無害な化合物に分解する方法に関する。より詳しくは、例えば畜産/林産廃棄物やバイオマス中に含まれるアンモニア、尿素、たんぱく質などの窒素含有化合物を、太陽光や人工光などの光で窒素などの無害な化合物に分解して除去しうるとともに、また、水素などのエネルギー源として有用な物質に変換することができる方法に関する。
畜産や林産などの廃棄物、工業廃棄物中あるいはバイオマス中には、アンモニア、尿素、たんぱく質などの窒素含有化合物が多量に含まれている。例えば、畜産統計によると全畜種からのふん尿は約9000万t、窒素換算で70万tという膨大な量に達するとされる。上記窒素含有化合物は、悪臭と水質汚濁、さらには地下水の硝酸塩集積をもたらす環境汚染物質であり、無処理で生活環境中に放出することは環境保護の観点から問題が大きい。しかしながら、それらを工業的規模で無害な化合物にまで分解、除去することは必ずしも容易ではなく、従来は、実際的に適用できる適切な処理方法は無かった。
なお、バイオマス中の炭素成分はメタン発酵によりメタンとして回収しうるものの、その前又は後に窒素成分をアンモニアとして取り出す必要がある。しかしながら、この回収アンモニアは殆ど有用性のない肥料にするか、実用性のない500℃という高温で熱分解する以外に処理の方法がないという実状にある。
従来、例えば気相中の濃度の低いアンモニアを脱臭の目的で二酸化チタンなどの光触媒により光で分解することは公知である(非特許文献1)。しかしながらこの技術は、大気(気相)中の低濃度のアンモニアを分解して脱臭する目的で行なわれており、分解生成物が何かは明らかにされていない。当然のことながら、通常は空気共存下の当該アンモニア分解による脱臭反応においては、分解生成物は酸化窒素(NOx)、さらには硝酸(HNO3)であって、生成物自身の毒性が問題となるものである。
一方、液相におけるアンモニアを光触媒で分解する方法もいくつか知られているが、これらの技術は次のような問題を含んでおり、廃棄物中のアンモニアを除去する方法としては適切ではなかった。例えば、アンモニア態窒素等の窒素化合物を含有する被処理水を、二酸化チタン光触媒に接触させ、大気下で紫外線照射により当該窒素化合物を硝酸イオンに酸化分解した後、当該硝酸イオンを窒素ガス又は再びアンモニアガスにまで電解還元して気相に放出する水中の窒素化合物を除去する方法が提案されている(特許文献1参照。)。この方法は、窒素化合物から生成した硝酸イオン(NO3 -)がそのまま排水として廃棄する等環境中に放出できないので、これを電解して窒素(又はさらにアンモニアにまで)変換して気相に放出するなどの、酸化し、還元する、2段階の操作を必要とする。また、アンモニアは強い悪臭物質であり、しかも、再び大気中で酸化されてNOxに変化するものであるから、大気中に放出することは本来好ましくない。
また被処理水中のアンモニアの除去方法として、当該被処理水中に二酸化チタン光触媒とアニオン交換樹脂を配し、大気下で紫外線照射して当該アンモニアを光酸化し、生成する硝酸イオンをアニオン交換樹脂に吸着させながらアンモニアの酸化除去を促進することが提案されている(特許文献2)。
この方法においては、やはり環境中にそのまま排出できない有害な硝酸イオンを生ずるので、これを吸着除去するためにアニオン交換樹脂を必要とする。さらにこの後アニオン交換樹脂を再生して用いるには、アルカリを必要とする等余計な操作を必要とする。
その他水中のアンモニア除去を直接に目的とするものではないが、二酸化チタン等の光触媒により、アンモニアなどの窒素化合物を、空気共存下に、紫外光等を照射して硝酸イオンに変換してから分析する方法が公知である(特許文献3〜4)。これらの方法は、一見そのまま水中のアンモニアの分解除去に利用できそうであるが、アンモニアは分解されるものの、分解生成物が硝酸イオンであるため、生活環境中にそのまま排出することはできないという問題が残ることは、上記と同様である。
以上のように、従来、二酸化チタンなどの光触媒によるアンモニアの光分解においては、生成物は多くの場合環境に有害な硝酸イオンや窒素酸化物であるが(例えば、非特許文献2を参照。)、それ以外の生成物を伴う数少ない例としては、非特許文献3において、窒素(N2)の生成も報告されている。
すなわち、白金を坦持した二酸化チタンなどの光触媒によりアンモニアの光分解を行ない窒素(N2)の生成がされたとしているが、反応温度が433°Kという高温であること及び8気圧の酸素(O2)という過酷な条件を必要とするものである。なお、当該文献においては、窒素の生成のみが確認されており、エネルギー源として最も重要な水素(H2)の生成は報告されていない。
以上のごとく、従来、廃棄物などの液相におけるアンモニアなどの窒素化合物の光触媒による分解除去に関しては、いくつか提案されているが、主として、硝酸イオンというそれ自身毒性であり環境上別の問題となるものを生成せしめるものが殆どであり、また、光以外のエネルギー源や2段階の処理を必要とするものであって、光分解のみにより、有害な硝酸イオンを生ずることなく、しかも無害、かつ、エネルギー源となりうる物質を生成する方法はこれまで知られていなかった。
特開平2001−29944号公報(特許請求の範囲(請求項1〜2)、〔0009〕〜〔0018〕) 特開平11−90463号公報(特許請求の範囲(請求項1〜6)、〔0014〕〜〔0047〕) 特開平9−127005号公報(特許請求の範囲(請求項1〜4)、〔0012〕〜〔0030〕) 特開2004−37228号公報(特許請求の範囲(請求項1〜7)、〔0016〕〜〔0061〕) Journal of Nanoparticle Research, 2001, vol.3, P141-147 Wang, A. et al. "Photooxidation of aqueous ammonia with titania-based heterogeneous catalysis", Solar Energy, 1994, vol.52, p459-466 Applied Catalysis A:General, 2000, vol.194-195, p89-97
本発明の目的は、アンモニアなどの窒素含有化合物を太陽光や人工光をエネルギー源とする光分解により、無害で環境を汚染しない窒素等の物質とし、またさらには、エネルギー源なりうる水素に変換し有効利用する方法を提供することである。
本発明に従えば、以下の、n−型半導体又はn−型半導体を含む光触媒による窒素と水素の生成を伴う溶存窒素含有化合物の光分解方法が提供される。
〔1〕
窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体において、当該媒体中にn−型半導体を装入し、当該半導体を含む媒体中に光照射して当該窒素含有化合物を分解し、窒素と水素に変換することを特徴とする窒素含有化合物の光分解方法。
〔2〕
窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体において、当該媒体中に、n−型半導体を坦体としこれに金属又は金属酸化物からなる酸化及び/又は還元触媒を坦持した光触媒を装入し、当該光触媒を含む媒体中に光照射して当該窒素含有化合物を分解し、窒素と水素に変換することを特徴とする窒素含有化合物の光分解方法。
〔3〕
窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体中の当該窒素含有化合物の分解を、当該媒体中に酸素が実質的に存在しない状態で行う〔1〕項1又は〔2〕項に記載の光分解方法。
また本発明に従えば、以下の、増感剤又はこれと電子受容体を使用する窒素化合物の光分解方法が提供される。
〔4〕
窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体において、当該媒体中に、光を吸収して励起し電子の授受を行うことのできる増感剤を装入し、当該半導体を含む媒体中に光照射して当該窒素含有化合物を分解することを特徴とする窒素含有化合物の光分解方法。
〔5〕
前記増感剤とともに、電子受容体を前記媒体中に共存させ、当該窒素含有化合物の分解を、当該励起した増感剤から電子を受容して酸化型増感剤を形成させて行う〔4〕項に記載の光分解方法。
〔6〕
前記電子受容体としてビオロゲン類を用いる〔5〕項に記載の光分解方法。
〔7〕
前記電子受容体としてビオロゲン類を用い、さらに貴金属触媒を共存させて光照射を行うことにより、当該光照射で生ずるビオロゲンカチオンラジカルを用いて当該貴金属触媒により水素を発生させる〔5〕項に記載の光分解方法。
〔8〕
窒素含有化合物を含む媒体における前記窒素含有化合物の分解を、当該媒体中に酸素が実質的に存在しない状態で行う〔4〕項〜〔7〕項のいずれかに記載の光分解方法。
また、本発明に従えば、n−型半導体電極と窒素含有液相媒体から光照射により光電流と水素等を生成する光燃料電池が提供される。
〔9〕
窒素含有化合物を含む液相媒体中に、n−型半導体電極及びその対極を挿入し、半導体電極と対極を外部導線で接続して外部回路を形成してなる電池であって、当該電池の半導体電極表面に光照射することにより、当該液相媒体中の窒素含有化合物を分解すると同時に、当該外部回路に光電流を発生させることを特徴とする光燃料電池。
〔10〕
前記電池の半導体電極表面に光照射することにより、当該窒素含有化合物を分解すると同時に、当該外部回路に光電流を発生させ、かつ、水素と窒素を生成する〔9〕項に記載の光燃料電池。
〔11〕
前記液相媒体中に実質的に酸素が存在しない状態を保持して光照射する〔9〕項又は〔10〕項に記載の光燃料電池。
以下に詳述するように、本発明の光分解法によれば、アンモニアなどの窒素化合物の光分解処理において、有害な硝酸イオンを生ずることなく、しかも無害でさらにエネルギー源となりうる物質に変換する方法が提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、基本的には、窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体において、その当該媒体中に、n−型半導体を装入し、当該媒体中に光照射して窒素含有化合物を分解し、窒素と水素に変換するものである。
(窒素含有化合物)
本発明において光分解の対象とする窒素含有化合物とは、例えばアンモニア、アミン等のアンモニア誘導体、尿素、及びジメチル尿素、チオ尿素等の尿素誘導体及びアミノ酸等などである。
これらは、たとえば、養鶏場、養豚場、牧場、とさつ場等からの畜産廃棄物、し尿処理物、工場排水等の中に含有されるもので、通常悪臭を伴い環境中への排出が問題になっている化合物であり、また、バイオマス中に含有される種々のタンパク質も本発明における窒素含有化合物に該当するものである。
本発明における窒素化合物は、また、これら畜産廃棄物、バイオマス中のものに限られず、水素の製造を目的とする原料として工業用薬品や試薬を使用してもよい。
窒素含有化合物を具体的に例示すれば、上記アンモニア、尿素等の無機化合物;
ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、フェニルアミン、アミルアミン等のアミン、ヒドラジン、インドール、ピリジン、ニコチン酸、カフェイン、スルファニル酸、スルファニルアミド等が挙げられる。
また、後記するようなその他の窒素化合物、例えば、アニリン、メチルアニリン、トルイジン、キシリジン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、アニシジン、キノリルアミン、ジアミノピリジン等の芳香族アミン、ヘキサンアミド、ベンズアミド、アセトアミド、オキサミド、スクシンアミド等のアミド、スクシンイミド等のイミド、ベンズアルデヒド等のオキシム、ヘキサンニトリル、アジポニトリル、アクリロニトリル、ベンゾニトリル、プロピオニトリル、シアン化ベンゾイル等のニトリル、ニトロメタン等のニトロ化合物、アゾベンゼン、アゾメタン、アゾナフタレン等のアゾ化合物、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、べンゾヒドラジド、ヒドラゾベンゼン等のヒドラジン誘導体、ジアゾメタン等のジアゾ化合物、フェニルチオ尿素等チオ尿素誘導体等であってもよい。これらは、一種類又は二種類以上を混合してもよい。
当該窒素含有化合物は、液相媒体に含まれる場合は、少なくとも一部、好ましくは大部分が当該液相媒体に溶解(溶存)した状態にあることが望ましい。また気相媒体に含まれる場合は、少なくとも一部、好ましくは大部分が当該気相媒体中に気相(ガス又は蒸気)として含有されていることが望ましい。
なお、本発明において液相媒体とは、通常有機溶媒と称されるメタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン等のケトン類等であってもよいし、又は水又は水系溶媒であってもよい。ここで水系溶媒とは、水だけでなく、水を主体とし、これに上記メタノール等の有機溶媒を含有した混合溶媒であってもよいことを意味する。
また、気相媒体とは、通常は空気であるが、その他窒素、酸素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、メタン、エタン等のガスであってもよい。
本発明において、これを光分解反応により処理する場合には、当該媒体中の窒素含有化合物の濃度(合計量)は0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。
(n−型半導体)
本発明で使用するn−型半導体(以下単に「半導体」ということがある。)としては、照射した光を吸収して励起し、電子を授与しうるものであって、価電子帯(VB)の電位が分解すべき化合物を酸化できるほど十分な酸化還元電位を持つことが好ましい。たとえば二酸化チタン(TiO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化亜鉛(ZnO)などの紫外域半導体のほか、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、リン化ガリウム(GaP)、シリコンなどの可視域半導体が挙げられる。特に好ましくは、二酸化チタンに代表される紫外域半導体が効果が高く望ましい。これらn−型半導体としては、通常光触媒等として市販されているものを入手して使用することが可能である。例えば、粒径5〜250nmで、比表面積10〜400m2/g程度のものが、粉末又はゾルとして入手可能である。
なおn−型半導体は通常粒子状であり、基本的には、これを粉末粒子状の光触媒としてそのまま窒素含有化合物を含む液相媒体又は気相媒体中に装入して使用することができる。
(金属触媒等担持)
n−型半導体は上記したように粒子状で使用してもよいが、光反応の活性を高めるために、当該粒子を坦体とし、これに金属又は金属酸化物からなる酸化及び/又は還元触媒をあらかじめ坦持させた光触媒として使用することが好ましい。好ましい金属は特に貴金属であり、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、ロジウム等であり、またこれらの酸化物が望ましいものとして挙げられる。
その坦持量は、当該半導体に対して、0.01%〜10質量%、好ましくは0.1%〜1質量%が用いられる。坦持する方法としては、単に半導体と当該金属或いは金属酸化物を乳鉢等で十分に混合してもよいが、いわゆる光坦持法によるものが効果が高く好ましい。光坦持法とは、上記担持させるべき金属の水溶性塩(例えば白金の場合は塩化白金酸等)の水溶液を準備して、これに担体となるべき半導体を懸濁させ、アルコール類を共存させて光を照射することにより、半導体中に生ずる電子と正孔のうち、当該電子がこの金属塩を還元してゼロ価の金属とせしめ、これを半導体上に沈積、坦持(光析出)させるものである。かくして、担持前の半導体そのものより高い光活性すなわち、高い触媒活性が得られる。
なお、半導体又は光触媒は、これを適当なバインダーにより塗膜を形成したり、多孔質膜の形にして、これを分解すべき化合物の溶液と接触させて用いることもできる。
(光源)
n−型半導体表面に照射する光源としては、自然エネルギーを有効利用するという観点からは太陽光が好ましいが、光触媒である半導体の有効波長により対応した波長の光を照射しうる人工光源も用いられる。すなわち、二酸化チタン等の紫外域半導体は、紫外部の光のみが実質的に反応に有効なので、人工光源の場合は、キセノンランプ、紫外光ランプ、水銀ランプ(高圧、超高圧)などの紫外光成分が多い光源を用いるのが望ましい。また、硫化カドミウム等の可視域半導体では、紫外域のみならず、可視域の光も有効であり、白熱灯(ハロゲンランプ)が好ましく使用可能である。
(反応容器)
窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体中に、n−型半導体を装入し、当該半導体を含む媒体中に光照射して窒素含有化合物を分解する操作を行うための反応容器としては、光照射を効率的に行うため、光透過性材料で構成されるものが好ましい。光透過性材料としては通常ガラスが用いられ、ソーダライムガラスでもよいが、より紫外光に対し透明なホウケイ酸ガラスや石英ガラス製の容器が好ましい。
n−型半導体から形成される光触媒粒子と媒体中の窒素含有化合物との反応を、できるだけ効率的に進行せしめるためには、当該光触媒粒子を液相又は気相媒体中に浮遊させた状態で光照射し反応させることが好ましい。このためには、機械的撹拌又はガス吹き込み撹拌等の撹拌手段により触媒粒子を液相媒体又は気相媒体中に懸濁若しくは浮遊させた状態で光照射することが望ましい。
上記したように分解すべき窒素含有化合物は、液相媒体に溶解しているか又は気相媒体にガス又は蒸気として含有された状態で処理される。このような液相媒体又は気相媒体に懸濁若しくは浮遊させる半導体の量は、含有される窒素化合物の濃度や総含有量、光触媒粒子の種類、その粒径、比表面積等により変わりうるものであり、特に限定するものでないが、例えば媒体1lに対して0.1〜50g程度、好ましくは1〜10g程度である。
また、窒素含有化合物の分解を液相媒体、特に水系媒体中で実施し、窒素と水素に変換せしめる場合は、本発明者らの見出したところによれば、当該水系媒体のpHは少なくとも8以上の塩基性、好ましくは9以上、さらに好ましくは10以上、より一層好ましくは11以上、さらにより一層好ましくは12以上、最も好ましくは13以上の塩基性とすることである。このようなpHの範囲のものとするためには、それ自体塩基性物質であるアンモニアやアミン等の窒素含有化合物の濃度を充分高くすればよい。またアンモニア等の濃度が極めて薄い場合や尿素等の場合は、当該水系媒体等に水酸化ナトリウム、水酸化カリ等のアルカリを添加してそのpHを塩基性の範囲とすることが好ましい。
また、アンモニア等の窒素含有化合物の分解を空気や窒素等の気相媒体中で実施する場合は、同様に当該気相媒体中のアンモニアガス等の濃度を充分高くすることが好ましい。また、さらに好ましくは、当該気相媒体中に水蒸気を導入・共存せしめ、望ましくは水蒸気を飽和させて窒素含有化合物の光分解を実施することである。
本発明における光分解は、室温で十分速く進行するが、より分解速度を向上させるために、加熱下に反応させてもよい。すなわち、反応温度は10〜80℃、好ましくは20〜60℃程度で行われる。また、反応時間は、反応温度、窒素含有化合物の種類、濃度、光触媒粒子の濃度、種類、照射光の波長、照射光量等によって変わりうるが、通常、10分〜100時間、好ましくは30分〜50時間、さらに好ましくは1〜30時間程度である。
本発明の光分解反応は、窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体中で行われるが、この場合、本発明者らの見出したところによれば、意外なことに、当該媒体中に、酸素が存在していても当該分解反応は進行し、窒素と水素が生成する。すなわち、液相媒体の場合は当該媒体中に溶存酸素が、一方気相媒体の場合は、当該気相媒体が空気又は純酸素であっても、基本的には窒素と水素が生成する反応は進行するのである。
なお、より水素の生成収率を高くするためには、所望により当該分解を、当該媒体中に酸素が実質的に存在しない状態で行うこともできる。その場合は、反応容器としては、密閉可能に構成され、さらに真空吸引脱気手段を備え、反応系内を反応に先立って、脱気(脱酸素又は脱空気)したり、及び/又は、不活性ガスの導入手段を備え、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、メタン、エタン等の不活性ガスを反応容器下部の多孔板やノズルから供給して、ストリッピング(放散処理)を行い、溶存酸素や気相中の空気を当該不活性ガスで実質的に置換することも好ましい。
なお、半導体を粒子状で使用するのでなく、これを適当なバインダーにより塗膜を形成したり、多孔質膜の形にして用いる場合は、反応容器は、上記したような撹拌槽型ではなく、管型容器とし、当該管型容器内壁に当該半導体の薄膜を形成し、当該管型反応器に処理すべき窒素含有化合物を含む液相媒体や気相媒体を流通させ、反応器内壁の当該光触媒からなる塗膜と接触させ、光分解反応させることもできる。この場合は、当該管型反応器は光透過性のガラス等で形成し、紫外線ランプを当該反応器に沿って設置することが好ましい。さらに、管型反応器を使用する場合は、これを多数並べて多管型装置とすることも可能である。
また、酸化チタン等の半導体は、粒子状、粉末状、ペレット状のケイ藻土等に坦持させ、固定化してもよい。ペレット状の坦体に坦持させた場合は、充填層や流動層として、光分解反応を行うこともできる。
以上のごとくして、半導体触媒により光反応を行なわせると、後記する実施例に示されているように、当該媒体中のアンモニア等の窒素含有化合物は、分解し、従来のごとくそれ自体有害でそのまま環境中に廃棄できない硝酸(HNO3)等を生ずることなく、環境に無害な窒素(N2)及び燃料として有用な水素(H2)が、3:1の容積比で生成する。
また、本発明は、窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体において、当該媒体中に、光を吸収して励起し電子の授受を行うことのできる増感剤を装入し、当該半導体を含む媒体中に光照射して当該窒素含有化合物を分解するものである。この場合もすでに光触媒粒子を使用する窒素含有化合物の分解について述べたことが基本的に妥当するので、これに準じて反応を実施すればよい。
(増感剤)
本発明で使用する増感剤とは、光を吸収して励起し電子の授受を行える化合物であれば特に限定するものではなく、例えば、光化学増感剤として公知のトリス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム(II)錯体(以下Ru(bpy)3 2+と表示する。)のように、光励起状態で適当な酸化還元電位を持つポリピリジン錯体が好ましく用いられる。また、その他、光励起状態で反応に適合する酸化還元電位を有する増感剤であればいずれも好ましく用いられる。例えば、上記ビピリジンや2,2’,2’’−ターピリジン(terpy)、あるいはフェナントロリン(phen)などのポリピリジン金属錯体、さらにはポリフィリン、金属ポリフィリン、フタロシアニン、金属フタロシアニン、及びこれらの誘導体、例えばテトラフエニルポリフィリン、テトラフェニルポルフィリン金属錯体、さらにはピレン、ペリレンなども増感剤として好適に使用可能であり、良好な結果を与える。
(電子受容体)
本発明においては、増感剤とともに、電子受容体を前記液相媒体又は気相媒体中に共存させ、当該媒体中に含まれる窒素含有化合物の分解を、当該励起した増感剤から電子を受容して酸化型増感剤を形成させて光分解反応を行うことが好ましい。
増感剤を用いた光分解において共存させる電子受容体は、増感剤の光励起状態から電子を受容することにより酸化型増感剤を形成し、この酸化型増感剤が分解すべき窒素含有化合物を酸化的に分解するのである。電子受容体としては、過硫酸カリウム(K228)や4,4’−ビピリジン誘導体であるビオロゲン類が用いられる。ビオロゲン類としては、例えばメチルビオロゲン、エチルビオロゲン、プロピルビオロゲン、ブチルビオロゲン等のアルキルビオロゲン、フェニルビオロゲン、ベンジルビオロゲン等のアリールビオロゲン等が好ましいものとして挙げられる。
(光源)
増感剤又は増感剤と電子受容体を用いた光分解において照射する光源としては、自然エネルギーを有効利用するという観点からは太陽光が好ましいが、より当該増感剤の有効波長に対応した波長の光を照射しうる人工光源も用いられる。例えばRu(bpy)3 2+のようなポリピリジン錯体の場合は、可視光が反応に有効なので、白熱電球(ハロゲンランプ)を用いることが好ましい。
(反応容器)
本発明において、窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体中に増感剤や電子受容体を装入して、当該媒体中に光照射し窒素含有化合物を分解するための反応容器としては、すでに述べたように、この光照射を効率的に行うために、当該反応に有効な波長の光に対する光透過性材料で構成されることが好ましい。光透過性材料としては通常ガラスが用いられ、例えばポリピリジン錯体を増感剤とする場合は、石英ガラスだけでなく、可視光線に透明なソーダライムガラスや、さらにはアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明プラスチック製の反応容器も好適に使用することができる。
反応容器としては、機械的撹拌又はガス吹き込み撹拌等の撹拌手段を備えた槽型の反応容器のほかに管型反応器も好適に使用することができる。なお、管型反応容器の内壁に増感剤や電子受容体を蒸着したり適当なバインダーで薄膜状に固定することも可能である。
増感剤や電子受容体を液相媒体に溶解して用いる場合、その濃度は10M〜1μM、好ましくは0.1M〜10μM程度の範囲である。
本発明における光分解は、二酸化チタン(TiO2)等の光触媒を使用する場合と同様に、室温において十分速く進行するが、加熱してより分解速度を向上させることもでき、反応温度は10〜80℃、好ましくは20〜60℃程度で行われる。また、反応時間は、二酸化チタン等の場合の光分解と同様に、反応温度、窒素含有化合物の種類、濃度、pH、光触媒粒子の濃度、種類、照射光の波長、照射光量等によって変わりうるが、通常、10分〜100時間、好ましくは30分〜50時間、さらに好ましくは1〜30時間程度である。
本発明の光分解反応は、窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体中で行われるが、特筆すべきはこの場合も、すでに光触媒を使用する場合について述べたように、当該媒体中に、酸素が存在していても当該分解反応は進行し、窒素と水素が基本的に生成するのである。
なお、水素の生成収率を高くするためには、所望により当該分解を、当該媒体中に酸素が実質的に存在しない状態で行うこともできる。その場合は、真空吸引脱気や不活性ガスの導入により、ストリッピング(放散処理)を行い、溶存酸素や気相中の空気を当該不活性ガスで実質的に置換する操作を行うことが望ましい。
また、窒素含有化合物の分解を液相媒体中で実施し、窒素と水素に変換せしめる場合は、光触媒を使用する場合と同様に、当該液相媒体のpHは少なくとも8以上の塩基性、好ましくは9以上、さらに好ましくは10以上、より一層好ましくは11以上、さらにより一層好ましくは12以上、最も好ましくは13以上の塩基性とすることである。
本発明において、以上のごとくして、増感剤、又は増感剤及び電子受容体によって、溶解窒素含有化合物の光反応を行なわせると、後記する実施例に示されているごとく、分解生成物は窒素や水素である。
すなわち、最も代表的な窒素含有化合物であるアンモニア分解の場合、増感剤としてRu(bpy)3 2+)のようなポリピリジン錯体を用い、過硫酸カリウムを電子受容体として用いると、窒素が生成する。また、ビオロゲン類を電子受容体として用いると、実質的に系内が無酸素で光分解反応を実施した場合、当該ビオロゲン類の還元型のカチオンラジカルが生成し、アンモニアを分解する。
ここで注意すべきは、当該ビオロゲンカチオンラジカルは、系内に酸素が共存すると酸化されて元の酸化型ビオロゲン類に戻ることである。従って、当該アンモニアの光分解反応の後に、反応液相内に空気(酸素)を導入することにより、上記光分解反応に繰り返し用いることができるのである。なお、通常、酸化型のビオロゲン類は無色であり、還元型のビオロゲンラジカルは青色等を示すので、反応系内の色をモニターすることにより、反応の進行を確認することができる。
また、さらに注目すべきは、ビオロゲンカチオンラジカルは、反応系のpHが8以下でかつ白金やロジウムなどの触媒が共存すると、プロトンを還元して水素を発生することである。従って、アンモニアの光分解反応の後に、水系媒体のpHを8以下に下げて、白金、ロジウムなどの触媒を系内に装入すれば、水素が発生するとともに、当該ビオロゲンカチオンラジカルは元のビオロゲン類に戻るので、これを繰り返し光分解反応に使用できるのである。これは、アンモニア等の窒素含有化合物の光触媒的分解により、窒素と水素を発生でき、当該アンモニア等を、燃料電池等の燃料として有用な水素に変換できることを意味する。
(光燃料電池)
また、本発明は、n−型半導体電極と窒素含有物質を含む液相媒体から光照射により光電流と水素等を生成する電池(本発明者らはこれを「光燃料電池」(Photofuel Cell)と称している。)を構成するものであるが、以下、当該光燃料電池を添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の光燃料電池の動作を説明する説明図である。
すなわち、当該電池は、アンモニア等の窒素含有化合物Ncを溶存状態で含む水系媒体等の液相媒体10の当該液相媒体中に、二酸化チタン等のn−型半導体電極20、及び白金等によりなるその対極30を挿入し、当該半導体電極20と対極30を外部導線40で接続して外部回路50を形成してなる電池60である。
そして、当該電池60は、その半導体電極20表面に、例えば紫外線(UV光)70を光照射することにより、当該溶存する窒素含有化合物Ncを分解し、窒素N2及び水素H2を生成すると同時に、当該外部回路50に光電流80を発生させるものである。
すなわち、2NH3+UVlight →N2+3H2の光分解反応が起きるのである。
このようにして、窒素含有化合物をエネルギ−源として、水素燃料を蓄えると同時に、光燃料電池を構成することができる。これは、窒素含有化合物の分解により水素を生産すると同時に光電流を発生するシステムとして使えることを意味する。
実際的には、二酸化チタン等のn−型半導体電極は、当該粒子を適当なバインダーとともに混合して焼結する等して電極20を形成してもよいが、二酸化チタン等の多孔質膜を、1〜100μm、好ましくは5〜50μm程度の厚みに、ITO等の電導性ガラス基板上に形成させて半導体電極20とすれば、実効的な反応表面積を広く形成できるので好ましい。
なお、対極30は、白金板や白金線、金板や金線等により形成するほか、導電性を有するものであれば、炭素板、グラファイト板、ニッケル板、チタン板、導電性ガラス板等通常、電気分解等に用いられる電極がいずれも好適に使用することができる。
当該光燃料電池におけるアンモニア等の窒素含有化合物の水系媒体等の液相媒体中の濃度は、0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは1〜10質量%程度である。なお、窒素含有化合物を二種類以上含有する場合は、この濃度は合計量とする。また、当該光燃料電池は、電池内において、酸素が実質的に存在しない状態として操作することも好ましい。
なお、液相媒体としては、水及び水を主体としこれに上記メタノール等の有機溶媒を含有した混合溶媒、すなわち水系媒体であってもよい。また、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン等のケトン類等も使用可能である。なお、媒体のpHについては、すでに述べたことがそのまま妥当する。
また、電池に使用する場合の窒化含有化合物は、アンモニア、尿素、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、フェニルアミン、アミルアミン等のアミン、ヒドラジン、インドール、ピリジン、ニコチン酸、カフェイン、スルファニル酸、スルファニルアミド等の畜産廃棄物中のものに限定されるものではなく、その他所望の窒素化合物を選択して使用することもできる。
すなわち、その他、アニリン、メチルアニリン、トルイジン、キシリジン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、アニシジン、キノリルアミン、ジアミノピリジン等の芳香族アミン、ヘキサンアミド、ベンズアミド、アセトアミド、オキサミド、スクシンアミド等のアミド、スクシンイミド等のイミド、ベンズアルデヒド等のオキシム、ヘキサンニトリル、アジポニトリル、アクリロニトリル、ベンゾニトリル、プロピオニトリル、シアン化ベンゾイル等のニトリル、ニトロメタン等のニトロ化合物、アゾベンゼン、アゾメタン、アゾナフタレン等のアゾ化合物、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、ベンゾヒドラジド、ヒドラゾベンゼン等のヒドラジン誘導体、ジアゾメタン等のジアゾ化合物、フェニルチオ尿素等チオ尿素誘導体等が挙げられる。
本発明の光燃料電池は、このように、アンモニア等の窒素含有化合物を、上記したごとくエネルギ−源(燃料)とし、太陽エネルギー等の光エネルギーを用いて、電力と水素燃料を生産するシステムを形成するものであるが、かかるシステムは、これまでにない全く新しいコンセプトに基づく技術である。
すなわち、本発明の光燃料電池は、環境に有害な窒素含有化合物の分解・除去・有効利用という観点についても極めて有用なものであるが、これにとどまるものではなく、当該光燃料電池によれば、例えばアンモニアなどの窒素化合物を、燃料電池の媒体として水素の代わりに用いるシステムにも応用できるのである。
現在、将来の無害エネルギーシステムの中核として期待されている水素を燃料とする燃料電池は、すでに種々の分野で利用され、世界中でしのぎを削ってその実用化への研究・開発が行われている。しかしながら、水素は確かに基本的に石油や石炭等の化石燃料に比較して二酸化炭素等の温暖化ガスを発生しない究極のクリーンエネルギーではあるが、問題はその貯蔵が困難なことであって、例えば圧縮するとしても、その貯蔵にきわめて高圧を要する。また、水素はそのエネルギー密度が小さいのため、輸送や貯蔵に大きなタンク又は重量物を必要とする等の問題がある。さらにまた、水素は極めて軽く、貯蔵・輸送中に容易に逃散する上、さらに水素と空気中の酸素が2:1容積比で混合すると、いわゆる爆鳴気を形成して爆発の危険性があるという問題があり、これらが、水素を中核とする発電システムを広範囲に形成するのを、非常に困難にしている。
これに対し、本発明者らにより提案されている光燃料電池においては、燃料として窒素含有化合物、典型的には例えばアンモニアを使用するが、アンモニアは比較的低い圧力で容易に液化して液体になる(室温で8気圧程度)ので、水素と比較して、はるかに簡単にエネルギ−密度の高い液体として輸送や貯蔵が可能であって、また、タンク容積も小さくてすみ、しかも爆発の危険性も少ないという、水素を使用するものに対し、より優れた燃料電池システムを形成することができる。
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれに限定されるものではない。なお、%とあるものは、とくに断りなき限り、質量%である。
〔実施例1〕
(1)n−型半導体である二酸化チタン(TiO2)微粒子1gを坦体とし、水100mlに懸濁させる。これに塩化白金酸13.3mgを溶解し、メタノール2mlを加える。これを撹拌しながら高圧水銀ランプを8時間照射し、光析出法により白金を還元すると同時に二酸化チタンに坦持せしめた。生成したTiO2/Ptを遠心分離により取り出し、イオン交換水で十分洗浄し、200℃で2時間乾燥して試料(Pt−TiO2)とした。これはn−型半導体である二酸化チタン微粒子の坦体に、還元触媒であるPtを坦持させた光触媒である。
(2)窒素含有化合物であるアンモニア水の5%水溶液5mlを装入した容積10mlの円筒状反応容器に、このPt−TiO2 光触媒試料0.01gを供給し、スターラーによる電磁撹拌により懸濁せしめた。溶解アンモニアのため、この水溶液のpHは、12.9であった。
(3)アルゴンガスを当該反応容器内に長時間バブリングさせ、容器内部を充分置換した。この状態で撹拌下に500wキセノンランプからの光を照射した。3時間光照射を継続し、反応容器内のガスを採取し、これをガスクロマトグラフにより分析したところ、窒素12.4μl、水素39.8μlが生成していることが認められた。これより、窒素/水素のモル比は約1/3であり、アンモニアが分解して窒素と水素に変換されたことが認められた。
〔実施例2〕
Pt−TiO2 光触媒試料を0.05g用い、1%アンモニア水(pH12.3)を用いたほかは、実施例1と同様にして光照射下にアンモニア分解反応を行った。9時間後に窒素50μl、水素151μlを生成したことが確認された。
〔実施例3〕
実施例2において、0.1%のアンモニア水(pH8.25)を用いたほかは、実施例2と同様に光照射によるアンモニア分解反応を行った。9時間後に、窒素34μl、水素116μlを得た。
〔実施例4〕
実施例1において、Pt−TiO2 光触媒試料を0.02g用い、0.01%アンモニア水をpH12.06に調整して用いたほかは、実施例1と同様に光照射によるアンモニア分解反応を行い、20時間で窒素75μl、水素409μl、を得た。発生窒素からアンモニアの分解率を算出すると、約85%と推定された。
〔実施例5〕
(1)SrCO31.476g、Rh23 1.0g、及びn−型半導体である二酸化チタン(TiO2)0.794gを乳鉢にてよく混合し、1000℃で10時間間焼成してRhを二酸化チタンに坦持しRh−SrTiO3(又はRh−SrO・TiO2と表示される。)を得た。このRh−SrTiO3を1g、塩化白金酸6水塩0.0133g、メタノール1mlを水50mlに添加し、撹拌しながら100w高圧水銀灯を8時間照射して光析出法により白金を還元すると同時にRh−SrTiO3に坦持せしめた。これを濾過して十分に水で洗浄・乾燥し、Pt−Rh−SrTiO3 を得た。
(2)このn−型半導体であるSrTiO3 に、金属触媒であるPtとRhを坦持させた光触媒であるPt−Rh−SrTiO3微粉末0.02gを、実施例1で使用したものと同じ反応容器中で29%アンモニア水(pH14)5ml中に懸濁させ、100wハロゲンランプで光照射した。24時間反応を継続後に反応容器内のガスを採取し、これをガスクロマトグラフにより分析したところ、窒素40ml、水素100mlが生成していることが認められた。
〔実施例6〕
増感剤であるRu(bpy)3 2+を0.1mM、電子受容体(酸化剤)であるK228を10mM、アンモニアを15%含有する水溶液(pH13.8)5mlを、反応容器に装入し、アルゴンガスを当該反応容器内に長時間バブリングさせ、充分置換した。
この状態で撹拌下に100wハロゲンランプから光を照射しアンモニアを分解した。1時間後に気相を分析したところ、窒素298μlが得られた。
〔実施例7〕
実施例5において、窒素含有化合物としてアンモニアの代わりに尿素10mMを用いるほか(NaOH添加によりpH11に調整)は、実施例5と同様に光分解反応を行って尿素を分解した。1時間後に生成物を分析したところ、窒素40μlの生成が確認された。
〔実施例8〕
実施例6において、アンモニアを5%含有する水溶液(pH13)を用いるほかは、実施例5と同様に光分解反応を行い、アンモニアを分解した。1時間後に生成物を分析したところ、窒素220μlの生成が確認された。
〔実施例9〕
(1)増感剤であるRu(bpy)3 2+を0.1mM、電子受容体であるメチルビオロゲンを10mM、アンモニア10M濃度の水溶液(pH14)5mlを、実施例1で使用したのと同様の反応容器に装入し、アルゴンガスを当該反応容器内に長時間バブリングさせ、充分置換した。
この状態で撹拌下に100wハロゲンランプから光を照射して、アンモニアを分解した。9時間後に気相を分析したところ、窒素20μlが得られた。
(2)反応の進行につれて、当該ビオロゲンが還元されてビオロゲンカチオンラジカルとなり、溶液は青く着色した。当該反応系に空気をパブリングして導入したところ、当該ビオロゲンカチオンラジカルは酸化されて無色の元のメチルビオロゲンに変化することが確認された。
(3)この再生されたメチルビオロゲンを電子受容体として再度使用して、前記(1)のアンモニア分解反応を行ったところ、全く同様の反応が進行することが確認された。すなわち、当該メチルビオロゲンは、酸化型と還元型とに可逆的に変換可能であり、本発明の窒素化合物分解反応に、繰り返して使用できることがわかった。
〔実施例10〕
(1)実施例9において、増感剤であるRu(bpy)3 2+0.1mM、電子受容体であるメチルビオロゲン10mM、アンモニア10M濃度の水溶液(pH14)5mlの代わりに100mlの水溶液を、容積200mlの反応容器に装入するほかは、実施例と同様な反応を行った。
この状態で撹拌下に100wハロゲンランプから光を照射し、24時間アンモニア光分解反応を行い、窒素とビオロゲンカチオンラジカルを生成させた。
(2)当該ビオロゲンカチオンラジカルを含有する反応液100mlに、白金触媒微粒子100mgと硝酸を含む水溶液20mlを十分に空気を除去した後に添加して、pHを6以下にした後、100wハロゲンランプから光を照射し、10時間光分解反応を行い、水素約100μlを得た。
〔実施例11〕
増感剤であるRu(bpy)3 2+を0.1mM、電子受容体であるメチルビオロゲンを10mM、窒素含有化合物であるヒドラジン0.1mM濃度の水溶液(NaOH添加によりpH11に調整)10mlを、20mlの反応容器に装入し、貴金属触媒であるRuO2微粉末1mMを懸濁させ、上記と同様にしてアルゴンガスで置換した後、100wハロゲンランプで光照射して光分解反応を行った。
9時間反応後、窒素240μlの生成が確認された。また、反応の進行につれて、当該ビオロゲンが還元されてビオロゲンカチオンラジカルが生成し、溶液は青く着色した。
〔実施例12〕
実施例9において、アルゴンガスの代わりに酸素をバブリングして水溶液を溶存酸素で飽和させるほかは、実施例9と同様にして光分解反応を行った。
9時間反応後に、窒素約860μlが得られたが、ビオロゲンカチオンラジカルの生成は見られなかった。この条件下でのメチルビオロゲンのターンオーバー数は約9回と計算される。
〔実施例13〕
二酸化チタンのナノ粒子、アセチルアセトン、界面活性剤をよく練ってペーストを作り、これを電導性ガラス状に塗布してから、100℃で焼成し、これを繰り返し、最後450℃で30分焼成し、多孔質膜(厚さ約10μm、面積1cm2)を当該電導性ガラス上に形成させてn−型半導体電極とした。当該電極と、白金線よりなる対極を、10Mのアンモニアと0.1M KNO3を溶存する水溶液中(pH14)に浸漬し、二つの電極を導線で接続して外部回路を形成して電池を形成した。
当該電池の半導体電極である二酸化チタン表面をキセノンランプからの光で照射したところ、アンモニアが分解されて当該外部回路に0.2mAcm-2の光電流を生じ、同時に1時間で窒素が20μl、水素が70μl発生した。
このように、窒素含有化合物であるアンモニアをエネルギー源として、光エネルギーを用いて電力と水素燃料を生産する新しい電池、すなわち光燃料電池が形成された。
本発明の光分解法によれば、畜産廃棄等の中の悪臭、環境汚染物質等の原因物質であるアンモニアなどの窒素化合物、又は工業薬品等として安価に入手できるアンモニアなどの窒素化合物を、有害な硝酸イオンを生ずることなく、光分解処理し、しかも無害またはさらにエネルギー源となりうる窒素や水素等の物質に変換する方法が提供される。
また本発明の光燃料電池によれば、水素の代わりにアンモニアなどの窒素化合物を燃料として、電力を発生させ、かつ、当該窒素化合物を無害またはさらにエネルギー源となりうる窒素や水素等の物質に変換する方法が提供される。
光燃料電池の構成を示す説明図である。
符号の説明
10 水系媒体等液相媒体
20 二酸化チタン等のn−型半導体電極
30 対極
40 外部導線
50 外部回路
60 光燃料電池
80 光電流
200 窒素
300 水素
Nc 窒素含有化合物

Claims (11)

  1. 窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体において、当該媒体中にn−型半導体を装入し、当該半導体を含む媒体中に光照射して当該窒素含有化合物を分解し、窒素と水素に変換することを特徴とする窒素含有化合物の光分解方法。
  2. 窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体において、当該媒体中に、n−型半導体を坦体としこれに金属又は金属酸化物からなる酸化及び/又は還元触媒を坦持した光触媒を装入し、当該光触媒を含む媒体中に光照射して当該窒素含有化合物を分解し、窒素と水素に変換することを特徴とする窒素含有化合物の光分解方法。
  3. 窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体中の当該窒素含有化合物の分解を、当該媒体中に酸素が実質的に存在しない状態で行う請求項1又は2に記載の光分解方法。
  4. 窒素含有化合物を含む液相又は気相媒体において、当該媒体中に、光を吸収して励起し電子の授受を行うことのできる増感剤を装入し、当該半導体を含む媒体中に光照射して当該窒素含有化合物を分解することを特徴とする窒素含有化合物の光分解方法。
  5. 前記増感剤とともに、電子受容体を前記媒体中に共存させ、当該窒素含有化合物の分解を、当該励起した増感剤から電子を受容して酸化型増感剤を形成させて行う請求項4に記載の光分解方法。
  6. 前記電子受容体としてビオロゲン類を用いる請求項5に記載の光分解方法。
  7. 前記電子受容体としてビオロゲン類を用い、さらに貴金属触媒を共存させて光照射を行うことにより、当該光照射で生ずるビオロゲンカチオンラジカルを用いて当該貴金属触媒により水素を発生させる請求項5に記載の光分解方法。
  8. 窒素含有化合物を含む媒体における前記窒素含有化合物の分解を、当該媒体中に酸素が実質的に存在しない状態で行う請求項4〜7のいずれかに記載の光分解方法。
  9. 窒素含有化合物を含む液相媒体中に、n−型半導体電極及びその対極を挿入し、半導体電極と対極を外部導線で接続して外部回路を形成してなる電池であって、当該電池の半導体電極表面に光照射することにより、当該液相媒体中の窒素含有化合物を分解すると同時に、当該外部回路に光電流を発生させることを特徴とする光燃料電池。
  10. 前記電池の半導体電極表面に光照射することにより、当該窒素含有化合物を分解すると同時に、当該外部回路に光電流を発生させ、かつ、水素と窒素を生成する請求項9に記載の光燃料電池。
  11. 前記液相媒体中に実質的に酸素が存在しない状態を保持して光照射する請求項9又は10に記載の光燃料電池。
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