JP2005181447A - 光伝送体の製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 プラスチック光ファイバー素線に厚みが均一な保護層を形成する。
【解決手段】 ガラス転移温度が約110℃ポリマーから素線10を製造する。素線10を固定プレートで搬送路の位置決めを行う。素線10は、回転体12の貫通孔12aを通過させる。回転体12を回転させて素線10の搬送路を連続的に変化させる。樹脂ポット13内の樹脂14を塗布して塗布素線18とする。塗布素線18を80℃の温水31中に搬送する。樹脂14が硬化して保護層が形成されて光ファイバー35が得られる。塗布する際に、素線10の搬送路を変化させることで保護層の厚みが均一になる。
【選択図】 図1
【解決手段】 ガラス転移温度が約110℃ポリマーから素線10を製造する。素線10を固定プレートで搬送路の位置決めを行う。素線10は、回転体12の貫通孔12aを通過させる。回転体12を回転させて素線10の搬送路を連続的に変化させる。樹脂ポット13内の樹脂14を塗布して塗布素線18とする。塗布素線18を80℃の温水31中に搬送する。樹脂14が硬化して保護層が形成されて光ファイバー35が得られる。塗布する際に、素線10の搬送路を変化させることで保護層の厚みが均一になる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、光伝送体の製造方法及び製造装置に関し、より詳しくは光伝送体がプラスチック光ファイバーである光伝送体の製造方法及び製造装置に関するものである。
プラスチック光ファイバーは、石英系光ファイバーと較べると、光の伝送損失が大きく長距離の光伝送には向いていないが、大口径化による接続容易性、端末加工容易性、高精度調芯機構が不要になるメリット、コネクター部分の低コスト化、人体への突き刺し災害による危険性の低さ、高い柔軟性による易加工性、易敷設性、耐振動性、低価格などのメリットから、家庭や、車載用途に注目されるだけでなく、高速データ処理装置の内部配線やDVI(Digital Video Interface) リンクなどの極短距離、大容量ケーブルとしても利用が検討されている。
プラスチック光ファイバーは、一般に重合体をマトリックスとする有機化合物からなる芯材(以下、コア部と称する)とコア部と屈折率の異なる外殻(以下、クラッド部と称する)とから構成される。これら部材の製法はプレポリマーを引き出し、もしくは押し出ししてコア部またはクラッド部を同時に繊維状に形成する方法や、光ファイバー母材(以下、プリフォームと称する)を製作してからこのプリフォームを溶融延伸する方法などがある。
プリフォームを用いる方法では180℃から260℃程度の雰囲気中で溶融延伸することによって、所定の外径のプラスチック光ファイバーを作製する。溶融延伸工程では、通常、プリフォームを電気ヒータ等によって内部が加熱された円筒形状の加熱炉内で加熱しながら、下端を引っ張って延伸する。例えば、プリフォームの上部を懸架し、ゆっくりと加熱炉中に降ろし、プリフォームを加熱炉中で溶融させる。糸引きできる柔らかさになるまで加熱し、プリフォームの先端が溶融して自重で落下した後に、糸引きした部分を加熱炉から下方に引き出して引取ローラにかけることによって、連続的に延伸する(例えば、特許文献1参照。)。
このようにして製造した光ファイバーはいわゆる「素線」と呼ばれるものであって、そのままで使用することは少なく、多くの用途において素線の周囲に保護用のコーティングを施し保護層を形成して用いられたり、あるいは所定の内径を持つチューブ内に挿入して用いられている。このように素線を保護することによって、光ファイバーをハンドリング中や劣悪な環境下での使用の際に傷や損傷、マイクロベンディングなどの構造不整、さらには光学特性の劣化から守ることができる。光ファイバーを保護する材料としてはポリ塩化ビニル,ナイロン,ポリプロピレン,ポリエステル,ポリエチレン,エチレン酢酸ビニル共重合体,EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)などの熱可塑性樹脂及び前述以外の熱可塑性樹脂が使用できる(例えば、特許文献1参照。)。
光ファイバーに保護層を付与しようとすると、溶融状態または液状の樹脂が入れられている樹脂浴(樹脂ポット)内にニップルを通して光ファイバーを通過させ、その後に、樹脂浴から取り出された光ファイバーの表面に塗布された樹脂を固化させる工程が用いられている。前記方法は、樹脂粘度,光ファイバー素線外径,ニップル内径,引取り速度(搬送速度)などの条件を決めてしまえば、特殊な制御などを必要とせず、比較的安定に保護層を形成することができる。そこで、石英系光ファイバーへの紫外線硬化樹脂の塗布などで行われている。石英系光ファイバーへの紫外線硬化樹脂の塗布では、石英系光ファイバー母材を熱溶融して線引きするための線引き装置に、紫外線硬化樹脂の塗布装置も取りつけて、プリフォームを線引きして素線を作製した後にオンラインで保護層を付すことが多い。石英系光ファイバーの線引き速度は1000m/minから2000m/min程度と高速なため、樹脂粘度が高いと樹脂切れ、樹脂抵抗による素線張力上昇などの問題が発生し、保護層の外径変動を引き起こしてしまうため、樹脂の粘度は充分下げられている。
一方、プラスチック光ファイバー(以下、POFとも称する)の製造では、線引き速度が100m/min以下と、低い速度で延伸を行うことが一般的である。そこで、線引き速度の観点では、保護層の安定形成は一見、容易に思われる。しかし実際は、POFは、熱に弱く延伸時の張力も小さくなければならない。また、化学的にも分解しやすいため、保護層を形成する材料の選択には、POFの性能を損なわない配慮が必要になってくる。例えば石英系光ファイバーに用いられる紫外線硬化樹脂は、硬化時の自己発熱によって100℃以上になるため、POFに使うと、硬化時にファイバー本体が柔らかくなって伸びてしまうなどの弊害が発生する。POFのうち、POF中心部分から外周に向かって屈折率分布を持たせた、屈折率分布型プラスチック光ファイバー(GI−POF)では、光ファイバーのガラス転移温度(Tg)が下がっているものもあり、更に熱による性能劣化が懸念される。一般的にPOFは石英系光ファイバーより引っ張りに弱く、特に線引き時には、低張力で延伸しないと、線径変動や、POF内部の屈折率に差を持たせている、いわゆる界面の部分で変形が起こり、構造不整、マイクロベンディングなどのトラブルを引き起こす。また、プラスチックを溶解したり内部に浸透するような材料を使用するのは、注意が必要である。
この様にPOF用の保護層形成材料には、石英系光ファイバーへ塗布する材料と違った配慮が必要になる。更にPOFの場合は20μm以上、場合によっては100μm以上、さらには500μm以上の厚みの保護層形成が求められる場合もあり、保護層形成材料は高粘度のものが用いられることが多い。
このような条件下でのPOF保護層の形成は、樹脂ポット内部で、樹脂が素線に引きずられるため、線引き速度が低い場合でも、樹脂表面の凹みが顕著になり、素線表面への樹脂供給が阻害されて、保護層が均一に形成されない問題が発生しやすい。線引き速度が20m/minから100m/minであっても、保護層形成がうまく行かないために、さらに線引き速度を遅くしたり、保護層形成装置を別に設けてオフライン処理をしたりするなど、製造上、生産性の低下、装置の多様化、コストアップを招いている。
本発明の目的は、光伝送体の素線を被覆する際に、素線に熱による劣化や、機械的なダメージを与えることなく、保護層の被覆外径の変動を小さく保つと共に素線の搬送速度を上げることができる光伝送体の製造方法及び製造装置を提供することである。
本発明者が、鋭意検討を行った結果、光伝送体素線を液状樹脂浴の中を通して被覆した後に、素線の素材のガラス転移温度(Tg)以下50℃以上の範囲で樹脂を硬化させると、実用に耐える保護層を設けることができることを見出した。なお、素材の種類によっては、ガラス転移温度(Tg)以下(ガラス転移温度(Tg)−50℃)以上の範囲が好ましい場合もあることも見出した。さらに、光伝送体素線を樹脂浴に通す前に、通路(以下、搬送路とも称する)を適宜変化させることで厚みが略均一な保護層を形成できることを見出した。なお、本発明において光伝送体素線には、必ずしも全く被覆のなされていない素線だけでなく、既に1層以上の保護層が被覆されているものも含むものとする。
本発明の光伝送体の製造方法は、光導波路となる素線を保護層形成用材料中に通過させることで前記保護層形成用材料の塗布を行い保護層を形成する光伝送体の製造方法において、前記保護層形成用材料中での前記素線の通路を変化させながら前記塗布を行う。前記光導波路がポリマーから構成されていることが好ましい。前記素線が、光導波の方向と直交する面にガラス転移温度が分布を有していることが好ましい。前記保護層形成用材料を50℃以上、前記光導波路中の最も低いガラス転移温度を示す部位のガラス転移温度以下の範囲で硬化させて前記保護層を形成することが好ましい。あるいは、前記保護層形成用材料を(Tg−50)℃以上Tg(℃)以下の範囲で硬化させて前記保護層を形成することが好ましい。前記素線の搬送速度を2m/min以上100m/min以下の範囲とすることが好ましく、5m/min以上50m/min以下の範囲であることがより好ましく、最も好ましくは10m/min以上30m/min以下の範囲である。
前記保護層形成用材料を塗布した後に10分以内加熱することが好ましく、より好ましくは1秒以上10分以内加熱することである。前記保護層厚さを20μm以上3mm以下の範囲に形成することが好ましい。前記素線を形成するポリマーが、(メタ)アクリル酸及び/またはそれらのエステルの単量体を重合させた重合体を主成分とすることが好ましい。本発明は前記保護層形成用材料が高粘性液体である場合でも良好な被覆層が得られるため、好ましく用いることができる。前記保護層形成用材料がエラストマーであることが好ましい。前記保護層形成用材料の粘度(絶対粘度)は、25℃において10Pa・s以上500Pa・s以下であることが好ましい。本発明における高粘性とは10Pa・s以上を意味する。なお、本発明において、粘度は、回転ロータを用いたB型粘度計により測定される値を用いる。前記光伝送体が、光ファイバーであることが好ましい。前記光ファイバーのコア部が屈折率分布を有するように構成されているものがより好ましい。
本発明の光伝送体の製造装置は、光導波路となる素線の表面に保護層を形成する光伝送体の製造装置において、前記素線に保護層形成用材料を塗布する塗布手段と、前記塗布手段の上流側に配置され、前記塗布手段に搬送される前記素線の搬送路を変化させる搬送路変化手段とを有する。前記搬送路変化手段は、前記搬送路のうち前記塗布手段への進入方向と前記搬送路変化手段の回転軸とのなす角が、0.5°以上25°以下に配置されていることが好ましい。前記素線の中で最も低いガラス転移温度を示す部位のガラス転移温度以下50℃以上の範囲で温度調整可能な加熱手段が、前記塗布手段の下流に配置されていることが好ましい。前記塗布手段の下流側に、前記保護層の厚さを調整する線径調整部材を有することが好ましい。前記保護層形成用材料を溜める容器を備え、前記容器と前記塗布手段との間に前記素線の搬送路を固定化する手段が配置されていることが好ましい。
本発明の光伝送体の製造装置は、溶融した保護層形成用材料が入れられている樹脂ポットを有し、光導波路となる素線を前記樹脂ポットに通し前記保護層形成用材料を塗布し、前記素線表面に前記保護層形成用材料から保護層を形成する光伝送体の製造装置において、前記樹脂ポットの上方に配置され、前記樹脂ポット内の前記素線の通路を変化させる通路変化手段を有する。前記通路変化手段は、前記素線の通路が形成されたガイド部材と、前記素線通路と交差する方向で前記ガイド部材を変位させる変位手段とを有することが好ましい。前記通路変化手段は、前記素線の通路が形成された回転体であって、前記素線通路が前記回転体の回転軸に対して偏心した位置に形成されていることが好ましい。
前記素線を構成するポリマーの中で最も低いガラス転移温度Tg(℃)以下50℃以上の範囲で温度調整可能な加熱手段が、前記樹脂ポットの下方に配置されていることが好ましい。なお、前記加熱手段は、Tg(℃)以下(Tg−50)℃以上の範囲で温度調整可能なものを用いることもできる。前記樹脂ポットの下方に、前記保護層の厚さを調整するダイスを有することが好ましい。前記通路変化手段の上方に配置され、前記素線の通路を固定する第1の通路固定手段と、前記樹脂ポットの下方に配置され、前記保護層形成用材料が塗布された素線の通路を固定する第2の通路固定手段とを有することが好ましい。
本発明の光伝送体の製造方法によれば、光導波路となる素線を保護層形成用材料中に通過させることで前記保護層形成用材料の塗布を行い保護層を形成する光伝送体の製造方法において、前記保護層形成用材料中での前記素線の通路を変化させながら前記塗布を行うから、搬送速度を高速にしても、液切れを生じさせず被覆でき、さらに保護層の厚みの変動を抑制できる。また、保護層形成用材料に高粘度の熱可塑性樹脂,エラストマーを用いた際に、前記各効果がより生じる。
本発明の光伝送体の製造方法によれば、光導波路となる素線を保護層形成用材料中に通過させることで前記保護層形成用材料の塗布を行い保護層を形成する光伝送体の製造方法において、前記保護層形成用材料中での前記素線の通路を変化させながら前記塗布を行い、前記保護層形成用材料を50℃以上、前記光導波路中の最も低いガラス転移温度を示す部位のガラス転移温度以下の範囲で硬化させて前記保護層を形成するから、素線の搬送速度を上昇させることが可能となると共に、保護層の厚みの変動が抑制され伝送損失の悪化も抑制される光伝送体を得ることができる。特に、素線へ直接保護層を設ける一次被覆において、素線を被覆する際に与えられる熱ダメージを低減でき、その特性劣化を抑制する効果が高い。また、前記光伝送体がプラスチック光ファイバーであるときに、本発明を適用することで、光学特性に優れたプラスチック光ファイバーを得ることが可能となる。
本発明の光伝送体の製造装置は、光導波路となる素線の表面に保護層を形成する光伝送体の製造装置において、前記素線に保護層形成用材料を塗布する塗布手段と、前記塗布手段の上流側に配置され、前記塗布手段に搬送される前記素線の搬送路を変化させる搬送路変化手段とを有するから、搬送速度を高速にしても、保護層形成用材料の液切れを生じさせず厚みが略均一の保護層を形成できる。
本発明の光伝送体の製造装置は、溶融した保護層形成用材料が入れられている樹脂ポットを有し、光導波路となる素線を前記樹脂ポットへ通し前記保護層形成用材料から保護層を形成する光伝送体の製造装置において、前記樹脂ポットの上方に配置され、前記樹脂ポット内の前記素線の通路を変化させる通路変化手段と、前記通路変化手段の上方に配置され、前記素線の通路を固定する第1の通路固定手段と、前記樹脂ポットの下方に配置され、前記保護層形成用材料が塗布された素線の通路を固定する第2の通路固定手段とを有するから、前記素線に前記保護層形成用材料を塗布する際に、好適な張力が前記素線に付与されているため、厚みが略均一に保護層形成用材料を塗布することができる。これにより、形成される保護層の厚みの変動幅を極めて小さくできる。
本発明に好ましく用いられる原料ポリマー,開始剤,連鎖移動剤や屈折率調整剤(以下、ドーパントと称する)を例示する。次に、本発明の一実施態様として、高い伝送特性が得られるクラッド部からコア部へ連続的に屈折率の変化する屈折率分布型(グレーデッドインデックス型,GI型)プラスチック光ファイバーのプリフォームの製造方法について説明する。そして、プリフォームを溶融延伸してプラスチック光ファイバー素線(以下、素線と称する)を製造する方法を説明する。最後に本発明に係る素線に保護層を設ける光伝送体の製造方法及び製造装置についてプラスチック光ファイバーを例に示して説明する。以下、実施の形態を例示するが、この例示はあくまでも本発明を詳細に説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。
光伝送体、特にプラスチック光ファイバーを作るための材料は、光伝送の機能を損なわない限りにおいて特に限定されるものではない。特に好ましく用いられるものとしては、有機材料として光透過性が高い原料として一般的に知られている、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類(フッ素不含(メタ)アクリル酸エステル(a),含フッ素(メタ)アクリル酸エステル(b)),スチレン系化合物(c),ビニルエステル類(d)、ポリカーボーネート類等を例示することができ、これらのホモポリマー、あるいはこれらモノマーの2種以上からなる共重合体、およびホモポリマー及び/または共重合体の混合物が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル類を組成として含むものをより好ましく用いることができる。
以上に挙げた重合性モノマーとして具体的に、(a)フッ素不含メタクリル酸エステルおよびフッ素不含アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルメチル、トリシクロ[5・2・1・02,6 ]デカニルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等が挙げられ、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−tert−ブチル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。また、(b)含フッ素アクリル酸エステルおよび含フッ素メタクリル酸エステルとしては、2,2,2 −トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3 −テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,3 −ペンタフルオロプロピルメタクリレート、1 −トリフルオロメチル−2,2,2 −トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5 −オクタフルオロペンチルメタクリレート、2,2,3,3,4,4 −ヘキサフルオロブチルメタクリレート等が挙げられる。さらに、(c)スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。さらには、(d)ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルフェニルアセテート、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。勿論、これらに限定されるものではなく、モノマーの単独あるいは共重合体からなるポリマーの屈折率がクラッド部のそれに比べて同等かあるいはそれ以上になるように構成モノマーの種類,組成比を組み、コア部を形成する。特に好ましいポリマーとしては、透明樹脂であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)が挙げられる。
さらに、光学部材を近赤外線用途に用いる場合は、構成するC−H結合に起因した吸収損失が起こるために、特許3332922号公報などに記載されているような重水素化ポリメチルメタクリレート(PMMA−d8)、ポリトリフルオロエチルメタクリレート(P3FMA)、ポリヘキサフルオロイソプロピル2−フルオロアクリレート(HFIP 2−FA)などを始めとする、C−H結合の水素原子(H)を重水素原子(D)やフッ素(F)などで置換した重合体を用いることで、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。なお、原料モノマーは重合後の透明性を損なわないためにも、不純物や散乱源となる異物は重合前に十分に低減することが望ましい。
モノマーを重合させてポリマーを製造する場合においては、重合開始剤によって重合を行うことがある。この場合、モノマーの重合反応を開始させる開始剤としては、例えば、ラジカルを生成するものとして、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物が挙げられる。また、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジ−tert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は勿論これらに限定されるものではなく、2種類以上を併用してもよい。
機械特性や熱物性などの各種物性値を全体にわたって均一に保つために重合度の調整を行うことが好ましい。重合度の調整のためには連鎖移動剤を使う事ができる。連鎖移動剤については、併用する重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択できる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(例えば、n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(例えば、チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いることが好ましい。特に、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子(D)やフッ素原子(F)で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、連鎖移動剤は勿論これらに限定されるものではなく、これら連鎖移動剤は2種類以上を併用してもよい。
プラスチック光ファイバーの中心部であるコア部が、コア部の中心から外周方向に向かって屈折率分布を有するGI布型プラスチック光ファイバーの場合には、伝送性能が向上するため、より広帯域の光通信を行うことができ、高性能通信用途に好ましく用いることができる。屈折率分布を付与する方法としては、コア部を形成する重合体に複数の屈折率を有する重合体の組合せやそれらを組合わせた共重合体を用いるか、または、ポリマーマトリクスに屈折率分布を付与するための添加剤であるドーパントを添加する必要がある。
ドーパントは、併用する前記重合性モノマーの屈折率と異なる化合物である。その屈折率差は0.005以上であるのが好ましい。ドーパントは、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有する。これらは、特許3332922号公報や特開平5−173026号公報に記載されているような、モノマーの合成によって生成される重合体との比較において溶解性パラメータとの差が7(cal/cm3 )1/2 以内であると共に、屈折率の差が0.001以上であり、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して屈折率が変化する性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、いずれも用いることができる。
また、ドーパントは重合性化合物であってもよく、重合性化合物のドーパントを用いた場合は、これを共重合成分として含む共重合体がこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いる。上記性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、ドーパントとして用いることができる。本実施の形態では、コア部形成用重合性組成物にドーパントを含有させ、コア部を形成する工程において界面ゲル重合法により重合の進行方向を制御し、ドーパントの濃度に傾斜を持たせ、コア部にドーパントの濃度分布に基づく屈折率分布構造を形成する方法を例示する。このように、屈折率の分布を有するコア部を「屈折率分布型コア部」と称する。屈折率分布型コア部を形成することにより、得られる光学部材は広い伝送帯域を有する屈折率分布型プラスチック光伝送体となる。なお、それ以外にもプリフォーム形成後にドーパントを拡散させる方法も知られている。
前記ドーパントとしては、例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジル−n−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)などが挙げられ、中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOが好ましい。また、ドーパントは、例えばトリブロモフェニルメタクリレートのように重合性化合物でもよく、その場合、マトリックスを形成する際に、重合性モノマーと重合性ドーパントとを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、耐熱性の面では有利となる可能性がある。ドーパントのコア部における濃度および分布を調整することによって、プラスチック光ファイバーの屈折率を所望の値に変化させることができる。その添加量は、用途および組み合わされるコア部原料などに応じて適宜選ばれる。なお、屈折率分布を付与した場合、重合性のないドーパントであればドーパントが可塑剤として作用する場合があり、添加量に応じてポリマーのガラス転移温度が下がることがある。重合性を有するドーパントであれば、その共重合体固有のガラス転移温度を示すため、屈折率分布を有したコア部は通常はガラス転移温度に分布を持つ。
(その他の添加剤)
その他、コア部、クラッド部もしくはそれらの一部には、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、コア部もしくはその一部に耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバー増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料モノマーに添加した後、重合することによって、コア部、クラッド部もしくはそれらの一部に含有させることができる。
その他、コア部、クラッド部もしくはそれらの一部には、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、コア部もしくはその一部に耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバー増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料モノマーに添加した後、重合することによって、コア部、クラッド部もしくはそれらの一部に含有させることができる。
以上の原料を用いてプラスチック光ファイバーの素線を製造する。製造方法に関しては、特に制限はなく、既知の方法を等しく適用することができる。例えば、溶融押出しや溶融紡糸によって直接光ファイバーを作成する方法がある。プリフォームをいったん経由して作製する方法が挙げられる。また、一括成形法としては、コア部の作製後にクラッド部への積層付与による方法や、クラッド部となる中空管を作製した後にその内部にコア部を作成する方法等が挙げられる。
GI型のプラスチック光ファイバープリフォーム(GI型プリフォーム)の製造方法は、国際公開第93/08488号パンフレット,特許3332922号公報に記載されているように、クラッド部となる樹脂の中空管を作成し、その管内にコア部を形成する方法を例示することができる。またその他には、重合後の屈折率が異なる重合性組成物を逐次添加するコア部の形成方法も知られている。なお、本発明に用いられるGI型プリフォームの製造方法は、前述の如く界面ゲル重合法に限定されるものではない。また、樹脂組成物は前述のように、単一の屈折率を持つ樹脂組成物にドーパントを添加するものや、屈折率の異なる樹脂を混合するもの、共重合などが用いられる。また、プラスチック光ファイバーは、GI型の他に、シングルモード型,ステップインデックス型など様々な屈折率プロファイルを持つものが知られており、本発明はこれらいずれのプラスチック光ファイバーの製造方法にも適用することもできる。
素線をプリフォームを経由して作成する場合は加熱延伸して作製する。その加熱温度はプリフォームの材質等に応じて、適宜決定することができる。プラスチック光ファイバーの場合、一般的には、120℃〜250℃中の雰囲気で行われることが好ましい。延伸条件(延伸温度等)は、得られたプリフォームの径、所望のプラスチック光ファイバーの径および用いた材料等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、線引張力については、特開平7−234322号公報に記載されている様に、溶融したプラスチックを配向させるために0.1N以上としたり、特開平7−234324号公報に記載されている様に溶融延伸後に歪みを残さないようにするために1N以下としたりすることが好ましい。また、特開平8−106015号公報に記載されている様に、延伸の際に予備加熱を設ける方法等をとることもできる。以上の方法によって得られるプラスチック光ファイバーについては、得られる素線の破断伸びや硬度について特開平7−244220号公報に記載の様に規定することで光ファイバーの曲げや側圧特性を改善することができる。
[保護層形成用材料]
本発明に用いられる保護層形成用の材料には、素線に熱的ダメージ(例えば、変形,変性,熱分解など)を与えないものを選択する。そこで、素線を形成するポリマーは、50℃以上ガラス転移温度Tg(℃)以下で硬化可能なものを用いることが好ましい。または、ガラス転移温度Tg(℃)以下(Tg−50)℃以上で硬化可能なポリマーを用いる。硬化可能温度を50℃以上とするのは、これより一般的に低い温度で硬化する素材は、ポットライフが短く、さらに延伸直後に連続して保護層の被覆工程を設けた場合には光ファイバーによって持ち込まれる予熱で硬化が始まるため、材料の管理や被覆条件の設定が非常に困難になるためである。
本発明に用いられる保護層形成用の材料には、素線に熱的ダメージ(例えば、変形,変性,熱分解など)を与えないものを選択する。そこで、素線を形成するポリマーは、50℃以上ガラス転移温度Tg(℃)以下で硬化可能なものを用いることが好ましい。または、ガラス転移温度Tg(℃)以下(Tg−50)℃以上で硬化可能なポリマーを用いる。硬化可能温度を50℃以上とするのは、これより一般的に低い温度で硬化する素材は、ポットライフが短く、さらに延伸直後に連続して保護層の被覆工程を設けた場合には光ファイバーによって持ち込まれる予熱で硬化が始まるため、材料の管理や被覆条件の設定が非常に困難になるためである。
生産コストの低減のために、成形時間(材料が硬化する時間)が1秒以上で10分以下、好ましくは1秒以上5分以下であるものを用いることがより好ましい。硬化時間の長いものは、素線を加温状態に曝すことになり好ましくなく、さらに保護層素材は長時間流動性を保持しているため厚みの制御などの観点から、硬化時間の短いものが好ましい。逆に長すぎると厚い保護層を設ける場合などに保護層内に硬化ムラを起こすおそれがあるために好ましくない。
素線が複数のポリマーから形成される場合には、それら各ポリマーのガラス転移温度のなかで、最も低い温度のガラス転移温度をTg(℃)とみなす。また、素線を構成するポリマーがガラス転移温度を有しないものである場合には、相転移温度(例えば、融点など)の最も低いものを本発明のTg(℃)とみなす。この素材の硬化温度をTg(℃)以下50℃以上のものを選択することにより保護層硬化時の熱ダメージを回避し、熱ダメージによる素線の変形,各種物性値の劣化,さらには、屈折率分布型コア部を有する場合には屈折率プロファイルの変形を抑止することができ、この被覆工程によって生じる性能低下を抑制できるため、高性能を維持した光伝送体を提供することが可能となる。
保護層形成用材料としては、具体的に以下の材料を挙げることができる。これらは高い弾性を有しているため、曲げなどの機械的な特性付与の観点でも効果がある。まず、ポリマーの一形態であるゴムを用いることもできる。具体的には、イソプレン系ゴム(例えば、天然ゴム,イソプレンゴムなど),ブタジエン系ゴム(例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム,ブタジエンゴムなど),ジエン系特殊ゴム(例えば,ニトリルゴム,クロロプレンゴムなど),オレフィン系ゴム(例えば、エチレン−プロピレンゴム,アクリルゴム,ブチルゴム,ハロゲン化ブチルゴムなど),エーテル系ゴム,ポリスルフィド系ゴム,ウレタン系ゴムなどが挙げられる。
また、保護層形成用材料としては、室温では流動性を示し加熱することによりその流動性が消失して硬化する液状ゴムを用いることができる。具体的には、ポリジエン系(例えば、基本構造がポリイソプレン,ポリブタジエン,ブタジエン−アクリロニトリル共重合体,ポリクロロプレンなど),ポリオレフィン系(例えば、基本構造がポリオレフィン,ポリイソブチレンなど),ポリエーテル系(例えば、基本構造がポリ(オキシプロピレン)など),ポリスルフィド系(例えば、基本構造がポリ(オキシアルキレンジスフィド)など),ポリシロキサン系(例えば、基本構造がポリ(ジメチルシロキサン)など)などを挙げることができる。
保護層の材料としてはさらには、熱可塑性エラストマー(TPE)を用いることもできる。熱可塑性エラストマーは、室温ではゴム弾性を示し、高温では可塑化されて成形が容易である物質群である。具体的には、スチレン系TPE,オレフィン系TPE,塩化ビニル系TPE,ウレタン系TPE,エステル系TPE,アミド系TPEなどが挙げられる。なお、前記列記したポリマーは、素線のポリマーのガラス転移温度Tg(℃)以下で成形可能なものであれば、特に上記材料に限定されず、各材料間もしくは上記以外の共重合体や混合ポリマーを用いることもできる。
また、ポリマー前駆体と反応剤などとを混合した液を熱硬化させるものを用いることができる。例えば、特開平10−158353号公報に記載のNCOブロックプレポリマーと微粉体コーティングアミンとから製造される1液型熱硬化性ウレタン組成物を挙げることができる。また、WO95/26374に記載のNCO基含有ウレタンプレポリマーと20μm以下の固形アミンとからなる1液型熱硬化性ウレタン組成物なども用いることもできる。その他に、性能を改善する目的で難燃剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、滑剤などの添加剤や、無機化合物及び/または有機化合物からなる各種フィラーを加えることができる。
POFでは、厚みが厚い保護層(例えば、約500μm)を形成する場合が多く、保護層形成用材料としては、熱可塑性樹脂(例えば、前記エラストマー)が高粘度の物性を有するものを用いることが好ましい。粘度は、特に限定されるものではないが、25℃においては、10Pa・s以上500Pa・s以下、40℃においては、1Pa・s以上200Pa・s以下のものを用いることで、素線に熱可塑性樹脂を塗布する際に、樹脂の液切れが生じることを抑制できる。
[保護層の形成]
延伸された素線は通常、そのままの状態で使用されることはない。例えば、素線の曲げ・耐候性の向上,吸湿による性能低下抑制,引張強度の向上,耐踏付け性付与,難燃性付与,薬品による損傷からの保護,外部光線によるノイズ防止,着色などによる商品価値の向上などを目的として素線の表面に1層以上の保護層を設け被覆した光ファイバーとして使用する。保護層の材料及び素線に保護層を形成する方法について以下に説明する。なお、保護層の形成に用いられる被覆装置は、延伸装置に直結して延伸と同時に(延伸直後に)一括して行っても差し支えない。
延伸された素線は通常、そのままの状態で使用されることはない。例えば、素線の曲げ・耐候性の向上,吸湿による性能低下抑制,引張強度の向上,耐踏付け性付与,難燃性付与,薬品による損傷からの保護,外部光線によるノイズ防止,着色などによる商品価値の向上などを目的として素線の表面に1層以上の保護層を設け被覆した光ファイバーとして使用する。保護層の材料及び素線に保護層を形成する方法について以下に説明する。なお、保護層の形成に用いられる被覆装置は、延伸装置に直結して延伸と同時に(延伸直後に)一括して行っても差し支えない。
本発明では、図1に示すように素線10は、固定プレート11の貫通孔11aを通過し、さらに回転体12の貫通孔12aを通った後に樹脂ポット13に送り込まれる。この点については、後に詳細に説明する。樹脂ポット13内には、前記保護層形成用材料(以下、樹脂と称する)14がストックされている。樹脂ポット13の下流側には、保護層の厚みを略均一にするための線径調整部材であるダイス15が取り付けられていることが好ましい。樹脂ポット13には樹脂供給装置16と温調機17とが設けられている。これらにより、樹脂ポット13内には、所望の量の樹脂14が略一定温度に加熱され溶融液状態となっている。素線10が樹脂14内を通ることにより、その表面に樹脂14が塗布される。この樹脂14が塗布された素線を以下の説明では、塗布素線18と称する。なお、素線10は、一度ロール状に巻き取られたものから送られるものを用いても良いし、プリフォームを延伸して得られた素線を連続して供給しても良い。
素線10が樹脂ポット13に送り込まれる前に、素線10の搬送時に生じるぶれを抑制するための固定プレート11が設置されている(図1及び図2参照)。固定プレート11には貫通孔11aが形成されており、その貫通孔11aを素線10が通る。素線10が固定プレート11に接触する部分(以下、接触面と称する)11bは、素線10に損傷を与えないように曲面とし、摺動抵抗の少ない材料で作られていることが好ましい。その材料としては例えば、フッ素樹脂,ポリアセタール樹脂,ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。
固定プレート11の下流には回転体12があり、回転軸12bから離れた位置に貫通孔12aが形成されている。貫通孔12aの接触面12cも素線10に損傷を与えないように曲面とし、摺動抵抗の少ない材料で作られていることが好ましい。例えば、フッ素樹脂,ポリアセタール樹脂,ポリアミドイミド樹脂及びそれらの共重合物またはブレンド物などが挙げられる。回転体12を図示しない回転装置により回転させながら素線10を貫通孔12aに通すことで、樹脂14を塗布する樹脂ポット13への素線10の搬送路を変化させることが出来る。図2にその一例として搬送路19を示している。回転体12の回転は、連続的でも、断続的でもよい。これによって、樹脂ポット13内の樹脂14の材料表面に発生した凹みによる樹脂14の塗布不良を抑制することが出来る。なお、貫通孔11a,12aの径は、素線10の1.1倍〜1.5倍の範囲であると、素線10が貫通孔11a,12aを通過する際に、無理な応力が付加されないために好ましい。
固定プレート11の出口と回転体12の入口との距離をL1(mm)とし、回転体12の出口と樹脂ポット入口13aとの距離をL2(mm)とする。また、回転軸12bから貫通孔12aの中心までの径をR(mm)とする。本発明において、距離L1,L2、径Rは特に限定されるものではない。一実施形態として距離L1は、100mm〜300mm,距離L2は、100mm〜300mm、径Rは、2mm〜40mmの形態が挙げられる。また、素線10の搬送路と回転軸12bを始点とする中心線20とのなす角(以下、搬送角と称する)θは、0.5°以上25°以下が好ましく、より好ましくは1°以上10°以下であり、最も好ましくは1°以上5°以下である。搬送角θが0.5°未満であると本発明に係る素線の搬送路を変化させることにより保護層を均一に塗布する効果が生じないおそれがある。また、25°を超えると、素線10に無理な張力が付与され、素線10に搬送不良が生じるおそれがある。
図3に示すように固定プレート11の貫通孔11aの素線の接する面11bは曲面であることが好ましい。素線の直径をSR(mm)とすると、貫通孔の曲面の半径R1は、20×SR(mm)以上50×SR(mm)以下であることが好ましい。また、回転体12の貫通孔12aの曲面12cの半径R2も20×SR(mm)以上50×SR(mm)以下であることが好ましい。さらに、回転体12の回転速度も特に限定されるものではないが具体的には、素線10の搬送速度を10m/min以上30m/min以下とした場合に、回転体12の連続的な回転速度を0.1回/秒以上1回/秒以下の範囲とすることが好ましい。このように本発明では、素線10の搬送速度を30m/min以上300m/min以下の範囲の高速にしても、素線10の搬送路を変化させているので、樹脂14の塗布不良が発生することを抑制できる。なお、回転体の回転は連続的であっても良いし、間欠的であっても良いが、連続的であることがより好ましい。
なお、本発明において素線の搬送路(通路)を変化させる手段は、図示されている回転体12に限定されるものではない。例えば、素線の通路となる貫通孔を有するガイド板を回転体12の替わりに設けても良い。そのガイド板を素線の搬送方向と交差する方向で変位させることで、樹脂ポット13内での素線10の搬送路が変化して、樹脂14の塗布を良好に行うことが可能となる。
塗布素線18は、樹脂硬化用水槽(以下、水槽と称する)30に送られる。水槽30には温水31が入っている。液体循環温調装置32を取り付け、温水31を循環させることがコストを低減できると共に温水31の温度を略一定に保持できるために好ましい。温水31の温度は、素線10のガラス転移温度Tg(℃)以下50℃以上とする。または、Tg(℃)以下(Tg−50)℃以上の範囲に調節する。好ましくは、(Tg−40)℃以上Tg(℃)以下とする。最も好ましくは(Tg−30)℃以上Tg(℃)以下とする。なお、樹脂14を硬化させるために水槽30内に入れる液体は、温水に限定されない。たとえば、加熱時に蒸気の発生が少ない液体や、樹脂14を乾燥させやすい液体など、光ファイバーの性能に悪影響を与えない物質であれば、各種の液体を使用することが出来る。
塗布素線18の搬送はプーリー33,34を用いることが搬送を安定に行えるために好ましいが、ローラなど他の搬送手段を用いても良い。塗布素線18は、温水31により緩やかに加温され、樹脂14の流動が生じない程度まで硬化し、保護層が形成され光ファイバー35となる。なお、樹脂14は、塗布した後から1秒以上10分以内で硬化させることが好ましい。1秒未満であると表面張力による樹脂14の自己形成能が十分に発現せず、塗布した際にスジなどの表面不良が発生する場合がある。また、10分を超えると樹脂14から形成される保護層の表面のみが硬化し、素線10に接触している樹脂14の硬化が充分に行われず、搬送時に保護層の変形が生じるおそれがある。また、この場合には、水槽30のサイズが大きくなり必要とする温水31の量も増えるためコスト高の原因ともなる。塗布素線18の水槽30内滞留時間が1秒から10分の範囲となるように搬送速度,水槽30のサイズを適宜選択することで、光ファイバー35の生産速度を落とさずに、保護層を形成することができる。
本発明において、固定プレート11とプーリー33とのを所望の位置に配置することにより素線10,塗布素線18を搬送する際に、所望の張力が付与されて樹脂ポット13での樹脂14の塗布を良好に行うことが可能となる。プーリー33に塗布素線18が接触開始する位置を接触位置33aと称する。固定プレート11の中心の略鉛直方向に接触位置33aが配置されるようにプーリー33の位置決めを行うことが好ましい。これにより、固定プレート11とプーリー33とにより素線10及び/または塗布素線18の搬送路(通路)が固定される。この状態で、回転体12を回転させることで、素線10に所望の張力が付与され、樹脂14の塗布を良好に行うことが可能となる。
光ファイバー35の表面に付着した温水31を水分吹払除去装置36で除去し、水分吸引除去装置37でさらに水分を除去することが好ましい。光ファイバー35は、引取りローラ38,39で引取り搬送される。引取りローラ39には駆動装置40を取り付け駆動する。また、他方の引取りローラ38にはニップ圧調整装置(図では、バネで図示している)41を取り付けることで、安定した搬送が行えると共に光ファイバー35の強靭性が高まるために好ましい。
図4に示すように光ファイバー35の保護層42の厚さL3は、20μm以上3mm以下であることが好ましく、50μm以上2mm以下であることがより好ましく、最も好ましくは80μm以上1mm以下である。20μm未満であると保護被覆の役目を果たさない場合がある。また、3mmを超えると硬化の進行が遅いもしくは未反応の部分が発生し、未反応物が残ってしまう事がある。また、素線10の平均直径L4は0.2mm以上2.0mm以下の範囲であることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。コア部10aの直径及びクラッド部10bの直径は、それぞれ0.1mm以上1mm以下、0.01mm以上1.9mm以下であることが好ましいが、それら範囲に限定されるものではない。
図5を用いて本発明に係る光伝送体である光ファイバーの製造に用いられる他の実施形態を説明する。素線50を張力測定装置(図示せず)を通し、張力を制御しながら搬送する。保護層を形成する前に、除塵装置51で素線50表面に付着している塵などを除去することが良好な光学特性を保持するために好ましい。素線50は、図1に示されているように本発明の製造装置に係る固定プレート11,回転体12を通過した後に樹脂ポット52に送り込まれる。樹脂ポット52には、連続的に樹脂供給装置53から樹脂54が供給される。樹脂ポット52の外側にドライチャンバー55を取り付けることが好ましい。ドライチャンバー55へ乾燥気体供給装置56から清浄な乾燥気体(例えば、窒素ガスなど)を送風することで、素線50に樹脂54を塗布する際に、素線50,樹脂54の吸湿などを防止できる。また、樹脂ポット52の樹脂54の量の変動を抑制するため、樹脂ポットレベル計57を取り付け一定量に制御することがより好ましい。
素線50は、線径調整部材であるダイスニップル60を通ることにより、好ましい量の樹脂54が塗布され塗布素線61となる。液出口先端60aの開口面積を調整することにより、被覆厚を調整する事ができる。また、樹脂54の粘度や素線51の搬送速度の調整によっても被覆厚は微調整可能である。塗布素線61は、線径測定装置62によりその線径がモニタリングされてコントローラ63にその情報が送信される。加熱チャンバ64に塗布素線61を送り、加熱することで樹脂54を硬化させて保護層を形成する。ダイスニップル60から加熱チャンバ64の間では、通常特に温度制御がなされていない。例えば、室温(約25℃)である場合には、樹脂54が急激に硬化するおそれがある。そのため、ダイスニップル60と加熱チャンバ64との距離L5(mm)は短い方が好ましい。しかしながら、距離L5が短すぎると樹脂ポット52と加熱チャンバ64とを独立して温度制御することが困難になる場合がある。そこで、素線50の搬送速度が10m/min以上30m/min以下の範囲の場合に、距離L5(mm)は、50mm〜300mmの範囲であることが好ましい。しかしながら、本発明において距離L5は、その範囲に限定されるものではなく樹脂54の物性などを考慮した上で、適宜最適な距離とすることができる。
加熱チャンバ64には熱風発生装置65が取り付けられており、熱風が塗布素線61の搬送方向と逆方向に流れるように供給される。なお、熱風の供給方向は、塗布素線61の搬送方向に沿って供給しても良い。また、加熱チャンバの入口側と出口側とにそれぞれ温度計66,67を取り付けることが好ましい。測定された各温度は、コントローラ63に送信される。塗布素線61は、加熱チャンバ64を通過している間に樹脂54が流動しない程度まで硬化して保護層が形成されて光ファイバー70となる。
光ファイバー70の保護層に発生するコブの有無は、コブ検出装置71によりモニタリングされその結果はコントローラ63に送信される。コントローラ63は、線径測定装置62、温度計66,67、コブ検出装置71から送信された各信号に基づき樹脂ポット52の温度、乾燥気体供給装置56の気体供給量及び気体温度、加熱チャンバ64の温度、さらに素線50の搬送速度などを最適な条件に調整する。これにより、保護層の厚みが略均一で且つ素線50に熱ダメージが生じない光ファイバー70が得られる。例えば、保護層の一部が隆起するいわゆるコブの発生を抑制でき、均一な厚さの保護層を形成することができる。
光ファイバー70は、引取りローラ72,73により引取り搬送される。引取りローラ72には、モータ74が取り付けられ駆動ローラとなっている。また、引取りローラ73には、ニップ圧調整装置75が取り付けられている。さらに、引取りローラ73にファイバー長計測装置76を取り付け、ファイバー長を計測することが好ましい。図5で示されている実施形態では、光ファイバー70の保護層の形成状況をモニタリングし微調整を連続して行う。そのため、上流側にプリフォームを延伸し素線50とする線引装置を取り付けることが好ましい。これにより、プリフォームから素線の作製、該素線に保護層を連続して形成する光ファイバー70の製造を行うことが容易となる。
本発明の光伝送体は、さらに、必要に応じて本発明の保護層を1次被覆層とし、外周にさらに2次(または多層の)被覆層を設けても良い。1次被覆が充分な厚みを有している場合、素線に与える熱ダメージが減少するため、素線の硬化温度の制限は素線へ直接被覆する場合に比べて、緩くすることができる。2次被覆層には、難燃剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、昇光剤、滑剤などを導入してもよい。なお、難燃剤については臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤や燐含有のものがあるが、毒性ガス低減などの安全性の観点で難燃剤として金属水酸化物を好ましく使うことができる。
また、複数の機能を付与させるために、様々な機能を有する被覆を積層させてもよい。例えば、前述の難燃化以外に、光ファイバーの吸湿を抑制するためのバリア層や水分を除去するための吸湿材料、例えば吸湿テープや吸湿ジェルを被覆層内や被覆層間に有することができる。また、可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層等の緩衝材、剛性を挙げるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂に含有すると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。その他に保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。
また、ケーブルの形状は使用形態によって、光ファイバーを同心円上にまとめた集合ケーブルや、一列に並べたテープ心線と言われる態様、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめた集合ケーブルなど用途に応じてその形態を選ぶことができる。
また、本発明の光ファイバーを用いた光伝送体は、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型、F05型、MU型、FC型、SC型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
本発明の光伝送体としての光ファイバー、および光ファイバーケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子や受光素子、光スイッチ、光アイソレータ、光集積回路、光送受信モジュールなどの光部品を含む光信号処理装置等で構成される。また、必要に応じて他の光ファイバーなどと組合わせてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線、車両や船舶などの内部配線、光端末とデジタル機器、デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LAN等をはじめとする、高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
さらに、IEICE TRANS. ELECTRON., VOL. E84-C, No.3, MARCH 2001, p.339-344 「High-Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3, No.6, 2000 476頁〜480頁「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号等に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用した、より高度な光伝送システムを構築することができる。以上の光伝送用途以外にも照明(導光)、エネルギー伝送、イルミネーション、センサ分野にも用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料の種類、それらの割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、説明は本発明に係る実験1で詳細に行い、本発明に係る実験2並びに比較例である実験3及び4では、実験1と同じ条件については説明を省略する。また、後に実験条件及び実験結果を表1に示す。
実験1では、予定するプリフォームの外径に対応する内径を有する十分な剛性を持った内径22mmおよび長さ600mmの円筒状の重合容器に、モノマー(メタクリル酸メチル(水分を1000ppm以下に除去したもの))の溶液を所定量注入した。重合開始剤としてジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)をモノマー混合溶液に対して0.5質量%、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンをモノマー混合溶液に対して0.62質量%配合した。上記モノマー混合溶液の注入された重合容器を60℃湯浴中に入れ、震盪を加えながら2時間予備重合を行った。その後、該重合容器を65℃下にて水平状態(円筒の高さ方向が水平となる状態)に保持した。そして、3000rpmにて回転させながら3時間加熱重合した。その後、90℃で24時間の熱処理を行い、PMMAを主成分とした円筒管を得た。
次に、該円筒管の中空部に、コア部の原料であるモノマー(メタクリル酸メチル(水分を1000ppm以下に除去したもの))の溶液と、屈折率調整成分としてジブチルフタレートをモノマー溶液に対して10質量%混合した溶液とを、精度0.2μmの四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過しつつ、濾液を直接注入した。重合開始剤としてジ−t−ブチルパーオキシドをモノマー混合溶液に対し0.016質量%、連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンをモノマー混合溶液に対し0.27質量%配合した。この混合溶液等を注入した該円筒管を、該円筒管外径に対し9%だけ広い内径を持つガラス管内に挿入した状態で、加圧重合容器に垂直に静置した。その後、加圧重合容器内を窒素雰囲気に置換した後、0.1MPaまで加圧し、90℃で、48時間加熱重合した。その後、0.4MPaまで加圧し、120℃で、24時間加熱重合および熱処理を行い、プリフォームを得た。該プリフォームの重量平均分子量は10万6000であり、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、2.1であった。なお、このプリフォームの最低ガラス転移温度Tg(℃)を示す部位はコア部の中央部で約90℃であった。また、コア部はその屈折率の分布に従いガラス転移温度が上昇し、コア部の最外部のガラス転移温度は約110℃であった。
得られたプリフォームには、重合完了時に体積収縮による気泡の混入はなかった。このプリフォームを230℃の熱延伸により線引きを行い、直径300μmの素線10を製造した。得られた素線10の伝送損失値を測定したところ、波長650nmで160dB/km、波長850nmで1250dB/kmであった。
図1の樹脂ポット13にエラストマーである樹脂(サンスター技研(株)社製,RD−10336;25℃における粘度は50Pa・s)14を注入し、温調機17で25℃に温度調整した。ライン速度(搬送速度)15m/minとして、保護層の厚みL3が1.0mmとなるように素線10に樹脂14を塗布した。温水31を80℃に設定し、その温水中を5秒間走行させて樹脂14を硬化させて保護層を形成し、光ファイバー35を得た。固定プレート11と回転体12との距離L1は150mm、回転体12と樹脂ポット入口13aとの距離L2は150mmとなるようにそれぞれを配置した。回転体12の貫通孔12aまでの径Rは5mmのものを用いた。素線10と中心線20とのなす搬送角θは、1.2°とした。固定プレート接触面11b,回転体接触面12cは、ポリテトラフルオロエチレン共重合物から形成されているものを使用した。なお、回転体12は、4秒に1回転の速さ(0.25/秒)で回転させた。
光ファイバー35の保護層の径ムラは±25μmであり、略均一の厚みの保護層が得られた。なお、被覆後の伝送損失は、波長650nmで160dB/kmであり、伝送損失の増加は生じなかった。また、保護層の硬化性は、硬化反応が終了しており、光ファイバー35を切断して調べると、全径において固体であった。
実験2は、搬送速度を10m/minとし、温水31による加熱時間を15秒とし保護層の厚みL3が2.0mmとなるように塗布を行った以外は実験1と同じ条件で行った。波長650nmにおける伝送損失は、160dB/kmであり、伝送損失の増加は生じなかった。また、保護層42の径ムラは±30μmであり、略均一な厚みに形成されていた。
比較例である実験3では、回転体12を取り外して、固定プレート11を通った素線10が、樹脂ポット入口13aに直接入るように、固定プレート11の位置調整を行った。それ以外は、実験1と同じ条件で行った。波長650nmにおける伝送損失は254dB/kmであり、伝送損失が悪化した。また、保護層42の厚みL3は、0.9mm〜2.4mmであり不均一に形成されていた。
比較例である実験4では、回転体12を取り外して、固定プレート11を通った素線10が、樹脂ポット入口13aに直接入るように、固定プレート11の位置調整を行った。それ以外は、実験2と同じ条件で行った。波長650nmにおける伝送損失は281dB/kmであり、伝送損失が悪化した。また、保護層42の厚みL3は、1.1mm〜4.5mmであり不均一に形成されていた。
石英系光ファイバーの保護層被覆に応用することで、石英系光ファイバーの線引き及樹脂被覆速度を上昇させることが可能となり、生産性の向上を図ることが可能となる。
10,50 プラスチック光ファイバー素線
11 固定プレート
12 回転体
14 保護層形成用材料
15 ダイス
35,70 光ファイバー
42 保護層
11 固定プレート
12 回転体
14 保護層形成用材料
15 ダイス
35,70 光ファイバー
42 保護層
Claims (13)
- 光導波路となる素線を保護層形成用材料中に通過させることで前記保護層形成用材料の塗布を行い保護層を形成する光伝送体の製造方法において、
前記保護層形成用材料中での前記素線の通路を変化させながら前記塗布を行うことを特徴とする光伝送体の製造方法。 - 前記光導波路がポリマーから構成されていることを特徴とする請求項1記載の光伝送体の製造方法。
- 前記素線が、光導波の方向と直交する面にガラス転移温度が分布を有していることを特徴とする請求項1または2記載の光伝送体の製造方法。
- 前記保護層形成用材料を50℃以上、前記光導波路中の最も低いガラス転移温度を示す部位のガラス転移温度以下の範囲で硬化させて前記保護層を形成することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載の光伝送体の製造方法。
- 前記保護層形成用材料を塗布した後に1秒以上10分以内で加熱することを特徴とする請求項1ないし4いずれか1つ記載の光伝送体の製造方法。
- 前記保護層形成用材料が高粘性液体であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つ記載の光伝送体の製造方法。
- 前記保護層形成用材料がエラストマーであることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つ記載の光伝送体の製造方法。
- 前記光伝送体が、光ファイバーであることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1つ記載の光伝送体の製造方法。
- 光導波路となる素線の表面に保護層を形成する光伝送体の製造装置において、
前記素線に保護層形成用材料を塗布する塗布手段と、
前記塗布手段の上流側に配置され、前記塗布手段に搬送される前記素線の搬送路を変化させる搬送路変化手段と、
を有することを特徴とする光伝送体の製造装置。 - 前記搬送路変化手段は、前記搬送路のうち前記塗布手段への進入方向と前記搬送路変化手段の回転軸とのなす角が、0.5°以上25°以下に配置されていることを特徴とする請求項9記載の光伝送体の製造装置。
- 前記素線の中で最も低いガラス転移温度を示す部位のガラス転移温度以下50℃以上の範囲で温度調整可能な加熱手段が、
前記塗布手段の下流に配置されていることを特徴とする請求項9または10記載の光伝送体の製造装置。 - 前記塗布手段の下流側に、前記保護層の厚さを調整する線径調整部材を有することを特徴とする請求項9ないし11いずれか1つ記載の光伝送体の製造装置。
- 前記保護層形成用材料を溜める容器を備え、
前記容器と前記塗布手段との間に前記素線の搬送路を固定化する手段が配置されていることを特徴とする請求項9ないし12いずれか1つ記載の光伝送体の製造装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003418493A JP2005181447A (ja) | 2003-12-16 | 2003-12-16 | 光伝送体の製造方法及び製造装置 |
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JP2003418493A JP2005181447A (ja) | 2003-12-16 | 2003-12-16 | 光伝送体の製造方法及び製造装置 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2005181447A true JP2005181447A (ja) | 2005-07-07 |
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ID=34780697
Family Applications (1)
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JP2003418493A Pending JP2005181447A (ja) | 2003-12-16 | 2003-12-16 | 光伝送体の製造方法及び製造装置 |
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JP (1) | JP2005181447A (ja) |
-
2003
- 2003-12-16 JP JP2003418493A patent/JP2005181447A/ja active Pending
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