JP2003213584A - リグノセルロース系バイオマスの利用方法 - Google Patents

リグノセルロース系バイオマスの利用方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 木材等のリグノセルロース系バイオマスか
ら、メタンを主成分として一酸化炭素及びタール分を含
まない可燃性ガスを、高価な耐熱性材料を必要とするよ
うな高温状態を経ることなく得ることができ、しかも、
リグノセルロース系バイオマスが含有する水分を蒸発さ
せることによるエネルギー損失が伴わないリグノセルロ
ース系バイオマスの利用方法を提供する。 【解決手段】 リグノセルロース系バイオマスを水酸化
ナトリウムを主要有効成分とする蒸解薬液に浸漬させる
ことによりセルロース系繊維を離解させて蒸解物混合液
を得、該蒸解物混合液をセルロース系繊維懸濁液と蒸解
廃液に分離し、該セルロース系繊維懸濁液、又は該セル
ロース系繊維を加水分解して得た単糖類溶液、又は該単
糖類を酸生成分解して得た有機酸溶液を嫌気性微生物に
よって処理し、メタンを主成分とする可燃性ガスを発生
せしめる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、木材等のリグノセルロ
ース系バイオマスの利用方法に関し、さらに詳しくは、
木材等のリグノセルロース系バイオマスからメタンを主
成分とする可燃性ガスを回収するリグノセルロース系バ
イオマスの利用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】光合成生物が太陽光のエネルギーを利用
して二酸化炭素と水から合成した有機物、及びそれらが
他の生物によって変換されて生成した有機物の総体であ
るバイオマスは、有機物の生成に関与した生物が生育で
きる環境を維持することにより、繰り返し再生産するこ
とができる。また、バイオマスを燃焼させて熱エネルギ
ーを得る場合でも、発生する二酸化炭素(CO2)を再び
同じ有機物として固定することができるため、地球温暖
化の原因とされる大気中の二酸化炭素濃度の上昇を引き
起こさない。この意味で、バイオマスは、太陽光や風力
と同じく再生可能でカーボンニュートラルな燃料源と考
えられる。特に、セルロース及びヘミセルロースを主成
分とする繊維細胞がリグニンを主成分とする細胞間層に
よって結合されているリグノセルロース系バイオマス
は、光合成効率が高く、しかもわが国土を含め地球全体
に広く繁茂する樹木等の高等植物の構成体であることか
ら、再生可能でカーボンニュートラルな燃料源として今
後一層広く利用することが期待されている。
【0003】ところが、リグノセルロース系バイオマス
は、石炭、石油や天然ガスなどの化石燃料と比較すると
単位重量あたりの発熱量が小さく、しかも、通常は固形
物であってかさ密度も小さいため、森林等の生育場所で
採取されてから消費されるまでの間に長距離輸送した
り、大量に貯蔵するのには適しておらず、また、自動車
のエンジン等の内燃機関の燃料として用いることができ
ない。このため、リグノセルロース系バイオマスをその
ままの形態で燃料として使用するには制約があり、今後
一層広く利用されるためには、単位重量あたりの発熱量
が大きくて輸送もしやすく、また、内燃機関の燃料とし
ても利用できる流体燃料へと転換することが求められ
る。ところで、一般に、炭素と水素を含有する有機系の
燃料は、炭素に対する水素の比率が多いほど均一に燃焼
することが可能であり、したがって、燃焼に際して発生
する窒素酸化物、未燃焼の炭化水素又は一酸化炭素(C
O)などの汚染物質の発生量も少ないという傾向があ
る。このため、炭素1原子に対して水素4原子をもつメ
タン(CH4)は、炭素含有量がゼロである水素に次いで
最もクリーンな燃料と考えられる。また、メタンは容易
に水素と二酸化炭素に改質できるため、クリーンで効率
の高い発電装置である燃料電池の燃料として使用するこ
とも可能である。以上の理由から、リグノセルロース系
バイオマスを燃料として利用する場合、一旦、メタンや
水素を主成分とする可燃性ガスに転換して使用すること
が好ましい。
【0004】リグノセルロース系バイオマスからメタン
や水素を主成分とする可燃性ガスを回収するためには、
従来は、該リグノセルロース系バイオマスを、酸素をほ
とんど供給しない状態で別の熱源から得た熱を与えて十
分な高温状態にすることにより、水素やメタンなどの低
分子ガスを主成分とする可燃性ガスとチャーに分解する
(以下、熱分解という)か、又はリグノセルロース系バ
イオマスが完全燃焼するのに必要な量より少ない量だけ
酸素を供給して不完全燃焼させ、それに伴って発生する
熱によって十分な高温状態にすることにより水素やメタ
ンなどの低分子ガスを主成分とする可燃性ガスを得る
(以下、ガス化という)のが通常であった。
【0005】ところが、リグノセルロース系バイオマス
は、酸素をほとんど含まない石炭などの炭化水素燃料と
は異なり酸素を比較的多く含む。このため、リグノセル
ロース系バイオマスを、水素やメタンなどの低分子ガス
を主成分とする可燃性ガスを得るために必要な程度の温
度まで加熱すると、少量の酸素を供給して行うガス化の
場合はもちろん、酸素をほとんど供給しない熱分解の場
合においても、含有する炭素の大部分はメタンではなく
一酸化炭素に転換される。そして、一酸化炭素はそれ自
身が有毒であるだけでなく発熱量も低く、さらに燃料電
池の燃料として使用する場合には電解質を劣化させると
いう問題がある。このため、一酸化炭素を含むガスを燃
料として使用するためには、下式(1)や(2)の反応
によって水素やメタンに転換することが好ましいが、そ
のためには熱分解又はガス化の工程とは別の工程が必要
であり、さらにその工程においては高価な触媒や非常に
高い温度を必要とするという問題がある。 CO+H2O → H2+CO2 (1) CO+3H2 → CH4+H2O (2)
【0006】また、このような従来の方法においては、
水素と一酸化炭素を主成分とするガスを得る熱分解又は
ガス化の工程は、通常、リグノセルロース系バイオマス
を千℃前後の高温状態にして行われる。そして、このよ
うな高温状態にさらされる部材は高価な耐熱材料によっ
て構成する必要があり、しかも、産業上利用可能な耐熱
材料では寿命が短いためメンテナンスも頻繁に行わなけ
ればならないという問題があった。さらに、比較的低い
温度でリグノセルロース系バイオマスを熱分解又はガス
化するとタール分が生成するが、千℃前後の温度では生
成したタール分は完全には分解できない。このため、通
常の運転状態では水素と一酸化炭素を主成分とする可燃
性ガス中にタール分が含有されることになるが、そのタ
ール分はガスが冷却された後には凝縮し、ガスが流れる
ダクトやガスの貯蔵容器内に付着する。これを防止する
ためには、さらに高価な耐熱材料を用いた上で温度を上
昇させるか、ガスの冷却前又は冷却と同時にタール分を
取り除く工程を別途設ける必要があるという問題があ
る。
【0007】また、一般に、木材等のリグノセルロース
系バイオマスは含水率が高いが、従来の方法において
は、熱分解又はガス化の工程において、リグノセルロー
ス系バイオマスに含まれている水分をすべて同時に蒸発
させることになる。このため、熱分解の工程において
は、水分蒸発のために必要なだけの熱を別の熱源から余
分に得なければならず、一方、ガス化の工程において
は、水分を蒸発させるために発生した熱が奪われるた
め、必要な高温状態にするためには、外部から助燃剤を
供給して燃焼温度を上げなければならない。いずれにし
てもリグノセルロース系バイオマスが含有する水分を蒸
発させるためにエネルギーを損失するという問題があっ
た。このような問題を避けるためには、リグノセルロー
ス系バイオマスをあらかじめ乾燥した上で熱分解又はガ
ス化する必要があるが、その場合でも、乾燥のために熱
が必要になるか、あるいは非常に長時間乾燥した場所で
貯留しておく必要があるという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、上記の従
来の技術の問題点を解決し、木材等のリグノセルロース
系バイオマスから、メタンを主成分として一酸化炭素及
びタール分を含まない可燃性ガスを、高価な耐熱性材料
を必要とするような高温状態を経ることなく、しかも一
酸化炭素及びタール分を除去するための工程を付加する
ことなく得ることができ、さらに、リグノセルロース系
バイオマスが含有する水分を蒸発させることによるエネ
ルギーの損失が伴わないリグノセルロース系バイオマス
の利用方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は、リグノセルロース系バイオマスを水酸化
ナトリウムを主要有効成分とする蒸解薬液に浸漬させる
ことによりセルロース系繊維を離解させて蒸解物混合液
を得る蒸解工程、該蒸解物混合液に水、水溶液又は水を
媒体とする懸濁液を加えた上でセルロース系繊維懸濁液
と蒸解廃液に分離する洗浄工程、該セルロース系繊維懸
濁液、又は該セルロース系繊維懸濁液中のセルロース系
繊維を加水分解して得た単糖類溶液、又は該単糖類溶液
中の単糖類を酸生成分解して得た有機酸溶液を嫌気性微
生物によって処理し、メタンを主成分とする可燃性ガス
を発生せしめるメタン発酵工程からなるリグノセルロー
ス系バイオマスの利用方法を提供する。また、本発明で
は、前記蒸解廃液は濃縮分離工程に移送し、該濃縮分離
工程においてナトリウムイオン高濃度含有液とナトリウ
ムイオン低濃度含有液に分離し、該ナトリウムイオン高
濃度含有液から前記蒸解薬液の有効成分を回収すること
により、蒸解薬液の有効成分の原料となる薬品の消費量
を低減することができる。さらに、本発明では、前記ナ
トリウムイオン高濃度含有液は回収ボイラにおいて燃焼
し、生成する燃焼残渣から前記蒸解薬液の有効成分を回
収するとともに、該回収ボイラでは燃焼熱を蒸気又は温
水として回収することにより、蒸解薬液の有効成分を単
純な工程で回収できるようにするとともに、メタン発酵
工程に移送されなかった有機物が有する化学エネルギー
を有効に利用することを可能にする。また、本発明で
は、前記ナトリウムイオン低濃度含有液は、前記セルロ
ース系繊維懸濁液、単糖類溶液、又は有機酸溶液と混合
の上、前記メタン発酵工程に移送し、嫌気性微生物によ
って処理することにより、ナトリウムイオン低濃度含有
液に含まれているメタノール等の有機物もあわせてメタ
ンを主成分とする可燃性ガスに転換することができる。
さらに、本発明では、前記メタン発酵工程の処理済液
は、前記蒸解工程又は洗浄工程に返送して再利用するこ
とにより、系外に排出されて放流された場合に水質汚濁
の問題を引き起こす可能性のある排水の量を低減すると
ともに、蒸解薬液の有効成分の原料となる薬品の消費量
をさらに低減することができる。また、本発明では、前
記メタン発酵工程において生成する可燃性ガスを前記蒸
解物混合液、蒸解廃液又はナトリウムイオン高濃度含有
液と接触させて、該可燃性ガス中の二酸化炭素及び/又
は硫化水素を該蒸解物混合液中、蒸解廃液中又はナトリ
ウムイオン高濃度含有液中に吸収させることにより、可
燃性ガス中のメタン濃度を高め、特に、有害な硫化水素
をわずかしか、又はほとんど含まない可燃性ガスを得る
ことを可能にする。さらに、本発明では、前記蒸解工程
及び/又は濃縮分離工程において供給した熱の一部を回
収し、該回収熱によって前記メタン発酵工程の処理対象
液を加温することにより、メタン発酵工程の進行を促進
し、該処理対象液中の有機物をメタンを主成分とする可
燃性ガスに転換するために必要な時間を短くすることが
できる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、リグノセルロース系バ
イオマスを水酸化ナトリウムを主要有効成分とする蒸解
薬液に浸漬させることによりセルロース系繊維を離解さ
せて蒸解物混合液を得る蒸解工程、該蒸解物混合液に
水、水溶液又は水を媒体とする懸濁液を加えた上でセル
ロース系繊維懸濁液と蒸解廃液に分離する洗浄工程、該
セルロース系繊維懸濁液、又は該セルロース系繊維懸濁
液中のセルロース系繊維を加水分解して得た単糖類溶
液、又は該単糖類溶液中の単糖類を酸生成分解して得た
有機酸溶液を嫌気性微生物によって処理し、メタンを主
成分とする可燃性ガスを発生せしめるメタン発酵工程か
らなるリグノセルロース系バイオマスの利用方法であ
る。
【0011】本発明のリグノセルロース系バイオマスの
利用方法においては、リグノセルロース系バイオマス
を、木材のように大型のものについては破砕し、稲わ
ら、麦わら、バガス等の草本類のように小型のものにつ
いては必要に応じて切断して蒸解釜に供給し、水酸化ナ
トリウムを主要有効成分とする蒸解薬品を溶解せしめた
水溶液又は分散せしめた懸濁液(以下、蒸解薬液と総称
する)と混合して浸漬させた状態で一定時間保持する。
その際、リグノセルロース系バイオマスを蒸解薬液に浸
漬させるに先立って蒸気と接触させ、含水率を60%程度
に上昇させるとともに脱気することにより、リグノセル
ロース系バイオマスへの蒸解薬品の浸透速度を速めるこ
とができる。また、該蒸解薬液は、リグノセルロース系
バイオマスに対するナトリウムイオン(Na)の重量比
(乾ベース)がNa2O換算で5〜50%となり、かつ蒸解薬
液中のナトリウムイオン濃度がNa2O換算で2〜100g/lと
なるように調整すればよい。この蒸解工程において、リ
グノセルロース系バイオマスの細胞間層の主成分である
リグニンが、主として水酸化ナトリウムが解離して生成
する水酸イオン(OH )によって開裂せしめられて分解
することにより、蒸解薬液中に溶解する。その結果、セ
ルロース及びヘミセルロースを主成分とする繊維細胞は
離解し、一部はピーリング反応等によって低分子化しつ
つ蒸解薬液中に分散することによって蒸解物混合液が得
られる。該蒸解物混合液中には、セルロース及びヘミセ
ルロースを主成分とする繊維細胞(以下、セルロース系
繊維という)に加えて、蒸解薬液に由来するナトリウム
イオン等の無機成分と、リグニンの分解生成物やセルロ
ース系繊維のピーリング反応による剥脱生成物等の有機
成分を含む。特に、ナトリウムイオンについては、主と
して炭酸イオン(CO3 2−)や有機酸イオン等の陰イオン
とともに弱酸−強アルカリのナトリウム塩として含有さ
れるとともに、一部は中和されずに水酸化ナトリウムと
して含有される。このため、蒸解物混合液のpHは通常
10以上となる。
【0012】蒸解工程においては、圧力容器で構成した
蒸解釜を密閉状態にした上で、前記蒸解薬液を沸騰させ
ることなく100℃以上に加熱することにより、リグノセ
ルロース系バイオマスのセルロース系繊維を充分に離解
させるために蒸解釜内部に保持すべき時間を短くし、蒸
解釜の容積及び設置スペースを小さくすることができ
る。その際、蒸解薬液をセルロース系繊維の離解に適し
た温度まで上昇させるに先立って、比較的低い温度で一
定時間保持することによって、蒸解薬液をリグノセルロ
ース系バイオマスに充分かつ均一に浸透させることがで
きる。なお、蒸解薬液の加熱は、蒸解釜の内部に直接蒸
気を吹き込むか、又は蒸解薬液を循環ラインに抜き出
し、該循環ラインに設けた間接熱交換器に蒸気を供給
し、蒸気と蒸解薬液を間接熱交換することによって加熱
して蒸解釜の内部に戻すか、又は蒸解釜の内部に設けた
熱交換用配管に蒸気を供給し、蒸気と蒸解薬液を間接的
に熱交換させることによって行うことができる。
【0013】上記の蒸解工程においては、水酸化ナトリ
ウムに加えて硫化ナトリウムを有効成分とする蒸解薬液
を用いることによって、リグノセルロース系バイオマス
を蒸解釜内部に保持すべき時間をさらに短くすることが
できる。この場合、蒸解薬液中に溶解せしめられた硫化
ナトリウムは、下式(3)のように水酸化ナトリウムと
硫化水素ナトリウムに加水分解される。 Na2S+H2O → NaOH+NaSH (3) このうち水酸化ナトリウムは蒸解の主要有効成分として
機能し、一方、硫化水素ナトリウムは、解離して生成す
る硫化水素イオン(SH)が、リグニンの結合箇所のう
ち水酸イオンでは不十分にしか開裂できない箇所を開裂
することによって、又はリグニンの分解生成物の縮合を
防止することによって脱リグニンを促進する。これによ
り、110〜120℃程度の温度でリグノセルロース系バイオ
マスに蒸解薬品を浸透させた後、160℃程度以上まで加
熱して保持する運転条件においては、セルロース系繊維
を離解させるために蒸解釜内部で保持すべき時間は1時
間から5時間程度にすることができる。この際、必要な
保持時間をさらに短縮するためには、蒸解薬液は180℃
以上、好ましくは200℃以上に加熱して保持すればよ
い。なお、このような比較的高い温度条件においては、
セルロース系繊維の主成分であるセルロース及び/又は
ヘミセルロースは、解重合によって重合度や分子量が小
さくなるため、後段のメタン発酵工程、又はメタン発酵
工程の前処理工程、すなわちセルロース系繊維を単糖類
に加水分解する工程及び該単糖類を有機酸に酸生成分解
する工程でのセルロース系繊維の加水分解の必要度を軽
減することができる。
【0014】上記の蒸解工程に、セルロース系繊維が寸
断された腐朽部分を含むリグノセルロース系バイオマス
や、蒸解工程に先立って大きさが均一でない破砕片へと
破砕されたリグノセルロース系バイオマスを供する場合
には、蒸解工程で離解せしめられたセルロース系繊維の
長さが不均一になり、強度も低下する傾向がある。しか
し、本発明のリグノセルロース系バイオマスの利用方法
においては、セルロース系繊維は最終的にはメタン発酵
工程又はその前処理工程に送られてメタンを主成分とす
る可燃性ガスに分解されるため、セルロース系繊維の長
さや強度を管理する必要はない。このため、本発明のリ
グノセルロース系バイオマスの利用方法においては、腐
朽を防止するために乾燥状態で貯蔵したり、破砕片のス
クリーニングを厳密に行ったりする必要はなく、むし
ろ、部分的に腐朽している廃材なども原料として利用す
ることができる。また、樹木の樹皮や葉のように、セル
ロース、ヘミセルロース及びリグニン以外の成分を多く
含む生細胞バイオマスが混入する場合にも、蒸解工程で
離解せしめられたセルロース系繊維の長さが不均一にな
り、強度も低下する傾向があるが、上記のように本発明
においては問題ない。むしろ、樹皮や葉に含まれ、蒸解
工程において蒸解物混合液中に移行する窒素、リン及び
カリウムなどの栄養成分を下流の工程を経由して最終的
には適度の量だけメタン発酵工程又はその前処理工程に
移行せしめることにより、そこで繁殖せしめられる微生
物の栄養源を供給することができる。このため、樹木の
枝打ちや枝払いによって発生し皮剥ぎを行うことが難し
い枝条なども広く原料として利用することができ、ある
いは製材工場などで廃棄物となった樹皮や枝葉を栄養源
として積極的に受け入れることもできる。特に、現状で
はあまり利用方法がなく廃棄物として処理されることが
多い街路樹等の剪定樹も有効に利用することができる。
【0015】上記の蒸解工程で発生した蒸解物混合液は
洗浄工程に送られ、水、水溶液又は水を媒体とする懸濁
液(以下、洗浄液という)を加えられた上で、セルロー
ス系繊維が液中に分散した懸濁液(以下、セルロース系
繊維懸濁液という)と蒸解廃液に分離される。この際、
洗浄液中に溶解又は分散している固形分(以下、分散し
ている固形分も含めて溶解固形分と総称する)の濃度
を、蒸解物混合液中のセルロース系繊維を除く溶解固形
分の濃度より低くした上で、理想的には、蒸解物混合液
中のセルロース系繊維以外の液体部分と洗浄液を混合さ
せることなく、セルロース系繊維のみを蒸解物混合液側
から洗浄液側に移行させることによって、セルロース系
繊維以外の溶解固形分の濃度が低いセルロース系繊維懸
濁液と、セルロース系繊維をほとんど含まずセルロース
系繊維以外の溶解固形分の濃度が高い蒸解廃液に分離す
ることができる。なお、ここで蒸解物混合液中に含有さ
れ、そのほとんどが蒸解廃液中に留まる溶解固形分とし
ては、上記のようにナトリウムイオン等の無機成分とリ
グニンの分解生成物等の有機成分がある。また、蒸解廃
液中においても、ナトリウムイオンは弱酸−強アルカリ
のナトリウム塩又は水酸化ナトリウムとして含有される
ため、該蒸解廃液のpHは通常10以上となる。
【0016】実際の洗浄工程においては、セルロース系
繊維懸濁液と蒸解廃液の分離は、稀釈洗浄、置換洗浄、
又は稀釈洗浄と置換洗浄の組合せで行われる。稀釈洗浄
においては、蒸解物混合液からセルロース系繊維以外の
液体部分を除去することによってセルロース系繊維の濃
度を高め、そのようにして得たセルロース系繊維濃縮液
を洗浄液で稀釈することによってセルロース系繊維懸濁
液を得、一方、除去された液体部分は蒸解廃液となる。
置換洗浄においては、蒸解物混合液をセルロース系繊維
懸濁液の媒体として必要な量以上の洗浄液と接触させ、
その界面において蒸解物混合液中のセルロース系繊維以
外の液体成分が洗浄液のうちセルロース系繊維懸濁液の
媒体となる側に移行するのを抑制しつつ、セルロース系
繊維を洗浄液のうちセルロース系繊維懸濁液の媒体とな
る側に拡散・移行させ、一方、残余の洗浄液は蒸解物混
合液のうちセルロース系繊維が脱離した残余部分ととも
に蒸解廃液となる。この際、稀釈洗浄においてはセルロ
ース系繊維濃縮液中にセルロース系繊維以外の液体成分
が若干量残存するため、また置換洗浄においては洗浄液
側に蒸解物混合液中のセルロース系繊維以外の液体部分
が移行することを完全に防ぐことができないため、実際
の洗浄工程で得られるセルロース系繊維懸濁液中のセル
ロース系繊維以外の溶解固形分の濃度は、もともとの蒸
解物混合液よりは低いが洗浄液よりは高くなる。セルロ
ース系繊維懸濁液中のセルロース系繊維以外の溶解固形
分の濃度を低くするためには、洗浄液として水又は溶解
固形分の濃度が十分に低い液体を用いた上で洗浄液の量
を増やし、さらに必要であれば稀釈洗浄及び/又は置換
洗浄を複数段重ねればよい。なお、複数段の洗浄を行う
場合には、最後段の洗浄では、水又は溶解固形分の濃度
が十分に低い液体を洗浄液として用い、そこでセルロー
ス系繊維懸濁液と分離された洗浄廃液を一つ前の段の洗
浄での洗浄液として使用し、そこで発生した洗浄廃液を
さらに一つ前の段の洗浄での洗浄液として使用する、と
いうように洗浄液をカスケード的に使用することによっ
て、最終的に発生する蒸解廃液の量を抑制することがで
きる。
【0017】本発明のリグノセルロース系バイオマスの
利用方法においては、セルロース系繊維懸濁液は後段の
メタン発酵工程又はその前処理工程に移送して嫌気性微
生物で処理されるが、洗浄工程における洗浄が完全でな
い場合、セルロース系繊維懸濁液には、蒸解物混合液中
に含まれていたナトリウムイオンの一部が、蒸解物混合
液中の他の溶解固形分とともに、主として弱酸−強アル
カリのナトリウム塩又は水酸化ナトリウムとして移行す
る。このようにして移行したナトリウムイオンのセルロ
ース系繊維に対する比率が著しく高いと、該ナトリウム
イオンは、メタン発酵工程又はその前処理工程における
阻害要因となることがある。この問題は、上記のよう
に、洗浄液として水又はナトリウムイオンの濃度が低い
液体を用いた上で洗浄液の量を増やし、さらに必要であ
れば稀釈洗浄及び/又は置換洗浄を複数段重ねることに
より、セルロース系繊維懸濁液中のセルロース系繊維に
対するナトリウムイオンの重量比はNa2O換算で1%以下
にすることによって回避できる。
【0018】ただし、本発明のリグノセルロース系バイ
オマスの利用方法においては、セルロース系繊維懸濁液
中のセルロース系繊維に対するナトリウムイオンの比率
は極端に低くする必要はない。むしろ、上記のようにセ
ルロース系繊維に対するナトリウムイオンの比率がメタ
ン発酵工程又はその前処理工程において阻害要因となら
ない程度であれば、セルロース系繊維懸濁液中にナトリ
ウムイオンが残存することは、該セルロース系繊維懸濁
液がメタン発酵工程又はその前処理工程に移送された際
に、以下のような好ましい効果をもたらす。まず、ナト
リウムイオンはメタン発酵工程又はその前処理工程にお
いて繁殖せしめられる微生物の栄養源となる。また、ナ
トリウムイオンは、上記のようにセルロース系繊維懸濁
液へ弱酸−強アルカリのナトリウム塩又は水酸化ナトリ
ウムとして移行するため、該セルロース系繊維懸濁液は
アルカリ性を呈する。ところで、メタン発酵工程又はそ
の前処理工程における酸生成分解工程においては有機酸
が生成することによって処理対象液のpHが低くなり、
このため酸生成分解工程以降の工程が阻害されることが
ある。したがって、セルロース系繊維懸濁液がアルカリ
性であることは、有機酸の生成によるpHの低下によっ
てメタン発酵工程が阻害されることを抑制する効果があ
る。一方、セルロース系繊維懸濁液中のセルロース系繊
維に対するナトリウムイオンのNa2O換算での重量比を0.
01%未満にしようとすると、洗浄工程において使用する
洗浄液の量を極端に増やし、しかも洗浄段数も3段以上
にする必要がある。そして、洗浄液の量を増やせば蒸解
廃液の量が増えるため、後段の濃縮分離工程など蒸解廃
液の処理工程への負荷が大きくなり、洗浄の段数を増や
せばその分だけ洗浄にかかる設備費・運転費が上昇す
る。以上の理由から、セルロース系繊維懸濁液中のセル
ロース系繊維に対するナトリウムイオンのNa2O換算での
重量比は0.01%以上1%以下とすることが好ましい。
【0019】前記洗浄工程のうちの少なくとも一部は、
前記蒸解工程が行われるのと同じ蒸解釜で行うことがで
きる。具体的には、蒸解釜の底部の供給口から洗浄液を
供給することにより底部付近に洗浄液の領域を形成し、
その上部に滞留する蒸解物混合液中のセルロース系繊維
を該洗浄液領域中に拡散・移行せしめ、生成したセルロ
ース系繊維懸濁液を底部の抜出口より抜き出し、一方、
残余の蒸解廃液は、洗浄液領域よりも上部に位置する別
の抜出口から抜き出すことによって、又はセルロース系
繊維懸濁液を抜き出し終わった後にセルロース系繊維懸
濁液と同じ抜出口から抜き出すことによって、セルロー
ス系繊維懸濁液と蒸解廃液を分離することができる。特
に、蒸解釜として、リグノセルロース系バイオマスと蒸
解薬液を連続的に供給し、蒸解物混合液を連続的に抜き
出す連続式蒸解釜を用いる場合には、洗浄液を底部の供
給口から連続的に供給し、生成したセルロース系繊維懸
濁液を底部の抜出口より連続的に抜き出し、一方、前記
洗浄液領域よりも上部に位置する別の抜出口より蒸解廃
液を連続的に抜き出すことによって、セルロース系繊維
懸濁液と蒸解廃液を分離することができる。一方、リグ
ノセルロース系バイオマスと蒸解薬液を供給した後、設
定した温度で設定した時間だけ保持した後、蒸解物混合
液を排出するバッチ式蒸解釜の場合には、保持時間終了
後、洗浄液を底部より供給し、セルロース系繊維が洗浄
液中に移行して生成したセルロース系繊維懸濁液と残余
の蒸解廃液を別々に抜き出すことによって、セルロース
系繊維懸濁液と蒸解廃液を分離することができる。な
お、洗浄工程の少なくとも一部を蒸解釜の内部で行うた
め洗浄液を底部から供給する場合、洗浄液の温度が低い
と蒸解釜から排出されるセルロース系繊維懸濁液の温度
も低くなる。ところが、セルロース系繊維の主成分であ
るセルロース及び/又はヘミセルロースは、蒸解釜から
抜き出されるセルロース系繊維懸濁液の温度が高いほど
解重合が進んでその重合度や分子量が小さくなり、後段
のメタン発酵工程又はその前処理工程でのセルロース系
繊維の加水分解の必要度が軽減される。このため、釜内
に供給する洗浄液を加熱して温度を高くし、排出される
セルロース系繊維懸濁液の温度を高くすることが好まし
い。
【0020】前記洗浄工程において蒸解廃液と分離され
たセルロース系繊維懸濁液は、必要であればノットなど
の未蒸解部分や異物を除去され、さらに必要であればセ
ルロース系繊維の加水分解等の前処理工程を経た上でメ
タン発酵工程に移送される。そして、該メタン発酵工程
においては、嫌気状態にされた処理容器内で繁殖せしめ
られた嫌気性微生物によって処理され、セルロース系繊
維懸濁液に含まれる有機物は、最終的には主としてメタ
ン、二酸化炭素及び水に転換され、水中に溶存できない
成分がガス体として放出されることにより、メタンを主
成分とする可燃性ガスが得られる。
【0021】一般に、嫌気性微生物によって有機物から
メタンを得る工程は、有機物を酸生成菌によって分解し
て酢酸などの揮発性脂肪酸を主体とする有機酸、又は水
素及び二酸化酸素を得る酸生成分解工程と、メタン生成
菌によって有機酸、又は水素及び二酸化炭素、又はメタ
ノールからメタンを得るメタン生成工程からなる。とこ
ろが、セルロース系繊維の主成分であるセルロースは、
通常、酸生成菌によっては分解されにくいため、あらか
じめ単糖類のグルコースに加水分解することが好まし
い。これは、セルロースとともにセルロース系繊維を構
成するヘミセルロースについても同様であるが、ヘミセ
ルロースの場合には、グルコースに加えてマンロースや
キシロースなどの他の単糖類へと加水分解される。
【0022】セルロースやヘミセルロースは、塩酸や硫
酸等の強酸によって加水分解することも可能であるが、
セルラーゼやヘミセルラーゼと総称される加水分解酵素
群を用いて加水分解する、すなわち酵素糖化することが
最も経済的である。しかし、これらの酵素群はリグノセ
ルロース系バイオマスの細胞間層の主成分とするリグニ
ンを分解することはできないのみならず、分子量が非常
に大きいため、繊維細胞が有する平均直径10Å程度の毛
細管空隙を通過して表層の細胞から内部の細胞に浸透す
ることができない。このため、リグノセルロース系バイ
オマスを機械的に破砕する程度では、該リグノセルロー
ス系バイオマスを構成する繊維細胞の主成分であるセル
ロースやヘミセルロースを酵素糖化することは実際上不
可能である。ところが、本発明のリグノセルロース系バ
イオマスの利用方法では、上記の蒸解工程においてリグ
ニンが分解された上でセルロース系繊維が離解されてい
るため、加水分解酵素群が容易に接触することができ、
したがって、セルロース系繊維の主成分であるセルロー
スやヘミセルロースは迅速に酵素糖化される。このた
め、本発明のリグノセルロース系バイオマスの利用方法
では、前記セルロース系繊維懸濁液中にセルラーゼやヘ
ミセルラーゼを生産する微生物、すなわちセルラーゼ生
産菌やヘミセルラーゼ生産菌を繁殖させることによっ
て、又はセルロース系繊維懸濁液にセルラーゼ生産菌や
ヘミセルラーゼ生産菌の培養液、培養濾液、培養抽出液
等のセルラーゼ含有液やヘミセルラーゼ含有液、又はセ
ルラーゼ製剤やヘミセルラーゼ製剤を添加することによ
って、セルロース系繊維懸濁液中のセルロース系繊維を
単糖類に加水分解することができる。特に、セルロース
系繊維懸濁液の洗浄を完全には行わず、セルロース系繊
維懸濁液が若干のナトリウムイオンを含んでアルカリ性
を呈する場合には、該セルロース系繊維懸濁液中に好ア
ルカリのセルラーゼ生産菌やヘミセルラーゼ生産菌を繁
殖させるか、セルロース系繊維懸濁液に耐アルカリ性の
セルラーゼやヘミセルラーゼを添加するによってセルロ
ース及び/又はヘミセルロースを加水分解することが好
ましい。
【0023】このような加水分解工程は、嫌気状態にし
た処理容器内に、嫌気性のセルラーゼ生産菌やヘミセル
ラーゼ生産菌を酸生成菌と共存させることにより、又は
セルラーゼ活性やヘミセルラーゼ活性を有する酸生成菌
を繁殖させることにより、又は酸生成菌の繁殖下にセル
ラーゼ含有液やヘミセルラーゼの含有液、又はセルラー
ゼ製剤やヘミセルラーゼ製剤を添加することにより酸生
成分解工程と一体化された工程とすることができる。あ
るいは、嫌気性のセルラーゼ生産菌やヘミセルラーゼ生
産菌を酸生成菌及びメタン生成菌と共存させることによ
り、又はセルラーゼ活性やヘミセルラーゼ活性を有する
酸生成菌及びメタン生成菌を共存させることにより、又
は酸生成菌及びメタン生成菌の繁殖下にセルラーゼ含有
液やヘミセルラーゼ含有液、又はセルラーゼ製剤やヘミ
セルラーゼ製剤を添加することにより酸生成分解工程及
びメタン生成工程と一体化された工程とすることができ
る。ただし、一般には、酸生成菌やメタン生成菌が有す
るセルラーゼ活性やヘミセルラーゼ活性は弱く、また、
セルラーゼ活性の強いセルラーゼ生産菌やヘミセルラー
ゼ活性の強いヘミセルラーゼ生産菌が繁殖しやすい条件
と、酸生成菌やメタン生成菌が繁殖しやすい条件は異な
る。このため、一つの処理容器内で嫌気性微生物を繁殖
させることによって加水分解工程と酸生成工程、又は加
水分解工程と酸生成工程及びメタン発酵工程を並行して
進行させようとした場合、加水分解工程が律速となって
酸生成分解工程以降の工程が進まないという問題があ
る。また、外部で生産したセルラーゼ含有液やヘミセル
ラーゼ含有液、又はセルラーゼ製剤やヘミセルラーゼ製
剤を添加する方法は、その生産のために原料となるセル
ロースやヘミセルロースを別途供給しなければならない
ため経済的でない。このため、セルロース系繊維懸濁液
は、別の処理容器であらかじめセルロース系繊維をグル
コース等の単糖類へ加水分解することによって単糖類溶
液に変換した後、酸生成分解工程以降のメタン発酵工程
を行うことが好ましい。あるいは、セルロース系繊維懸
濁液を一部分岐し、該分岐液を培地としてセルラーゼ生
産菌やヘミセルラーゼ生産菌を培養し、得られた培養
液、培養濾液又は培養抽出液を残余のセルロース系繊維
懸濁液と混合することにより加水分解を行った上で、酸
生成分解工程以降のメタン発酵工程を行うことが好まし
い。なお、セルラーゼ生産菌やヘミセルラーゼ生産菌を
酸生成分解工程以降の工程が行われる処理容器とは別の
処理容器内に繁殖させる場合、該セルラーゼ生産菌やヘ
ミセルラーゼ生産菌は必ずしも嫌気性である必要はな
く、好気性微生物を用いてもよい。
【0024】前記セルロース系繊維懸濁液中のセルロー
ス系繊維が加水分解されることによって得られた単糖類
の水溶液を、嫌気状態で酸生成菌及びメタン生成菌によ
って処理する場合、メタン生成菌によるメタン生成が律
速になる。このため、処理速度を速めるためには、嫌気
状態に保たれた処理容器内においてメタン生成菌の菌体
濃度を高める必要がある。処理容器内の菌体濃度を高め
る方法としては、処理容器の内部に充填材を設け、その
表面に嫌気性微生物の生物膜を付着増殖させる固定床法
や、嫌気性微生物が付着増殖する担体を粒状化し、上昇
流によって流動させる流動床などがあるが、特に、嫌気
性微生物の自己集塊作用を利用して、菌体を沈降性に優
れた粒状汚泥として処理容器内に保持するUASB法
が、最もメタン生成速度が速い。ただし、前記セルロー
ス系繊維懸濁液中のセルロース系繊維が加水分解される
ことによって得られた単糖類溶液にUASB法を適用す
る場合には、単糖類を有機酸に分解する酸生成菌がマイ
ナスに帯電したバイオポリマーを大量に生成して、メタ
ン生成菌の緻密な粒状汚泥の生成を妨げるという問題が
ある。この問題を回避するためには、酸生成分解工程と
メタン生成工程を分離し、該酸生成分解工程において単
糖類を有機酸に分解して得た有機酸溶液をUASB法を
用いたメタン生成工程で処理すればよい。なお、一般
に、酸生成菌が繁殖しやすい条件とメタン生成菌が繁殖
しやすい条件は異なるため、メタン生成工程にUASB
法以外の方法を用いる場合においても、酸生成分解工程
とメタン生成工程を分離し、それぞれの工程の運転条件
を最適化することが好ましい。
【0025】セルラーゼ生産菌、ヘミセルラーゼ生産
菌、酸生成菌及びメタン生成菌などの微生物が繁殖する
ためには、セルロース系繊維、単糖類、又は有機酸のよ
うに炭素、水素及び酸素のみを含む有機物以外に、窒
素、リン、カリウム、さらには鉄などの栄養成分を供給
する必要がある。このため、メタン発酵工程又はその前
処理工程に先立って処理対象液にそれらの栄養成分を添
加することが好ましい。この目的のためには、上記のよ
うに、蒸解工程に樹木の樹皮や葉を供給し、それら供給
物から蒸解物混合液中に移行した栄養成分を下流の工程
を経由してメタン発酵工程又はその前処理工程に移行さ
せることもできるが、樹皮や葉は、洗浄工程において蒸
解物混合液から分離されたセルロース系繊維懸濁液と混
合し、該混合物をメタン発酵工程又はその前処理工程に
移送することもできる。その際、樹皮や葉は、あらかじ
め発酵等によって分解しやすくした上でセルロース系繊
維懸濁液と混合することによって、微生物が利用しやす
くすることができる。なお、栄養源としては、樹木の樹
皮や葉だけでなく、厨芥、下水汚泥、屎尿、及びビール
製造などの食品製造工程で生じる排水や廃棄物等の有機
系廃棄物を利用することができる。このうち、特に、下
水汚泥や屎尿などのセルロース系繊維の含有量が少ない
有機系廃棄物についてはセルロースやヘミセルロースを
加水分解する必要性があまりないため、セルロース系繊
維懸濁液中のセルロース系繊維を加水分解することによ
って得た単糖類溶液と混合して酸生成分解工程に移送す
ることによって、加水分解工程における処理対象液の液
量がいたずらに増えることを回避することができる。
【0026】本発明のリグノセルロース系バイオマスの
利用方法で得られたメタンを主成分とする可燃性ガス
は、必要であればガスホルダーに貯留された後、隣接し
て設置されたガス燃焼ボイラで燃焼させ、発生した熱を
蒸気等で回収して利用したり、さらに必要であれば蒸気
タービンを回転させて電力に変換することができる。あ
るいは、ガスエンジンで燃焼させて動力を直接利用した
り、発電機と連結して発電することができる。また、メ
タン発酵工程で得られた可燃性ガスから二酸化炭素及び
/又は硫化水素(H2S)を除去し、メタンを主成分とし
て二酸化炭素と硫化水素をわずかしか、又はほとんど含
まない可燃性ガスを得た場合、該可燃性ガスは改質器で
水素に改質した上で、隣接して設置した燃料電池によっ
て電力に転換することができ、さらには、天然ガス自動
車又は改質器を設けた燃料電池自動車に燃料として供給
することができる。あるいはまた、これらの可燃性ガス
は、ボンベに充填して該ボンベをトラック等で輸送する
ことによって、又はパイプラインに供給することによっ
て、遠隔の消費地まで輸送することができる。
【0027】特に、本発明のリグノセルロース系バイオ
マスの利用方法を用いた装置に近接して天然ガスのパイ
プラインが敷設されている場合には、必要に応じて、メ
タン発酵工程で得られた可燃性ガスから二酸化炭素及び
/又は硫化水素を除去し、メタンを主成分として二酸化
炭素と硫化水素をわずかしか、又はほとんど含まない可
燃性ガスとした上で、該可燃性ガスを必要な圧力まで加
圧し、既設のパイプラインに供給することが好便であ
る。その場合、ガス会社などのパイプラインの所有者に
可燃性ガスを販売する利用方法が可能であり、あるい
は、パイプラインの所有者に託送量を支払った上で、遠
隔の消費者に可燃性ガスを販売する利用方法も可能であ
る。また、その際、パイプラインへの供給口に可燃性ガ
スの流量を計測する自動計量装置を設置し、計測された
供給量とあらかじめ設定した価格に基づき、コンピュー
タを用いてパイプラインの所有者又は遠隔の消費者に自
動的に課金するシステムとすることができる。特に、消
費者が二酸化炭素の排出枠を設定されている場合には、
本発明のリグノセルロース系バイオマスの利用方法によ
って得られたメタンを主成分とする可燃性ガスはカーボ
ンニュートラルな燃料であることから、消費者の二酸化
炭素の排出枠に余裕が生じ、その余裕分を二酸化炭素の
排出権として販売することが可能であるため、それも考
慮した価格設定とすることができる。
【0028】本発明のリグノセルロース系バイオマスの
利用方法においては、メタンを主成分とする可燃性ガス
は、最終的には有機物が嫌気性微生物によって分解され
ることによって生成するため、該可燃性ガス中には一酸
化炭素及びタール分は含まれない。また、本発明のリグ
ノセルロース系バイオマスの利用方法を構成する工程
は、最も温度が高くなる蒸解工程や濃縮分離工程でも20
0℃程度以下で行われるため、高価な耐熱性材料を必要
とすることはない。さらに、本発明のリグノセルロース
系バイオマスの利用方法を構成する工程はすべて水溶液
中又は水を媒体とする懸濁液中で進行するため、リグノ
セルロース系バイオマスに含まれる水分を蒸発させる必
要はなく、したがって、該水分を蒸発させることによる
エネルギーの損失は伴わない。
【0029】さて、蒸解薬液の有効成分である水酸化ナ
トリウムや硫化ナトリウムは非常に高価な薬品であり、
また、その原料となる炭酸ナトリウムや硫酸ナトリウム
も高価であるため、蒸解薬液は回収して繰り返し再利用
することが好ましい。このため、本発明のリグノセルロ
ース系バイオマスの利用方法の一形態では、前記蒸解廃
液は濃縮分離工程に移送し、該濃縮分離工程においてナ
トリウムイオン高濃度含有液とナトリウムイオン低濃度
含有液に分離することにより、蒸解薬液に含まれ蒸解廃
液に移行したナトリウムイオンを、さらに少量のナトリ
ウムイオン高濃度含有液に移行せしめた上で、該ナトリ
ウムイオン高濃度含有液から前記蒸解薬液の有効成分を
回収することとした。
【0030】前記洗浄工程でセルロース系繊維懸濁液と
分離された蒸解廃液は濃縮分離工程に移送され、ナトリ
ウムイオン高濃度含有液とナトリウムイオン低濃度含有
液に分離される。この分離は、蒸解廃液中の水分及び揮
発成分を蒸発させて濃縮し、ナトリウムイオン高濃度含
有液を得る蒸発工程と、蒸発した成分を凝縮させてナト
リウムイオン低濃度含有液を得る凝縮工程を組み合わせ
ることによって行うことができる。この濃縮分離工程に
は蒸気と蒸解廃液を間接的に熱交換させて水分及び揮発
成分を蒸発させる間接型蒸発缶と、発生した蒸気及び揮
発成分を冷却水と間接的に熱交換させて凝縮させる間接
型凝縮器を組み合わせて使用することができる。特に、
蒸気との間接熱交換によって生成した揮発成分含有蒸気
を残余の液体と間接的に熱交換させることによって、残
余の液体からさらに水分と揮発成分を蒸発させるととも
に、もとの揮発成分含有蒸気は凝縮せしめる多重効用蒸
発缶を用いることによって、蒸気の使用量を低減するこ
とができる。このような濃縮分離工程において、蒸解廃
液中に含有されるナトリウムイオンは、わずかな量だけ
が飛散してナトリウムイオン低濃度含有液側に移行する
ことを除いて大部分がナトリウムイオン高濃度含有液に
移行させられる。この結果、ナトリウムイオンは大量の
蒸解物混合液から少量のナトリウムイオン高濃度含有液
に移行することになるため、該ナトリウムイオンを水酸
化ナトリウム等の蒸解薬液の有効成分として回収するこ
とは、比較的容易に行えるようになる。なお、上記のよ
うに蒸解廃液は、ナトリウムイオンを主として弱酸−強
アルカリのナトリウム塩又は水酸化ナトリウムとして含
有するためpHは通常10以上であるが、これらナトリウ
ム成分が濃縮されるナトリウムイオン高濃度含有液で
は、pHはこれよりさらに高くなる。また、ナトリウム
イオン低濃度含有液については、わずかの量のナトリウ
ムイオンが飛散して移行するだけであるためpHは蒸解
廃液よりも低くはなるが、それでも主として弱酸−強ア
ルカリのナトリウム塩又は水酸化ナトリウムとして移行
するためアルカリ性を呈する。
【0031】前記蒸解工程において水酸化ナトリウムに
加えて硫化ナトリウムを有効成分とする蒸解薬液を用い
る場合には、蒸解薬液中には、硫化ナトリウムが加水分
解して生成する硫化水素イオンが含まれる。その大部分
は蒸解工程において硫酸イオン(SO4 2−)やチオ硫酸イ
オン(S2O3 2−)に酸化されるが、一部は蒸解物混合液
中に硫化水素イオンのままとどまり、この硫化水素イオ
ンは、セルロース系繊維に随伴してごく一部だけがセル
ロース系繊維懸濁液に移行することを除けば、蒸解廃液
中に移行する。さらに、そのうちの大部分は蒸発工程に
おいてナトリウムイオン高濃度含有液に残留するが、残
りのわずかな量の硫化水素イオンは硫化水素やメタンチ
オール(CH3SH)等のチオールとして蒸解廃液から蒸発
する。また、後述のように、蒸解廃液をメタン発酵工程
において生成する可燃性ガスと接触させ、該可燃性ガス
中の硫化水素を該蒸解廃液中に吸収させた場合には、そ
の硫化水素に起因する硫化水素イオンについても、その
一部が蒸発工程において再び硫化水素として又はメタン
チオール等のチオールとして蒸解廃液から蒸発する。こ
のように一旦蒸発した硫化水素及びチオールは、その大
部分が後段の凝縮過程でナトリウムイオン低濃度含有液
側に移行するが、その一部は水蒸気とともに気相にとど
まる。硫化水素やチオールは気相のまま大気中に放散す
ると悪臭の問題が生じるが、これらはいずれも酸性又は
弱酸性であって容易にアルカリ性水溶液に溶解するた
め、それらを含む含有するガスを、アルカリ性水溶液で
ある蒸解物混合液、蒸解廃液又はナトリウムイオン高濃
度含有液、あるいは蒸解工程に使用する前の蒸解薬液に
気液接触させることにより、吸収除去することができ
る。
【0032】なお、蒸解廃液中に硫化ナトリウム及び/
又は硫化水素ナトリウムが比較的高い濃度で含まれる場
合には、濃縮分離工程で用いられる間接型蒸発缶の材料
が腐食することがある。この問題は、蒸解廃液を空気又
は酸素と接触させることにより、下式(4)及び(5)
の反応によって硫化ナトリウム及び硫化水素ナトリウム
をチオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)に酸化させることに
より回避又は軽減できる。 2Na2S+2O2+H2O → Na2S2O3+NaOH (4) 2NaSH+2O2 → Na2S2O3+H2O (5) そして、前記濃縮分離工程の前にこのような蒸解廃液酸
化工程を経ることによって、上記のように濃縮分離工程
で蒸発する硫化水素及びチオールの量を減少させること
ができる。
【0033】さて、蒸解廃液から濃縮分離されたナトリ
ウムイオン高濃度含有液中には有機酸イオンがナトリウ
ム塩として溶解しているだけでなく、それ以外にも非揮
発性の有機物が高濃度で溶解している。これらの有機酸
イオンを含む有機物は燃焼して水や二酸化炭素に酸化分
解されることによって燃焼熱を発生するが、特に、前記
濃縮分離工程で該ナトリウムイオン高濃度含有液の含水
率を50%程度以下に抑えられれば、有機物の燃焼熱が該
ナトリウムイオン高濃度含有液に含まれる水分の蒸発潜
熱を上回り、その燃焼熱を回収して利用できるようにな
るこのようにナトリウムイオン高濃度含有液が有する化
学エネルギーを有効に利用するため、本発明のリグノセ
ルロース系バイオマスの利用方法の一形態においては、
前記ナトリウムイオン高濃度含有液は回収ボイラにおい
て燃焼し、生成する燃焼残渣から前記蒸解薬液の有効成
分を回収するとともに、該回収ボイラでは燃焼熱を蒸気
又は温水として回収することとした。特に、回収ボイラ
の水管壁で蒸気を発生させて蒸気タービンを回転させた
場合には、回収された熱エネルギーを電力に転換するこ
ともできる。
【0034】ナトリウムイオン高濃度含有液を回収ボイ
ラで燃焼させると、有機酸ナトリウムは炭酸ナトリウム
(Na2CO3)に転換され、もともとナトリウムイオン高濃
度含有液中に含まれていた炭酸ナトリウムとともに燃焼
残渣として回収される。この燃焼残渣を水に溶解し、得
られた水溶液に水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を添加す
ると、下式(6)の反応によって水酸化ナトリウムとと
もに難溶性の炭酸カルシウム(CaCO3)が生成し、水溶
液中に分散した炭酸カルシウムを除去することによっ
て、水酸化ナトリウムの水溶液又は懸濁液を得ることが
できる。 Na2CO3+Ca(OH)2 → 2NaOH+CaCO3 (6)
【0035】前記蒸解工程において水酸化ナトリウムに
加えて硫化ナトリウムを有効成分とする蒸解薬液を用い
る場合、該硫化ナトリウムは、上記の蒸解工程及び蒸解
廃液酸化工程によって硫酸ナトリウムやチオ硫酸ナトリ
ウムに変化し、ナトリウムイオン高濃度溶液側に移行す
る。これらの硫黄含有ナトリウム成分はナトリウムイオ
ン高濃度含有液を燃焼する際に、硫化ナトリウムに転換
されて燃焼残渣中に移行し、最終的には水酸化ナトリウ
ムとともに共存して上記水溶液又は懸濁液中に溶解又は
分散することになる。このため、この混合水溶液又は混
合懸濁液は再び蒸解薬液として使用することができる。
その際、特に、ナトリウムイオン高濃度含有液中に硫化
ナトリウム及び/又は硫化水素ナトリウムが比較的高い
濃度で含まれる場合、それらの硫黄含有ナトリウム成分
は、下式(7)及び(8)でナトリウムイオン高濃度含
有液の燃焼ガス中の二酸化炭素と反応して硫化水素を生
成する。 Na2S+CO2+H2O → Na2CO3+H2S (7) 2NaSH+CO2+H2O → Na2CO3+2H2S (8) この問題は、ナトリウムイオン高濃度含有液の燃焼工程
に先立って、上式(4)又は(5)の反応によって硫化
ナトリウム及び硫化水素ナトリウムをチオ硫酸ナトリウ
ムに酸化する工程を経ることによって回避することがで
きる。なお、この酸化は、上記のようにナトリウムイオ
ン高濃度含有液を濃縮分離する前の蒸解廃液の段階で行
ってもよく、また、ナトリウムイオン高濃度含有液を濃
縮分離してから行ってもよい。
【0036】ただし、上記の工程においても、もともと
蒸解薬液中に含まれていたすべてのナトリウムイオンや
硫黄分を完全に回収することは通常不可能であり、わず
かに系外に流出した分については、ナトリウムイオン高
濃度含有液を回収ボイラで燃焼するに先立って、又は燃
焼残渣を水に溶解せしめる際に炭酸ナトリウムを補給す
ることによって補うことができる。あるいは、水酸化ナ
トリウムに加えて硫化ナトリウムを有効成分とする蒸解
薬液を用いる場合には、ナトリウムイオン高濃度含有液
を回収ボイラで燃焼するに先立って硫酸ナトリウムを補
充することで補うことができる。
【0037】本発明のリグノセルロース系バイオマスの
利用方法の蒸解工程からメタン発酵工程に至る工程を用
いてメタンを主成分とする可燃性ガスと蒸解廃液を得る
ための装置(以下、メタンガス発生装置という)と、該
蒸解廃液から濃縮分離することによって得たナトリウム
イオン高濃度含有液を燃焼させて前記蒸解薬液の有効成
分を得るための装置(以下、蒸解薬液回収装置という)
は、必ずしも近接して設置する必要はなく、また、メタ
ンガス発生装置一式に対して、蒸解薬液回収装置一式を
設置する必要もない。むしろ、上記のようにリグノセル
ロース系バイオマスは、森林等の生育場所で採取されて
から消費されるまでの間に長距離輸送したり、大量に貯
蔵したりするのには適していないのに対して、蒸解廃液
は液体であり輸送も貯蔵も比較的行いやすいこと、及び
ナトリウムイオン高濃度含有液を燃焼させる回収ボイラ
は大規模化する方が経済的であることを考慮すれば、メ
タンガス発生装置は森林等のリグノセルロース系バイオ
マスの採取場所に比較的近い場所に設置し、蒸解薬液回
収装置については、複数のメタンガス発生装置から発生
する蒸解廃液から濃縮分離されるナトリウムイオン高濃
度含有液を集中的に処理する装置を設置することが好適
である。その際、蒸解廃液をナトリウムイオン高濃度含
有液とナトリウムイオン低濃度含有液を分離する濃縮分
離装置については、メタンガス発生装置に近接して設置
してもよいし、蒸解薬液回収装置に近接して設置し、複
数のメタンガス発生装置から発生する蒸解廃液を集めた
上で濃縮分離してもよい。特に、複数のメタンガス発生
装置から発生する蒸解廃液を集めた上で濃縮分離する場
合には、蒸解廃液酸化工程についても、複数のメタンガ
ス発生装置から発生する蒸解廃液を集めた上で実施する
ことが好ましい。
【0038】本発明のリグノセルロース系バイオマスの
利用方法において、特に、水酸化ナトリウムに加えて硫
化ナトリウムを有効成分とする蒸解薬液を用いる場合に
は、蒸解薬液回収装置としてクラフトパルプ工場に設置
されている黒液濃縮装置以降又は回収ボイラ以降の蒸解
薬液回収装置を利用することができる。すなわち、本発
明のリグノセルロース系バイオマスの利用方法によって
生成したナトリウムイオン高濃度含有液又は蒸解廃液
は、クラフトパルプ工場の濃黒液又は稀黒液と混合さ
れ、そのままで又は濃縮された上で、さらに必要であれ
ば混合液中の硫化ナトリウム及び/又は硫化水素ナトリ
ウムを酸化した上で回収ボイラで燃焼される。そして、
生成した燃焼残渣は水に溶解せしめられ、得られた水溶
液は水酸化カルシウムを添加することにより苛性化さ
れ、副生した難溶性の炭酸カルシウムが除去されること
によって蒸解薬液の有効成分の水溶液、すなわち水酸化
ナトリウムと硫化ナトリウムの混合水溶液又は懸濁液
(白液)が得られる。そして、この混合水溶液又は懸濁
液の一部は本発明のリグノセルロース系バイオマスの利
用方法において使用され、残りはクラフトパルプ製造工
程において白液として使用される。このように本発明の
リグノセルロース系バイオマスの利用方法をクラフトパ
ルプ製造工程と組み合わせると、本発明のリグノセルロ
ース系バイオマスの利用方法を実施するにあたって蒸解
廃液の再利用に用いる設備を新設する必要度を軽減でき
るという利点がある。一方、クラフトパルプ工場におい
ても、回収ボイラで燃焼させる有機物の量が、本発明の
リグノセルロース系バイオマスの利用方法において得ら
れる蒸解廃液に含まれる有機物の分だけ増えるため、ク
ラフトパルプ製造工程で必要になる熱又は電力を得るた
めに燃焼させる化石燃料の量を減らせるという利点があ
る。特に、二酸化炭素による地球温暖化防止のため各ク
ラフトパルプ製造会社又は工場にクラフトパルプの製造
量に応じた二酸化炭素の排出枠が設定される場合には、
リグノセルロース系バイオマスから得られ、したがって
カーボンニュートラルな燃料である蒸解廃液又はナトリ
ウムイオン高濃度含有液を使用することによって排出枠
に余裕ができるため、その余裕分を二酸化炭素の排出権
として販売することも可能である。このように、本発明
のリグノセルロース系バイオマスの利用方法とクラフト
パルプ製造工程を結合した利用方法の場合、メタン発生
装置における水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムの混合
水溶液又は懸濁液(白液)の受入部と、クラフトパルプ
製造工程における蒸解廃液の受入部に、それぞれの液量
を計測する自動計量装置を設置し、計測された受入量と
あらかじめ設定した価格に基づき、コンピュータを用い
て、メタンガス発生装置の所有者とクラフトパルプ製造
工場の間の支払い金額を自動的に計算するシステムとす
ることができる。
【0039】また、本発明のリグノセルロース系バイオ
マスの利用方法とクラフトパルプ製造工程を結合する方
法としては、別の方法も可能である。すなわち、クラフ
トパルプ製造工程からセルロース系繊維懸濁液であるパ
ルプ懸濁液の一部を抜き出し、該パルプ懸濁液を、必要
であれば単糖類溶液、さらには有機酸溶液に転換した上
でメタン発酵工程に移送し、嫌気性微生物によって処理
することによって、メタンを主成分とする可燃性ガスを
発生せしめることができる。その際、生成した可燃性ガ
スは、クラフトパルプ製造工程において使用する熱や電
力をえるための燃料として使用することもできるし、既
存のパイプライン等を利用してパイプラインの所有者又
は遠隔の消費者に販売することができる。なお、この方
法においても、パルプ懸濁液をメタン発酵工程に移送す
る分、クラフトパルプだけを製造していた従来の運転状
態より黒液の発生量が増えることにより、クラフトパル
プ工場において、クラフトパルプ製造量あたりの化石燃
料の消費量を減らすことができるとともに二酸化炭素の
排出枠に余裕ができるというメリットが生じる。また、
可燃性ガスをパイプラインの所有者又は遠隔の消費者に
販売する場合には、上記のようにパイプラインの所有者
又は遠隔の消費者に自動的に課金するシステムとするこ
とができ、また、消費者に二酸化炭素の排出枠が設定さ
れている場合には、排出枠の余裕分を二酸化炭素の排出
権として販売することが可能であるため、それも考慮し
た価格設定とすることができる。
【0040】さて、前記ナトリウムイオン低濃度含有液
は、メタノールを主成分とする揮発性有機物を数千ppm
含有する。したがって、該ナトリウムイオン低濃度含有
液を系外に排出し、そのまま河川や海に放流すると、そ
の有機物が有する化学エネルギーが有効に利用されない
だけでなく、水質汚濁の問題を引き起こす可能性があ
る。このため、発明のリグノセルロース系バイオマスの
利用方法の一形態においては、前記ナトリウムイオン低
濃度含有液は、前記セルロース系繊維懸濁液、単糖類溶
液、又は有機酸溶液と混合の上、前記メタン発酵工程に
移送し、嫌気性微生物によって処理することとした。こ
れにより、ナトリウムイオン低濃度含有液が含有する有
機物が、必要であれば酸生成分解などの前処理を受けた
上で嫌気性微生物によって処理され、メタンを主成分と
する可燃性ガスに転換される。この際、メタノールはメ
タン生成菌によって直接メタンに転換されるため、加水
分解工程及び酸生成分解工程を経る必要はない。したが
って、ナトリウムイオン低濃度含有液は有機酸溶液と混
合することが好ましく、これによって加水分解工程と酸
生成分解工程での処理液量がナトリウムイオン低濃度含
有液の分だけ増加することを回避することができる。ま
た、前記のようにナトリウムイオン低濃度含有液はアル
カリ性であるため、これをメタン発酵工程に先立ってセ
ルロース系繊維懸濁液、単糖類溶液、又は有機酸溶液と
混合することは、メタン発酵工程の酸生成分解工程にお
ける有機酸の生成により、処理対象液のpHが低くなっ
て酸生成分解工程以降の工程が阻害されることを抑制す
る効果もある。
【0041】なお、ナトリウムイオン低濃度含有液のよ
うに、含有する有機物がメタノールを主成分として数千
ppmである液体をメタン発酵工程で処理する場合、処理
対象液中に硫化水素やチオール、さらにはジメチルスル
フィド(CH3SCH3)やジメチルジスルフィド(CH3SSC
H3)などの硫黄化合物が数百ppm程度共存すると、メタ
ン発酵工程のうち特にメタン生成工程を阻害することが
ある。しかし、本発明のリグノセルロース系バイオマス
の利用方法においては、有機物濃度が数〜数十%である
セルロース系繊維懸濁液、単糖類溶液又は有機酸溶液を
メタン発酵工程で処理するため、硫黄化合物の有機物に
対する比率が十分小さくなり、メタン生成工程に対する
影響も無視できるようになる。
【0042】さて、メタン発酵工程においては処理対象
液中の有機物のすべてが完全に分解されるわけではない
ため、メタン発酵工程の処理済液のBODは通常数百〜
数千ppmであり、したがって、該処理済液を系外に排出
しそのまま河川や海に放流すると、水質汚濁の問題を引
き起こす可能性がある。また、メタン発酵工程の処理対
象液中には、上記のように洗浄工程において蒸解物混合
液からセルロース系繊維懸濁液中にナトリウムイオンが
移行することよって、また、ナトリウムイオン低濃度含
有液をメタン発酵工程に移送する場合には、濃縮分離工
程において飛散したナトリウムイオンがナトリウム低濃
度含有液中に移行することによっても、ナトリウムイオ
ンが含有される。このナトリウムイオンは、一部がメタ
ン発酵工程において発生する汚泥に移行することを除け
ば、処理済液に移行するため、該処理済液を放流すると
ナトリウムイオンが流失することになり好ましくない。
【0043】このため、本発明のリグノセルロース系バ
イオマスの利用方法の一形態では、前記メタン発酵工程
の処理済液は、前記蒸解工程又は洗浄工程に返送して再
利用するものとした。これにより、メタン発酵工程の処
理対象液に移行したナトリウムイオンは、大部分が再び
「蒸解工程、洗浄工程及び濃縮分離工程」又は「洗浄工
程及び濃縮分離工程」を経て前記ナトリウムイオン高濃
度含有液へと移行し、特に、有機酸ナトリウムや炭酸ナ
トリウム等のナトリウム塩は、上記のような蒸解薬液回
収工程で蒸解薬液の主要有効成分である水酸化ナトリウ
ム等へと転化されて再度蒸解薬品として使用されること
になる。また、水酸化ナトリウムに加えて硫化ナトリウ
ムを有効成分とする蒸解薬液を使用する場合には、メタ
ン発酵工程の処理対象液に移行した硫酸イオンや硫化水
素イオンなどの硫黄分についても、大部分が再び「蒸解
工程、洗浄工程及び濃縮分離工程」又は「洗浄工程及び
濃縮分離工程」を経て前記ナトリウムイオン高濃度含有
液へと移行し、前記蒸解薬液回収工程で硫化ナトリウム
へと転化されて再度蒸解薬品として使用されることにな
る。これにより、仮にセルロース系繊維懸濁液側にナト
リウムイオンが比較的多量に移行したとしても、該セル
ロース系繊維懸濁液からのナトリウムイオンの流失は非
常に低いレベルに抑えられるため、ナトリウムイオンの
流失を防ぐために前記洗浄工程でセルロース系繊維懸濁
液側に移行するナトリウムイオンの濃度を著しく低いレ
ベルに抑える必要はない。このため、洗浄工程において
使用する洗浄液の量を極端に増やしたり、洗浄段数を増
やすことによって設備費・運転費が上昇することを回避
できる。
【0044】前記メタン発酵工程においては、セルロー
スやヘミセルロースが加水分解されて生成したグルコー
スなどの単糖類が有機酸に分解される酸生成分解工程で
二酸化炭素が発生し、その二酸化炭素の一部は同じく酸
生成分解工程で発生した水素とともにメタンへと転換さ
れるが、残りはガスとして放出される。また、二酸化炭
素は、生成したメタンの一部が酸化されることによって
も生成する。こうして、メタン発酵工程で生成した可燃
性ガスは二酸化炭素を含むことになるが、二酸化炭素は
不燃性であるため、二酸化炭素の存在によって該可燃性
ガスの単位体積あたりの発熱量が低下することになる。
一方、リグノセルロース系バイオマスに硫黄分が含まれ
る場合や、樹皮や葉などの硫黄分を比較的多く含む生細
胞バイオマスが混入する場合には、それらの硫黄分は蒸
解工程にて主として硫酸イオンやチオ硫酸イオンに転換
せしめられ、洗浄工程を経てセルロース系繊維懸濁液に
移行する。特に、蒸解薬品として水酸化ナトリウムとと
もに硫化ナトリウムを使用する場合、硫化ナトリウムか
ら上記の式(3)によって生成した硫化水素イオンは、
蒸解過程で主として硫酸イオンやチオ硫酸イオンへと酸
化され、同じくセルロース系繊維懸濁液に移行する。こ
の硫酸イオンは最終的にはメタン発酵工程の処理対象液
中に移行するが、メタン発酵工程においては、硫酸還元
菌が硫酸イオンやチオ硫酸イオンとメタノールや有機酸
を原料として硫化水素を生成せしめ、液中に溶解しきれ
なかった分はガスとして放出され、その結果、メタン発
酵工程で生成した可燃性ガス中に硫化水素が含有される
ことになる。特に、セルロース系繊維懸濁液やナトリウ
ムイオン低濃度含有液が硫化水素イオンを含有し、その
結果、メタン発酵工程の処理対象液が硫化水素を含有す
る場合には、メタン発酵工程で発生した硫化水素が溶解
する余地が小さくなるため、可燃性ガス中に含まれる硫
化水素の濃度が高くなる傾向がある。硫化水素は、それ
自体が有臭で有毒であるだけでなく、それを含む可燃性
ガスを燃焼させた場合には有毒で腐食性のある二酸化硫
黄等の硫黄酸化物が生成するため、燃料として使用され
るガス中に含まれることは好ましくない。
【0045】このため、本発明のリグノセルロース系バ
イオマスの利用方法の一形態では、前記メタン発酵工程
において生成する可燃性ガスを前記蒸解物混合液、蒸解
廃液又はナトリウムイオン高濃度含有液と接触させ、該
可燃性ガス中の二酸化炭素及び/又は硫化水素を該蒸解
物混合液、蒸解廃液又はナトリウムイオン高濃度含有液
中に吸収させることにより、メタンを主成分として二酸
化炭素と硫化水素をわずかしか、又はほとんど含まない
可燃性ガスを得ることとした。上記のように蒸解物混合
液、蒸解廃液及びナトリウムイオン高濃度含有液は、ナ
トリウムイオンを主として弱酸−強アルカリのナトリウ
ム塩又は水酸化ナトリウムとして含有するためpHは通
常10以上である。一方、二酸化炭素と硫化水素はともに
酸性ガスであってアルカリ性水溶液には溶け易く、ま
た、可燃性ガスの主成分であるメタンは水溶液には難溶
であるため、メタン発酵工程において生成する可燃性ガ
スを蒸解廃液と接触させることによって、可燃性ガス中
の二酸化炭素と硫化水素は選択的に吸収除去することが
できる。蒸解物混合液、蒸解廃液又はナトリウムイオン
高濃度含有液中に吸収された二酸化炭素と硫化水素は、
下式(9)及び(10)の反応で蒸解物混合液、蒸解廃
液又はナトリウムイオン高濃度含有液中に含まれる未反
応の水酸化ナトリウムと反応し、それぞれ炭酸ナトリウ
ム及び硫化水素ナトリウムに転換される。 CO2+2NaOH → Na2CO3+H2O (9) H2S+NaOH → NaSH+H2O (10) そして、特にメタンを主成分とする可燃性ガスを前記蒸
解物混合液又は蒸解廃液と接触させた場合には、蒸解物
混合液又は蒸解廃液中で生成した炭酸ナトリウム及び硫
化水素ナトリウムは、洗浄工程及び濃縮分離工程、又は
濃縮分離工程を経てナトリウムイオン高濃度含有液側に
移行せしめられ、ほんのわずかな部分だけがセルロース
系繊維懸濁液中又はナトリウムイオン低濃度含有液側に
移行する。
【0046】なお、蒸解工程において蒸解薬液中の水酸
化ナトリウムがほとんど消費され、蒸解物混合液、蒸解
廃液又はナトリウムイオン高濃度含有液中の水酸化ナト
リウム濃度があまり高くない場合には、該蒸解物混合
液、蒸解廃液又はナトリウムイオン高濃度含有液と接触
させた後の可燃性ガス中の硫化水素濃度を著しく低いレ
ベルまで落とせないことがある。この場合には、蒸解物
混合液、蒸解廃液又はナトリウムイオン高濃度含有液と
接触させた後のガスを、水酸化ナトリウムを高濃度で含
有する蒸解工程に使用する前の蒸解薬液と接触させるこ
とによって、可燃性ガス中の硫化水素濃度を著しく低い
レベルまで落とすことができる。この場合、蒸解薬液中
に吸収された硫化水素は上記の式(6)によって硫化水
素ナトリウムに転換され、生成した硫化水素イオンは蒸
解工程においてリグニンの分解に寄与することになる。
【0047】蒸解物混合液、蒸解廃液又はナトリウムイ
オン高濃度含有液と可燃性ガスを気液接触させるにはガ
ス吸収塔などのガス吸収装置を用いることができ、気液
接触の方式としては、ガス中に蒸解物混合液、蒸解廃液
又はナトリウムイオン高濃度含有液を噴霧するスプレー
方式、ガス吸収器内に充填物を設け、充填物の表面で気
液接触させる方式、蒸解廃液を多孔板を通して流下させ
てガスと気液接触させる方式、又は蒸解物混合液、蒸解
廃液又はナトリウムイオン高濃度含有液中に可燃性ガス
をバブリングさせる方式を用いることができる。なお、
二酸化炭素と硫化水素の平衡分圧は、いずれも吸収液の
温度が低いほど小さいため、蒸解物混合液、蒸解廃液又
はナトリウムイオン高濃度含有液を冷却した上で、メタ
ン発酵工程で得られた可燃性ガスと接触させることによ
って接触後の可燃性ガス中の二酸化炭素と硫化水素の濃
度を低くすることができる。その際、蒸解物混合液、蒸
解廃液又はナトリウムイオン高濃度含有液の温度は50℃
以下とすることが好ましい。
【0048】さて、メタン発酵工程によりセルロース系
繊維懸濁液を処理し、メタンを主成分とする可燃性ガス
を回収する場合、律速過程となるのは通常メタン生成菌
によるメタン生成工程であるが、このメタン生成工程
は、メタン生成菌として代謝速度の速い中温性メタン生
成菌や高温性メタン生成菌を使用することによりメタン
生成速度を速くすることができる。しかし、中温性メタ
ン生成菌の至適温度は30〜40℃であり、高温性メタン生
成菌の至適温度は50〜57℃であるため、処理対象液をそ
の温度まで加熱する又は維持するための熱源が必要であ
る。このため、本発明のリグノセルロース系バイオマス
の利用方法の一形態では、前記蒸解工程及び/又は濃縮
分離工程において供給した熱の一部を回収し、該回収熱
によって前記メタン発酵工程の処理対象液を加温するこ
ととした。これにより、メタン発酵工程の処理対象液を
加温するために新たな熱源を用意する必要はなくなる
か、新たな熱源が必要になるにしてもその必要量は少な
くて済む。なお、メタン生成工程を加水分解工程や酸生
成分解工程と分離する場合、前記回収熱によるメタン発
酵工程の処理対象液の加温は、セルラーゼ生産菌やヘミ
セルラーゼ生産菌及び/又は酸生成菌として至適温度が
メタン生成菌と同程度のものを選ぶことによって、加水
分解工程の前又は酸生成分解工程の前に行うことも可能
である。
【0049】前記蒸解工程においては、蒸解薬液は通常
100℃以上に加熱されるが、その際供給された熱は蒸解
物混合液、さらには蒸解物混合液が洗浄工程において分
離されるセルロース系繊維懸濁液と蒸解廃液に移行す
る。そして、この蒸解物混合液等が保有する熱は、蒸解
物混合液等と冷却水を間接的に熱交換して温水又は蒸気
を得ることによって回収することができる。あるいは、
特に、蒸解物混合液等の温度が100℃以上の場合には、
密閉状態を開放することによって蒸解物混合液等からフ
ラッシュ蒸気を発生させ、蒸解物混合液等が保有する顕
熱をフラッシュ蒸気の潜熱として回収することができ、
必要であれば該フラッシュ蒸気と冷却水を間接的に熱交
換して温水又は蒸気を得ることができる。このようにし
て得られた温水又は蒸気をメタン発酵工程の処理対象液
と間接的に熱交換することによって、該処理対象液を加
温することができる。あるいは、蒸解物混合液等又は蒸
解物混合液等から発生するフラッシュ蒸気と間接的に熱
交換する冷却水としてメタン発酵工程の処理対象液を用
いることによって、該処理対象液を中間的な熱媒体を介
さずに直接加温することも可能である。
【0050】蒸解釜として連続式蒸解釜を用いる場合、
洗浄工程の少なくとも一部を蒸解釜の内部で行う場合に
はセルロース系繊維懸濁液と蒸解廃液が、行わない場合
には蒸解物混合液が蒸解釜から連続的に排出されるた
め、セルロース系繊維懸濁液と蒸解廃液、又は蒸解物混
合液が保有する熱は、それらの排出物が蒸解釜から排出
された後に回収される。特に、該排出物の温度が100℃
を超える場合には、一旦ブロータンクに貯留し、該ブロ
ータンクで密閉状態を開放することによって排出物が保
有する顕熱をフラッシュ蒸気の潜熱として回収すること
ができる。一方、蒸解釜としてバッチ式蒸解釜を用いる
場合には、連続式蒸解釜を用いる場合と同じく、セルロ
ース系繊維懸濁液と蒸解廃液、又は蒸解物混合液が保有
する熱は、それらの排出物が蒸解釜から排出された後に
回収することができるが、蒸解物混合液を蒸解釜中に保
持した状態で回収することも可能である。具体的には、
蒸解釜のリリーフ弁を開いて密閉状態を開放することに
より、フラッシュ蒸気を発生させることができ、あるい
は、蒸解薬液の循環ライン又は蒸解釜内部の間接熱交換
器又は熱交換用配管で蒸解物混合液と冷却水を熱交換す
ることによって蒸気又は温水を回収することができる。
その際、熱交換用配管としては、前記蒸解工程において
蒸解薬液を加熱するために用いた間接熱交換器又は熱交
換用配管を転用し、蒸気の替わりに冷却水を流すことが
できる。
【0051】なお、上記のようにメタン発酵工程におけ
る処理対象液を加温すべき温度はたかだか55℃程度であ
るため、それを加熱するための熱源としては、必ずしも
蒸気や100℃近い高温の温水を使用する必要はないた
め、上記のような熱回収工程において蒸気や高温の温水
が得られた場合には、より高温の熱源が必要な工程に使
用し、その際に発生する蒸気凝縮水などの温排水をメタ
ン発酵工程の処理対象液を加温する熱源としてカスケー
ド的に利用することが好ましい。特に、蒸解物混合液が
保有する熱を蒸気(フラッシュ蒸気を含む)として回収
する場合には、該蒸気を、リグノセルロース系バイオマ
スを蒸解薬液に浸漬させるに先立って該リグノセルロー
ス系バイオマスと接触させる蒸気として利用したり、前
記濃縮分離工程の熱源として利用し、生成した温排水を
メタン発酵工程の処理対象液の熱源として利用すること
ができる。なお、蒸解釜としてバッチ式蒸解釜を用いる
場合、フラッシュ蒸気や高温の蒸解物混合液から回収さ
れる熱は時間的に大きな変動がある。この変動を吸収し
てメタン発酵工程における処理対象液を一定の温度に保
つためには、熱の吸収体として大量の水を用いればよ
い。
【0052】前記熱回収工程において発生したフラッシ
ュ蒸気は、冷却水と間接的に熱交換することにより凝縮
せしめられるが、その際に発生するフラッシュ蒸気凝縮
液は、水分だけでなくメタノール等の揮発性有機物を含
有する。したがって、該フラッシュ蒸気凝縮液を系外に
排出し、そのまま河川や海に放出すると、その有機物が
有する化学エネルギーが有効に利用されないだけでな
く、水質汚濁の問題を引き起こす可能性がある。このた
め、フラッシュ蒸気凝縮液は、前記洗浄工程で分離され
たセルロース系繊維懸濁液、又は蒸解廃液と混合せしめ
られて処理される。これにより、フラッシュ蒸気凝縮液
中に含まれる有機物は、最終的にはメタン発酵工程にお
いてメタンを主成分とする可燃性ガスに転換されるか、
蒸解薬液回収工程において回収ボイラで燃焼せしめられ
てその燃焼熱を回収することができる。なお、フラッシ
ュ蒸気凝縮液は、その性状がナトリウムイオン低濃度含
有液と類似しているため、ナトリウムイオン低濃度含有
液と同じく有機酸溶液と混合の上、メタン発酵工程に移
送することが好ましい。
【0053】前記蒸解工程において水酸化ナトリウムに
加えて硫化ナトリウムを有効成分とする蒸解薬液を用い
る場合には、蒸解廃液、蒸解物混合液、及びセルロース
系繊維以外の溶解固形分濃度を十分に低く抑えていない
セルロース系繊維懸濁液中には上記のように硫化水素イ
オンが含まれる。このため、これらの液体からフラッシ
ュ蒸気を放出させる場合には、該硫化水素イオンは硫化
水素やメタンチオール等のチオールとして蒸発する。蒸
発した硫化水素やチオールの大部分は凝縮液中に移行す
るが、一部は気相のまま外部に放散して臭気の問題を引
き起こす。この問題を回避するためには、フラッシュ用
バルブを開放して蒸気を放出させることによって蒸解薬
液を冷却する代わりに、熱交換用配管に蒸気に替えて冷
却水を流して間接的に熱交換ことによって冷却すること
ができる。
【0054】
【実施例】図1は、本発明のリグノセルロース系バイオ
マスの利用方法の一例を示すフロー工程図である。木材
等のリグノセルロース系バイオマスは、必要であれば破
砕又は切断された上で、水酸化ナトリウムと硫化ナトリ
ウムが溶解した水溶液又は分散した懸濁液である蒸解薬
液とともに、圧力容器で構成された蒸解釜1の頂部に設
けられたそれぞれの供給口から蒸解釜1の内部に供給さ
れる。その際、蒸解薬液の供給量は、リグノセルロース
系バイオマスに対するNaOH+1/2Na2SのNa2O換算での重
量比が10〜30%(乾ベース)となるように調整し、ま
た、蒸解薬液の溶解固形分濃度はNa2O換算で10〜50g/l
となるように調整する。蒸解薬液は循環ラインに抜き出
され、該循環ラインに設けられた間接熱交換器である蒸
解薬液加熱器2で蒸気と間接的に熱交換することによっ
て160〜200℃に加熱される。リグノセルロース系バイオ
マスは該加熱蒸解薬液の領域を徐々に沈降し、底部に至
るまで1〜3時間滞留する間にセルロース及びヘミセル
ロースを主成分とする繊維細胞が離解し、セルロース系
繊維が液中に分散するとともにその他の溶解固形分が溶
解又は分散した蒸解物混合液が得られる。蒸解釜1の底
部の供給口からは洗浄液IIが供給されて底部付近に洗浄
液の領域が形成され、該洗浄液領域にセルロース系繊維
が拡散・移行することによってセルロース系繊維懸濁液
Iが得られる。該セルロース系繊維懸濁液Iは蒸解釜1の
底部に設けられた抜出口から排出され、一方、底部の供
給口から供給された洗浄液IIの一部とセルロース系繊維
が脱離した蒸解物混合液の残余部分の混合物は、蒸解釜
1の底部の洗浄液領域よりも上部に位置する別の抜出口
から蒸解廃液として抜き出される。前記セルロース系繊
維懸濁液Iはブロータンク3に一旦貯留され、フラッシ
ュ蒸気を放出することによって圧力を大気圧に下げると
ともに100℃以下に冷却される。該冷却後のセルロース
系繊維懸濁液Iは、ディフュージョンウォッシャ4に供給
されて洗浄液Iによって置換洗浄され、ナトリウムイオ
ン濃度がセルロース系繊維懸濁液Iより低いセルロース
系繊維懸濁液IIと洗浄廃液に分離される。このうち洗浄
廃液は前記洗浄液IIとして蒸解釜1に供給され、一方、
セルロース系繊維懸濁液IIは、必要であれば置換洗浄及
び/又は稀釈洗浄を繰り返すことによってナトリウムイ
オン濃度をさらに低くした上で、加水分解槽5に供給さ
れる。加水分解槽5においては、セルロース系繊維懸濁
液II中のセルロース系繊維がセルラーゼ生産菌やヘミセ
ルラーゼ生産菌を含む微生物によってグルコース等の単
糖類へと加水分解される。こうして得られた単糖類溶液
は酸生成槽6へと供給され、酸生成槽6では単糖類が酸
生成菌によって酢酸等の揮発性脂肪酸を主体とする有機
酸へと分解されることにより有機酸溶液が得られ、該有
機酸溶液はUASB装置であるメタン生成槽7へと送ら
れる。一方、蒸解釜1から抜き出された蒸解廃液はフラ
ッシュタンク8に移送され、フラッシュ蒸気を放出する
ことによって圧力を大気圧に下げるとともに100℃以下
に冷却された上で、多重効用蒸発缶である濃縮分離装置
9へと供給される。該蒸解廃液は濃縮分離装置9におい
て蒸気と間接的に熱交換することにより、メタノール等
の揮発成分を含む蒸気が生成し、生成した揮発成分含有
蒸気が残余の液体と間接的に熱交換することによって揮
発成分含有蒸気は凝縮する一方、残余の液体から再び揮
発成分含有蒸気が生成する、ということを繰り返すこと
により、最終的には、ナトリウムイオン高濃度含有液I
とナトリウムイオン低濃度含有液に分離される。このう
ちナトリウムイオン低濃度含有液は、前記有機酸溶液と
ともにUASB装置であるメタン生成槽7に送られ、そ
れら液体中の有機酸及びメタノールはメタン生成菌によ
って、メタン、二酸化炭素及び水に分解され、そのうち
水に溶存できない成分がガス体として放出され、結果と
して、メタンを主成分とし、十〜数十%の二酸化炭素
と、若干の硫化水素を含む可燃性ガスIが得られる。こ
の可燃性ガスIは充填塔であるガス吸収装置10に送ら
れ、濃縮分離装置9から移送されてきたナトリウムイオ
ン高濃度含有液Iと気液接触せしめられ、該可燃性ガスI
に含まれる二酸化炭素と硫化水素はナトリウムイオン高
濃度含有液Iによって吸収除去される。こうして、メタ
ンを主成分として二酸化炭素と硫化水素をわずかしか、
又はほとんど含まない可燃性ガスIIが得られる。一方、
ナトリウムイオン高濃度含有液Iが二酸化炭素及び/又
は硫化水素を吸収することによって得られたナトリウム
イオン高濃度含有液IIは、必要であれば、炭酸ナトリウ
ム及び/又は硫酸ナトリウムを添加した上で、回収ボイ
ラ11に送られ燃焼せしめられる。そこで得られた燃焼残
渣を溶解タンク12で補給水に溶解せしめて残渣水溶液を
得た後、該残渣水溶液は必要であれば不溶解分を除去し
た上で苛性化槽13へ送り、水酸化カルシウムを添加さ
れ、生成した炭酸カルシウムを除去することによって蒸
解薬液が回収される。また、回収ボイラ11には水管壁が
設けられており、ナトリウムイオン高濃度含有液IIの燃
焼熱を蒸気として回収する。なお、メタン生成槽7で可
燃性ガスと分離せしめられた液体は、汚泥を除去した上
で稀釈槽14へ送られ補給水で稀釈されることにより洗浄
液Iが得られる。そして、該洗浄液Iは、上記のようにデ
ィフュージョンウォッシャ4に供給される。
【0055】図2は、本発明のリグノセルロース系バイ
オマスの利用方法のもう一つの例を示すフロー工程図で
あり、特に、蒸解工程及び濃縮分離工程において供給し
た熱の一部の回収と、回収熱によるメタン発酵工程の処
理対象液の加温を説明したフロー工程図である。ガス燃
焼ボイラ15で発生せしめられた蒸気は蒸解薬液加熱器2
に供給され、蒸解薬液及び蒸解廃液と間接的に熱交換す
ることによって相手を加熱する一方、自らは凝縮して温
排水となる。また、ガス燃焼ボイラ15で発生せしめられ
た蒸気は濃縮分離装置9にも供給され、蒸解廃液と間接
的に熱交換することによって相手から水分及び揮発成分
を蒸発させる一方、自らは凝縮して温排水となる。そし
て、蒸解薬液加熱器2及び濃縮分離装置9で発生した温
排水は温排水槽16で回収される。なお、濃縮分離装置9
で蒸発した揮発成分含有蒸気は凝縮せしめられてナトリ
ウムイオン低濃度含有液として回収される。また、ブロ
ータンク3から放出せしめられたフラッシュ蒸気I及び
フラッシュタンク8から放出せしめられたフラッシュ蒸
気IIは、それぞれフラッシュ蒸気I凝縮器17とフラッシ
ュ蒸気II凝縮器18に送られ、冷却水槽19から供給された
冷却水と間接的に熱交換することによって自らは凝縮す
る一方、冷却水を加熱して温排水を生成せしめる。そし
て、これらの温排水は温排水槽16で回収される。このよ
うに温排水槽16に回収された温排水は加温用温水として
間接熱交換器である処理対象液加熱器20に供給され、加
水分解槽6で生成した有機酸溶液と間接的に熱交換する
ことによって該有機酸溶液を50℃〜55℃に加温する一
方、自らは冷却されて冷却水槽19に回収される。回収さ
れた冷却水は、上記のようにフラッシュ蒸気I凝縮器17
及びフラッシュ蒸気II凝縮器18に供給されるとともに、
一部はガス燃焼ボイラ15に供給されて蒸気に転換され
る。一方、加温された有機酸溶液はメタン生成槽7に送
られ、有機酸溶液中の有機酸及びメタノールが分解され
ることによってメタンを主成分とする可燃性ガスが発生
し、該可燃性ガスの一部はガス燃焼ボイラに送られて燃
焼せしめられ、その燃焼熱によって蒸気が発生せしめら
れる。
【0056】図3は、本発明のリグノセルロース系バイ
オマスの利用方法のもう一つの例を示すフロー工程図で
あり、特に、本発明のリグノセルロース系バイオマスの
利用方法とクラフトパルプ(図中ではKPと略記する)
製造工程を結合した利用方法を説明したフロー工程図で
ある。蒸解釜1から抜き出されたセルロース系繊維懸濁
液は、図には示されていない工程を経た後、メタンを主
成分とし、十〜数十%の二酸化炭素と、若干の硫化水素
を含む可燃性ガスIに転換せしめられる。該可燃性ガスI
は、同じく蒸解釜1から抜き出された蒸解廃液Iとガス
吸収装置10で気液接触せしめられ、該可燃性ガスIに含
まれる二酸化炭素と硫化水素は蒸解廃液Iによって吸収
除去される。こうして、メタンを主成分として二酸化炭
素と硫化水素をわずかしか、又はほとんど含まない可燃
性ガスIIが得られ、一方、蒸解廃液Iが二酸化炭素及び
/又は硫化水素を吸収することによって蒸解廃液IIが得
られる。以上の装置及び工程からなる複数のメタンガス
発生装置から得られた蒸解廃液IIは、クラフトパルプ製
造工程から得られるクラフトパルプ黒液ともに混合槽21
に送られて混合せしめられ、得られた混合廃液は散気管
式曝気槽である酸化装置22において空気と気液接触せし
められることにより、混合廃液中の硫化ナトリウム及び
/又は硫化水素ナトリウムがチオ硫酸ナトリウムに酸化
せしめられた後、多重効用蒸発缶である濃縮分離装置9
へと供給される。酸化後の混合廃液は濃縮分離装置9に
おいて蒸気と間接的に熱交換することにより、メタノー
ル等の揮発成分を含む蒸気が生成し、生成した揮発成分
含有蒸気が残余の液体と間接的に熱交換することによっ
て揮発成分含有蒸気は凝縮する一方、残余の液体から再
び揮発成分含有蒸気が生成する、ということを繰り返す
ことにより、最終的には、ナトリウムイオン高濃度含有
液とナトリウムイオン低濃度含有液に分離される。この
うちナトリウムイオン高濃度含有液は、必要であれば、
炭酸ナトリウム及び/又は硫酸ナトリウムを添加した上
で、回収ボイラ11に送られ燃焼せしめられる。そこで得
られた燃焼残渣を溶解タンク12で補給水に溶解せしめて
残渣水溶液を得た後、該残渣水溶液は必要であれば不溶
解分を除去した上で苛性化槽13へ送り、水酸化カルシウ
ムを添加され、生成した炭酸カルシウムを除去すること
によって蒸解薬液が回収される。また、回収ボイラ11に
は水管壁が設けられており、ナトリウムイオン高濃度含
有液の燃焼熱を蒸気として回収される。このようにして
得られた蒸解薬液の一部はクラフトパルプ製造工程に送
られ、残りは、蒸解廃液IIの供給源である複数のメタン
ガス発生装置へ送られ、再び蒸解釜1に供給される。
【0057】
【発明の効果】本発明によれば、メタンを主成分とする
可燃性ガスは、リグノセルロース系バイオマスを構成す
る有機物を嫌気性微生物が分解することによって生成せ
しめられるため、該可燃性ガスは一酸化炭素及びタール
分を含まない。また、本発明を構成する工程はすべて20
0℃程度以下で行われるため、高価な耐熱性材料を必要
とすることはない。さらに、本発明を構成する工程はす
べて水溶液中又は水を媒体とする懸濁液中で進行するた
め、原料のリグノセルロース系バイオマスが含む水分を
蒸発させる必要はなく、したがって、該水分を蒸発させ
ることによるエネルギーの損失は伴わない。また、特
に、メタン発酵工程において発生したメタンを主成分と
する可燃性ガスを、蒸解物混合液、蒸解廃液又ナトリウ
ムイオン高濃度含有液と気液接触させることによって、
メタンを主成分とし二酸化炭素及び硫化水素をわずかし
か、又はほとんど含まない可燃性ガスを得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】リグノセルロース系バイオマスの利用方法を示
すフロー工程図である。
【図2】リグノセルロース系バイオマスの利用方法のも
う一つの例を示すフロー工程図であり、特に、蒸解工程
及び濃縮分離工程において供給した熱の一部の回収と、
回収熱によるメタン発酵工程の処理対象液の加温を説明
したフロー工程図である。
【図3】リグノセルロース系バイオマスの利用方法のも
う一つの例を示すフロー工程図であり、特に、本発明の
リグノセルロース系バイオマスの利用方法とクラフトパ
ルプ製造工程を結合した利用方法を説明したフロー工程
図である。
【符号の説明】
1 蒸解釜 2 蒸解薬液加熱器 3 ブロータンク 4 ディフュージョンウォッシャ 5 加水分解槽 6 酸生成槽 7 メタン生成槽 8 フラッシュタンク 9 濃縮分離装置 10 ガス吸収装置 11 回収ボイラ 12 溶解タンク 13 苛性化槽 14 稀釈槽 15 ガス燃焼ボイラ 16 温排水槽 17 フラッシュ蒸気I凝縮器 18 フラッシュ蒸気II凝縮器 19 冷却水槽 20 処理対象液加熱器 21 混合槽 22 酸化装置

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】リグノセルロース系バイオマスを水酸化ナ
    トリウムを主要有効成分とする蒸解薬液に浸漬させるこ
    とによりセルロース系繊維を離解させて蒸解物混合液を
    得る蒸解工程、該蒸解物混合液に水、水溶液又は水を媒
    体とする懸濁液を加えた上でセルロース系繊維懸濁液と
    蒸解廃液に分離する洗浄工程、該セルロース系繊維懸濁
    液、又は該セルロース系繊維懸濁液中のセルロース系繊
    維を加水分解して得た単糖類溶液、又は該単糖類溶液中
    の単糖類を酸生成分解して得た有機酸溶液を嫌気性微生
    物によって処理し、メタンを主成分とする可燃性ガスを
    発生せしめるメタン発酵工程からなるリグノセルロース
    系バイオマスの利用方法。
  2. 【請求項2】前記蒸解廃液は濃縮分離工程に移送し、該
    濃縮分離工程においてナトリウムイオン高濃度含有液と
    ナトリウムイオン低濃度含有液に分離し、該ナトリウム
    イオン高濃度含有液から前記蒸解薬液の有効成分を回収
    することを特徴とする、請求項1に記載のリグノセルロ
    ース系バイオマスの利用方法。
  3. 【請求項3】前記ナトリウムイオン高濃度含有液は回収
    ボイラにおいて燃焼し、生成する燃焼残渣から前記蒸解
    薬液の有効成分を回収するとともに、該回収ボイラでは
    燃焼熱を蒸気又は温水として回収することを特徴とす
    る、請求項2に記載のリグノセルロース系バイオマスの
    利用方法。
  4. 【請求項4】前記ナトリウムイオン低濃度含有液は、前
    記セルロース系繊維懸濁液、単糖類溶液、又は有機酸溶
    液と混合の上、前記メタン発酵工程に移送し、嫌気性微
    生物によって処理することを特徴とする、請求項2又は
    3に記載のリグノセルロース系バイオマスの利用方法。
  5. 【請求項5】前記メタン発酵工程の処理済液は、前記蒸
    解工程又は洗浄工程に返送して再利用することを特徴と
    する、請求項1から4に記載のリグノセルロース系バイ
    オマスの利用方法。
  6. 【請求項6】前記メタン発酵工程において生成する可燃
    性ガスを前記蒸解物混合液、蒸解廃液又はナトリウムイ
    オン高濃度含有液と接触させ、該可燃性ガス中の二酸化
    炭素及び/又は硫化水素を該蒸解物混合液中、蒸解廃液
    中又はナトリウムイオン高濃度含有液中に吸収させるこ
    とを特徴とする、請求項1から5に記載のリグノセルロ
    ース系バイオマスの利用方法。
  7. 【請求項7】前記蒸解工程及び/又は濃縮分離工程にお
    いて供給した熱の一部を回収し、該回収熱によって前記
    メタン発酵工程の処理対象液を加温することを特徴とす
    る、請求項1から6に記載のリグノセルロース系バイオ
    マスの利用方法。
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