JP2004341489A - 保護層付き光学部材並びに製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 プラスチック光ファイバに熱的ダメージを与えることなく、保護層を形成する。
【解決手段】 PMMAを主成分とするプラスチック光ファイバ(POF)11を形成する。樹脂ポットに80℃で硬化するエラストマーウレタン13を入れる。POF11が樹脂ポット12内を通過すると、その表面にエラストマーウレタン13が塗布され塗布素線15となる。塗布素線15を温度80℃に調整されている水槽17に送る。エラストマーウレタン13が硬化して膜厚450μmの保護層となる。素線11に保護層を形成して光ファイバ心線21を得る際に80℃で加熱するので、PMMAの変性などが生じないため、光学特性に影響を与えない。また、機械的強度も充分な膜厚の保護層を形成できる。
【選択図】 図1
【解決手段】 PMMAを主成分とするプラスチック光ファイバ(POF)11を形成する。樹脂ポットに80℃で硬化するエラストマーウレタン13を入れる。POF11が樹脂ポット12内を通過すると、その表面にエラストマーウレタン13が塗布され塗布素線15となる。塗布素線15を温度80℃に調整されている水槽17に送る。エラストマーウレタン13が硬化して膜厚450μmの保護層となる。素線11に保護層を形成して光ファイバ心線21を得る際に80℃で加熱するので、PMMAの変性などが生じないため、光学特性に影響を与えない。また、機械的強度も充分な膜厚の保護層を形成できる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、保護層付き光学部材並びにその製造方法及び製造装置に関し、より詳しくは光学部材がプラスチック光ファイバである保護層付き光学部材及びその製造方法及び製造装置に関するものである。
光学用素材として従来ガラスが使われていたものに対してもプラスチックが採用されるケースが増えている。これは材料の組成の設計の容易性、さらには高い加工性や軽量性といったプラスチックが有する特徴の他に、近年のプラスチックの特性改良技術の進歩によって、透明性、化学的安定性、機械的強度の向上などの改善が行われることによって、光学用材料としての多様性、容易性に特徴を付与できるため利用の機会が増えてきたためである。
特に、プラスチック光ファイバは、石英系光ファイバと較べると、光の伝送損失が大きく長距離の光伝送には向いていないが、大口径化による接続容易性、端末加工容易性、高精度調芯機構が不要になるメリット、コネクター部分の低コスト化、人体への突き刺し災害による危険性の低さ、高い柔軟性による易加工性、易敷設性、耐振動性、低価格などのメリットから、家庭や、車載用途に注目されているだけでなく、高速データ処理装置の内部配線やDVI(Digital Video Interface)リンクなどの極短距離、大容量ケーブルとしても利用が検討されている。
プラスチック光ファイバは、一般に重合体をマトリックスとする有機化合物からなる芯材(以下、コアまたはコア部と称する)とコア部と屈折率の異なる外殻(以下、クラッドまたはクラッド部と称する)とから構成される。これら部材の製法はプレポリマーを引き出してコア部またはクラッド部を同時に繊維状に成形する方法や、光ファイバ母材(以下、プリフォームと称する)を製作してからこのプリフォームを溶融延伸する方法などがある。
このプリフォームを用いる方法では樹脂が軟化する温度雰囲気中で溶融延伸することによって、所定の外径のプラスチック光ファイバ(以下、POFと称する)ができる。溶融延伸工程では、通常、プリフォームを電気ヒータ等によって内部が加熱された円筒形状の加熱炉内で加熱しながら、下端を引っ張って延伸する。例えば、プリフォームの上部を懸架し、ゆっくりと加熱炉中に降ろし、プリフォームを加熱炉中で溶融させる。糸引きできる柔らかさになるまで加熱し、プリフォームの先端が溶融して自重で落下した後に、糸引きした部分を加熱炉から下方に引き出して引取ローラにかけることによって、POFとして連続的に延伸する。
このように製造したPOFは、機器内部の光配線用途など以外にはそのままで使用することはあるが、多くの用途においてPOFの周囲に保護用のコーティング(例えば、保護層の形成)を施してプラスチック光ファイバ心線(以下、光ファイバ心線と称する)としたり、あるいは所定の内径を持つチューブ内に挿入して用いられている。このようにPOFを保護することによって、光ファイバをハンドリング中や劣悪な環境下での使用の際に傷や損傷、マイクロベンディングなどの構造不整、さらには光学特性の劣化から守ることができる。POFを保護する材料としてはポリ塩化ビニール、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニール共重合体、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)などの熱可塑性樹脂及び前述以外の熱可塑性樹脂を使用している。従来の方法においては、POFに保護層を付与しようとすると、溶融状態の熱可塑性ポリマーの浴内にPOFを通過させ、その後、浴から取り出されたPOFの表面に附着したポリマーを冷却固化させて光ファイバ心線とする方法が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。このとき、光学部材へ溶融状態のポリマーから熱が加わり、構造不整などを起こすため、熱ダメージが加わらない方法や素材の選定が必要である。
一方で、熱をできるだけ加えずに被覆する方法としては、紫外線硬化樹脂などの光硬化性樹脂による被覆が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、光硬化性樹脂による被覆では、50μm以下程度の厚さしか塗布できないなどの不具合があり、保護層として充分なものではなかった。
本発明の目的は、光学部材に保護層を被覆する際に、光学部材の溶融状態の熱可塑性樹脂より加わる熱による劣化や、機械的なダメージを与えることなく保護層を被覆できる保護層付き光学部材並びに光学部材の製造方法及び製造装置を提供することである。また、前記光学部材を光ファイバに用いた際に、伝送損失の悪化を抑制することも目的とする。
そこで、本発明者が、鋭意検討を行った結果、光学部材を液状樹脂浴の中を通し、被覆したものを母材のガラス転移温度Tg(℃)以下から50℃以上の範囲のゾーンを通過させることにより硬化させることができ、実用に耐える保護層を設けることができ、本課題を解決できることを見出した。
本発明の保護層付き光学部材の製造方法は、ポリマーから構成された光学部材の導光部ではない部位に、保護層形成用材料から保護層を形成する保護層付き光学部材の製造方法において、前記保護層形成用材料を50℃以上前記ポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下の温度範囲で硬化させて前記保護層を形成する。本発明の保護層付き光学部材の製造方法は、ポリマーから構成され光学部材の周囲に、保護層形成用材料から保護層を形成する保護層付き光学部材の製造方法において、前記保護層形成用材料を50℃以上前記ポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下の温度範囲で硬化させて前記保護層を形成する。なお、光学部材の周囲とは、光学部材で導光に関与しない側面やプラスチック光ファイバでは被覆の部位を示す。
本発明の保護層付き光学部材の製造方法は、光導波の方向と直交する面にガラス転移温度が分布を有し、最も低いガラス転移温度がTg(℃)のポリマーから構成され光導波部位の周囲に、保護層形成用材料から保護層を形成する保護層付き光学部材の製造方法において、前記保護層形成用材料を50℃以上前記ポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下の温度範囲で硬化させて前記保護層を形成する。前記保護層形成用材料を50℃以上前記ポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下の温度範囲で硬化させて前記保護層を形成することが好ましい。前記保護層形成用材料の加熱時間を1秒以上10分以内とすることが好ましい。前記保護層形成用材料の硬化を温水中で行うことが好ましい。
前記保護層形成用材料の硬化物が、エラストマーであることが好ましい。前記保護層形成用材料は、化学反応によって硬化するものであることが好ましい。前記保護層形成用材料の硬化物が、ポリウレタンであることが好ましい。前記保護層形成用材料がイソシアネート基を有する化合物と、活性水素を含有する基を有する化合物とを含み、それらが3次元的に結合したポリウレタン保護層を形成することが好ましい。前記活性水素を含有する基を有する化合物が、2つ以上の水酸基を有するポリオールであることがより好ましい。前記保護層を形成した後に、前記保護層を1次保護層とし、前記1次保護層の周囲に少なくとも1層の保護層をさらに被覆することが好ましい。前記光学部材が、光ファイバであることが好ましい。
本発明の保護層付き光学部材は、ポリマーから構成される光導波部位を有し、その周囲に保護層を有する保護層付き光学部材において、前記保護層が、ポリウレタンエラストマーである。前記保護層が1次保護層であって、前記1次保護層の周囲に少なくとも1層の保護層がさらに被覆されていることが好ましい。前記第1保護層の周囲に被覆されている保護層が、熱可塑性樹脂から形成されていることがより好ましい。前記光学部材が、光ファイバであることが好ましい。
本発明の保護層付き光学部材の製造装置は、部材表面に保護層を形成する光学部材の製造装置において、前記部材に保護層形成用材料を塗布する塗布手段と、前記部材を構成するポリマーの中で最も低いガラス転移温度Tg(℃)以下50℃以上の範囲で温度調整可能な加熱手段とを有する。前記塗布手段の下流側に、前記保護層の厚さを調整する線径調整部材を有することが好ましい。前記保護層が1次保護層であって、前記1次保護層の周囲へ少なくとも1層の保護層を被覆する塗布手段を有することが好ましい。前記ポリマーを硬化させる加熱手段として、前記部材の走行路が温水中を通る水槽を備えることが好ましい。
また、本発明の光学部材には、光ファイバなどの光伝送体も含まれる。そこで、本発明の光伝送体の製造方法は、ガラス転移温度がTg(℃)のポリマーから構成され光導波路となる素線に、保護層形成用材料から保護層を形成する光伝送体の製造方法において、前記保護層形成用材料を(Tg−50)℃以上Tg(℃)以下の温度範囲で硬化させて前記保護層を形成する。また、本発明の光伝送体の製造方法は、光導波の方向と直交する面にガラス転移温度が分布を有し、最も低いガラス転移温度がTg(℃)のポリマーから構成され光導波路となる素線に、保護層形成用材料から保護層を形成する光伝送体の製造方法において、前記保護層形成用材料を(Tg−50)℃以上Tg(℃)以下の温度範囲で硬化させて前記保護層を形成する。前記保護層形成用材料の加熱時間を1秒以上10分以内とすることが好ましい。前記保護層の厚さを20μm以上3mm以下の範囲に形成することが好ましい。
前記素線を構成するポリマーが、(メタ)アクリル酸及び/またはそれらのエステルの単量体を重合させた重合体を主成分とすることが好ましい。前記保護層形成用材料がエラストマーであることが好ましく、熱硬化によって形成されるエラストマーであることがより好ましい。前記保護層形成用材料が、3次元架橋型ポリウレタンを主成分とすることが好ましい。前記光伝送体が、光ファイバであることが好ましく、そのコア部が屈折率分布を有するように構成されているものに対して特に有効である。前記光伝送体の製造方法によって製造された光ファイバも本発明には含まれる。また、前記光伝送体の製造方法に用いられる光伝送体の製造装置も本発明に含まれる。
本発明の光伝送体の製造装置は、光導波路の素線表面に保護層を形成する光伝送体の製造装置において、前記素線に保護層形成用材料を塗布する塗布手段と、前記素線を構成するポリマーの中で最も低いガラス転移温度Tg(℃)以下(Tg−50)℃以上の範囲で温度調整可能な加熱手段とを有する。前記塗布手段の下流側に、前記保護層の厚さを調整する線径調整部材を有することが好ましい。
本発明の保護層付き光学部材並びに製造方法及び製造装置によれば、保護層の被覆に伴う伝送損失の悪化がなく、機械的強度に優れる保護層付き光学部材を得ることができる。本発明は、光学部材に熱ダメージを与える被覆工程、特に光学部材へ直接保護層を設ける一次被覆において、その特性劣化を抑制する効果が高いことが分かる。また、プラスチック光ファイバ心線などの製造を行う際に、本発明を適用することで、光学特性に優れ、機械的強度も充分なものが得られる。また、140℃まで使用可能な耐熱性に優れる3次元型ポリウレタンを用いて保護層として形成すると、高温環境下での使用が可能となる。また、3次元ポリウレタンからなる保護層の外周にさらに第2保護層を形成する際に、前記第2保護層を形成する樹脂の溶融粘度が高いものを用いることができ、前記樹脂の選択が容易となる。
本発明において製造される光学部材の1つであるプラスチック光ファイバ(POF)の製造方法を例に示して説明する。始めに、本発明に好ましく用いられる原料ポリマー,開始剤,連鎖移動剤,ドーパントを例示する。次に、本発明の一実施態様として、高い伝送特性が得られるクラッド部を有し、コア部の外周から中心へ連続的に屈折率の変化する屈折率分布型(グレーデッドインデックス型、GI型)POFの母材(プリフォーム)の製造した後にプリフォームを溶融延伸してPOFを製造する方法を説明する。そして、そのPOFに保護層が設けられているプラスチック光ファイバ心線及び他の形態の光学部材についても説明する。以下、実施の形態を例示するが、この例示はあくまでも本発明を詳細に説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
光学部材、特にPOFを作るための材料は、所望の光学特性を損なわない限りにおいて特に限定されるものではない。特に好ましく用いられるものとしては、有機材料として光透過性が高い原料として一般的に知られる、例えば、以下のような(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a),含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b)),スチレン系化合物(c),ビニルエステル類(d)、ポリカーボーネート類等を例示することができ、これらのホモポリマー、あるいはこれらモノマーの2種以上からなる共重合体、およびホモポリマー及び/または共重合体の混合物が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル類を組成として含むものがより好ましく用いることができる。
以上に挙げた重合性モノマーとして具体的に、(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、トリシクロ[5・2・1・02,6 ]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等が挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。また、(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2 −トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3 −テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3 −ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1 −トリフルオロメチル−2,2,2 −トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5 −オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4 −ヘキサフルオロブチルメタクリレート等が挙げられる。さらに、(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。さらには、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではなく、モノマーの単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率がクラッド部のそれに比べて同等かあるいはそれ以上になるように構成モノマーの種類,組成比を組むことが好ましい。
さらに、光学部材を近赤外光用途に用いる場合は、構成するC−H結合に起因した吸収損失が起こるために、特許3332922号公報などに記載されているような重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)、ポリトリフルオロエチルメタクリレート(P3FMA)、ポリヘキサフルオロイソプロピル2−フルオロアクリレート(HFIP 2−FA)などを始めとする、C−H結合の水素原子を重水素原子やフッ素などで置換した重合体を用いることで、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。なお、原料モノマーは重合後の透明性を損なわないためにも、不純物や散乱源となる異物は重合前に十分に低減することが望ましい。
モノマーを重合させてポリマーを製造する場合においては、重合開始剤によって重合を行うことがある。この場合、モノマーの重合反応を開始させる開始剤としては、例えば、ラジカルを生成するものとして、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は勿論これらに限定されるものではなく、2種類以上を併用してもよい。
機械特性や熱物性などの各種物性値を全体にわたって均一に保つために重合度の調整を行うことが好ましい。重合度の調整のためには連鎖移動剤を使う事ができる。連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンなど)、チオフェノール類(例えば、チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオールなど)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は勿論これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
POFの中心部であるコア部が、コア部の中心から外周方向に向かって屈折率分布を有する、屈折率分布型POF(グレーデッドインデックス型POF、以下、GI型POFと称する)の場合には、伝送性能が向上するため、より広帯域の光通信を行うことができ、高性能通信用途に好ましく用いることができる。屈折率分布を付与する方法としては、コア部を形成する重合体に複数の屈折率を有する重合体の組合せやそれらを組合わせた共重合体を用いるか、または、ポリマーマトリクスに屈折率分布を付与するための添加剤(以下、ドーパントと称する)を添加する必要がある。
ドーパントは、併用する前記重合性モノマーの屈折率と異なる化合物である。その屈折率差は0.005以上であるのが好ましい。ドーパントは、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有する。これらは、特許3332922号公報や特開平5−173026号公報に記載されているような、モノマーの合成によって生成される重合体との比較において溶解性パラメータとの差が7(cal/cm3 )1/2 以内であると共に、屈折率の差が0.001以上であり、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して屈折率が変化する性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、いずれも用いることができる。
上記性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、ドーパントとして用いることができる。本実施の形態では、コア部形成用重合性組成物にドーパントを含有させ、コア部を形成する工程において界面ゲル重合法により重合の進行方向を制御し、屈折率調整剤の濃度に傾斜を持たせ、コア部に屈折率調整剤の濃度分布に基づく屈折率分布構造を形成する方法を例示しているが、それ以外にもプリフォーム形成後に屈折率調整剤を拡散させる方法も知られている。(以下、屈折率の分布を有するコア部を「屈折率分布型コア部」と称する)。屈折率分布型コア部を形成することにより、得られる光学部材は広い伝送帯域を有する屈折率分布型プラスチック光学部材となる。また、ドーパントは重合性化合物であってもよく、重合性化合物のドーパントを用いた場合は、これを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いることが好ましい。このような共重合体には、MMA−BzMA共重合体などが挙げられる。
前記ドーパントとしては、例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ジフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)などが挙げられ、中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOが好ましい。また、ドーパントは、例えばトリブロモフェニルメタクリレートのように重合性化合物でもよく、その場合、マトリックスを形成する際に、重合性モノマーと重合性ドーパントとを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、耐熱性の面では有利となる可能性がある。屈折率調整剤のコア部における濃度および分布を調整することによって、POFの屈折率を所望の値に変化させることができる。その添加量は、用途および組み合わされるコア部原料などに応じて適宜選ばれる。
(その他の添加剤)
その他、コア部、クラッド部もしくはそれらの一部には、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、コア部もしくはその一部に耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料モノマーに添加した後、重合することによって、コア部、クラッド部もしくはそれらの一部に含有させることができる。
その他、コア部、クラッド部もしくはそれらの一部には、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、コア部もしくはその一部に耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料モノマーに添加した後、重合することによって、コア部、クラッド部もしくはそれらの一部に含有させることができる。
[光ファイバの製造方法]
以上の素材を用いて光学部材の1つであるプラスチック光ファイバ(POF)を製造する。製造方法に関しては、特に制限はなく、既知の方法を等しく適用することができる。例えば、特開2002−40267号に記載されている溶融紡糸によって直接POFを作製する方法がある。また、母材(プリフォーム)をいったん経由してPOFを作製する方法としては、一括成形法として溶融押出しによるものなどが挙げられる。コア部とクラッド部とをそれぞれ形成する方法としては、コア部の作成後クラッド部の積層付与による方法や、クラッド部となる中空管を作成した後にその内部にコア部を作成する方法等が挙げられる。
以上の素材を用いて光学部材の1つであるプラスチック光ファイバ(POF)を製造する。製造方法に関しては、特に制限はなく、既知の方法を等しく適用することができる。例えば、特開2002−40267号に記載されている溶融紡糸によって直接POFを作製する方法がある。また、母材(プリフォーム)をいったん経由してPOFを作製する方法としては、一括成形法として溶融押出しによるものなどが挙げられる。コア部とクラッド部とをそれぞれ形成する方法としては、コア部の作成後クラッド部の積層付与による方法や、クラッド部となる中空管を作成した後にその内部にコア部を作成する方法等が挙げられる。
GI型のプラスチック光ファイバ母材(GI型プリフォーム)の製造方法の1つとしては、特許3332922号公報に記載されているように、クラッド部となる樹脂の中空管を作製し、その管内にコア部を形成する樹脂組成物を注入し、界面ゲル重合法によりポリマーを重合することによりコア部を形成する方法を例示することができ、またその他には、重合後の屈折率が異なる重合性組成物を逐次添加するコア部の形成法も知られている。なお、本発明に用いられるGI型プリフォームの製造方法は、前述の如く界面ゲル重合法に限定されるものではなく、中空管を回転させて中空管内壁より中心方向に重合する方法なども知られている。また、樹脂組成物は前述のように、単一の屈折率を持つ樹脂組成物に屈折率調整剤を添加するものや、屈折率の異なる樹脂を混合するもの、共重合などが用いられる。また、プラスチック光ファイバは、GI型の他に、ステップインデックス型、擬似GI化したマルチステップインデックス型など様々な屈折率プロファイルを持つものが知られており、以下に記載された製造方法は、これらプラスチック光ファイバを始めとしたさまざまな光学部材の製造方法に適用することもできる。
POFをプリフォームを経由して作製する場合は加熱延伸して作製することができるが、その加熱温度はプリフォームの材質等に応じて、適宜決定することができる。一般的には、部材を構成するポリマーがわずかな力で容易に流動変形する程度の温度、例えばポリメタクリル酸メチルでは、180℃〜250℃中の雰囲気で行われることが好ましい。延伸条件(延伸温度等)は、得られたプリフォームの径、所望のPOFの径および用いた材料等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、線引張力については、特開平7−234322号公報に記載されている様に、溶融したプラスチックを配向させるために0.1N以上としたり、特開平7−234324号公報に記載されている様に溶融延伸後に歪みを残さないようにするために1N以下とすることが好ましい。また、特開平8−106015号公報に記載されている様に、延伸の際に予備加熱を設ける方法等をとることもできる。以上の方法によって得られるPOFについては、得られるPOFの破断伸びや硬度について特開平7−244220号公報に記載の様に規定することでPOFの曲げや側圧特性を改善することができる。
[保護層の形成]
延伸されたPOFは通常、そのままの状態で使用されることはない。例えば、POFの曲げ・耐候性の向上,吸湿による性能低下抑制,引張強度の向上,耐踏付け性付与,難燃性付与,薬品による損傷からの保護,外部光線によるノイズ防止,着色などによる商品価値の向上などを目的としてPOFの表面に1層以上の保護層を被覆した光ファイバ心線として使用する。この本発明の保護層の材料及びPOFに保護層を形成する方法について以下に説明する。なお、保護層の形成に用いられる装置は、延伸装置に直結して延伸直後に一括して行なっても差し支えなく、保護層を1次被覆として多層に被覆を行なう場合には、被覆工程を連続して行っても良い。
延伸されたPOFは通常、そのままの状態で使用されることはない。例えば、POFの曲げ・耐候性の向上,吸湿による性能低下抑制,引張強度の向上,耐踏付け性付与,難燃性付与,薬品による損傷からの保護,外部光線によるノイズ防止,着色などによる商品価値の向上などを目的としてPOFの表面に1層以上の保護層を被覆した光ファイバ心線として使用する。この本発明の保護層の材料及びPOFに保護層を形成する方法について以下に説明する。なお、保護層の形成に用いられる装置は、延伸装置に直結して延伸直後に一括して行なっても差し支えなく、保護層を1次被覆として多層に被覆を行なう場合には、被覆工程を連続して行っても良い。
[保護層形成用材料]
本発明に用いられる保護層形成用の材料には、POFに熱的ダメージ(例えば、変形,変性,熱分解など)を与えないものを選択する。そこで、POFを形成するポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下で、かつ50℃以上で反応硬化可能な素材を用いる。硬化可能温度を50℃以上とするのは、一般的に低い温度(特に室温付近)で硬化する材料は、ポットライフが短く、さらに光ファイバ心線の製造工程で、溶融延伸直後に連続して保護層の被覆工程を行なった場合には、POFによって持ち込まれる予熱で硬化が始まるため、材料の管理や被覆条件の設定が非常に困難になるためである。これら観点を考慮し、かつ、被覆する対象のガラス転移温度Tg(℃)が100℃以上のものである場合には、硬化速度の向上と制御とを両立させるため、硬化温度の下限を(Tg−50)℃まで上げても良い。
本発明に用いられる保護層形成用の材料には、POFに熱的ダメージ(例えば、変形,変性,熱分解など)を与えないものを選択する。そこで、POFを形成するポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下で、かつ50℃以上で反応硬化可能な素材を用いる。硬化可能温度を50℃以上とするのは、一般的に低い温度(特に室温付近)で硬化する材料は、ポットライフが短く、さらに光ファイバ心線の製造工程で、溶融延伸直後に連続して保護層の被覆工程を行なった場合には、POFによって持ち込まれる予熱で硬化が始まるため、材料の管理や被覆条件の設定が非常に困難になるためである。これら観点を考慮し、かつ、被覆する対象のガラス転移温度Tg(℃)が100℃以上のものである場合には、硬化速度の向上と制御とを両立させるため、硬化温度の下限を(Tg−50)℃まで上げても良い。
成形時間(材料が硬化する時間)が1秒以上で、10分以下、好ましくは3分以下であるものを用いることがより好ましい。硬化時間の長いものは、POFを加温条件に曝すことになり好ましくない。さらに保護層形成用材料は長時間流動性を保持しているため厚みの制御などの観点から、硬化時間の短いものが好ましい。成形時間が短すぎると、厚い保護層を設ける場合などに保護層内に硬化ムラを起こすおそれがあるために、好ましくない。なお、POFが可塑性を付与する添加剤の含有量や共重合体の共重合比に分布を持つ場合などの複数の化学的組成から形成される場合には、それら各化学的組成のガラス転移温度のなかで、最も低い温度のガラス転移温度をTg(℃)とみなす。また、POFを構成するポリマーがガラス転移温度を有しないものである場合には、相転移温度(例えば、融点など)の最も低いものを本発明のTg(℃)とみなして制御する。また、本発明においては単一のポリマー(ホモポリマー)からなる場合に可塑性を付与する添加剤を含有させることによってガラス転移温度Tg(℃)に分布が生ずる場合においても、ポリマーのガラス転移温度Tg(℃)とみなす。この材料の硬化温度をTg(℃)以下で、かつ50℃以上とすることにより保護層硬化時の熱ダメージを回避し、熱ダメージによるPOFの変形や各種物性値の劣化、さらには、屈折率分布型コア部を有する場合には屈折率プロファイルの変形を抑止することができる。この被覆工程によって生じる性能低下を抑制できるため、高性能を維持した光学部材を提供することが可能となる。なお、光学部材や保護層形成材料の種類によっては、保護層形成用材料の硬化温度の下限値を(Tg−50)℃とすることもできる。
本発明の保護層形成用材料としては、ポリマー前駆体と反応剤などとを混合した液を熱硬化させるものを好ましく用いることができる。例えば、イソシアネート基を有する化合物と活性水素を有する化合物とを混合して得られるポリウレタンが挙げられる。このような素材は自己の反応性によって反応が進行するため、熱や光のエネルギーを外部より多量に加える必要がない。また、被覆の厚みなどを勘案すれば、光学部材に甚大なダメージを与えるほどの大きな反応熱は発生しない。さらに、素材の選択によっては湿度によって反応が進行するものがあり、反応進行に熱をより必要としない素材もある。以上を具体的に例示するならば、特開平10−158353号公報に記載のNCOブロックプレポリマーと微粉体コーティングアミンとから製造される1液型熱硬化性ウレタン組成物などを挙げることができる。
前記熱硬化性ウレタン組成物から、3次元架橋されている熱硬化性ポリウレタン(以下、3次元ポリウレタンと称する)が形成される。これは例えば複数のイソシアネート基を有する化合物とポリオールとが反応することによって得ることができる。この際には、熱硬化性ウレタン組成物を80℃で5分間保持する。熱硬化性ウレタン組成物中のプレポリマーが3次元的に重合して3次元ポリウレタンが得られる。この方法は、加熱媒体に水などを用いることができるのでコストの点から有利である。
3次元ポリウレタンは、室温においては小さな力でも変形を起こし、その力を除くとほとんど元の形に戻るゴムの性質を有している。柔らかくて弾性があるため力が加えられてもその力が取り除かれた後には元の形状が維持される。そのため、外部から圧力がかかる作業、例えばコネクタの取り付けなどの際に、応力を緩和する機能を有する。これにより、外部からの圧力がPOFに伝播することが抑制される。そのためPOFの変形による光学特性、例えば伝送損失の悪化を抑制することができる。
ポリウレタンは、プレポリマーを熱硬化させることで得られる。このポリウレタンは、通常は、線状構造(Linear PU 、以下ポリウレタンと称する)である。長時間使用の際には、使用可能温度は約60℃である。また、短時間使用時では、約80℃まで使用可能である。しかしながら、本発明に好ましく用いられる3次元ポリウレタンは、長時間使用時でも120℃であり、短時間使用時では130℃〜140℃まで使用可能である。なお、長時間使用とは、200時間以上所定の温度下においてからダンベルサンプルの応力−ひずみ曲線(S−S曲線)を測定する。常温環境で同時間放置したダンベルサンプルのS−S曲線と略同一である場合には、その所定の温度では使用可能であるとみなす。また、短時間使用とは、放置時間が100時間未満であることを意味している。このように3次元ポリウレタンは、線状ポリウレタン(使用可能温度80℃以下)や熱可塑性ポリウレタンエラストマー(使用可能温度100℃以下)と比較して高温まで使用できる。さらに、被覆材料として通常用いられる低密度ポリエチレン(LDPE)では、長時間使用の際には、60℃〜75℃であり、短時間使用の際には80℃〜90℃である。3次元ポリウレタンは、LDPEと比較してもはるかに熱的ダメージを受け難く、耐熱性があることが分かる。
この保護層を付与した光ファイバ心線に更に保護層を形成して光ファイバコードやさらにそれを束ねたプラスチック光ファイバケーブルとして用いることがある。この場合には、3次元ポリウレタンを主成分としている保護層の外周面に更に被覆を行う。被覆樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE),ポリプロピレン(PP),軟質ポリ塩化ビニル(PVC)などが用いられる。被覆の際には、樹脂を所望の温度まで加熱して溶融する。この溶融樹脂の熱がPOFに伝わると伝送損失の悪化を招く。特にコア部をGI型としたときには加熱されると、屈折率分布が変化して広帯域の伝送が可能であるという利点が失われるおそれがある。しかしながら、保護層に3次元ポリウレタンを用いると、3次元ポリウレタンは熱伝導性が低いため、溶融樹脂の熱がPOFに伝わることが抑制される。これによりGI型構造の乱れが生じることがなくなり、伝送損失の悪化が生じない。
このように3次元ポリウレタンをPOFと2次保護層との間に層(以下、下塗り層と称する)として形成することで、樹脂の溶融温度が高いものを被覆する際にも、POFが熱的ダメージを受けることが抑制され、耐熱性を有しつつ熱伝導率が低いので被覆によるPOFへの熱の伝播は減少するため、熱によるダメージの低減が見込める。そのため、3次元ポリウレタンは、保護層形成前の下塗り層として好ましく用いることができる。また、ポリウレタンは、耐摺動性に極めて優れている。そのため、2次保護層を形成する樹脂、例えば、塩化ビニル樹脂,熱可塑性ウレタン樹脂,熱可塑性オレフィン樹脂などと擦れてもその良好な耐摺動性によりPOFに応力が発生することが抑制される。このようにPOFの機械的強度を高めるために2次保護層を設け、その2次保護層から伝えられる側圧やPOFを曲げたときの応力の緩和を1次保護層で行う。これによりPOFに意図しない応力がかかることによる光学特性の悪化を抑制できる。
また、WO95/26374に記載のNCO基含有ウレタンプレポリマーと20μm以下の固形アミンとからなる1液型熱硬化性ウレタン組成物なども用いることもできる。その他に、性能を改善する目的で難燃剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、滑剤などの添加剤や、無機化合物及び/または有機化合物からなる各種フィラーを加えることができる。
なお、使用条件が本発明の内容に適する場合には、室温では流動性を示し、加熱することによりその流動性が消失して硬化する液状ゴムを用いることができる。具体的には、ポリジエン系(例えば、基本構造がポリイソプレン,ポリブタジエン,ブタジエン−アクリロニトリル共重合体,ポリクロロプレンなど),ポリオレフィン系(例えば、基本構造がポリオレフィン,ポリイソブチレンなど),ポリエーテル系(例えば、基本構造がポリ(オキシプロピレン)など),ポリスルフィド系(例えば、基本構造がポリ(オキシアルキレンジスフィド)など),ポリシロキサン系(例えば、基本構造がポリ(ジメチルシロキサン)など)などを挙げることができる。
[保護層形成方法及び装置]
図1に示すようにPOF11を樹脂ポット12に送り込む。樹脂ポット12内には、前記保護層形成用材料(以下、樹脂と称する)13がストックされている。樹脂ポット12の下流側に、保護層の厚みを略均一にするためのダイス14が取り付けられていることが好ましい。POF11が樹脂13内を通ることにより、その表面に樹脂13が塗布される。この樹脂13が塗布されたPOFを以下の説明では、塗布素線15と称する。なお、POF11は、一度ロール状に巻き取られたものから送られるものを用いても良いし、プリフォームを延伸して得られたPOFを連続して用いてもよい。
図1に示すようにPOF11を樹脂ポット12に送り込む。樹脂ポット12内には、前記保護層形成用材料(以下、樹脂と称する)13がストックされている。樹脂ポット12の下流側に、保護層の厚みを略均一にするためのダイス14が取り付けられていることが好ましい。POF11が樹脂13内を通ることにより、その表面に樹脂13が塗布される。この樹脂13が塗布されたPOFを以下の説明では、塗布素線15と称する。なお、POF11は、一度ロール状に巻き取られたものから送られるものを用いても良いし、プリフォームを延伸して得られたPOFを連続して用いてもよい。
塗布素線15は、樹脂硬化用水槽(以下、水槽と称する)16に送られる。水槽16には温水17が入っている。温水17の温度を一定に保持するために水温調節装置18を取り付け、温水17を循環させることが好ましい。温水17の温度は、POFのガラス転移温度Tg(℃)以下で、50℃以上の範囲に調節する。好ましくは、(Tg−50)℃以上Tg(℃)以下とする。最も好ましくは、(Tg−30)℃以上Tg(℃)以下とする。
塗布素線15の搬送はプーリー19,20を用いることが好ましいが、ローラなど他の搬送手段を用いても良い。塗布素線15は、温水により緩やかに加温され、樹脂の流動が生じない程度まで硬化し、保護層が形成され光ファイバ心線21となる。なお、樹脂13は、塗布した後から1秒以上10分以内で硬化するように、水槽内滞留時間が1秒から10分の範囲となるように搬送速度を調節する。これにより、光ファイバ心線21の生産速度を落とさずに、保護層を形成することができるが、その速度範囲に限定されるものではない。
光ファイバ心線21の表面に付着した温水を水分吹き払い除去装置22で除去し、水分吸引除去装置23でさらに水分を除去する。光ファイバ心線21は、引取りローラ24,25で引取り搬送される。引取りローラ25にはモータ26を取り付け駆動する。また、他方の引取りローラ24には、押圧部材(図では、バネ図示している)27を取り付けることで、安定した搬送が行えるために好ましい。
光ファイバ心線21の保護層13aの厚さL1は、20μm以上3mm以下であることが好ましく、50μm以上2mm以下であることがより好ましく、最も好ましくは、80μm以上1mm以下である(図2参照)。20μm未満であると保護被覆の効果が得られない場合がある。また、3mmより厚いと硬化の進行が遅いもしくは未反応の部分が発生し、未反応物が残る場合がある。また、POF11の平均直径L2は0.2mm以上2.0mm以下の範囲であることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。コア部11aの直径及びクラッド部11bの厚みは、それぞれ0.1mm以上1mm以下、0.01mm以上1.9mm以下であることが好ましい。
図3に本発明に係る光学部材である光ファイバ心線の製造に用いられる他の実施形態を図示する。POF31を張力測定装置50を通し、張力を制御しながら搬送する。保護層を形成する前に、除塵装置51でPOF31表面に付着している塵などを除去することが良好な光学特性を保持するために好ましい。連続的に樹脂供給装置52から樹脂ポット32へ樹脂33が供給されている。樹脂ポット32の外側にドライチャンバ53を取り付け乾燥気体供給装置54から乾燥気体(例えば、窒素ガスなど)を送風することで、POF31に樹脂33を塗布する際の塵などの混入を防止できる。また、樹脂ポット32の樹脂33の量の変動を抑制するため、樹脂ポットレベル計63を取り付け一定量に制御することがより好ましい。
POF31は、ダイス35を通ることにより、好ましい厚さの保護層が形成された塗布素線34となる。図1の樹脂ポット12及び図3の樹脂ポット32の液出口先端のリップ開口面積を調整することにより、被覆厚を調整することができる。また、液粘度及びライン速度によっても被覆厚は微調整可能であるため、塗布素線34は、線径測定装置55によりその線径がモニタリングされ、その結果に基づき樹脂ポット32の温度やPOFの搬送速度などを微調整し、好ましい線径の塗布素線とする。加熱チャンバ56に塗布素線34を送り、加熱することで樹脂を硬化させて保護層を形成する。加熱チャンバ56には熱風発生装置57が取り付けられており、熱風が塗布素線34の搬送方向と逆方向に流れるように供給される。なお、熱風の供給方向は、塗布素線34の搬送方向に沿って供給しても良い。また、加熱チャンバ56の入口側と出口側とにそれぞれ温度計58,59を取り付け、温度をモニタリングし微調整を行うことが、保護層の一部が隆起するいわゆるコブの発生を抑制でき、均一な厚さの保護層を形成するために好ましい。樹脂の流動が起きなくなると、塗布素線34は、保護層が形成された光ファイバ心線60となる。なお、本実施形態においても、保護層形成用材料の加熱時間は、1秒以上10分以下であることが好ましい。
光ファイバ心線60の保護層に発生するコブの有無は、コブ検出装置61により監視され、その結果に基づき、加熱チャンバ56の温度調整などがなされる。その後に、引取りローラ42,43により引取り搬送される。引取りローラ43には、モータ44が取り付けられ駆動ローラとなっている。また、引取りローラ42には、バネ45が取り付けられている。さらに、引取りローラ42にファイバ長尺計装置62を取り付け、光ファイバ心線60の長さを計測することが好ましい。
本発明の光学部材は、さらに、必要に応じて本発明の保護層を1次保護層とし、外周にさらに2次(または多層)保護層を設けても良い。1次被覆が充分な厚みを有している場合POFに与える熱ダメージが減少するため、素材の硬化温度の制限はPOFへ直接被覆する場合に比べて、緩くすることができる。2次以降の保護層形成用材料としては、前述の素材以外に従来の被覆素材として用いられている、ポリエチレン、ポリプロピレンをはじめとするポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、各種のナイロン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
具体的に以下の材料も挙げることができる。これらは高い弾性を有しているため、曲げなどの機械的な特性付与の観点でも効果がある。まず、ポリマーの一形態であるゴムを用いることもできる。具体的には、イソプレン系ゴム(例えば、天然ゴム,イソプレンゴムなど),ブタジエン系ゴム(例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム,ブタジエンゴムなど),ジエン系特殊ゴム(例えば,ニトリルゴム,クロロプレンゴムなど),オレフィン系ゴム(例えば、エチレン−プロピレンゴム,アクリルゴム,ブチルゴム,ハロゲン化ブチルゴムなど),エーテル系ゴム,ポリスルフィド系ゴム,ウレタン系ゴムなどが挙げられる。
さらには、熱可塑性エラストマー(TPE)を用いることもできる。熱可塑性エラストマーは、室温ではゴム弾性を示し、高温では可塑化されて成形が容易である物質群である。具体的には、スチレン系TPE,オレフィン系TPE,塩化ビニル系TPE,ウレタン系TPE,エステル系TPE,アミド系TPEなどが挙げられる。なお、前記列記したポリマーは、POFのポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下で成形可能なものであれば、特に上記材料に限定されず、各材料間もしくは上記以外の共重合体や混合ポリマーを用いることもできる。
2次保護層には前述と同様に、難燃剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、昇光剤、滑剤などを導入してもよい。なお、難燃剤については臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤や燐含有のものがあるが、毒性ガス低減などの安全性の観点で難燃剤として金属水酸化物を好ましく使うことができる。金属水酸化物はその内部に結晶水として水分を有しており、またその製法過程での付着水が完全に除去できないため、金属水酸化物による難燃性被覆は本発明の1次保護層の外層に耐湿性被覆を設けてその外層にさらに保護層として設けることが望ましい。また、複数の機能を付与させるために、様々な機能を有する被覆を積層させてもよい。例えば、前述の難燃化以外に、POFの吸湿を抑制するためのバリア層や水分を除去するための吸湿材料、例えば吸湿テープや吸湿ジェルを保護層内や保護層間に有することができ、また可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層等の緩衝材、剛性を挙げるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂に含有すると、得られるプラスチック光ファイバケーブル(以下、光ファイバケーブルと称する)の力学的強度を補強することができることから好ましい。抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。その他に保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。
また、光ファイバケーブルの形状は使用形態によって、POFを同心円上にまとめた集合ケーブルや、一列に並べたテープ心線と言われる態様、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめた集合ケーブルなど用途に応じてその形態を選ぶことができる。
また、本発明の光学部材の1つであるPOFなどは、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型、F05型、MU型、FC型、SC型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
本発明の光学部材としてのPOF及び光ファイバ心線、および光ファイバーケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子や受光素子、光スイッチ、光アイソレータ、光集積回路、光送受信モジュールなどの光部品を含む光信号処理装置等で構成される。また、必要に応じて他のPOFなどと組合わせてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線、車両や船舶などの内部配線、光端末とデジタル機器、デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LAN等をはじめとする、高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
さらに、IEICE TRANS. ELECTRON., VOL. E84-C, No.3, MARCH 2001, p.339-344 「High-Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3, No.6, 2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号等に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用した、より高度な光伝送システムを構築することができる。以上の光伝送用途以外にも照明(導光)、エネルギー伝送、イルミネーション、センサ分野にも用いることができる。
本発明に係る保護層付き光学部材として光伝送体の一種であるプラスチック光ファイバ(POF)から光ファイバ心線を製造する例を用いて説明した。しかしながら、本発明の製造方法によれば、ディッピング(浸漬法)でも被覆できるため、多様な被服形態にも高い順応性を付与することができる。そこで、POF以外にも、光結合器などの短尺な光学部材の被覆や、レンズや光学フィルムの縁取り用保護材などにも好ましく用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料の種類、それらの割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、説明は、実施例である実験1において詳細に行う。実施例である実験2及び3,比較例である実験4ないし7では、実験1と異なる箇所のみを説明する。また、保護層材料,加熱方式,保護層厚,被覆後の伝送損失増加,保護層硬化性は後に表1にまとめて示す。
実験1では、予定するプリフォームの外径に対応する内径を有する十分な剛性を持った内径22mmおよび長さ600mmの円筒状の重合容器に、モノマー(メタクリル酸−メチル(水分を1000ppm以下に除去したもの))の溶液を所定量注入した。重合開始剤としてジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)をモノマー溶液に対して0.5質量%、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンをモノマー溶液に対して0.62質量%配合した。上記混合溶液の注入された重合容器を60℃湯浴中に入れ、震盪を加えながら2時間予備重合を行った。その後、該重合容器を65℃下にて水平状態(円筒の高さ方向が水平となる状態)に保持し、3000rpmにて回転させながら3時間加熱重合した。その後、90℃で24時間の熱処理を行い、高分子(PMMA)からなる円筒管を得た。
次に、該円筒管の中空部に、コア部の原料であるモノマー(メタクリル酸−メチル(水分を1000ppm以下に除去したもの))の溶液と、屈折率調整成分としてジブチルフタレートをモノマー溶液に対して10質量%混合した溶液とを、精度0.2μmの四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過しつつ、濾液を直接注入した。重合開始剤としてジ−t−ブチルパーオキシドをモノマー混合溶液に対し0.016質量%、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンをモノマー混合溶液に対し0.27質量%配合した。この混合溶液等を注入した該円筒管を、該円筒管外径に対し9%だけ広い内径を持つガラス管内に挿入した状態で、加圧重合容器に垂直に静置した。その後、加圧重合容器内を窒素雰囲気に置換した後、0.1MPaまで加圧し、90℃で、48時間加熱重合した。その後、0.4MPaまで加圧し、120℃で、24時間加熱重合および熱処理を行い、プリフォームを得た。該プリフォームの重量平均分子量は10万6000であり、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、2.1であった。なお、このプリフォームの最低ガラス転移温度を示す部位はコア部の中央部で100℃(=Tg)であった。また、コア部はその屈折率の分布に従いガラス転移温度が上昇し、コア部の最外部のガラス転移温度は、105℃であった。
得られたプリフォームには、重合完了時に体積収縮による気泡の混入はなかった。このプリフォームを230℃の熱延伸により線引きを行い、直径300μmのPOFを製造した。得られたPOFの伝送損失値を測定したところ、波長650nmで160dB/km、波長850nmで1250dB/kmであった。図1の樹脂ポット12に1液型熱硬化型ウレタン(サンスター技研(株)社製、ペンギンセメントRD−8014GA、以下エラストマーウレタンと称する)を注入し、ライン速度3m/minで塗布し、図1の温水17を80℃に設定し、その温水中を10秒間走行させて保護層を硬化させた(水槽方式)。保護層厚は、3mmであり、被覆後の伝送損失増加は、波長650nm,850nmのいずれにおいても、0dB/kmであった。また、保護層の硬化性は、硬化反応が終了しており、切断して調べると、全径において固体(○)であった。
実験2では、加熱方式は、実験1と同様(水槽方式)として保護層厚が450μmとなるように被覆を行った。また、実験3では、加熱方式を図3の熱風方式として保護層厚が20μmとなるように被覆を行った。
比較例である実験4では、実験1と同様な保護層の材料を用い、図1の水槽の温度を(Tg−60)℃つまり、40℃温水とし水槽に5分滞留させたところ、保護層は硬化せず(×)、保護層としての役目はなさなかった。実験5では、実験1と同様な保護層の材料を用い、図1の水槽の温度を105℃(Tg+5)℃とし1分滞留させた。被覆後の伝送損失の増加が、波長650nmで20dB/km,850nmで100dB/kmであった。また、保護層の厚みL1は3mmであり、その硬化性は、全径で固体(○)であった。また、実験6では、保護層の材料に水酸化マグネシウム40%を含有したポリエチレンで溶融温度140℃で保護層厚450μmの被覆を施した。被覆後の伝送損失の増加が、波長650nmで80dB/km,850nmで200dB/kmであった。また、保護層の硬化性は、全径で固体(○)であった。
比較例である実験7では、紫外線によって硬化する重合性組成物であるポリエーテルウレタンを被覆厚みが200μmとなるように塗布し、40W/cm2 の高圧水銀灯を連続して配置して、延べ10秒間紫外光が照射されるようにした。重合性組成物は、粘着気味の状態となり硬化性不充分であり、実験1と同様の測定を行うことができなかった。
表1より3次元ポリウレタン(エラストマーウレタン)を20μm以上3mm以下の範囲で保護層を形成した実験1ないし実験3の各実験により得られた光ファイバ心線は、光学特性に優れ,機械的強度も充分なものであった。
11,31 プラスチック光ファイバ
13,33 保護層形成用材料
13a 保護層
16 樹脂硬化用水槽
21,60 光ファイバ心線
56 加熱チャンバ
L1 保護層厚さ
13,33 保護層形成用材料
13a 保護層
16 樹脂硬化用水槽
21,60 光ファイバ心線
56 加熱チャンバ
L1 保護層厚さ
Claims (20)
- ポリマーから構成された光学部材の導光部ではない部位に、保護層形成用材料から保護層を形成する保護層付き光学部材の製造方法において、
前記保護層形成用材料を50℃以上前記ポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下の温度範囲で硬化させて前記保護層を形成することを特徴とする保護層付き光学部材の製造方法。 - 光導波の方向と直交する面にガラス転移温度が分布を有し、最も低いガラス転移温度がTg(℃)のポリマーから構成され光導波部位の周囲に、保護層形成用材料から保護層を形成する保護層付き光学部材の製造方法において、
前記保護層形成用材料を50℃以上前記ポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下の温度範囲で硬化させて前記保護層を形成することを特徴とする保護層付き光学部材の製造方法。 - 前記保護層形成用材料を50℃以上前記ポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下の温度範囲で硬化させて前記保護層を形成することを特徴とする請求項1または2記載の保護層付き光学部材の製造方法。
- 前記保護層形成用材料の加熱時間を1秒以上10分以内とすることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載の保護層付き光学部材の製造方法。
- 前記保護層形成用材料の硬化を温水中で行うことを特徴とする請求項1ないし4いずれか1つ記載の保護層付き光学部材の製造方法。
- 前記保護層形成用材料の硬化物が、エラストマーであることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つ記載の保護層付き光学部材の製造方法。
- 前記保護層形成用材料は、化学反応によって硬化するものであることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1つ記載の保護層付き光学部材の製造方法。
- 前記保護層形成用材料の硬化物が、ポリウレタンであることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1つ記載の保護層付き光学部材の製造方法。
- 前記保護層形成用材料がイソシアネート基を有する化合物と、活性水素を含有する基を有する化合物とを含み、
それらが3次元的に結合したポリウレタン保護層を形成することを特徴とする請求項1ないし8いずれか1つ記載の保護層付き光学部材の製造方法。 - 前記活性水素を含有する基を有する化合物が、2つ以上の水酸基を有するポリオールであることを特徴とする請求項9記載の保護層付き光学部材の製造方法。
- 前記保護層を形成した後に、前記保護層を1次保護層とし、前記1次保護層の周囲に少なくとも1層の保護層をさらに被覆することを特徴とする請求項1ないし10いずれか1つ記載の保護層付き光学部材の製造方法。
- 前記光学部材が、光ファイバであることを特徴とする請求項1ないし11いずれか1つ記載の保護層付き光学部材の製造方法。
- ポリマーから構成される光導波部位を有し、その周囲に保護層を有する保護層付き光学部材において、
前記保護層が、ポリウレタンエラストマーであることを特徴とする保護層付き光学部材。 - 前記保護層が1次保護層であって、前記1次保護層の周囲に少なくとも1層の保護層がさらに被覆されていることを特徴とする請求項13記載の保護層付き光学部材。
- 前記第1保護層の周囲に被覆されている保護層が、熱可塑性樹脂から形成されていることを特徴とする請求項14記載の保護層付き光学部材。
- 前記光学部材が、光ファイバであることを特徴とする請求項13ないし15いずれか1つ記載の保護層付き光学部材。
- 部材表面に保護層を形成する光学部材の製造装置において、
前記部材に保護層形成用材料を塗布する塗布手段と、
前記部材を構成するポリマーの中で最も低いガラス転移温度Tg(℃)以下50℃以上の範囲で温度調整可能な加熱手段と、
を有することを特徴とする保護層付き光学部材の製造装置。 - 前記塗布手段の下流側に、前記保護層の厚さを調整する線径調整部材を有することを特徴とする請求項17記載の保護層付き光学部材の製造装置。
- 前記保護層が1次保護層であって、前記1次保護層の周囲へ少なくとも1層の保護層を被覆する塗布手段を有することを特徴とする請求項17または18記載の保護層付き光学部材の製造装置。
- 前記ポリマーを硬化させる加熱手段として、前記部材の走行路が温水中を通る水槽を備えることを特徴とする請求項17ないし19いずれか1つ記載の保護層付き光学部材の製造装置。
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