JP2006178220A - プラスチック光ファイバ製造管理システム及び屈折率分布型プラスチック光ファイバ - Google Patents

プラスチック光ファイバ製造管理システム及び屈折率分布型プラスチック光ファイバ Download PDF

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Abstract

【課題】 効率的な工程管理と厳密な工程制御を行うプラスチック光ファイバの製造システム提供する。
【解決手段】 複数の製造工程1310,1311,1313,1315,1317を経てプラスチック光ファイバケーブルを製造する。各工程には各装置が用いられ各装置を制御して工程管理を行う管理装置を有する。前記管理装置は、製造条件を有し生産計画に応じてプリセットされた操作条件を選択する生産計画サーバ1303を有する。生産計画サーバ1303からの操作条件に基づいて各装置を制御する工程管理サーバ1305と、各装置に設置される測定機器からの状態変数、操業履歴、及び品質の各製造情報を記憶する製造情報サーバ1306を有する。さらに、製品履歴サーバ1307を有する。各サーバ1303〜1306の情報に基づき各工程の管理を厳密に行う。
【選択図】 図57

Description

本発明は光通信用途に適用可能なプラスチック光ファイバ製造管理システム及び屈折率分布型プラスチック光ファイバに関する。
プラスチック光学部材は、同一の構造を有する石英系の光学部材と比較して、製造および加工が容易であること、および低価格であること等の利点があり、近年、光ファイバおよび光レンズ、光導波路など種々の応用が試みられている。特にこれら光学部材の中でも、プラスチック光ファイバ(POFと略記することがある)は、素材が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系と比較してやや大きいという短所を有するものの、良好な可撓性を有し、軽量で、加工性がよく、石英系光ファイバと比較して、低コストに製造可能であり、取り扱いの簡便な口径の大きいファイバとして製造できるという長所を有する。従って、近年の高速通信の要望から、伝送損失の大きさが問題とならいない程度の中・短距離用の光通信伝送媒体として、様々な用途が検討されている。
プラスチック光ファイバは、一般的には、重合体をマトリックスとする有機化合物からなる芯(本明細書において「コア部」と称する)と、コア部と屈折率が異なる(一般的には低屈折率の)有機化合物からなる外殻(本明細書において「クラッド部」と称する)とから構成される。特に、中心から外側に向かって屈折率の大きさに分布を有するコア部を備えた屈折率分布型プラスチック光ファイバ(GI型POFと略記することがある)は、伝送する光信号の帯域を大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして知られている(例えば、特許文献1参照)。この様な屈折率分布型プラスチック光ファイバに被覆を施したコードとする事が知られている(例えば、特許文献2参照)。また、プラスチック光ファイバを用いてデバイス間の連結等に使う光送受信システムの提案がある(例えば、特許文献3又は4参照)。しかし、これらにおいては様々な態様が提案されているため、それらに対応するために多品種生産が求められることがあり、それらに対応する効率的な生産システムが求められる。
特許3332922号公報 特開2000−193839号公報 特開2002−147294号公報 特開2000−170996号公報
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、光通信用途に好適に適用可能な屈折率分布型プラスチック光ファイバおよびプラスチック光ファイバ製造管理システムを提供することを課題とする。
本発明のプラスチック光ファイバ製造管理システムは、複数のバッチ製造工程からなるプラスチック光ファイバ製造管理システムにおいて、少なくとも2つの工程の装置が管理装置と通信によって連結され、製造条件を内部に有した前記管理装置が生産計画に応じてプリセットされた操作条件を選択し、前記操作条件に基づいて各工程の前記装置の制御を行い、及び前記各装置に設置された測定機器により状態変数,操業履歴及び品質情報が前記管理装置に送信されて記録される。連結していない工程情報を外部入力装置による入力で前記管理装置に登録することが好ましい。前記各工程間で受け渡される中間生成物に識別符号を与え、後工程開始時に前記識別符号を前記外部入力装置によって照合する機能を有することが好ましい。
本発明の屈折率分布型プラスチック光ファイバは、モノマーを重合させて形成させたプリフォームを延伸させてなる屈折率分布型プラスチック光ファイバであって、線型変動が目標線径に対して45μm以内である。
本発明のプラスチック光ファイバの製造システムは、複数のバッチ製造工程における各装置と、前記各装置を制御して工程管理を行う管理装置とにより、プラスチック光ファイバを製造するプラスチック光ファイバの製造システムにおいて、前記管理装置は、製造条件を有し生産計画に応じてプリセットされた操作条件を選択する生産計画サーバと、前記生産計画サーバからの操作条件に基づいて各装置を制御する工程管理サーバと、前記各装置に設置される測定機器からの状態変数、操業履歴、及び品質の各製造情報を記憶する製造情報サーバとを有する。
前記各工程で受け渡される中間生成物に識別符号を与え、次の工程を開始するときに前記識別符号を読み取って、前記識別符号に基づき前記中間生成物の製造情報を管理することが好ましい。前記管理装置は外部入力装置を有し、前記外部入力装置は前記管理装置に接続されていない工程の装置における前記製造情報を入力することが好ましい。前記管理装置は、前記製造情報サーバからの前記製造情報を前記識別情報に基づき記憶する製品履歴サーバを有し、前記生産計画サーバは、前記製品履歴サーバの製造情報を参照して前記操作条件をプリセットすることが好ましい。
本発明によれば、効率的な工程管理と厳密な工程制御を行うプラスチック光ファイバ製造管理システムを構成することが可能となる。
本発明にて製造を行うプラスチック光ファイバ及びその製造方法について以下に詳細に説明する。
(プラスチック光ファイバの構造)
まず、プラスチック光ファイバの構造について説明する。プラスチック光ファイバは光導波路となるコア部とそれを囲むクラッド部とからプラスチック光ファイバ素線(以下、素線とも称する)を形成する。それを被覆してプラスチック光ファイバコード(心線とも称される)をなし、複数のプラスチック光ファイバコードと必要に応じて補強構造などとを配して束ねたものをプラスチック光ファイバケーブルと称する。
(クラッド部)
プラスチック光ファイバは導光体であるコア部とコア部よりも屈折率の低いクラッド部からなる。空気との界面があるためクラッド部を有さない形態も開示されている場合があるが、実際に使用する場合には光を効率よく閉じ込めるためにはクラッド部を設ける事が好ましい。クラッド部はコア部の周囲に隣接するように低屈折率の重合体が配置され、光が漏れないようにコア部内を導波する光を全反射させる役割を担っている。そのため、コア部との界面に不整があると散乱が起きるので、構造不整が無い状態が好ましい。また、クラッド部を構成する重合体の屈折率はコア部の屈折率に比較して1%もしくは屈折率差が0.001以上低くなるよう選ばれる事が好ましい。
さらにクラッド部は光ファイバの特性を損なう一因となる曲げや衝撃などから守るために、用途に応じて素材やその配向度を選択して機械的性能を付与することもできる。クラッド部に要求される機能を発現させるためには、その厚さは少なくとも1μm以上あることが好ましい。さらに、光の制御や機械的性能などの複数の機能を付与するため、複数層から構成されていてもよい。また、特開平8−54521号公報のように低屈折率の層を外周に設けて反射層として機能させてさらに伝送性能を向上させることもできる。
(コア部)
クラッド部の内部には光を導波するコア部が配置される。コア部は導波する光の波長に対して透明である必要があり、コア部に使用する材料による光の吸収、散乱はできるだけ低く抑える事が好ましい。なお、素材と製法の双方の観点で検討したときに、プラスチック光ファイバの製造工程において張力が加わって配向が起きることがある。配向によって各種の機械的強度を変化させることもできるが、同時に複屈折が生じる場合がある。以上の事から、使用する光の性質、製法、用途に合わせて、コア部を構成する素材およびクラッド部やその他の構成部材について検討し、選択される事が好ましい。
コア部の外周部に関しては前述の通り、接するクラッド部との界面に不整が無い様に、製法や素材を選択する事が望まれる。さらに、他の光学部材、光学素子、ファイバ間との接続を考慮するとき、コア部の非円率によって、システムの伝送性能が影響を受ける事が知られている。なお、非円率とはコア中心に中心としたコア領域に外接する円と、それと同心でコア領域に内接する円の二つの円の直径の差をコア径に対する百分率で表した値であり、この値が大きくなってコア形状が真円形状から離れるほど伝送性能が低下するため好ましくない。
プラスチック光ファイバはコア部に屈折率分布を有する事でコア部を通過する光のモード分散を小さくする事ができることが知られている。この分布形状を表す屈折率分布係数は、以下の式(1)におけるgの値として知られている。以下の式(1)においては、Rはプリフォームまたは光ファイバの外径(mm)、rは断面円形の中心から測定位置までの距離(mm)、n1は断面径方向における屈折率の最大値、n2は断面径方向における屈折率の最小値、Δは(n1−n2)/n1で表される値である。
n(r)=n1{1−(r/R)g×Δ}1/2 ・・・(1)
そして本実施形態の例示として示されるプリフォームならびにファイバの屈折率分布係数は0.5〜4であり、より好ましくは1.5〜3であり、理想的には2である。屈折率分布は上記の式に合うように変化しながら分布することが特に好ましいが、多層構造から形成された上記の式を近似した分布をとっても近い効果が得られる。この多層構造の屈折率分布は、層内の屈折率が一定であってもよいし、層内または層間において連続的に変化していても良い。この多層構造からなる屈折率分布型光ファイバは、マルチステップインデックス型光ファイバとも呼ばれる。このマルチステップインデックス型光ファイバにおいては、屈折率の分布が上記式の近似から外れる部分もしくは不連続に変化する部分で伝送損失が生じ、連続的に変化する屈折率分布型にくらべて伝送性能が低下するが、コア部の屈折率に分布を持たないステップインデックス型(SI型と略記することがある)光ファイバと比較して高い伝送性能を有する。
なお、屈折率分布構造を有する場合は、屈折率調整剤の濃度分布や共重合比などの化学的組成の変化を伴っていることが多いため、熱安定性等を考慮した場合は最大と最小のガラス転移点温度はTg(max)−Tg(min)≦100の関係である事が好ましく、その他に機械的特性を考慮した場合は屈折率調整剤の濃度が50%以下,Tg(min)≧70℃の関係である事が好ましい。
(アウターコア部)
多層構造を有する場合は、光の進行方向に垂直なコア領域全域が屈折率の分布を有していてもよいし、コア部が中心部に屈折率が変化する領域とその周囲に屈折率が一定もしくは屈折率変化が無い領域が配置される構造であっても良い。(以降、後者の構造をとる場合に、中心付近に配置される屈折率分布を有する領域をインナーコア、その外周に配置される屈折率変化の小さいもしくは無い領域をアウターコアと称する事がある。)アウターコア、インナーコアからなるコア部を形成する場合の有利な点としては、中間層となるアウターコアを配置する事でコア部を形成する素材とクラッド部を形成する素材の親和性に起因するコア/クラッド界面の不整状態や製造適性が向上することや、大口径の屈折率分布型プラスチック光ファイバを使用する際に、アウターコアの存在によって受光素子からの出射光に対する受光面積が広がり、インナーコア内で再結合されて導波するため、開口数の大きな発光素子との結合に有利に働くこともある。
一方、受光素子との結合においては信号光の導光部位が大きいと出射面積が広がるため、高速な信号伝送においては不利であるため、使う信号光の伝送周波数に対してインナーコア外径とアウターコア外径との比を選択することが好ましい。なお、様々な光学素子との結合や伝送する帯域に対応する汎用性の高いプラスチック光ファイバとするためには、インナーコア外径が100μm〜800μmで、インナーコア外径とアウターコア外径との比は0.2〜0.95、好ましくは0.4〜0.95、さらに0.6〜0.95であることがこのましい。
以上、クラッド部およびコア部の構造について説明した。以降、プラスチックからなるコア部とクラッド部のみで構成された光ファイバをプラスチック光ファイバ素線(単に素線とも称する)と称する。被覆やコネクタなどの光ファイバに付帯する構造については、その製法等と共に後述する。製法において、モノマーからコア部を作成する場合、選択する素材によってはアウターコアを必要としないクラッドパイプのみの場合があるので、アウターコアを付与したクラッドパイプとあわせて以降中空管と称する。
[素材]
(コア(アウターコア/インナーコア)用樹脂)
コア部の原料の重合性モノマーとしては、塊状重合が容易である原料を選択するのが好ましい。光透過性が高く塊状重合しやすい原料としては例えば、以下のような(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a)、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b))、スチレン系化合物(c)、ビニルエステル類(d)等を例示することができ、コア部はこれらのホモポリマー、あるいはこれらモノマーの2種以上からなる共重合体、およびホモポリマー及び/または共重合体の混合物から形成することができる。これらのうち、重合性や透明度の観点では(メタ)アクリル酸エステル類を重合性モノマーとして含む組成を好ましく用いることができる。また、共重合体のポリマーマトリックスとする場合は、特開平5−173025号公報などに記載されているような、重合体としたときに屈折率の異なるモノマーを複数その組成比を変えて重合することにより、屈折率に分布を持たせることができる。
以上に挙げた重合性モノマーとして具体的に、(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメ
チル、トリシクロ[5・2・1・02,6]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等が挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。また、(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、(a)のフッ化物などが挙げられ、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート等が挙げられる。さらに、(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。さらには、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではなく、モノマーの単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率がクラッド部のそれに比べて同等かあるいはそれ以上になるように構成モノマーの種類、組成比を組むことが好ましい。共重合体を用いて構成する場合は屈折率の高い成分を中心方向に高濃度となるように分布させて屈折率分布を付与することもできる。また、使用環境に応じてポリマーの有する屈折率以外の物性の観点から選択することもできる。これら物性値としては、たとえば、高温環境下の使用では変形が起こらないようなガラス転移点等の熱的物性、高湿度での使用においては吸湿による伝送損失の増加を抑えるための吸湿度やそのほかの機械物性値等が挙げられる。
例えば、上記(a)の(メタ)アクリル酸エステル類の場合は、重合体となった場合の側鎖に分岐状構造や脂環式構造が導入される様にエステルとして導入する化合物を選択することで、耐熱性や耐湿性といった機能を導入できる場合がある。例えば、ポリメタクリル酸イソボルニル(PIBXMA)はガラス転移点が155℃、吸湿性が1%未満と、ポリメタクリル酸メチルのガラス転移点105℃、吸湿性2%〜3%に比べて改善されるが屈折率は大きく変化しない。この場合、共重合体で行う場合は均一組成で構成しても良いが、素線の構成や他の使用材料を考慮し、屈折率とそのほかの特性をバランスさせて構成させることもできる。例えば、ほぼ同じ屈折率を有し、ガラス転移点の異なるポリマーで中心部ほどガラス転移点が高くなるように組成比を調整したポリマーマトリクスを構成させると、前述の屈折率分布付与に起因する熱特性の変化を補償することも可能となる。
機械物性値に関しては、コア部に側鎖として脂環式炭化水素基や分岐型炭化水素基を有するアクリレートを重合成分として多く含むポリマーを用いた場合、PMMAなどに比べて脆性が強くなる傾向を示す素材が多いため、これらの素材を用いた場合は屈曲性や製造時での延伸性があまり良くないことがある。この様な場合は、曲げ半径が小さく取れず折れやすいことがあり、さらに延伸によるコア部の径の変動が軽減される一方で延伸時の破断等が起こり難いことが挙げられる。側鎖に脂環式炭化水素基や分岐型炭化水素基を有するアクリレートを重合成分として含むポリマーをコア部のマトリクスに用いる場合には、目的とする性能を低減させない限り柔軟性に富む素材と共重合させたり、クラッド部や被覆になどにフッ素ゴムのような樹脂を用いたりする事などによって、脆性を補強することが特に有効である。
さらに、作製する光学部材を赤色光〜近赤外光用途に用いる場合は、構成するC−H結合に起因した吸収損失が起こるために、C−H結合の水素原子を重水素原子やハロゲン(特にフッ素)などで置換した重合体(例えば、特許3332922号公報などに記載されている重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)、ポリトリフルオロエチルメタクリレート(P3FMA)、ポリヘキサフルオロイソプロピル2−フルオロアクリレート(HFIP 2−FA)などや特開平08−5848号公報に記載されているような含フッ素重合体など)、及び上記のモノマーを重水素置換またはハロゲン置換、特にフッ素置換した重合体からコア部を形成することにより、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができるため、伝送信号光の損失を軽減することができる。
これらのモノマーを得るためには、特開2004−210732号公報、特願2003−000518号、特願2003−278949号、特願2003−278950号、特願2003−278951号、特願2003−383708号、特願2004−140892号、特願2004−00891号などに記載された方法によって得ることができる。
なお、原料モノマーは重合後の透明性を損なわないためにも、精製を行って不純物や散乱源となる異物は重合前に充分に低減させることが望ましい。
(クラッド用樹脂)
クラッド部は、コア部を伝送する光がコア/クラッド界面で全反射させるために、コア部の屈折率より低い屈折率を有し、コア部との密着性が良い物を好ましく用いることができる。前述のコア部用素材の中で、コア部素材よりも低い屈折率を有する素材を選ぶことが好ましい。光学的特性、機械的特性および製造安定性の点から、コア部に屈折率上昇剤等を添加して形成する場合にはコア部との界面が、コア部のマトリックスと同一組成のポリマーからなることがより好ましい。また、共重合組成からなる重合体からコア部を形成する場合はポリマーブレンドを形成する場合、コア部とクラッド部の界面が不整状態となり伝送性能が低下するため、素材の選択に注意を要する。ただし、素材の選択によってコア部とクラッド部の界面の不整が起こりやすい、もしくは、製造適性上好ましくない場合などにおいては、コア部とクラッド部の間にさらに1層設けても良い。例えば、前述のようなコア部との界面(即ち、中空管の内壁面)に、コア部のマトリックスと同一組成のポリマーからなるアウターコア層を形成することにより、コア部とクラッド部との界面状態を矯正することができる。勿論、アウターコア層を形成せずに、クラッド部そのものを、コア部のマトリックスと同一組成のポリマーから形成することもできる。
クラッド部の素材としては、前述の観点を備え、さらにタフネスに優れ、耐湿熱性にも優れているものが好ましく用いられるため、これらの観点から、クラッド部は、フッ素含有モノマーの単独重合体または共重合体からなるのが好ましい。フッ素含有モノマーとしてフッ化ビニリデンよりなるポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと称する)を好ましく用いることができ、フッ化ビニリデンを10質量%以上含有する1種以上の重合性モノマーを重合させて得られるフッ素樹脂が好ましく用いることができる。
また、後述の溶融押出し法により重合体を成形して、クラッド部を作製する場合は、流動性などの観点からも重合体の溶融粘度が適当であることが必要である。この溶融粘度については、相関する物性として分子量を目安として用いることができ、重量平均分子量が1万〜100万の範囲であることが適当であり、より好ましくは5万〜50万の範囲である。
さらに、浸透した水分による伝送信号の劣化を防ぐ観点などからできるだけコア部へ水分が浸入することを防ぐことが好ましく、そのためには、ポリマーの吸水率が低いポリマーをクラッド部の素材(材料)として用いても良い。すなわち飽和吸水率(以下、吸水率と称する)が1.8%未満のポリマーを用いてクラッド部を作製するのが好ましい。より好ましくは1.5%未満のポリマー、さらに好ましくは1.0%未満のポリマーを用いてアウターコアを作製するのが好ましい。ここで吸水率(%)とは、ASTMD570試験法に従い、23℃の水中に試験片を1週間浸漬し、そのときの吸水率を測定することにより算出することができる。
(各種添加剤)
原材料の重合工程を経てプラスチック光ファイバを作る場合には、上記重合体を形成させるためのモノマーまたは重合性を有するそれらモノマーの重合体のほかに重合開始剤と連鎖移動剤を用いることができる。そのほかに、必要に応じて屈折率を変化させる屈折率調整剤や各種の添加剤を用いることができる。
(重合開始剤)
重合開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができ、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、MAIB、V−65などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は勿論これらに限定されるものではなく、2種類以上を併用してもよい。
(連鎖移動剤)
コア部形成用重合性組成物は連鎖移動剤を含有していることが好ましい。前記連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。前記クラッド部およびコア部形成用重合性組成物がそれぞれ連鎖移動剤を含有していると、重合性モノマーからポリマーを形成する際に、重合速度および重合度を前記連鎖移動剤によってより制御することができ、重合体の分子量を所望の分子量に調整することができる。例えば、得られたプリフォームを延伸により線引きして光ファイバ素線とする際に、分子量を調整することによって延伸時における機械的特性を所望の範囲とすることができ、生産性の向上にも寄与する。
前記連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択することができる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、前記連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(例えば、チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、前記連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。勿論、これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
(屈折率調整剤)
光の進行方向に対して垂直方向の屈折率分布に変化を持たないポリマーマトリクスや部分的に屈折率に変化を持たせる場合には、前記コア部用重合性組成物に屈折率調整剤を含有させて、屈折率を変化させることができる。この屈折率調整剤の濃度に分布を持たせることによって、前記濃度の分布に基づいて屈折率分布型のコアを容易に作製することができる。屈折率調整剤を用いなくとも、コア部の形成に2種以上の重合性モノマーを用い、コア部内に共重合比の分布を持たせることによって、屈折率分布構造を導入することもできるが、共重合の組成比制御などと比較した場合では、製造の簡便さの点で屈折率調整剤を用いることに利点がある。
屈折率調整剤はドーパントとも称し、加えていないポリマーの屈折率に対して、加えることによって得られるポリマーの屈折率を変化させる化合物である。その屈折率差は、添加量を抑える観点から0.005以上であるのが好ましい。屈折率調整剤は、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有する。これらは、特許3332922号公報や特開平5−173026号公報に記載されているような、モノマーの合成によって生成される重合体との比較において溶解性パラメータとの差が7(cal/cm1/2以内であると共に、屈折率の差が0.001以上であり、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して屈折率が変化する性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、いずれも用いることができる。
なお、ポリマーマトリクスを構成するポリマーがフッ素化合物である場合には、屈折率調整剤も高い相溶性を保つため、屈折率調整剤は含フッ素化合物であることが好ましい。
また、屈折率調整剤は重合性化合物であってもよく、重合性化合物の屈折率調整剤を用いた場合は、これを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いることが好ましい。上記性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、屈折率調整剤として用いることができる。また、各共重合成分によって反応性が異なる場合にはその反応性比によって共重合体の各組成比が変化するため、この組成比の変化によって屈折率分布の導入が可能な場合がある。このような場合、コア部形成用重合性組成物に屈折率調整剤を含有させ、コア部を形成する工程において界面ゲル重合法により重合の進行方向を制御し、屈折率調整剤の濃度に傾斜を持たせ、コア部に屈折率調整剤の濃度分布に基づく屈折率分布構造を形成するのが好ましい(以下、屈折率の分布を有するコア部を「屈折率分布型コア部」と称する)。屈折率分布型コア部を形成することにより、得られる光学部材は広い伝送帯域を有する屈折率分布型プラスチック光学部材となる。
前記屈折率調整剤としては、特許3332922号や特開平11−142657号公報に記載されている様な、例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジルn−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)、硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体、チアジアゾール誘導体、チオフェン誘導体、国際公開WO04/61009号パンフレットに記載のトリアジン誘導体などが挙げられる。硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体については、下記に具体的に示す化合物の中から適宜選ばれる。中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOおよび硫化ジフェニル誘導体、ジチアン誘導体が好ましい。なお、これらの化合物中に存在する水素原子を重水素原子に置換した化合物も広い波長域での透明性を向上させる目的で用いることができる。また、屈折率調整成分には重合性化合物を用いることもできる。例えば、特開2004−212724号公報に記載のようなドーパントとなりうる物質に重合性置換基を導入したものや、トリブロモフェニルメタクリレート、特願2003-383953号、特願2003-383954号に記載の化合物の様なモノマーにジフェニルスルフィド部位やチアジアゾール部位を導入したものなどが挙げられる。屈折率調整成分として重合性化合物を用いる場合は、マトリックスを形成する際に、重合性モノマーと重合性屈折率調整成分とを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、マトリクスと結合した状態が保たれるので耐熱性の面では有利となる可能性がある。
屈折率調整剤の濃度および分布を調整することによって、光学部材の屈折率を所望の値に変化させることができる。その添加量は、用途および組み合わされる部材に応じて適宜選ばれる。屈折率調整剤は、複数種類添加してもよい。また、前記屈折率調整剤に置換基を有するベンゼン環を含むベンゼン誘導体を用いて、使用光源として850nm付近の光源を用いた場合、国際公開WO04/46203号パンフレットに記載されるように、置換基のHammett値とベンゼン環C−H伸縮振動の4倍音吸収極大波長とが、負の相関関係を有する。即ち、ベンゼン環上のC−H伸縮振動の4倍音吸収極大波長は、ベンゼン環上の他の炭素の置換基に影響され、前記置換基のHammett値が小さくなるほど、長波長シフトすることが分かる。例えば光源波長850nmにおける吸収損失を低減するためには、C−H伸縮振動の4倍音吸収極大波長を長波長側にシフトさせ、吸収の極大波長やそのピークの裾が850nmから外れるようにするが望ましい。
Figure 2006178220
(その他の添加剤)
その他、コア部、アウターコア部およびクラッド部には、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、アウターコア部およびコア部の耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。前記化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料モノマーに添加した後、重合することによって、コア部、アウターコア部およびクラッド部に含有させることができる。
[製法]
以下に、重合性組成物を重合させてから前駆体となるプラスチック光ファイバ母材(プリフォーム)を形成後、加熱延伸することによって、プラスチック光ファイバ素線(素線)を得る製造方法について述べるが、実施形態は、以下に述べる実施形態に限定されるわけではない。その他のプラスチック光ファイバ素線の製造方法としては、WO94/04949号パンフレットに記載されている様な多層押出しを行いながら屈折率調整剤を熱拡散させて分布させる方法や特開平03−174105号公報に記載されている様な重合体の円筒体を入れ子状に配置して屈折率調整剤を熱拡散させて分布させる方法等があるが、これらにも部分的に適用することができる。
(予備工程)
まず、コア部を形成するための重合性組成物を調整する。クラッド部を重合性組成物より形成される場合にも同様に調整することができる。
重合性組成物中に塵埃等の固形物が混入したままであると信号光の散乱源となったり、製品周辺部であっても機械特性の劣化やマイクロベンディングの原因となったりして性能低下を引き起こしてしまう。そのため、製造工程においては、少なくとも1万程度のクリーン度の環境下で行う事が好ましく、特にプリフォーム作製工程までは1000程度のクリーン度の環境下で行うことがより好ましい。この環境下に重合性組成物を持ち込む過程で塵埃等が混入している場合があるので、捕集粒子径0.1μm以下のフィルタで固形分を除去しておくことが好ましい。さらに後述の精製工程内でろ過工程を経由しても良い。
また、組成物としての主成分である重合性モノマーに含まれる水分や重合禁止剤等の不純物を取り除く必要がある。また、重合開始剤などに含まれる水分等も同様である。これらの不純分を取り除くのは、重合工程や延伸工程において、反応の進行の阻害、発泡の原因、製品に残留などを引き起こすため、性能や良品率の低下等が起きるためである。不純物除去は蒸留や吸着等の一般的に知られる方法で行うことができる。
たとえば蒸留で行う場合、蒸留を行う温度は熱重合を避ける、変形を避ける観点から、モノマーなどの熱重合温度に対して、十分低くなる様に設定することが好ましい。このときの温度制御の上限は突沸等が起こらないように2℃に納めることが好ましい。下限は特に規定されないがあまり低すぎると効率が悪く、温度制御の観点から下限も2℃以内に納めておくことが好ましい。蒸留を行う雰囲気は水分等の持ち込みや反応を起こす酸素の混入がない様に不活性ガスで置換を行い、さらに減圧下で行うと蒸留の速度が向上するので好ましい。減圧の圧力制御は大気圧に対する減圧量で0〜0.05MPaが好ましく、0〜0.03MPaがより好ましい。蒸留開始直後に得られる蒸留成分、すなわち初留分は蒸留雰囲気から持ち込まれた不純物が混入していることがあるため、0.1〜10重量%程度得られた後の蒸留分を精製成分として用いることが好ましい。
また、蒸留後期の残留分中には、揮発しにくい不純物が混入していることがあるため、0.1〜5重量%程度残して蒸留を終了することが好ましい。また、モノマーに加える重合禁止剤に揮発しにくいものを選択することでこの蒸留工程における重合禁止剤の除去が確実に行われるので好ましい。
蒸留以外に吸着剤を用いることもできる。吸着剤としては一般的にモレキュラーシーブを用いることができ、適切な投入量としてはモノマーが含有している水分や不純分によって投入量は異なるが、モノマーに対して0.3重量%〜10重量%程度が好ましい。少なすぎると水分や不純分の除去が不十分であり、多すぎるとモノマー自体も吸ってしまい、分離する際に精製分の収率が低下してしまう。また、こちらも不活性ガス下で微減圧の雰囲気で行われることが好ましい。
(水分・禁止剤の最終濃度)
以上の操作によって、モノマーについては、水分を1000ppm以下、好ましくは500ppm以下まで除去することが好ましく、重合禁止剤は1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下まで除去することが好ましい。組成物で重合開始剤等の配合量の少ない成分については、1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下まで水分を除去することが好ましい。
これらの不純物除去によって得られたものは、反応性が高くなっているので静電気等の刺激のない状況で行うようにする。例えば、静電気を避けるため、40%以上の湿度下で上記の蒸留を行い、モレキュラーシーブによって保存時に空気中の湿度を吸収する様に組み合わせて行うこともできる。また保存においても同様であり、反応性を下げて重合反応が行われない様にするため、10℃以下、好ましくは5℃以下で固化しない程度の低温下に保存しておくことが好ましい。また、精製が終了した重合性組成物は空気中の水分の再吸収を避けるため、絶乾状態の不活性ガス雰囲気下の密閉容器に保存することがより好ましい。
この様に重合禁止剤や水分を取り除いて精製された重合性組成物を後述の様な中空管に注いで重合を行う場合には、移送時に気体の巻き込み等が起こり、溶存気体による重合時や加工時の発泡や重合性組成物への酸素混入による重合状態の変化のおそれもあるため、不活性ガス置換雰囲気下好ましくは減圧下での脱気を行う事が好ましい。脱気の方法としては超音波および/または減圧による脱気を行う事ができる。また、強度や耐性等の観点で可能であれば中空管等の重合容器に注いだ後に容器ごと行う事ができる。超音波の付与方法は特に規定はなく、容器形状や体積を勘案して適切なエネルギー量を与えることができる装置を選択すればよい。
減圧はモノマーの沸騰等が起こらない様に大気圧〜0.01MPa程度までの範囲で減圧する事が好ましく、より好ましくは0.02MPaまでで行う事が好ましい。脱気工程終了の目安としては重合性組成物の隔膜ガルバニ電池法によって測定した重合前の溶存酸素量の指示値の少なくとも1つを同一温度下における純水の飽和溶存酸素量の指示値の2.8倍以下に低減させることが好ましいため、この値を指標としてとして進めることが好ましい。さらに、この脱気を行う際には重合工程で影響を受けない程度に組成物の加熱を行って促進させる事が好ましく、より好ましくは30℃〜50℃の範囲で行う事が好ましい。この加熱は重合工程の重合性組成物の予熱を兼ねても良い。
前記クラッド部、アウターコア部を重合性組成物で作製する場合およびコア部形成用重合性組成物において、各成分の含有割合の好ましい範囲は、その種類に応じて異なり一概に定めることはできないが、一般的には、重合開始剤は、重合性モノマーに対して0.005質量%〜0.5質量%であることが好ましく、0.01質量%〜0.5質量%であることがより好ましい。前記連鎖移動剤は、重合性モノマーに対して0.10質量%〜1.0質量%であることが好ましく、0.15質量%〜0.50質量%であることがより好ましい。また、前記屈折率調整成分は、重合性モノマーに対して1質量%〜30質量%であることが好ましく、1質量%〜25質量%であることがより好ましい。
この配合した重合性組成物は、クラッドやアウターコアの様なほぼ均一の組成を取る部位においては、使用前に低い重合度まであらかじめ重合しておいてから、回転重合などに用いても良い。
(クラッド製造方法)
クラッドの製造方法としてはコア部の製造方法によって、選択することができる。後述の様な中空管内にモノマーを入れ回転させながら重合を進めることで、中空管内壁にポリマーを作成する方法、先にコア部を作製した後に重合性組成物を塗布して硬化させる方法、また、コア部とクラッド部を別途用意して嵌合して延伸して付与する方法などを挙げることもできるが、例として以下に重合体からなるパイプ(以降クラッドパイプと称する)を作成し、その内部にコア部を形成する方法を挙げて説明する。
作成するクラッドパイプの径は作成するプリフォームの径によって適宜設定されるが、クラッド外径は、19.5mm〜20mmの範囲が好ましく、クラッドの厚みtは、0.45mm〜0.55mmの範囲が好ましいが、いずれの値もそれらの範囲に限定されるものではない。得られるクラッドパイプは作成するプリフォームの非円率が小さくなる様に、設定値の外径、内径ともに1%以内となる様に作成することが好ましい。
また、その内面粗さもコア部とクラッド部の界面不整の原因となりうるため、平滑であることが好ましい。上限としては、例えば、キーエンス社製顕微鏡VK8500による測定でSRaが0.4μm以下となる様に作成することが好ましい。外壁面の粗さも同様に小さい方が好ましい。パイプ壁面に発生する視認できる異常では、パイプの軸方向と平行に走る内面すじや、パイプ外壁面に発生する凹凸は高さが4μm以下となる様にすることが好ましい。これらの異常は延伸後のプラスチック光ファイバの径等が変動する要因となるため、低減することが好ましい。
クラッドパイプの製造方法としては、パイプ内面の粗度が大きいとコア部とクラッド部の界面不整を生じてしまうため、以下に記載する、重合性組成物を中空管内で回転させながら重合させる方法(以降、回転重合法と称することがある。)、または、溶融樹脂の押し出し成型による方法で作成することが好ましい。
(回転重合法)
回転重合法は、特許第3332922号公報に記載される様に、平滑な中空管内に重合組成物を入れて回転させながら重合する方法である。この重合方法はコア部の形成にも用いられることがあり、詳細はコア部の製造法の項で述べる。
(溶融押出法)
溶融樹脂の押し出し成型による方法を以下に説明する。図1に溶融押出装置の一例の外観図を示す。装置本体11には、原料供給ホッパ(以下、ホッパと称する)12が取り付けられている。ホッパ12からは、前述したクラッド部の原料であるPMMAやPVDFなどのポリマーが仕込まれており、適宜、装置本体11に供給する。また、装置本体11内には、ベント付き1軸スクリュー押出機(図示しない)が備えられており、その押出機でポリマーを溶融して、ダイ13に押し出しながら送られる。
ダイ13は、ダイ本体14を覆うように3基の加熱装置15,16,17と冷却装置18とが設置されている。ダイ13内を原料ポリマーが通ることにより、出口14aからクラッド19が押出される。
加熱装置15〜17は、温度が安定して制御出来るものが好ましく、蒸気、熱媒油、電気ヒータなど利用した装置を用いる事が出来る。これら加熱装置の取り付け位置や個数は特に限定されるものではなく、種類が異なる加熱装置を交互に取り付ける事も可能である。ダイ本体14の形態に応じて取り付け方法、順序、個数を調整することが出来る。また、冷却装置18も温度が安定して制御出来るものであればどのような冷却方法の装置を用いても良いが、水、不凍液、オイルなどの液体や、電子冷却などを使用することが出来る。
図2には、ダイ本体14の断面図を示す。なお、図では、ダイ本体14に取り付けられている加熱装置15〜17及び冷却装置18は省略して示している。ダイ本体14の内部には、円筒中空管の形状のクラッド19(図1参照)を形成するために、ガイド30が挿入されている。ガイド30は、図3に示すようにクラッドの内壁面を形成するインナーロッド31と、これを支えてポリマーの流れの片寄り、背圧の上昇、ウェルドライン様の流れ模様の抑制などを行うスパイダー32とから構成されている。
なお、スパイダーには、図3に示した形状以外にも、その断面が曲線のみから形成されている断面を持つ羽根板や、多孔板(ブレーカープレート)を有しているものも適用することは可能である。なお、用いることが可能なインナーロッドとスパイダーとからなるガイド30は、機械加工等により一体部品として製作する事も出来るし、または別部品として組み合わせる事も出来る。なお、別部品として組み合わせる場合にはインナーロッドの組み付け機構に調芯機能を持たせる事が好ましく、クリアランスを調整することによって得られるパイプの偏肉を防ぐことができる。
図2を用いて、原料ポリマー35からクラッド19を作製する方法について詳細に説明する。装置本体11から図示しないベント付き1軸スクリュー押出機により原料ポリマー40がダイ本体14に押出される。この原料ポリマー40は、ダイ本体14とインナーロッド31との間の流路33aを通り、ダイの出口14aから押出されクラッド19が形成される。また、クラッド19の押出し速度は、1cm/min〜100cm/minの範囲であることが、形状を均一に保つとともに、生産性の点からも好ましいが、必ずしもその範囲に限定されるものではない。
また、本実施形態の様な実施態様においてインナーロッド31の長さL(mm)はクラッド19の外径D1(mm)の4倍以上あることが好ましく、さらに好ましくは7倍以上であることがクラッド19の寸法精度を確保するために重要である。これは、クラッド19の外径D1に対してインナーロッド31の長さLが長いほど、ダイ本体14内で、原料ポリマー35からクラッド19の形成を充分に行うことができるからである。しかしながら、それらの関係に限定されるものではない。
また、ダイの出口14aには、温度センサ36が取り付けられている。この温度センサ36によってダイの出口14aでのクラッド19の温度を測定する。この温度がクラッド19の主成分である原料ポリマー35のガラス転移温度以下であることが、クラッド19の形状を均一に保持することが可能となるために好ましい。また、クラッド19の温度が40℃以上であることが、急激な温度変化による形状の変化が抑制することが可能になり好ましい。このクラッド19の温度の制御は、図1に示したような冷却装置18をダイ本体14に取り付けても良いし、ダイ本体14の自然空冷により冷却しても良い。特に結晶性を示すポリマーを用いて製造する場合には緩慢に降温すると、結晶粒ができ内面粗さが大きくなることがあるので温度制御を行うことが好ましい。
なお、ガイド30とダイ本体14とを一体部品として作製しても良い。または、図2に示したように別体として作製しても良い。いずれの場合であっても、インナーロッド31はダイ出口14aで、クラッド19の肉厚が均一になるよう精度良くダイ中央に配置されなければならない。また、図4に示すようにダイ本体の内壁面14bとインナーロッドの表面(側壁面)31aとの距離の誤差は前述したクラッドの厚みtに対して±200μm以内である事が好ましく、更に±50μm以内である事がより好ましい。なお、これらの測定は、図に示すように角度90度毎のダイ内壁面14bとインナーロッド表面(側壁面)31aとの距離a、b、c、dを公知の方法により測定することで行われる。
円筒中空管であるクラッドは、次工程でコアの原料であるモノマーを注入できるように、底部を有していることが好ましい。底部は、前記円筒中空管(クラッド)を構成しているポリマーと密着性および接着性に富む材質を用いることが好ましい。また、底部を、前記中空管と同一の重合体で構成することもできる。重合体からなる底部は、例えばクラッドパイプの成形後に、パイプの一端を容器に差し込んだ後、少量の重合性モノマーを注入し、重合することによっても形成することができる。
中空管の外径や肉厚の制御として、外径ダイス(サイジングダイとも言われる)を用いた方法もある。この外径ダイスによる方法は、通常の中空管を組み合わせても良いが、前述の押し出し方法と組み合わせることもできる。
図5に外径ダイスを用いてのクラッドパイプを製造するために用いられる製造ラインを示す。製造ライン40は、溶融押出装置41と押出ダイス42と成形ダイス43と冷却装置44と引取装置45とが備えられている。
溶融押出装置41に取り付けられているペレット投入ホッパ(以下、ホッパと称する)46から、前述したPMMAなどのポリマーが適宜投入される。さらに、押出部41a内にはベント付き1軸スクリュー押出機(図示しない)が備えられており、押出部41a内でポリマーは加熱されて溶融して押出ダイス42に押し出される。このときのポリマーの温度は、流動性の確保と熱変性の抑制の観点でそのポリマーのガラス転移点(Tg)に対して、Tg+30℃〜Tg+120℃の範囲であることが好ましく、Tg+70℃〜Tg+90℃の範囲であることがより好ましい。なお、溶融時のポリマーの押出ダイス出口(図7参照)42aのみかけ粘度が、500Pa・s〜10000Pa・sであることが好ましく、1000Pa・s〜7000Pa・sであることがより好ましく、2000Pa・s〜5000Pa・sであることが最も好ましい。このようにして、押出ダイス42内を原料ポリマーが通ることにより、出口42aから軟性クラッド(溶融樹脂体)50が押し出される。
軟性クラッド50は、次に成形ダイス43に送り込まれる。成形ダイス43の要部を分解した斜視図を図6に、要部断面図を図7に、図3中のIV−IV線の断面図を図4にそれぞれ示す。なお、図示した成形ダイス43は、説明するための一態様であり、用いることができる成形ダイスは図示したものに限定されるものではない。成形ダイス43には、成形管60が備えられており、成形管30に軟性クラッド20を通すことにより、軟性クラッド20の形状が調整されクラッド21が得られる。軟性クラッド20の押出速度Sは、0.1≦S(m/min)≦10の範囲が好ましく、より好ましくは0.3≦S(m/min)≦5.0であり、最も好ましくは0.4≦S(m/min)≦1.0である。しかしながら、押出速度Sは、前述した範囲に限定されるものではない。
また、成形管60に多数の吸引孔60aを設け、成形管60の外側に減圧チャンバ61を設けることが好ましい。この減圧チャンバ61を真空ポンプ47(図5参照)により減圧にすることで、クラッド51の外壁面51aが、成形管60の成形面60bに密着するために、クラッド51の肉厚が一定になって成形される。なお、減圧チャンバ61内の圧力は、20kPa〜50kPaの範囲とすることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
成形ダイス43の入口43aに、クラッド51の外径を規定するためにスロート(外径規定部材)48を取り付けることが好ましく、この場合には、その肉厚をより均一にすることが可能となる。なお、このスロート48が軟性クラッド50と接する面48aとクラッドの押出方向に直交する面51b(なお、図7は断面図であるので、いずれの面48a,51bも線として記されている)との面角度θが、30≦θ(°)≦80であると、軟性クラッド50の形状を乱す圧力の発生が抑制される。なお、面角度θは、前述した範囲に限定されるものではない。
さらに、吸引孔の断面も図7に示した形状に限定されるものではない。他の形態について図8に示す。図8(a)に示した成形管63に設けられた吸引孔63aは、その断面がしぼられた形状となっている。また、(b)に示すように成形管64には、その断面が略三角形状の吸引孔64aが設けられている。さらに、(c)に示すように成形管65には、その断面が略半円形状の吸引孔65aが設けられている。さらに、図示しないがその他の矩形状のもの、その他の形状のものを用いることも可能である。
また、スロート48は、図7に示したように成形ダイス13に別体として取り付けても良いし、一体として成形ダイスを作製しても良い。
また、押出ダイス42の出口42aと成形ダイス43の入口43aとの距離L11が、0<L11(mm)<20の範囲であると、軟性クラッド50の形状を乱す圧力の発生が抑制され、また重力による、「だれ」を起こすことなく成形ダイス63に押し出すことが可能となり、さらに内リップの外周面の半径をD2(mm)、外リップの内周面の半径をD3(mm)、溶融されたポリマーの吐出流量をc(mm/秒)、前記パイプの引取速度をe(mm/秒)とした場合に、
[e{π(D3−D2)}/c]−1≧0.1L
の関係を満たす様に押し出し条件を設定することでより安定したパイプの引取りを行うことができる。なお、成形ダイス43の入口とは、図7に示したようにスロート48が成形ダイス43に取り付けられているときには、スロート48の取り付け反対面48bを成形ダイス43の入口と定義する。また、スロートが成形ダイスに取り付けられていないときには、成形ダイス43の入口43aが成形ダイスの入口となる。
成形ダイス43のクラッド押出方向の長さL12が、クラッド51の外径d11に対して、4倍以上のものを用いると、クラッド51の肉厚d12を均一にする効果が十分に働くために好ましい。より好ましくは、5倍以上であり、最も好ましくは8倍以上であるが、それらの関係に限定されるものではない。また、得られたクラッド51の外径d11は、d11(mm)≦50の範囲であることが好ましく、より好ましくは10≦d11(mm)≦30であり、最も好ましくは15≦d11(mm)≦25の範囲である。さらに、クラッド51の肉厚d12は、2≦d12(mm)≦20の範囲であることが好ましく、より好ましくは4≦d12(mm)≦15であり、最も好ましくは4≦d12(mm)≦10の範囲である。しかしながら、それらの範囲は、前述したものに限定されるものではない。
図5に示すように、成形ダイス43により形状が調整されたクラッド51は、冷却装置44に送られる。冷却装置44には、多数のノズル70が備えられており、それらのノズル70から冷却水71をクラッド51に向けて放水することで、クラッド51を冷却して、固化させる。冷却水71は、受け器72で回収されて、排出口72aから排出される。この冷却排水は、再生した後に再利用することが環境の面から好ましい。
さらに、冷却装置内を減圧することでより冷却効率を上げることができる。また、排出口は、特願2004-71518号の様な傷やスジにならないための金属のガイドに挟み込んだ弾性体を用いることが好ましい。冷却装置内を減圧する場合は、排出口を流水によるウォーターシールで封止することが多いが、このときに弾性体がスポンジ状であるとスポンジ体に水分を含み密閉度が上昇しやすくなるので好ましい。なお、冷却装置44は図示した形態に限定されるものではなく、さらに、中空部内面にも水や冷風等の冷媒を送り込んで、冷却を行うことによって急速に冷却ができるようにしても良い。
クラッド51は、冷却装置44から引取装置45により引き出される。引取装置45は、駆動ローラ75と加圧ローラ76とが備えられている。駆動ローラ75には、モータ77が取り付けられており、クラッド51の引取速度の調整が可能になっている。また、クラッド51を挟んで駆動ローラ75と対向して配置されている加圧ローラ76により、クラッド51の微小な位置のずれを修正することが可能となっている。この駆動ローラ75の引取速度と溶融押出装置41の押出速度とを調整したり、加圧ローラ76によるクラッド51の移動位置を微調整したりすることにより、クラッド51の形状、特に肉厚を均一にすることが可能となる。
プラスチック光学部材の製造に用いられる他の実施形態の製造ライン80を図9に示す。製造ライン80は、上述の構成を具備し、溶融押出装置41と押出ダイス42と成形機能付き冷却装置(以下、冷却装置と称する)81と引取装置45とが備えられ、冷却装置81に直接に成形管82が取り付けられて、各構成要素同士が連続している。さらに、成形管82には多数の吸引孔82aが形成されている。なお、成形管82には、様々な成形管を用いることができるが、前述した説明で図示した形態に限定されるものではない。
冷却装置81に備えられている減圧口から図示しない真空ポンプにより冷却装置81内は減圧に維持されている。冷却装置81内に多数のノズル84が取り付けられている。ノズル84からは冷却水85が供給される。冷却水85をクラッドパイプ(クラッド)51に放水することで、クラッド51は冷却されて固化される。冷却水85は冷却装置81の下部に設けられている排出口86から排出される。また、冷却装置81のクラッド出口には真空シール87が取り付けられている。
図9に示した製造ライン80は、従来のプラスチックパイプの製造ラインなどを転用することが可能である。その場合に、新たに作製する物は、製造予定のクラッド51に対応した成形管82のみで済むため、製造ライン80を用いてクラッド製造の実験条件を探索する予備実験を行う際に、それぞれの条件に対応して成形管のみを作製すれば良いため、予備実験、ひいては実製造の際のコスト低下に有効である。
プリフォーム製造においてクラッドの中空部にコアを形成する方法としては、コアになるコア部材とクラッドになるクラッド部材とを別々に作ってから両者を一体に組み合わせる第1の方法と、クラッドとともにコアを形成する第2の方法と、予め形成されたクラッドの内壁に直接コアを形成する第3の方法とがある。
前記第1の方法は、管状のクラッド部材の中空部に、円柱状のコア部材をはめ込む方法である。クラッド部材とコア部材とも、溶融押出または後述のようなゲル重合等でそれぞれ製造することができ、このとき、両者の製造方法は異なるものであってもよい。なお、コア部材は、その製造方法により断面円形の中央部に中空部が形成されることがあるが、プラスチック光ファイバ素線(素線)としたときにこの中空部が消失するようにプリフォームを延伸するとよい。
また、前記第2の方法は、ポリマーを主成分とするクラッド用材料と、ポリマーを主成分とするコア用材料とをそれぞれ溶融混練手段で溶融し、同心円状の複層構造のプリフォームとして共に押し出す方法(溶融共押出法)である。
そして、前記第3の方法としては、重合性化合物等をクラッド部材の中空部に入れて重合させることによりコアを形成する方法や、ポリマーを主成分とするコア用材料を溶融して予め作られたクラッド部材の中に入れてコアを形成する方法等がある。
以上のようにして作製されたクラッドの中にコアを形成する方法を詳細に説明する。まず、前記第3の方法のうち、重合性化合物等をクラッド部材の中空部に入れて重合させることによりコアを形成する方法について説明する。
コアを同心円状の複層構造、例えば2層構造とする場合には、クラッド内面と接する円管状の一方をアウターコアと称し、このアウターコアの中空部の他方をインナーコアと称する。このように、コアは2層構造とすることもあるが、アウターコアを形成せずに単一の層としてもよい。
後述の実施形態では、塊状重合を利用してクラッドの内面にゲル相を生じさせることによりコアを形成しており、この方法を、以下、ゲル重合法と称するものとする。ゲル重合法によると、断面円形の径方向において屈折率が変化している、つまり、屈折率分布を有するコアをクラッドの中空部に生成させることができる。なお、ゲル重合法は、さらに2つに大別され、そのひとつは、クラッドを静置させた状態で塊状重合を実施する方法(以下、界面ゲル重合法と称する。)であり、他のひとつは、クラッドを回転させながら界面ゲル重合の様に塊状重合を実施する方法(以下、回転ゲル重合法と称する。)である。前述のようにコアを2層構造とする場合には、インナーコアは界面ゲル重合法と回転ゲル重合法とのいずれの方法でも生成させることができ、アウターコアはゲル化させるか否かに関係なく、回転ゲル重合法に使用する装置及び重合性化合物の重合反応により生成させることができる。
[界面ゲル重合法及びプリフォーム]
界面ゲル重合により得られるプリフォームについて説明する。図10は、プリフォーム91の断面図である。図10に示すプリフォーム91は、外殻部であるクラッド92と、コア93とを有し、コア93は上記のように、クラッド92の内面に接するアウターコア部96と、アウターコア部96の内部のインナーコア部97とを有している。クラッド92は、外径及び内径が長手方向に一定で、厚みが均一の管形状となっている。クラッド92は、例えば、溶融押出成型により得られたポリフッ化ビニリデンや回転重合により得られるPMMAが挙げられるが、これに限定されない。
アウターコア部96は、クラッド92と同様に外径及び内径が長手方向に一定で、厚みが均一の管形状となっている。ここでは、アウターコア部96はPMMAの場合を例示するがこれに限定されない。また、インナーコア部97はアウターコアの内側に形成されており、径が長手方向に一定となっている。
図11はプリフォーム91の断面円形の径方向における屈折率を示す図である。この図11において、横軸はプリフォーム91の断面径方向を示し、縦軸は屈折率を示す。屈折率は、上の方ほど高い値であることを意味している。横軸の符号(A)で示される範囲は、図10におけるクラッド92の屈折率であり、符号(B)で示される範囲は図10におけるアウターコア部96の屈折率であり、符号(C)で示される範囲は図10におけるインナーコア部97の屈折率である。
インナーコア部は、図11に示されるように、アウターコア部との境界から中心に向けて屈折率が連続的に高くなっている。クラッドはアウターコア部よりも屈折率が低く、アウターコア部はインナーコア部よりも屈折率が低い。なお、断面円形の径方向において、屈折率の最大値と最小値との差が0.001以上0.3以下であることが好ましい。なお、図10では、説明の便宜上、クラッドとアウターコア部との境界、及びアウターコア部とインナーコア部との境界を実線で示してはいるが、それぞれに用いる材料及び互いの親和性、または以下のような膨潤層の形成状態等の種々の製造条件に応じて境界の明確度は異なったものとなる。したがって各境界が認められない場合もある。
アウターコアの生成法については、後述の回転ゲル重合法における装置及び重合条件を適用することができるので、ここでの詳細説明は略す。ただし、後述の回転ゲル重合法ではクラッドとアウターコア用原料との界面でゲル状化をさせることが多いが、ここでのアウターコア生成については、ゲル状化をさせなくてもよい。特にクラッド部の材料とコア部の材料とに相溶性が有る場合はゲル化を行うことで、中空管内壁面の溶解による租面化やポリマーブレンド生成による界面不整などが考えられるので好ましくない。ゲル化の有無を考慮しない場合の重合については、以下の説明において回転重合と称することもある。なお、アウターコアを形成されたクラッドは、アニール処理されることが好ましく、このアニール処理については、回転ゲル重合法の説明箇所で詳細に説明する。
次にインナーコアを生成することができる界面ゲル重合法について詳細に説明する。この方法は、特許第3332292号明細書に記載される方法であって、この方法によると、塊状重合が可能なモノマー、重合性開始剤、屈折率調整剤からなる混合溶液をインナーコア用原料とし、中空管であってその内壁にアウターコアが形成されているクラッドの中空部に注入する。注入したインナーコア用原料のモノマーの重合反応を開始すると、アウターコアの内壁にゲル相ができる。屈折率調整剤はゲル相内に入りにくいために、モノマーの重合過程でゲル相が中心へと進行するに伴い、中心部へ濃縮される。この結果、屈折率調整剤の濃度は外周部から中心に向かうほど高くなり、屈折率分布ができる。
界面ゲル重合法によるインナーコア形成は、図12に示すような重合装置90により行うが、これに限定されるものではない。重合装置90は、重合容器101と、圧力計104と、圧力コントローラ105との他に、温度計107と温度コントローラ108とを備えている。さらに、重合容器101には、不活性ガスとしての窒素を供給する窒素供給元111と、重合容器101の内部空気を抜くためのバルブ112とが備えられている。そして、重合容器101は容器本体101aと蓋部材101bとを有しており、容器本体101aと蓋部材101bとは、ネジ(図示せず)で固定される。ただし、重合装置の構造には依存せず、図12に示される重合装置100とは異なるものを用いてもよい。
圧力計104は、重合容器101の内部の圧力を検知する。圧力コントローラ105は、圧力計104の検知結果に応じて、窒素供給元111からの窒素供給量を調節して、重合容器101の内部の圧力を制御する。また、温度計107は、重合容器101の内部の温度を検知する。容器本体101aには加熱線(図示なし)が備えられており、温度コントローラ108は、温度計107の検知結果に応じて、加熱線を流れる電流を制御する。これにより、重合容器101の内部の温度は制御される。なお供給されるガスは不活性ガスであれば窒素に限定されず、アルゴン等でもよい。このガス供給は、重合容器101の内部空気を置換するためのものある。重合容器101は、容器本体101aと蓋部材101bとがネジ留めされることにより、内部の圧力と、内部への窒素の供給量とを精巧に制御することが可能となっている。
この重合装置100を用いた場合には、プリフォーム91(図10参照)は以下のように作製される。なお、この重合装置100を用いて界面ゲル重合によりプリフォームを作製する場合の説明においては、重合物であるインナーコア部97を生成するための重合性化合物をインナーコア部用重合性化合物と称する。この重合性化合物としては、モノマーの他に、二量体、三量体等の多量体を用いることも可能である。アウターコア部96が形成されたクラッド92は、インナーコア部用重合性化合物及び重合開始剤、連鎖移動剤、ドーパント等の混合物が注入された状態で、治具としての支持管115に挿入されて、容器本体101aに入れられる。このとき、支持管115は、垂直に静置される。なお、インナーコア部用重合性化合物等が注入された状態のクラッド92は、支持管115に挿入される前、あるいは、挿入された状態で、脱気処理を施されることが好ましい。この脱気処理方法としては、簡便さならびに効果の点で、減圧チャンバ等による減圧処理が好ましく、この減圧処理において超音波を作用させることがさらに好ましい。減圧処理は、減圧チャンバ等で30分以上行うことがより好ましい。
クラッド92が挿入された支持管115が容器本体101aにセットされ、蓋部材101bが容器本体101aにネジ留めされると、窒素供給元111から重合容器101の内部へ窒素が供給されるとともに、バルブ112を開状態とすることにより重合容器101の内部の空気が出されて、重合容器101の内部の空気は窒素に置換される。窒素置換した後、バルブ112を閉じて、重合容器101の内部圧力は、所定の値となるように圧力コントローラ105により制御される。そして、インナーコア部用重合性化合物の重合は、温度コントローラ108により、本実施形態においては加熱された状態で行う。この重合は、使用するコア用重合性化合物に応じて所定の温度下で所定の時間行う。重合反応中における圧力は、圧力コントローラ105により所定値となるように制御されており、常圧より高くすることが好ましい。さらに、上記のように、重合容器101に支持管115をセットした後、特開平9−269424号公報記載のように加圧、または特許33329222号明細書記載のように減圧して、重合を生起進行させてもよい。
インナーコア部用重合性化合物が重合を開始すると、アウターコア部の内壁がインナーコア部用重合性化合物により膨潤し、重合初期段階では膨潤層を形成する。この膨潤層は、ゲル状態となっており、そのため、重合速度が加速(ゲル効果と称する)する。そして、重合は、クラッド92の内面から開始し、クラッド92の断面円形の中心に向かって進行する。このとき、膨潤層の内部へは、分子体積の小さい化合物ほど優先的に入り込むため、重合の進行と共に、分子体積の大きなドーパントが膨潤層から前記中心方向へと押し出される。この結果、形成されたコアの中心部は、高屈折率のドーパントの濃度が高くなり、図11に示すように、断面円形の径方向における中心に向かって屈折率が徐々に高くなったプリフォームを得ることができる。
また、インナーコア部用重合性化合物の重合時においては、このインナーコア部用重合性化合物が注入されたクラッド92を、図12に示すように支持管115等の治具により支持して重合容器101にセットすることが好ましい。前記治具は、クラッド92の挿入が可能な中空部を有する管形状であることが特に好ましく、その材質は重合温度でも合成を保てるものであれば制限されず、ガラス管やステンレス管等を好ましく用いることができる。そして、加圧下で重合が進むに従い、コアとなる部分が徐々に収縮しようとする力を増すので、これに応じてクラッド92が微小な範囲で寸法変化することができるように、前記治具は、クラッド92の外面を固定することなくクラッド92を支持することが好ましい。例えば、クラッド92が治具に固定されて支持されている場合には、重合中のコアの収縮に対してクラッド92が応じることができずに、コアの中央部にボイドが発生し易くなってしまうことがある。このような理由により、治具が管状である場合には、前記クラッド32の外径より大きい内径を有することが好ましい。前記管状治具の内径は、前記クラッド92の外径に対して0.1%〜40%だけ大きい径を有しているのが好ましく、10〜20%だけ大きい径を有しているのがより好ましい。ただし、前記クラッド92を垂直に立てることができ、クラッドの寸法変化に応じながらこれを支持するものであれば好ましく用いられ、管状である必要はない。
重合時の加圧の好ましい値の範囲については、用いるインナーコア部用重合性化合物によって適宜決定される。加圧度が大きすぎると、加圧気体がインナーコア部用重合性化合物中に溶解する、または、インナーコア部用重合性化合物中の溶存気体が脱離せず、加熱による延伸工程16(図1参照)でこれが気泡となるという問題がある。一方、加圧度が小さすぎると、インナーコア部用重合性化合物の重合工程におけるポリマー生成時の体積収縮に対して応答性が低くなり、空隙や気泡が発生しやすいという問題がある。本実施形態では、0.01MPa〜1.0MPa程度が好ましい範囲である。このように、重合時の圧力を制御することにより、プリフォームのコアあるいはプラスチック光ファイバ素線のコア空隙や気泡が発生することを抑制することができる。
重合は本実施形態に示すように加熱下でなされることが好ましい。その温度は、インナーコア部用重合性化合物の種類等に応じて決定されるものであり、主にその重合開始剤に起因する重合速度と変質温度とを考慮して決定される。例えば、インナーコア部用重合性化合物として、典型的なメタクリレート系低分子化合物を用い、これをインナーコア部97の主成分とした場合には、その温度は50℃〜150℃とすることが好ましく、80℃〜140℃とすることがさらに好ましい。また、重合時間は、4時間〜48時間であることが好ましいが、これもコア用重合性化合物の種類等に応じて決定される。しかしながら、重合時の各条件は前述したものに限定されるものではない。
このようにしてインナーコア部の断面円形の径方向において屈折率分布が発現されるが、屈折率が互いに異なる部分間は熱挙動も互いに異なる。そのため、重合を一定温度で行うと、重合反応の進行に伴って体積収縮の応答性が前記熱挙動の違いに起因して変化し、プリフォーム内部に気泡やミクロな空隙が発生し、プリフォームを加熱延伸した際に気泡が多数発生する現象が生じる可能性がある。さらに、重合温度が低過ぎると、重合効率が低下するので生産性を著しく損ない、重合が不完全となって光透過性が低下し、作製される光学部材の光伝送能を損なうこともあり。一方、初期の重合温度が高過ぎると、初期の重合速度が著しく上昇し、コアとなる領域の収縮に対して応答緩和できず、気泡発生の傾向が著しい。
そこで、本実施の形態では、下記関係式を満たす温度T1(℃)に初期の重合温度を維持し、重合速度を減少させて初期重合における体積収縮性の緩和応答性を改善している。 なお、下記関係式中、Tbはインナーコア部用重合性化合物の沸点(℃)を示し、Tgはこの重合性化合物から生成される重合体のガラス転移点(℃)を示す。ただし、複数種の重合性化合物を混合して用いるときには、各重合性化合物の沸点のうち最も低い沸点をTb(℃)とし、各重合性化合物により生成することができるホモポリマーの各ガラス転移点のうち最も値をTgとみなす。
Tb−10≦T1≦Tg
さらに、本実施の形態では、重合温度をT1(℃)に所定時間維持した後、下記関係式を満たす温度T2(℃)にまで昇温してさらに重合する。
Tg≦T2≦Tg+40
T1<T2
温度をT2℃まで昇温して重合を完結すると、光透過性が低下するのを防止することができ、光伝送能の良好なプリフォーム及びプラスチック光ファイバ素線が得られる。また、熱劣化や解重合の影響を抑制しつつ、内部に存在するポリマー密度の揺らぎを解消し、プリフォームの透明性を向上させることができる。ここで、T2は、Tg℃以上(Tg+30)℃以下であるのが好ましく、(Tg+10)℃程度で行うことが特に好ましい。T2がTg未満であると、この効果を得ることはできず、(Tg+40)℃を越えてしまうと、熱劣化や解重合により、プリフォームの透明性が低下する傾向があるとともに、屈折率分布型のコアを形成する場合には屈折率分布が崩れてしまい光学部材としての性能が顕著に低下することがある。なお、昇温は段階的に行っても連続的に行ってもよいが、コア用原料内に熱分布が生じて重合状態にムラができることは好ましくないので、昇温にかける時間は短いほうがよい。
温度T2(℃)での重合は、重合開始剤が残留しないように、重合反応が完結するまで行うことが好ましい。プリフォーム内に未反応の重合開始剤が残っていると、プリフォーム加工時、特に溶融延伸において、加熱された未反応の重合開始剤が分解して気泡などを発生するおそれがあるため、重合開始剤の反応を終了させておくのが好ましい。温度T2を保持する時間は、用いる重合開始剤の種類によって好ましい範囲が異なり、温度T2(℃)での重合開始剤の半減期時間以上とするのが好ましい。
また、重合開始剤として、十時間半減期温度が(Tb−20)℃以上である化合物を用い、前記関係式を満たすT1(℃)で前記重合開始剤の半減期の10%以上の時間(好ましくは25%の時間)重合することも、上記と同様な観点から好ましい。十時間半減期温度が(Tb−20)℃以上である化合物を重合開始剤として用い、前記初期重合温度T1(℃)で重合すると、初期の重合速度を減少させることができる。また、前記初期温度で、前記重合開始剤の半減期時間の10%以上の時間まで重合することにより、初期重合における体積収縮応答に対し圧力により速やかに追随させることができる。すなわち、前記条件とすることにより、初期重合速度を減少させ、初期重合における体積収縮応答性を向上させることができ、その結果、体積収縮による気泡混入を軽減することができ、生産性を向上することができる。なお、重合開始剤の十時間半減期温度とは、重合開始剤が分解して、十時間でその数が1/2になる温度をいう。
前記条件を満たす重合開始剤を用いて、初期重合温度T1(℃)で前記開始剤の半減期時間の10%以上の時間重合する場合、重合を完結するまで温度T1(℃)に維持してもよいが、光透過性の高い光学部材を得るには、T1(℃)より高い温度に昇温して、重合を完結することが好ましい。昇温時の温度は前記関係式を満たす温度T2(℃)であることが好ましく、より好ましい温度範囲も前述の通りであり、温度T2(℃)の保持時間の好ましい範囲も前述の通りである。例えば、インナーコア部用重合性化合物として、沸点が約100℃であるメタクリル酸メチルを用いて、コアのポリマーマトリックスをガラス転移点が105℃のポリメタクリル酸メチルとする場合には、そのT1(℃)は85℃〜100℃未満として、その後T2(℃)は105℃〜140℃にまで昇温することが好ましい。
[回転ゲル重合法及びプリフォーム]
回転ゲル重合により得られるプリフォームについて説明する。図13は、プリフォーム131の断面図である。プリフォーム131は、外殻部であるクラッド132と、コア135を有し、コア135は上記のように、クラッド132の内面に接するアウターコア136と、アウターコア部136の内部のインナーコア部137とを有している。そして、インナーコア33の中央部は空洞部138となっている。クラッド132は、外径及び内径が長手方向に一定で、厚みが均一の管形状となっている。なお、空洞部138は、後工程の延伸によりプラスチック光ファイバ素線とされると消失し、図10,図11の様な構造と屈折率プロファイルを有するプラスチック光ファイバ素線が得られる。
アウターコア部136は、クラッド132と同様に外径及び内径が長手方向に一定で、厚みが均一の管形状となっている。アウターコア部136の材料は、クラッド132とインナーコア部137との少なくとも一方との関係を考慮して選択される。
なお、空洞部138の断面円形の径と、この径のプリフォーム131の外径に対する比率とは、図13に示す様態に限定されるものではなく、製造条件に応じて変動する。なお、説明の便宜上、図13ではクラッド132とアウターコア部136との境界、及びアウターコア部136とインナーコア137との境界を示してはいるが、後述のように界面でゲル重合反応等が生起進行する場合には図13のように両境界が明確でない場合や境界の界面が消失する場合がある。例えば、インナーコア部用及びアウターコア部用の重合性化合物を共にMMAまたは全重水素化メチルメタクリレート(MMA−d8)として、重合後のアウターコア部136とインナーコア部137との主成分を共にPMMAまたは全重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)とした場合には、アウターコア部136とインナーコア部137との界面はほとんど確認できない状態となる場合が多い。
図14はプリフォーム131(図13参照)の断面円形の径方向における屈折率を示すグラフである。図14において、横軸はプリフォーム131の断面径方向を示し、縦軸は屈折率を示す。屈折率は、上の方ほど高い値であることを意味している。横軸の符号(A)で示される範囲は、図13におけるクラッド132に対応しており、符号(B)で示される範囲は図13のアウターコア部136に対応しており、また、符号(C)で示される範囲は図13のインナーコア部137に対応している。そして、符号(D)で示される範囲は、図13における空洞部138に対応する範囲であるので、値がないもの、つまりゼロとして示している。
インナーコア部137は、図14に示されるように、アウターコア部136との境界から空洞部138に向けて屈折率が連続的に高くなっている。クラッド132はアウターコア部136よりも屈折率が低く、アウターコア部136はインナーコア部137よりも屈折率が低い。そして、実施形態として例示するものにおいては、製造されたプリフォーム131のインナーコア部137の屈折率が、後述のような回転ゲル重合法を適用することにより、図14に示すように、断面円形の径の外側から空洞部138に向けて連続的に屈折率が高くなる。なお、断面円形の径方向において、屈折率の最大値と最小値との差が0.001以上0.3以下であることが好ましい。
次に、プリフォームの製造方法について図を参照しながら詳細に説明する。図15は重合容器の断面図であり、図16は、回転重合装置の概略斜視図であり、図17は重合装置による重合反応についての説明図である。ただし、図15〜図17に示す重合装置及び重合容器に依存するものではなく、さらに、これらの装置及び容器は、前述の界面ゲル重合法によりインナーコア部を生成するときのアウターコア部生成用として使用することができる。なお、本実施形態は、一様態としての例示である。
所定の材料からなる栓151によりクラッド132の片端部を塞ぐ。この栓はコア135を形成する重合性化合物に溶解しない素材からなり、可塑剤等を溶出させるような化合物も含まないものとする。このような素材としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やフッ素ゴム(例えば、バイトン(登録商標))等があげられる。片端部を栓151で塞いだあとに、モノマー等をはじめとするアウターコア部用原料136aをクラッド132の中に注入する。そして、他方の端部も栓151で塞いだ後、回転させながらアウターコア部用モノマー136aを重合させてアウターコア136(図2参照)を生成する。このアウターコア部136生成時においては、クラッド132は、図15に示されるような重合容器152の中に収容される。クラッド132を破壊したり傷つけたりすることなく良好に回転可能な場合には、この重合容器152は用いなくてもよい。重合容器152は、円管状の容器本体152aとこの容器本体152aの両端をそれぞれ塞ぐ蓋152bとを有し、SUS等のステンレスとされている。重合容器152は、図15に示すように、その内径がクラッド132の外径よりもわずかだけ大きいものであり、重合容器152の後に述べるような回転に同期してクラッド132が回転することができるようにされている。なお、クラッド132が重合容器152の回転に上記のように応じることができるように、重合容器152の内面等にクラッド132を支持する支持部材等を設けてもよい。
また、重合容器152には、クラッド132の内部圧力を制御するためにガスを供給したりガス抜きを行う管153が備えられていても良い。そして、重合容器152が回転中であっても圧力制御ができるように、この管153はロータリジョイント156により重合容器152に取り付けられて、その先端がクラッド132の一端の栓151の中央開口部に貫通されている。本実施形態においては、図15に示すように、クラッド132の内部に送り込むガスを窒素N等の不活性ガスとして、その配管にはバルブ157を設け、また、クラッド132の内部を減圧するための配管には圧力コントローラ158を設けている。また、管153には、クラッド132の中空部における圧力を測定するための圧力計161が備えられている。
アウターコア部成工程は、上記のような重合容器152が回転重合装置162にセットされて実施される。回転重合装置162は、図16に示すように、装置本体163の中に複数の回転部材166と、装置本体163の外側に駆動部167と、装置本体163内の温度を検知してその検知結果に応じて内部温度を制御するための温度コントローラ168とを有している。
回転部材166は、円柱形状であり、2本の周面で少なくともひとつの重合容器152を支持することができるように、長手方向が互いに概ね平行かつ略水平となっている。各回転部材166は、その一端が装置本体163の側面に回動自在に取り付けられており、駆動部167によりそれぞれ独立した条件で回転駆動される。駆動部167にはコントローラ(図示なし)が備えられており、このコントローラにより駆動部167の駆動が制御される。そして、所定の重合反応時においては、図17に示すように、隣り合う回転部材166の周面により形成される谷部に重合容器152は載せられて回転部材166の回転に応じて回転する。図17においては、回転部材166の回転軸を符号166aで示している。このように、ここに例示される本実施形態においては、重合容器152の回転はサーフェスドライブ式としているが、この回転方式については限定されるものではない。
なお、本実施形態では、図17に示すように、重合容器152の両端の蓋152bには磁石152cがそれぞれ備えられているとともに、隣り合う2本の回転部材166の間の下方にも磁石171が備えられている。これにより、回転時において重合容器152が回転部材166から浮くことを防止している。重合容器152の回転部材166からの浮きを防止する方法としては磁石を用いる上記方法に加えて、又は代えて、回転部材166と同様な回転手段を、セットされた重合容器152の上部に接するようにさらに設けて、同様に回転させ、これにより重合容器152の浮きを防止することもある。またこの方法の他に、例えば重合容器152に上方に押さえ手段等を設けて、重合容器152に所定の荷重をかける方法等もあるが、浮き防止方法に依存するものではない。
続いて、アウターコアの生成方法について説明する。アウターコア部用重合性化合物を始めとするアウターコア部用原料136aについては、それぞれ後で詳細に述べる。アウターコアは、クラッド132とインナーコアとの間に存在し、インナーコア部用重合性化合物の重合反応にも関与する。ただし、アウターコアは、インナーコアの生成条件によっては不要である場合もあるし、また、前述のようにインナーコアの生成過程においてインナーコアと一体化して消失する場合もある。使用する重合性化合物等のアウターコア部用原料136aはろ過や蒸留等により、重合禁止剤や水分、不純物等を予め十分除去してから用いることが好ましい。さらにモノマーや重合開始剤を混合した後で、この混合物を超音波処理により溶存気体や揮発成分を除去することが好ましい。なお、アウターコア部用原料136aの注入の前後では、必要に応じて、公知の減圧装置により、クラッド132や注入物を減圧処理してもよい。
その後クラッド132を装填した重合容器152を、その長手方向を略水平状態にして回転(水平回転)させながら重合を生起進行させるとアウターコアが生成する。このように、アウターコアは、クラッド132の円管軸を回転中心にしながら重合する回転重合により生成される。なお、回転重合の前には、クラッドを立てた状態で予備重合をしてもよく、この予備重合の際には必要に応じて所定の回転機構により、クラッドの円管軸を回転中心として回転させる。このような回転重合においては、クラッド132の長手方向を概ね水平に保ちながら回転させるために、クラッド132の内面全体にアウターコアが生成しやすくなる。なお、アウターコア部用原料136aの重合反応時においては、クラッド132の長手方向を水平とすることが、クラッド132の内面全体にアウターコアを形成する上で最も好ましいが、略水平であれば好適であり、回転軸の許容される角度は水平に対して概ね5°以内である。
アウターコア部用原料136aの重合反応は、加熱下で実施することが好ましい。その温度は、アウターコア部用原料136aのモノマーの種類等に応じて決定されるものであり、主にその重合速度と変質温度とを考慮して決定される。重合開始剤に熱重合開始剤を用いた場合には、設定温度はモノマーの沸点を越さない温度で行うことが好ましい。例えば、モノマーとして、沸点が105℃のメタクリル酸メチルをモノマーとして用いる場合には、重合温度は50℃〜100℃の範囲で設定される事が好ましい。なお、重合温度は界面ゲル重合の場合と同様に温度を重合開始時と終了時に変えることが好ましい。
また、反応時間についても、アウターコア部用原料136aのモノマーの種類や重合開始剤などに応じて決定されるが、その反応温度における重合開始剤の半減期時間の1〜100倍程度となる様に設定することが好ましい。
回転速度については、1000〜5000rpmとすることが好ましい。回転数が1000rpmよりも低いと重合の過程において発生する増粘したアウターコア部用原料136aが滞留して均一性が損なわれ、5000rpmよりも高いと安定して回転させることが困難となるため微細な振動によって内面に波打ちなどを生じさせるおそれがある。回転数は重合性組成物の粘度等の状態を勘案して変化させてもよく、特にインナーコア部の場合には重合が進むにつれてアウターコア部用原料136aが増粘しやすいので、開始時点から終了に近づくにつれ低下させることが好ましい。
なお、アウターコア部用原料136aは注入前に予め精製されていることが好ましい。また、重合による体積収縮を考慮にいれて注入量を決定することが好ましい。
アウターコア部を生成するための重合開始剤は、アウターコア部用原料136a中のモノマーに対して0.001〜0.1重量%とすることがより好ましい。また、アウターコア部を生成するための連鎖移動剤は、アウターコア部用原料136a中のモノマーに対して0.01〜0.1重量%程度とすることが好ましい。
アウターコア部を形成した場合には、加熱状態下で一定時間保つアニール工程を経ることが好ましい。アニール工程を経ることによって、残留するモノマーや副生成物を揮発させて抜き出すことができ、そのため、延伸時の発泡を防止することができる。また、アニール処理を実施することにより、回転させながらの重合によって発生したポリマーの配向を緩和することができるので配向複屈折を防止し、さらに不均一性が取り除かれるためにレイリー散乱も減らすことができる。アニール処理では、形成した管が変形しない程度に加熱すればよく、形成したポリマーのガラス転移点(Tg)に対して50〜100℃程度に設定することが好ましい。さらに、揮発しやすくなるように減圧してもよい。減圧も管が変形しない程度に減圧させればよく、50〜1kPa程度に設定することが好ましい。また、アニール処理時には製造時同様に支持管を用いてもよい。また、製造や移送時に外気中の水分や塵埃が付着することが考えられるため、乾燥雰囲気で保管し、次工程に進む際には内壁および外壁をアルコール等によって洗浄を行っておくことが好ましい。
次にインナーコア部を形成する。図18はインナーコア部用原料137aが注入されたクラッド132を収容した重合容器の概略断面図である。図18に示す重合容器は、図15に示すものと同一のものであるので、具備された部材とともに図15と同じ符号を付し、説明を略す。
図18に示すように、モノマーをはじめとするインナーコア部用原料137aをアウターコア部136の中空部中に注入する。その後、注入口に栓151をして塞ぎ、アウターコア部136が形成されたクラッド132の長手方向を略水平状態とし、クラッド132の断面円形の中心が回転軸となるように回転させながら反応を開始し重合を進めるとインナーコア部が生成する。
ここで、インナーコア部用原料137aの注入は、アウターコア部136のモノマーの重合反応による転化率が90%以上95%以下であるときになされることが好ましい。これにより、アウターコア部136の内壁にクラックが生じることを抑制することができる。発生したクラックが大きいあるいは深い場合には、プリフォームを延伸して得るプラスチック光ファイバ素線中に構造不整箇所が残り、伝送損失の低下の原因となることがある。
このクラック発生は、アウターコア部136の内壁付近にたまっていた歪みのエネルギーが緩和しないうちにインナーコア部用原料137aがアウターコア部136と接触することにより発生するものと考えられる。したがって、アウターコア部136が所定の硬さにまで硬くなる前に、つまりアウターコア部のモノマーの重合転化率が概ね95%に達する前に、インナーコア部用原料137aを注入した方がよいものとして実施する。また、アウターコア部137中のモノマーの重合転化率が90%未満であるときにインナーコア用原料137aを注入すると、アウターコア部136がインナーコア部用原料137aとの接触によりだれてきてしまうという問題がある。このように、インナーコア部用原料137aの注入のタイミングを、アウターコア部136の中のモノマーの重合転化率を基に制御することにより、コアの外径が長手方向に不均一になりにくく、かつ構造不整のないプラスチック光ファイバ素線を得ることができる確率を高めることができる。この方法は、後述の回転ゲル重合においてのみ適用されるものではなく、管状の外側部材の中空部中に内側部材用の原料を入れてこの原料を反応させる種々の公知のプリフォーム製造方法にも適用することができる。
このクラックの発生現象は、クラッド132にアウターコア部用原料136a(図15参照)を注入する場合にも確認されることがある。したがって、クラッド132を回転重合で作製する場合には、上記のアウターコア部136中にインナーコア部を生成する場合と同様に、クラッド132の転化率が90%以上95%以下であるときにアウターコア部用原料を注入することが好ましい。また、クラッド132が本実施形態のように溶融押出成型により作製されたときには、注入時におけるクラッド132やインナーコア部用原料137aの温度を制御する等して、クラッド132の内部の歪みのエネルギーを予め緩和する等の対策を講じることが効果的である。
このように、アウターコアの形成直後、具体的には、アウターコアが形成された状態を目視で確認された状態であってアウターコア用モノマーの重合転化率が100%に達する前の所定転化率に達した状態から連続してインナーコアを形成させた場合には、アウターコアとインナーコアとを別途作成する場合に比べて、プリフォームの製造効率を向上させることができる他に、アウターコア内面への異物等の吸着、ヒートショック、結晶化等に起因してアウターコアにまれに発生しうるクラックを防止することができるという効果が得られる。
インナーコア部用原料137aの注入は、一度に全量注入する一括注入式であっても、少量ずつに分けてそれらを逐次的に注入する逐次注入式であってもよい。一括注入すると屈折率分布の発現が困難である場合には、例えば、インナーコア部用原料137aの組成比率を変えて逐次注入式とするとよい。逐次注入式とする場合には、栓で封止した回転する空間にインナーコア部用原料137aを注入するための機構が必要であり、重合が始まる前にインナーコア部用原料137aがアウターコア136の内壁面に一様に拡散しながら反応が連続的に行われ、かつ、所望の屈折率分布が発現するように、注入のタイミングや注入量、重合条件を設定する必要がある。この逐次注入のための機構としては前述の容器内部の減圧用ロータリジョイントを用いた管と同様な機構を用いて行うことができる。なお、一括注入すると屈折率分布の発現が困難である場合としては、屈折率調整剤(ドーパント)とコア部を構成する重合体との親和性が高いために重合の進行に伴うドーパントの移動及び濃縮が行われにくい場合や、ドーパントが共重合成分となってインナーコアのポリマーマトリクスを形成するとともに、共重合成分間の反応性比が近いために生成する共重合体の組成比を制御することができない場合など等がある。
そして、インナーコア部用原料137aの注入の前後では、必要に応じて、公知の減圧装置により、アウターコア部136が形成されたクラッド132や注入物を減圧処理してもよい。
インナーコア部用原料137aの重合性化合物の重合は、アウターコア部生成工程で用いた回転重合装置162(図16参照)を用い、アウターコア部形成時と同様にクラッド132の長手方向が略水平で回転する状態となるように重合容器152を回転させて実施することが好ましい。なお、略水平とせずに立てた状態でもインナーコア部用原料137aの重合反応を実施してもよい。
インナーコア部用原料137aの重合性化合物が重合を開始すると、アウターコア部の内壁がインナーコア部用原料137aにより膨潤し、重合初期段階では膨潤層を形成する。この膨潤層は、ゲル状態となっており、そのため、重合速度が加速(ゲル効果と称する)する。このような現象から、本明細書中では、予め作製された管状部材を回転させながら、この管状部材と注入された重合性化合物との反応により膨潤層を形成して、この重合性化合物を重合する反応を回転ゲル重合法と称するものとする。この重合反応は、本実施形態のように、管状部材の長手方向が水平とされることがより好ましい。そして、重合は、アウターコアの内面から開始し、クラッド12の断面円形の中心に向かって進行する。このとき、膨潤層の内部へは、分子体積の小さい化合物ほど優先的に入り込むため、重合の進行と共に、共存する他の化合物と比べて分子体積の大きなドーパントが膨潤層から前記中心方向へと押し出される。この結果、形成されたインナーコアの中心部は、高屈折率のドーパントの濃度が高くなり、図14に示したように、断面円形の径方向における中心に向かって屈折率が徐々に高くなったプリフォームを得ることができる。また、この膨潤層の形成により、アウターコア部136の内面に存在する微細な凹凸を積極的になくすことができる。このようにアウターコア部136の内面の平滑性を向上させることにより、断面の真円度がより優れたインナーコア部を形成することができる。
なお、上記膨潤層形成は、本実施形態においては、クラッドとアウターコア部との界面及びその周辺でも確認されていることがある。したがって、例えばPVDFのクラッドとMMAのコアとを有するプリフォームを製造するときには、アウターとインナーとの両コアを段階的に生成させるような上記実施形態の製造方法でなくともよく、例えば、クラッドの中に屈折率調整剤を混合させたコア用原料を一度に全量注入して水平回転させながら重合し、一度にコアを生成する方法も含まれる。
また、アウターコアの中空部でインナーコア用モノマーが重合しない状態としたまま、回転または水平回転させても良い。これにより、アウターコアの内壁が膨潤して、インナーコア用モノマーに溶解する。その結果、アウターコアの内面に存在する微細な凹凸部が積極的に削られ、この内面の平滑性が向上し、より良いインナーコア領域を形成させることができることがある。
なお、インナーコア部の形成時においては、クラッドの長手方向が水平とすることが、アウターコア部の内面全体にインナーコア部を形成する上で最も好ましいが、略水平であれば好適であり、回転軸の許容される角度は水平に対して概ね5°以内である。
本実施形態における重合性化合物のそれぞれの転化率については、ガスクロマトグラフィによる残留モノマーの定量分析と目視評価とを実施して両者の関係を予め求めておき、この関係をもとに目視観察にて評価した。しかし、転化率の求め方は、周知の各種方法を用いることができる。
本発明者は、反応速度を転化率の経時変化で検討した結果、好ましい反応速度は、1時間あたりの転化率が5〜90%となる様に調整することが好ましく、より好ましくは10〜85%であり、さらに好ましくは20〜80%である。この範囲で重合が進行するように重合開始剤を選定したり重合温度を設定したりすることが好ましい。転化率が90%となるための反応時間が概ね1時間に満たないほどに反応速度が速すぎると、径方向における良好な屈折率の分布が得られない。これは、例えば屈折率分布型とならず、屈折率が径方向において段階的に変化してしまったり、あるいは、中央部が極端に高い屈折率となったり、反応速度が速すぎて気泡が生じたりすることを意味する。また、反応時間1時間における転化率が100%であっても、この1時間以内における転化率が、時間に対して比例する値よりも大きい値をとるような反応系では、良好な屈折率の分布を生じ得ない。以上のように、1時間あたりの転化率が5〜90%となるように調整された反応速度とすることが好ましい。
一方、反応時間が、例えば1時間での転化率が5%に満たないほどに遅すぎても、径方向における良好な屈折率の分布が得られない。この場合には、前述とは逆に、例えば、径方向において最も低い屈折率と最も高い屈折率との差が所定の値よりも小さくなったり、グラフにしたときの曲線形状が歪んだ屈折率分布となったりしてしまう。
そして、設定された重合温度における重合開始剤の半減期の1〜3倍の時間、つまり前記半減期をTとするときに、T以上3T以内の時間で転化率が99%以上100%以下となるように制御することが好ましい。そして、重合開始から概ね2時間経過したときに加熱処理をして転化率が99%以上100%以下とするとよい。反応速度がこれよりも大きすぎる場合も小さすぎる場合も、重合開始剤の利用効率や反応制御の観点で不適である。このような転化率と反応時間との好適な関係の反応進行範囲を、以降の説明において好適反応進行範囲と称するものとする。そして、この好適反応進行範囲を満足するために、上記のように回転ゲル重合法を実施して、かつ、インナーコア用モノマーの種類に応じて、重合開始剤と連鎖移動剤とを後述するようなものとしている。
本実施形態ではインナーコア部用原料137aの重合反応とともに、アウターコア部とインナーコア部用原料137a中のモノマーとを反応させており、これらの反応はいずれも塊状重合反応とみなされる。なお、上記に示した実施形態では、クラッドとアウターコアとの反応及びアウターコアの重合も塊状重合反応とみなされる。
回転ゲル重合法における重合は、加熱下で実施することが好ましい。その温度は、インナーコア部用原料137aのモノマーの種類等に応じて決定されるものであり、主にその重合速度と変質温度とを考慮して決定される。重合開始剤に熱重合開始剤を用いた場合には、設定温度はモノマーの沸点を越さない温度で行うことがこのましい。例えば、モノマーとして、典型的な(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを用い、これをインナーコア部用原料137aの主成分とした場合には、その温度は50℃〜150℃とすることが好ましく、80℃〜140℃とすることがさらに好ましい。さらに具体的には、沸点が105℃のメタクリル酸メチルをモノマーとして用いる場合には、重合温度は50℃〜100℃の範囲で設定される事が好ましい。なお、重合温度は界面ゲル重合の場合と同様に温度を重合開始時と終了時に変えることが好ましい。
また、反応時間についても、インナーコア用原料137aのモノマーの種類や重合開始剤などに応じて決定されるが、その反応温度における重合開始剤の半減期時間の1〜100倍程度となる様に設定することが好ましく、生産効率等から考えても実質的には4時間〜48時間であることが好ましい。
回転速度については、1000〜5000rpmとすることが好ましい。回転数の重合への影響はアウターコア部生成時における回転数の場合と同じであるので説明を略す。回転数は重合性組成物の粘度等の状態を勘案して変化させてもよく、特にインナーコア部の場合には重合が進むにつれてインナーコア用原料137aが増粘しやすいので、開始時点から終了に近づくにつれ低下させることが好ましい。
インナーコア部を生成するための重合開始剤は、インナーコア部用原料137a中のモノマーに対して0.001〜0.1重量%とすることがより好ましい。また、インナーコア部を生成するための連鎖移動剤は、インナーコア部用原料137a中のモノマーに対して0.01〜0.1重量%程度とすることが好ましい。
上記のような界面ゲル重合法、回転ゲル重合法のいずれの方法により製造されたプリフォームであっても、重合反応の終了後もしばらく加熱下の状態にしておくことが好ましい。これにより、重合時に発生した密度のゆらぎ、残留揮発分、水分及び残留モノマー等を取り除くことができる。この加熱処理における温度は、プリフォームを構成している重合体のガラス転移点に対して5〜50℃の範囲であると好ましい。なお、プリフォームのコアにおいて、組成の違いにより複数のガラス転移点が存在する場合には、その中で最も低いガラス転移点をそのプリフォームのガラス転移点とみなすとよい。
なお、この加熱処理の終了時において、圧力の制御下において一定の冷却速度で冷却するような冷却処理をすることによって、重合後に発生する気泡を抑制することができる。しかし、基本的にプリフォーム中から気体を完全に抜くことは不可能であり、前記冷却処理などで重合体が急激に収縮すると空隙に気体が凝集し気泡核が形成されて気泡の発生を招いてしまう。これを防ぐには冷却処理における冷却速度を0.001〜3℃/分程度にすることが好ましく、0.01〜1℃/分程度にすることがより好ましい。温度降下してポリマーのTg、特にコア領域のTgに近づくに伴い、ポリマーが体積収縮するが、この体積収縮の進行に応じて、冷却処理の工程は2段以上のステップとしてもよい。なお、回転させながら重合してプリフォームを作成した場合には、回転させながら徐冷を行うことによりプリフォームの変形を抑えることができる。この場合の回転速度は500〜2000rpm程度でよい。
以上の工程で得られるプリフォームが後述の延伸工程によってプラスチック光ファイバ素線に加工される。なお、このプリフォームを長手方向に対して垂直になる様にスライスすると平板上のレンズ(GRINレンズと称されることがある)として用いることができる。延伸工程では、プリフォームをたとえば図19に示す様な加熱炉等の内部を通過させることによって加熱溶融させた後、引取りをして延伸紡糸する。
(延伸装置)
図19に示されているようにプラスチック光ファイバ素線186は線径測定装置197で線径が測定され、駆動装置が接続している引取ローラ対198を経由して巻き取られる。線径が所定の値となるように、アーム192の下降速度、加熱炉194での加熱温度、プラスチック光ファイバ素線(素線)186の引取ローラ対198での速度などを調整する。特に、屈折率分布型プラスチック光ファイバ素線においては、その断面の中心方向から円周に向け屈折率が変化する構造を有するため、この分布を変化させないように、均一に加熱且つ延伸紡糸する必要がある。延伸工程の詳細を以下に述べる。
(1)把持部材
延伸は線形とその真円度を維持させるため、中心位置を一定に保つ調芯機構を有する延伸紡糸装置を用いて行うのが好ましい。延伸条件を選択することによりプラスチック光ファイバ素線(素線)を構成する重合体の配向を制御することができ、線引きで得られる素線の曲げ性能等の機械特性や熱収縮などを制御することもできる。
図19にプラスチック光ファイバ素線(素線)186を製造するための製造設備190を示す。プリフォーム137はXY調芯装置191を介してプリフォーム上下用アーム(以下、アームと称する)192に懸架されている。調芯装置に取り付ける際はプリフォームの軸が鉛直方向になっているかを確認する。アーム192は、プリフォーム上下用スクリュー(以下、スクリューと称する)193の回転によって鉛直方向に上下に動く。プリフォーム187を延伸する際は、スクリュー193を一定速度で回転させて、アーム192をゆっくり(例えば1mm/minから20mm/min)下降させる。これによりプリフォーム187の先端が中空円筒状の加熱炉194内に挿入される。
また、前述の回転重合法によって得られたプリフォーム235は中空部236を有している。そこで、この中空のプリフォーム235を延伸する場合は、図20に示す製造設備240が用いられる。アダプタ241には密閉性の良い素材を介してプリフォーム235の一端が密着もしくは嵌合するように取り付けられる。さらにアダプタ241には、減圧ライン250が取り付けられて、プリフォーム235の中空部を真空(減圧)できるようになっている。減圧ライン250には、圧力計251,バッファータンク252,真空装置253が備えられている。バッファータンク252は、減圧ライン250内の圧力変動を抑制するために備えられており、圧力調整弁254を備えている。真空装置253には、真空ポンプや減圧ブロアーなどが用いられる。また、アダプタ241は、減圧ライン250と中空部236とを気密に接続するようにシーリングする。また、アダプタ241はスクリュー193と接続しているアーム192に調芯機構を経由して取り付けられている(図19参照)。さらに、プリフォーム235の一部は、加熱室195内の加熱炉194内に挿入されている。加熱炉194にはガス循環機255が取り付けられていることが好ましい。ガス循環機255により不活性ガス(例えば、窒素ガスなど)を加熱炉194内に供給する。
具体的にはプリフォーム外径に対して0.3mm程度大きな内径を有する円筒管を用意し、プリフォームを把持した際にぐらつきが発生しない程度に差込み、差込み部分はシールテープ等の部材を用いて円筒管との空隙を埋めておく。中空部166の減圧度は、(大気圧−10kPa)以上(大気圧−0.4kPa)以下の範囲とすることが好ましい。(大気圧−10kPa)より減圧度を高めると、中空部236がその周面を収縮し過ぎてしまいプリフォーム235の形状が変形したり、中空部236のつぶれる位置が一定にならずにプラスチック光ファイバ素線237の外径が不均一になったり、吸引部に近い側で中空部が閉じて中空部が残ったりするおそれがある。また、(大気圧−0.4kPa)よりも減圧度が低いと、中空部236を減圧にすることで中空管を加熱溶融延伸する際に生じる気泡の発生を抑制する効果が減じるかまたは全く生じないおそれがあり、つぶれ残りが生じるおそれがある。中心部に残るつぶれ残りは散乱体として作用して伝送性能を低下させる他、線径変動や機械強度の劣化の原因となってしまう。
また、減圧の変動量は、所定の圧力P(Pa)に対して0.001×P(Pa)以上0.05×P(Pa)以下の範囲に抑制することが好ましい。または、変動量を0.5kPa以内とすることが好ましい。バッファータンク252の容量調節などから減圧の変動量を前記範囲とすることにより、中空部236のつぶれ位置が一定化しつぶれ残りが発生しない。これにより線径が均一なプラスチック光ファイバ素線237を得ることができる。そして、素線237は巻取機256によりロール状に巻き取られる。
減圧把持を行う治具を用いて空隙部を除去しながら延伸する方法としては、特開平11−344623号公報や特願2004−071521号明細書のようなパイプの入れ子状体の延伸成形法を応用することができる。この方法では、前述の押し出し法によるパイプ製造法などを利用して、入れ子状に挿入可能な多数のパイプを準備して、入れ子状に配置したパイプをプリフォームとして、空隙部を除去しながら延伸を行う。入れ子状のパイプがそれぞれ層状に配置されるため、それぞれのパイプの有する屈折率を変化させることで屈折率分布型プラスチック光ファイバ素線が作成できる。パイプの組成が熱に安定な共重合性組成などからなっている場合などでは単純なマルチステップ型となるが、屈折率調整剤が熱拡散をする化合物を選定すると延伸時の熱により、屈折率調整剤は熱拡散をするため界面の屈折率差が緩和され層間界面に起因する伝送損失が抑えることができる。このとき、多層で構成することで層間の屈折率差を狭めると、屈折率の緩和の効果はより改善される。屈折率プロファイルを高次多項式として想定した場合に、層中心での変極点の接線とその層の界面での屈折率緩和に起因する変極点の接線の傾きが近付くように拡散するようにパイプの素材や厚みなどを構成すれば、略連続変化する屈折率分布型プラスチック光ファイバ素線を得ることもできる。
また、この入れ子状の延伸方法を利用して前述のプリフォーム製造法で述べた第1または第2の製造方法を適用したり、線径調整や保護を目的とした外層となるパイプにプリフォームを挿入し、空隙部を消去するように延伸しながら嵌合したりすることもできる。この方法では、導光部となる素線のプリフォームの製造と外周部となるクラッド層や被覆層の付与を別途行うことができるため、厚いクラッド部や多層のクラッド部、さらには被覆層の付与が可能となる。
(2)加熱炉
一例として図21に製造設備290を示す。アダプタ191,アーム192,スクリュー193については図19と同一符号を付し、説明を省略する。プリフォーム285は自在円筒チューブ270内に収められ、その一部が加熱炉291内に挿入されている。加熱炉291は加熱室271に設けられ、ガス循環機292が取り付けられていることが好ましい。加熱炉291で延伸されたプリフォーム285は、プラスチック光ファイバ素線286となり線径測定装置272でその外径がモニタリングされながら、巻取機273でロール状に巻き取られる。
一例として図22に加熱炉291の概略図を示す。プリフォームの加熱には、プリフォームを断面方向において均一に加熱可能である円筒形状の加熱炉等を用いることが好ましい。特に屈折率分布型プラスチック光ファイバ素線の場合屈折率分布の形状を保つために均一であることが必要である。また、加熱炉は延伸軸方向に温度分布を持つことが好ましく、溶融部分が狭いほど屈折率分布の形状が歪みにくく収率があがるため好ましい。特開平8−106015号公報に記載されているように、溶融延伸の際に予備加熱工程を実施する方法などを採用することもできる。
具体的には溶融部分の領域が狭くなるように溶融領域の前ではプリフォームが溶融変形しない程度に予熱を行って溶融部分の加熱によって始めて溶融が可能となるようにしておく。予熱をしないと溶融部分で急激に昇温をすることになるため溶融箇所の分布が不安定となりやすく、径ブレや非円率の悪化、屈折率分布プロファイルの歪みにつながる。また延伸後は溶融部分より低い温度に設定したユニットを設置したり、溶融部位の温度と炉外の温度の間の温度に設定した温風を当てたりするなどして外気によって急激な冷却が起きない様に徐冷を行うことが好ましい。
加熱炉291は、上記の理由により複数の(図22においては5個の)円筒状のヒータ295,296,297,298,299が積み重ねられて構成されている。しかし、ヒータ数は、図示された5ユニットに限定されるものではなく、制御と効率のバランスの観点から、2ユニット〜10ユニットから構成されていることが好ましく、より好ましくは3ユニット〜8ユニットである。ヒータユニットは鋳込みヒータのように熱放出面が広く、放熱分布がムラになりにくいものを用いると良い。これらを複数個重ねる事で延伸軸方向に温度分布を設けることが可能となる。
また、別の態様として、予熱部分はヒータユニットで構成しておき、溶融領域に用いる熱源としてはレーザーのような狭い領域に対して高出力のエネルギーを供給できるものを用いても良い。特に炭酸ガスレーザーは高出力であり、有機素材は近赤外域に吸収を有するためエネルギー利用能率が高く、好ましく用いることができる。また、レーザーの場合は徐冷のヒータユニットを組むことが難しいので、温風を当てて徐冷を行うことが好ましい。
円筒状ヒータの内壁はプリフォームから5mm〜40mm、好ましくは10mm〜30mm離れていることが好ましい。近付き過ぎると細かな振動でプリフォームがヒータに接触する恐れがあり、離れすぎると炉内に空気の対流が起こる空間が発生し、熱分布の制御が困難となる。
各ヒータの温度制御を効率良く精密に行うため、ヒータごとにほぼ独立した区画を設けることが好ましい。この区画を設けるためには、オリフィス300をヒータ295の上面に設け、オリフィス301〜304は、各ヒータ間に設ける。さらに、オリフィス305をヒータ299の下面に設ける。これにより各ヒータ295〜299内は、独立して温度制御可能な区画が形成される。これにより隣接するヒータからの対流による熱の伝播が抑えられる。ここで各ヒータ295〜299内には温度計306〜310が備えられていることが好ましい。温度計306〜310により各区画内の温度を測定し、その結果に基づき各ヒータ295〜299の出力が調整される。各ヒータ295〜299の温度制御可能な区画の温度変動は、0.5℃以内とすることが好ましい。これにより、線径が安定し、特に中空型のプリフォームの場合は中空部236(図20参照)のつぶれ位置が略一定となり、つぶれ残りが生じることが抑制される。
オリフィス300の上面には、更に封止材320が備えられていることが好ましい。封止材320は、プリフォーム285と接した方が封止効果が向上する。そこでプリフォーム285の表面に傷を付けない柔らかさ及び耐熱性が必要である。例えば、シリコンラバー材を始めとするゴム材料シートやカーボンフェルト材などが好ましいが、プリフォーム285の表面に傷を付けなければ例えば耐熱性に優れるガラスやセラミックスなども使用できる。溶融して中空部がつぶれたプリフォーム先端部から紡糸される延伸条件は中空を有しない紡糸条件を適用することもできる。例えば、延伸時の張力は、特開平7−234322号公報や特開平7−234324号公報に記載されているような張力の範囲で制御しても良い。また、途中に線径を制御する機構を設けて線径ブレを抑制することを行うことも好ましい。
図23に示すように封止材320には、プリフォーム285をヒータ295に送り込むために所定の直径D23(mm)の開口321が形成されている。
封止材320は、プリフォーム285と接した方が封止効果が高い。そこで、プリフォーム表面に傷を付けず、調芯機構を阻害しない柔らかさ及び耐熱性が必要である。例えば、シリコンラバー材を始めとするゴム材料シートやカーボンフェルト材などが好ましいが、傷を付けなければ例えば耐熱性に優れるガラスやセラミックスなども使用できる。
さらに、封止材320は、プリフォーム285との封止効果を高めるために、その外径D23(mm)がプリフォーム外径D21(mm)より小さく開口321を形成することが好ましい。開口321の縁321aから半径方向に数本の切断線321bを形成する。切断線321bの端が略円周(以下、外縁円周と称する)321c上となる長さで、中心から半径方向に略均等に形成する。この外縁円周321cの直径をD24(mm)とする。開口縁321aから外縁円周321cまでの領域を密着領域321dと称する。これにより封止材320にプリフォーム285を通すと、密着領域321dがプリフォーム285の外周面を覆うようになるため、封止の効果をより得ることができる。加熱炉291の上流側が封止されることにより、下流側からの大気が流入することが抑制されて、加熱炉291内の温度分布が乱れることが抑制される。
もしくは封止材320の代わりにプリフォーム285全体は図21で示されているようにフレキシブル円筒270でカバーされていることが好ましい。フレキシブル円筒270は、外部からの塵埃の侵入、付着防止及び空気の流れから遮蔽して、加熱される前のプリフォーム285近傍の雰囲気を一定に保つ。また、加熱炉291中の雰囲気気体の加熱による上昇気流の発生をフレキシブル円筒270の上部を袋小路にすることによって抑制するなどの効果がある。加熱炉291は、加熱室271内に収納されている。製造設備290外の雰囲気の影響を受けなくなり、延伸雰囲気が安定する。
開口外径D23(mm)は、プリフォーム285の直径D21(mm)との関係が0.75×D21(mm)≦D23(mm)≦1.0×D21(mm)の範囲であることが好ましく、より好ましくは、0.80×D21(mm)≦D23(mm)≦0.90×D21(mm)の範囲である。また、外縁円周直径D24(mm)は、プリフォーム直径D21(mm)との関係が、1.0×D21(mm)<D24(mm)≦1.5×D21(mm)の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.1×D21(mm)≦D24(mm)≦1.3×D21(mm)の範囲である。
開口321の直径D23(mm)は必ずしもプリフォーム285の直径D21(mm)より小さくする必要はない。例えば、1.0×D21(mm)<D23(mm)≦1.2×D21(mm)の開口321を形成することで加熱炉291の上流側における封止の効果を得ることができる。この場合には、封止材320とプリフォーム285とが接触しないため、封止材320の素材の選択が広がる利点がある。特に上流側のヒータ295は温度が高いため(例えば、150℃〜290℃)、耐熱性に優れるセラミックス系素材を用いることができる利点を有する。
図24に加熱炉330の下流側に封止材331を取り付けた実施形態を示す。なお、ガス循環機の図示は省略している。封止材331は、オリフィス305の下面に取り付けられている。また、図25に示すように封止材331は、プラスチック光ファイバ素線(素線)286が通過するための開口332が形成されている。プリフォーム285を線引きして所望の外径の素線286となった後に開口332に素線286を通過させてオリフィス300の下面に取り付ける。これにより、加熱炉330の下流側から大気が加熱炉330内に入り、温度の乱れが生じることが抑制される。封止材331の素材は特に限定されるものではない。しかしながら、加工容易性やコストの点からステンレスやアルミニウムからなる金属板や、使用温度においても変形などを起こさない耐熱性を有するゴムやプラスチックからなる板などを用いることができ、特に好ましくは耐熱性プラスチック板を用いることである。また、加熱炉330の下流側ヒータ229の温度は、上流側ヒータ295よりも低温(例えば、30℃〜80℃)であるため、使用可能温度は比較的低いが、成型加工が容易なプラスチックが好ましく用いられる。
開口332の直径D26(mm)は、素線286の外径D25(mm)に対して1.2×D25(mm)≦D26(mm)≦10×D25(mm)の範囲が好ましく、1.5×D25(mm)≦D26(mm)≦5×D25(mm)の範囲であることがより好ましい。具体的には、素線286の外径D25(mm)が1mmであれば、開口直径D26(mm)は、2mm〜3mmとすることが好ましい。開口直径D26(mm)が1.2×D25(mm)より狭いと、素線286の搬送路が変化したときに容易に封止材331と接触してしまう。それにより、素線286の外周面が損傷して光学特性に影響を及ぼす。また、開口直径D26(mm)が、10×D25(mm)より広いと大気の流入を防止するという効果が減じるか、又は全く生じないおそれもある。
封止材331に開口332を形成する形態に代えて、開口直径D24(mm)が可変なシャッタ状の封止材を取り付けても良い。これにより、溶融延伸加熱する際の素線286の直径D25(mm)を変える際にも、加熱炉330の調整時間を短縮することができる。また、封止材として開閉可能な2枚羽根から形成されているものを用いることもできる。また、封止材の一部が分離可能となっており、線引き開始時には分離した状態とし、素線286の外径が所望のものとなった後に分離部を固定するものを用いることができる。これら封止材を用いると、プリフォーム285の加熱溶融延伸を開始して素線286が所望の外径となった後に封止材をセットする作業が容易となる点で有利である。
図26に示す加熱炉340には、上流側及び下流側のいずれにも封止材320,331を取り付けている。これら封止材320,331の形態は図22ないし図25に示されているものと同一である。なお、ガス循環機の図示は省略している。これにより、下流側からの大気の流入を防ぐと共に上流側からの大気の出入りが極めて抑制される。そのため、加熱炉340内の大気の流れが極めて抑制され温度の乱れが極めて生じ難くなる。そこで、各ヒータ295〜299での温度制御に従ってプリフォーム285,素線286は、所望の温度分布となり加熱溶融延伸の条件変動を抑制することができる。
図27に示す加熱炉350には、オリフィス300上にスペーサ355が備えられている。なお、ガス循環機の図示は省略している。最上流側、つまりプリフォーム285の予熱から溶融までのヒータ295は、高温(例えば、150℃〜290℃)になっている。一方、封止材356は、図22及び23でも説明したように封止の効果を向上させるため、プリフォーム285の外周面を覆う形状となっている。そのため、通常プラスチックであるプリフォーム285と接触させてもその表面に傷などの損傷を与えない素材は、ある程度の耐熱性を有するポリイミド樹脂やPETなどからなるプラスチックフィルム(より好ましくはエンジニアリングプラスチックフィルム)や、エラストマー(例えば、シリコーン系ゴム,ウレタン系エラストマー,発泡樹脂など)など柔らかいものが用いられる。これらは、一般的に耐熱性に劣るため加熱されたオリフィス300上に直接取り付けると、熱劣化を起こす場合がある。そこで、オリフィス300上にスペーサ355を設け、その上面に封止材356(図22及び23の封止材320参照)を設けることが好ましい。なお、スペーサ355の材質は、特に限定されるものではないが、断熱性に優れるセラミックス(例えば、ロックウール,ヘミサルなど)、ガラスクロスなどを用いることが好ましい。
図28に示す加熱炉360には、図27で説明されているものと同一形態のスペーサ361と封止材362とが設けられている。さらにオリフィス305の下方に中空管363が取り付けられており、その出口には図24及び25で示されているものと同一形態の封止材364が取り付けられている。これにより、中空管363内は、大気の流れが抑制されている。そのため加熱溶融延伸直後で、未だ柔らかい素線286表面のスジなどの形状変化がおきることが抑制される。なお、中空管363の長さL21(mm)は特に限定されるものではないが、100mm≦L21(mm)≦1000mmであることが好ましい。また、中空管363の内径は、10mm以上50mm以下の範囲とすることが好ましい。
加熱炉194,291,330,340,350,360内の温度は、180℃〜280℃の範囲とすることが好ましい。プリフォーム285は、加熱炉194,291,330,340,350,360内でその先端から少しずつ溶融される。溶融された部分は溶けて円錐状となり円錐状部の先端の溶融部を引き取ることで繊維状に加工される。この時、先端部に耐熱テープを用いて重りをつけておくことで溶け落ちが早くなり好ましいが、過剰に重いものを取り付けると溶融部分が破断してしまうか、線径が安定するまでの時間がかかってしまう。例えば、PMMAを主体とするプリフォームを溶融延伸する際の先端部の重りは30g〜60g程度にすることが好ましい。
図19に示されている製造設備190では、線引きされたプラスチック光ファイバ素線(素線)186は、線引張力測定装置196で線引きした際の張力が測定される。そして、外径測定装置197で素線186の線径が測定される。素線186は、引取ローラ対(線引ローラ対とも称される)198で所望の線引速度(例えば、2m/min〜50m/min)で線引きされる。引取ローラ対198は、駆動ローラ199と加圧ローラ200とが素線186を挟んで対向して配置されている。駆動ローラ199にはモータ201が接続している。モータ201の回転速度を調整することで駆動ローラ199の回転速度が調整される。これにより引取ローラ対198による素線186の引取速度を調整することが可能となる。素線186の線径が所定の値になるように、アーム192の下降速度、加熱炉194での加熱温度、引取ローラ対198による素線186の引取り速度などを制御する。
図21に示されている製造設備290では、プラスチック光ファイバ素線(素線)286は、線径測定装置(外径測定装置)272で線径が測定される。線径が所定の値になるように、アーム192の下降速度、加熱炉291での加熱温度、素線286の引取り速度などを制御する。その制御は、線径ムラが生じることによる損失を減少させるため応答性が良い制御系を選ぶことが好ましい。また、巻取機273の巻取速度を変化させることで制御しても良い。なお、製造設備によっては他の箇所を調整することで線径変動を抑制する制御を行っても良い。例えば、プリフォームの加熱をレーザー加熱などのレスポンスが良い方法で行う際には、加熱熱量を制御しても良い。最後に、素線286を巻取機273で巻き取る。なお、図20に示されている製造設備240においても同様の条件で素線286の線引き(延伸)を行う。
加熱炉291は、装置内を不活性雰囲気とするために不活性ガスを供給する供給装置が取り付けられた加熱装置内に備えられているか、もしくは連結されオリフィスで区分された各ヒータ内で個別に不活性ガスで置換できるようになっていることが好ましい。ガス循環機292は図22に示されているように加熱炉291に1基取り付けても良いし、各ヒータ295〜299にそれぞれ独立して取り付けても良い。さらに、数台のヒータに1基のガス導入機を取り付けても良い。なお、不活性ガスは特に限定されるものではないが、窒素ガス(熱伝導率0.0242W/(m・K))及び希ガスであるヘリウムガス(熱伝導率0.1415W/(m・K)),アルゴンガス(熱伝導率0.0015W/(m・K)),ネオンガスなどが好ましく用いられる。コストの点からは窒素ガスを用いることが好ましく、熱伝導効率の点からは、ヘリウムガスを用いることが好ましい。また、数種類のガスを混合させた混合ガス(例えば、ヘリウムガスとアルゴンガスとの混合ガス)を用いることは、所望の熱伝導率のガスを得る目的やコスト低減を図ることもできるために好ましい。不活性ガスは加熱炉291内を不活性な状態に保ち熱伝導を調整するために用いるので、循環利用しても良い。それによりガスの媒体コストを低減することができる。なお、図20に示されているガス循環機255も同一の形態のものを用いることができる。さらに、図19に示されている製造設備にガス循環機を取り付けても良い。
不活性ガスの好ましい供給量は、加熱条件やガスの種類によって異なるが、例えばヘリウムガスを用いる場合には、1L/min〜10L/min(温度が室温のときの換算値)とすることが好ましい。
(3)巻取り
線引時の張力は、プリフォームの材質や径に対して、溶融温度、線引速度を設定することによって調節することができる。特開平7−234322号公報に記載されているように、素線286を配向させるために0.098N(10g)以上とすることが好ましい。また、特開平7−234324号公報に記載されているように、溶融延伸後に素線に歪みを残さないようにするために0.98N(100g)以下とすることが記載されている。これら線引き時の張力は得られる素線の直径や素線を構成する材質により異なるため前記条件に限定されるものではないが、線径を考慮した張力としては1.5MPa〜7MPaの範囲で線引きが行われる事が好ましい。これよりも張力が低いとポリマーの配向がなされないため脆性の強い素線となってしまう。一方、張力が高すぎると強い配向の緩和を起因とする収縮がおき巻取り時の巻き締まりや使用時の収縮等が起こってしまう。以上の方法によって得られる素線の破断伸びや硬度については、特開平7−244220号公報に記載の様に規定することで素線の曲げや側圧特性を改善することができる。
また、曲げなどの延伸方向以外の機械物性を制御する方法として配向方向を延伸方向以外にすることも考えられる。その方法としては、調芯装置に回転機構を取り付けて、プリフォームを回転させることによって、配向方向がらせん状とすることができる。らせんのピッチは引取り速度とプリフォームの回転速度の調整で任意に行う事ができる。
線引時の張力をプリフォームの材質や径に対して、溶融温度、線引速度を設定することによって調節することができる。例えば、図19に示されている引取ローラ対198によりプリフォーム187の線引張力の調整が行われる。張力を溶融温度、線引速度のどちらか一方のみで制御すると線径変動が起きてしまうため、両者を連動させて制御する事が好ましい。線引張力は、プリフォーム187の外径が10mm以上100mm以下のものを用い、線引き後の素線186の外径を200μm以上1000μm以下とする場合において、線引張力は1.5MPa以上7MPa以下とすることが好ましく、2MPa以上6MPa以下がより好ましく、さらに好ましくは2MPa以上5MPa以下とすることである。なお、素線186の外径は、使用形態における光学的性能や機械的性能を考慮して任意なものとすることができる。しかしながら、200μm以上1000μm以下とすることが好ましい。
図19に示されるように素線186は、張力を調整するダンサローラ202に巻き掛けられて搬送される。ダンサローラ202には、駆動装置203が取り付けられている。駆動装置203によりダンサローラ202の位置を変化させることで素線186の巻取張力が調整される。その後に素線186は、ローラ204で巻取張力測定装置205に搬送される。巻取張力測定装置205で素線186に付与されている張力(巻取張力)が測定される。その後さらにローラ206で搬送された後に、回転装置(図示しない)により回転するボビン207にロール状に巻き取られる。以下、ロール状に巻き取られた素線を素線ロール208と称する。また、延伸炉内と同様に、塵埃の巻き込みなどが起こらない様に延伸から巻取り工程の間は防塵状態の清澄な雰囲気で行われる事が好ましく、走行路上でロールやプーリーといった搬送部材との接触により静電気を帯電する事が考えられる場合は、イオナイザー等を用いて静電気を除去する手段を用意しておくことが好ましい。
巻取張力測定装置205で測定される巻取張力の測定値に基づき、巻取張力を所望の値に調整する。巻取張力の調整は、ダンサローラ202の位置の移動やボビン207の回転速度の調整などにより行われる。プリフォーム187の外径と素線186の外径とを前記範囲とした場合に、巻取張力は、0.5MPa以上5MPa以下とすることが好ましく、より好ましくは0.7MPa以上3.5MPa以下の範囲とすることである。
図29にボビン207に素線186を巻き取る一態様を示し説明する。ボビン207にはその胴径D33が250mm以上600mm以下のものを用いることが好ましい。胴径D33の真円度は、最小二乗法で5mm以下のものを用いることが好ましい。胴径D33が200mm未満であると、素線186にかかる曲げ張力が大きくなり、マイクロベンディングが生じて伝送損失の悪化の原因となる。また、胴径D33が600mmを超えると、保存に不便が生じて実用的でない。さらに、ボビン胴体207aに軟質素材からなるクッション材210を巻くことが好ましい。ボビン胴体207aは、機械的強度を保つために通常金属や硬質プラスチックのような硬い素材から形成されている。これら素材に直接素線186が接触すると、素線186に変形が生じてマイクロベンディング発生の原因となるため、クッション材210によってその変形及び巻きしまり時の応力緩和がなされる。クッション材210は、デュロメータE硬さ(JIS K6253)で10以上70以下であることが好ましい。そのような軟質素材としては、軟質樹脂フォーム,軟質エラストマー,シリコーンゲルなどが好ましく用いられる。また、厚みは2mm以上8mm以下であることが好ましい。
また、上記のボビン207を作成する際に、強度を損なわない程度で芯材を厚紙や発泡材のような軽量素材で構成させることもできる。この場合、光ファイバ素線と接触する面は上記のクッション材を貼り付ける事によって保護ざれているため、磨耗や発塵の恐れもないため、ボビンの重量を軽量化させることができ好ましい。
素線186は、ガイド(図示しない)によりボビン207のつば側面207bに接触しないように巻くと側面に接触している部分に側圧がかからないために好ましい。また、重ね巻きした際に巻き崩れが生じないように、その断面が略台形になるように巻くことが好ましい。さらに、巻き崩れが生じないように、素線186の横断面の中心が略鉛直方向に整列するように巻くことがより好ましい。素線186の巻き段数は、4段から5段であることが好ましい。5段を超えると、巻きズレが生じ易くなる。また、ボビン207の幅L31は巻き段数を考慮して決めることが好ましいが、150mm〜250mmであることが好ましい。
以上説明したように、線引張力及び巻取張力を調整し、図29に示す巻き形状で素線ロール208とすることにより、保管している際の素線186の長手方向における収縮を抑制することが可能となる。これによりマイクロベンディングの発生を抑制でき、伝送損失の悪化を抑制できる。線引き後に巻き取りを行う態様を示したが、後述の被覆や検査をインラインで行う工程の構成及び装置構成上一時的に張力が変化する構造などの張力変化が複数ある場合には、少なくとも最も高く加わる張力が前述の巻取張力調整前の調整張力の上限を超えないように調整を行う。これは張力に起因する重合体の配向や応力の残留が張力調整工程でも緩和できなくなるためである。
巻き返し
延伸工程においては加熱下で張力を受けながら巻き取られるため、素線内部に様々な応力が残留している場合がある。加熱下で巻き直すことにより残留応力を緩和させてマイクロベンディングや巻き癖の解消や素線の機械性能の改善が見込める。
操作としては延伸工程で巻き取られた素線を80℃〜110℃の温度で巻き返すのみであるが、このときの張力は1MPa〜10MPaとすると残留応力が緩和されるので好ましい。
保管
以上の工程で得られたプラスチック光ファイバ素線は、包装などで防塵処理を施して、20℃〜25℃で相対湿度が好ましくは40%〜60%、より好ましくは45%〜55%となる範囲で保管する。これは延伸加工によって側面積が増大しているため、吸湿性が高い素材を用いている場合は、空気中の水分を吸いやすいので、高すぎると吸湿によって伝送損失が上昇する。一方、乾燥しすぎると静電気を帯びやすく塵埃を吸引してしまう以外に素線同士が吸引または反発してしまい巻き解く際に素線同士で傷つけてしまう。
図30は、プリフォーム410からプラスチック光ファイバ素線(素線)411を線引きして巻き取る製造ライン412に欠陥検出装置420を組み込んだものを示している。周知の延伸機413によってプリフォーム410が加熱溶融されて線引きローラ対414により線引きされる。線引きされた素線411はガイドプーリ421を介して、欠陥検出装置420に送られ、ここで素線411中の気泡による欠陥416(図31参照)の有無が検出される。欠陥検出装置420を通過した素線411は周知の巻取り機417により巻き取られる。
延伸機413の線引きローラ対414にはエンコーダ415が設けられており、このエンコーダ415の出力信号によって素線411の測長信号が得られる。この測長信号は、欠陥検出装置420及び巻取り機417に送られる。この測長信号は、欠陥検出装置420及び巻取り機417において測長の際の較正に用いられる。
欠陥検出装置420は、第1〜第8のガイドプーリ421〜428を備えており、素線411を欠陥検出部430に案内する。第1ガイドプーリ421及び第8ガイドプーリ428はアーム418,419に設けられている。第1ガイドプーリ421は延伸機413からの素線411を欠陥検出装置420内に案内する。また、第8ガイドプーリ428は欠陥検出装置420からの素線411を巻取り機417に案内する。
欠陥検出部430は第3ガイドプーリ423と第4ガイドプーリ424との間に設けられている。この欠陥検出部430には、第1〜第3の光照射器431〜433及び第1〜第3のラインセンサカメラ435〜437が素線411の走行方向に一定間隔で配置されている。これら光照射器431〜433及びラインセンサカメラ435〜437は同じもので構成されており、図32に示すように、素線411の周方向で120°ピッチでそれぞれ配置されている。
このように120°ピッチで3つの光照射器431〜433及びラインセンサカメラ435〜437を設けているのは次の理由による。素線411のように、透明な円柱体を側方から撮影すると、空気/樹脂での屈折によって、図32(B),(C),(D)に示すように、その撮影範囲は撮影側周面で約105°、反対側で約30°の範囲で囲まれた断面(図中のハッチング部分H1)内しか撮影することができない。したがって、一方向からの撮影では撮影不可能エリアH2が残ってしまう。これに対して、120°ピッチで3つのラインセンサカメラ435〜437を配置することで、第1のラインセンサカメラ435によって(B)に示すハッチング部分H1が撮影され、第2のラインセンサカメラ436によって(C)に示すハッチング部分H1が撮影され、第3のラインセンサカメラ437によって(D)に示すハッチング部分H1が撮影される。したがって、これら(B)〜(D)のハッチング部分H1が重ねられることにより、(E)に示すように、素線411内をもれなく撮影することができる。
以上のように外周を漏れなく検査するには少なくとも3方向からの検査が必要であるが、検査装置を配置する方向を増やしても良い。好ましくは3〜4方向であり、もっとも好ましくは3方向である。装置の配置方向を増やしすぎると、他の検査系の照明光が外乱光とならないように検査装置を一定の間隔をあけて配置する必要があるため走行路上に多数の検査装置が並ぶこととなり、検査装置が大きくなりすぎてしまうことや、検査部位の重複が大きくなるので別の装置との同期を取るために制御が複雑となり、検査のための走行路が長くなることによって、装置内走行時の素線のねじれの発生が起きた場合に、未検査部が発生することがあるので好ましくない。
図33は、素線411に対する第1光照射器431とラインセンサカメラ435との配置の一例を示している。他の第2及び第3の光照射器432,433及びラインセンサカメラ436,437も同様に構成されており、第1光照射器431及びラインセンサカメラ435のみを説明し、その他の説明は省略する。ラインセンサカメラ435は撮影光軸435aが素線411の中心軸CL1を通るように配置されており、素線411の径方向における光強度分布を撮影する。このラインセンサカメラ435は、例えばDALSA社製のものが用いられ、撮影範囲を約96個のライン状に配置された撮像素子により撮影する。このラインセンサカメラ435の撮影信号はA/D変換回路でデジタル信号に変換された後に、図30に示すコントローラ440内の第1演算処理部441に画像データとして送られる。コントローラ440は欠陥検出装置420を制御するものであり、第1〜第3演算処理部441〜443、測長部445、書き込み部446及びメモリ447を備えている。
図33に示すように、第1光照射器431は、素線411を挟むように配置された2個の発光ダイオード431a,431bから構成されており、両側から素線411を照明する。なお、発光ダイオード431a,431bは2個に限らず、一方のみに配置してもよく、さらには3個以上配置してもよい。また、発光ダイオード431a,431bに代えて、レーザー、ハロゲンランプなどの各種光源を用いてもよい。さらには、発光ダイオードからなる投光器とフォトトランジスタからなる受光器とから構成してもよく、この場合には、受光器からの受光信号に基づきほぼ一定の光量となるように図示しないドライバで発光ダイオードを駆動する。この第1照射器431の照射光軸431cは、素線411の中心軸CL1に対して、ラインセンサカメラ435とは反対側にL1だけオフセットして配置されている。オフセット量L1は、第1光照射器431の照射ビーム径や光量などに応じて変えられるが、本実施形態ではφ316μmのファイバ径に対してφ5mmの照射ビーム径の場合にオフセット量L1を5〜6mmに設定している。このようにオフセットして配置することで、反射光がラインセンサカメラに入光しないため誤動作が防げることや、また、照明光は必ずしも撮影光軸に対して垂直ではなくてもよく、出射光源の広がりにも拠るが、およそ±10°程度は許容される。
また、第6ガイドプーリ426にはエンコーダ438が取り付けられており、このエンコード438からの信号は測長情報としてコントローラ440の測長部445に送られる。測長部445は、エンコーダ438の信号に基づき素線411の先端からの距離データ(測長データ)を求める。この測長データの算出に際して、延伸機413からの線引きローラ対414のエンコーダ415の信号を参照して較正する。求めた測長データは、後に説明する各演算処理部441〜443の欠陥信号と組み合わされて、欠陥位置の特定に利用される。なお、エンコーダ438は例えば5μm刻みといった測長信号を発生する。
各演算処理部441〜443では、エンコーダ438からの測長信号に基づき一定タイミングでラインセンサカメラ435からの画像データを取り込んで、素線411の走行方向での一連の画像データを得る。第1演算処理部441では、得られた画像データを100ライン毎に画像処理して、欠陥416の散乱光(白画像)を検出する。
図34は、第1演算処理部441における処理手順の一例を示している。また、図35は、1ライン分の画像データの一例と、開始位置しきい値S1及び欠陥しきい値S2を示しており、横軸に画素位置を、縦軸に累積輝度データをとっている。まず、100ライン毎に区切られた最初の1ラインの画像データに対して、各画素位置(素線411の径方向位置)を左から右へと移動していき、開始位置しきい値S1を始めて超える画像データが位置する画素を開始位置ST1として求める。これにより、撮影画像中の照明写り込みによって定常的に光っている外表面を規準にして開始位置ST1を特定することができる。
次に、求めた開始位置ST1を規準にして、予め各素線411のサイズ毎に予め求めて記憶しておいた検出範囲開始位置設定値C1及び検出範囲幅設定値C2に基づき検出範囲E1を特定する。このように、開始位置ST1が特定されると、自動的に検出範囲E1が特定される。
次に、この検出範囲E1内で欠陥しきい値S2を用いて100ライン分の画像データを2値化する。すなわち、欠陥しきい値S2を超えた画素を図36に示すように白画像WPとし、欠陥しきい値S2以下の画素を黒画像BPとして画像データを分ける。これら開始位置、検出範囲、白画像の特定は100ライン単位で行われる。そして、100ライン毎の検出範囲を隣接するもの同士で位置合わせして、一連の連続した検出範囲についての画像データを得る。このように、100ライン毎のように一定長さで検出範囲を特定しているため、素線411にうねりが発生していても、これを補正することができる。
つぎに、2値化した画像データの白画像WPに基づきブロブ処理を行う。このブロブ処理では、白画像WPが上下左右の4方向で連続しているか否かを判定して、各方向でつながっている白画像WPを一つのかたまりとし、これを一つのブロブとする。図36は、ブロブ処理結果の一例を示しており、(A)は2個のブロブB1,B2が検出された例を示しており、(B)は1個のブロブB3が検出された例を示している。
第1演算処理部441のメモリには、上記の開始位置しきい値S1、検出範囲開始位置設定値C1、検出範囲幅設定値C2の他に、素線411の径サイズ毎に、欠陥か否かを判定するためのブロブ最小面積値と、微小気泡欠陥か延伸時気泡欠陥かを判定するための微小気泡判別最大面積値とが記憶されている。メモリから欠陥検出対象の素線411の種別信号に基づき、対応するこれら各値が特定され、これに基づき上記開始位置ST1、検出範囲E1の特定の他に、気泡欠陥の種別が判定される。
気泡欠陥の種別の判定では、求めた各ブロブに対して、予め設定されているブロブ最小面積以上か否かを判定し、ブロブ最小面積以上のブロブに対応する気泡を欠陥と判定する。さらに、欠陥と判定された気泡のブロブ面積が微小気泡判別最大面積値以下である場合には微小気泡欠陥と判定され、それ以外は延伸時泡欠陥と判定される。これらの欠陥は、測長部445による素線411の線引き開始からの測長データに基づきその位置が特定され、判定した欠陥種別とその位置データとが対とされた欠陥情報が書き込み部446によってメモリ447に書き込まれる。
第1演算処理部441を例にとって説明したが、他の第2及び第3演算処理部442,443でも同様にして欠陥情報を得る。これらの欠陥情報は、素線411の識別データとともに記憶され、巻き替え工程や、被覆工程において、欠陥情報に基づき欠陥位置及び種別が特定されて、これら部分が取り除かれて、製品化される。この欠陥情報は、オンラインで巻き替え機や被覆設備に送られる他に、メモリカードなどの記録媒体を介して転送される。
以上、2値化による検出手法について述べたが、それ以外に知られた検出方法も好ましく用いることができる。例えば、画素間の濃度微分処理での異常な濃度勾配の発生や、グレースケールでの検査において、濃度ヒストグラムの変動による検出等も用いることができる。
なお、以上の方法によって得られた欠陥位置特定データに基づき、欠陥検出装置はインクジェットヘッドなどのマーキング装置により、欠陥位置を示すマーキングを付す機構やアルミテープなどを付着する機構を備えて、後工程で識別できるようにしてもよい。この場合に、欠陥種別に応じてマーキングの色やアルミテープの形状を変更してもよい。
上記実施形態では、欠陥情報に基づき欠陥部位を取り除く場合について説明したが、この他に、欠陥情報を累積して気泡発生の部位が一部に集中しているか否かなどを判定し、これに基づき、プリフォーム形成工程や延伸工程での気泡発生の原因究明に用いてもよい。この場合には、プリフォーム形成工程や延伸工程において、プリフォームに取付位置規準マークを設けておき、この取付位置規準マークを常に一定位置にして各工程を行う。
上記実施形態では、素線411の気泡による欠陥を検出する例を示したが、この他に、石英系ファイバやその他の透明、または半透明の線状体の気泡や異物などの欠陥を検出する場合にこの様な態様を実施できる。また、ラインセンサカメラ435〜437を用いて1ライン毎に画像を取得する代わりに、イメージエリアセンサカメラを用いて一定範囲毎に画像を取得してもよい。
これらの様にして得られるプラスチック光ファイバ素線(素線)はJIS C 6837に規定される非円率が6%以内、線径変動の許容度は500±30μm、750±45μmでの形状を有し、JIS C 6837に規定されている降伏強度が500μmφでは14N以上、750μmφでは32N以上であり、降伏伸びは500μmφ、750μmφ共に4%以上の機械的特徴を有し、JIS C 6837に規定されるNAが0.5±0.15,JIS C 6837に規定される伝送損失が30dB/100m以下の伝送能力を有することが好ましい。
(被覆工程)
上記のように製造されるプラスチック光ファイバ素線(素線)は、通常、そのままの状態で使用されることはない。例えば、素線の曲げ・耐候性の向上,吸湿による性能低下抑制,引張強度の向上,耐踏付け性付与,難燃性付与,薬品による損傷からの保護,外部光線によるノイズ防止,着色などによる商品価値の向上などを目的として素線の表面に1層以上の被覆層を被覆したプラスチック光ファイバコード(プラスチック光ファイバ心線とも称される。以下光ファイバコードと称する)として使用する。この被覆層の材料及び素線に被覆層を形成する方法について以下に説明する。なお、被覆層の形成に用いられる装置は、延伸装置に直結して延伸直後に一括して行っても差し支えなく、多層に被覆を行う場合には、被覆工程を連続して行っても良い。
(被覆の構造)
素線および/または光ファイバコードを被覆することにより、プラスチック光ファイバケーブル(以下、光ファイバケーブルと称する)の製造が可能となる。その際にその被覆の形態として、被覆材と素線などとの界面が全周にわたって接して被覆されている密着型の被覆と、被覆材と素線などとの界面に空隙を有するルース型被覆がある。
ルース型被覆では、たとえばコネクタとの接続部において被覆層を剥離した場合、その端面の空隙から水分が浸入して長手方向に拡散されるおそれがあるため、通常は密着型が好ましい。
しかし、ルース型の被覆の場合、被覆材と素線などとが密着していないので、光ファイバケーブルにかかる応力や熱とはじめとするダメージの多くを被覆層及び空隙層で緩和させることができる。そのため、素線などにかかるダメージを軽減させることができ、使用目的によっては好ましく用いることもできる。水分の伝播については、空隙部に流動性を有するゲル状の半固体や粉粒体を充填することで、端面からの水分伝播を防止でき、かつ、これらの半固体や粉粒体に耐熱や機械的機能の向上などの水分伝播防止と異なる機能をあわせ持つようにすることでより高い性能の被覆を形成できる。なお、ルース型の被覆を製造するには、後述のチュービング型ダイスにおいてクロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し減圧装置を加減することで空隙層を作ることができる。空隙層の厚みは前述のニップル厚みと空隙層を加圧/減圧することで調整が可能である。
(被覆の製造方法)
被覆層の形成方法としては熱可塑性樹脂などを加熱により溶融状態にして押し出しながら被覆する方法と、紫外線硬化樹脂や自己硬化性組成物などの硬化性組成物を塗布して化学反応を経由して硬化する方法がある。それぞれについて以下に説明する。まず、溶融樹脂の押し出しによる被覆方法について説明する。
(被覆の素材)
押し出し被覆の場合の被覆層形成用材料としては、ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)などに代表される一般的なオレフィン系ポリマーや塩化ビニル,ナイロンなどの汎用性の高いポリマーのほかに、具体的に以下の材料を挙げることができる。これらは高い弾性を有しているため、曲げなどの機械的特性付与の観点でも効果がある。まず、ポリマーの一形態であるゴムを挙げることもできる。具体的には、イソプレン系ゴム(例えば、天然ゴム,イソプレンゴムなど),ブタジエン系ゴム(例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム,ブタジエンゴムなど),ジエン系特殊ゴム(例えば、ニトリルゴム,クロロプレンゴムなど),オレフィン系ゴム(例えば、エチレン−プロピレンゴム,アクリルゴム,ブチルゴム,ハロゲン化ブチルゴムなど),エーテル系ゴム,ポリスルフィド系ゴム,ウレタン系ゴムなどが挙げられる。
被覆層形成用材料としては、室温で流動性を示して加熱することにより、その流動性が消失して硬化する液状ゴムを用いることができる。具体的には、ポリジエン系(例えば、基本構造がポリイソプレン,ポリブタジエン,ブタジエン−アクリロニトリル共重合体,ポリクロロプレンなど),ポリオレフィン系(例えば、基本構造がポリオレフィン,ポリイソブチレンなど),ポリエーテル系(例えば、基本構造がポリ(オキシプロピレン)など),ポリスルフィド系(例えば、基本構造がポリ(オキシアルキレンジスフィド)など),ポリシロキサン系(例えば、基本構造がポリ(ジメチルシロキサン)など)などを挙げることができる。
前記列記した素材は、特開2003−270453号公報に記載されるように流動可能なまでに加温された樹脂が素線などに接触し、樹脂の持っている熱が素線などに移って樹脂を軟化させコア/クラッド界面の不整を起こしたり、屈折率分布型のプラスチック光ファイバ素線では屈折率分布が変形するなどの熱ダメージを被覆工程内で与えない程度の温度以下で成形可能なものであれば、特に上記材料に限定されず、各材料間もしくは上記以外の共重合体や混合ポリマーとして組み合わせて用いることもできる。その他に、性能を改善する目的で難燃剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、滑剤などの添加剤や、無機化合物及び/または有機化合物からなる各種フィラーを加えることができる。
被覆層の形成方法について以下に説明する。なお、被覆層の形成に用いられる被覆装置は、延伸装置に直結して延伸と同時に(延伸直後に)一括して行っても差し支えない。
図37に示されている被覆ライン480は、従来から知られている電気ケーブルや石英ガラス製光ファイバと同様な被覆ラインを使用することができる。プラスチック光ファイバ素線(素線)475は、送出機481により冷却装置482に送り出される。素線475は、冷却装置482により5℃〜35℃の温度まで冷却される。素線475に被覆層を形成する前に冷却を行うと、被覆時における素線475の熱ダメージを軽減できるために好ましいが、省略することもできる。その後に被覆装置483により素線475に被覆材(熱可塑性樹脂)を被覆してプラスチック光ファイバコード(光ファイバコード)476を得る。なお、この被覆については、後に詳細に説明する。
光ファイバコード476は、第1ないし第3冷却用水槽484,485,486により徐々に冷却されることが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂にポリエチレンを用いる場合の具体例を挙げる。溶融温度は120℃〜130℃、搬送速度は20m/min〜50m/min、第1冷却用水槽484は水温を40℃〜80℃、光ファイバコード476の水槽内通過時間(以下、通過時間と称する)が0.1min〜0.2min、第2冷却用水槽485は水温を20℃〜50℃、通過時間が0.1min〜0.2min、第3冷却用水槽486は水温を5℃〜20℃、通過時間が0.1min〜0.2minとなるようにすることが好ましいが、勿論前記数値範囲に限定されるものではない。また、冷却用水槽の数も3個に限定されるものではない。段階的に冷却する数は、2〜6が好ましく、3〜5がより好ましく、3〜4が最も好ましい。
光ファイバコード476は、水分除去装置487によりその表面に付着している水分が除去される。そして、ローラ488により搬送されて巻取機489に巻き取られる。なお、図37では、素線475を送出機481から供給する形態を示したが、被覆ライン480は図示した形態に限定されるものではない。例えば、素線形成用の製造設備190(図19参照)を一体に組み込んだラインを用いることもできる。この場合には、製造設備190によりプリフォーム187から連続的に素線186が供給され、その素線186に連続的に被覆材を被覆することで、連続して光ファイバコード476を得ることができる。
被覆の形態として用いるダイスによって大きく2つに大別される。
プラスチック光ファイバ素線と被覆用樹脂がダイス出口よりも手前で接触する加圧型ダイス(プレッシャー型ダイスとも称する)や素線と被覆用樹脂の接触がダイス出口の近傍もしくはダイスから出てから行われるチュービング型ダイスは、素線と被覆または、多層被覆を行う場合は被覆層間を強く密着させる場合に好ましく用いることができ、チュービング型ダイスはルース型被覆や層間の強い接触を行わない場合などに好ましく用いることができる。
図38には、図37の被覆装置483に備えられているダイス500とニップル501とを示す。ダイス500とニップル501とは、その隙間が被覆材である熱可塑性樹脂502の樹脂流路503,504となるようにダイス500内にニップル501が嵌め込められている。
ダイス500,ニップル501には、熱可塑性樹脂502に流動性を持たせるために温調機505,506が取り付けられている。被覆する際の熱可塑性樹脂502の温度(被覆温度)TD(℃)は、素線475に移動する熱量を低減するためにも可能な程度に低くすることが好ましい。例えば、ポリエチレンを被覆材として用いる場合には140℃以下とすることが好ましく、より好ましくは130℃以下とすることである。なお、被覆温度TD(℃)の下限値は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂502が流動性を有する温度以上とする必要がある。そこで、熱可塑性樹脂502の樹脂温度TD(℃)は、前記熱可塑性樹脂の融点Tm(℃)に対してTm≦TD(℃)≦Tm+30℃とすることが好ましく、より好ましくはTm≦TD(℃)≦Tm+20℃であり、最も好ましくはTm≦TD(℃)≦Tm+10℃である。例えば、熱可塑性樹脂502に融点が120℃の低密度ポリエチレンを用いる際には、120℃〜130℃であることが好ましい。ニップル501内の空隙を素線475が通過し、ニップル開口部501aから送り出される。熱可塑性樹脂502は吐出圧が加わった状態で素線475と接触することとなり、被覆層の密着性が向上する。
素線475の形態などは、特に限定されるものではないが、その素線の直径が200μm以上1000μm以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは300μm以上750μm以下のものを用いることである。素線475の搬送速度も特に限定されるものではないが、10m/min以上100m/min以下の範囲であることが好ましい。10m/min未満であると、生産性が悪化しコスト高の原因となる。さらには、加熱されているニップル501内の空隙を通過する時間が長くなるため、ニップル501からの放射熱により素線475に熱ダメージが生じるおそれがある。また、搬送速度を100m/minより速くすると被覆材である熱可塑性樹脂502と素線475との密着性が劣り、熱可塑性樹脂502の剥離や樹脂の結晶化による機械的特性の変化などの問題が生じるおそれがある。
ダイス500とニップル501との空隙(クリアランス)は、樹脂流路503,504となる。所望の温度に調整され流動性を有する熱可塑性樹脂502は、配管507,508から樹脂流路503,504に送り込まれる。熱可塑性樹脂502は、樹脂流路503,504を流れた後に、樹脂流路の最下流側である樹脂供給口503a,504aから送り出される。熱可塑性樹脂502は、素線475の外周面を被覆して被覆層509を形成する。被覆層509が形成された素線475は、光ファイバコード476となる。
被覆されている素線475が、ダイス500から送り出される出口をダイス出口500aと称する。樹脂供給口503a,504aの最もダイス出口500a側をランド開始部500bと称する。ダイス出口500aからランド開始部500bまでは、筒状の空隙となっており、熱可塑性樹脂502が被覆されている素線475の搬送路になっている。以下、この筒状の空隙をランド510と称して、その長さをL41(μm)とする。また、樹脂供給口503a,504aの長さd41(μm)は、ニップル先端部501bとランド開始部500bとの距離である。これら金型は、図38に示されているように素線475がダイス500内部で被覆が開始されるようにダイス500にランド510が形成されている。これにより熱可塑性樹脂502が素線475に被覆される際に素線475に付与される熱の拡散を図ることができる。
ダイス500とニップル501との形態及び配置位置を最適化することで素線475の熱ダメージによる伝送損失の悪化をより防止できる。
ダイス500の開口部の径をTA41(μm)とする。ニップル501の外径をTB41(μm)とし、内径をTB42(μm)とする。また、図38に示されているように光ファイバコード476の径をD41(μm)とする。この場合に、D41≦TA41(μm)≦1.3×D41の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.05×D41≦TA41(μm)≦1.25×D41であり、最も好ましくは1.1×D41≦TA41(μm)≦1.2×D41である。ダイス外径TA41(μm)が大きいと、熱可塑性樹脂502の引き落とし率が大きくなるため、より大きな伸張応力が素線475にかかり伝送損失の悪化を招くおそれがある。
ランド長さL41(μm)は、TA41≦L41(μm)≦4×TA41の範囲とすることが好ましく、より好ましくはTA41≦L41(μm)≦3.5×TA41であり、最も好ましくはTA41≦L41(μm)≦3×TA41である。ランド長さL41(μm)が長いと、熱可塑性樹脂502による背圧が大きくなるために素線475が変形(例えば、伸び)しやすくなり、伝送損失の悪化を招くおそれがある。
ニップル外径TB41(μm)は、0.7×TA41≦TB41(μm)≦1.2×TA41の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.8×TA41≦TB41(μm)≦1.2×TA41であり、最も好ましくは0.9×TA41≦TB41(μm)≦1.1×TA41である。ニップル外径TB41(μm)が大きいと、ダイス500とニップル501との距離を狭くすることが困難となり、被覆時に素線475が伸びて伝送損失の悪化を招くおそれがある。
ニップル内径TB42(μm)は、D41+10μm≦TB42(μm)≦D41+300μmの範囲とすることが好ましく、より好ましくはD41+20μm≦TB42(μm)≦D41+50μmであり、最も好ましくはD41+30μm≦TB42(μm)≦D41+50μmである。ニップル内径TB42(μm)が大きいと、素線475の偏芯が大きくなり、素線475にかかる側圧が不均一化することで伝送損失の悪化を招くおそれがある。
クリアランスd41(μm)は、TA41≦d41(μm)≦2×TA41の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1.1×TA41≦d41(μm)≦1.8×TA41であり、最も好ましくは1.2×TA41≦d41(μm)≦1.6×TA41である。クリアランスd41(μm)が大きいと、熱可塑性樹脂502を素線475に被覆する際に、素線475が伸びて伝送損失の悪化を招くおそれがある。これらにより素線475の表面に厚肉(例えば、400μm〜1000μm)の被覆層509を形成することができる。
以上説明したダイス500とニップル501とからなる金型を用いることで、素線475へ熱可塑性樹脂502の被覆を容易に行うことが可能となり、素線475への熱ダメージや被覆層形成不良などのトラブルの発生を防止できる。また、素線475の直径D42(μm)は、200μm以上800μm以下であることが好ましく、より好ましくは300μm以上750μm以下のものを用いることである。この場合に、被覆時の被覆層129の厚みTC41(μm)が100μm以上1000μm以下、より好ましくは200μm以上800μm以下、最も好ましくは400μm以上600μm以下とする。
図39には、被覆装置に備えられているチュービング型のダイス530とニップル531とを示す。ダイス530とニップル531とは、その隙間が被覆材である熱可塑性樹脂532の液流路533,534となるようにダイス530内にニップル531が嵌め込められている。ダイス530,ニップル531には、熱可塑性樹脂532に流動性を持たせるために温調機535,536が取り付けられている。被覆する際の熱可塑性樹脂532の温度(被覆温度)は、素線に移動する熱量を低減するためにも可能な程度に低くすることが好ましい。たとえば、ポリエチレンなどを被覆材として用いる場合には140℃以下とすることが好ましく、より好ましく130℃以下とすることである。なお、被覆温度の下限値は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂532が流動性を有する温度以上とする必要がある。例えば、熱可塑性樹脂532に低密度ポリエチレンを用いる際には、100℃〜110℃であることが好ましい。ニップル531内の空隙に素線525が通過し、ニップルの開口部531aから送り出される。
素線525は、光の伝送路であるコア部525aとクラッド部525bとから形成されている。素線525の形態などは、特に限定されるものではないが、その直径D51(μm)が、200μm以上1500μm以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは200μm以上800μm以下のものを用いることである。素線525の搬送速度も特に限定されるものではないが、10m/min以上100m/min以下の範囲であることが好ましい。
ダイス530とニップル531との空隙は液流路533,534となる。所望の温度に調整され流動性を有する熱可塑性樹脂532は、樹脂供給口537,538から液流路533,534に送り込まれる。熱可塑性樹脂532は、液流路533,534を流れた後に、ダイス先端とニップル先端とのクリアランスである樹脂吐出口530aから送り出される。熱可塑性樹脂532は、素線525の外周面を被覆して被覆層539が形成される。被覆層539が形成された素線525は、光ファイバコード526として冷却される(図37参照)。
10m/min未満であると、生産性が悪化しコスト高の原因となる。さらには、加熱されているニップル531内の空隙を通過する時間が長くなるため、ニップル531からの放射熱により素線525に熱ダメージが生じるおそれがある。また、搬送速度を100m/minより速くすると被覆材である熱可塑性樹脂532と素線525との密着性が劣り、熱可塑性樹脂532の剥離や樹脂の結晶化による機械的特性の変化などが生じる。
ダイス530の開口部の径をTA(μm)とする。ニップル531の外径をTB1(μm)とし、内径をTB2(μm)とする。樹脂吐出口530aのクリアランスを十分なものとし、熱可塑性樹脂532が素線525に容易に被覆可能なように、クリアランス(=TA−TB1)は、20μm≦TA−TB1≦1500μm・・(1)
とする。クリアランスが20μm未満であると熱可塑性樹脂532が液流路533,534を通過する際に高圧になり、素線525と接触する際に、素線525に過大な応力がかかるおそれがある。この場合には素線525の素材の屈折率が変化し、光学特性の変化、例えば伝送損失の悪化が生じるおそれがある。また、クリアランスが1500μmを超えると、形成される被覆層539の肉厚が厚くなり過ぎ、液ダレなど被覆層539の外観悪化が生じる。また、肉厚が厚い被覆層539は、熱可塑性樹脂532の冷却が均等に進行しないおそれがあり、素線525に熱ダメージが生じてコブなどの外観不良の原因となる。
素線525が通過するニップル531の内径TB2(μm)と素線525の径D(μm)との差(=TB2−D)を20μm≦TB2−D≦600μm・・(2)
の関係とすることが好ましい。600μmを超えると、素線525への熱可塑性樹脂532の密着性が悪化するおそれがある。また、下限は実質的に1μm程度であるが、高温の素材や熱容量の大きな素材で被覆する際は、目安として20μm程度の距離をとり流動させつつ冷却を行うことが好ましい。20μmよりも狭いと、ニップル531からの熱放射により素線525に熱ダメージや、ニップル531内側に素線525が接触して物理的ダメージが生じるおそれがある。素材によっては、押出し後に減圧を行って密着させる事ができる。さらにチュービング型ダイスでは空隙層の厚みをニップル内径と素線外径との差と、空隙層の減圧とにより調整できる。
ニップル先端部531bにおける外径TB1(μm)と内径TB2(μm)との差(=TB1−TB2)を400μm<TB1−TB2≦1500μm・・(3)
とする。TB1−TB2が1500μmを超えると、熱可塑性樹脂532が、素線525に接触する位置533a,534aがニップル先端部531bから遠くなり、熱可塑性樹脂532の素線525への接触位置が不安定となり、コブなどの発生の原因となる。また、TB1−TB2の下限値は特に限定されないが、ニップル531の作製コスト及び強度や耐久性などを考慮すると400μmより大きいことが好ましい。
以上説明したダイス530とニップル531とからなる金型を用いることで、素線525へ熱可塑性樹脂532の被覆が容易に行うことが可能となり、素線525への熱ダメージや被覆層形成不良などのトラブルの発生を防止できる。また、素線525の直径D61は200μm以上1500μm以下であることが好ましく、より好ましくは200μm以上800μm以下のものを用いることである。この場合に、被覆時の被覆層539の厚みTc(μm)が100μm以上500μm以下となるよう被覆することで、素線525に過大な応力がかかることが無くなる。なお、固化した被覆層539は、その素材によっては収縮が生じる場合があり、これを回避するためアニール工程を設けても良い。
続いて、硬化性組成物を塗布し、化学反応を経由して被覆層を形成する方法について説明する。
[被覆層形成用材料]
この塗布型の被覆方法で用いられる被覆層形成用の材料には、素線に熱的ダメージ(例えば、変形,変性,熱分解など)や溶解などのダメージを与えないものを選択する。そこで、素線を形成するポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下で、かつ50℃以上で反応硬化可能な素材を用いる。硬化可能温度を50℃以上とするのは、一般的に低い温度(特に室温付近)で硬化する材料は、ポットライフが短く、さらに光ファイバコードの製造工程で、溶融延伸直後に連続して被覆層の被覆工程を行った場合には、素線によって持ち込まれる予熱で硬化が始まるため、材料の管理や被覆条件の設定が非常に困難になるためである。これら観点を考慮し、かつ、被覆する対象のガラス転移温度Tg(℃)が100℃以上のものである場合には、硬化速度の向上と制御とを両立させるため、硬化温度の下限を(Tg−50)℃まで上げても良い。
成形時間(材料が硬化する時間)が1秒以上で、10分以下、好ましくは3分以下であるものを用いることがより好ましい。硬化時間の長いものは、素線を加温条件に曝すことになり好ましくない。さらに被覆層形成用材料は長時間流動性を保持しているため厚みの制御などの観点から、硬化時間の短いものが好ましい。成形時間が短すぎると、厚い被覆層を設ける場合などに被覆層内に硬化ムラを起こすおそれがあるために、好ましくない。なお、素線が可塑性を付与する添加剤の含有量や共重合体の共重合比に分布を持つ場合などの複数の化学的組成から形成される場合には、それら各化学的組成のガラス転移温度のなかで、最も低い温度のガラス転移温度をTg(℃)とみなす。また、素線を構成するポリマーがガラス転移温度を有しないものである場合には、相転移温度(例えば、融点など)の最も低いものをTg(℃)とみなして制御する。また、単一のポリマー(ホモポリマー)からなる場合に可塑性を付与する添加剤を含有させることによってガラス転移温度Tg(℃)に分布が生ずる場合においても、ポリマーのガラス転移温度Tg(℃)とみなす。この材料の硬化温度をTg(℃)以下で、かつ50℃以上とすることにより被覆層硬化時の熱ダメージを回避し、熱ダメージによる素線の変形や各種物性値の劣化、さらには、屈折率分布型コア部を有する場合には屈折率プロファイルの変形を抑止することができる。この被覆工程によって生じる性能低下を抑制できるため、高性能を維持した光学部材を提供することが可能となる。なお、光学部材や被覆層形成材料の種類によっては、被覆層形成用材料の硬化温度の下限値を(Tg−50)℃とすることもできる。
被覆層形成用材料としては、紫外線硬化樹脂やポリマー前駆体と反応剤などとを混合した液を熱硬化させる硬化性組成物を好ましく用いることができる。ただし、紫外線硬化樹脂は被覆層の厚みや紫外線の照射量などの硬化条件に制限を受けやすい。一方、後者は例えばイソシアネート基を有する化合物と活性水素を有する化合物とを混合して得られるポリウレタンが挙げられる。このような素材は自己の反応性によって反応が進行するため、熱や光のエネルギーを外部より多量に加える必要がない。また、被覆の厚みなどを勘案すれば、光学部材に甚大なダメージを与えるほどの大きな反応熱は発生しない。さらに、素材の選択によっては湿度によって反応が進行するものがあり、反応進行に熱をより必要としない素材もある。以上を具体的に例示するならば、特開平10−158353号公報に記載のNCOブロックプレポリマーと微粉体コーティングアミンとから製造される1液型熱硬化性ウレタン組成物などを挙げることができる。
前記熱硬化性ウレタン組成物から、3次元架橋されている熱硬化性ポリウレタン(以下、3次元ポリウレタンと称する)が形成される。これは例えば複数のイソシアネート基を有する化合物とポリオールとが反応することによって得ることができる。この際には、熱硬化性ウレタン組成物を80℃で5分間保持する。熱硬化性ウレタン組成物中のプレポリマーが3次元的に重合して3次元ポリウレタンが得られる。この方法は、加熱媒体に水などを用いることができるのでコストの点から有利である。
3次元ポリウレタンは、室温においては小さな力でも変形を起こし、その力を除くとほとんど元の形に戻るゴムの性質を有している。柔らかくて弾性があるため力が加えられてもその力が取り除かれた後には元の形状が維持される。そのため、外部から圧力がかかる作業、例えばコネクタの取り付けなどの際に、応力を緩和する機能を有する。これにより、外部からの圧力が素線に伝播することが抑制される。そのため素線の変形による光学特性、例えば伝送損失の悪化を抑制することができる。
ポリウレタンは、プレポリマーを熱硬化させることで得られる。このポリウレタンは、通常は、線状構造(Linear PU、以下ポリウレタンと称する)である。長時間使用の際には、使用可能温度は約60℃である。また、短時間使用時では、約80℃まで使用可能である。しかしながら、好ましく用いられる3次元ポリウレタンは、長時間使用時でも120℃であり、短時間使用時では130℃〜140℃まで使用可能である。なお、長時間使用とは、200時間以上所定の温度下においてからダンベルサンプルの応力−ひずみ曲線(S−S曲線)を測定する。常温環境で同時間放置したダンベルサンプルのS−S曲線と略同一である場合には、その所定の温度では使用可能であるとみなす。また、短時間使用とは、放置時間が100時間未満であることを意味している。
このように3次元ポリウレタンは、線状ポリウレタン(使用可能温度80℃以下)や熱可塑性ポリウレタンエラストマー(使用可能温度100℃以下)と比較して高温まで使用できる。さらに、被覆材料として通常用いられる低密度ポリエチレン(LDPE)では、長時間使用の際には、60℃〜75℃であり、短時間使用の際には80℃〜90℃である。3次元ポリウレタンは、LDPEと比較してもはるかに熱的ダメージを受け難く、耐熱性があることが分かる。
この被覆層を付与した光ファイバコードやさらにそれを束ねたプラスチック光ファイバケーブルとして用いることがある。この場合には、3次元ポリウレタンを主成分としている被覆層の外周面に更に被覆を行う。被覆樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE),ポリプロピレン(PP),軟質ポリ塩化ビニル(PVC)などが用いられる。被覆の際には、樹脂を所望の温度まで加熱して溶融する。この溶融樹脂の熱が素線に伝わると伝送損失の悪化を招く。特にコア部を屈折率分布型としたときには加熱されると、屈折率分布が変化して広帯域の伝送が可能であるという利点が失われるおそれがある。しかしながら、被覆層に3次元ポリウレタンを用いると、3次元ポリウレタンは熱伝導性が低いため、溶融樹脂の熱が素線に伝わることが抑制される。これにより屈折率分布型構造の乱れが生じることがなくなり、伝送損失の悪化が生じない。
このように3次元ポリウレタンを素線と2次被覆層との間に層(以下、下塗り層と称する)として形成することで、樹脂の溶融温度が高いものを被覆する際にも、素線が熱的ダメージを受けることが抑制され、耐熱性を有しつつ熱伝導率が低いので被覆による素線への熱の伝播は減少するため、熱によるダメージの低減が見込める。そのため、3次元ポリウレタンは、被覆層形成前の下塗り層として好ましく用いることができるので、このポリウレタン層で1次被覆を行って、その後で前述の押出し被覆によって2次被覆層以降を形成させる態様も好ましく行うことができる。また、ポリウレタンは、耐摺動性に極めて優れている。そのため、2次被覆層を形成する樹脂、例えば、塩化ビニル樹脂,熱可塑性ウレタン樹脂,熱可塑性オレフィン樹脂などと擦れてもその良好な耐摺動性により素線に応力が発生することが抑制される。このように素線の機械的強度を高めるために2次被覆層を設け、その2次被覆層から伝えられる側圧や素線を曲げたときの応力の緩和を1次被覆層で行う。これにより素線に意図しない応力がかかることによる光学特性の悪化を抑制できる。
また、WO95/26374号パンフレットに記載のNCO基含有ウレタンプレポリマーと20μm以下の固形アミンとからなる1液型熱硬化性ウレタン組成物なども用いることもできる。その他に、性能を改善する目的で難燃剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、滑剤などの添加剤や、無機化合物及び/または有機化合物からなる各種フィラーを加えることができる。
なお、使用条件が実験条件に適する場合には、室温では流動性を示し、加熱することによりその流動性が消失して硬化する液状ゴムを用いることができる。具体的には、ポリジエン系(例えば、基本構造がポリイソプレン,ポリブタジエン,ブタジエン−アクリロニトリル共重合体,ポリクロロプレンなど),ポリオレフィン系(例えば、基本構造がポリオレフィン,ポリイソブチレンなど),ポリエーテル系(例えば、基本構造がポリ(オキシプロピレン)など),ポリスルフィド系(例えば、基本構造がポリ(オキシアルキレンジスフィド)など),ポリシロキサン系(例えば、基本構造がポリ(ジメチルシロキサン)など)などを挙げることができる。
図40に示すように素線611を樹脂ポット612に送り込む。樹脂ポット612内には、前記被覆層形成用材料(以下、樹脂と称する)613がストックされている。樹脂ポット612の下流側に、被覆層の厚みを略均一にするためのダイス614が取り付けられていることが好ましい。素線611が樹脂613内を通ることにより、その表面に樹脂613が塗布される。この樹脂613が塗布された素線を以下の説明では、塗布素線615と称する。なお、素線611は、一度ロール状に巻き取られたものから送られるものを用いても良いし、プリフォームを延伸して得られた素線を連続して用いてもよい。
塗布素線615は、樹脂硬化用水槽(以下、水槽と称する)616に送られる。この水槽616内に充填される液体は、被覆材の硬化温度以下の沸点を有し、除去し易く、被覆材を溶解せず、被覆材と反応しない溶媒であれば、いずれの溶媒でもかまわないが、水を用いることが最も好ましい。水槽616には温水617が入っている。温水617の温度を一定に保持するために水温調節装置618を取り付け、温水617を循環させることが好ましい。温水617の温度は、素線611のガラス転移温度Tg(℃)以下で、50℃以上の範囲に調節する。好ましくは、(Tg−50)℃以上Tg(℃)以下とする。最も好ましくは、(Tg−30)℃以上Tg(℃)以下とする。
塗布素線615の搬送はプーリー619,620を用いることが好ましいが、ローラなど他の搬送手段を用いても良い。塗布素線615は、温水により緩やかに加温され、樹脂の流動が生じない程度まで硬化し、被覆層が形成され光ファイバコード621となる。なお、樹脂613は、塗布した後から1秒以上10分以内で硬化するように、水槽内滞留時間が1秒から10分の範囲となるように搬送速度を調節する。これにより、光ファイバコード621の生産速度を落とさずに、被覆層を形成することができるが、その速度範囲に限定されるものではない。
光ファイバコード621の表面に付着した温水を水分吹き払い除去装置622で除去し、水分吸引除去装置623でさらに水分を除去する。光ファイバコード621は、引取りローラ624,625で引取り搬送される。引取りローラ625にはモータ626を取り付け駆動する。また、他方の引取りローラ624には、押圧部材であるバネ627などを取り付けることで、安定した搬送が行えるために好ましい。
光ファイバコード621の被覆層の厚さは、20μm以上3mm以下であることが好ましく、50μm以上2mm以下であることがより好ましく、最も好ましくは、80μm以上1mm以下である。20μm未満であると保護被覆の効果が得られない場合がある。また、3mmより厚いと硬化の進行が遅いもしくは未反応の部分が発生し、未反応物が残る場合がある。また、素線525の平均直径D61は0.2mm以上2.0mm以下の範囲であることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。コア部525aの直径及びクラッド部525bの厚みは、それぞれ0.1mm以上1mm以下、0.01mm以上1.9mm以下であることが好ましい。
図41に光学部材である光ファイバコードの製造に用いられる他の実施形態を図示する。素線631を張力測定装置650に通し、張力を制御しながら搬送する。被覆層を形成する前に、除塵装置651で素線631表面に付着している塵などを除去することが良好な光学特性を保持するために好ましい。連続的に樹脂供給装置652から樹脂ポット632へ樹脂633が供給されている。樹脂ポット632の外側にドライチャンバ653を取り付け乾燥気体供給装置654から乾燥気体(例えば、窒素ガスなど)を送風することで、素線631に樹脂633を塗布する際の塵などの混入を防止できる。また、樹脂ポット632の樹脂633の量の変動を抑制するため、樹脂ポットレベル計663を取り付け一定量に制御することがより好ましい。
素線631は、ダイス635を通ることにより、好ましい厚さの被覆層が形成された塗布素線634となる。樹脂ポット632の液出口先端のリップ開口面積を調整することにより、被覆厚を調整することができる。また、液粘度及びライン速度によっても被覆厚は微調整可能であるため、塗布素線634は、線径測定装置655によりその線径がモニタリングされ、その結果に基づき樹脂ポット632の温度や素線の搬送速度などを微調整し、好ましい線径の塗布素線634とする。加熱チャンバ656に塗布素線634を送り、加熱することで樹脂を硬化させて被覆層を形成する。加熱チャンバ656には熱風発生装置657が取り付けられており、熱風が塗布素線634の搬送方向と逆方向に流れるように供給される。なお、熱風の供給方向は、塗布素線634の搬送方向に沿って供給しても良い。また、加熱チャンバ656の入口側と出口側とにそれぞれ温度計658,659を取り付け、温度をモニタリングし微調整を行うことが、被覆層の一部が隆起するいわゆるコブの発生を抑制でき、均一な厚さの被覆層を形成するために好ましい。樹脂の流動が起きなくなると、塗布素線634は、被覆層が形成された光ファイバコード660となる。なお、本実施形態においても、被覆層形成用材料の加熱時間は、1秒以上10分以下であることが好ましい。
光ファイバコード660の被覆層に発生するコブの有無は、コブ検出装置661により監視され、その結果に基づき、加熱チャンバ656の温度調整などがなされる。その後に、引取りローラ642,643により引取り搬送される。引取りローラ643には、モータ644が取り付けられ駆動ローラとなっている。また、引取りローラ642には、バネ645が取り付けられている。さらに、引取りローラ642にファイバ長尺計装置662を取り付け、光ファイバコード660の長さを計測することが好ましい。
(被覆の追加機能)
以上の方法で作製されるプラスチック光ファイバコードは、さらに、必要に応じて上記の被覆層を1次被覆層とし、外周にさらに2次(または多層)被覆層を設けても良い。1次被覆が充分な厚みを有している場合には、1次被覆の存在により熱ダメージが減少するため、2次被覆層の素材の硬化温度の制限は、1次被覆層を被覆する場合に比べて、緩くすることができる。2次被覆層には前述と同様に、難燃剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、滑剤、可塑剤などを導入してもよい。
なお、難燃剤については臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤や燐含有のものがあるが、燃焼時の毒性ガス低減などの安全性の観点で難燃剤として水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を好ましく使うことができる。金属水酸化物はその内部に結晶水として水分を有しており、またその製法過程での付着水が完全に除去できないため、低吸湿性の素線や低次被覆層ではない場合、金属水酸化物による難燃性被覆は1次被覆層の外層に耐湿性被覆を設けてその外層にさらに被覆層として設けることが望ましい。また、難燃剤の添加量は、被覆層として付与する場合はその被覆層に対しては被覆層としての強度や加工性を考慮して55質量%〜80質量%、好ましくは65質量%〜75質量%となるように添加し、素線や被覆を合わせた可燃性材料に対しては50質量%〜75質量%、好ましくは60質量%〜70質量%となるように添加して、所望の難燃性を得ることが好ましい。
難燃性の規格として、UL(Underwriters Laboratory)ではいくつかの試験方法を決めており、それぞれ難燃性能の低い順から、CMX(燃焼試験は一般にVW−1試験と言われている)、CM(垂直トレイ燃焼試験)、CMR(ライザー試験)、CMP(プレナム試験)などのグレードが設定されている。プラスチック光ファイバの被覆の場合、芯材である素線は可燃性素材で出来ているので、火災時に延焼を防ぐためにVW−1の規格を有したコードまたはケーブルであることが好ましい。
また、被覆層に複数の機能を付与させるために、さらに様々な機能を有する被覆を積層させてもよい。例えば、前述の難燃化以外に、外部からの光の入射によるノイズ防止および識別のための着色や、帯電防止、耐摩耗性等機械的物性の付与を被覆層に添加物を配合するなどで行うことができる。
このとき、これらの熱可塑性樹脂に着色剤などの機能性を付与する素材を安定して製造するために、ベースレジンに機能性を付与する難燃性物質を配合したマスターバッチ(master batch)を用いることができる。マスターバッチとは、機能性添加剤を高濃度として樹脂に混合し混練したものである。マスターバッチを用いることで、被覆用の素材をその都度混合混練して作製するよりも、既に高濃度で分散しているマスターバッチを配合することで容易に分散状態とすることができ、さらに安定した品質を提供することができる。添加剤はバルク樹脂と混練させるため、熱に対して安定な無機化合物を選択することが多く、その機能性としては、帯電防止のための導電性物質、難燃性物質、機械特性付与のための耐熱性単繊維やウィスカー、着色用の染料や顔料などが挙げられ、特に添加剤としては着色剤を用いる場合にマスターバッチが用いられる事が多い。またマスターバッチを作成する際に高濃度で分散させるため、さらに分散剤や滑剤を添加したり、添加剤を改質したりして製造されることもある。
用いられる添加剤としての無機微粒子は粒度の細かなものが好ましい。特に素線と接する最内層やハンドリング時に接触する最外層は粗い粒子が混入していると、光ファイバ素線を傷つけたり、作業性が悪化したりするので好ましくない。マスターバッチのベースレジンとしては、エチレン,プロピレンあるいはα−オレフィンの重合体などの前述の熱可塑性樹脂が挙げられ、エチレンの単独重合体、エチレン−α−オレフィンの共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等を好ましく用いることができる。
添加剤として具体的には限定されるものではないが、例えば導電性物質としては錫や亜鉛合金粉や銀等の貴金属微粒子、難燃性物質としては水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、機械特性付与のためにはアラミド繊維の単繊維や無機化合物のウィスカーなどが挙げられ、着色の顔料としては、カーボンブラック,酸化チタン,酸化ジルコニウムなどが好ましく用いられる。カーボンブラックは、低コストであり、光ファイバ用被覆材として用いる場合に、着色以外に制電性も有しているので静電気を帯びにくくなる、近赤外域に吸収を持つので外乱光の遮閉性に富むうえ、曲げなどで光ファイバの外部へ放出された光が再度戻ってくる事を抑制するなど有利な点が多く、特に好ましい。
マスターバッチ中に含まれる添加剤の濃度は30.0重量%以下の範囲内であり、好ましくは5重量%以上20.0重量%以下の範囲内であり、更に好ましくは10.0重量%以上、15.0重量%以下の範囲内である。添加剤があまり少ないとマスターバッチとしての効果がなく、30重量%を超えて含有しているとマスターバッチが脆くなったり、分散性が低下したりする。
マスターバッチとバルク樹脂を混合して得られるポリマー中に含まれる好ましい添加剤の濃度は0.10重量%以上10.0重量%以下であり、より好ましくは0.15重量%以上5.0重量%以下であり、0.20重量%以上、3.0重量%以下であることが更に好ましい。0.05重量%未満であると実質的に添加剤の添加効果が発現しない、10重量を超えると、樹脂の流動性や靭性が損なわれ、被覆中に樹脂切れや外径変動等のトラブ
ルが発生する。
また、熱可塑性樹脂及びマスターバッチの分子量(例えば、数平均分子量,重量平均分子量など),分子量分布,融点,メルトフローレートなどは特に限定されるものではない。メルトフローレートは、熱可塑性プラスチックの流れ試験方法(JIS K 7210 1916)により得られるメルトフローレート(MFR)が、樹脂の流動性の指標となる。MFRは、値が近い方が押し出しが均一になる。
バルク樹脂とマスターバッチとの樹脂温度が異なると、押出機内の流動が不均一になる(スクリューで押し出す量が変動する)ため、吐出変動が大きくなり、被覆後の外径も変動してしまう。そのためこれら樹脂の融点、バルク樹脂融点Ta(℃)とマスターバッチ融点Tb(℃)との温度差が小さい方が好ましい。
マスターバッチを用いる場合、可塑性樹脂の融点Ta(℃)とマスターバッチの融点Tb(℃)との差は|Ta−Tb|℃≦25℃とすることが好ましく、より好ましくは|Ta−Tb|℃≦10℃であり、最も好ましくは|Ta−Tb|℃≦5℃である。Taの方がTbよりも20℃より大きいと、熱可塑性樹脂の溶融は進むが、マスターバッチの溶融が進行しないため被覆層の形成が困難となる。また、20℃より差が大きいと、熱可塑性樹脂あるいはマスターバッチを溶解させるために高温とする必要が生じる。この場合に、マスターバッチを構成しているベースレンジ(ベース樹脂)の分解が生じるおそれがある。
また、熱可塑性樹脂のメルトフローレートM1(g/10min)とマスターバッチのメルトフローレートM2(g/10min)との比を
(1/4)≦(M2/M1)≦(4/1)とすることが好ましく、より好ましくは
(1/2)≦(M2/M1)≦(2/1)であり、最も好ましくは
(1/1.5)≦(M2/M1)≦(1.5/1)である。
1/4よりも小さい場合あるいは、4/1よりも比が大きい場合には、熱可塑性樹脂とマスターバッチとの相溶性が劣る被覆材となり、均一な被覆層の形成が困難となる。それにより、添加剤の分散に問題が生じたり、被覆層の可撓性が失われたりするおそれがある。
被覆層の機械特性などと製造適性とを鑑みて、被覆材中の有色微粒子の含有量x(wt%)を
0.05≦x(wt%)≦20とすることが好ましく、より好ましくは
0.07≦x(wt%)≦10であり、最も好ましくは
0.1≦x(wt%)≦5である。
0.05wt%より少ないと添加剤の機能が十分発現しないおそれがある。また、20wt%を超えると、被覆層のポリマーの可撓性が失われるおそれがある。
上記の層を構成する樹脂への添加剤による機能性の付与のほかに、吸湿を抑制するためのバリア層や水分を除去するための吸湿材料、例えば吸湿テープや吸湿ジェルを被覆層内や被覆層間に有することができ、また可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層等の緩衝材、剛性を向上させるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂に含有すると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。その他に保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。
また、プラスチック光ケーブルの形状は使用形態によって、素線またはプラスチック光ファイバコードを同心円上にまとめた集合型のものや、一列に並べたテープ型のもの、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめたものなど用途に応じてその使用形態が選ばれる。これらの一例として図47〜56のような構成のケーブルを作製できる。
プラスチック光ファイバ素線を用いて構成されるプラスチック光ファイバケーブル(以下、ケーブルと称する)の形態を示す。なお、図示されているものに限定される訳ではない。
図47(A)に示されているケーブル800は素線(コアとクラッドとから形成されている)801の外周面を覆うようにして被覆層802が形成されている。なお、被覆層形成用材料としては前記化合物(例えば、ポリエチレンなど)が好ましく用いられる。図47(B)のケーブル810は、素線811の外周面に被覆層812が形成されている。さらに、その外周面にケーブル810の補強用に抗張力繊維(例えば、アラミド繊維など)813が配置され、その外周面にさらに被覆層(以下、2次被覆層と称する)814が形成されている。図47(C)のケーブル820は、素線821の外周面に被覆層822が形成されている。さらに、素線823の外周面に被覆層824が形成されている。そして、これらは所望の位置に配置されて2次被覆層825が形成されて2芯型のケーブル820となっている。図47(D)のケーブル830は素線831の外周面に被覆層832が形成され、素線833の外周面に被覆層834が形成されている。さらに、ケーブル830の形態を所望のものに保持するための線材(例えば、束ねたアラミド繊維や鋼材など)835,836と共に所望の位置に配置されて2次被覆層837が形成されて2芯型ケーブル830となっている。
図47(E)のケーブル840は、素線841の外周面に被覆層842が形成され、素線843の外周面に被覆層844が形成されている。更に線材845と併せて所望の位置に配置されて2次被覆層846が形成されている2芯型ケーブル840となっている。図47(F)のケーブル850は素線851の外周面に被覆層852が形成されている。さらに素線853,855,857の外周面にもそれぞれ被覆層854,856,858が形成されている。被覆層が形成されている4本の素線851,853,855,857が所望の位置に配置されて2次被覆層859が形成されて、4芯型ケーブル850となっている。図47(G)のケーブル860のように横断面が略長方形でないケーブルで合っても良い。素線861の外周面に被覆層862が形成され、素線863の外周面に被覆層864が形成されている。そして、これらが所望の位置に配置されて2次被覆層865が形成され、2芯型ケーブル860となっている。
図48にケーブル870の横断面図を示す。素線871の外周面を覆うように被覆層872が形成されてプラスチック光ファイバコード(以下、コードと称する)873が形成されている。同様の構成のコード874,875,875,876,877,878,879,880が用いられている。線材881を中心にこれらコード8873〜880が外周部に配置され、押え巻882で束ねられている。なお、押え巻882内部の隙間には緩衝材(例えば、発泡樹脂など)883が充填されている。押え巻882外周面にはラップシース884が設けられていることが好ましい。
図49(A)のケーブル890は、素線891の外周面に空隙892を有して被覆層893が形成されている。この形態をルース型被覆と称する。図49(B)のケーブル900は素線901の外周面に空隙902を有し、被覆層903が形成されている。被覆層903の外周面に抗張力繊維904が配置され、それを覆うように2次被覆層905が形成されている。これにより機械的強度に優れるケーブル900となっている。図49(C)のケーブル910は、素線911の外周面に被覆層912が形成されている。その外周には空隙913を有して2次被覆層914が形成されている。このような形態のルース型被覆ケーブル910は、衝撃の緩和などの点で優れている。図49(D)のケーブル920は、素線921の外周面に空隙922を有して被覆層923が形成されている。素線924も同様に空隙925を有して被覆層926が形成されている。これら素線921,924は所望の位置に配置されて2次被覆層927が形成されて2芯型ケーブル920となっている。
図49(E)のケーブル930は、素線931の外周面に空隙932を有して被覆層933が形成されている。また、素線934の外周面に空隙935を有して被覆層936が形成されている。これら素線931,934と線材937,938とが所望の位置に配置されて2次被覆層939が形成されて機械的強度に優れる2芯型ケーブル930となっている。図49(F)のケーブル950は素線951の外周面に空隙952を有して被覆層953が形成されている。また、素線954の外周面に空隙955を有して被覆層956が形成されている。これら素線951,954と線材957とが所望の位置に配置されて2次被覆層958が形成されて2芯型ケーブル950となっている。図49(G)のケーブル960は素線961の外周面に空隙962を有して被覆層963が形成され、コード964となっている。また、コード965,966,967も同様の形態である。これらコード964〜967が所望の位置に配置されるようにして2次被覆層968が形成され、4芯型ケーブル960となっている。ルース型被覆の場合も、図49(H)のケーブル97のように横断面が略長方形でないケーブルであっても良い。素線971の外周面に空隙972を有して被覆層973が形成され、素線974の外周面に空隙975を有して被覆層976が形成されている。そして、これらが所望の位置に配置されて2次被覆層977が形成され、ルース型被覆の2芯型ケーブル970となっている。
図50(I)のケーブル980は、素線981の外周面に空隙982を有している。また、素線983の外周面にも空隙984を有している。そして、これら空隙982,984を有しているまま被覆層985を形成してルース型被覆の2芯型ケーブル980となっている。ケーブル980の横断面における空隙982,984は略正方形の形状である。このような形態のケーブル980は、衝撃の緩和の点で有利である。図50(J)のケーブル990は素線991の外周面に空隙992を有しており、素線993の外周面にも空隙994を有している。これら素線991,993と線材995,996とが所望の位置となるように被覆層997が形成されてケーブル990となっている。図50(K)に示すようにケーブル1000の横断面は略長方形に限定されるものではない。素線1001の外周面に空隙1002を有しており、素線1003の外周面に空隙1004を有している。そして、これら素線1001,1003と線材1005,1006とがその横断面における外周が略楕円形となるように被覆層1007が形成されている。
図50(L)のケーブル1010は、素線1011,1012の外周面に空隙1013を有している。そして、素線1011,1012と線材1014,1015とが所望の位置に配置されて被覆層1016が形成されている。なお、被覆層1016の横断面の形状は略楕円形状である。図50(M)のケーブル1020は素線1021の外周面に空隙1022を有して被覆層1023が形成されている。さらに被覆層1023の外周面に2次被覆層1024が形成されている。素線1025の外周面にも空隙1026を有しており、被覆層1027,2次被覆層1028が形成されている。これら素線1021,1025は所望の位置に配置されて3次被覆層1029が形成されている。図50(N)のケーブル1040は素線1041の外周面に空隙1042を有しており、被覆層1043が形成されている。本例では、横断面における被覆層1043の形状は略正方形である。また、素線1044の外周面に空隙1045を有しており被覆層1046が形成されている。素線1041,1044と線材1047,1048とが所望の位置となるように2次被覆層1049が形成されている。
図51にケーブル1050の横断面を示す。素線1051の外周面に空隙1052を有しており被覆層1053が形成されてコード1054となっている。コード1055,1056,1057,1058,1059,1060,1061も同様の形態である。線材1062を中心とし、その外周にコード1054〜1061が配置されている。線材1062とコード1054〜1061の間及びコード1054〜1061の外周部には緩衝材(例えば、アラミド繊維など)1063が配置されており押え巻1064により束ねられている。押え巻1064の外周面にはラップシース1065が設けられている。
図52(a)のケーブル1070は素線1071の外周面に被覆層1072が形成されている。また、素線1073の外周面にも被覆層1074が形成されている。素線1071,1073と抗張力線(例えば、アラミド繊維や鋼線など)1075,1076が所望の位置に配置され2次被覆層1077が形成されている。図50(b)のケーブル1080も同様に素線1081の外周面に被覆層1082が形成されている。また、素線1083の外周面にも被覆層1084が形成されている。素線1081,1083と抗張力線1085,1086とが所望の位置に配置されて2次被覆層1087が形成されている。図52(c)のケーブル1090は素線1091の外周面に被覆層1092が形成されている。また、素線1093の外周面にも被覆層1094が形成されている。素線1091,1093と線材1095,1096とが所望の位置に配置されて2次被覆層1097が形成されている。図52に示されているように素線の外径が異なっていても、被覆層の厚みを調整することで、外形が略一定のケーブルを得ることができる。
図53(a)に示されているケーブル1100は素線1101の外周面に被覆層1102が形成されている。さらに、その外周面に2次被覆層1103が形成されている。また、素線1104の外周面に被覆層1105が形成され、さらに外周面に2次被覆層1106が形成されている。これら素線1101,1104を両側に配置して中央部に抗張力線(例えば,アラミド繊維や鋼線など)1107を配置した形態で3次被覆層により被覆層を形成してケーブル1100として形成されている。
図53(b)に示されているケーブル1110は抗張力線(例えば、FRP(fiber reinforced plastics)抗張力線で外径0.45mm)1111の外周面に被覆層1112が形成されている。さらに、その外周面に2次被覆層1113が形成されている。この2次被覆層1113の外形は例えば、5mmとする例が挙げられる。また、素線1114の外周面に被覆層1115が形成され、さらに外周面に2次被覆層1116が形成されている。素線1117の外周面に被覆層1118が形成され、さらにその外周面に2次被覆層1119が形成されている。抗張力線1112を中心部に配置し、その両端に素線1114,1117を配置して、3次被覆層(例えば、PVCシース)1120が、その横断面が略楕円形状となるように形成されている。図から明らかなように、抗張力線111の2次被覆層1112の外径と3次被覆層1120の短軸の径とは略同一である。
図53(c)に示されているケーブル1130は抗張力線1131の外周面に被覆層1132が形成され、さらにその外周面に2次被覆層1133が形成されている。また、素線1134の外周面に被覆層1135が形成され、さらにその外周面に2次被覆層1136が形成されている。また、素線1137の外周面にも被覆層1138が形成され、さらにその外周面に2次被覆層1139が形成されている。そして、抗張力線1131を中心部に配置して、その両側に素線1134,1137が配置された形態で3次被覆層1140が形成されている。図から明らかなように、抗張力線1131の2次被覆層1133の外周面が露出し、それ以外の箇所はその横断面が略平行(例えば、幅2.2mm)に形成されている。
図53(d)のケーブル1150は、抗張力線1151の外周面に被覆層1152が形成され、さらにその外周面に被覆層1152、2次被覆層1153が形成されている。また、素線1154の外周面には被覆層1155,2次被覆層1156,3次被覆層1157が形成されている。そして、素線1158の外周面にも被覆層1159,2次被覆層1160,3次被覆層1161が形成されている。そして、抗張力線1151の2次被覆層1153と素線1154の3次被覆層1157と素線1158の3次被覆層1161とが接続されている。接続が容易なように、2次被覆層1153や、3次被覆層1157,1161は被覆が除去し易い素材や厚みで形成されていることが好ましい。
図54(a)のケーブル1170は、素線1171の外周面に被覆層1172,2次被覆層1173,3次被覆層1173が形成されている。また、素線1175の外周面に被覆層1176,2次被覆層1177,3次被覆層1178が形成されている。抗張力線1179の外周面に被覆層1180が形成されている。図から明らかなように抗張力線1179の被覆層1180の横断面は略6角形状となっている。そして、抗張力線1179が中央部でその両側に素線1171,1175が配置されて接続されている。
図54(b)のケーブル1190は、素線1191の外周面に被覆層1192,2次被覆層1193,3次被覆層1194が形成されている。また、素線1195の外周面に被覆層1196,2次被覆層1197,3次被覆層1198が形成されている。また、抗張力線1199の外周面に被覆層1200が形成され、さらにその外周面に2次被覆層1201が形成されている。図から明らかなように2次被覆層1201の横断面は略楕円形に形成されている。そして、抗張力線1199を中心部にその両側に素線1192,1195が配置されるように接続されている。図54(c)のケーブル1210は、素線1211の外周面に被覆層1212,2次被覆層1213,3次被覆層1214が形成されている。また、素線1215の外周面に被覆層1216,2次被覆層1217,3次被覆層1218が形成されている。抗張力線1219の外周面に被覆層1220,2次被覆層1221が形成されている。抗張力線1219の2次被覆層1221の横断面形状は略円形であり、その外径は素線1211,1215の3次被覆層1214,1218の外径よりも大きく形成されている。そして、中心部に抗張力線1219が配置され、その両側に素線1211,1215が配置されるように接続されている。
図55(a)のケーブル1230は、素線1231の外周面に被覆層1232,2次被覆層1233,3次被覆層1234が形成されている。また、素線1235の外周面に被覆層1236,2次被覆層1237,3次被覆層1238が形成されている。抗張力線1239の外周面に被覆層1240が形成されている。抗張力線1239の被覆層1240の横断面形状は略台形である。そして、中心部に抗張力線1239が配置され、その両側に素線1231,1235が配置されるように接続されている。ケーブル1100,1110,1130,1150,1170,1190,1210,1230で示されているように中央部に配置されている抗張力線の被覆層の層数、その横断面形状は特に限定されるものでなく、図示されているもの以外であっても良い。
また、ケーブルの一態様としては中心部に抗張力線を配置し、その両側に素線が配置されているものに限定される訳ではない。図55(b)のケーブル1250は素線1251の外周面に被覆層1252,2次被覆層1253,3次被覆層1254が形成されてコード1255となっている。また、他のコード1256,1257,1258も同様の形態である。また、抗張力線1259に被覆層1260が形成され、抗張力線1261,1263にもそれぞれ被覆層1262,1264が形成されている。図から明らかなようにコード1255〜1258と被覆層が形成されている抗張力線とが交互に配置されてケーブル1250が構成されている。
図56にケーブル1270の一態様を示す。素線1271の外周面には被覆層1272,2次被覆層1273が形成されてコード1274となっている。また、素線1275の外周面にも被覆層1276,2次被覆層1277が形成されてコード1278となっている。これらコード1274,1278は連結部1279により接続され、2芯型のケーブル1270として構成されている。
製造工程において発生した欠陥や傷を取り除くため延伸終了後にプラスチック光ファイバ素線に対して検査工程と欠陥除去を設けることが好ましい。検査工程は前述の通りであり、得られた欠陥情報に基づいて不良部位を除去する方法について述べる。欠陥除去工程は素線や被覆工程で検出された都度行うこともできるが、欠陥除去された断片は連続生産を行いにくい場合があり生産性に劣るため、検査結果を利用して生産性を極力落とさない欠陥除去方法について記述する。
図43は、素線717から欠陥部分を取り除くための巻替工程を行う巻替ライン760を示している。巻替ライン760は、上流側から下流側へ向かって順に、素線717を送り出す送出機761、切断機762、接合部763、マーキング部764、及び良品巻取機765を備えている。また、この巻替ライン760には、全体を制御するコントローラ766が設けられている。
送出機761には、素線717をロール状にした素線ロール770が取り付けられこの素線ロール770から引き出した素線717を切断機762へ向かって送り出す。送出機761から切断機762の間には、複数のガイドプーリ771、ダンサローラ772、及びキャプスタンローラ773、フィードローラ774、ニップローラ776が設けられており、素線717を切断機762へガイドする。また、ダンサプーリ772は、上下に移動自在に設けられ、キャプスタンローラ773、フィードローラ774は、図示しないモータにより回転駆動される。
フィードローラ774は、ニップローラ776とともに素線717を挟み込む。そして、キャプスタンローラ773及びフィードローラ774が回転することによって下流側の切断機762及び接合部763に向かって素線717が送り込まれる。また、キャプスタンローラ773には、エンコーダ777が設けられており、このエンコーダ777からの信号は測長情報としてコントローラ766に送られる。コントローラ766は、エンコーダ777の信号に基づき素線717の先端からの測長データを求める。
コントローラ766には、上述の延伸工程で検出された素線717の欠陥情報が転送されており、この欠陥情報に基づいて切断機762を作動させて素線717の欠陥部位を除去する。すなわち、エンコーダ777の信号により測長される素線717の位置が欠陥部位の位置データに対応する位置に到達したとき、コントローラ766は、切断機762の位置まで素線717を所定量送りし、切断機762を動作させて素線717を切断する。これによって、素線717は、欠陥部位の直前で切断されるので、切断機762の下流側へは、欠陥部位を除いた素線717のみが送り出される。
また切断機762とフィードローラ774との間には、不良品巻取機778が設けられている。上述したように切断機762によって素線717が欠陥部位の直前で切断されたとき、その欠陥部位を含む素線717(図中点線で示す)を不良品巻取機778に巻き取らせるように、図示しないガイドローラ、又は作業者の手によって素線717を不良品巻取機778にガイドする。
不良品巻取機778による巻き取りが開始した後、素線717の欠陥部位がフィードローラ774の位置を通過すると、キャプスタンローラ773及びフィードローラ774が停止する。このとき、図示しないガイドローラ又は作業者の手によって素線717を切断機762及び接合部763の方へガイドする。そして切断機762へ素線717の欠陥部位後端の位置が到達すると切断機が動作して素線717が切断される。これによって素線717の欠陥部位が除去され、その欠陥部位のみが不良品巻取機778に巻き取られることになる。欠陥部位が除去された後の素線717は、再び接合部763へ送り込まれる。接合部763では、欠陥部位が除去された素線717のうち、その欠陥部位の下流側素線717aと、上流側素線717bとが接合される。
巻取りボビン780は、例えば、図46に示すように、円筒状の胴体部481と、この胴体部781の両端部に位置する一対の鍔部材782a,782bと、これら鍔部材782a,782bを互いに連結し、胴体部781を挟み込んで固定するためのボルト783とからなる。胴体部781は、厚紙を筒状に形成した紙管の表面にポリウレタン樹脂をコーティングして形成されている。
上記構成の作用について以下に説明する。巻替ライン760を稼動させるときには、巻取機761に素線ロール770をセットした後、素線717をフィードローラ774の位置まで引き出してフィードローラ774及びニップローラ776にニップさせて各ローラ及びエンコーダ777をオン状態にする。上述したように、切断機762及び不良品巻取機778で素線717から欠陥部位を除去し、且つ除去した後の素線717を接合部763で1本に接合しているので、送出機761から送り出された素線717は一本に繋がって巻取機765に送られ、ボビン780に巻き取られる。このように、巻替ライン760では、1回の巻取工程において使用するボビン780を1つだけ備えていればよいので、巻取ボビンを配置するスペースや、作業効率の向上を図ることが可能となり、装置全体のローコスト化を図ることができる。さらに、被覆工程を経て製造された光ファイバコードは、確実に欠陥が除去されるので品質の高いプラスチック光ファイバ製品を製造することができる。
上記実施形態では、素線の製造工程の中に巻替工程を設定し、この巻替工程を行う巻替ラインを設け、このラインの中で、素線の欠陥部位の除去及び接合をしながら、良品の素線を巻取ボビンに巻き取っているが、実施形態はこれに限らず、素線の延伸工程や、被覆工程を行う延伸ラインや被覆ラインの中に、上記実施形態と同様の欠陥部位の除去及び接合を行う工程を組み込むようにしてもよい。なお、被覆ラインの中に上記実施形態のような欠陥部位の除去及び接合を行う工程を組み込んだ場合、接合部位にマーキングを施すマーキング手段としては、アルミテープなどの金属テープを貼着する貼付手段を設けるとともに、被覆工程、又は被覆工程より後の工程のラインには、金属検出手段を設け、前記金属テープを検出するようにすればよい。これによって、被覆で素線が隠されてしまった場合でも、金属テープによるマーキングを認識することができる。あるいは、2次被覆を行う光ファイバコードを製造する場合、1次被覆工程と2次被覆工程との間に上記実施形態のような巻替工程を設定し、欠陥部位の除去及び接合を行うようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、光照明器及びラインセンサカメラ、又は投光器及び受光器からなる欠陥検出部を用いて欠陥を検出しているが、実施形態はこれに限らず、周知の静電容量式センサを用いて、連続的に搬送される素線の静電容量から、所定の長さ毎の質量を算出して、その質量変動から素線の欠陥を検出するようにしてもよい。あるいは、レーザ光などの投光器と、この投光器からの光を受光する受光器とを素線の間に挟んで且つ素線の直径と平行に配置し、素線の直径を検出してその直径の変動から素線の欠陥を検出するようにしてもよい。
配線時の施工性や使用時のハンドリング性を考慮して複数の素線やコードを連結させて1本のケーブルにすることが好ましい。まとめられた多心プラスチック光ファイバケーブルはコネクタを取り付けて使用される。また、まとめられるものは素線に限らずメタルケーブルを用いても良い。メタルケーブルはデータ通信用でもパワー用でも良く、高強度のメタルケーブルを含めることで抗張力繊維などの代用もできる。
多心プラスチック光ケーブルの形状は使用形態によって、素線またはプラスチック光ファイバコードを同心円上にまとめた集合型のものや、一列に並べたテープ型のもの、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめたものなど用途に応じてその使用形態が選ばれる。製造方法としては、実用新案登録第2523043号公報の様に複数の線を接する様に配置させて被覆同士を接着または溶着させてまとめたり、特開平8−43694号公報、特開平11−295572号公報、特開2004−240122号公報の様に複数の素線やコードを集線してダイスに導入して外周を溶融樹脂などで覆って外被としたり、特開2002−202444号公報の様にスロットを有する長尺ロッドにはめ込んで外周を溶融樹脂などで被覆して、まとめることもできる。外被として溶融樹脂を用いる場合の素材としては前述の被覆と同じ素材を好ましく用いることができ、その他の添加剤や構造材も同様である。なお、抗張力繊維等を用いる場合は繊維状でも良いが、撚ったものや樹脂で固めたものであると線状体としてハンドリング性が良くなり、ケーブル状にまとめた後も偏在しないので好ましい。また、最外層はコネクタ取り付けの際に加工がし易いように、素材や層厚を選択する事が好ましい。単心のプラスチック光ファイバコードの最外層の接合によって連結している態様の場合は加工時に各線を取り扱い易いように引き裂き強度を0.1N〜10Nに設定する事が好ましい。
また、これらの形状以外に特開平8−271771号公報や特開2003−156666号公報の様に引き込みや架線を行い易いように別途支持線部を設けた形状をとってもよい。
この様にして得られたプラスチック光ファイバケーブルは、JIS C 6851などに定められた特性のほか、以下の様な特性があることが好ましい。JIS C 6836に規定される引張強度が、500μmφの素線に1.5mmの被覆を施した単心線では20N以上、2.2mmの厚みの被覆を施した750μmφのものでは40N以上であり、さらに2心にした500μmφの素線では45N以上、750μmφ素線では90N以上のものが得られる。さらに、圧壊に対する耐性はJIS C 6836 6.2による測定方法で損失増加が0.2dB以下、衝撃に対する耐性はJIS C 6836 6.3による測定方法で損失増加0.2dB以下、曲げに対する耐性はJIS C 6836 6.4.1及び6.4.2による測定方法で繰り返し、コード曲げによる損失増加が0.2dB以下、ねじりに対する耐性はJIS C 6836 6.5による測定方法で損失増加が0.2dB以下と良好なものが得られる。
なお、これらのケーブルを作成する際に、特開2001−166172号公報、特開2004−191925号公報、特願2003−294509号の様に異なる種類のファイバを用いても良いが、実開平5−57722号公報や特開2002−140942号公報の様に電力線と一緒にまとめたケーブルを作製してもよい。
上述のようにして得られたプラスチック光ファイバコードやプラスチック光ファイバケーブルは発光・受光素子または光ファイバ間の接続を行うため端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタを用いる事で、接続時の位置関係を崩すことなく接続、切離しが容易となる。コネクタとしては一般に知られている、F04型〜F08型(SC型、PN型などを含む)、SMA型、SMI型、その他のF01型〜F16型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
これらのコネクタはプラグ−アダプタ−プラグ結合方式やプラグ−レセプタクル結合方式で接続され、心線の数や、締結構造、形状寸法で細分される。プラグコネクタにはフェルールが備え付けてあり、このフェルールに光ファイバを挿入して接着剤等でファイバを固定し、フェルールを受け入れるスリーブを備えたレセプタクル(またはアダプタ)コネクタと接続対象との軸、距離、角度を位置決めさせる。位置決めはプラスチック光ファイバの様な口径の大きいものでは比較的影響は少ないものの、接続する双方の相対関係が外れてしまうことで損失が発生してしまうため精度良く行われる事が好ましい。
コード、ケーブルのコネクタ取り付けは、比較的容易であり、必要な長さに切り出したプラスチック光ファイバの被覆を除去して素線を取り出す。取り出した素線をフェルールに挿入して素線とフェルールが固定されるように接着剤で固定したり、心線をかしめたりすることによって固定することができる。このとき、端面に傷、傾き、粗面などがあるとそこで損失が発生してしまうため端面を平滑にしておくことが好ましい。後述のように平滑にするには研磨したり、ホットプレートで溶融させて平滑面で成型したり、鋭利な刃物で切断する、溶剤で溶かして成型するなどの方法がある。以上のフェルールの取り付け後、フェルールを収納するプラグハウジングなどを取り付けてプラグコネクタとなる。
以上のコネクタを用いる事によって光出射対象との受光対象との軸と角度のずれは大幅に解消される。ただし、光出射対象との受光対象との距離関係を設定する必要がある。一方がプラスチック光ファイバである場合には、体積膨張による伸張を考慮して適度な距離を保つ場合がある。
光出射対象との受光対象との距離は主に光出射対象や受光対象との開口数、出射部位や受光部位の面積などを考慮する必要がある。特に大部分の出射光が受光部位に届かない場合は、出射光をコリメートする光学系を配置するので、それらの配置するための空間を要する。
また、光学系以外にファイバ端面の形状等の変化や、光学部材と組み合わせることにより光のコリメートや出射光の拡散を抑えることも検討されている。
例えば、特開平10−268146号公報の様に先端を広げる加工や、特開平5−107427号公報、特開平8−262229号公報の様に先端を球面加工することでレンズの効果を持たせることもできる。これらの加工は前述の様に、特開2001−311840号公報や特開2002−350654号公報の様にホットプレートに先端を当てることによって、軟化した先端部分に型を使って成型することで容易に加工する方法や、研磨によって作ることができる。これらは、「小池康博、宮田清蔵(2000)、プラスチックオプティカルファイバの基礎と実際、エヌ・ティー・エス社」を参考することができる。また、特開平8−220378号公報の様にレンズを取り付けるものや、特開2002−350654号公報の様に先端を細くテーパー状に加工してその先端にレンズを取り付けるもの、さらには反射防止膜を取り付けるものなど先端に他の光学部材を取り付けることもできる。
なお、プラスチック光ファイバが屈折率分布を有するインナーコアとその周囲の実質的に屈折率分布を有しないアウターコアからなる構造の場合、特願2004−093274号や特願2004−242923号に記載のように、出射光が出射面近傍で拡散せずに放射される。前記インナーコアの屈折率分布係数gが1.5≦g≦4.0の範囲内であり、また、前記アウターコア外径は、250μm≦(アウターコア外径)≦1000μmの範囲内であり、かつ、インナーコアとアウターコアとの外径比は、0.67≦(インナーコア外径/アウターコア外径)≦0.87であるとプラスチック光ファイバから出射された光は、ある一定の距離(約300〜1000μm)を平行ビームで空間を伝搬し、その後ある一定の広がり角度をもって空間に放射される。従って、上述したような平行ビーム伝搬領域では、平行ビーム径より大きな開口径をもつ受光器との光結合効率は、光学レンズなどの集光光学デバイスを用いなくとも略100%となる。ファイバ端面と受光素子間に集光機能を有する光学要素がある場合のように端面位置が変化して光学要素の集光性能が変化することが無いので、位置による影響が少なくなり、一定領域に光が拡散しないためコリメートする光学系の設計や構成が簡素化でき、着脱の容易なコネクタを提供することができるため好ましい。なお、プラスチック光ファイバ素線端面と受光素子との間には集光機能の無い光学要素を組み込むことができる。例えば、光量や波長を調節するフィルタや、ファイバ端面や受光素子の空気界面でのフレネル損失を防止するため空気より高い屈折率を有する素材(マッチングオイルやシリコーンゲルパッドなど)を充填してもよい。
[システム]
高品質のプラスチック光ファイバ素線は主に光通信用途として用いられる。光通信用途として利用する際には発光素子を具備する光送信手段、光導波路であるプラスチック光ファイバ、受光素子を具備する光受信手段を少なくとも有する。
発光素子は送出する電気信号を光信号に変えて、信号光を出射するデバイスである。通信用途としては、安定した一定の波長で、コヒーレンス長が長く発光できる光源が求められる。
この様な光を取り出すには各種レーザーや半導体発光デバイスを用いることが好ましい。特に、発光波長のコントロール、安定性、耐久性、デバイスの小型化、消費エネルギー好ましくは半導体レーザーや発光ダイオードであり、もっとも好ましくは半導体レーザーを用いることが好ましい。
レーザーダイオード(LD)は共振器内で誘導放出によって増幅された光を放出する発光素子であり、スペクトル幅が狭く、高い指向性を有したコヒーレント光を発振することが可能な発光素子である。さらに他の光源種と比して発光部の面積が狭く、出射NAが小さいので導波路に光を入れ易い。また、これらLDのうち、レーザー基板面と垂直な方向に出力を得るタイプのものを、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)といい、光の放射角(出射NA)が狭く、かつ、低電流動作が可能であるため好ましく用いることができる。さらに、へき開面から光を取り出すタイプのレーザーに比べてVCSELは2次元的な集積化が容易であるため、特開2003−152284号公報などに記載されている様にアレイ化したマルチスポット光源として用いることもできる。
上記のレーザーとは異なり活性層からの発光が誘導放出を伴わずに取り出されるものを発光ダイオード(LED)という。スペクトル幅、ビーム径、発光時の開口角がレーザーと比べて大きくなり、信号のパルスの立ち上がり時間がかかるために高速通信には不向きであるが、使用波長によっては光記録媒体用途に用いられている素子を転用することも可能であるため安価な装置構成をとることができ、さらに熱に強いため低速で短距離の用途において利用されている。また、コヒーレンシーやスペクトル幅の改善を目的として、光の取り出し部分に共振器を取り付けたRC(resonant cavity)−LEDを用いることによって、一般的なLEDに比べて高帯域のシステムを構築することができる。
これら発光素子で用いる波長は650nm、780nm、850nmであると、導波路を構成するポリマーのC−H結合などに起因する材料損失の抑制や、レイリー散乱が比較的小さいため、好ましく用いることができる。また、光源波長は導波路であるプラスチック光ファイバの物性に合わせて選択することもできる。例えば、重水素化ポリメタクリル酸メチルを導光部のポリマーマトリクスとした場合に、素材による光の吸収が790nm近傍で特に小さくなるため、この光源波長を用いる事で材料損失を限りなく低減させることが可能となる。なお、上記の信号光の波長は一点を示すものではなく、示した波長近傍の少なくとも±10nmの範囲内の信号光波長を示す。
受光器は発光素子から出射され導光部を経て素子に到達した光を再び電気信号に復元する機能を持つものである。代表的な受光器としてはPINフォトダイオードやアバランシェフォトダイオード(APD)の半導体からなる受光素子が挙げられる。特に後者のAPDは高コストとなってしまうが、光電子倍増によって感度の高い素子となっている。光ファイバから出射される信号光を感度よく受けるには、特開2001−305395号公報や特開2004−31574号公報に記載されているように、出射光のビーム径を含む様な大きさに受光素子を構成することが好ましい。大口径の光ファイバから出射される光を受けるには大面積の受光素子が必要となる場合があるが、1つの受光素子の面積を広げると暗電流が増え感度低下を招いたり、高速動作の阻害要因となるためアレイ化して複数の受光素子で受光したりする等の方法でビーム径と動作のバランスを取ることができる。
以上説明したプラスチック光ファイバ素線には、上述の発光素子や受光素子をはじめとして、光スイッチ、光アイソレータ、光集積回路、光送受信モジュールなど、種々の光部品を含む光信号処理装置等として組み合わされて用いられる。また、必要に応じて他の光ファイバなどと組み合わせてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスチックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」、IEICE TRANS. ELECTRON.,VOL.E84−C,No.3,MARCH 2001,p.339−344 「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3,No.6,2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものなどを参考にすることができる。前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線、車両や船舶などの内部配線、光端末とデジタル機器、デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LAN等をはじめとする、高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。以上の光伝送用途以外にも照明(導光)、エネルギー伝送、イルミネーション、センサ分野にも用いることができる。
短距離の光通信に用いられるプラスチック光ファイバの使用用途としては、装置内配線や屋内配線および短距離の屋外配線などの用途が考えられる。
装置内においては高い周波数で通信を行うため、電気回路による配線では各装置や回路の発生するノイズによって信号が影響を受けてしまう。これらの回路を光信号通信に置き換えることでノイズに強いシステムを組むことができ、回路の集積化を進めることができ装置の小型化につながる。これらは、既存の電気回路における光化のため、例えば特開平10−123350号公報、特開2002−90571号公報、特開2001−290055号公報等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号公報、特開2000−329962号公報、特開2001−74966号公報、特開2001−74968号公報、特開2001−318263号公報、特開2001−311840号公報等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号公報等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号公報、特開2001−305395号公報等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号公報等に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号公報等に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号公報等に記載の光伝送システム;特開2001−339554号公報、特開2001−339555号公報等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信や1対多、多対1の様ななどを使用した、より高度な光伝送システムを構築することができる。さらにプラスチック光ファイバは可撓性に優れるため複数の基板を接続する際に容易に立体的な配線を行うことができるため、回路や基盤のレイアウトが容易となる。
また、異なる装置間の通信用途として光通信システムを用いることができる。例えば一方の装置に送信機を備え、単数もしくは複数の装置に受信機を他方の装置に備えたものをプラスチック光ファイバで接続することで光通信が可能となる。これらの用途としては、データの高速伝送を必要とする情報端末や情報家電などの各情報機器間の接続や映像表示装置とデータのインターフェイス間の接続のように複数の装置から構成された装置間のデータ転送が挙げられる。さらに、1つの装置に送信機と受信器を備えたものをそれぞれ連結する事で双方向に通信することができる。このとき、送受信の帯域に合わせて導波路の種類を選択して組み合わせることや複数の光源波長を用いて多重化することによって伝送量を上げる、または送受信を1つの導波路で行うこともできる。さらに上述の技術を含んでなる中継機等を用いて特開2002−101044号公報等に記載の光信号伝達装置を組むことで1対他の送受信システムを組むことも可能である。
これらの装置がオフィスや家庭で用いられる場合は特にCD管やPF管を用いて壁や床の内部に配線して壁に前述のコネクタを備える事で情報機器を容易に接続して使用することができる。近年普及してきているFTTH(Fiber−To−The−Home)やCATVなどの屋内配線にも用いることができる。例えば、FTTHでは幹線系から来た信号がドロップ光ファイバ、ONU(Optical Network Unit)を経由して屋内光配線、各端末へと配信される。ONUから各端末の距離であればプラスチック光ファイバを伝送媒体として用いる事に伝送性能上の影響はないので、取り扱い性の高いプラスチック光ファイバを好ましく用いることができる。使用波長は幹線系における使用波長が850nmであればそのまま返還することなく用いることができるし、1.2〜1.7μmの赤外領域の波長であれば、ONUまたはその下流で波長変換を行うとよい。また、CATVの屋内配線部分に使う場合は上り信号の流合雑音を低減させることもでき、さらにバックボーンを光化したCATV(HFC:Hybrid Fiber and Coaxial)の場合はアクセス系の屋内部分を光化することで、全アクセス系の光化への切り替えを容易にすることが可能となる。なお、CATV等に用いる場合に、プラスチック光ファイバ内を導波する光はデジタル信号ではなく、アナログ変調された信号を使って送受信することもできる。
また、集合住宅の場合は共用部分に光収容設備を設け、同様にして各家庭に光配線で通信を行う事ができる。
以下に前述の実施の形態を例を挙げて具体的に説明するが、以下の参考例に示す材料の種類、それらの割合、操作などは、前述の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、実施の形態は以下に示す具体例に制限されるものではない。
なお、各例においては各製造工程は以下の環境下で行っている。クリーン度がパーティクルカウンターでクラス1000以下に制御され、温度と湿度はそれぞれ23±5℃、60±20%RHとなるように設定した屋内で行った。
[例1]
クラッドパイプの製造は温度が20℃、湿度が74%RHの環境下で行った。プラスチック成形機用洗浄剤リオクリン(東洋インキ社製)とアサクリン(旭化成社製)を用いて内部洗浄し、さらに分解洗浄を行って内部が洗浄された溶融押出装置(図5参照)41を用意した。装置の構成として、単軸スクリュー押出機(プラスチック工学研究所製,スクリュー径φ50mm)から、#100の金属焼結フィルタ、スパイダーダイを経由して押出された樹脂を、外径φ35mm(a=17.5mm)の内リップ、内径36.5mm(b=18.25mm)の外リップを備えた押出ダイに導入する様に配置し、押出ダイ出口42とサイジングダイ入口43との距離は、10mmとなるように設定した(図5参照)。
実験1では、超高分子体やゲル化樹脂を取り除き精製された高品質のPVDF(ポリフッ化ビニリデン;呉羽化学工業製KFポリマー#850:メルトフローレート20g/10min)をこの溶融押出装置41にて押出温度180℃に加熱溶融させ、スクリュー回転数8±0.5rpm、圧力変動が4.1〜4.2MPaと制御して吐出流量を510mm/秒でパイプ状に押出ダイス42から押出した。押出ダイス42の長さは、250mmのものを用い、ヒータは、長さが52mmであるバンドヒータを用いた。パイプの肉厚調整は押出ダイス42に取り付けられた8本の調整ネジ(図示しない)を用いて、樹脂流路となるクリアランスを2mm±0.2mmの範囲となるように粗調整した。また、微調整は、肉厚・外径測定器で測定された肉厚分布値からヒータの温度調整を行った。内径約φ20mmのサイジングダイ43を用いて外径φ20mm、内径φ18mm(厚みt1=1mm)のパイプとして引取速度(=e)1.0±0.1m/分で成形した。パイプ51を成形している間、ヒータの最高加熱温度は205℃であり、最低加熱温度は195℃であった(図5参照)。
続いて、サイジングダイ82で賦形されたクラッドパイプ51は冷却真空水槽内にて冷却水(温度3℃)85を霧状に噴霧し、サイジングダイ82外面及びクラッドパイプ51外面から冷却した。なお、冷却真空水槽(冷却装置)81の出口には硬度が25度の厚さ5mmのクロロプレンゴム製スポンジパッキン((株)イノアックコーポレーション製)87を2枚使用した。なお、パッキン(真空シール)87の通過孔は、24.8mmに形成されているものを用いた。また、排出口83の真空シールにも同じものを用いた。なお、冷却装置81の水槽内部出口に水を流しウォーターシールとして、内部の真空度を72.6kPa〜73.2kPaとした。冷却クラッドパイプ51の引取りは、肉厚・外径測定器でその肉厚、外径を測定しながら適宜引取速度の微調整を行い、外径が±100μm,肉厚が±20μmの範囲となるようにした。安定成形までに要した時間は、20分間であった。
得られたクラッドパイプ(パイプ)51にフィシュアイ等の外観上の異常はなく、そりは10mm以下と良好であった。パイプの任意の位置をサンプリングして割断したパイプの外周面をキーエンス社製デジタルマイクロスコープ、VH−8000にて500倍で観察した。外周面の粗さの評価はデジタルマイクロスコープの画像中の段々状のスジの大きさで、目視による評価を行ったところ、0.5ミクロン以上のスジの検出は見られなかった。この割断したパイプの内周面をキーエンス社製デジタルマイクロスコープ、VK−8500にて観察した。内面粗さは、キーエンス社製デジタルマイクロスコープ、VK−8500による評価を行ったところ、SRaで0.27〜0.33μmであった。
断面のパイプ肉厚分布を両球面のデジタルマイクロメーターにて8点測定した。測定結果は、平均肉厚値が0.495mm,最大肉厚値0.493mm,最小肉厚値0.497mm,偏肉値(最大肉厚値−最小肉厚値)は9〜13μmであった。また、偏差は0.05μmであった。前記結果から相対標準偏差((RSD)=偏差/平均肉厚×100(%))は10.1%となった。このパイプを905mmに切断して、クラッドパイプとして用いた。
クラッドパイプは洗浄し、パイプ状態でエタノールを内部に満たし10分静置後、80℃で一晩減圧乾燥を行って水分を除去してから、次工程で用いた。
(2)アウターコアの形成
重合禁止剤としてアルミニウムp−ニトロソフェニルヒドロキシアミンを100ppm含む重水素化メタクリル酸メチル(MMA−d8)モノマー500gに20gのモレキュラーシーブを投入して、2日間冷暗所にて静置して、水分や不純物の大部分を取り除いた。この粗精製したPMMAを乾燥による静電気が発生しない様に室温で湿度60%程度に調整した雰囲気下で精製作業を行った。前記メタクリル酸メチルモノマーはモレキュラーシーブをろ過にて取り除き、内面を洗浄、乾燥した容積が1リットルの容器に500g入れて73℃となるように加熱した。
このとき、蒸留の促進と酸素の除去のため、減圧量が大気圧から0.03MPaとなるように減圧し、その圧力を保つように窒素を1.7L/min流した。低沸点の不純分を考慮して、始めの蒸留分(以降、初留分という)が0.1kg得られたところで容器を切り替えた。この蒸留された精製分を0.85kg得られたところで減圧を止めて精製を終了した。
この精製した重水素化メタクリル酸メチルモノマーは、水分含有量250ppm、重合
禁止剤は検出されなかった。なお、この蒸留操作の初留分と残留分は回収し、再度蒸留して使った。
この精製したモノマーは遮光した密閉容器に入れ重合工程まで冷暗所に安置した。
(3)回転重合
以上の精製された重水素化メタクリル酸メチルモノマー203.7gと、重合開始剤としてのMAIB(商品名;V−601 和光純薬(株)製)(70℃での半減期時間:1時間)と、連鎖移動剤としてのn−ラウリルメルカプタンとを混合して重合性組成物を調製した。MAIBとしては、水分を200ppm以下に除去されたものを用い、MAIBとn−ラウリルメルカプタンとの重水素化メタクリル酸メチルに対する添加率は、それぞれ0.04モル%と0.2モル%とした。
この重合性組成物を容器に入れて栓をし、井内盛栄堂(株)社製の超音波洗浄装置USK−3(38000MHz、出力360W)を用いて、10分間超音波照射を行って、溶存気体の脱気を行った。その後、減圧濾過装置を用いて、0.1μmの四フッ化エチレン製メンブランフィルタでろ過を行った重合性組成物を、クラッドパイプの一端をテフロン(登録商標)栓で液漏れのない様に封じたクラッドパイプに静かに注液し、開口端をシールテープで封止した。このクラッドパイプを減圧装置を用いて内部が大気圧に対して0.02MPa低くなるように減圧し、前記超音波洗浄装置を用いて超音波処理を5分間クラッドパイプを水平にして脱気を行った。この処理を行った後、アウターコア液の溶存酸素量は、隔膜形ガルバニ電池式の酸素検知ユニット用いて測定し十分残留していない事を確認した。脱気されたクラッドパイプ内に対して重合性組成物が酸素の影響等を受けない様に、空間部分をアルゴンガスでパージしてテフロン(登録商標)栓で密閉した。
この密閉したパイプを、クラッドパイプの外径に対し1.5%だけ広い内径を持つステンレス管に挿入して、管内でパイプが動かないように栓をして固定後、回転重合装置の重合器本体に長手方向が水平となるようにセットし、500rpmで回転しながら60℃の雰囲気下で2時間加熱して重合反応を開始させた後、3000rpmで回転しながら60℃の雰囲気下で16時間加熱し、3000rpmで回転しながら90℃の雰囲気下で4時間加熱させる条件で重合を行った。このとき、回転する重合容器の近傍、具体的には1〜2cm離れたところに非接地型熱電対を設け、この熱電対による測定温度を、重合反応による温度としてみなした。そしてこの方法により測定された重合反応の発熱における温度ピーク(以降、発熱ピークと称する。)を求めた。例1においては、重合開始から約16時間経過したときに0.5〜1.0℃の発熱ピークが認められた。そして、これによりクラッドパイプの内面に重水素化ポリメタクリル酸メチルからなる層が形成されたと判断した。以下、この層をアウターコアと称する(図16参照)。
得られたアウターコア付きクラッドパイプの外観はパイプの変形、泡の発生、波打ち、ゆらぎ等の確認は認められなかった。また、得られたパイプを加熱し揮発成分から残存モノマー量0.1重量%以下を確認した。
(3)インナーコア
精製された重水素化メタクリル酸メチル82gと、重合開始剤としてMAIB(商品名;V−601 和光純薬(株)製)を重水素化メタクリル酸メチルに対する添加率が、0.04モル%となるように0.0698gと、連鎖移動剤としてのn−ラウリルメルカプタンを重水素化メタクリル酸メチルに対する添加率が、0.2モル%となるように0.3068gと、屈折率調整成分としての非重合性のジフェニルスルフィド(DPS)を重水素化メタクリル酸メチルに対する添加率が、7wt%となるように5.74gとなるように配合し、重合性組成物を調整した。
(3−1)回転
この重合性組成物をアウターコア付きクラッドパイプに入れて栓をし、アウターコア部製造と同様に、10分間超音波照射と、ろ過を行った重合性組成物を、アウターコア付きクラッドパイプの一端を開栓して静かに注液し、開口端をシールテープで封止した。このクラッドパイプを減圧装置により内部が大気圧に対して0.02MPa低くなるように減圧し、前記超音波洗浄装置を用いて超音波処理を10分間行い、クラッドパイプを脱気した。この処理を行った後、アウターコア液の溶存酸素量は、隔膜形ガルバニ電池式の酸素検知ユニット用いて測定し十分残留していない事を確認した。脱気されたクラッドパイプ内に対して重合性組成物が酸素の影響等を受けない様に、空間部分をアルゴンガスでパージしてテフロン(登録商標)栓で密閉した。
このクラッドパイプを再度ステンレス管に挿入、両端を封止した。アウターコアの製造と同様に長手方向が水平となるように、回転重合装置の重合器本体にセットした。2000rpmで回転させながら70℃の雰囲気下で5時間重合を行った。2時間後のインナーコア用原料の転化率は90%であった。そして500rpmで回転しながら90℃で5時間保持して重合を終了させた。重合終了後、500rpmで回転しながら120℃で24時間、熱処理を行い、転化率が99%以上であるインナーコアを形成させたプリフォームを得た(図16参照)。プリフォームはその後、徐冷してコア部の最も低いガラス転移点以下となる65℃まで降温した。
例1で得られたプリフォームは、インナーコア33の断面円形の中央部に中空部を有しており(図13参照)、その中空部を考慮して求めた屈折率分布係数は1.9であった。この得られたプリフォームは内部の湿度が10%以下に抑えられた状態の保管箱に入れて延伸工程まで保管を行う。
例2では、アウターコアの転化率が85%となるアウターコア部内壁の重合が完了していない段階でアウターコアの形成を中断し、例1と同様な重合性組成物を調整し、例1と同様の手順でインナーコアの形成を行った。得られたプリフォームは例1と同様な品質のものであった。
3)静止重合
[例3]
例3では、例1と同じ調整を行って重合性組成物を得た。この重合性組成物をアウターコア付きクラッドパイプに注入して超音波照射するまでの操作を例1と同様に行った。この重合性組成物を注入したクラッドパイプを重合容器に垂直に静置した。その後、重合容器内を窒素置換した後、0.05Mpa加圧し、100℃で48時間加熱重合した。その後、120℃で、24時間、加熱重合および熱処理を行った(図12参照)。重合完了後、加圧量を0.05Mpaに保持したまま0.01℃/minの冷却速度にて、コアのPMMAのTg以下となる65℃まで降温した後に、プリフォームを得た。この結果得られたプリフォームは、重合時の体積収縮によってインナーコア部の容積が12%減少していたが、中実のインナーコア部が得られた(図10参照)。そのインナーコアの屈折率分布係数は2.2であった。
[例4]
例4では、クラッドパイプには例1と同じものを用いた。重合禁止剤としてMEHQを2〜3ppm含むメタクリル酸メチルモノマーを用い、前述の重水素化ポリメタクリル酸メチルと同様に蒸留を行った。また、重合禁止剤としてMEHQを100〜200ppm含むメタクリル酸イソボルニル(以降、IBXMAと称する)モノマー100gに33gのアルミナを投入して、ろ過して重合禁止剤を取り除いた。
精製されたメタクリル酸メチル93.36gと精製されたメタクリル酸イソボルニル23.34gからなる混合モノマー(モル比:MMA/IBXMA=8:2)と、重合開始剤としてMAIB(商品名;V−601 和光純薬(株)製)を重水素化メタクリル酸メチルに対する添加率が、0.025wt%となるように0.05835g配合し、連鎖移動剤としてのn−ラウリルメルカプタンを混合モノマーに対する添加率が、0.17モル%となるように0.3501gとなるように配合し、重合性組成物を調整した。
アウターコアの付与も、例1と同様に重合条件を2000rpmで回転しながら80℃の雰囲気下で2時間加熱して重合を行った。
この得られたアウターコア付きクラッドパイプの外観はパイプの変形、泡の発生、波打ち、ゆらぎ等の確認は認められなかった。また、得られたパイプを加熱し揮発成分から残存モノマー量0.1重量%以下を確認した。この精製されたメタクリル酸メチル93.087gと精製されたメタクリル酸イソボルニル10.343gからなる混合モノマー(モル比:MMA/IBXMA=9:1)と、重合開始剤としてMAIB(商品名;V−601 和光純薬(株)製)を重水素化メタクリル酸メチルに対する添加率が、0.01モル%となるように0.0225g、連鎖移動剤としてのn−ラウリルメルカプタンを混合モノマーに対する添加率が、0.1wt%となるように0.10343g、屈折率調整成分としての非重合性のジフェニルスルフィド(DPS)を混合モノマーに対する添加率が、10.0wt%となるように10.343gとなるように配合し、重合性組成物を調整した。
アウターコア付きクラッドパイプに前記混合モノマーからなる重合性組成物を注入する以外は、回転重合装置の重合器本体にセットするまでを例1のインナーコア形成法と同様に操作した。その後、2000rpmで回転させながら70℃の雰囲気下で10時間重合を行った。重合終了後、2000rpmで回転しながら120℃で24時間、熱処理を行い、転化率が99%以上であるインナーコアを形成させたプリフォームを得た。プリフォームはその後、徐冷した。
得られたプリフォームは、インナーコアの断面円形の中央部に中空部を有しており(図13参照)、その中空部を考慮して求めた屈折率分布係数は1.8であった。
(2)静止重合
[例5]
例5では、例4と同じ調整を行って重合性組成物を得た。この重合性組成物をアウターコア付きクラッドパイプに注入して超音波照射するまでの操作を例1と同様に行った。この重合性組成物を注入したクラッドパイプを重合容器に垂直に静置した。その後、重合容器内を窒素置換した後、0.05MPa加圧し、100℃で48時間加熱重合した(図12参照)。その後、120℃で、24時間、加熱重合および熱処理を行った。重合完了後、加圧量を0.05MPaに保持したまま0.01℃/minの冷却速度にて、コアのPMMAのTg以下となる80℃以下まで降温した後に、プリフォームを取り出した。
この結果得られたプリフォームは、重合時の体積収縮によってインナーコア部の容積が13%減少していたが、中実のインナーコア部が得られた(図10参照)。そのインナーコアの屈折率分布係数は2.3であった。
(4)延伸
[例6]
例1で得られたプリフォームを、図20に示した製造設備240を用いて延伸工程を行った。加熱炉は1段あたり5cmの高さを有するヒータユニット(内径80mm)100〜104を5段積み上げ、上段から順に215℃、164℃、144℃、111℃、60℃となるようにヒータユニットの温度を設定した(図22参照)。
加熱炉の各ヒータユニット間に、ユニット内への気体流入を防止するための開口径25mmのアルミニウム製オリフィスを設けた。この仕切られた空間にはアルゴンガスとヘリウムガスとを混合したガスを10L/minで導入した。また、上部封止材には、シリコーンラバーから形成されているものを用いた。開口直径はプリフォームの外径と同じ20mmとして、密着領域は設けなかった。
プリフォーム235をアダプタ241(図20参照)に取り付けた。そして、約2mm/minの一定速度でプリフォーム235を加熱炉194内に送り込んだ。プリフォーム235の先端に耐熱テープで約30gの錘りを吊して、加熱を続けたところ30分ほどでプリフォーム235先端上が円錐状に溶融して糸状に垂れ落ちてきたところで、減圧ライン250により中空部236の圧力Pを(大気圧−1.0kPa)とした。同時に加熱炉下部にファイバが通過する2mm径の円形の開口を備えた下部封止材を取り付け、帯電防止のため延伸引取りロール直後および巻き取り部にイオナイザーにより除電を行って加熱溶融延伸を行った。延伸工程中での減圧量の変動は、0.02kPaであった。また、中空部はヒータユニットの上から2段目でつぶれていた。ヒータユニットの内部温度の変動値は上部4段100〜103が±0.2℃であり、最下段部の内部温度は±0.4℃であった。引取速度は9m/minとし、線引張力を3.7MPaとし、巻取張力を2.5MPaとして加熱溶融延伸を行った。プラスチック光ファイバ素線237の外径が316μmとなったところで巻取りを開始し、線長300mを重ね巻きした。
素線表面温度で50℃以下の領域にレーザー変位計を取り付け、変位計からの取り込み速度20msecのデータの16点移動平均値を線径値とし、この値をもとに炉や各張力の制御を行って線径変動調整を行った。また、巻取り前にラインセンサからなる外観検査装置を経由して泡、傷などの外観異常データを位置情報と共に測定した。
巻取りには、巻き胴部が厚紙よりなる胴径が500mm、真円度3mm(最小二乗法)、幅L1が200mm、さらにデュロメータE硬さ25,厚み4mmのクッション材(東レ(株)製、ポリオレフィンフォーム トーレペフ(商品名)、発泡倍率30倍)を巻いたボビン207を用いた(図29参照)。この際にボビンつば側面207bにプラスチック光ファイバ素線186が接触しないように巻き取った。加熱溶融延伸している際の素線186の線径を外径測定装置196で測定したところ、外径変動は±5μmであった。
延伸して得られたプラスチック光ファイバ素線は、外径が316μmの外径を有し、長さは1820mであった。さらに、得られた素線の伝送損失値を測定したところ、光源波長650nmにて121dB/km、791nmで121dB/kmであった。また、この素線について、R=15(mm)で360°曲げた場合の曲げ損失を測定したところ、0.01dBの上昇が確認された。また、降伏強度についても調べたところ、降伏強度が6.5Nであり、降伏伸びが5.6%であった。
この巻き取られたプラスチック光ファイバ素線は巻きぐせを取り除くため、欠陥部位除去装置が取り付けられた巻き替え装置で別のリールに巻き替えられた(図43参照)。このとき欠陥部位除去装置の後に60℃の加熱ゾーンを設けて素線に加わった応力を開放した。
[例7]
例7では、ヒータユニットの温度設を上段から順に215℃、164℃、144℃、111℃、60℃とし、引取速度を4m/min、線引張力を4.0MPa、巻取張力を3.0MPaとして500μmの外径となるように加熱延伸を行った以外は例6と同じ条件で実施した。得られたプラスチック光ファイバ素線の長さは760mで外径変動は±8μmであった。さらに、得られた素線の伝送損失値を測定したところ、光源波長650nmにて91dB/km、791nmで131dB/kmであった。また、この素線について、R=15(mm)で360°曲げた場合の曲げ損失を測定したところ、0.04dBの上昇が確認された。また、降伏強度についても調べたところ、降伏強度が15.2Nであり、降伏伸びが5.2%であった。
[例8]
例8では、ヒータユニットの温度設を上段から順に218℃、167℃、144℃、111℃、60℃とし、引取速度を2.3m/min、線引張力を1.6MPa、巻取張力を0.9MPaとして750μmの外径となるように加熱延伸を行った以外は例6と同じ条件で実施した。得られたプラスチック光ファイバ素線の長さは260mで外径変動は±14μmであった。さらに、得られた素線の伝送損失値を測定したところ、光源波長650nmにて79dB/km、791nmで113dB/kmであった。また、この素線について、R=15(mm)で360°曲げた場合の曲げ損失を測定したところ、0.22dBの上昇が確認された。また、降伏強度についても調べたところ、降伏強度が35.2Nであり、降伏伸びが5.9%であった。
[例9]
例9では、例3で得られたプリフォームをもちいて溶融延伸を行った。プリフォームが中実であるため、プリフォーム把持部の吸引を行わず、ヒータユニットの温度設定を上段から順に220℃、170℃、145℃、120℃、100℃とし、引取速度を12m/min、線引張力を3.9MPa、巻取張力を2.6MPaとして316μmの外径となるように加熱延伸を行った。得られたプラスチック光ファイバ素線の長さは1730mで外径変動は±8μmであった。さらに、得られた素線の伝送損失値を測定したところ、光源波長650nmにて88dB/km、791nmで135dB/kmであった。また、この素線について、R=15(mm)で360°曲げた場合の曲げ損失を測定したところ、0.01dBの上昇が確認された。また、降伏強度についても調べたところ、降伏強度が7.1Nであり、降伏伸びが6.1%であった。
[例10]
ヒータユニットの温度設定を上段から順に235℃、200℃、170℃、135℃、100℃とし、引取速度を3m/min、線引張力を1.6MPa、巻取張力を0.9MPaとした以外は例9と同様に操作して750μmの外径となるように加熱延伸を行った。得られたプラスチック光ファイバ素線の長さは230mで外径変動は±10μmであった。さらに、得られた素線の伝送損失値を測定したところ、光源波長650nmにて96dB/km、791nmで144dB/kmであった。また、この素線について、R=15(mm)で360°曲げた場合の曲げ損失を測定したところ、0.31dBの上昇が確認された。また、降伏強度についても調べたところ、降伏強度が34.8Nであり、降伏伸びが5.7%であった。
C)IBXMA+PMMA[プリフォームが中空]
[例11]
例4で得られたプリフォームをもちいて、ヒータユニットの温度設を上段から順に220℃、170℃、145℃、120℃、100℃とし、引取速度を15m/min、線引張力を4.0MPa、巻取張力を2.2MPaとして316μmの外径となるように加熱延伸を行った以外は例6と同じ条件で実施した。得られたプラスチック光ファイバ素線の長さは1970mで外径変動は±6μmであった。さらに、得られた素線の伝送損失値を測定したところ、光源波長650nmにて168dB/kmであった。また、この素線について、R=15(mm)で360°曲げた場合の曲げ損失を測定したところ、0.02dBの上昇が確認された。また、降伏強度についても調べたところ、降伏強度が5.8Nであり、降伏伸びが4.7%であった。
[例12]
例11で、ヒータユニットの温度設定を上段から順に220℃、175℃、144℃、111℃、60℃とし、引取速度を8m/min、線引張力を3.0MPa、巻取張力を2.0MPaとして500μmの外径となるように加熱延伸を行った以外は例11と同じ条件で実施した。得られたプラスチック光ファイバ素線の長さは810mで外径変動は±9μmであった。さらに、得られた素線の伝送損失値を測定したところ、光源波長650nmにて173dB/kmであった。また、この素線について、R=15(mm)で360°曲げた場合の曲げ損失を測定したところ、0.08dBの上昇が確認された。また、降伏強度についても調べたところ、降伏強度が14.7Nであり、降伏伸びが4.8%であった。
[例13]
例11で、ヒータユニットの温度設定を上段から順に260℃、220℃、180℃、120℃、100℃とし、引取速度を5m/min、線引張力を1.6MPa、巻取張力を0.9MPaとして750μmの外径となるように加熱延伸を行った以外は例11と同じ条件で実施した。得られたプラスチック光ファイバ素線の長さは225mで外径変動は±16μmであった。さらに、得られた素線の伝送損失値を測定したところ、光源波長650nmにて176dB/kmであった。また、この素線について、R=15(mm)で360°曲げた場合の曲げ損失を測定したところ、0.15dBの上昇が確認された。また、降伏強度についても調べたところ、降伏強度が33.8Nであり、降伏伸びが5.3%であった。
[例14]
例5で得られたプリフォームを用いて、ヒータユニットの温度設定を上段から順に220℃、170℃、145℃、120℃、100℃とし、引取速度を9m/min、線引張力を3.0MPa、巻取張力を2.5MPaとして316μmの外径となるように加熱延伸を行った以外は例9と同じ条件で実施した。得られたプラスチック光ファイバ素線の長さは1350mで外径変動は±5μmであった。さらに、得られた素線の伝送損失値を測定したところ、光源波長650nmにて158dB/kmであった。また、この素線について、R=15(mm)で360°曲げた場合の曲げ損失を測定したところ、0.01dBの上昇が確認された。また、降伏強度についても調べたところ、降伏強度が6.9Nであり、降伏伸びが6.1%であった。
[例15]
例15では、ヒータユニットの温度設定を上段から順に270℃、225℃、185℃、120℃、100℃とし、引取速度を5m/min、線引張力を1.0MPa、巻取張力を1.2MPaとした以外は例14と同様に操作して750μmの外径となるように加熱延伸を行った。得られたプラスチック光ファイバ素線の長さは180mで外径変動は±14μmであった。さらに、得られた素線の伝送損失値を測定したところ、光源波長650nmにて188dB/kmであった。また、この素線について、R=15(mm)で360°曲げた場合の曲げ損失を測定したところ、0.19dBの上昇が確認された。また、降伏強度についても調べたところ、降伏強度が34.6Nであり、降伏伸びが4.7%であった。
(5)検査・巻き替え
[例16]
下記に記す以外は例6と同じ条件で実施した。引取り速度を上げて、一部の線径を細くした欠陥と、加熱炉出口のまだ軟化している状態で傷をつけた2種類の欠陥を故意に発生させたものを作成し、欠陥検出データに基づいて欠陥除去装置つきの巻き替え装置(図42参照)にかけたところ、欠陥部位が欠陥発生部位を含む様に20m除去されて溶着されていた。除去後の溶着部にはアルミ蒸着テープが貼り付けられていた。
(6)被覆
[例17]
例6で得られたプラスチック光ファイバ素線を用いて、孔径が1400μm、ランド長さが2500μmのダイスと、外径が1250μm、内径が400μmのニップルとを、クリアランスが2500μmとなるように押出機(30mmφスクリュ径)ヘッド部に取り付けた(図38参照)。押出機ホッパに低密度ポリエチレン(東ソー製 ニポロンL、MFR=50g/10min)を供給し、130℃で20.1g/minの割合で溶融押出し、20m/minの速度で送り出される316μm径の素線とダイ内で接触させて1200μmとした。熱可塑性樹脂を被覆した後、60℃の水が入れられている第1水槽中を10s搬送した。その後に30℃の水が入れられている第2水槽中を10s搬送した。最後に10℃の水が入れられている第3水槽中を10s搬送した後、水分除去装置で表面の水分を除去し、巻取ボビンに巻き取った(図37参照)。例17で得られたプラスチック光ファイバコードの伝送損失を測定した結果、被覆前後での伝送損失変化は0dB/kmであった。
[例18]
例13で得られたプラスチック光ファイバ素線を用いて、孔径が1200μm、ランド長さが1500μmのダイスと、外径が1310μm、内径が850μmのニップルとを、クリアランスが1500μmとなるように押出機(30mmφスクリュ径)ヘッド部に取り付けた(図38参照)。押出機ホッパに低密度ポリエチレン(東ソー製 ニポロンL、MFR=50g/10min)を供給し、130℃で13.2g/minの割合で溶融押出し、20m/minの速度で送り出される750μm径の素線とダイ内で接触させて1200μmとした。熱可塑性樹脂を被覆した後、60℃の水が入れられている第1水槽中を10s搬送した。その後に30℃の水が入れられている第2水槽中を10s搬送した。最後に10℃の水が入れられている第3水槽中を10s搬送した後、水分除去装置で表面の水分を除去し、巻取ボビンに巻き取った(図37参照)。例18で得られたプラスチック光ファイバコードの伝送損失を測定した結果、被覆前後での伝送損失変化は0.5dB/kmであった。また、得られたプラスチック光ファイバコードについて、プラスチック光ファイバ30mmの被覆線から光ファイバコードを100m/minで引き抜く際に必要な力は5Nと良好な密着性を示し、さらに、被覆線の硬さは荷重を掛けた場合の変位から、JIS C 6851に従って測定した結果、3.0×10−4(N・m)と十分な値を示した。
[例19]
例6で得られたファイバ外径が316μmのプラスチック光ファイバ素線を孔径が2100μmのダイスと外径が1100μm,内径が500μmのニップルとを有する金型(図38参照)を取り付けた押出機(40mmφスクリュー径)を用いて、低密度ポリエチレン(LDPE(low density polyethylene);JPE製 JMA07A,MFR=50g/10min)を125℃,360g/minで押し出し、20m/minの速度で送り出した。被覆したプラスチック光ファイバコードの伝送損失を測定した結果、被覆前後での伝送損失上昇は2dB/kmであった。
[例20]
図40の樹脂ポット612に1液型熱硬化型ウレタン(サンスター技研(株)社製、ペンギンセメントRD−8014GA、以下エラストマーウレタンと称する)613を注入し、ライン速度3m/minで塗布した。図40の温水617を80℃に設定し、その温水中に塗布素線615を10秒間走行させて被覆層を硬化させた。得られた被覆層厚みは、3mmであり、被覆後の伝送損失増加は、波長650nm,780nm帯の791nm,850nmのいずれにおいても、0dB/kmであった。また、被覆層の硬化性は、硬化反応が終了しており、切断して調べると、全径において固体(○)であった。
(7)欠陥除去
[例21]
例16において、作成した欠陥を取り除いたプラスチック光ファイバ素線を実験18と同様にして被覆を行った。欠陥データから、素線の溶着位置を判別し、金属を検知するセンサでアルミテープを検出して溶着部位を取り除き欠陥部位のないプラスチック光ファイバコードが得られた。
(8)ケーブル化
A)難燃化
[例22]
ベルストルフ社製2軸押出機(スクリュー径40mm、スクリューL/D=40)に、流動開始温度が103℃、メルトフローレート(JIS K 6922−2)が80g/10min、密度が0.916g/cmのポリエチレンと、平均粒径2μm、99%粒径5μmの水酸化マグネシウムが組成異物中の含有量が50質量%となるようにし、別々の定量フィーダにて押出機へ8kg/hrの量を供給した。スクリュー回転数100rpm、ベント圧力0.85気圧、押出機出口温度70℃でφ5mm×10穴のノズルから押出した樹脂ストランドを冷却切断して、径が2mm、長さが2〜3mmの樹脂ペレットを得た。この樹脂組成物を、被覆ラインのクロスダイヘッドを変えた被覆押し出し機(ダイス直径3.4mm、ニップル直径2.2mm)を用いた被覆ラインにより、例17で得られたプラスチック光ファイバコードを用い、光ファイバコードの搬送速度を17m/minとして被覆を行い、厚みが0.5mmの難燃性の2次被覆層を有する光ファイバケーブルを得た。
このケーブルの燃焼性をUL(Underwriters Labolatory)規格のCMX(いわゆるVW−1試験)に準拠した難燃性の測定を行ったところ合格の基準を満たしていた。
B)ケーブル態様−1(メガネ型)
[例23]
押し出しダイスは径2.2mmとなる穴が中心の距離が2.3mmとなるように接続した形状のダイスを用いた。例17で得られたプラスチック光ファイバケーブルを2本がそれぞれの穴の中心位置となるように維持しながら溶融押し出しダイスに導入した。押し出しダイスでは低密度ポリエチレン(LDPE(low density polyethylene);東ソー製 ペトロセン248,MFR=50g/10min)を115℃,100g/minで押し出し、20m/minの速度で送り出した光ファイバコード上に被覆を行った。なお、得られた光ファイバケーブルは2本の光ファイバコードの中心間距離は2.1mmで、機械特性は良好であり、側圧による損失増加を招くこともなく、伝送性能も650nmの波長で89dB/kmと良好かつ安定した特性を有していた。また、短尺に切断しても2次被覆層から光ファイバコードが抜け出ることもなかった。
C)ケーブル態様−2
[例24]
1心をステップインデックス型(SI型)プラスチック光ファイバコードに変更した以外は例23と同様にケーブル化を行ってプラスチック光ファイバケーブルを得た。ステップインデックス型プラスチック光ファイバコードは750μmのSI型プラスチック光ファイバを例8と同様の方法で被覆を行ったものを用いた。このSI型プラスチック光ファイバは650nmの波長で175dB/kmの特性を有するものであった。このケーブルの被覆を取り除き、端面をホットプレートで平滑になる様に加工処理して、両端にSMI型コネクタを取り付けた。測定機器とコネクタで接続した状態で光伝送性能を測定した。測定はSI型の測定においては650nmのLD光源を用いて入射NA=0.2の条件で測定を行い、GI型の測定においては791nmのVCSEL光源を用いて入射NA=0.2の条件で測定を行った。コネクタによる損失部分を考慮して測定された帯域はSI型プラスチック光ファイバは150MHz/100mであり、GI型プラスチック光ファイバでは1.7GHz/100mであった。
D)ケーブル態様−3
[例25]
図53(a)に示す構造の2心の光ファイバケーブルを作製した。まずテンションメンバを用意した。テンションメンバとしてはケブラー(登録商標)を用い、このテンションメンバにエポキシ樹脂で被覆を施して外径が0.45mmとした中心部材を得た。このようにして幅7.2mm、厚み2.6mmの光ケーブルを得た。そしてプラスチック光ファイバコードをケーブル化したことによる光ファイバの損失増は0.1dB/km以下であった。得られた光ファイバケーブルの150Nで10秒、80Nで5分の引っ張りでの損失上昇は0.05dB以下であり、光ファイバケーブルとして十分な特性を有するものであり、短尺に切断しても2次被覆層から光ファイバコードが抜け出ることもなかった。
[例26]
例6および例7で用いる延伸装置に装置制御部を取り付け、例1で作成したプリフォームを用いて延伸操作を行った。まず、例6の製造条件を装置制御部に入力し、例6の製造条件で延伸装置を稼働させてプラスチック光ファイバ素線を得た。その後、例7の製造条件を装置制御部に入力し、例7の製造条件で延伸装置を稼働させてプラスチック光ファイバ素線を得た。この操作を交互に10回行い、2種類の素線を各10本得た。
得られた各10本の物性値と伝送性能を測定したところ、例6および例7の製造条件で得られたもの内で線径変動や非円率の各物性値や伝送損失の用途特性などには有意差は検出されず、製造条件切り替えを繰り返しても、同じ品質のプラスチック光ファイバ素線を得られることが分かった。
(8)製造システム化
本発明では以上に例示した工程をネットワークで連結して製造工程管理システムを構築する。例えば、図57は、管理システムと各工程における製造装置および測定装置との関係の概要を示したものである。図においては簡略化のため細かな工程を省略した。
本発明のシステムでは各工程の製造装置には管理装置と連結させるための製造端末部を有し、装置以外の工程情報を入出力するデータ参照端末部1331〜1335と、管理装置である生産管理サーバ装置1301および製造管理サーバ装置1302と、これらを接続するネットワーク1300とを備えている。なお、生産管理サーバ装置1301は、生産計画サーバ1303と製品履歴サーバ1304とを備えている。そして、製造管理サーバ装置1302は、工程管理サーバ1305と製造情報サーバ1306とを備えている。
製造端末部は装置制御部1341〜1343と測定部1351〜1354とからなる。装置制御部1341〜1343は工程管理サーバ1305より入力される制御情報をもとに、重合工程1311,延伸工程1313,被覆工程1315で用いられる装置の温度制御や搬送速度などの装置の制御を行う。装置制御部1341〜1343はPLC(Programmable Logic Controller)の様な制御管理とプログラム機能と通信を有したコントローラであっても良い。このとき、高速応答が必要な場合はこの測定部から得られた状態変数を元に装置制御部1341〜1343がフィードバック制御やフィードフォワード制御を行って装置を駆動させる。それ以外は中央制御装置から転送される制御情報で装置の駆動が行われても良いし、高速応答や負荷分散の目的で1工程を独立した中継サーバを設けて中継サーバで統合的に管理された情報を工程管理サーバ1305へ転送することもできる。測定部1351〜1354は各工程1311,1313,1315,1317で用いられている装置制御によって得られる状態変数を収集し、製造情報管理サーバ1306に転送する。装置制御部と同様に1つの装置が複数の機能を有しても良い。
データ参照端末部1331〜1335は、人間が介在する作業などの直接データ読み取りが不可能な原材料の製造ロット(例えば、原料調液1310,プリフォーム1312,リール1314,1316)や分析値製品の検査結果などの工程データや確認作業においてデータの入出力を行い、また、中間工程においては各工程の製造管理に用いられ次工程に進めるべき対象が正しいかを管理番号で即座に確認や、各製品用の切替部材(被覆工程のダイスなど)が正しく配置されているかを照合できる端末である。これらのデータ参照端末においては入力ミスを避けるため、各部品や部材に取り付けたバーコードや無線ICチップの様な各(中間)製品の管理番号などのタグ情報を読み取る機能を有することが好ましい。
ネットワーク1300は、Ethernet(登録商標)のような既知の通信手段で構成しても良く各工程間で発生する情報量によって帯域を変化させても良い。なお、管理装置である各サーバ1303〜1306はこのネットワーク1300とつなげるための通信制御部と、一時的に制御や管理の情報を保存するメモリ装置部とメモリ装置部にあるデータや外部から入力される情報を処理する演算部と各種情報を保存するデータベース部を有してなる(いずれも図示しない)。
工程管理サーバ1305は、製造指示の指令に基づいて各工程の操作条件を選択し、設定することができる。各工程の条件は工程管理サーバ1305内にパターン情報として保存されており、操作の指示はパターン情報をメモリ装置に読み出し、製造情報サーバ1306より送られるデータを演算部で照合し、より適切な時期に各工程装置へと工程操作のための指示データを転送する。工程の監視は製造情報サーバ1306に蓄積される状態変数と工程制御情報からフィードバック制御などで再度指示を行うこともできる。また、工程管理において、工程管理サーバはロット番号の付与(図59及び図60参照)や異常発生時の良否判定機能を持たせることもできる。
製造情報サーバ1306は、装置端末部の測定部1331〜1335から得られた情報を収集する機能と装置の保守用情報の管理を行う。情報の収集機能としては工程管理サーバ1305により付与されたロット番号を有する工程の管理ファイルを作成し、管理ファイルに操作条件履歴とそれらが実際にどの様に反映したかを示す工程測定履歴を取り込む。また調液や検査工程においてはどのような材料や検査結果となったかをデータ参照端末より入力された情報から管理ファイルを作成する。これら情報は工程管理情報として一時的に製造情報サーバ1306内で保存され(図58参照)、工程終了後には製品履歴サーバ1304へ転送し、製品履歴サーバ1304内に保存される。保守用情報管理としては、稼働時間を目安に耐久性の低い部品の交換時期を管理したり、測定部から得られる真空度や温度変化などから関連部材のメンテナンス警報を発する機能を付加することもできる。
生産管理サーバ装置1301は製造管理サーバ装置1302と統合されていても良く、また、近い機能ごとにそれぞれ生産計画管理サーバ1303と工程管理サーバ1305、製品履歴サーバ1304と製造情報サーバ1306と統合して運用しても良い。
生産計画管理サーバ装置1301は、各製品品種の製造数量とリードタイムを基に予測される各製造装置の稼働時間が最大となる様に製造計画を立案する。製造計画は製品の納期や保守、段取り換えに要する時間を考慮して製品切替が少なくなる様に配置される。また、製品納期や在庫情報から必要に応じて中間製品であるプリフォームや素線を当社計画と異なる製品に切り替えることができる様な計画変更の立案を行っても良い。
製品履歴サーバ1304は、製造情報サーバ1306より得られた各工程のデータを統合的に管理する。データの管理は製造情報サーバが作成する各工程のファイルをまとめた1つの構造体であっても良いし、製造情報サーバの作成するファイルに識別用のコードを付加し、管理用テーブルを有するファイルから、識別用コードを通じて所望のデータにアクセスできる形式でもよい(例えば、図58参照)。後者の様な管理をした場合、1つのプリフォームから複数のコードを得た場合や複数の素線を束ねたケーブルの製品情報管理は、各最終製品情報から素線やコードの製造情報にリンクをたどって参照者が各情報を閲覧することができる。この様な管理によって必要とされるデータの保存領域が少なくすることができる。さらに、リンク形式で管理する事で各製造工程の長期的な統計データの管理などを容易に行うことが可能となる。そして、生産管理サーバ装置1301から端末1336により製品情報検索が可能である。
また、これら情報に加えて生産計画や出荷計画のための最終製品と中間製品在庫情報を有する事で、出荷管理システムと連携させることもできる。
以上のシステム構成の形態によれば、中間製品の受け渡しは情報タグによって管理され、各工程装置の制御は中央制御装置より装置端末へ制御指示が出されているため、多品種切り替えであっても、間違いのない管理をすることができる。さらに各装置と工程時間予測から無駄のない生産計画が中央制御装置から策定されるので効率の良い生産を行う事ができる。また、製造管理番号からの製造履歴情報と品質情報の一元管理ができるため、品質保証の観点からも製品履歴の管理やトレーサビリティーも確保できる効率の良い設備を組むことができる。
本発明に係るプラスチック光ファイバのクラッド部を作製する装置の概略図である。 図1の要部断面図である。 図1の要部拡大図である。 図1の要部断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバのクラッド部を形成する製造ラインの概略図である。 図5の要部拡大図である。 図7の要部断面図である。 図5の製造ラインの他の実施形態の要部断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバのクラッド部を形成する製造ラインの他の実施形態の概略図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバを製造するためのプリフォームの断面図である。 図10のプリフォームの屈折率分布を説明するための図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバのコア部を形成する装置の概略断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバを製造するためのプリフォームの他の実施形態の断面図である。 図13のプリフォームの屈折率分布を説明するための図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバのコア部を形成する装置の要部断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバのコア部を形成する装置の概略断面図である。 図16の要部拡大図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバのコア部を形成する装置の他の実施形態の要部断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバの製造設備の概略図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバの製造設備の他の実施形態の概略図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバの製造設備の他の実施形態の概略図である。 図21の要部断面図である。 図21の要部平面図である。 図21の他の実施形態の要部断面図である。 図24の要部下面図である。 図21の他の実施形態の要部断面図である。 図21の他の実施形態の要部断面図である。 図21の他の実施形態の要部断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバを巻き取るボビンの概略断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバを線引きして巻き取る製造ラインを示す概略図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバ素線中の気泡による欠陥を示す概略図である。 ラインセンサカメラの配置を示す模式図である。 プラスチック光ファイバ素線と光照射器とラインセンサカメラの配置を示す模式図である。 演算処理部における欠陥判定処理を示すフローチャートである。 1ライン分の画像データと開始位置しきい値及び欠陥しきい値を示す線図である。 ブロブ処理における検出されたブロブの一例を示す説明図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバコードを製造する被覆ラインの概略図である。 図37の要部断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバコードを製造する被覆ラインの他の実施形態の要部断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバコードを製造する被覆ラインの他の実施形態の概略図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバコードを製造する被覆ラインの他の実施形態の概略図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバの延伸工程ラインを示す概略図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバの巻替工程ラインを示す概略図である。 プラスチック光ファイバの接合部の構成を示す斜視図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバを接合するときの状態を示す概略図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバを巻き取る巻取ボビンを示す斜視図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバケーブルの様々な形態の断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバケーブルの様々な形態の断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバケーブルの様々な形態の断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバケーブルの様々な形態の断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバケーブルの様々な形態の断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバケーブルの様々な形態の断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバケーブルの様々な形態の断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバケーブルの様々な形態の断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバケーブルの様々な形態の断面図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバケーブルの概略図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバの製造システムの概略図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバの製造システムに用いられる記録媒体の概略図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバの製造システムに用いられる記録媒体の概略図である。 本発明に係るプラスチック光ファイバの製造システムに用いられる記録媒体の概略図である。
符号の説明
40,80 クラッドパイプ製造ライン
100 重合装置
162 回転重合装置
190,240,290 延伸製造設備
285 プリフォーム
286 プラスチック光ファイバ素線
480 被覆ライン
850 プラスチック光ファイバケーブル
1300 ネットワーク

Claims (4)

  1. 複数のバッチ製造工程からなるプラスチック光ファイバ製造管理システムにおいて、
    少なくとも2つの工程の装置が管理装置と通信によって連結され、
    製造条件を内部に有した前記管理装置が生産計画に応じてプリセットされた操作条件を選択し、
    前記操作条件に基づいて各工程の前記装置の制御を行い、
    及び前記各装置に設置された測定機器により状態変数,操業履歴及び品質情報が前記管理装置に送信されて記録されることを特徴とするプラスチック光ファイバ製造管理システム。
  2. 連結していない工程情報を外部入力装置による入力で前記管理装置に登録することを特徴とする請求項1記載のプラスチック光ファイバ製造管理システム。
  3. 前記各工程間で受け渡される中間生成物に識別符号を与え、
    後工程開始時に前記識別符号を前記外部入力装置によって照合する機能を有することを特徴とする請求項2記載のプラスチック光ファイバ製造管理システム。
  4. モノマーを重合させて形成させたプリフォームを延伸させてなる屈折率分布型プラスチック光ファイバであって、
    線型変動が目標線径に対して45μm以内であることを特徴とする屈折率分布型プラスチック光ファイバ。
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