本発明は、クラフトパルプの製造工程に含まれる蒸解工程に関し、特に蒸解工程で回収される黒液を蒸解液(白液若しくは橙液)として再生する処理方法に関する。さら に、黒液処理装置及びこの処理方法により得られる発電システムに関する。
従来、クラフトパルプを製造する工程の第1段階として木材チップに蒸解液及び黒 液、助剤を加え、加温蒸解する。この蒸解工程においては、蒸解後の黒液をソーダ回収システムにより蒸解液に再生し、再利用することが行われている(特許文献1〜4)。
図9は、黒液処理方法の従来例を概略的に示したフロー図である。
ステップ301は、クラフトパルプ蒸解工程である。蒸解工程では、木材チップを蒸解液と共に高温高圧下で数時間蒸解する。蒸解液は、苛性ソーダ(NaOH)及び硫化ソーダ(Na2S)を主成分とする。通常、硫化ソーダ(Na2S)の一部は、多硫化 ソーダ(Na2S2、Na2S3)に置換されている。その後、洗浄工程を行うことによ り、クラフトパルプと、黒液とを分離する。黒液には、原料木材の樹脂に由来するリグニンを主体とする種々の有機物成分と、蒸解液から変化した硫酸ソーダ(Na2SO4)及び炭酸ソーダ(Na2CO3)等の薬液成分とが含まれ、固形分の濃度は16〜22重量%程度である。得られたクラフトパルプは、製紙のために漂白工程へ送られる。
ステップ302は濃縮工程であり、エバポレータにより黒液を燃料可能な濃度となるまで濃縮する。これにより黒液中の固形分が、65〜75重量%程度となる。
ステップ303は燃焼工程であり、回収ボイラーにより黒液を燃焼し、硫酸ソーダ(Na2SO4)、亜硫酸ソーダ(Na2SO3)、チオ硫酸ソーダ(Na2S2O3)を硫化ソーダ(Na2S)に還元する。特許文献2に開示するように、ボイラーの炉内に黒液を噴射し、炉底部にて形成されるチャーの表面で燃焼させ溶融したスメルトを、デゾルビングタンク内で弱液にて希釈し、その水溶液である緑液として回収する。燃焼により生成された排ガス中の集塵からも硫酸ソーダ(Na2SO4)及び炭酸ソーダ(Na2CO3)を回収する。なお、回収ボイラーの燃焼に伴い発生した熱により蒸気を発生させ、蒸気タービンを駆動して発電を行い、その電力を製造システムに供給してい る。
緑液中の不溶性不純物は、ドレッグス沈降工程304において、緑液に凝集剤を添加し、ドレッグスとして分離され、系外に出される。回収ボイラーで燃焼した有機成分は二酸化炭素(CO2)として大気中に排出される。
ステップ305は、苛性化工程であり、燃焼工程で回収された緑液を生石灰(CaO)と反応させる消和工程305aにより、緑液中の炭酸ソーダ(Na
2CO
3)が、炭酸カルシウム(CaCO
3)と苛性ソーダ(NaOH)となる。なお、この工程で発生した消石灰すなわち炭酸カルシウム(CaCO
3)は、白液と分離され、洗浄、脱水された後に、焼成工程305bにおいて化石燃料を用いて燃焼され、再び生石灰に戻される。炭酸カルシウムを洗浄、脱水した濾液(弱液)は再びスメルトの希釈液として使用される。こうして得られた白液は、苛性ソーダ及び硫化ソーダを主成分とし、蒸解液とほぼ同じ成分であり、蒸解液として再利用される。尚、白液中の硫化ソーダ(Na
2S)の一部を酸化させ、多硫化ソーダ(Na
2S
2、Na
2S
3)に改質したものを橙液と呼び、白液よりもパルプ繊維歩留り向上が期待できる蒸解液として使用されている。また、蒸解に使用される白液とは別に一部の白液を酸化させ、苛性ソーダ(NaOH)とチオ硫酸ソーダ(Na
2S
2O
3)を主成分とする酸化白液を精製し、酸素脱リグニン工程で使用する。
特公平6−63190号公報
特公平8−19632号公報
特許第2815701号公報
特許第3811674号公報
特願2007−298649
上記の従来の黒液処理方法においては、以下のような問題点が挙げられる。
回収ボイラーによる燃焼工程においては、通常、回収ボイラー起動時炉内温度昇温のため、化石燃料(A重油等)を使用する。
黒液は、薬品回収の目的や無機質成分(炭酸ソーダ、硫酸ソーダ等)の飛散及び腐食性ガス発生を伴うと同時に燃焼による熱回収を同時に行うため、回収ボイラーという特別な構造の黒液専用の燃焼装置によってしか燃焼させることができない。つまり、黒液処理においては、一般的な燃焼装置や焼却装置を利用することができない。また、蒸解工程のトラブルにより、黒液が供給されず、回収ボイラーの燃焼ができない状況では、蒸気及び電力が安定して供給できない状況が発生していた。
なお、回収ボイラーで黒液をガス化した後、薬品回収及び硫酸ソーダ(Na2SO4)や炭酸ソーダ(Na2CO3)等の煤塵や硫化水素(H2S)、塩素イオン(Cl−)等の腐食性ガスをガスタービンやディーゼルエンジンへ導入する前に分離処理する構造を有しなければ、ガスタービンやディーゼルエンジンに適用するには不適当であり、ガスタービンやディーゼルエンジンと組み合わせた発電装置へは利用できなかった。
さらに、従来は、黒液の燃焼工程に先立って蒸気駆動による黒液濃縮装置が必須であり、黒液濃縮に伴い気化する水蒸気エネルギー、動力機械用の電力を消費していた。また、黒液水分を気化させた水蒸気を凝縮した汚ドレンに含まれる高いCOD成分及び臭気ガス成分を処理するための処理設備が必要で、やはり蒸気や動力機械用電力、排水処理設備に薬品を消費していた。
黒液中に含まれる成分が黒液濃縮装置のスケーリングトラブルや腐食性ガスを発生させ装置を痛める。また、回収ボイラーでは煤塵/燃焼ガス比が通常のボイラーに比べ遥かに高く、ボイラー伝熱管を硫酸ソーダ等の煤塵が閉塞し、重油ボイラーと対比し減肉速度を速め、電気集塵機や煙道ダクトの部分腐食、劣化を発生させ、ボイラー効率を低下させていた。さらに、1〜4回/年程度の大掛かりな洗浄及び煤塵除去作業、補修が劣悪な環境で人為作業により行われ、作業自体の安全性の確保に人力、メンテナンス費用を消費し、また、長期作業による生産停止のため、収益性を低下させている。
回収ボイラーによる燃焼工程や苛性化工程の複数の工程を経る毎に、生成物の損失が生じるため、蒸解液の再生率が低下する。硫酸ソーダ(Na2SO4)は回収ボイラーの燃焼工程で飛散し、飛散損失したものの一部と系外から硫酸ソーダ(Na2SO4)、亜硫酸ソーダ(Na2SO3)の形で黒液に補充しバランスさせる。また、苛性化工程においても、消和工程ではグリッドとして、焼成工程では飛散によりカルシウム(Ca)成分の損失が生じる。加えて、炭酸カルシウム(Na2CO3)の焼成工程でも、化石燃料を大量に消費し、周囲に放熱及び二酸化炭素を発生する。その上、焼成装置はダムリング除去や消耗の激しい耐火材の更新などやはりカルシウム成分の飛散する劣悪な環境での人為作業を伴い、補修・維持のためのメンテナンスコストがかかっていた。また、蒸解液を移送する配管や炭酸カルシウムを移送する配管では、内面にスケーリングを起し、管路を狭くするため、酸洗や配管の更新、移送ポンプの磨耗による更新を必要としており、補修・維持のためのメンテナンスコストが必要である。尚、酸洗作業では有毒な硫化水素が発生し、過去に死亡事故などを起している。特に限られた期間に人海戦術でメンテナンスを行うため、短期間に大勢の施工者を募集し、作業する必要があった。
また、多くの製紙会社では、回収ボイラー、苛性化設備を導入した当時からの経年の使用状況から老朽化が進み、大掛かりな設備更新の時期にさしかかっており、効率的な新しい設備を導入しやすい状況になっている。
以上の現状に鑑み、本発明の目的は、パルプ製造工程に含まれる黒液処理方法において、回収ボイラーによる燃焼工程及び消和による苛性化工程に近代的な設備を導入し、最適化するために、黒液を白液(又は橙液)すなわち蒸解液に再生可能な黒液処理方法及びその装置を提供することを目的とする。また、黒液処理方法及び装置が、発電装置とを組み合わせによりさらに効率化することを目的とする。
さらに、本発明の基本理念を適用し、カーボン(一般的な墨、都市ゴミの炭化物、木炭、練炭、石墨、石炭、ペーパースラッジ炭化物などを5mm以下(好適には数μm)の粉末状にし、黒液または水に溶解し、スラリーとして流動性を持たせることができるもの)、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を黒液に併用することにより回収ボイラーの特殊性を汎用ボイラーに近づけるための黒液処理方法及び装置、発電装置とを組み合わせたシステムを提供する。また、新たに回収ボイラーで蒸解液の再生の他に、黒液とカーボン併用による回収ボイラーの燃焼により、黒液を濃縮する工程で使用する蒸気を減少させ、また、カーボンに約0〜18重量%含まれる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給する黒液処理方法及び装置を提供することを目的とす る。
上記の目的を達成するべく、本発明は以下の構成を提供する。
(1)本発明の第1の態様は、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理方法において、前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称す る)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の
該黒液に含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波を照射することによ り、前記黒液から酸性物質及び揮発性有機物を生成し、かつ分離する工程を有することを特徴とする。
また、酸性物質及び揮発性有機物を分離した後、再生した蒸解液中ではカーボンに約0〜18重量%含まれる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体へ電磁波を照射することにより、光エネルギーに対して感受性をもつ原子群のπ電子を電子的励起状態と し、反応活性化を付与し、結晶構造及び光学的特性を変化させる工程を有することを特徴とする。
(2)本発明の第2の態様は、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理方法において、前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称す る)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の
該黒液に含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波を照射することによ り、前記黒液から酸性物質及び揮発性有機物を生成し、かつ分離すると同時に直接苛性化を生じさせて、該黒液を蒸解液に転化する工程を有することを特徴とする。また、同時に転化した蒸解液中では前記珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体へ電磁波を照射することにより、光エネルギーに対して感受性をもつ原子群のπ電子を電子的励起状態とし、反応活性化を付与し、結晶構造及び光学的特性を変化させ、共存する元素と複合体を形成する工程を有することを特徴とする。
(3)本発明の第3の態様は、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理方法において、前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称す る)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の
該黒液に含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の第1の電磁波を照射することにより、前記黒液から酸性物質及び揮発性有機物を生成し、かつ分離する第1工程と、前記第1工程により得られた液体に対し、該液体に含まれる1種または複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の第2の電磁波を照射することにより直接苛性化を生じさせて、該液体を蒸解液に転化する第2工程と、
カーボンに約0〜18重量%含まれる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を構成する原子群のπ電子へ、紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の第3の電磁波を照射することにより、電子的励起状態により反応活性化させ、結晶構造及び光学的特性を変化させる第3工程と、
前記蒸解液に転化後、前記蒸解液に凝集剤を添加し、前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を凝集沈殿で分離する工程と、
分離後の前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体をド レッグス洗浄機で洗浄する工程と
洗浄した濾液はスメルト溶解用の弱液及びカーボン溶解用の弱液の用途で使用する工程と
洗浄後、前記金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機、無機)に硫酸または硫酸及び弱電位性強誘電体有機化合物(尿素、二酸化チオ尿素、メタ ノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのいずれか化学物質)を添加し、金属系酸化物を系外に排出し、分離することにより、前記珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給することを特徴とする。
(4)本発明の第4の態様は、上記方法の態様において、前記黒液中の炭酸ソーダが苛性ソーダに転化され、転化後の蒸解液中の苛性ソーダが40〜70g/リットルであることを特徴とする。
(5)本発明の第5の態様は、上記方法の態様において、前記黒液中の硫酸ソーダが硫化ソーダに転化され、転化後の蒸解液中の硫化ソーダが25〜70g/リットルであることを特徴とする。
(6)本発明の第6の態様は、上記方法の態様において、前記黒液中の硫酸ソーダが硫化ソーダと多硫化ソーダとの混合物に転化され、転化後の蒸解液中の硫化ソーダが25〜30g/リットルであり、多硫化ソーダが0.5〜35g/リットルであることを特徴とする。
(7)本発明の第7の態様は上記方法の態様において、前記黒液中の珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体が共存する元素との複合体を形成し、蒸解液中の珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体として、前記黒液に混合したカーボンに対し、0〜18重量%であることを特徴とする。
(8)本発明の第8の態様は、上記方法の態様において、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理方法において、前記黒液を濃縮する濃縮工程と、
濃縮された前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の
該黒液を、回収ボイラーにて燃焼し、回収ボイラー炉底に形成されるチャーの表面の還元環境にて、珪素酸化物・アルミニウム酸化物が共存する元素との複合体を形成 し、硫酸ソーダ(Na2SO4)が硫化ソーダ(Na2S)へ変化し、炭酸ソーダ(Na2CO3)と共にスメルトとしてデゾルバ内に流入し、弱液により希釈することにより水溶液として緑液を得る燃焼工程と、
前記緑液に改質後、前記緑液に凝集剤を添加し、金属系無機酸化物及び珪素酸化 物・アルミニウム酸化物複合体を凝集沈殿で分離する工程と、
分離後の前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体をド レッグス洗浄機で洗浄する工程と、
洗浄した濾液はスメルト溶解用の弱液及びカーボン溶解用の弱液の用途で使用する工程と、
洗浄後、前記金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機、無機)に硫酸または硫酸及び弱電位性強誘電体有機化合物(尿素、二酸化チオ尿素、メタ ノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのいずれか化学物質)を添加し、金属系酸化物を系外に排出し、分離することにより、前記珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給する工程と、
前記緑液に含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波を照射することにより、前記緑液から酸性物質及び揮発性有機物を生成しかつ分離すると同時に直接苛性化を生じさせて前記緑液を蒸解液に転化する工程とを有することを特徴とする。
(9)本発明の第9の態様は、上記方法の態様において、前記緑液中の炭酸ソーダが苛性ソーダに転化され、転化後の蒸解液中の苛性ソーダが40〜70g/リットルであることを特徴とする。
(10)本発明の第10の態様は、上記方法の態様において、前記電磁波が波長 200nm〜900nmであることを特徴とする。
(11)本発明の第11の態様は、上記方法の態様において、前記酸性物質が、二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)、硫化水素(H2S)、水素(H2)、二酸化硫黄(SO 2)、三酸化硫黄(SO3)からなる群のうち1種又は複数種を含むことを特徴とする。
(12)本発明の第12の態様は、上記方法の態様において、前記揮発性有機物が、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)及びブタン(C4H10)のアルカン、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、プロパノール(C3H7OH)及びブタノール(C4H9OH)のアルコール並びにこれらの多価アルコールからなる群のうち1種又は複数種を含むことを特徴とする。
(13)本発明の第13の態様は、上記方法の態様において、前記電磁波の照射に先立って照射対象の液体に触媒を添加する工程をさらに有し、該触媒が、カーボン、酸化チタン、ルテニウム、酸化亜鉛、酸化クロム、二酸化マンガン、酸化第二鉄、酸化第三鉄からなる群から選択されることを特徴とする。
(14)本発明の第14の態様は、上記方法の態様において、前記電磁波の照射に先立って照射対象の液体を加熱又は冷却する工程をさらに有することを特徴とする。
(15)本発明の第15の態様は、上記方法の態様において、前記電磁波の照射中に照射対象の液体の圧力を調整することを特徴とする。
(16)本発明の第16の態様は、上記いずれの方法の態様も使用しない場合において、 蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理装置において、前記黒液を濃縮する濃縮する工程と、
濃縮された前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量のカーボンを混合し、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の
該黒液を、回収ボイラーにて燃焼し、回収ボイラー炉底に形成されるチャーの表面の還元環境にて、珪素酸化物・アルミニウム酸化物が共存する元素との複合体を形成し、硫酸ソーダ(Na2SO4)が硫化ソーダ(Na2S)へ変化し、炭酸ソーダ(Na2CO3)と共にスメルトとしてデゾルバ内に流入し、弱液により希釈することにより水溶液として緑液を得る燃焼工程と、
前記緑液に改質後、前記緑液に凝集剤を添加し、前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を凝集沈殿で分離する工程と、
分離後の前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体をドレッグス洗浄機で洗浄する工程と、
洗浄した濾液はスメルト溶解用の弱液及びカーボン溶解用の弱液の用途で使用する工程と、
洗浄後、前記金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機、無機)に硫酸または硫酸及び弱電位性強誘電体有機化合物(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのいずれか化学物質)を添加し、金属系酸化物を系外に排出し、分離することにより、前記珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給する工程とを有することを特徴とする。
(17)本発明の第17の態様は、上記いずれかの黒液処理方法により生成されることを特徴とする揮発性有機物、金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体 (有機、無機)である。
(18)本発明の第18の態様は、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理装置において、前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量まで カーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の
黒液に含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の第1の電磁波を照射する電磁波照射装置と、
前記電磁波照射装置により照射される電磁波に暴露されつつ前記黒液を流送させる反応装置と、
前記電磁波照射により前黒液から生成された、酸性物質及び揮発性有機物を抽気すると共に、前記電磁波の照射により前記黒液が転化した蒸解液及び蒸解液中に存在する珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を回収する脱気装置と
前記緑液に改質後、前記緑液に凝集剤を添加し、前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を凝集沈殿で分離するドレッグス処理装置と、
分離後の前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を洗浄するドレッグス洗浄機と、
洗浄した濾液はスメルト溶解用の弱液及びカーボン溶解用の弱液の用途で使用する弱液供給設備と、
洗浄後、前記金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機、無機)に硫酸または硫酸及び弱電位性強誘電体有機化合物(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのいずれか化学物質)を添加する添加設備と、
金属系酸化物を系外に排出し、分離することにより、前記珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給する原料貯留設備と、
を備えたことを特徴とする。
(19)本発明の第19の態様は、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理装置において、前記黒液を濃縮する濃縮装置と、
濃縮された前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫 酸)を添加装置と、
pH調整後の黒液を回収ボイラーで燃焼し、回収ボイラー炉底に形成される チャーの表面の還元環境にて、珪素酸化物・アルミニウム酸化物が共存する元素との複合体を形成し、硫酸ソーダ(Na2SO4)が硫化ソーダ(Na2S)へ変化し、炭酸ソーダ(Na2CO3)と共にスメルトとしてデゾルバ内に流入し、弱液によりに希釈することにより水溶液として緑液を得る回収ボイラーと、
前記緑液に改質後、前記緑液に凝集剤を添加し、前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を凝集沈殿で分離するドレッグス処理装置と、
分離後の前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を洗浄するドレッグス洗浄機と、
洗浄した濾液はスメルト溶解用の弱液及びカーボン溶解用の弱液の用途で使用する弱液供給設備と、
洗浄後、前記金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機、無機)に硫酸または硫酸及び弱電位性強誘電体有機化合物(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのいずれか化学物質)を添加する添加設備と、
金属系酸化物を系外に排出し、分離することにより、前記珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給する原料貯留設備と、
前記緑液に含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の第1の電磁波を照射する電磁波照射装置と、
前記電磁波照射装置により照射される電磁波に暴露されつつ前記緑液を流送させる反応装置と、
前記電磁波照射により前緑液から生成された、酸性物質及び揮発性有機物を抽気すると共に、前記電磁波の照射により前記緑液が転化した蒸解液を回収する脱気装置 と、
を備えたことを特徴とする。
(20)本発明の第20の態様は、上記装置の態様において、前記反応装置が前記脱気装置の内部に設置されていることを特徴とする。
(21)本発明の第21の態様は、上記装置の態様において、前記反応装置内を665Pa〜大気圧の圧力範囲のいずれかの圧力に調整し維持する手段を備えたことを特徴とする。
(22)本発明の第22の態様は、上記いずれかの黒液処理装置を設置した場合と同様 に、前記黒液処理装置を使用しない場合において、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理装置において、前記黒液を濃縮する濃縮装置と、
濃縮された前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫 酸)を添加装置と、
pH調整後の黒液を回収ボイラーで燃焼し、回収ボイラー炉底に形成される チャーの表面の還元環境にて、珪素酸化物・アルミニウム酸化物が共存する元素との複合体を形成し、硫酸ソーダ(Na2SO4)が硫化ソーダ(Na2S)へ変化し、炭酸ソーダ(Na2CO3)と共にスメルトとしてデゾルバ内に流入し、弱液によりに希釈することにより水溶液として緑液を得る回収ボイラーと、
前記緑液に改質後、前記緑液に凝集剤を添加し、金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を凝集沈殿で分離するドレッグス処理装置と、
分離後の前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を洗浄するドレッグス洗浄機と、
洗浄した濾液はスメルト溶解用の弱液及びカーボン溶解用の弱液の用途で使用する弱液供給設備と、
洗浄後、前記金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機、無機)に硫酸または硫酸及び弱電位性強誘電体有機化合物(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのいずれか化学物質)を添加する添加設備と、
金属系酸化物を系外に排出し、分離することにより、前記珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給する原料貯留設備と、
を備えたことを特徴とする。
(23)本発明の第23の態様は発電システムであって、上記いずれかの黒液処理装置 と、前記黒液処理装置から抽気された酸性物質と揮発性有機物に対し、燃焼装置最大限の性能を引き出せる量までの補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノー ル、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用し、燃焼させる燃焼装置と、前記燃焼装置から回収される熱により駆動される蒸気タービンとを備えたことを特徴とする。
(24)本発明の第24の態様は発電システムであって、上記いずれかの黒液処理装置 と、前記黒液処理装置から抽気された揮発性有機物に対し、燃焼装置最大限の性能を引き出せる量までの補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用することにより駆動されるガス タービンとを備えたことを特徴とする。
(25)本発明の第25の態様は発電システムであって、上記いずれかの黒液処理装置 と、前記黒液処理装置から抽気された酸性物質及び揮発性有機物に対し、燃焼装置最大限の性能を引き出せる量までの補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料] を併用し、燃焼させる燃焼装置と、
前記燃焼装置から回収される熱により駆動される蒸気タービンと、前記黒液処理装置から抽気された揮発性有機物に対し、燃焼装置最大限の性能を引き出せる量までの補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用することにより駆動されるガスタービンとを備え、前記ガスタービンを駆動した揮発性有機物と前記補助燃料とがさらに前記燃焼装置へ供給されて燃焼されて、その回収される熱により前記蒸気タービンを駆動することを特徴とする。
(26)本発明の第26の態様は、上記発電システム態様において、前記燃焼装置又は前記ガスタービンの前段装置として、前記黒液処理装置から抽気された揮発性有機物を冷却液化して、貯蔵する液体燃料貯槽と、
前記液体燃料貯槽から得た液体燃料を前記燃焼装置又は前記ガスタービンへ供給すべく気化する気化装置と、
補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)]を貯蔵する液体燃料貯槽と前記燃焼装置又は前記ガスタービンへ供給すべく気化する気化装置、または、直接サプライメーカからの気化したガス燃料受入用の接続口とをさらに有することを特徴とする。
(27)本発明の第27の態様は発電システムであって、上記いずれかのガスタービン又は燃焼装置又は蒸気タービンの代わりに黒液処理装置と、前記黒液処理装置から抽気された酸性物質及び揮発性有機物に対し、燃焼装置最大限の性能を引き出せる量までの補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料] を併用し、燃焼させる発電機付ディーゼルエンジンを備えたことを特徴とする。
(28)本発明の第28の態様は、発電システムであって、上記いずれかの黒液処理装置を設置した場合と同様に、前記黒液処理装置を使用しない場合において、回収ボイラーで黒液を燃焼すると同時に黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までの補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用し、燃焼させる回収ボイラーと、
前記回収ボイラーから回収される熱により駆動される蒸気タービンとを備えたことを特徴とする。
(29)本発明の第29の態様は発電システムであって、上記の回収ボイラーにおいて、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]により駆動されるガスタービンと
を備えたことを特徴とする。
(30)本発明の第30の態様は発電システムであって、上記いずれかの黒液処理装置を設置した場合と同様に、前記黒液処理装置を使用せず、回収ボイラーで黒液を燃焼すると同時に黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までの補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料] を併用し、燃焼させる回収ボイラーと、
前記回収ボイラーから回収される熱により駆動される蒸気タービンと、
前記補助燃料により駆動されるガスタービンと
を備え、前記ガスタービンを駆動した補助燃料がさらに前記回収ボイラーへ供給されて燃焼されて、その回収される熱により前記蒸気タービンを駆動することを特徴とする。
(31)本発明の第31の態様は、上記発電システムであって、前記回収ボイラー又は前 記ガスタービンの前段装置として、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)]を貯蔵する液体燃料貯槽と
前記回収ボイラー又は前記ガスタービンへ供給すべく気化する気化装置、また は、直接サプライメーカからの気化したガス燃料受入用の接続口と
をさらに有することを特徴とする。
(32)本発明の第32の態様は、上記方法の態様において、前記電磁波を、振動数20kHz〜1THzの範囲の1又は複数の振動数を含む超音波に替えたことを特徴とする。
本発明の一態様においては、蒸解後に回収された黒液の有機成分に対し、回収ボイ ラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる (以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性 ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の黒液に含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とするような電磁波を照射することで、黒液から酸性物質及び揮発性有機物を生成及び分離する。また、別の態様においては、酸性物質及び揮発性有機物の生成及び分離と同時に黒液を蒸解液に転化する(従来の苛性化工程に対して、本発明独自のこの工程を「直接苛性化工程」と称する)。また、さらに別の態様においては、蒸解液中に存在する珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体へ電磁波を照射することにより、光エネルギーに対して感受性をもつ原子群のπ電子を電子的励起状態し、反応活性化を付与し、結晶構造及び光学的特性を変化させ、共存する元素と複合体を形成する。
そのさらに別の態様においては、第1の電磁波の照射により黒液から酸性物質及び揮発性有機物を生成及び分離した後、得られた液体を第2の電磁波の照射により蒸解液に転化すると同時にカーボンに約0〜18重量%含まれる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体に第3の電磁波を照射することにより、光エネルギーに対して感受性をもつ原子群のπ電子を電子的励起状態し、反応活性化を付与し、結晶構造及び光学的特性を変化させ、共存する元素と複合体を形成する3段階の工程を行う。
本発明によれば、成分分子のもつ特定の官能基を選択的に電子的励起状態とする特定の波長の電磁波を照射することにより、その成分分子を反応活性種とする。この結果、その成分分子の化学変化、又は複数の成分分子間の化学反応を誘起することができる。例えば、2種の成分分子の各々の官能基が励起状態となるエネルギーが異なる場合に は、それぞれ異なる波長の電磁波を同時に照射することで、双方の成分分子を電子的励起状態とし、反応活性種とすることができる。異なる複数の波長を含む電磁波であっても、各波長の電磁波が特定の官能基にのみ選択的に作用する。これにより、双方の成分分子による化学反応を生じさせることができる。化学反応には、これらの成分分子の結合開裂、異性化、閉環若しくは開環、付加若しくは付加環化、置換、酸化、還元等が含まれる。さらに、電磁波の強度や照射時間を調整すれば、反応活性種の量を容易に調整することができ、化学反応を制御することが可能である。また、層状結晶構造をもつ珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体へは結晶構成を成す原子の不対電子であるπ電子が光エネルギー感受性を持ち、特定の電磁波により電子的励起状態となり、反応活性種となり、共存できる結晶構造内に金属原子を取込んだり、払い出したりする。また、結晶を構成する原子間距離を変化させ、かつ電子配列を協奏的に整列させ、光学特性を変化させる。(一般的には温度を高くすると電子配列が整列され、また、光エネルギーを付与すること、弱電位性強誘電体を層状結晶構造内にインターカレートすることによっても、電子配列が整列する)
蒸解液に転化された後、蒸解液の中で珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体は、白色または黒色複合体に一旦変化した後、ドレッグスとして抜き出し、洗浄後、さらに硫酸または硫酸及び弱電位性強誘電体有機化合物で洗浄し、金属系不純物を取り除き、再度過熱して乾燥させると製紙原料として珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を得ることができる。弱電位性強誘電体有機化合物は薬品の種類によりインターカレートされる形態及び特性を付与することができる。(洗浄するまでの状態は燃焼条件、カーボンの組成にも影響される。また、硫酸を使用しなくとも一旦水に溶解し、再度過熱し水分を蒸発させ、乾燥させるだけでもペーパースラッジ炭化物由来の珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体であれば、白色度JIS80°以上に白色化できる場合がある)
直接苛性化工程により、黒液を蒸解液に再生するサイクルにおいて、従来の回収ボイラーによる燃焼工程、並びに消和及び焼成を含む苛性化工程を省くことができる。
また、燃焼工程に先立って行っていた黒液の濃縮工程も省くことができる。濃縮を行わない黒液(「希黒液」と称する場合がある)に対して直接苛性化工程を行うため、従来濃縮工程で失われていた水分が、本発明ではそのまま保持される。これにより、蒸解工程で使用する水の補充を少なくすることができる。
本発明によれば、濃縮工程、燃焼工程及び苛性化工程(焼成工程)に必要であった熱源のための蒸気、電力並びに重油などの化石燃料の消費を削減できる。また、燃焼設備からの放熱エネルギーも削減できる。これにより、黒液再生サイクルにおけるエネル ギー消費を大幅に低減することができ、よってパルプ製造工程及び製紙工程全体におけるエネルギー消費を節減できる。
本発明によれば、従来は黒液にカーボン及び補助燃料を混合し、処理する概念がな かったが、本発明の図1に示す方法により蒸解工程がトラブルを起しても、安定な状態で回収ボイラーを燃焼し、蒸気並びに電力を供給できる。本発明の図3に示す方法に加え、従来のシステムでも濃縮工程、燃焼工程において、黒液にカーボンを混合することで、濃縮工程に使用される蒸気が低減し、黒液発生量に左右されない安定な状態で、回収ボイラーの能力を最大限に発揮できるようになり、蒸気並びに電力の供給が可能となり、化石燃料ボイラーの化石燃料の消費ロスを減らし、コスト削減も可能である。
本来、回収ボイラーに限らず、一般的な熱回収装置では、設計された燃料の燃焼量及び伝熱管で熱回収するための温度勾配(伝熱管の温度が500度以下になるように、1次、2次、3次、4次節炭器配置を決め、電気集塵機、ガス/エア/ヒータと経由し、排煙脱硫装置入口でガス温度が130〜200℃、煙突放出口でガス温度50〜 200℃:排煙脱硫装置で吸収液により冷却されない場合、ガス温度150℃以上で放出されることがある)が設定されており、目的とする熱回収量に見合った熱回収装置伝熱面積により炉内温度、炉内ガス流速、伝熱面積が設定されている。従って、燃料投入量の変動による回収する熱量のバラツキを抑制し、かつ熱回収装置の最大効率運転条件で一定に運転することにより、最適の熱回収量と蒸気発生量を維持し、一定回転による蒸気駆動タービンによる発電が行えるようになる。蒸気駆動タービンも蒸気供給量が変動した場合、発電に寄与しない蒸気ロスが発生することが知られており、熱回収装置の最大効率運転条件を一定に維持できる運転をするため、黒液の過不足分をカーボン及び補助燃料を混合し、補って燃焼できることの意義は省エネルギーの観点から非常に大きい。
本発明によれば、蒸解工程に必要な硫黄成分を直接カーボンから補充することもできる。カーボンとしては数μmの粉末状の石炭が硫黄分に富み適している。特にドレックスとして排出される珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機・無機)は、鉱物系製紙薬品の原料として供給できるため、省資源にも寄与する。製紙業は、世界各地で行われているため、本発明の実施により地球温暖化防止にも貢献できる。
本発明によれば、カーボンとして都市ゴミを炭化させたものを使用する方法がある。都市ゴミを1次処理で2次燃焼ガス及び温度調整用の燃焼ガスを用い、低酸素の状態で温度300度以上(好適にはダイオキシン類を分解できる800度以上から1,100以下の範囲)で乾留して遊離炭素の状態まで炭化(炭焼き)し、金属及び金属以外の未燃物を取り除いた後に炭化物を粉砕し、カーボンとして使用する。乾留したガスは成分分離塔を有する設備で、資源回収するか若しくは2処理において都市ゴミ及び補助燃料と燃焼し、都市ゴミ型熱回収発電システムとしても使用できる。特に都市ゴミ型熱回収発電システムを導入するほどの規模に満たないゴミ処理設備で、炭化物を資源として活用することができ、有用な資源回収システムと成り得る。都市ゴミの炭化物は従来化石燃料由来とも植物性資源由来のものともことなり、純粋にカーボンを固定し、二酸化炭素を減らすことができる。また、水を分解し、水素を安価に製造できるため、有用な水素製造システムとして使用できる。特に食物由来のバイオマス資源による穀物類のコスト上昇を抑制できるので、本発明と組合せることで、非常に付加価値のあるリサイクル資源として活用できる。
加えて、従来の苛性化工程におけるサイクルで損失があったカルシウム成分の消費を削減できる。また、カルシウム成分の飛散による作業者の健康への影響、配管類のス ケーリングも解消できる。また、苛性化工程における焼成用設備の維持管理及び修理の負担が解消される。
黒液に電磁波を照射する処理方法では黒液処理に要する工程数が低減されるため、従来、工程毎に生じていた廃棄物量を低減できる。例えば、従来の回収ボイラーでの燃焼により発生するチャーと称される無機物の高温溶融溜まりを生じないので、従来時折発生していたスメルト爆発の虞を解消できる。また例えば、スメルトから発生する硫化水素(H2S)を処理する設備が不要となる。また、二酸化炭素(CO2)排出量も低減され、処理設備も縮小できる。
本発明においては、光化学反応により酸性物質(好適には、CO2、O2、H2S、H2、SO2、SO3)及び揮発性有機物(好適には、CH4、C2H6、C3H8及びC4H10のアルカン、CH3OH、C3H7OH、C2H5OH及びC4H9OHのアルコール並びにこれらの多価アルコールからなる群のうち1種又は複数種を含む)が生成され、これらのガス成分中には、従来の回収ボイラーで煙煤に含まれていた硫酸ソーダ(Na2SO4)、炭酸ソーダ(Na2CO3)及び塩素イオン(Cl−)などがほとんど含まれていない。ほぼ可燃性ガスのみを抽気することができるため、化石燃料代替品として一般的なガス燃焼装置で燃焼させることができる。また、蒸解後の黒液の代替として、黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の黒液としての処理が可能で、回収ボイラー、石炭ボイラーと言った特殊な燃焼装置が不要で、一般的なガス燃焼装置で燃焼させることができる。これらの酸性物質及び揮発性有機物は従来の回収ボイラーや黒液ガス化設備等でも利用することができる。また、最近では少なくなった亜硫酸ソーダ蒸解法の蒸解工程から発生する黒液についても本発明における黒液処理方法及び黒液処理装置と発電システムは適用できる。
よって、本発明により生成される揮発性有機物をバイオマス燃料として、ガスタービンや蒸気タービンと組み合わせた発電システムを構築することができる。発電システムを構築することで、パルプ製造工程及び製紙工程全体における電力消費を低減することができる。本発明による発電システムの発電効率は、従来の回収ボイラーからの放熱を利用した発電システムと比較して4%程度向上させることができる。また、さらにカーボンや補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用することにより、蒸解工程での黒液発生量に左右されず、ガスタービンや蒸気タービン性能を最大限引き出し、従来は回収ボイラーの他に併用していた化石燃料ボイラーを回収ボイラーに集約し、より効率的に少ない人員で所要の電力を安定して供給できる。
また、本発明により生成される揮発性有機物は、工業用樹脂原料等の化成品原料とすることもできる。
なお、本発明の別の態様においては、従来の回収ボイラーによる燃焼工程後に得られるスメルト水溶液である緑液に対して、上記態様と同様に所定の電磁波を照射することで、酸性物質及び揮発性有機物を発生及び分離させると共に、緑液を蒸解液に転化する(この工程についても、従来の苛性化工程に対して「直接苛性化工程」と称する)。この態様によれば、従来の苛性化工程を省くことができる。また、回収ボイラーで黒液と補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を合わせて燃焼することにより、従来の回収ボイラーと対比して、煤塵/燃焼ガス比を小さくし、回収ボイラーでの伝熱管への煤塵付着を少なくし、伝熱効率向上による熱回収率及び煤塵除去に使用されるスーツブロワから噴出される蒸気使用量を減少させることができる。また、本発明により従来の苛性化工程と回収ボイラーから排気ガス合計は従来の苛性化工程を省くことにより大幅に減少できるとしその他の効果については、上記態様と同様である。
従来は、黒液及び緑液の成分変動により、回収ボイラー燃焼状態、消和反応、及び炭酸カルシウム焼成工程の燃焼などが変化し、工程毎の対応に遅れが生じ、エネルギーロスや蒸解液及び炭酸カルシウム(CaCO3)の品質ムラが発生していた。本発明によれば、反応装置前後の黒液性状に対応し、即座に電磁波照射のエネルギー(波長及び出力)を調整することで、光化学反応を制御することができるので、工程を効率的に進行させることができかつ蒸解液の品質も均一化できる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
本発明の第1の実施形態では、蒸解後に回収された黒液の処理方法において、黒液に対し、紫外光、可視光又は赤外光の波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波を照射することにより、黒液に含まれる1種又は複数種の成分分子を電子的励起状態とする。これにより光化学反応を誘起し、黒液中の有機物成分から酸性物質及び揮発性有機物が生成され、分離される。酸性物質及び揮発性有機物の生成及び分離と同時に、電磁波照射による光化学反応により、黒液の蒸解液への転化と同時にカーボンに約0〜18重量%含まれる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体へ電磁波を照射することにより、光エネルギーに対して感受性をもつ原子群のπ電子を電子的励起状態し、反応活性化を付与し、結晶構造及び光学的特性を変化させ、共存する元素と複合体を形成することを行ってもよい。すなわち、黒液中の硫酸ソーダ(Na2SO4)を硫化ソーダ(Na2S)「一部が多硫化ソーダ(Na2S2、Na2S3)の場合もある」に転化し、炭酸ソーダ(Na2CO3)を苛性ソーダ(NaOH)に転化し、白液又は橙液を得て、鉱物系製紙原料となる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を得る。揮発性有機物等の生成及び分離と、蒸解液への転化及びカーボンに約0〜18重量%含まれる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体のへ電磁波を照射することにより、光エネルギーに対して感受性をもつ原子群のπ電子を電子的励起状態し、反応活性化を付与し、結晶構造及び光学的特性を変化させ、共存する元素と複合体を形成することを同時に行う場合は、これらを同時に生じさせ得る電磁波を照射する。また、酸性物質及び揮発性有機物の生成及び分離と、蒸解液への転化及びカーボンに約0〜18重量%含まれる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体へ電磁波を照射することにより、光エネルギーに対して感受性をもつ原子群のπ電子を電子的励起状態し、反応活性化を付与し、結晶構造及び光学的特性を変化させ、共存する元素と複合体を形成することは、同時ではなく2〜3段階で行ってもよい。その場合は、各段階において適切な電磁波を照射する。
従来の黒液処理方法は、回収ボイラーにおける熱反応による硫酸ソーダの硫化ソーダへの転化及び消和反応による炭酸ソーダの苛性ソーダへの転化により、白液(蒸解液)を得ていたが、本発明では、熱反応に替えて光反応を利用することを特徴とする。黒液処理に光反応を利用した先例はないと思われる。
化学反応には、反応活性種が必要である。赤外線や及び音波(超音波含む)による熱反応は、分子の振動等の運動の活性化により生じるが、主として紫外光等による光反応は、基底状態の分子軌道中の電子が光エネルギーによりエネルギー準位の高い軌道に励起されることにより生じる。これを電子的励起状態という。吸収された光の振動数をν、プランク定数をhとすると、電子的励起状態は、吸収された光エネルギーhνだけ大きなエネルギーをもつ。電子的励起状態にある分子の反応性は高くなる。
一般の光化学反応に利用される波長領域は、紫外光及び可視光と、赤外光の一部も可能とされている。不対電子を保有する原子(炭素、酸素、窒素、硫黄など)を有する分子構造のものが官能基として機能する傾向にあり、その代表としてカルボキシル基やヒドロキシル基などがあげられ、特定の波長で吸収端を有する。従って、吸光特性試験を行い被照射物質の組成により、官能基毎に単独若しく複数の照射光の波長領域を組みわせて、反応をコントロールすることができる。主として200nm〜700nmの紫外光と可視光に吸収をもつ分子が多い。黒液の成分組成は単純ではなく、木材チップの種類によっても黒液の成分組成はバラツキがある。通常、黒液の成分は、蒸解液から転化した無機物の薬液成分と共に、原料木材チップの樹脂に由来するリグニン、ギ酸(HCOOH)及びギ酸塩等の有機物を含む。成分のバラツキは燃焼装置の燃焼状態を不安定にするため、蒸解液の発生量を調整し、かつ必要量の揮発性有機物を得るため、カーボンや補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を揮発性有機物と共に併用し、燃焼装置で安定して燃焼し、最大限効率よく蒸気、電力を得ることができる。
光反応でよく用いられる水銀灯の輝線スペクトルは254nmであり471kJ/molのエネルギーをもつ。多くの有機物がもっているC−C結合のエネルギーは350kJ/molであり、C−H結合のエネルギーは410kJ/mol、C−O結合のエネルギーは350kJ/molであり、C=C結合エネルギーは610kJ/mol、C=O結合エネルギーは750kJ/molであり、H−H結合エネルギーは、440kJ/molである。化学反応を起こすのに必要な活性化エネルギーは、結合エネルギーよりは小さい。分子に対して外部より電磁波エネルギーを付与することにより、分子は活性化エネルギーを得て反応可能な活性状態となる。このとき、化学反応は反応性に富む物質同士が反応する。黒液において光反応を生じさせるには、紫外光から短波長の可視光が特に有用である。
光反応の本質はラジカル反応である。電子的励起状態にあり不対電子をもつラジカル分子は、エネルギー準位の高い軌道にある電子を他の分子に与えやすいため、強い還元性を有する。また、励起された電子の元の軌道には他の分子から電子を受容しやすいため、酸化性も有する。光反応は、分子の特定の場所のみを選択的に活性化して反応を起こさせるので、燃焼による熱反応に比べて低温でも実行できる。
通常の分子をイオン化する場合はイオン化ポテンシャルより大きなエネルギーが必要であり、これはほとんど紫外光よりも短波長の電磁波に相当する。従って、単独の分子は、紫外光より長波長の光エネルギーによってはイオン化しないが、2つの分子が光エネルギーにより電子的励起状態となりかつ2分子間で電子移動が生じるにより、不対電子をもつラジカルイオンとなる。ラジカルイオンは不安定であり、それ自身が反応するとともに、他の分子を反応させることもできる。
図1は、本発明の第1の実施形態における黒液処理方法の概略的なフロー図である。蒸解液には、苛性ソーダ(NaOH)、硫化ソーダ(Na2S)、多硫化ソーダ(Na2S2、Na2S3)、硫化水素ナトリウム(NaSH)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、有機成分(アルコール類)などが単体又は複合化合物として含まれる。一般的に、苛性ソーダ(NaOH)及び硫化ソーダ(Na2S)「以下、硫化ソーダ(Na2S)と多硫化ソーダ(Na2S2、Na2S3)を特に区別しない場合は、多硫化ソーダ(Na2S2、Na2S3)を含めて硫化ソーダと称する」の蒸解液における濃度は110〜130g/リットルである。
ステップ301の蒸解工程は、従来技術の図9のステップ301と同じである。蒸解工程で得られたクラフトパルプは漂白工程へ送られ、黒液が分離される。黒液には、原料木材の樹脂に由来するリグニン、ギ酸(HCOOH)、ギ酸ソーダ(HCOONa)等を主体とする種々の有機物成分と、蒸解液中の苛性ソーダ(NaOH)及び硫化ソーダ(Na2S)から変化した炭酸ソーダ(Na2CO3)及び硫酸ソーダ(Na2SO4)、並びに酸化鉄(FeO、Fe2O3)、マンガン酸化物等の無機物成分とが含まれる。
リグニンは、生体高分子の一つである。黒液中には、水と共に種々の有機・無機物の低分子及び高分子が含まれており、その成分組成は必ずとも常に一定ではない。黒液の固形分濃度は、16から22重量%程度である。また、黒液中の有機成分に対し、燃焼装置性能を最大限に発揮できる量までカーボン(一般的な墨、都市ゴミの炭化物、木炭、練炭、石墨、石炭、ペーパースラッジ炭化物など)を5mm以下(好適には数μm)の粉末状にし、黒液または水に溶解し、スラリーとして流動性を持たせることができるもの)を補充することができる。以降では黒液にカーボンを配合したものを含め黒液と呼ぶ。本発明では、蒸解工程で得られた黒液を濃縮することなく、また、蒸解工程が停止し、燃焼装置性能を最大限に発揮できる量までカーボンを補充したものを含め、すなわち希黒液として次のステップ100の直接苛性化工程に適用する。
ステップ100では、黒液に対し、電磁波エネルギーを照射する。照射する電磁波、紫外光(波長100〜400nm)、可視光(400〜700nm)、赤外光(0.7〜10.6μm)の波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波である。レーザー光、連続スペクトル光、揮線スペクトル光のいずれの形態でも利用できる。具体的な照射装置及び反応装置については、後に図5において説明する電磁波の照射により、黒液に含まれる1種または複数種の成分分子を電子的励起状態とする。個々の光化学反応の例については、後に図8A〜図8Dにおいて説明するが、それらの光化学反応を誘起する波長を含む電磁波を照射する。
電磁波照射にあたって、特に、硫酸ソーダ(Na2SO4)を硫化ソーダ(Na2S)へ転化する反応、炭酸ソーダ(Na2CO3)を苛性ソーダ(NaOH)へ転化する反応、並びに種々の分子量の有機物を酸性物質及び揮発性有機物へ分解する反応を標的とする。電磁波波長は、紫外光200nm〜赤外光900nmの範囲が好適である。光エネルギー(フォトンのエネルギー)としては、ほぼ1,000〜100kJ/molの範囲に相当し、この範囲の光エネルギーにより電子的励起状態となる分子に対して有効である。さらに好適には、電磁波波長を紫外光200nm〜可視光700nmの範囲とする。
電磁波照射においては、波長以外に、照射時間、光強度(照射出力)を調整することにより、ラジカル反応を制御しながら行うことが好ましい。また、照射対象である黒液の流量も調整し、十分な反応が生じるようにする。
直接苛性化工程100における所定の光化学反応により、黒液から液体成分と気体成分が生じる。液体成分は、硫化ソーダ(Na2S)及び苛性ソーダ(NaOH)並びにその他の無機物を含む水溶液の形態の白液である。本発明では、一工程のみで黒液から白液を得ることができる。この工程は、従来の燃焼工程に比べれば遙かに低温で実行できる工程である。白液は、蒸解液として再び蒸解工程で利用される。こうして黒液から蒸解液が再生される。後述する実施例においては、電磁波照射により黒液中の硫酸ソーダが硫化ソーダに転化した場合、転化後の白液すなわち蒸解液中の硫化ソーダ(Na2S)の濃度は、25〜70g/リットルである。
なお、直接苛性化工程100において、硫化ソーダの一部が多硫化ソーダ(Na2S2、Na2S3)に置換されている橙液が得られる場合についても、同様である。橙液の場合、硫化ソーダ(Na2S)は25〜30g/リットル、多硫化ソーダ(Na2S2、Na2S3)は0.5〜35g/リットルである。
また、電磁波照射により黒液中の炭酸ソーダ(Na2CO3)が苛性ソーダ(NaOH)に転化し、転化後の蒸解液中の苛性ソーダ(NaOH)が40〜70g/リットルである。
直接苛性化工程100で得られる気体成分は、典型的な物質として、低分子の酸性物質二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)、硫化水素(H2S)、水素(H2)、二酸化硫黄(SO2)、三酸化硫黄(SO3)と、揮発性有機物メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)及びブタン(C4H10)のアルカン、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、プロパノール(C3H7OH)及びブタノール(C4H9OH)のアルコール並びにこれらの多価アルコールとがある。これらの酸性物質のうち1種又は複数種、並びに、これらの揮発性有機物のうち1種又は複数種が含まれる。これらの酸性物質及び揮発性有機物は、上記液体成分と気化温度(沸点)の差を用いて、容易に分離することが可能である。
また、酸性物質がガス化しやすい特徴を利用し、酸性物質と塩基性物質を分離する方法を苛性化反応に適用した。液体成分と気体成分の分離に用いる脱気装置については、後に図6において説明する。
分離された酸性物質及び揮発性有機物は、一般的な物質であるのでその利用方法は限定されず多様である。これらの気体のほとんどは、一般的な可燃性ガスであるので、汎用的な燃焼装置で燃焼させることができる。後に図7において揮発性有機物利用工程400を例示する。
従来の黒液処理方法では、炭酸ソーダ(Na2CO3)中の炭素原子を消和反応で炭酸カルシウム(CaCO3)とした後、生石灰(CaO)に戻す焼成工程で二酸化炭素(CO2)として排出していたが、本発明では、直接苛性化工程により、直接二酸化炭素(CO2)ガスとして排出される。
また、塩素イオン(Cl−)は、従来は設備を腐食する要素であったが、本発明においては、塩素ガス(Cl2)として気体成分に含まれるので、設備の耐食性に及ぼす影響を低減できる。
液体成分中に含まれる不溶性不純物である金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体は、白液又は橙液に凝集剤を添加し、ドレッグスとして分離され、系外に出される。系外に出された金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物(無機・有機)複合体はドレッグス洗浄装置により洗浄され、濾液は弱液としてカーボンの溶解用に使用されるほか、回収ボイラーで発生するスメルトの希釈液として使用される。金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物(無機・有機)複合体は金属系酸化物を硫酸、または、硫酸と弱電性強誘電体有機物(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムなどの他にヒドロキシル基、カルボシル基、アルデヒド基と言った分子構造を保有するインターカレートされる同類の薬品群のいずれか)を添加し、除去した後、珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給できる。鉱物系製紙原料としての加工方法は特許文献5に記される。また、金属イオンはキレート剤を添加することにより封鎖され、または珪素酸化物・アルミニウム酸化物(無機・有機)複合体と共に封鎖され、固定化させ、土壌改良剤や、路盤材として使用することもできる。
なお、本発明の別の実施形態として、電磁波照射と組み合わせて超音波照射を行ってもよい。その場合の超音波は、振動数は20kHz〜1THzのうち1又は複数の振動数を含むものである。電磁波照射と同じく分子の電子的励起状態を生じさせるエネルギーを付与できればよい。超音波の振動数はラジオ波程度であり、その振動エネルギーが直接、活性種を励起させるわけではないが、液体中での有機化学反応を促進させることが知られている。
また、電磁波照射と超音波照射を併用してもよい。これにより、さらに反応促進を図ることが可能である。
なお、図1に示した循環再生系で損失する硫黄分は、従来と同様に、黒液の処理前に黒液に対して硫酸ソーダ(Na2SO4)及び/又は亜硫酸ソーダ(Na2SO3)を混合させることで補充できる。また、白液又は橙液中に硫化水素ナトリウム(NaSH)を補充してもよい。また、従来の苛性化工程ではカルシウム成分の補充を必要としたが、本発明においては、カルシウム成分の補充は不要となる。
図2は、図1のフロー図に示した黒液の直接苛性化工程100の装置構成の一例を模式的に示した図である。図1の蒸解工程301から送られた黒液は、温度調整器101において適切な温度に調整される。加熱の場合は加温蒸気が用いられ、冷却の場合は清水が用いられる。ドレンは適宜処理される。具体例として、間接式熱交換器を用いることができ、駆動蒸気若しくは温水を使用して加温し、冷却水により冷却する。別の例として、黒液に対して直接、蒸気若しくは温水又は冷却水を注入して温度調整することもできる。
任意であるが、黒液の濃度調整を行ってもよい。また、カーボンをカーボン混合槽若しくはカーボン溶解後インラインミキサーで黒液と混合することにより、黒液中の揮発性有機物の原料及び反応促進剤として増やしてもよい。本発明は、基本的には蒸解工程から得た黒液のまま直接苛性化を行うことができるが、黒液の成分組成は必ずしも安定していないため、必要に応じて希釈装置102により濃度を低下させ、また濃縮装置103により濃度を上昇させる。従来と同程度の濃縮を行っても、本発明の作用効果は同様に得られる。基本的には、電磁波照射による光反応にもっとも適した濃度に設定する(実験により特定可能)。濃縮装置としては、バキュームエバポレータなどを使用することができる。図10にカーボンとして都市ゴミの炭化物をゴミ処理設備から製造し、黒液処理工程に供給する例を示す。
また、任意であるが、電磁波の照射に先立って照射対象の液体に触媒を添加する工程を設けてもよい。触媒としては、カーボン、酸化チタン、ルテニウム、酸化亜鉛、酸化クロム、二酸化マンガン、酸化第二鉄、酸化第三鉄等があり、これらの中から適宜選択される。触媒により反応の活性化エネルギーを小さくできる。
さらにまた、任意であるが、電磁波の照射に先立って照射対象の液体を加熱又は冷却する工程を設けてもよい。本発明では光化学反応を利用するため、従来の燃焼反応に比べれば遙かに低温で反応が行われるが、より効率的に反応させるために適度な温度に調整してもよい。
その後、反応装置104に黒液を送り込み、電磁波発生装置105により発生させた電磁波を黒液に照射する。(電磁波に替えて超音波を用いる場合は、超音波発生装置106により発生させた超音波を黒液に照射する。)反応装置104内で光化学反応が行われ、硫酸ソーダ(Na2SO4)が硫化ソーダ(Na2S)へ、炭酸ソーダ(Na2CO3)が苛性ソーダ(NaOH)へ転化し、さらに酸性物質、揮発性有機物及び蒸解液中の珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体から共存する元素との複合体が生成される。
任意であるが、電磁波の照射中に照射対象の液体の圧力を制御してもよい。より効率的な反応を行わせる圧力に調整するためである。圧力調整範囲は、665Pa〜大気圧が好適である。
その後、脱気装置107において液体成分と気体成分を分離する。なお、任意であるが、2段目の反応装置108及び脱気装置109を設け、電磁波照射(又は超音波照射)と脱気を繰り返してもよい。脱気(抽気)装置は、内部の圧力・温度を制御することができ、液体成分中への二酸化炭素(CO2)及び有機物の溶存量を管理し、負圧状態でラジカル自動連鎖反応を促進させる。これにより、できるだけ多くの酸性物質及び揮発性有機物を気体として分離させる。脱気装置内の圧力調整範囲も、665Pa〜大気圧が好適である。また、脱気装置は、次工程のドレッグス沈降槽(白液回収槽)111内の液面でシールさせたレグ配管を有する。これにより、負圧を発生させるため、ドレッグス沈降槽(白液回収槽)111の液面よりも10.3m以上の高さに設置することが好適である。
反応装置104と脱気装置107は、別個の装置として設けてもよく、一体化した装置として設けてもよい。黒液中の有機物を、酸性物質及び揮発性有機物に転化する反応系と、苛性化反応により無機物を再生させる反応系と珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体から共存する元素との複合体を生成する系を別々にする場合は、反応装置と脱気装置を別個の装置として設けることが効果的である。
脱気装置107により分離された液体成分は、ドレッグス沈降槽(白液回収槽)111において不溶性不純物の金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体をドレッグスとして分離するため、反応液に凝集剤を加え沈降し、系外に放出される。沈降したドレッグスは、ドレックス洗浄機で洗浄され、濾液を回収した後、硫酸又は硫酸と弱電位性強誘電体有機物(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのいずれかの薬品)を添加し、金属系酸化物を分離した後、珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給することができる。または、適宜場外処理される。ドレッグスが除去された蒸解液(白液または橙液)は、蒸解工程301へ戻される。
また、任意であるが、白液の一部を白液酸化装置113へ送り、酸化白液とし、パルプ製造工程に含まれる酸素脱リグニン工程で利用してもよい。
一方、気体成分として分離された酸性物質及び揮発性有機物は、揮発性有機物分離装置110へ送られ、冷却水により沸点の差を利用して凝縮され、アルコールと可燃ガスに分離される。それぞれ、別々の揮発性有機物利用工程400へ送られ、利用される。二酸化炭素(CO2)は可燃性ガスと一緒にボイラーに送られ、排ガスとして排出される。ドレンは適宜回収されボイラーで燃焼若しくは排水処理される。例えば、アルコールは、燃料用、薬品資材用など用途別に純度を調整して利用する。
図3は、本発明の第2の実施形態における黒液処理方法の概略的なフロー図である。
ステップ301の蒸解工程、ステップ302の濃縮工程、ステップ303の回収ボイラーによる燃焼工程、及びステップ304のドレッグス沈降工程は、従来技術の図9のステップ301と同じであるので説明を省略する。
燃焼工程により黒液中の有機成分に対し、燃焼装置の性能を最大限に発揮できる量までカーボンを混合した黒液を燃焼し、回収ボイラー炉底に形成されるチャーの表面の還元環境にて、珪素酸化物・アルミニウム酸化物が共存する元素との複合体を形成し、硫酸ソーダ(Na2SO4)が硫化ソーダ(Na2S)へ変化し、炭酸ソーダ(Na2CO3)と共にスメルトとしてデゾルバ内に流入し、弱液により希釈した、スメルト水溶液としての緑液は、硫化ソーダ(Na2S)と炭酸ソーダ(Na2CO3)を含んでいる。従来は、この後に消和反応を含む苛性化工程を行って炭酸ソーダ(Na2CO3)を苛性ソーダ(NaOH)に転化していた。本発明では、ステップ200において、緑液に対し電磁波エネルギーを照射する直接苛性化工程を行う。この電磁波照射による光化学反応については、対象とする液体が黒液と緑液で異なるだけで、上述の第1の実施形態と同様に行うことができる(電磁波に替えて超音波を適用する場合も同様である)。従って、上述の第1の実施形態の直接苛性化工程について述べた説明は、第2の実施形態の直接苛性化工程にも該当する。
但し、既に燃焼工程303により硫酸ソーダ(Na2SO4)は硫化ソーダ(Na2S)に転化されているので、電磁波照射にあたっては、炭酸ソーダ(Na2CO3)を苛性ソーダ(NaOH)へ転化する反応、並びに、種々の分子量の有機物を揮発性有機物へ分解する反応を標的とする。
直接苛性化工程後の処理についても、第1の実施形態と同様である。
図4は、図3のフロー図に示した緑液の直接苛性化工程200の装置構成の一例を模式的に示した図である。図3のドレッグス沈降工程304においてドレッグスを除去された緑液は、温度調節器203において適切な温度に調整される。加熱の場合は加温蒸気が用いられ、冷却の場合は清水が用いられる。ドレンは製造工程へ回収される。
その後、反応装置204に緑液を送り込み、電磁波発生装置205により発生させた電磁波を黒液に照射する。(電磁波に替えて超音波を用いる場合は、超音波発生装置206により発生させた超音波を黒液に照射する。)反応装置204内で光化学反応が行われ、炭酸ソーダが苛性ソーダへ転化し、さらに酸性物質及び揮発性有機物が生成される。
その後、脱気装置207において液体成分と気体成分を分離する。脱気装置207により分離された液体成分は、蒸解工程301へ戻される。
また、任意であるが、白液の一部を白液酸化装置209へ送り、酸化白液とし、パルプ製造工程に含まれる酸素脱リグニン工程で利用してもよい。
一方、気体成分として分離された酸性物質及び揮発性有機物を利用する場合は、揮発性有機物分離装置210へ送られ、冷却水により沸点の差を利用して凝縮され、アルコールと可燃ガスに分離される。それぞれ、別々の揮発性有機物利用工程400へ送られ、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用することにより、利用される。二酸化炭素(CO2)は可燃性ガスと一緒にボイラーに送られ、排ガスとして排出される。ドレンは適宜ボイラーで燃焼若しくは排水処理される。
なお、緑液に対して本発明を適用する場合は、既に燃焼工程を経ているため、黒液に対して本発明を適用する場合に比べて、揮発性有機物の回収量は少なくなる。従って、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用する場合を含め、揮発性有機物の処理装置は、任意に設けられるので破線で囲んで示している。
図5は、図2又は図4に示した反応装置の実施例を概略的に示す側面(一部断面を含む)図である。(a)〜(e)の実施例で用いた電磁波発生装置1は、レーザーを想定している。紫外域ではエキシマレーザー、可視域ではアルゴンレーザー、半導体レーザー又はルビーレーザー、赤外域ではYAGレーザー又はCO2レーザーなどがある。レーザーを用いる場合の反応容器は、入射部である照射窓が透光性を有する材料で形成され、内壁にはレーザーを反射するミラー膜などを形成する。レーザー照射装置の場合、複数のレーザー光源を備えることが好適である。また、異なる波長の光を発生する複数のレーザー光源を組み合わせてもよい。
また、レーザー以外の光源としては、定常光を照射するランプがある。紫外域では高圧又は低圧の水銀ランプ又は重水素ランプ、紫外域〜可視域では金属ハライドランプ、可視光〜赤外域では希ガスショートアークランプ又はハロゲンランプなどがある。これらのランプ光源は、反応容器の内部に設置しても外部に設置してもよい。このようなランプは、光化学反応において一般的に用いられている。
図5(a)では、電磁波発生装置1と曲部をもつ筒状の反応容器2aとを組み合わせている。反応容器2aの一端から黒液10が流入し、他端から照射後の液体20が流出する(以下同様)。反応容器2aの曲部において電磁波を照射する。(b)では、角筒状の反応容器2bの一側面から斜めに電磁波を照射している。(c)では、曲部をもつ筒状の反応容器2cの内部に内筒が設けられと複数のプリズム2c1、2c2が進行方向に配置され、レーザー光を拡散する。(d)では、筒状の反応容器2dの一端にレンズ2d1を設けて入射したレーザー光を拡散させ、筒内壁で反射を繰り返させ、他端に設けたレンズ2d2で集光している。(e)では、環状反応容器2e内をレーザー及び黒液が周回する。
なお、超音波を照射する場合には、反応装置として超音波振動子を備えた超音波ソノリアクターを用いる。
図6(a)(b)は、図2又は図4に示した脱気装置(反応装置と一体化)の実施例を概略的に示す側断面図である。図6では、図5(a)に示した反応装置と一体化した脱気装置の例を示す。図示の構成は一例であり、脱気装置容量及び反応装置数量は、実際に処理する量により決定する。(a)では、筒体の脱気装置3の上面に4つの反応装置が取り付けられている。各反応装置の流出側の管部が、脱気装置3の内部に挿入され、中央付近で流出口が下向きに開口している。流出口の直下には、ガス分散揮発板3aが水平に設置されている。反応装置から流出した液体は、メッシュ状のガス分散揮発板3aを通過することで揮発性有機物30が気化し、上面の抽気口3bから抽気される。一方、白液20が滴下し、脱気装置3の下部に溜まる。一定の時間滞留できるように、液溜りを形成する堰板3dを取出口3cの手前に設ける。白液20は、下面の取出口3cから流出する。こうして、反応後の液体から酸性物質及び揮発性有機物が分離され、蒸解液としての白液が得られる。
図6(b)では、筒体の脱気装置3の下面に4つの反応装置が取り付けられている。各反応装置の流出側の管部が、脱気装置3の内部に挿入され、上面付近で流出口が上向きに開口している。反応装置から流出した液体は、上面内壁に衝突して落下する。この衝突により揮発性有機物30が気化し、上面の抽気口3bから抽気される。一方、白液20が滴下し、脱気装置3の下部に溜まる。一定の時間滞留できるように、液溜りを形成する堰板3dを取出口3cの手前に設ける。白液20は、下面の取出口3cから流出する。こうして、反応後の液体から酸性物質及び揮発性有機物が分離され、蒸解液としての白液が得られる。
図6(a)(b)には図示しないが、上述のように、脱気装置3の内部を適切な温度及び圧力に調整する温度調節手段及び圧力調節手段を設けることが好適である。
図7A、図7Bは、本発明により得られる揮発性有機物の利用工程400の構成例を模式的に示す図である。本構成例は、可燃ガスの発電システムへの利用例である。
図2又は図4に示した揮発性有機物分離装置で分離された可燃ガスを利用する第1の経路は、直接、燃焼装置401へ送る経路である。また、燃焼量調整のため、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用することができる。この燃焼装置401は、汎用的な燃焼装置を用いることができる。
なお、ここでは、発電用の燃焼装置としたが、可燃ガスを自動車燃料として利用する場合には自動車に搭載された燃焼装置に適用できる。その他、種々の暖房設備や給湯設備用の燃焼装置にも適用できる。
燃焼装置401における燃焼熱により蒸気タービン402を駆動し、発電を行う。生成された電力は、種々の設備に供給される。燃焼装置401の排ガスは、排煙/脱硫装置403により処理されて放出される。
可燃ガスの第2の経路は、気体燃料貯槽404に一時的に貯蔵する経路である。気体燃料貯槽404に貯蔵された可燃ガスは、必要に応じて燃焼装置401に送られ、燃焼される。また、燃焼量調整のため、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]は燃焼装置401に送られ、燃焼される。その熱を用いて蒸気タービン402による発電を行う。また、可燃ガス及び補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]は、必要に応じてガスタービン408に送られ、発電を行う。
可燃ガスの第3の経路は、可燃ガスを凝縮装置405で冷却して液化し、液体燃料貯槽406に一時的に貯蔵する経路である。液体燃料貯槽406に貯蔵された液体燃料は、必要に応じて気化装置407に送られて再び可燃ガスとなり、ガスタービン408で発電を行う。また、可燃ガスに補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用し、ガスタービン408を駆動した可燃ガス(補助燃料と混合した状態)は、その後、燃焼装置401へ送られて燃焼される。
なお、蒸気タービン及びガスタービンは、車両、船舶、航空機等のエンジンとしても用いられており、本発明により得られた可燃ガスはこれらの燃料としても利用できる。
また、本発明の黒液処理装置を、従来の黒液処理装置と併用する場合には、可燃ガス及びLPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料を回収ボイラーの補助燃料として利用することもできる。図7Aの実施例フロー示す。また、本発明を踏まえ、カーボン及び補助燃料を使用し、従来の回収ボイラーを効率化させるために適用した例を図7Bに実施例に示す。説明は直接苛性化で行われる回収ボイラーの黒液処理方法と同じなので、説明を省略する。
図8A〜図8Bは、本発明による直接苛性化工程において生じていると考えられる光化学反応の幾つかを模式的に示した図である。反応は直線矢印の方向に進み、「*」は電子的励起状態にある励起種を示し、「・」はラジカルを示す。hνで示す波矢印は、光エネルギーを吸収する部位を示す。破線囲みは、反応に直接関係する原子群を示す。
直接苛性化工程での光化学反応に関与する反応活性種としては、励起種、ラジカル、ラジカルイオン又はイオン等多様であり、具体例としては*C、*CO2、*CO−、*CO3 2−、*CH、*OH−、*O2H2、*HO2 −、*H+、*H2、*SH−、SO2 −、*NO−、*NH2 −等がある。これらは、黒液又は緑液に含まれている成分分子に由来する。黒液及び緑液とも、成分分子の種類は多様であるので、光化学反応の機構も複雑であるが、以下に典型例のみを示す。
図8Aにおいて、(a)はギ酸と水から開始されるエタノール生成過程例を、(b)はギ酸と水から開始されるメタノール生成過程を、(c)は(b)で生成されたメタノールから開始されるメタン生成過程をそれぞれ示す。反応初期には、(a)(b)に示すように、カルボニル基(CO)やヒドロキシル基(OH)等の官能基に光エネルギーが吸収される。その他の官能基としては、=O、=S、−NH2、=N2等がある。従って、これらの官能基による吸収を生じる波長の電磁波を照射することが有効である。
例えば、2種の成分分子の各々の官能基(例えば、ヒドロキシル基とカルボニル基)が励起状態となるエネルギーが異なる場合には、それぞれ異なる波長の電磁波ν、ν’を同時に照射することで、双方の成分分子を電子的励起状態とし、反応活性種とすることができる。異なる複数の波長を含む電磁波であっても、各波長の電磁波が特定の官能基にのみ選択的に作用する。これにより、双方の成分分子による化学反応を生じさせることができる。化学反応には、これらの成分分子の結合開裂、異性化、閉環若しくは開環、付加若しくは付加環化、置換、酸化、還元等が含まれる。さらに、電磁波の強度や照射時間を調整すれば、反応活性種の量を容易に調整することができ、化学反応を制御することが可能である。
図8Bにおいて、(a)はギ酸(HCOOH)の分解過程を示している。ギ酸(HCOOH)を含むカルボン酸(−COOH)及びその誘導体の吸収は、紫外域又は近紫外域が主である。
(a)の結合開裂では、脱COが生じる。
(b)は、炭酸ソーダ(Na2CO3)の分解過程を示している。
(c)は、硫酸ソーダ(Na2SO4)と(a)(b)で生成された*COとの反応により、硫化水素ナトリウム(NaSH)と苛性ソーダ(NaOH)とCO2を生成する過程を示している。
(d)は、硫酸ソーダ(Na2SO4)と(a)(b)で生成された*COとの反応により、硫化ソーダ(Na2S)とCO2を生成する過程を示している。
(e)は、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)と(a)(b)で生成された*COとの反応により、硫化ソーダ(Na2S)とCO2を生成する過程を示している。
図8Cは、過反応自己消費過程の例であり、(a)はギ酸(HCOOH)の分解過程を、(b)はメタン(CH4)生成過程を示している。(c)は、(a)(b)で生成された励起種とラジカルとの反応により、CO2と水(H2O)を生成する過程を示している。(d)は、(a)(b)で生成された励起種とラジカルとの反応により、O2と水を生成する過程を示している。このような、自己消費過程によって、その他に二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)、硫化水素(H2S)、水素(H2)、二酸化硫黄(SO2)、三酸化硫黄(SO3)等がガスとして発生する。
図8Dは、カーボン(C)と水(H2O)の加水分解により、*CO、*CO2とメタン(CH4)、メタノール(CH3OH)、エタノール(CH5OH)、水素(H2)生成過程の例であり、(a)は*CO、*CO2生成によるカーボンの分解過程とエタノール(CH5OH)生成過程を、(b)は*CO、*CO2生成によるカーボン(C)の分解過程とメタノール(CH3OH)、水素(H2)生成過程を示している。(c)は、*CO、*CO2生成によるカーボン(C)の分解過程とメタン生成過程を示している。(d)は*CO、*CO2生成による水(H2O)の分解により、水素(H2)生成過程を示している。(a) (b) (c)(d)いずれの反応も*COが反応活性種となり、ラジカル反応により、メタン(CH4)、メタノール(CH3OH)、エタノール(CH5OH)、水素(H2)生成反応が連続的に促進されることを示している。
図1及び図2に示した第1の実施形態を適用した黒液処理方法を実施し、電磁波照射前の黒液(希黒液)組成と、電磁波照射後の白液すなわち蒸解液の組成を比較した。
尚、実施例に限らず、流量及び成分比率に基づいて成立する。
<試験条件>
・試料の流量:希黒液102m3/h
・試料中の固形分:17.5重量%
・紫外光波長:280nm、赤外光波長:5.7μm
・温度:80℃
・圧力:665Pa
<結果>
表1に処理前の希黒液の組成を、表2に処理後の再生された蒸解液の組成を示す。
試験結果と、希黒液の成分の不安定さ及び処理条件の違いを考慮すると、本発明により処理された再生された蒸解液においては、硫化ソーダのうちNa2Sが25〜35g/リットル、Na2S2が0.5〜35g/リットルの範囲となることが予想される。同様に、蒸解液中の苛性ソーダは40〜70g/リットルの範囲となることが予想される。これらの組成範囲であれば、蒸解液を再利用することができる。
処理により生成された揮発性有機物は、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)等のアルコール類及び酸化物等であった。回収された揮発性有機物を黒液処理装置の燃料として利用することにより、従来の黒液処理装置に対し約10%以上のエネルギー消費削減を実現できた。蒸解液中の苛性ソーダ(NaOH)を増量することでさらに改善が期待できる。
太陽光を使用した簡単なテーブルテストにより、第1の実施形態を適用した黒液処理方法及び第2の実施形態を適用した黒液処理方法を簡易な方法で実際に実証が行える。
発生した揮発性ガスの物性については、サンプル収集し分析器により確認できる。また、
珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体の鉱物系製紙原料としては実際の鉱物系製紙原料と対比することで同等品か簡易な判別ができる。
φ100の凸レンズを使用し、太陽光を集光し、黒液に照射し、揮発性有機物が発生する様子を観察できる。
<試験条件>
・ 晴れた日10:00〜14:00を選ぶ。
・ 60〜80℃の黒液をシャーレに入れ、シャーレ内を液で満たし、透明シートで蓋をする。
・ φ100の凸レンズを使用し、太陽光を黒液に照射し、発生するガスを気泡として、透明シート溶媒側に気泡として蓄積させる。また、発生する気泡は気泡として残留するものと溶媒に吸収される気泡(ガス)の特徴があり、揮発したガスを冷却し、分離回収できることが確認できる。
・ 吸引機(注射器)で表面の気泡(ガス)サンプルを捕集し、分析器で分析する。
・ シャーレ内部に蓄積されたガスを細いパイプで誘引し、火を付けると一瞬激しく燃えることが確認できる。(可燃ガス発生の証明)
φ100の凸レンズを使用し、太陽光を集光し、試料に照射し、直接苛性化が行われる様子を観察できる。
<試験条件>
・ 晴れた日10:00〜14:00を選ぶ。
・ 60〜80℃の炭酸ソーダ水溶液をシャーレに入れ、溶解限度以上に炭酸ソーダを溶解し、シャーレ内を水溶液で満たし、透明シートで蓋をする。
・ 凸レンズを使用し、太陽光を直接炭酸ソーダ結晶に照射する。
・ 2〜3分で、気泡が発生する。溶液に回流が発生し、反応が盛んに行われていることが確認できる。
・吸引機(注射器)で表面の気泡(ガス)サンプルを捕集し、分析器で分析する。
・ 同じ条件で溶媒である水に太陽光を照射しても気泡が発生しないので、炭酸ソーダ(Na2CO3)自体が反応していたことが判定できる。
テーブルテストにより、第1の実施形態を適用した黒液処理方法において、カーボン(数μmのペーパースラッジ炭化物の粉末)を黒液に混合した上で、φ100のレンズで太陽光を集光し、試料に照射し、珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を乾燥させ、鉱物系製紙原料が得られる様子を観察できる。
<試験条件>
・ 晴れた日10:00〜14:00を選ぶ。
・ 60〜80℃のカーボン(数μmのペーパースラッジ炭化物の粉末)を混ぜた黒液をシャーレに入れる。(太陽光では反応を完成するためには時間が必要)
・ φ100のレンズで太陽光を集光し、試料に照射する。
体積が変化し、白色化する様子が観察できる。
・反応が終了後、可溶性成分を取り除き、残留した珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を洗浄し、クエン酸で洗浄後炭酸水素ナトリウムを加え、十分時間を置いてから、珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を乾燥させる。
(クエン酸を使用し、硫酸洗浄を省略)
・ 得た物質を実際に使用される鉱物系製紙原料サンプルと対比する。
鉱物系製紙原料の用途では、原料の性状によりさらに加工を有する場合がある。
第2の実施形態を適用した黒液処理方法において、カーボン(数μmのペーパースラッジ炭化物の粉末)を黒液に混合した上で燃焼し、珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を乾燥させ、鉱物系製紙原料が得られる様子を観察できる。
<試験条件>
・ 60〜80℃のカーボン(数μmのペーパースラッジ炭化物の粉末)を混ぜた黒液をるつぼに入れる。
・ るつぼを900〜1,200℃で燃焼し、一旦温度を下げ、弱液を入れる。
(黒色になる)
・ 可溶性成分を取り除き、残留した珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を洗浄し、クエン酸で洗浄後炭酸水素ナトリウムを加え、十分時間を置く。
(クエン酸を使用し、硫酸洗浄を省略)
・ 珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体だけを取り出し、再度るつぼに入れ、水分が蒸発して直ぐの120度程度まで加熱し、乾燥させ、鉱物系製紙原料として得たものを、実際に使用される鉱物系製紙原料サンプルと対比する。
加熱しすぎると珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体にインターカレートした有機物が変質し、黒色に変化する。
黒液処理方法において、テーブルテストにより炭化物(墨)を加えpH条件を変えた水溶液にφ100の凸レンズを使用し、太陽光を集光し、光化学反応(酸、カーボン、水の分解反応による水素発生)が観察できる。
<試験条件>
・ 晴れた日10:00〜14:00を選ぶ。
・ シャーレ内を試料の水溶液で満たし、透明シートで蓋をする。
・ φ100のレンズで太陽光を集光し、光化学反応を起し、発生するガスを透明シート水溶液側に捕集する。
・ pH7未満では炭化物及びpH調整用の酸(クエン酸)が光に感応し、発生したガスを燃焼させたところは一瞬激しく燃焼する。盛んに水素が発生したことが確認できる。(酸性では反応は盛んだが、pH調整用の薬液まで感応し、分解する)
・ pH7以上では、炭化物が光に感応し、発生したガスを燃焼させたところは一瞬激しく燃焼する。水素が発生したことが確認できる。
・ 炭化物以外の物質(紙、木片)と対比したところ、炭化物の光感受性は対比物質の6倍以上であることがガスの発生量で明らかにできる。また、炭化物を対比物質に接触させ光を感応させると、光化学反応が促進される状況が観察できる。
本発明の第1の実施形態における黒液処理方法の概略的なフロー図である。
図1のフロー図に示した黒液の直接苛性化工程の装置構成の一例を模式的に示した図である。
本発明の第2の実施形態における黒液処理方法の概略的なフロー図である。
図3のフロー図に示した緑液の直接苛性化工程の装置構成の一例を模式的に示した図である。
図2又は図4に示した反応装置の実施例を概略的に示す側面(一部断面を含む)図である。
図2又は図4に示した脱気装置(反応装置と一体化)の実施例を概略的に示す側断面図である。
本発明により得られる揮発性有機物の利用工程400Aの構成例を模式的に示す図である。
本発明により得られる揮発性有機物の利用工程400Bの構成例を模式的に示す図である。
本発明による直接苛性化工程において生じていると考えられる光化学反応の幾つかを模式的に示した図である。
本発明による直接苛性化工程において生じていると考えられる光化学反応の幾つかを模式的に示した図である。
本発明による直接苛性化工程において生じていると考えられる光化学反応の幾つかを模式的に示した図である。
本発明による直接苛性化工程において生じていると考えられる光化学反応の幾つかを模式的に示した図である。
黒液処理方法の従来例を概略的に示したフロー図である。
本発明による都市ゴミの炭化物製造工程と黒液に混合して使用する例を模式的に示したフロー図である。
符号の説明
1 電磁波発生装置
2 a〜2e 反応容器
3 脱気装置
本発明は、クラフトパルプの製造工程に含まれる蒸解工程に関し、特に蒸解工程で回収される黒液を蒸解液(白液若しくは橙液)として再生する処理方法に関する。さらに、黒液処理装置及びこの処理方法により得られる発電システムに関する。
従来、クラフトパルプを製造する工程の第1段階として木材チップに蒸解液及び黒液、助剤を加え、加温蒸解する。この蒸解工程においては、蒸解後の黒液をソーダ回収システムにより蒸解液に再生し、再利用することが行われている(特許文献1〜4)。
図9は、黒液処理方法の従来例を概略的に示したフロー図である。ステップ301は、クラフトパルプ蒸解工程である。蒸解工程では、木材チップを蒸解液と共に高温高圧下で数時間蒸解する。蒸解液は、苛性ソーダ(NaOH)及び硫化ソーダ(Na2S)を主成分とする。通常、硫化ソーダ(Na2S)の一部は、多硫化ソーダ(Na2S2、Na2S3)に置換されている。その後、洗浄工程を行うことにより、クラフトパルプと、黒液とを分離する。黒液には、原料木材の樹脂に由来するリグニンを主体とする種々の有機物成分と、蒸解液から変化した硫酸ソーダ(Na2SO4)及び炭酸ソーダ(Na2CO3)等の薬液成分とが含まれ、固形分の濃度は16〜22重量%程度である。得られたクラフトパルプは、製紙のために漂白工程へ送られる。
ステップ302は濃縮工程であり、エバポレータにより黒液を燃料可能な濃度となるまで濃縮する。これにより黒液中の固形分が、65〜75重量%程度となる。
ステップ303は燃焼工程であり、回収ボイラーにより黒液を燃焼し、硫酸ソーダ(Na2SO4)、亜硫酸ソーダ(Na2SO3)、チオ硫酸ソーダ(Na2S2O3)を硫化ソーダ(Na2S)に還元する。特許文献2に開示するように、ボイラーの炉内に黒液を噴射し、炉底部にて形成されるチャーの表面で燃焼させ溶融したスメルトを、デゾルビングタンク内で弱液にて希釈し、その水溶液である緑液として回収する。燃焼により生成された排ガス中の集塵からも硫酸ソーダ(Na2SO4)及び炭酸ソーダ(Na2CO3)を回収する。なお、回収ボイラーの燃焼に伴い発生した熱により蒸気を発生させ、蒸気タービンを駆動して発電を行い、その電力を製造システムに供給している。緑液中の不溶性不純物は、ドレッグス沈降工程304において、緑液に凝集剤を添加し、ドレッグスとして分離され、系外に出される。回収ボイラーで燃焼した有機成分は二酸化炭素(CO2)として大気中に排出される。
ステップ305は、苛性化工程であり、燃焼工程で回収された緑液を生石灰(CaO)と反応させる消和工程305aにより、緑液中の炭酸ソーダ(Na
2CO
3)が、炭酸カルシウム(CaCO
3)と苛性ソーダ(NaOH)となる。なお、この工程で発生した消石灰すなわち炭酸カルシウム(CaCO
3)は、白液と分離され、洗浄、脱水された後に、焼成工程305bにおいて化石燃料を用いて燃焼され、再び生石灰に戻される。炭酸カルシウムを洗浄、脱水した濾液(弱液)は再びスメルトの希釈液として使用される。こうして得られた白液は、苛性ソーダ及び硫化ソーダを主成分とし、蒸解液とほぼ同じ成分であり、蒸解液として再利用される。尚、白液中の硫化ソーダ(Na
2S)の一部を酸化させ、多硫化ソーダ(Na
2S
2、Na
2S
3)に改質したものを橙液と呼び、白液よりもパルプ繊維歩留り向上が期待できる蒸解液として使用されている。また、蒸解に使用される白液とは別に一部の白液を酸化させ、苛性ソーダ(NaOH)とチオ硫酸ソーダ(Na
2S
2O
3)を主成分とする酸化白液を精製し、酸素脱リグニン工程で使用する。
特公平6−63190号公報
特公平8−19632号公報
特許第2815701号公報
特許第3811674号公報
特願2007−298649
上記の従来の黒液処理方法においては、以下のような問題点が挙げられる。回収ボイラーによる燃焼工程においては、通常、回収ボイラー起動時炉内温度昇温のため、化石燃料(A重油等)を使用する。
黒液は、薬品回収の目的や無機質成分(炭酸ソーダ、硫酸ソーダ等)の飛散及び腐食性ガス発生を伴うと同時に燃焼による熱回収を同時に行うため、回収ボイラーという特別な構造の黒液専用の燃焼装置によってしか燃焼させることができない。つまり、黒液処理においては、一般的な燃焼装置や焼却装置を利用することができない。また、蒸解工程のトラブルにより、黒液が供給されず、回収ボイラーの燃焼ができない状況では、蒸気及び電力が安定して供給できない状況が発生していた。
なお、回収ボイラーで黒液をガス化した後、薬品回収及び硫酸ソーダ(Na2SO4)や炭酸ソーダ(Na2CO3)等の煤塵や硫化水素(H2S)、塩素イオン(Cl−)等の腐食性ガスをガスタービンやディーゼルエンジンへ導入する前に分離処理する構造を有しなければ、ガスタービンやディーゼルエンジンに適用するには不適当であり、ガスタービンやディーゼルエンジンと組み合わせた発電装置へは利用できなかった。
さらに、従来は、黒液の燃焼工程に先立って蒸気駆動による黒液濃縮装置が必須であり、黒液濃縮に伴い気化する水蒸気エネルギー、動力機械用の電力を消費していた。また、黒液水分を気化させた水蒸気を凝縮した汚ドレンに含まれる高いCOD成分及び臭気ガス成分を処理するための処理設備が必要で、やはり蒸気や動力機械用電力、排水処理設備に薬品を消費していた。
黒液中に含まれる成分が黒液濃縮装置のスケーリングトラブルや腐食性ガスを発生させ装置を痛める。また、回収ボイラーでは煤塵/燃焼ガス比が通常のボイラーに比べ遥かに高く、ボイラー伝熱管を硫酸ソーダ等の煤塵が閉塞し、重油ボイラーと対比し減肉速度を速め、電気集塵機や煙道ダクトの部分腐食、劣化を発生させ、ボイラー効率を低下させていた。さらに、1〜4回/年程度の大掛かりな洗浄及び煤塵除去作業、補修が劣悪な環境で人為作業により行われ、作業自体の安全性の確保に人力、メンテナンス費用を消費し、また、長期作業による生産停止のため、収益性を低下させている。
回収ボイラーによる燃焼工程や苛性化工程の複数の工程を経る毎に、生成物の損失が生じるため、蒸解液の再生率が低下する。硫酸ソーダ(Na2SO4)は回収ボイラーの燃焼工程で飛散し、飛散損失したものの一部と系外から硫酸ソーダ(Na2SO4)、亜硫酸ソーダ(Na2SO3)の形で黒液に補充しバランスさせる。また、苛性化工程においても、消和工程ではグリッドとして、焼成工程では飛散によりカルシウム(Ca)成分の損失が生じる。加えて、炭酸カルシウム(Na2CO3)の焼成工程でも、化石燃料を大量に消費し、周囲に放熱及び二酸化炭素を発生する。その上、焼成装置はダムリング除去や消耗の激しい耐火材の更新などやはりカルシウム成分の飛散する劣悪な環境での人為作業を伴い、補修・維持のためのメンテナンスコストがかかっていた。また、蒸解液を移送する配管や炭酸カルシウムを移送する配管では、内面にスケーリングを起し、管路を狭くするため、酸洗や配管の更新、移送ポンプの磨耗による更新を必要としており、補修・維持のためのメンテナンスコストが必要である。尚、酸洗作業では有毒な硫化水素が発生し、過去に死亡事故などを起している。特に限られた期間に人海戦術でメンテナンスを行うため、短期間に大勢の施工者を募集し、作業する必要があった。
また、多くの製紙会社では、回収ボイラー、苛性化設備を導入した当時からの経年の使用状況から老朽化が進み、大掛かりな設備更新の時期にさしかかっており、効率的な新しい設備を導入しやすい状況になっている。
以上の現状に鑑み、本発明の目的は、パルプ製造工程に含まれる黒液処理方法において、回収ボイラーによる燃焼工程及び消和による苛性化工程に近代的な設備を導入し、最適化するために、黒液を白液(又は橙液)すなわち蒸解液に再生可能な黒液処理方法及びその装置を提供することを目的とする。また、黒液処理方法及び装置が、発電装置とを組み合わせによりさらに効率化することを目的とする。さらに、本発明の基本理念を適用し、カーボン(一般的な墨、都市ゴミの炭化物、木炭、練炭、石墨、石炭、ペーパースラッジ炭化物などを5mm以下(好適には数μm)の粉末状にし、黒液または水に溶解し、スラリーとして流動性を持たせることができるもの)、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を黒液に併用することにより回収ボイラーの特殊性を汎用ボイラーに近づけるための黒液処理方法及び装置、発電装置とを組み合わせたシステムを提供する。また、新たに回収ボイラーで蒸解液の再生の他に、黒液とカーボン併用による回収ボイラーの燃焼により、黒液を濃縮する工程で使用する蒸気を減少させ、また、カーボンに約0〜18重量%含まれる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給する黒液処理方法及び装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するべく、本発明は以下の構成を提供する。(1)本発明の第1の態様は、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理方法において、前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の該黒液に含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波を照射することにより、前記黒液から酸性物質及び揮発性有機物を生成し、かつ分離する工程を有することを特徴とする。また、酸性物質及び揮発性有機物を分離した後、再生した蒸解液中ではカーボンに約0〜18重量%含まれる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体へ電磁波を照射することにより、光エネルギーに対して感受性をもつ原子群のπ電子を電子的励起状態とし、反応活性化を付与し、結晶構造及び光学的特性を変化させる工程を有することを特徴とする。
(2)本発明の第2の態様は、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理方法において、前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の該黒液に含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波を照射することにより、前記黒液から酸性物質及び揮発性有機物を生成し、かつ分離すると同時に直接苛性化を生じさせて、該黒液を蒸解液に転化する工程を有することを特徴とする。また、同時に転化した蒸解液中では前記珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体へ電磁波を照射することにより、光エネルギーに対して感受性をもつ原子群のπ電子を電子的励起状態とし、反応活性化を付与し、結晶構造及び光学的特性を変化させ、共
存する元素と複合体を形成する工程を有することを特徴とする。
(3)本発明の第3の態様は、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理方法において、前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の該黒液に含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の第1の電磁波を照射することにより、前記黒液から酸性物質及び揮発性有機物を生成し、かつ分離する第1工程と、前記第1工程により得られた液体に対し、該液体に含まれる1種または複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の第2の電磁波を照射することにより直接苛性化を生じさせて、該液体を蒸解液に転化する第2工程と、カーボンに約0〜18重量%含まれる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を構成する原子群のπ電子へ、紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の第3の電磁波を照射することにより、電子的励起状態により反応活性化させ、結晶構造及び光学的特性を変化させる第3工程と、前記蒸解液に転化後、前記蒸解液に凝集剤を添加し、前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を凝集沈殿で分離する工程と、分離後の前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体をドレッグス洗浄機で洗浄する工程と洗浄した濾液はスメルト溶解用の弱液及びカーボン溶解用の弱液の用途で使用する工程と洗浄後、前記金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機、無機)に硫酸または硫酸及び弱電位性強誘電体有機化合物(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのいずれか化学物質)を添加し、金属系酸化物を系外に排出し、分離することにより、前記珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給することを特徴とする。
(4)本発明の第4の態様は、上記方法の態様において、前記黒液中の炭酸ソーダが苛性ソーダに転化され、転化後の蒸解液中の苛性ソーダが40〜70g/リットルであることを特徴とする。
(5)本発明の第5の態様は、上記方法の態様において、前記黒液中の硫酸ソーダが硫化ソーダに転化され、転化後の蒸解液中の硫化ソーダが25〜70g/リットルであることを特徴とする。
(6)本発明の第6の態様は、上記方法の態様において、前記黒液中の硫酸ソーダが硫化ソーダと多硫化ソーダとの混合物に転化され、転化後の蒸解液中の硫化ソーダが25〜30g/リットルであり、多硫化ソーダが0.5〜35g/リットルであることを特徴とする。
(7)本発明の第7の態様は上記方法の態様において、前記黒液中の珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体が共存する元素との複合体を形成し、蒸解液中の珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体として、前記黒液に混合したカーボンに対し、0〜18重量%であることを特徴とする。
(8)本発明の第8の態様は、上記方法の態様において、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理方法において、前記黒液を濃縮する濃縮工程と、濃縮された前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の該黒液を、回収ボイラーにて燃焼し、回収ボイラー炉底に形成されるチャーの表面の還元環境にて、珪素酸化物・アルミニウム酸化物が共存する元素との複合体を形成し、硫酸ソーダ(Na2SO4)が硫化ソーダ(Na2S)へ変化し、炭酸ソーダ(Na2CO3)と共にスメルトとしてデゾルバ内に流入し、弱液により希釈することにより水溶液として緑液を得る燃焼工程と、前記緑液に改質後、前記緑液に凝集剤を添加し、金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を凝集沈殿で分離する工程と、分離後の前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体をドレッグス洗浄機で洗浄する工程と、洗浄した濾液はスメルト溶解用の弱液及びカーボン溶解用の弱液の用途で使用する工程と、洗浄後、前記金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機、無機)に硫酸または硫酸及び弱電位性強誘電体有機化合物(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのいずれか化学物質)を添加し、金属系酸化物を系外に排出し、分離することにより、前記珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給する工程と、前記緑液に含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波を照射することにより、前記緑液から酸性物質及び揮発性有機物を生成しかつ分離すると同時に直接苛性化を生じさせて前記緑液を蒸解液に転化する工程とを有することを特徴とする。
(9)本発明の第9の態様は、上記方法の態様において、前記緑液中の炭酸ソーダが苛性ソーダに転化され、転化後の蒸解液中の苛性ソーダが40〜70g/リットルであることを特徴とする。
(10)本発明の第10の態様は、上記方法の態様において、前記電磁波が波長200nm〜900nmであることを特徴とする。
(11)本発明の第11の態様は、上記方法の態様において、前記酸性物質が、二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)、硫化水素(H2S)、水素(H2)、二酸化硫黄(SO2)、三酸化硫黄(SO3)からなる群のうち1種又は複数種を含むことを特徴とする。
(12)本発明の第12の態様は、上記方法の態様において、前記揮発性有機物が、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)及びブタン(C4H10)のアルカン、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、プロパノール(C3H7OH)及びブタノール(C4H9OH)のアルコール並びにこれらの多価アルコールからなる群のうち1種又は複数種を含むことを特徴とする。
(13)本発明の第13の態様は、上記方法の態様において、前記電磁波の照射に先立って照射対象の液体に触媒を添加する工程をさらに有し、該触媒が、カーボン、酸化チタン、ルテニウム、酸化亜鉛、酸化クロム、二酸化マンガン、酸化第二鉄、酸化第三鉄からなる群から選択されることを特徴とする。
(14)本発明の第14の態様は、上記方法の態様において、前記電磁波の照射に先立って照射対象の液体を加熱又は冷却する工程をさらに有することを特徴とする。
(15)本発明の第15の態様は、上記方法の態様において、前記電磁波の照射中に照射対象の液体の圧力を調整することを特徴とする。
(16)本発明の第16の態様は、上記いずれの方法の態様も使用しない場合において、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理装置において、前記黒液を濃縮する濃縮する工程と、濃縮された前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量のカーボンを混合し、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の該黒液を、回収ボイラーにて燃焼し、回収ボイラー炉底に形成されるチャーの表面の還元環境にて、珪素酸化物・アルミニウム酸化物が共存する元素との複合体を形成し、硫酸ソーダ(Na2SO4)が硫化ソーダ(Na2S)へ変化し、炭酸ソーダ(Na2CO3)と共にスメルトとしてデゾルバ内に流入し、弱液により希釈することにより水溶液として緑液を得る燃焼工程と、前記緑液に改質後、前記緑液に凝集剤を添加し、前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を凝集沈殿で分離する工程と、分離後の前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体をドレッグス洗浄機で洗浄する工程と、洗浄した濾液はスメルト溶解用の弱液及びカーボン溶解用の弱液の用途で使用する工程と、洗浄後、前記金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機、無機)に硫酸または硫酸及び弱電位性強誘電体有機化合物(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのいずれか化学物質)を添加し、金属系酸化物を系外に排出し、分離することにより、前記珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給する工程とを有することを特徴とする。
(17)本発明の第17の態様は、上記いずれかの黒液処理方法により生成されることを特徴とする揮発性有機物、金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機、無機)である。
(18)本発明の第18の態様は、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理装置において、前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の黒液に含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の第1の電磁波を照射する電磁波照射装置と、前記電磁波照射装置により照射される電磁波に暴露されつつ前記黒液を流送させる反応装置と、前記電磁波照射により前黒液から生成された、酸性物質及び揮発性有機物を抽気すると共に、前記電磁波の照射により前記黒液が転化した蒸解液及び蒸解液中に存在する珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を回収する脱気装置と前記緑液に改質後、前記緑液に凝集剤を添加し、前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を凝集沈殿で分離するドレッグス処理装置と、分離後の前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を洗浄するドレッグス洗浄機と、洗浄した濾液はスメルト溶解用の弱液及びカーボン溶解用の弱液の用途で使用する弱液供給設備と、洗浄後、前記金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機、無機)に硫酸または硫酸及び弱電位性強誘電体有機化合物(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのいずれか化学物質)を添加する添加設備と、金属系酸化物を系外に排出し、分離することにより、前記珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給する原料貯留設備と、を備えたことを特徴とする。
(19)本発明の第19の態様は、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理装置において、前記黒液を濃縮する濃縮装置と、濃縮された前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加装置と、pH調整後の黒液を回収ボイラーで燃焼し、回収ボイラー炉底に形成されるチャーの表面の還元環境にて、珪素酸化物・アルミニウム酸化物が共存する元素との複合体を形成し、硫酸ソーダ(Na2SO4)が硫化ソーダ(Na2S)へ変化し、炭酸ソーダ(Na2CO3)と共にスメルトとしてデゾルバ内に流入し、弱液によりに希釈することにより水溶液として緑液を得る回収ボ
イラーと、前記緑液に改質後、前記緑液に凝集剤を添加し、前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を凝集沈殿で分離するドレッグス処理装置と、分離後の前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を洗浄するドレッグス洗浄機と、洗浄した濾液はスメルト溶解用の弱液及びカーボン溶解用の弱液の用途で使用する弱液供給設備と、洗浄後、前記金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機、無機)に硫酸または硫酸及び弱電位性強誘電体有機化合物(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのいずれか化学物質)を添加する添加設備と、金属系酸化物を系外に排出し、分離することにより、前記珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給する原料貯留設備と、前記緑液に含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とする紫外線〜赤外線の波長範囲から選択された1又は複数の波長の第1の電磁波を照射する電磁波照射装置と、前記電磁波照射装置により照射される電磁波に暴露されつつ前記緑液を流送させる反応装置と、前記電磁波照射により前緑液から生成された、酸性物質及び揮発性有機物を抽気すると共に、前記電磁波の照射により前記緑液が転化した蒸解液を回収する脱気装置と、を備えたことを特徴とする。
(20)本発明の第20の態様は、上記装置の態様において、前記反応装置が前記脱気装置の内部に設置されていることを特徴とする。
(21)本発明の第21の態様は、上記装置の態様において、前記反応装置内を665Pa〜大気圧の圧力範囲のいずれかの圧力に調整し維持する手段を備えたことを特徴とする。
(22)本発明の第22の態様は、上記いずれかの黒液処理装置を設置した場合と同様に、前記黒液処理装置を使用しない場合において、蒸解液による蒸解処理後に回収された黒液の処理装置において、前記黒液を濃縮する濃縮装置と、濃縮された前記黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加装置と、pH調整後の黒液を回収ボイラーで燃焼し、回収ボイラー炉底に形成されるチャーの表面の還元環境にて、珪素酸化物・アルミニウム酸化物が共存する元素との複合体を形成し、硫酸ソーダ(Na2SO4)が硫化ソーダ(Na2S)へ変化し、炭酸ソーダ(Na2CO3)と共にスメルトとしてデゾルバ内に流入し、弱液によりに希釈することにより水溶液として緑液を得る回収ボイラーと、前記緑液に改質後、前記緑液に凝集剤を添加し、金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を凝集沈殿で分離するドレッグス処理装置と、分離後の前記金属系無機酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を洗浄するドレッグス洗浄機と、洗浄した濾液はスメルト溶解用の弱液及びカーボン溶解用の弱液の用途で使用する弱液供給設備と、洗浄後、前記金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機、無機)に硫酸または硫酸及び弱電位性強誘電体有機化合物(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのいずれか化学物質)を添加する添加設備と、金属系酸化物を系外に排出し、分離することにより、前記珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給する原料貯留設備と、を備えたことを特徴とする。
(23)本発明の第23の態様は発電システムであって、上記いずれかの黒液処理装置と、前記黒液処理装置から抽気された酸性物質と揮発性有機物に対し、燃焼装置最大限の性能を引き出せる量までの補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用し、燃焼させる燃焼装置と、前記燃焼装置から回収される熱により駆動される蒸気タービンとを備えたことを特徴とする。
(24)本発明の第24の態様は発電システムであって、上記いずれかの黒液処理装置と、前記黒液処理装置から抽気された揮発性有機物に対し、燃焼装置最大限の性能を引き出せる量までの補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用することにより駆動されるガスタービンとを備えたことを特徴とする。
(25)本発明の第25の態様は発電システムであって、上記いずれかの黒液処理装置と、前記黒液処理装置から抽気された酸性物質及び揮発性有機物に対し、燃焼装置最大限の性能を引き出せる量までの補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用し、燃焼させる燃焼装置と、前記燃焼装置から回収される熱により駆動される蒸気タービンと、前記黒液処理装置から抽気された揮発性有機物に対し、燃焼装置最大限の性能を引き出せる量までの補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用することにより駆動されるガスタービンとを備え、前記ガスタービンを駆動した揮発性有機物と前記補助燃料とがさらに前記燃焼装置へ供給されて燃焼されて、その回収される熱により前記蒸気タービンを駆動することを特徴とする。
(26)本発明の第26の態様は、上記発電システム態様において、前記燃焼装置又は前記ガスタービンの前段装置として、前記黒液処理装置から抽気された揮発性有機物を冷却液化して、貯蔵する液体燃料貯槽と、前記液体燃料貯槽から得た液体燃料を前記燃焼装置又は前記ガスタービンへ供給すべく気化する気化装置と、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)]を貯蔵する液体燃料貯槽と前記燃焼装置又は前記ガスタービンへ供給すべく気化する気化装置、または、直接サプライメーカからの気化したガス燃料受入用の接続口とをさらに有することを特徴とする。
(27)本発明の第27の態様は発電システムであって、上記いずれかのガスタービン又は燃焼装置又は蒸気タービンの代わりに黒液処理装置と、前記黒液処理装置から抽気された酸性物質及び揮発性有機物に対し、燃焼装置最大限の性能を引き出せる量までの補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用し、燃焼させる発電機付ディーゼルエンジンを備えたことを特徴とする。
(28)本発明の第28の態様は、発電システムであって、上記いずれかの黒液処理装置を設置した場合と同様に、前記黒液処理装置を使用しない場合において、回収ボイラーで黒液を燃焼すると同時に黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までの補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用し、燃焼させる回収ボイラーと、前記回収ボイラーから回収される熱により駆動される蒸気タービンとを備えたことを特徴とする。
(29)本発明の第29の態様は発電システムであって、上記の回収ボイラーにおいて、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]により駆動されるガスタービンとを備えたことを特徴とする。
(30)本発明の第30の態様は発電システムであって、上記いずれかの黒液処理装置を設置した場合と同様に、前記黒液処理装置を使用せず、回収ボイラーで黒液を燃焼すると同時に黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までの補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料] を併用し、燃焼させる回収ボイラーと、前記回収ボイラーから回収される熱により駆動される蒸気タービンと、前記補助燃料により駆動されるガスタービンとを備え、前記ガスタービンを駆動した補助燃料がさらに前記回収ボイラーへ供給されて燃焼されて、その回収される熱により前記蒸気タービンを駆動することを特徴とする。
(31)本発明の第31の態様は、上記発電システムであって、前記回収ボイラー又は前記ガスタービンの前段装置として、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)]を貯蔵する液体燃料貯槽と前記回収ボイラー又は前記ガスタービンへ供給すべく気化する気化装置、または、直接サプライメーカからの気化したガス燃料受入用の接続口とをさらに有することを特徴とする。
(32)本発明の第32の態様は、上記方法の態様において、前記電磁波を、振動数20kHz〜1THzの範囲の1又は複数の振動数を含む超音波に替えたことを特徴とする。
本発明の一態様においては、蒸解後に回収された黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の黒液に含まれる1種又は複数種の成分分子の官能基を電子的励起状態とするような電磁波を照射することで、黒液から酸性物質及び揮発性有機物を生成及び分離する。また、別の態様においては、酸性物質及び揮発性有機物の生成及び分離と同時に黒液を蒸解液に転化する(従来の苛性化工程に対して、本発明独自のこの工程を「直接苛性化工程」と称する)。また、さらに別の態様においては、蒸解液中に存在する珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体へ電磁波を照射することにより、光エネルギーに対して感受性をもつ原子群のπ電子を電子的励起状態し、反応活性化を付与し、結晶構造及び光学的特性を変化させ、共存する元素と複合体を形成する。そのさらに別の態様においては、第1の電磁波の照射により黒液から酸性物質及び揮発性有機物を生成及び分離した後、得られた液体を第2の電磁波の照射により蒸解液に転化すると同時にカーボンに約0〜18重量%含まれる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体に第3の電磁波を照射することにより、光エネルギーに対して感受性をもつ原子群のπ電子を電子的励起状態し、反応活性化を付与し、結晶構造及び光学的特性を変化させ、共存する元素と複合体を形成する3段階の工程を行う。
本発明によれば、成分分子のもつ特定の官能基を選択的に電子的励起状態とする特定の波長の電磁波を照射することにより、その成分分子を反応活性種とする。この結果、その成分分子の化学変化、又は複数の成分分子間の化学反応を誘起することができる。例えば、2種の成分分子の各々の官能基が励起状態となるエネルギーが異なる場合には、それぞれ異なる波長の電磁波を同時に照射することで、双方の成分分子を電子的励起状態とし、反応活性種とすることができる。異なる複数の波長を含む電磁波であっても、各波長の電磁波が特定の官能基にのみ選択的に作用する。これにより、双方の成分分子による化学反応を生じさせることができる。化学反応には、これらの成分分子の結合開裂、異性化、閉環若しくは開環、付加若しくは付加環化、置換、酸化、還元等が含まれる。さらに、電磁波の強度や照射時間を調整すれば、反応活性種の量を容易に調整することができ、化学反応を制御することが可能である。また、層状結晶構造をもつ珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体へは結晶構成を成す原子の不対電子であるπ電子が光エネルギー感受性を持ち、特定の電磁波により電子的励起状態となり、反応活性種となり、共存できる結晶構造内に金属原子を取込んだり、払い出したりする。また、結晶を構成する原子間距離を変化させ、かつ電子配列を協奏的に整列させ、光学特性を変化させる。(一般的には温度を高くすると電子配列が整列され、また、光エネルギーを付与すること、弱電位性強誘電体を層状結晶構造内にインターカレート
することによっても、電子配列が整列する)蒸解液に転化された後、蒸解液の中で珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体は、白色または黒色複合体に一旦変化した後、ドレッグスとして抜き出し、洗浄後、さらに硫酸または硫酸及び弱電位性強誘電体有機化合物で洗浄し、金属系不純物を取り除き、再度過熱して乾燥させると製紙原料として珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を得ることができる。弱電位性強誘電体有機化合物は薬品の種類によりインターカレートされる形態及び特性を付与することができる。(洗浄するまでの状態は燃焼条件、カーボンの組成にも影響される。また、硫酸を使用しなくとも一旦水に溶解し、再度過熱し水分を蒸発させ、乾燥させるだけでもペーパースラッジ炭化物由来の珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体であれば、白色度JIS80°以上に白色化できる場合がある)
直接苛性化工程により、黒液を蒸解液に再生するサイクルにおいて、従来の回収ボイラーによる燃焼工程、並びに消和及び焼成を含む苛性化工程を省くことができる。また、燃焼工程に先立って行っていた黒液の濃縮工程も省くことができる。濃縮を行わない黒液(「希黒液」と称する場合がある)に対して直接苛性化工程を行うため、従来濃縮工程で失われていた水分が、本発明ではそのまま保持される。これにより、蒸解工程で使用する水の補充を少なくすることができる。
本発明によれば、濃縮工程、燃焼工程及び苛性化工程(焼成工程)に必要であった熱源のための蒸気、電力並びに重油などの化石燃料の消費を削減できる。また、燃焼設備からの放熱エネルギーも削減できる。これにより、黒液再生サイクルにおけるエネルギー消費を大幅に低減することができ、よってパルプ製造工程及び製紙工程全体におけるエネルギー消費を節減できる。
本発明によれば、従来は黒液にカーボン及び補助燃料を混合し、処理する概念がなかったが、本発明の図1に示す方法により蒸解工程がトラブルを起しても、安定な状態で回収ボイラーを燃焼し、蒸気並びに電力を供給できる。本発明の図3に示す方法に加え、従来のシステムでも濃縮工程、燃焼工程において、黒液にカーボンを混合することで、濃縮工程に使用される蒸気が低減し、黒液発生量に左右されない安定な状態で、回収ボイラーの能力を最大限に発揮できるようになり、蒸気並びに電力の供給が可能となり、化石燃料ボイラーの化石燃料の消費ロスを減らし、コスト削減も可能である。
本来、回収ボイラーに限らず、一般的な熱回収装置では、設計された燃料の燃焼量及び伝熱管で熱回収するための温度勾配(伝熱管の温度が500度以下になるように、1次、2次、3次、4次節炭器配置を決め、電気集塵機、ガス/エア/ヒータと経由し、排煙脱硫装置入口でガス温度が130〜200℃、煙突放出口でガス温度50〜200℃:排煙脱硫装置で吸収液により冷却されない場合、ガス温度150℃以上で放出されることがある)が設定されており、目的とする熱回収量に見合った熱回収装置伝熱面積により炉内温度、炉内ガス流速、伝熱面積が設定されている。従って、燃料投入量の変動による回収する熱量のバラツキを抑制し、かつ熱回収装置の最大効率運転条件で一定に運転することにより、最適の熱回収量と蒸気発生量を維持し、一定回転による蒸気駆動タービンによる発電が行えるようになる。蒸気駆動タービンも蒸気供給量が変動した場合、発電に寄与しない蒸気ロスが発生することが知られており、熱回収装置の最大効率運転条件を一定に維持できる運転をするため、黒液の過不足分をカーボン及び補助燃料を混合し、補って燃焼できることの意義は省エネルギーの観点から非常に大きい。
本発明によれば、蒸解工程に必要な硫黄成分を直接カーボンから補充することもできる。カーボンとしては数μmの粉末状の石炭が硫黄分に富み適している。特にドレックスとして排出される珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体(有機・無機)は、鉱物系製紙薬品の原料として供給できるため、省資源にも寄与する。製紙業は、世界各地で行われているため、本発明の実施により地球温暖化防止にも貢献できる。
本発明によれば、カーボンとして都市ゴミを炭化させたものを使用する方法がある。都市ゴミを1次処理で2次燃焼ガス及び温度調整用の燃焼ガスを用い、低酸素の状態で温度300度以上(好適にはダイオキシン類を分解できる800度以上から1,100度以下の範囲)で乾留して遊離炭素の状態まで炭化(炭焼き)し、金属及び金属以外の未燃物を取り除いた後に炭化物を粉砕し、カーボンとして使用する。乾留したガスは成分分離塔を有する設備で、資源回収するか若しくは2処理において都市ゴミ及び補助燃料と燃焼し、都市ゴミ型熱回収発電システムとしても使用できる。特に都市ゴミ型熱回収発電システムを導入するほどの規模に満たないゴミ処理設備で、炭化物を資源として活用することができ、有用な資源回収システムと成り得る。都市ゴミの炭化物は従来化石燃料由来とも植物性資源由来のものともことなり、純粋にカーボンを固定し、二酸化炭素を減らすことができる。また、水を分解し、水素を安価に製造できるため、有用な水素製造システムとして使用できる。特に食物由来のバイオマス資源による穀物類のコスト上昇を抑制できるので、本発明と組合せることで、非常に付加価値のあるリサイクル資源として活用できる。
加えて、従来の苛性化工程におけるサイクルで損失があったカルシウム成分の消費を削減できる。また、カルシウム成分の飛散による作業者の健康への影響、配管類のスケーリングも解消できる。また、苛性化工程における焼成用設備の維持管理及び修理の負担が解消される。
黒液に電磁波を照射する処理方法では黒液処理に要する工程数が低減されるため、従来、工程毎に生じていた廃棄物量を低減できる。例えば、従来の回収ボイラーでの燃焼により発生するチャーと称される無機物の高温溶融溜まりを生じないので、従来時折発生していたスメルト爆発の虞を解消できる。また例えば、スメルトから発生する硫化水素(H2S)を処理する設備が不要となる。また、二酸化炭素(CO2)排出量も低減され、処理設備も縮小できる。
本発明においては、光化学反応により酸性物質(好適には、CO2、O2、H2S、H2、SO2、SO3)及び揮発性有機物(好適には、CH4、C2H6、C3H8及びC4H10のアルカン、CH3OH、C3H7OH、C2H5OH及びC4H9OHのアルコール並びにこれらの多価アルコールからなる群のうち1種又は複数種を含む)が生成され、これらのガス成分中には、従来の回収ボイラーで煙煤に含まれていた硫酸ソーダ(Na2SO4)、炭酸ソーダ(Na2CO3)及び塩素イオン(Cl−)などがほとんど含まれていない。ほぼ可燃性ガスのみを抽気することができるため、化石燃料代替品として一般的なガス燃焼装置で燃焼させることができる。また、蒸解後の黒液の代替として、黒液の有機成分に対し、回収ボイラー性能を最大限引き出せる量までカーボンを黒液または水へ混合することができる(以降混合したものを含めて黒液と総称する)、pH調整用アルカリ又は酸薬品(苛性ソーダ、水酸化マグネシウム、硫酸)を添加し、pH調整後の黒液としての処理が可能で、回収ボイラー、石炭ボイラーと言った特殊な燃焼装置が不要で、一般的なガス燃焼装置で燃焼させることができる。これらの酸性物質及び揮発性有機物は従来の回収ボイラーや黒液ガス化設備等でも利用することができる。また、最近では少なくなった亜硫酸ソーダ蒸解法の蒸解工程から発生する黒液についても本発明における黒液処理方法及び黒液処理装置と発電システムは適用できる。
よって、本発明により生成される揮発性有機物をバイオマス燃料として、ガスタービンや蒸気タービンと組み合わせた発電システムを構築することができる。発電システムを構築することで、パルプ製造工程及び製紙工程全体における電力消費を低減することができる。本発明による発電システムの発電効率は、従来の回収ボイラーからの放熱を利用した発電システムと比較して4%程度向上させることができる。また、さらにカーボンや補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用することにより、蒸解工程での黒液発生量に左右されず、ガスタービンや蒸気タービン性能を最大限引き出し、従来は回収ボイラーの他に併用していた化石燃料ボイラーを回収ボイラーに集約し、より効率的に少ない人員で所要の電力を安定して供給できる。
また、本発明により生成される揮発性有機物は、工業用樹脂原料等の化成品原料とすることもできる。
なお、本発明の別の態様においては、従来の回収ボイラーによる燃焼工程後に得られるスメルト水溶液である緑液に対して、上記態様と同様に所定の電磁波を照射することで、酸性物質及び揮発性有機物を発生及び分離させると共に、緑液を蒸解液に転化する(この工程についても、従来の苛性化工程に対して「直接苛性化工程」と称する)。この態様によれば、従来の苛性化工程を省くことができる。また、回収ボイラーで黒液と補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を合わせて燃焼することにより、従来の回収ボイラーと対比して、煤塵/燃焼ガス比を小さくし、回収ボイラーでの伝熱管への煤塵付着を少なくし、伝熱効率向上による熱回収率及び煤塵除去に使用されるスートブロワから噴出される蒸気使用量を減少させることができる。また、本発明により従来の苛性化工程と回収ボイラーから排気ガス合計は従来の苛性化工程を省くことにより大幅に減少できるとしその他の効果については、上記態様と同様である。
従来は、黒液及び緑液の成分変動により、回収ボイラー燃焼状態、消和反応、及び炭酸カルシウム焼成工程の燃焼などが変化し、工程毎の対応に遅れが生じ、エネルギーロスや蒸解液及び炭酸カルシウム(CaCO3)の品質ムラが発生していた。本発明によれば、反応装置前後の黒液性状に対応し、即座に電磁波照射のエネルギー(波長及び出力)を調整することで、光化学反応を制御することができるので、工程を効率的に進行させることができかつ蒸解液の品質も均一化できる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。本発明の第1の実施形態では、蒸解後に回収された黒液の処理方法において、黒液に対し、紫外光、可視光又は赤外光の波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波を照射することにより、黒液に含まれる1種又は複数種の成分分子を電子的励起状態とする。これにより光化学反応を誘起し、黒液中の有機物成分から酸性物質及び揮発性有機物が生成され、分離される。酸性物質及び揮発性有機物の生成及び分離と同時に、電磁波照射による光化学反応により、黒液の蒸解液への転化と同時にカーボンに約0〜18重量%含まれる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体へ電磁波を照射することにより、光エネルギーに対して感受性をもつ原子群のπ電子を電子的励起状態し、反応活性化を付与し、結晶構造及び光学的特性を変化させ、共存する元素と複合体を形成することを行ってもよい。すなわち、黒液中の硫酸ソーダ(Na2SO4)を硫化ソーダ(Na2S)「一部が多硫化ソーダ(Na2S2、Na2S3)の場合もある」に転化し、炭酸ソーダ(Na2CO3)を苛性ソーダ(NaOH)に転化し、白液又は橙液を得て、鉱物系製紙原料となる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を得る。揮発性有機物等の生成及び分離と、蒸解液への転化及びカーボンに
約0〜18重量%含まれる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体のへ電磁波を照射することにより、光エネルギーに対して感受性をもつ原子群のπ電子を電子的励起状態し、反応活性化を付与し、結晶構造及び光学的特性を変化させ、共存する元素と複合体を形成することを同時に行う場合は、これらを同時に生じさせ得る電磁波を照射する。また、酸性物質及び揮発性有機物の生成及び分離と、蒸解液への転化及びカーボンに約0〜18重量%含まれる珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体へ電磁波を照射することにより、光エネルギーに対して感受性をもつ原子群のπ電子を電子的励起状態し、反応活性化を付与し、結晶構造及び光学的特性を変化させ、共存する元素と複合体を形成することは、同時ではなく2〜3段階で行ってもよい。その場合は、各段階において適切な電磁波を照射する。
従来の黒液処理方法は、回収ボイラーにおける熱反応による硫酸ソーダの硫化ソーダへの転化及び消和反応による炭酸ソーダの苛性ソーダへの転化により、白液(蒸解液)を得ていたが、本発明では、熱反応に替えて光反応を利用することを特徴とする。黒液処理に光反応を利用した先例はないと思われる。
化学反応には、反応活性種が必要である。赤外線や及び音波(超音波含む)による熱反応は、分子の振動等の運動の活性化により生じるが、主として紫外光等による光反応は、基底状態の分子軌道中の電子が光エネルギーによりエネルギー準位の高い軌道に励起されることにより生じる。これを電子的励起状態という。吸収された光の振動数をν、プランク定数をhとすると、電子的励起状態は、吸収された光エネルギーhνだけ大きなエネルギーをもつ。電子的励起状態にある分子の反応性は高くなる。
一般の光化学反応に利用される波長領域は、紫外光及び可視光と、赤外光の一部も可能とされている。不対電子を保有する原子(炭素、酸素、窒素、硫黄など)を有する分子構造のものが官能基として機能する傾向にあり、その代表としてカルボキシル基やヒドロキシル基などがあげられ、特定の波長で吸収端を有する。従って、吸光特性試験を行い被照射物質の組成により、官能基毎に単独若しく複数の照射光の波長領域を組みわせて、反応をコントロールすることができる。主として200nm〜700nmの紫外光と可視光に吸収をもつ分子が多い。黒液の成分組成は単純ではなく、木材チップの種類によっても黒液の成分組成はバラツキがある。通常、黒液の成分は、蒸解液から転化した無機物の薬液成分と共に、原料木材チップの樹脂に由来するリグニン、ギ酸(HCOOH)及びギ酸塩等の有機物を含む。成分のバラツキは燃焼装置の燃焼状態を不安定にするため、蒸解液の発生量を調整し、かつ必要量の揮発性有機物を得るため、カーボンや補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を揮発性有機物と共に併用し、燃焼装置で安定して燃焼し、最大限効率よく蒸気、電力を得ることができる。
光反応でよく用いられる水銀灯の輝線スペクトルは254nmであり471kJ/molのエネルギーをもつ。多くの有機物がもっているC−C結合のエネルギーは350kJ/molであり、C−H結合のエネルギーは410kJ/mol、C−O結合のエネルギーは350kJ/molであり、C=C結合エネルギーは610kJ/mol、C=O結合エネルギーは750kJ/molであり、H−H結合エネルギーは、440kJ/molである。化学反応を起こすのに必要な活性化エネルギーは、結合エネルギーよりは小さい。分子に対して外部より電磁波エネルギーを付与することにより、分子は活性化エネルギーを得て反応可能な活性状態となる。このとき、化学反応は反応性に富む物質同士が反応する。黒液において光反応を生じさせるには、紫外光から短波長の可視光が特に有用である。
光反応の本質はラジカル反応である。電子的励起状態にあり不対電子をもつラジカル分子は、エネルギー準位の高い軌道にある電子を他の分子に与えやすいため、強い還元性を有する。また、励起された電子の元の軌道には他の分子から電子を受容しやすいため、酸化性も有する。光反応は、分子の特定の場所のみを選択的に活性化して反応を起こさせるので、燃焼による熱反応に比べて低温でも実行できる。
通常の分子をイオン化する場合はイオン化ポテンシャルより大きなエネルギーが必要であり、これはほとんど紫外光よりも短波長の電磁波に相当する。従って、単独の分子は、紫外光より長波長の光エネルギーによってはイオン化しないが、2つの分子が光エネルギーにより電子的励起状態となりかつ2分子間で電子移動が生じるにより、不対電子をもつラジカルイオンとなる。ラジカルイオンは不安定であり、それ自身が反応するとともに、他の分子を反応させることもできる。
図1は、本発明の第1の実施形態における黒液処理方法の概略的なフロー図である。蒸解液には、苛性ソーダ(NaOH)、硫化ソーダ(Na2S)、多硫化ソーダ(Na2S2、Na2S3)、硫化水素ナトリウム(NaSH)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、有機成分(アルコール類)などが単体又は複合化合物として含まれる。一般的に、苛性ソーダ(NaOH)及び硫化ソーダ(Na2S)「以下、硫化ソーダ(Na2S)と多硫化ソーダ(Na2S2、Na2S3)を特に区別しない場合は、多硫化ソーダ(Na2S2、Na2S3)を含めて硫化ソーダと称する」の蒸解液における濃度は110〜130g/リットルである。
ステップ301の蒸解工程は、従来技術の図9のステップ301と同じである。蒸解工程で得られたクラフトパルプは漂白工程へ送られ、黒液が分離される。黒液には、原料木材の樹脂に由来するリグニン、ギ酸(HCOOH)、ギ酸ソーダ(HCOONa)等を主体とする種々の有機物成分と、蒸解液中の苛性ソーダ(NaOH)及び硫化ソーダ(Na2S)から変化した炭酸ソーダ(Na2CO3)及び硫酸ソーダ(Na2SO4)、並びに酸化鉄(FeO、Fe2O3)、マンガン酸化物等の無機物成分とが含まれる。
リグニンは、生体高分子の一つである。黒液中には、水と共に種々の有機・無機物の低分子及び高分子が含まれており、その成分組成は必ずとも常に一定ではない。黒液の固形分濃度は、16から22重量%程度である。また、黒液中の有機成分に対し、燃焼装置性能を最大限に発揮できる量までカーボン(一般的な墨、都市ゴミの炭化物、木炭、練炭、石墨、石炭、ペーパースラッジ炭化物など)を5mm以下(好適には数μm)の粉末状にし、黒液または水に溶解し、スラリーとして流動性を持たせることができるもの)を補充することができる。以降では黒液にカーボンを配合したものを含め黒液と呼ぶ。本発明では、蒸解工程で得られた黒液を濃縮することなく、また、蒸解工程が停止し、燃焼装置性能を最大限に発揮できる量までカーボンを補充したものを含め、すなわち希黒液として次のステップ100の直接苛性化工程に適用する。
ステップ100では、黒液に対し、電磁波エネルギーを照射する。照射する電磁波、紫外光(波長100〜400nm)、可視光(400〜700nm)、赤外光(0.7〜10.6μm)の波長範囲から選択された1又は複数の波長の電磁波である。レーザー光、連続スペクトル光、揮線スペクトル光のいずれの形態でも利用できる。具体的な照射装置及び反応装置については、後に図5において説明する電磁波の照射により、黒液に含まれる1種または複数種の成分分子を電子的励起状態とする。個々の光化学反応の例については、後に図8A〜図8Dにおいて説明するが、それらの光化学反応を誘起する波長を含む電磁波を照射する。
電磁波照射にあたって、特に、硫酸ソーダ(Na2SO4)を硫化ソーダ(Na2S)へ転化する反応、炭酸ソーダ(Na2CO3)を苛性ソーダ(NaOH)へ転化する反応、並びに種々の分子量の有機物を酸性物質及び揮発性有機物へ分解する反応を標的とする。電磁波波長は、紫外光200nm〜赤外光900nmの範囲が好適である。光エネルギー(フォトンのエネルギー)としては、ほぼ1,000〜100kJ/molの範囲に相当し、この範囲の光エネルギーにより電子的励起状態となる分子に対して有効である。さらに好適には、電磁波波長を紫外光200nm〜可視光700nmの範囲とする。
電磁波照射においては、波長以外に、照射時間、光強度(照射出力)を調整することにより、ラジカル反応を制御しながら行うことが好ましい。また、照射対象である黒液の流量も調整し、十分な反応が生じるようにする。
直接苛性化工程100における所定の光化学反応により、黒液から液体成分と気体成分が生じる。液体成分は、硫化ソーダ(Na2S)及び苛性ソーダ(NaOH)並びにその他の無機物を含む水溶液の形態の白液である。本発明では、一工程のみで黒液から白液を得ることができる。この工程は、従来の燃焼工程に比べれば遙かに低温で実行できる工程である。白液は、蒸解液として再び蒸解工程で利用される。こうして黒液から蒸解液が再生される。後述する実施例においては、電磁波照射により黒液中の硫酸ソーダが硫化ソーダに転化した場合、転化後の白液すなわち蒸解液中の硫化ソーダ(Na2S)の濃度は、25〜70g/リットルである。
なお、直接苛性化工程100において、硫化ソーダの一部が多硫化ソーダ(Na2S2、Na2S3)に置換されている橙液が得られる場合についても、同様である。橙液の場合、硫化ソーダ(Na2S)は25〜30g/リットル、多硫化ソーダ(Na2S2、Na2S3)は0.5〜35g/リットルである。
また、電磁波照射により黒液中の炭酸ソーダ(Na2CO3)が苛性ソーダ(NaOH)に転化し、転化後の蒸解液中の苛性ソーダ(NaOH)が40〜70g/リットルである。
直接苛性化工程100で得られる気体成分は、典型的な物質として、低分子の酸性物質二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)、硫化水素(H2S)、水素(H2)、二酸化硫黄(SO2)、三酸化硫黄(SO3)と、揮発性有機物メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)及びブタン(C4H10)のアルカン、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、プロパノール(C3H7OH)及びブタノール(C4H9OH)のアルコール並びにこれらの多価アルコールとがある。これらの酸性物質のうち1種又は複数種、並びに、これらの揮発性有機物のうち1種又は複数種が含まれる。これらの酸性物質及び揮発性有機物は、上記液体成分と気化温度(沸点)の差を用いて、容易に分離することが可能である。また、酸性物質がガス化しやすい特徴を利用し、酸性物質と塩基性物質を分離する方法を苛性化反応に適用した。液体成分と気体成分の分離に用いる脱気装置については、後に図6において説明する。
分離された酸性物質及び揮発性有機物は、一般的な物質であるのでその利用方法は限定されず多様である。これらの気体のほとんどは、一般的な可燃性ガスであるので、汎用的な燃焼装置で燃焼させることができる。後に図7において揮発性有機物利用工程400を例示する。
従来の黒液処理方法では、炭酸ソーダ(Na2CO3)中の炭素原子を消和反応で炭酸カルシ
ウム(CaCO3)とした後、生石灰(CaO)に戻す焼成工程で二酸化炭素(CO2)として排出していたが、本発明では、直接苛性化工程により、直接二酸化炭素(CO2)ガスとして排出される。また、塩素イオン(Cl−)は、従来は設備を腐食する要素であったが、本発明においては、塩素ガス(Cl2)として気体成分に含まれるので、設備の耐食性に及ぼす影響を低減できる。液体成分中に含まれる不溶性不純物である金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体は、白液又は橙液に凝集剤を添加し、ドレッグスとして分離され、系外に出される。系外に出された金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物(無機・有機)複合体はドレッグス洗浄装置により洗浄され、濾液は弱液としてカーボンの溶解用に使用されるほか、回収ボイラーで発生するスメルトの希釈液として使用される。金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物(無機・有機)複合体は金属系酸化物を硫酸、または、硫酸と弱電性強誘電体有機物(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムなどの他にヒドロキシル基、カルボシル基、アルデヒド基と言った分子構造を保有するインターカレートされる同類の薬品群のいずれか)を添加し、除去した後、珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給できる。鉱物系製紙原料としての加工方法は特許文献5に記される。また、金属イオンはキレート剤を添加することにより封鎖され、または珪素酸化物・アルミニウム酸化物(無機・有機)複合体と共に封鎖され、固定化させ、土壌改良剤や、路盤材として使用することもできる。
なお、本発明の別の実施形態として、電磁波照射と組み合わせて超音波照射を行ってもよい。その場合の超音波は、振動数は20kHz〜1THzのうち1又は複数の振動数を含むものである。電磁波照射と同じく分子の電子的励起状態を生じさせるエネルギーを付与できればよい。超音波の振動数はラジオ波程度であり、その振動エネルギーが直接、活性種を励起させるわけではないが、液体中での有機化学反応を促進させることが知られている。また、電磁波照射と超音波照射を併用してもよい。これにより、さらに反応促進を図ることが可能である。
なお、図1に示した循環再生系で損失する硫黄分は、従来と同様に、黒液の処理前に黒液に対して硫酸ソーダ(Na2SO4)及び/又は亜硫酸ソーダ(Na2SO3)を混合させることで補充できる。また、白液又は橙液中に硫化水素ナトリウム(NaSH)を補充してもよい。また、従来の苛性化工程ではカルシウム成分の補充を必要としたが、本発明においては、カルシウム成分の補充は不要となる。
図2は、図1のフロー図に示した黒液の直接苛性化工程100の装置構成の一例を模式的に示した図である。図1の蒸解工程301から送られた黒液は、温度調整器101において適切な温度に調整される。加熱の場合は加温蒸気が用いられ、冷却の場合は清水が用いられる。ドレンは適宜処理される。具体例として、間接式熱交換器を用いることができ、駆動蒸気若しくは温水を使用して加温し、冷却水により冷却する。別の例として、黒液に対して直接、蒸気若しくは温水又は冷却水を注入して温度調整することもできる。
任意であるが、黒液の濃度調整を行ってもよい。また、カーボンをカーボン混合槽若しくはカーボン溶解後インラインミキサーで黒液と混合することにより、黒液中の揮発性有機物の原料及び反応促進剤として増やしてもよい。本発明は、基本的には蒸解工程から得た黒液のまま直接苛性化を行うことができるが、黒液の成分組成は必ずしも安定していないため、必要に応じて希釈装置102により濃度を低下させ、また濃縮装置103により濃度を上昇させる。従来と同程度の濃縮を行っても、本発明の作用効果は同様に得られる。基本的には、電磁波照射による光反応にもっとも適した濃度に設定する(実験により特定可能)。濃縮装置としては、バキュームエバポレータなどを使用することができる。図10にカーボンとして都市ゴミの炭化物をゴミ処理設備から製造し、黒液処理工程に供給する例を示す。
また、任意であるが、電磁波の照射に先立って照射対象の液体に触媒を添加する工程を設けてもよい。触媒としては、カーボン、酸化チタン、ルテニウム、酸化亜鉛、酸化クロム、二酸化マンガン、酸化第二鉄、酸化第三鉄等があり、これらの中から適宜選択される。触媒により反応の活性化エネルギーを小さくできる。
さらにまた、任意であるが、電磁波の照射に先立って照射対象の液体を加熱又は冷却する工程を設けてもよい。本発明では光化学反応を利用するため、従来の燃焼反応に比べれば遙かに低温で反応が行われるが、より効率的に反応させるために適度な温度に調整してもよい。
その後、反応装置104に黒液を送り込み、電磁波発生装置105により発生させた電磁波を黒液に照射する。(電磁波に替えて超音波を用いる場合は、超音波発生装置106により発生させた超音波を黒液に照射する。)反応装置104内で光化学反応が行われ、硫酸ソーダ(Na2SO4)が硫化ソーダ(Na2S)へ、炭酸ソーダ(Na2CO3)が苛性ソーダ(NaOH)へ転化し、さらに酸性物質、揮発性有機物及び蒸解液中の珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体から共存する元素との複合体が生成される。
任意であるが、電磁波の照射中に照射対象の液体の圧力を制御してもよい。より効率的な反応を行わせる圧力に調整するためである。圧力調整範囲は、665Pa〜大気圧が好適である。
その後、脱気装置107において液体成分と気体成分を分離する。なお、任意であるが、2段目の反応装置108及び脱気装置109を設け、電磁波照射(又は超音波照射)と脱気を繰り返してもよい。脱気(抽気)装置は、内部の圧力・温度を制御することができ、液体成分中への二酸化炭素(CO2)及び有機物の溶存量を管理し、負圧状態でラジカル自動連鎖反応を促進させる。これにより、できるだけ多くの酸性物質及び揮発性有機物を気体として分離させる。脱気装置内の圧力調整範囲も、665Pa〜大気圧が好適である。また、脱気装置は、次工程のドレッグス沈降槽(白液回収槽)111内の液面でシールさせたレグ配管を有する。これにより、負圧を発生させるため、ドレッグス沈降槽(白液回収槽)111の液面よりも10.3m以上の高さに設置することが好適である。
反応装置104と脱気装置107は、別個の装置として設けてもよく、一体化した装置として設けてもよい。黒液中の有機物を、酸性物質及び揮発性有機物に転化する反応系と、苛性化反応により無機物を再生させる反応系と珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体から共存する元素との複合体を生成する系を別々にする場合は、反応装置と脱気装置を別個の装置として設けることが効果的である。
脱気装置107により分離された液体成分は、ドレッグス沈降槽(白液回収槽)111において不溶性不純物の金属系酸化物及び珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体をドレッグスとして分離するため、反応液に凝集剤を加え沈降し、系外に放出される。沈降したドレッグスは、ドレックス洗浄機で洗浄され、濾液を回収した後、硫酸又は硫酸と弱電位性強誘電体有機物(尿素、二酸化チオ尿素、メタノール、エタノール、アセトン、クエン酸、炭酸水素ナトリウムのいずれかの薬品)を添加し、金属系酸化物を分離した後、珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を鉱物系製紙原料として供給することができる。または、適宜場外処理される。ドレッグスが除去された蒸解液(白液または橙液)は、蒸解工程301へ戻される。
また、任意であるが、白液の一部を白液酸化装置113へ送り、酸化白液とし、パルプ製造工程に含まれる酸素脱リグニン工程で利用してもよい。
一方、気体成分として分離された酸性物質及び揮発性有機物は、揮発性有機物分離装置110へ送られ、冷却水により沸点の差を利用して凝縮され、アルコールと可燃ガスに分離される。それぞれ、別々の揮発性有機物利用工程400へ送られ、利用される。二酸化炭素(CO2)は可燃性ガスと一緒にボイラーに送られ、排ガスとして排出される。ドレンは適宜回収されボイラーで燃焼若しくは排水処理される。例えば、アルコールは、燃料用、薬品資材用など用途別に純度を調整して利用する。
図3は、本発明の第2の実施形態における黒液処理方法の概略的なフロー図である。ステップ301の蒸解工程、ステップ302の濃縮工程、ステップ303の回収ボイラーによる燃焼工程、及びステップ304のドレッグス沈降工程は、従来技術の図9のステップ301と同じであるので説明を省略する。
燃焼工程により黒液中の有機成分に対し、燃焼装置の性能を最大限に発揮できる量までカーボンを混合した黒液を燃焼し、回収ボイラー炉底に形成されるチャーの表面の還元環境にて、珪素酸化物・アルミニウム酸化物が共存する元素との複合体を形成し、硫酸ソーダ(Na2SO4)が硫化ソーダ(Na2S)へ変化し、炭酸ソーダ(Na2CO3)と共にスメルトとしてデゾルバ内に流入し、弱液により希釈した、スメルト水溶液としての緑液は、硫化ソーダ(Na2S)と炭酸ソーダ(Na2CO3)を含んでいる。従来は、この後に消和反応を含む苛性化工程を行って炭酸ソーダ(Na2CO3)を苛性ソーダ(NaOH)に転化していた。本発明では、ステップ200において、緑液に対し電磁波エネルギーを照射する直接苛性化工程を行う。この電磁波照射による光化学反応については、対象とする液体が黒液と緑液で異なるだけで、上述の第1の実施形態と同様に行うことができる(電磁波に替えて超音波を適用する場合も同様である)。従って、上述の第1の実施形態の直接苛性化工程について述べた説明は、第2の実施形態の直接苛性化工程にも該当する。
但し、既に燃焼工程303により硫酸ソーダ(Na2SO4)は硫化ソーダ(Na2S)に転化されているので、電磁波照射にあたっては、炭酸ソーダ(Na2CO3)を苛性ソーダ(NaOH)へ転化する反応、並びに、種々の分子量の有機物を揮発性有機物へ分解する反応を標的とする。直接苛性化工程後の処理についても、第1の実施形態と同様である。
図4は、図3のフロー図に示した緑液の直接苛性化工程200の装置構成の一例を模式的に示した図である。図3のドレッグス沈降工程304においてドレッグスを除去された緑液は、温度調節器203において適切な温度に調整される。加熱の場合は加温蒸気が用いられ、冷却の場合は清水が用いられる。ドレンは製造工程へ回収される。
その後、反応装置204に緑液を送り込み、電磁波発生装置205により発生させた電磁波を黒液に照射する。(電磁波に替えて超音波を用いる場合は、超音波発生装置206により発生させた超音波を黒液に照射する。)反応装置204内で光化学反応が行われ、炭酸ソーダが苛性ソーダへ転化し、さらに酸性物質及び揮発性有機物が生成される。
その後、脱気装置207において液体成分と気体成分を分離する。脱気装置207により分離された液体成分は、蒸解工程301へ戻される。
また、任意であるが、白液の一部を白液酸化装置209へ送り、酸化白液とし、パルプ製造工程に含まれる酸素脱リグニン工程で利用してもよい。
一方、気体成分として分離された酸性物質及び揮発性有機物を利用する場合は、揮発性有機物分離装置210へ送られ、冷却水により沸点の差を利用して凝縮され、アルコールと可燃ガスに分離される。それぞれ、別々の揮発性有機物利用工程400へ送られ、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス
燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用することにより、利用される。二酸化炭素(CO2)は可燃性ガスと一緒にボイラーに送られ、排ガスとして排出される。ドレンは適宜ボイラーで燃焼若しくは排水処理される。なお、緑液に対して本発明を適用する場合は、既に燃焼工程を経ているため、黒液に対して本発明を適用する場合に比べて、揮発性有機物の回収量は少なくなる。従って、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用する場合を含め、揮発性有機物の処理装置は、任意に設けられるので破線で囲んで示している。
図5は、図2又は図4に示した反応装置の実施例を概略的に示す側面(一部断面を含む)図である。(a)〜(e)の実施例で用いた電磁波発生装置1は、レーザーを想定している。紫外域ではエキシマレーザー、可視域ではアルゴンレーザー、半導体レーザー又はルビーレーザー、赤外域ではYAGレーザー又はCO2レーザーなどがある。レーザーを用いる場合の反応容器は、入射部である照射窓が透光性を有する材料で形成され、内壁にはレーザーを反射するミラー膜などを形成する。レーザー照射装置の場合、複数のレーザー光源を備えることが好適である。また、異なる波長の光を発生する複数のレーザー光源を組み合わせてもよい。
また、レーザー以外の光源としては、定常光を照射するランプがある。紫外域では高圧又は低圧の水銀ランプ又は重水素ランプ、紫外域〜可視域では金属ハライドランプ、可視光〜赤外域では希ガスショートアークランプ又はハロゲンランプなどがある。これらのランプ光源は、反応容器の内部に設置しても外部に設置してもよい。このようなランプは、光化学反応において一般的に用いられている。
図5(a)では、電磁波発生装置1と曲部をもつ筒状の反応容器2aとを組み合わせている。反応容器2aの一端から黒液10が流入し、他端から照射後の液体20が流出する(以下同様)。反応容器2aの曲部において電磁波を照射する。(b)では、角筒状の反応容器2bの一側面から斜めに電磁波を照射している。(c)では、曲部をもつ筒状の反応容器2cの内部に内筒が設けられと複数のプリズム2c1、2c2が進行方向に配置され、レーザー光を拡散する。(d)では、筒状の反応容器2dの一端にレンズ2d1を設けて入射したレーザー光を拡散させ、筒内壁で反射を繰り返させ、他端に設けたレンズ2d2で集光している。(e)では、環状反応容器2e内をレーザー及び黒液が周回する。
なお、超音波を照射する場合には、反応装置として超音波振動子を備えた超音波ソノリアクターを用いる。
図6(a)(b)は、図2又は図4に示した脱気装置(反応装置と一体化)の実施例を概略的に示す側断面図である。図6では、図5(a)に示した反応装置と一体化した脱気装置の例を示す。図示の構成は一例であり、脱気装置容量及び反応装置数量は、実際に処理する量により決定する。(a)では、筒体の脱気装置3の上面に4つの反応装置が取り付けられている。各反応装置の流出側の管部が、脱気装置3の内部に挿入され、中央付近で流出口が下向きに開口している。流出口の直下には、ガス分散揮発板3aが水平に設置されている。反応装置から流出した液体は、メッシュ状のガス分散揮発板3aを通過することで揮発性有機物30が気化し、上面の抽気口3bから抽気される。一方、白液20が滴下し、脱気装置3の下部に溜まる。一定の時間滞留できるように、液溜りを形成する堰板3dを取出口3cの手前に設ける。白液20は、下面の取出口3cから流出する。こうして、反応後の液体から酸性物質及び揮発性有機物が分離され、蒸解液としての白液が得られる。
図6(b)では、筒体の脱気装置3の下面に4つの反応装置が取り付けられている。各反応装置の流出側の管部が、脱気装置3の内部に挿入され、上面付近で流出口が上向きに開口している。反応装置から流出した液体は、上面内壁に衝突して落下する。この衝突により揮発性有機物30が気化し、上面の抽気口3bから抽気される。一方、白液20が滴下し、脱気装置3の下部に溜まる。一定の時間滞留できるように、液溜りを形成する堰板3dを取出口3cの手前に設ける。白液20は、下面の取出口3cから流出する。こうして、反応後の液体から酸性物質及び揮発性有機物が分離され、蒸解液としての白液が得られる。
図6(a)(b)には図示しないが、上述のように、脱気装置3の内部を適切な温度及び圧力に調整する温度調節手段及び圧力調節手段を設けることが好適である。
図7A、図7Bは、本発明により得られる揮発性有機物の利用工程400の構成例を模式的に示す図である。本構成例は、可燃ガスの発電システムへの利用例である。図2又は図4に示した揮発性有機物分離装置で分離された可燃ガスを利用する第1の経路は、直接、燃焼装置401へ送る経路である。また、燃焼量調整のため、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用することができる。この燃焼装置401は、汎用的な燃焼装置を用いることができる。
なお、ここでは、発電用の燃焼装置としたが、可燃ガスを自動車燃料として利用する場合には自動車に搭載された燃焼装置に適用できる。その他、種々の暖房設備や給湯設備用の燃焼装置にも適用できる。
燃焼装置401における燃焼熱により蒸気タービン402を駆動し、発電を行う。生成された電力は、種々の設備に供給される。燃焼装置401の排ガスは、排煙/脱硫装置403により処理されて放出される。
可燃ガスの第2の経路は、気体燃料貯槽404に一時的に貯蔵する経路である。気体燃料貯槽404に貯蔵された可燃ガスは、必要に応じて燃焼装置401に送られ、燃焼される。また、燃焼量調整のため、補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]は燃焼装置401に送られ、燃焼される。その熱を用いて蒸気タービン402による発電を行う。また、可燃ガス及び補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]は、必要に応じてガスタービン408に送られ、発電を行う。
可燃ガスの第3の経路は、可燃ガスを凝縮装置405で冷却して液化し、液体燃料貯槽406に一時的に貯蔵する経路である。液体燃料貯槽406に貯蔵された液体燃料は、必要に応じて気化装置407に送られて再び可燃ガスとなり、ガスタービン408で発電を行う。また、可燃ガスに補助燃料[LPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料]を併用し、ガスタービン408を駆動した可燃ガス(補助燃料と混合した状態)は、その後、燃焼装置401へ送られて燃焼される。
なお、蒸気タービン及びガスタービンは、車両、船舶、航空機等のエンジンとしても用いられており、本発明により得られた可燃ガスはこれらの燃料としても利用できる。
また、本発明の黒液処理装置を、従来の黒液処理装置と併用する場合には、可燃ガス及びLPG、LNG、バイオマス燃料(エタノール、メタノール、バイオディーゼル)を気化したガス燃料を回収ボイラーの補助燃料として利用することもできる。図7Aの実施例フロー示す。また、本発明を踏まえ、カーボン及び補助燃料を使用し、従来の回収ボイラーを効率化させるために適用した例を図7Bに実施例に示す。説明は直接苛性化で行われる回収ボイラーの黒液処理方法と同じなので、説明を省略する。
図8A〜図8Bは、本発明による直接苛性化工程において生じていると考えられる光化学反応の幾つかを模式的に示した図である。反応は直線矢印の方向に進み、「*」は電子的励起状態にある励起種を示し、「・」はラジカルを示す。hνで示す波矢印は、光エネルギーを吸収する部位を示す。破線囲みは、反応に直接関係する原子群を示す。
直接苛性化工程での光化学反応に関与する反応活性種としては、励起種、ラジカル、ラジカルイオン又はイオン等多様であり、具体例としては*C、*CO2、*CO−、*CO3 2−、*CH、*OH−、*O2H2、*HO2 −、*H+、*H2、*SH−、SO2 −、*NO−、*NH2 −等がある。これらは、黒液又は緑液に含まれている成分分子に由来する。黒液及び緑液とも、成分分子の種類は多様であるので、光化学反応の機構も複雑であるが、以下に典型例のみを示す。
図8Aにおいて、(a)はギ酸と水から開始されるエタノール生成過程例を、(b)はギ酸と水から開始されるメタノール生成過程を、(c)は(b)で生成されたメタノールから開始されるメタン生成過程をそれぞれ示す。反応初期には、(a)(b)に示すように、カルボニル基(CO)やヒドロキシル基(OH)等の官能基に光エネルギーが吸収される。その他の官能基としては、=O、=S、−NH2、=N2等がある。従って、これらの官能基による吸収を生じる波長の電磁波を照射することが有効である。
例えば、2種の成分分子の各々の官能基(例えば、ヒドロキシル基とカルボニル基)が励起状態となるエネルギーが異なる場合には、それぞれ異なる波長の電磁波ν、ν’を同時に照射することで、双方の成分分子を電子的励起状態とし、反応活性種とすることができる。異なる複数の波長を含む電磁波であっても、各波長の電磁波が特定の官能基にのみ選択的に作用する。これにより、双方の成分分子による化学反応を生じさせることができる。化学反応には、これらの成分分子の結合開裂、異性化、閉環若しくは開環、付加若しくは付加環化、置換、酸化、還元等が含まれる。さらに、電磁波の強度や照射時間を調整すれば、反応活性種の量を容易に調整することができ、化学反応を制御することが可能である。
図8Bにおいて、(a)はギ酸(HCOOH)の分解過程を示している。ギ酸(HCOOH)を含むカルボン酸(−COOH)及びその誘導体の吸収は、紫外域又は近紫外域が主である。(a)の結合開裂では、脱COが生じる。(b)は、炭酸ソーダ(Na2CO3)の分解過程を示している。(c)は、硫酸ソーダ(Na2SO4)と(a)(b)で生成された*COとの反応により、硫化水素ナトリウム(NaSH)と苛性ソーダ(NaOH)とCO2を生成する過程を示している。(d)は、硫酸ソーダ(Na2SO4)と(a)(b)で生成された*COとの反応により、硫化ソーダ(Na2S)とCO2を生成する過程を示している。(e)は、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)と(a)(b)で生成された*COとの反応により、硫化ソーダ(Na2S)とCO2を生成する過程を示している。
図8Cは、過反応自己消費過程の例であり、(a)はギ酸(HCOOH)の分解過程を、(b)はメタン(CH4)生成過程を示している。(c)は、(a)(b)で生成された励起種とラジカルとの反応により、CO2と水(H2O)を生成する過程を示している。(d)は、(a)(b)で生成された励起種とラジカルとの反応により、O2と水を生成する過程を示している。このような、自己消費過程によって、その他に二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)、硫化水素(H2S)、水素(H2)、二酸化硫黄(SO2)
、三酸化硫黄(SO3)等がガスとして発生する。
図8Dは、カーボン(C)と水(H2O)の加水分解により、*CO、*CO2とメタン(CH4)、メタノール(CH3OH)、エタノール(CH5OH)、水素(H2)生成過程の例であり、(a)は*CO、*CO2生成によるカーボンの分解過程とエタノール(CH5OH)生成過程を、(b)は*CO、*CO2生成によるカーボン(C)の分解過程とメタノール(CH3OH)、水素(H2)生成過程を示している。(c)は、*CO、*CO2生成によるカーボン(C)の分解過程とメタン生成過程を示している。(d)は*CO、*CO2生成による水(H2O)の分解により、水素(H2)生成過程を示している。(a)(b)(c)(d)いずれの反応も*COが反応活性種となり、ラジカル反応により、メタン(CH4)、メタノール(CH3OH)、エタノール(CH5OH)、水素(H2)生成反応が連続的に促進されることを示している。
図1及び図2に示した第1の実施形態を適用した黒液処理方法を実施し、電磁波照射前の黒液(希黒液)組成と、電磁波照射後の白液すなわち蒸解液の組成を比較した。尚、実施例に限らず、流量及び成分比率に基づいて成立する。<試験条件> ・試料の流量:希黒液102m3/h ・試料中の固形分:17.5重量% ・紫外光波長:280nm、赤外光波長:5.7μm ・温度:80℃ ・圧力:665Pa<結果>表1に処理前の希黒液の組成を、表2に処理後の再生された蒸解液の組成を示す。
試験結果と、希黒液の成分の不安定さ及び処理条件の違いを考慮すると、本発明により処理された再生された蒸解液においては、硫化ソーダのうちNa2Sが25〜35g/リットル、Na2S2が0.5〜35g/リットルの範囲となることが予想される。同様に、蒸解液中の苛性ソーダは40〜70g/リットルの範囲となることが予想される。これらの組成範囲であれば、蒸解液を再利用することができる。
処理により生成された揮発性有機物は、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)等のアルコール類及び酸化物等であった。回収された揮発性有機物を黒液処理装置の燃料として利用することにより、従来の黒液処理装置に対し約10%以上のエネルギー消費削減を実現できた。蒸解液中の苛性ソーダ(NaOH)を増量することでさらに改善が期待できる。
太陽光を使用した簡単なテーブルテストにより、第1の実施形態を適用した黒液処理方法及び第2の実施形態を適用した黒液処理方法を簡易な方法で実際に実証が行える。発生した揮発性ガスの物性については、サンプル収集し分析器により確認できる。また、珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体の鉱物系製紙原料としては実際の鉱物系製紙原料と対比することで同等品か簡易な判別ができる。
φ100の凸レンズを使用し、太陽光を集光し、黒液に照射し、揮発性有機物が発生する様子を観察できる。<試験条件>・晴れた日10:00〜14:00を選ぶ。・60〜80℃の黒液をシャーレに入れ、シャーレ内を液で満たし、透明シートで蓋をする。・φ100の凸レンズを使用し、太陽光を黒液に照射し、発生するガスを気泡として、透明シート溶媒側に気泡として蓄積させる。また、発生する気泡は気泡として残留するものと溶媒に吸収される気泡(ガス)の特徴があり、揮発したガスを冷却し、分離回収できることが確認できる。・吸引機(注射器)で表面の気泡(ガス)サンプルを捕集し、分析器で分析する。・シャーレ内部に蓄積されたガスを細いパイプで誘引し、火を付けると一瞬激しく燃えることが確認できる。(可燃ガス発生の証明)
φ100の凸レンズを使用し、太陽光を集光し、試料に照射し、直接苛性化が行われる様子を観察できる。<試験条件>・晴れた日10:00〜14:00を選ぶ。・60〜80℃の炭酸ソーダ水溶液をシャーレに入れ、溶解限度以上に炭酸ソーダを溶解し、シャーレ内を水溶液で満たし、透明シートで蓋をする。・凸レンズを使用し、太陽光を直接炭酸ソーダ結晶に照射する。・2〜3分で、気泡が発生する。溶液に回流が発生し、反応が盛んに行われていることが確認できる。・吸引機(注射器)で表面の気泡(ガス)サンプルを捕集し、分析器で分析する。・同じ条件で溶媒である水に太陽光を照射しても気泡が発生しないので、炭酸ソーダ(Na2CO3)自体が反応していたことが判定できる。
テーブルテストにより、第1の実施形態を適用した黒液処理方法において、カーボン(数μmのペーパースラッジ炭化物の粉末)を黒液に混合した上で、φ100のレンズで太陽光を集光し、試料に照射し、珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を乾燥させ、鉱物系製紙原料が得られる様子を観察できる。<試験条件>・晴れた日10:00〜14:00を選ぶ。・60〜80℃のカーボン(数μmのペーパースラッジ炭化物の粉末)を混ぜた黒液をシャーレに入れる。(太陽光では反応を完成するためには時間が必要)・φ100のレンズで太陽光を集光し、試料に照射する。体積が変化し、白色化する様子が観察できる。・反応が終了後、可溶性成分を取り除き、残留した珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を洗浄し、クエン酸で洗浄後炭酸水素ナトリウムを加え、十分時間を置いてから、珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を乾燥させる。(クエン酸を使用し、硫酸洗浄を省略)・得た物質を実際に使用される鉱物系製紙原料サンプルと対比する。鉱物系製紙原料の用途では、原料の性状によりさらに加工を有する場合がある。
第2の実施形態を適用した黒液処理方法において、カーボン(数μmのペーパースラッジ炭化物の粉末)を黒液に混合した上で燃焼し、珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を乾燥させ、鉱物系製紙原料が得られる様子を観察できる。<試験条件>・60〜80℃のカーボン(数μmのペーパースラッジ炭化物の粉末)を混ぜた黒液をるつぼに入れる。・るつぼを900〜1,200℃で燃焼し、一旦温度を下げ、弱液を入れる。(黒色になる)・可溶性成分を取り除き、残留した珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体を洗浄し、クエン酸で洗浄後炭酸水素ナトリウムを加え、十分時間を置く。(クエン酸を使用し、硫酸洗浄を省略)・珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体だけを取り出し、再度るつぼに入れ、水分が蒸発して直ぐの120度程度まで加熱し、乾燥させ、鉱物系製紙原料として得たものを、実際に使用される鉱物系製紙原料サンプルと対比する。加熱しすぎると珪素酸化物・アルミニウム酸化物複合体にインターカレートした有機物が変質し、黒色に変化する。
黒液処理方法において、テーブルテストにより炭化物(墨)を加えpH条件を変えた水溶液にφ100の凸レンズを使用し、太陽光を集光し、光化学反応(酸、カーボン、水の分解反応による水素発生)が観察できる。<試験条件>・晴れた日10:00〜14:00を選ぶ。・シャーレ内を試料の水溶液で満たし、透明シートで蓋をする。・φ100のレンズで太陽光を集光し、光化学反応を起し、発生するガスを透明シート水溶液側に捕集する。・pH7未満では炭化物及びpH調整用の酸(クエン酸)が光に感応し、発生したガスを燃焼させたところは一瞬激しく燃焼する。盛んに水素が発生したことが確認できる。(酸性では反応は盛んだが、pH調整用の薬液まで感応し、分解する) ・pH7以上では、炭化物が光に感応し、発生したガスを燃焼させたところは一瞬激しく燃焼する。水素が発生したことが確認できる。・炭化物以外の物質(紙、木片)と対比したところ、炭化物の光感受性は対比物質の6倍以上であることがガスの発生量で明らかにできる。また、炭化物を対比物質に接触させ光を感応させると、光化学反応が促進される状況が観察できる。
本発明の第1の実施形態における黒液処理方法の概略的なフロー図である。
図1のフロー図に示した黒液の直接苛性化工程の装置構成の一例を模式的に示した図である。
本発明の第2の実施形態における黒液処理方法の概略的なフロー図である。
図3のフロー図に示した緑液の直接苛性化工程の装置構成の一例を模式的に示した図である。
図2又は図4に示した反応装置の実施例を概略的に示す側面(一部断面を含む)図である。
図2又は図4に示した脱気装置(反応装置と一体化)の実施例を概略的に示す側断面図である。
本発明により得られる揮発性有機物の利用工程400Aの構成例を模式的に示す図である。
本発明により得られる揮発性有機物の利用工程400Bの構成例を模式的に示す図である。
本発明による直接苛性化工程において生じていると考えられる光化学反応の幾つかを模式的に示した図である。
本発明による直接苛性化工程において生じていると考えられる光化学反応の幾つかを模式的に示した図である。
本発明による直接苛性化工程において生じていると考えられる光化学反応の幾つかを模式的に示した図である。
本発明による直接苛性化工程において生じていると考えられる光化学反応の幾つかを模式的に示した図である。
黒液処理方法の従来例を概略的に示したフロー図である。
本発明による都市ゴミの炭化物製造工程と黒液に混合して使用する例を模式的に示したフロー図である。
1 電磁波発生装置 2 a〜2e 反応容器 3 脱気装置