図1〜図3は、本発明に係る常時給電装置の基本形態を示すものである。
この給電装置1は、合成樹脂製のベース2とカバー3とで成るプロテクタ4と、ベース2の内側の略環状の屈曲規制壁5に沿って屈曲自在に設けられた金属製の板ばね6と、屈曲規制壁5に沿ってループ状に屈曲して配索されるワイヤハーネス7と、板ばね6の先端部に固定され、ワイヤハーネス7の長手方向中間部(ループ部8)においてワイヤハーネスの外周の保護チューブ25,26を相互に連結固定する合成樹脂製のばねホルダ(ハーネス保持部品)9とを備えたものである。この給電装置1は主に自動車のスライドドア(図示せず)に搭載される。
プロテクタ4のベース2とカバー3は、略三角形ないし略台形状の垂直な基板部10,11と、基板部10,11の上側と前後に直交する幅狭な周壁12,13とを備え、周壁12,13はほぼ垂直な前端壁12a,13aと短い水平な上端壁12b,13bと傾斜状の長い後壁12c,13cとで構成され、ベース2の周壁12の外側にカバー3の周壁13が重なりつつベース2とカバー3が合体し、プロテクタ4の下端側にワイヤハーネス7を導出させる長形の開口14が形成されている。
カバー3の下部開口14側には断面湾曲状のハーネスガイド壁15が外向きに形成されている。カバー3の略中央にはベース側の屈曲規制壁5の内側に係合する環状壁5”(図1)が突設されている。プロテクタ4は従来(図14)のものよりも低背に形成されている。これは、ワイヤハーネス7を柔軟な網チューブ26で屈曲規制壁5に沿ってループ状に小径に屈曲させつつプロテクタ内に収容する構造によってもたらされるものである。屈曲規制壁5は環状の壁部5’とこれに続く湾曲状のガイド壁23とで構成されている。プロテクタ4はブラケット部17でスライドドア内に縦置きに固定される。
ベース(プロテクタベース)2のほぼ中央に屈曲規制壁5の環状の壁部5’が一体に設けられ、環状の壁部5の後部側(図で左側)にばね固定部18が一体に設けられ、ばね固定部18の後側に隣接して基板部10にハーネス導出溝19が設けられ、ハーネス導出溝19は上向きに延びる樋状の壁部21の内側に形成され、ハーネス導出溝19と交差するベース2の周壁12にハーネス挿通用の切欠部22が設けられている。ハーネス導出口19の後側に隣接して環状の壁部5’の上部から湾曲状のハーネスガイド壁23が略逆「の」の字状に連続して設けられている。ガイド壁23も屈曲規制壁5の一部である。ガイド壁23を含む屈曲規制壁5は略環状に形成されている。なお、給電装置1の前後は車両の前後と一致する。
ばね固定部18においてスリット孔24に板ばね6の基端部が圧入固定され、板ばね6は屈曲規制壁5に沿って外向き(拡径方向)の復元力を存しつつ最大で屈曲規制壁5の全周の略3/4程度の角度で屈曲して位置する。板ばね6は自由状態において真直に伸び、プロテクタ4へのセット時に弾性的に屈曲する。
板ばね6の外側でワイヤハーネス7が屈曲規制壁5に沿ってループ状に配索されつつ、ワイヤハーネス7の一方7aが導出溝19から上向きに導出され、樋状の壁部21側で固定されてスライドドア内に配索され、パワーウィンドユニットやドアロックユニットやドアミラーユニット等の各補機(図示せず)に接続され、ワイヤハーネス7の他方7bがガイド壁23から下部開口14を経て車両ボディ側に配索される。ばねホルダ9を含むワイヤハーネス部分は導出溝19内のハーネス部分に干渉することなく、基板部10の内面に沿ってスムーズに揺動自在である。
板ばね6の先端部にばねホルダ9が固定され、ばねホルダ9の一方にワイヤハーネス7の外周のコルゲートチューブ25が固定され、ばねホルダ9の他方にワイヤハーネス7の外周の網チューブ(編みチューブ)26が固定されている。プロテクタベース2の導出溝19から屈曲規制壁5に沿ってばねホルダ9までの範囲で網チューブ26が用いられ、ばねホルダ9から下部開口14を経て車両ボディまでの範囲でコルゲートチューブ25が用いられている。網チューブ26とコルゲートチューブ25とがばねホルダ9を介して連結されている。
網チューブ26は柔軟でコルゲートチューブ25よりも屈曲性に富み、コルゲートチューブ25は網チューブ26よりも硬質で剛性及び防水性を有してワイヤハーネス7内の電線27を外部との干渉や浸水等から安全に保護する。コルゲートチューブ7は凹溝と凸条とを交互に配設したものであり、本例のコルゲートチューブ7は断面長円形に形成され、断面縦長に配置される。ワイヤハーネス7は各保護チューブ25,26とその内側に収容された複数本の電線27とで構成される。網チューブ26とコルゲートチューブ25の組み合わせはどのような組み合わせとしてもよい(例えばコルゲートチューブ同士としてもよく、網チューブ同士としてもよい)。
ばねホルダ9は屈曲規制壁5の外周面すなわち環状の壁部5’とガイド壁23との外周面に沿って摺動自在で、屈曲規制壁5の接線方向に略くの字状に屈曲形成されている。ばねホルダ9は、コルゲートチューブ25を固定する先端側の第一の固定部28と、網チューブ26を固定する基端側の第二の固定部29とを有している。
図2は車両右側のスライドドアの全開時の状態であり、スライドドアは給電装置1と共に車両後方に移動し、ワイヤハーネス7のコルゲートチューブ部分25がプロテクタ4の下部開口14から前方(車両ボディのハーネス固定部側)に引き出され、ワイヤハーネス7の網チューブ部分26とばねホルダ9に続くコルゲートチューブ部分25の一部とが屈曲規制壁5に沿ってループ状に縮径しつつ、ばねホルダ9が屈曲規制壁5の外周面に沿って摺動し、板ばね6はワイヤハーネス7の網チューブ部分26の内面に接しつつ屈曲規制壁5に沿って最小径で略環状に縮径されている。
図2においてばねホルダ9には板ばね6の復元力によって外方向の戻り力が作用し、且つ板ばね6の長手方向中間部には板ばね6の復元力によってワイヤハーネス7のループ部8を外方向に拡げようとする力が作用している。
図3はスライドドアの半開時の状態であり、ワイヤハーネス7のコルゲートチューブ部分25が車両ボディとスライドドアとの間で大きく垂れ下がろうとするが、板ばね6によるばねホルダ9の戻り力と板ばね6の拡げ力とによって、ワイヤハーネス7のループ部8がハーネス導出溝19の入口を支点として屈曲規制壁5の外側で大きく拡径し、ワイヤハーネス7のコルゲートチューブ部分25が下部開口14からプロテクタ4内に確実に引き戻されて、余長が確実に吸収される。
板ばね6の先端部をばねホルダ9を介してワイヤハーネス7のループ部8側で各保護チューブ25,26に固定したことで、板ばね6の付勢力がワイヤハーネス7の保護チューブ25,26に直接作用し、ループ部8の伸縮動作、特に板ばね6の付勢力による伸長(拡径)動作が滑り等なく正確に行われ、ワイヤハーネス7の余長(弛みや垂れ下がり)が確実に吸収される。
図3の状態からスライドドアを全閉にすることで、スライドドアは給電装置1と共に車両前方に移動し、ワイヤハーネス7のコルゲートチューブ部分25がプロテクタ4の下部開口14から車両ボディ側のハーネス固定部(図示せず)に向けて後方に引き出され、ワイヤハーネス7のループ部8は図2のドア全開時よりも少し大径に縮径しつつ、板ばね6がループ部8と一体的に引っ張られて縮径する。スライドドアの移動に伴ってワイヤハーネス7のコルゲートチューブ部分25が下部開口14内を後方に揺動する。
スライドドアの全閉状態からスライドドアを開くに従って上記とは逆の作用で図3から図2の状態となるが、このスライドドアの開き過程における板ばね6やばねホルダ9やワイヤハーネス7等の作用効果は上記スライドドアの閉じ過程におけると同様である。
本発明は、上記図1〜図3に示す常時給電装置1を基本として、以下に示すばねホルダ91,92やプロテクタ(プロテクタベース21,22のみを示す)を用いた実施形態の常時給電装置(符号は省略)を提案するものである。
図4〜図6は、本発明の常時給電装置におけるばねホルダの一実施形態を示すものである。
このばねホルダ91は、合成樹脂材で形成され、底面側(屈曲内面側)28a,29aに、図1の屈曲規制壁5に対する摺接用のリブ(摺接突部)72,73を一体に有し、各リブ72,73の表面に、屈曲規制壁5との摺動を低摩擦でスムーズに行わせるために、ドライ潤滑皮膜(低摩擦摺動部)72a,73aを形成したことを特徴とするものである。
リブ72,73によってばねホルダ9と屈曲規制壁5との接触面積が減少し、摩擦抵抗が低減されることに加えて、リブ表面のドライ潤滑皮膜72a,73aによって摩擦抵抗がさらに低減されて、ワイヤハーネス7の縮径動作と拡径動作すなわち伸縮動作が低摩擦で引っ掛かり等なくスムーズ且つ確実に行われる。
本例において、ばねホルダ9の前半の第一の固定部28の底面28aの幅方向中央に一本のリブ72が設けられ、後半の第二の固定部29の底面29aの幅方向両側に二本のリブ73が平行に設けられ、各リブ72,73は断面円弧状に形成され、各リブ72,73の湾曲状の外周面にドライ潤滑皮膜72a,73aが形成されている。
前後の各リブ72,73はばねホルダ91の屈曲角度に対応して正面視で略くの字状に交差して位置し、ばねホルダ91は交差方向のリブ72,73で屈曲規制壁5の外周面に安定して摺接自在である。
ドライ潤滑皮膜72a,73aとしては、例えば市販のドライルーブ(登録商標)といった、オイル・グリスの潤滑減摩性と塗装皮膜の保護耐蝕性を兼備した密着性の優れた固体皮膜潤滑剤を適用可能である。ドライルーブ(登録商標)としてはプラスチック用のものが好適であり、例えばばねホルダをナイロン等で樹脂成形した場合、ドライルーブをリブの表面に塗布ないし吹き付けした後、100゜C以下の温度で10〜90分程度の時間で硬化させることが好ましい。その他にドライ潤滑皮膜72a,73aとしてテフロン(登録商標)等の皮膜を形成させることも可能である。
ばねホルダ91はホルダベース(分割ホルダ)31とホルダカバー(分割ホルダ)32とで左右合体式(分割式)に構成され、ホルダベース31とホルダカバー32とはほぼ対称に略半環状ないし略コの字状に形成され、それぞれ中央で略くの字状に屈曲されて、一方にワイヤハーネス7のコルゲートチューブ25に対する第一の固定部28、他方にワイヤハーネス7の網チューブ26に対する第二の固定部29をそれぞれ有している。
各第一の固定部28は断面半長円形状の内周面の先端部と中間部とに、コルゲートチューブ25の凹溝25aに係合する複数(本例で二本)の突条33(図6)を並列に有し、各第二の固定部29は断面半長円形の内周面に、網チューブ26のインサート部材34を内側に保持する前後一対の突条35(図6)を有している。
ホルダベース31とホルダカバー32とは係止突起36と可撓性の係合枠片37といった係止手段で相互に接合固定され、外面の断面が略長方形の筒状部材となる。ばねホルダ91は断面長円形の内周面と略長方形状の外周面を有している。係止手段は係止突起36と係合枠片37に限らず、係止アームと係合凹部等を用いることも可能である。
第一の固定部28の摺動部であるリブ72はホルダカバー32に設けられ、第二の固定部の摺動部であるリブ73はホルダベース31に設けられ、各リブ72,73の表面にドライ潤滑皮膜72a,73aが形成されている。
ホルダベース31の底部側に板ばね固定部51が一体に設けられ、板ばね固定部51の底面29aにリブ73が一体に設けられている。ホルダカバー32の第二の固定部29の底部70に板ばね固定部51が合体するようになっている。
各リブ72,73はワイヤハーネス7の長手方向に延びている。前半のリブ72は係合枠片37の前後一対の長辺部37aを連結する如く係合枠片37の表面に一体に突設されている。ドライ潤滑皮膜72aはリブ72のみならず係合枠片37の表面に形成されていてもよい。
係止突起36は係合枠片内においてリブ72の内側の空間に進入する。係止突起36の前後には係合枠片37と隣接して係止案内兼保護用の突条38が設けられている。突条38はリブ72よりも低く位置し、プロテクタ4の屈曲規制壁5との摺接は通常行われない。突条38の表面にもドライ潤滑皮膜を形成可能である。一対のリブ73は第二の固定部29の外側面よりも若干内側に配置されている。
各リブ72,73は平行に配置され、中央のリブ72の幅は両側の一対のリブ73の間の底面29aの幅寸法よりも狭く形成され、リブ72の長さは一対のリブ73の長さよりも半分程度に短く形成されている。後側の一対のリブ73によって屈曲規制壁5に対するばねホルダ9の姿勢が安定し、且つ後側の一対のリブ73と前側の中央のリブ72とによる略三点接触で屈曲規制壁5に対して安定な姿勢で支持され、リブ表面のドライ潤滑皮膜72a,73aによって、屈曲規制壁5に低摩擦でスムーズに摺接可能である。
各リブ72,73は断面半円形ないし略円弧状に形成されており、屈曲規制壁5にほぼ線接触ないし点接触でスムーズに摺接する。各リブ72,73の前後端には滑らかなテーパ状ないし湾曲状のガイド面取がなされており、屈曲規制壁5に対して前後端の引っ掛かり等なく滑らかに摺動可能である。ガイド面取にもドライ潤滑皮膜72a,73aが形成されている。ここで「前端」とは板ばね6の先端延長側を意味する。
図6(ホルダカバー32を外した状態)の如く、ばねホルダ91の第一の固定部28と第二の固定部29との間には略扇状の空間69が設けられ、扇状の空間内にワイヤハーネス7のコルゲートチューブ部分25と網チューブ部分26との間の複数本の電線27が露出した状態で挿通される。
網チューブ26におけるインサート部材34は、網チューブ26の端末部を樹脂成形型内で合成樹脂材の内部にインサート成形することで構成される断面長円形の樹脂部材であり、インサート部材34の内側に網チューブ26の端末部が一体的に固定されている。
ばねホルダ91の板ばね固定部51には板ばね6を挿入係止させるスリット孔66とスリット孔内の略円形の係止突起40とが設けられている。係止突起40は板ばね6に対するガイド傾斜面と垂直な係止面とを有している。
板ばね6の先端部はやや細幅に形成され、その細幅部に略円形の係止突起40に対する円形の係合孔52(図5)が設けられ、係止突起40に対向してホルダベース31の底面29a側が開口(符号53)されている。板ばね6の固定構造は既存のばねキャップにおけると同様である。第一の固定部28のリブ72に対する第二の固定部29のリブ73の傾斜角度はプロテクタ4(図2)の屈曲規制壁5の接線方向の角度である。
図6の如く、複数本の電線27にコルゲートチューブ25と網チューブ26とを外挿させた状態で、コルゲートチューブ25の端末部をホルダベース31の第一の固定部28に係合させ、網チューブ26のインサート部材34を第二の固定部29に係合させ、図4の如くホルダカバー32を閉めつつホルダベース31に係合させることで、ばねホルダ91の組立状態を得る。
図4〜図6のばねホルダ91を図1の常時給電装置に適用することで、図2の如く、スライドドアの全開操作時に、ばねホルダ91は前後のリブ72,73の表面のドライ潤滑皮膜72a,73aで屈曲規制壁5の外周面に沿って低い摩擦力でスムーズに摺動し、板ばね6はワイヤハーネス7の網チューブ部分26の内面に接しつつ屈曲規制壁5に沿って最小径で略環状に縮径される。
ばねホルダ9がそのリブ72,73の表面のドライ潤滑皮膜72a,73aで屈曲規制壁5の外周面に低摩擦抵抗でスムーズに摺接するから、ワイヤハーネス7の縮径動作すなわちプロテクタ4からの引き出し動作が引っ掛かりや摺動音等なく小さな力でスムーズ且つ確実に行われる。リブ72,73は屈曲規制壁5に対するばねホルダ9の移動方向に真直に延びているから、リブ72,73の幅方向中央の先端部分で屈曲規制壁5にほぼ点接触ないし線接触でスムーズに摺接する。
ワイヤハーネス7のループ部8の拡径動作に伴って、ばねホルダ9はそのリブ72,73のドライ潤滑皮膜で屈曲規制壁5の外周面にスムーズに摺接し、それによってループ部8の拡径動作すなわちワイヤハーネス7の余長吸収が引っ掛かりや摺動音等なく小さな力でスムーズ且つ確実に行われる。リブ72,73のドライ潤滑皮膜72a,73aにより低摩擦力でばねホルダ9がスムーズに摺動音なく移動するから、板ばね6の付勢力がワイヤハーネス7のループ部8に確実に伝えられ、余長吸収が効率良く行われると共に、擦れ音が防止されてスライドドアの操作感度が向上する。
なお、リブ72,73の本数や位置は上記実施形態に限るものではなく、例えばばねホルダ91の前半の幅方向両側に二本のリブを設け、後半の幅方向中央に一本のリブを設けたり、あるいはばねホルダ91の全長に渡って中央に一本のリブを設けたり、あるいは一本のリブを対角方向に斜めに設けたり、あるいはばねホルダ91の前半と後半とに各二本のリブを設けたりというように、適宜設定可能である。また、リブ72,73の断面形状も円弧状に限らず矩形状や三角形状等、適宜形状を設定可能である。何れの場合にも、リブ72,73の外表面にはドライ潤滑皮膜72a,73aが形成される。
また、リブ72,73のみならず、リブ72,73を含むばねホルダ91の底面28a,29aあるいは、リブ72,73を含むばねホルダ91の外周面全体にドライ潤滑皮膜を一括して形成させることも可能である。また、リブ72,73の幅方向中央のみ、すなわちプロテクタ4(図2)の屈曲規制壁5に接触する部分のみにドライ潤滑皮膜72a,73aを線状に形成することも可能である。
また、リブ72,73に代えて例えば半球状の突起(図示しない摺接突部)を設けることも可能である。この突起の数は一つに限らず、上記リブの配置に対応して前後に一つずつ、あるいは前後左右に一つずつ、あるいは二つ以上の突起を配列してもよい。これら突起の表面にもドライ潤滑皮膜が形成されることは言うまでもない。突起とばねホルダの底面との両方にドライ潤滑皮膜を形成したり、突起を含むばねホルダの外周面全体にドライ潤滑皮膜を形成することも可能である。
また、ばねホルダ91の両リブ72,73をくの字状ではなく、屈曲規制壁5に沿う湾曲面ないし円弧面とすることも可能である。但し、屈曲規制壁5はガイド壁23を含めて完全な円形ではないから、略くの字状に配置されていることが安定な摺動性を得る上で好ましい。
また、例えばばねホルダ91の長さが短いものであったり、屈曲規制壁5の屈曲半径が図1の形態よりも大きい場合には、ばねホルダ91をくの字に屈曲させずに真直な形態で使用可能である。その場合はリブ72,73もばねホルダの平坦な底面に沿って真直に形成され、少なくともリブ72,73の表面にドライ潤滑皮膜72a,73aが形成される。
図7〜図9は、本発明の常時給電装置におけるばねホルダの他の実施形態を示すものである。
このばねホルダ92は、プロテクタ4(図2)の屈曲規制壁5に対する摺接用のリブ72’,73’を摺動性の高い低摩擦樹脂材にて二重成形(二色成形)することで、上記ドライ潤滑皮膜72a,73aと同様の作用効果、すなわちスライドドア開閉時の摺動抵抗の低減による操作性の向上やワイヤハーネス7の余長吸収性の向上や擦れ音の防止等を可能としたものである。
ばねホルダ92のリブ72’,73’を除くばねホルダ本体は例えばナイロン等で形成されるが、リブ72’,73’は摺動性の高い樹脂材として例えばポリアセタール(POM)等を用いて形成することができる。ポリアセタールは耐衝撃性や耐摩耗性が高く、寸法安定性も良好で、静摩擦係数と動摩擦係数の差がなく、摺動部材として好適である。ポリアセタールは例えばジュラコン(登録商標)として市販されている。ジュラコン以外の低摩擦樹脂材として、高価ではあるがテフロン(登録商標)等を用いることも可能である。
樹脂材の二重成形(二色成形)は、例えば二組の射出装置をもつ二重成形専用機(図示せず)を用い、先ず、リブ72’,73’を除くばねホルダ本体をナイロン等の通常の材料で一次成形し、次いでばねホルダ本体にリブ72’,73’を摺動性の高い樹脂材で二次成形するものである。
この摺動性の高い樹脂材で形成されたリブ72’,73’(低摩擦摺動部)を有するばねホルダ92は前記図4〜図6に示すばねホルダ91と形状や構造的には全く同じものであり、表面にドライ潤滑皮膜72a,73a(図4)を形成したリブ72,73に代えて低摩擦樹脂材で形成されたリブ72’,73’を用いたことのみが相違する。従って、本例の図7〜図9には前例同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
図7〜図9で、符号31はホルダベース、32はホルダカバー、28は第一固定部、29は第二固定部、26は網チューブ、36は係止突起、37は係合枠片、33はコルゲートチューブを係止させるリブ、38は前端の突条、28a,29aは底面、70は切欠部分、51は板ばね固定部、40は板ばねに対する係止突起、53は窓をそれぞれ示している。
図7〜図9の実施形態においてリブ72’,73’の配置や数や断面形状等は前例同様に適宜変更可能である。また、摺動性の高いリブ72’,73’に代えて摺動性の高い半球状等の複数の突起を二重成形で形成することも可能である。ばねホルダ92の形状はくの字に屈曲させずに真直に形成することも可能であり、この場合、摺動性の高いリブ72’,73’はばねホルダ92に沿って真直に形成される。
図7〜図9のばねホルダ92を図1の常時給電装置1に適用することで、図2の如く、スライドドアの全開操作時に、ばねホルダ92は前後の摺動性の高い樹脂材のリブ72’,73’で屈曲規制壁5の外周面に沿って低い摩擦力でスムーズに摺動し、板ばね6はワイヤハーネス7の網チューブ部分26の内面に接しつつ屈曲規制壁5に沿って最小径で略環状に縮径される。
ばねホルダ92がその摺動性の高い樹脂材のリブ72’,73’で屈曲規制壁5の外周面に低摩擦抵抗でスムーズに摺接するから、ワイヤハーネス7の縮径動作すなわちプロテクタ4(図2)からの引き出し動作が引っ掛かりや摺動音等なく小さな力でスムーズ且つ確実に行われる。
ワイヤハーネス7(図2)のループ部8の拡径動作に伴って、ばねホルダ91は摺動性の高い樹脂材のリブ72’,73’で屈曲規制壁5の外周面にスムーズに摺接し、それによってループ部8の拡径動作すなわちワイヤハーネス7の余長吸収が引っ掛かりや摺動音等なく小さな力でスムーズ且つ確実に行われる。摺動性の高いリブ72’,73’によって低摩擦力でばねホルダ92がスムーズに摺動音なく移動するから、板ばね6の付勢力がワイヤハーネス7のループ部8に確実に伝えられ、余長吸収が効率良く行われると共に、擦れ音が防止されてスライドドアの操作感度が向上する。
上記各実施形態の常時給電装置においては、ばねホルダ91,92によって低摺動を可能としたが、以下(図10〜図13)に示すように、ばねホルダ91,92に代えてプロテクタ4(図1)の屈曲規制壁5によって低摺動を可能とすることもできる。
すなわち、図10は、プロテクタのプロテクタベース21の略環状の屈曲規制壁5の外周面にドライ潤滑皮膜(低摩擦摺動部)5aを形成して、スライドドア開閉時の摺動抵抗の低減による操作性の向上やワイヤハーネス7(図1)の余長吸収性の向上や擦れ音の防止等を可能としたものである。図10ではプロテクタカバー3(図1)は図示を省略している。プロテクタベース21の形状は図1におけると同様である。
ドライ潤滑皮膜5aは図4〜図6のばねホルダ91に施したものと同じものであり、好ましくはドライルーブ(登録商標)が用いられる。テフロン(登録商標)を用いることも可能である。ドライ潤滑皮膜自体5aについては図4〜図6のばねホルダ91における記載を参照することで図10における説明を省略する。
図10においてドライ潤滑皮膜5aは略環状の屈曲規制壁5の上半分に形成されている。すなわち、ハーネスガイド壁23の先端から環状の壁部5’の前端上部にかけてほぼ180゜の角度の範囲でドライ潤滑皮膜5aが形成されている。この範囲はばねホルダ9(図1)のほぼ摺動範囲(正確にはばねホルダ9の摺動範囲よりも少し大きな範囲)であり、合成樹脂製のばねホルダ9は屈曲規制壁5の外周面のドライ潤滑皮膜5aに低摩擦で擦れ音等なくスムーズに摺接する。
ドライ潤滑皮膜5aは少なくともばねホルダ9との摺動部分に形成されていればよく、屈曲規制壁5の外周面全体あるいは屈曲規制壁5の表裏全面にドライ潤滑皮膜5aを形成しても実使用上は何ら問題ない。
屈曲規制壁5の表面のドライ潤滑皮膜5aに沿って摺動するばねホルダ9はリブ72,73(図4)を有していてもいなくてもよく、略くの字状に屈曲してもしていなくてもよい。ばねホルダ9がリブ72,73を有していれば、屈曲規制壁5のドライ潤滑皮膜5aとの相乗効果で一層スムーズな摺動が可能となる。この場合、リブ72,73はドライ潤滑皮膜72a,73a(図4)を有している必要はない。図7の例の如くリブ72’,73’を摺動性のよい樹脂材で形成すれば、屈曲規制壁5のドライ潤滑皮膜5aとの相乗効果が一層顕著に発揮される。
図10のプロテクタ(正確にはプロテクタベース21)を図1の常時給電装置1に適用することで、図2の如く、スライドドアの全開操作時に、ばねホルダ9は屈曲規制壁5の外周面のドライ潤滑皮膜5aに沿って低い摩擦力でスムーズに摺動し、板ばね6はワイヤハーネス7の網チューブ部分26の内面に接しつつ屈曲規制壁5に沿って最小径で略環状に縮径される。
ばねホルダ9が屈曲規制壁5の外周面のドライ潤滑皮膜5aに低摩擦抵抗でスムーズに摺接するから、ワイヤハーネス7(図2)の縮径動作すなわちプロテクタ4からの引き出し動作が引っ掛かりや摺動音等なく小さな力でスムーズ且つ確実に行われる。
また、ワイヤハーネス7(図3)のループ部8の拡径動作に伴って、ばねホルダ9は屈曲規制壁5の外周のドライ潤滑皮膜5aに沿ってスムーズに摺接し、それによってループ部8の拡径動作すなわちワイヤハーネス7の余長吸収が引っ掛かりや摺動音等なく小さな力でスムーズ且つ確実に行われる。摺動性の高いドライ潤滑皮膜5aによって低摩擦力でばねホルダ9がスムーズに摺動音なく移動するから、板ばね6の付勢力がワイヤハーネス7のループ部8に確実に伝えられ、余長吸収が効率良く行われると共に、擦れ音が防止されてスライドドアの操作感度が向上する。
図11〜図13は、プロテクタベース22の略環状の屈曲規制壁5の外周面に長手方向のリブ(低摩擦摺動部)74を樹脂成形で一体に形成して、スライドドア開閉時の摺動抵抗の低減による操作性の向上やワイヤハーネスの余長吸収性の向上や擦れ音の防止等を可能としたものである。図11においてはプロテクタカバー3(図1)の図示を省略している。プロテクタカバー22の形状はリブ74を除いて図1のプロテクタカバー2と同様である。
リブ74は屈曲規制壁5の外周面の幅方向中央に突設され、ハーネスガイド壁23の先端から環状の壁部5’の前端上部にかけてほぼ180゜の角度の範囲、すなわちばねホルダ9(図1)のほぼ摺動範囲(正確には摺動範囲より少し長い範囲で)位置している。このリブ74は合成樹脂製の屈曲規制壁5と同じ材料で一体に形成されたものであり、特にドライ潤滑処理等は施していない。
リブ74は断面円弧状ないし半円状であることが好ましいが、略矩形状ないし三角形状とすることも可能である。また、リブ74の本数は一本に限らず、二本ないしそれ以上とすることも可能である。本例のように屈曲規制壁5に摺接用のリブ74を設けた場合、ばねホルダ9(図1)には摺接用のリブは設けず、ばねホルダ9の底面を屈曲規制壁5のリブ74で支持することが好ましい。あるいは、屈曲規制壁5の幅方向中央に一本のリブ74を設け、ばねホルダ9の底面に左右二本のリブを設け(このリブは前記ドライ潤滑皮膜を有したり、低摩擦材により形成されたものであってもよい)、計三本のリブで低摩擦摺動を行わせてもよい。
また、屈曲規制壁5のリブ74の外表面に前記ドライ潤滑皮膜を形成したり、屈曲規制壁5のリブ74を前述の摺動性の高い樹脂材料で二重(二色)成形することも可能であり、これによりばねホルダ9(図1)との摺動性が一層向上する。
図13(図12のB−B断面図)において符号75はリブ74に対する樹脂成形用の型抜き孔である。型抜き孔75を廃除すべく、プロテクタベース22の基板部10に沿って分割金型(図示せず)をスライドさせてリブ74を樹脂成形することも可能である。
図12の如くスライドドアの全閉時にワイヤハーネス7は後方に引っ張られ、ばねホルダ9の前端がプロテクタベース22の屈曲規制壁5の前端上部においてリブ74に摺接する。図12の状態からスライドドアを開くと、図3の如くスライドドアの半開状態でばねホルダ9は屈曲規制壁5から離間してプロテクタの前端側に移動し、その状態から図2のスライドドアの全開状態にかけて再度、ばねホルダ9が図12の屈曲規制壁5のリブ74の前端側から摺接して図2の如く屈曲規制壁5のリブ74に沿ってガイド壁23側に低摩擦で擦れ音等なくスムーズに摺動する。この効果はリブ74に前記低摩擦処理を行った場合に促進されることは言うまでもない。また、ばねホルダ9が略くの字状に屈曲していなくとも同様の効果が発揮されることは勿論である。
図2のスライドドアの全開状態からスライドドアを閉じれば、ばねホルダ9はガイド壁23から環状の壁部5’に沿ってリブ74の上を低摩擦で擦れ音等なくスムーズに摺動して、図12の如く屈曲規制壁5の前端上部に位置する。
なお、上記各実施形態の常時給電装置においては、保護チューブとしてコルゲートチューブ25と網チューブ26とを用いたが、網チューブ26に代えて屈曲性の良好な薄肉のビニルチューブ等(図示せず)を用いたり、また、ばねホルダ9の両方にコルゲートチューブ25を固定したり、ばねホルダ9の両方に網チューブ26を固定することも可能である。また、断面長円形のコルゲートチューブ25に代えて断面円形のコルゲートチューブ(図示せず)を用いることも可能である。また、ばねホルダにコルゲートチューブ25の端末部と網チューブ26の端末部とを重ね合わせた状態で挟んで固定させるようにすることも可能である。
また、上記各実施形態の常時給電装置においては、プロテクタ4をスライドドア(スライド構造体)に縦置きに搭載したが、例えば車両ボディ(固定構造体)にプロテクタ4を横置きに搭載し、ワイヤハーネス7を長形の開口14からスライドドアに向けて配索し、プロテクタ内のハーネス導出溝19から車両ボディ側に配索することも可能である。また、上記各給電装置は自動車のスライドシートや、自動車以外のスライドドア等においても適用可能である。
また、上記各実施形態の常時給電装置においては、屈曲規制壁5を環状に形成し、ワイヤハーネス7を屈曲規制壁5に沿ってループ状に屈曲させたが、例えば従来の図16に示す形態の常時給電装置50’の板ばね44’に上記同様のばねホルダ9を設け、ばねホルダ9のリブ72,73や突起等の摺接突部を屈曲規制壁71(図16)に沿って摺接させることも可能である。